JP3797643B2 - 結晶作製装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶作製装置に係る。より詳細には、るつぼに入れた原料の固液界面の位置と、固液界面に対して垂直方向の温度勾配とを一定に保つことの可能な結晶作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体の高集積化が進むにつれ、半導体の製造工程で用いる半導体焼き付け装置には、さらなる高解像力が要求されている。この要求に応えるため、半導体焼き付け装置は、KrF線(248nm)、ArF線(193nm)等の波長の短いエキシマレーザーを光源として使用するようになってきた。これに伴い、従来から使用されている非晶質の光学材は193nmの光を透過させることができないため、非晶質の光学材に代わる材料として蛍石(CaF2)が期待されるようになった。また、高解像力を達成するために、蛍石にも大口径の単結晶が光学材として要求されるようになっている。
【0003】
従来、蛍石等の単結晶光学材は、るつぼ降下法(ブリッジマン法)で製造されている。その典型的な結晶作製装置としては、例えば米国特許2,214,976に記載されている装置(図8)が挙げられる。
【0004】
図8に示す構成の装置では、上下の2つのヒーター1a、1bが取り付けてあり、これらは独立に制御される。そして、熱電対2aがヒーター1aの上部に取り付けられ、その温度が一定となるようにヒーターの入力が制御されていた。このような構成により、結晶製造装置の環境(例えば、温度や電圧)が変化しても一定の温度を保てるようになっている。また図8の装置は、チャンバー14とチャンバー内壁に取り付けられた断熱材15、さらにその内側に配置されたグラファイト製のヒーター1a、1bから構成されており、チャンバー14を突き抜ける形でるつぼ支持棒8が設置され、るつぼを支えている。
【0005】
以下では、図8の装置を用いて結晶を作製する方法について説明する。
【0006】
最初、蛍石の原料4であるCaF2をるつぼ3に入れ、ヒーター1aで囲まれた場所に設置する。次いで、原料4の融点(蛍石では約1360℃)を超える温度まで、るつぼ3に対してヒーター1aと2aから熱を加えることによって、原料4を溶融状態とする。
【0007】
図9に示した曲線aは、原料4が溶融状態になったときのヒーターの温度分布を示す。図9において、縦軸はチャンバー内の位置であり、横軸はヒーターの温度である。図9から、図8の装置はヒーター1aの下方の端部αで急激に温度が減少するような構造を有することが分かる。従って、図8の装置では、その近辺で結晶の凝固点がくるようにさらに、適当な温度勾配をもつようにヒーター1aと2aの投入電力が調整されている。
【0008】
また、図8の装置では、チャンバー14の内部は真空ポンプ(不図示)によって10-5Torr〜10-6Torr程度の真空に保たれている。るつぼ3を約数mm/時の低速で降下させる(回転を伴う場合もある)ことで結晶成長が行われる。るつぼ3は、徐々にヒーター1aで囲まれた空間から抜け出し、るつぼ3の下方から冷却される。これに伴って、溶融状態にあった原料4の結晶化は温度の低い底部から始まり、固体と液体の境界である結晶の成長点である固液界面が融液の最上部に達した時に結晶化は終了する。
【0009】
上述した装置は、作製する結晶の大きさがあまり大きく無く、例えば結晶の太さが数十ミリ程度の場合、原料を入れたるつぼが下方に移動してもヒーターの温度分布はほとんど変化がないので問題がなかった。
【0010】
しかしながら、大口径の結晶を得ようとしてるつぼの直径を大きくすると、るつぼ及びその中に入っている原料の熱容量がヒーターの熱容量より大きくなってしまう。そのため、るつぼが下降してくると、ヒーターへの投入電力が一定でもるつぼの位置によって、ヒーターの温度分布が変化してしまうことが分かった。
【0011】
また、結晶の成長速度は、固液界面付近の垂直方向の温度勾配(dT/dy)に依存するため、るつぼの位置によって固液界面の位置と結晶の成長速度が変わってしまうことになり、安定した結晶成長は望めないことが明らかとなった。
【0012】
さらに、特定の位置の温度を熱電対で測定しヒーターの投入電力を制御しようとしても、るつぼの移動に伴う温度変化なのか結晶製造装置の環境(温度や電圧)変化によるものなのか要因を分離することができなかった。従って、ヒーターへの投入電力へフィードバックかけることは困難であり、むしろ測定された温度と無関係にヒーターへの投入電力を一定に保つ方が、温度が安定できるという結果を生んでいた。
【0013】
例えば、図10に示す装置では、るつぼが上方にあった場合、図11の実線aで示した温度分布が得られる。しかし、るつぼが下降してくると図11の実線bで示した温度分布に変化し、結晶の成長点である固液界面が移動してしまうことが分かった。また、熱電対2aで測定した温度が一定となるようにをヒーターの投入電力を制御しても、温度分布が変化してしまうため、固液界面の位置を一定に保つことはできないことが明らかとなった。たとえ、固液界面付近の温度を測定しその温度が変化しないように投入電力を制御しても、垂直方向の温度勾配(dT/dy)を一定に保つことは困難であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、るつぼに入れた原料の固液界面の位置と、固液界面に対して垂直方向の温度勾配とを一定に保つことの可能な結晶作製装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の結晶作製装置は、原料を入れたるつぼと、該るつぼを取り囲む様に配置されたヒーターとを備え、該るつぼを該ヒーターに対して引き下げることによって、該原料を該るつぼの下方から冷却し結晶を作製する装置において、前記るつぼに入れた原料の固液界面に相当する温度の位置より下方のるつぼの長さLが、次式を満たすことを特徴とする結晶作製装置である。
c ・(C 2 ・ΔT 2 +C 1 ・ΔT+C 0 )・(r h /r c −1)
(但し、C 2 =0.004、C 1 =−0.166、C 0 =2.22で、r c はるつぼの半径、r h はヒーターの半径、ΔTはヒーターの温度変化の許容値である)
【0016】
上記構成によれば、るつぼの移動開始前後で、ヒーターとるつぼに入れた原料の固液界面との位置関係が変わらないので、るつぼに入れた原料の固液界面の位置と、固液界面に対して垂直方向の温度勾配とを一定に保つことが可能になる。その結果、屈折率の均質性に優れた大口径の単結晶光学材を製造するのに好適な結晶作製装置が得られる。
【0017】
本発明に係る装置は、以下に示す本発明者の研究・開発から生まれた。
図10に示す従来の装置を用い、るつぼの移動に伴う、位置A及びBのヒーターの温度変化を調べた。
【0018】
図12はその温度変化を示すグラフであり、横軸はるつぼの移動距離、縦軸は温度である。図12から、次の点が明らかとなった。
【0019】
(1)るつぼの底部より低い位置Aのヒーターの温度TAは、るつぼの移動に伴い、急激に温度が上昇することが分かった。るつぼが移動開始以前は、位置Aのヒーターがるつぼ側面と面していなっかたため、ヒーターがるつぼ底面や断熱材と熱交換を行ない熱平衡に達していた。しかし、るつぼが下方へ移動し位置Aのヒーターの内側にるつぼが下降するとヒーターの温度TAが上昇することが分かった。これは、るつぼの温度が断熱材の温度より高くこれと熱交換をするヒーターの温度が上昇するためと考えた。
【0020】
(2)これに対して、るつぼの底より高い位置Bのヒーターの温度TBは、るつぼの移動開始以前から、ヒーターとるつぼが面しているために、るつぼの移動にともなう温度変化は小さいことが分かった。
【0021】
上記(1)、(2)の結果から、温度変化に伴う固液界面の移動を防ぐためには、位置Bの付近に固液界面がくるようにヒーターの温度を制御する方法が望ましいと考えた。しかしながら、この方法によれば、固液界面付近の温度変化は小さくなるが、るつぼの最下部が固液界面より下方にあるので、るつぼの最下部は結晶の成長の開始点と成りえない。したがって、るつぼの最下部を結晶の成長の開始点とするためには、少なくとも底の温度を融点より高くなるように、ヒーターの温度を制御する必要があることが判明した。
【0022】
そこで、本発明者は、るつぼの移動に伴ってヒーターの温度が変化しないようにするために、るつぼの移動開始前後でヒーターとるつぼの位置関係が変わらないようにする構成を検討した。この考え方に基づき、本発明者は上述した本発明の装置を考案した。このような構成の装置は、例えば図10の装置において、るつぼの下に補助るつぼを設置し、るつぼ移動以前に位置Aのヒーターが補助るつぼと面する構成によって達成される。
【0023】
さらに、補助るつぼの構造について検討した結果を以下に述べる。
図13、図14を参考にしながら、るつぼが移動してもヒーターの温度が変化しないるつぼ構造を求める。
【0024】
図13は、るつぼとヒーターとの位置関係を示す模式図である。固液界面の位置近辺のヒーターの一部αが、るつぼの底からLの高さにある状態を示している。もし、るつぼが上方に無限に大きく、更にLも無限に大きければ、るつぼが下方に移動して破線の位置にきても、ヒーターの一部αと熱のやりとりをするるつぼの位置関係は変化しない。その場合、るつぼが移動してもヒーターの温度が変化しない。
【0025】
しかし、Lの増加に伴って、炉が大きくなりすぎる他、熱が逃げにくくなるなどの欠点がでてきた。更に、従来はるつぼ内部の原料を十分溶かす必要があることから、固液界面に相当する温度に達しているヒーターの位置が、るつぼの底より低い(L<0)もしくは、Lがかなり小さい(L≒0)状態になっていた。
【0026】
本発明の基本的な構造は、事実上、るつぼが下方に移動して、ヒーターの一部αと熱のやりとりをするるつぼの位置関係が変化しない条件を求めることにある。まず、ヒーターの一部αと周囲の面とのエネルギーのやり取りを考える。
【0027】
図14は、るつぼ及びヒーターからなるチャンバーの模式的な断面図であり、ヒーターと周囲の壁との熱収支を説明する図面である。図14において、ヒーターの一部分α(内側の面A、外側の面B)は、斜線で示された面、即ち面1(天井)と面2(チャンバー底)、面3(るつぼ下の断熱材)、面4(るつぼ側壁)、面5(チャンバー内壁)とふく射によって熱交換をしている。更に、ヒーターの一部分αとヒーターの他の部分の間で、熱交換を行なっているが、面1〜5との熱交換量に比べて小さい上、るつぼの移動に伴う熱交換量の変化が小さいので、無視する。実際、るつぼとヒーターの距離は、ヒーターの半径に比べて小さく、ヒーターの一部から他のヒーター面からほとんど見込めない関係であり、これは妥当な仮定である。熱平衡に達しているとすると、次の方程式が成立する。
【0028】
Q=Q1+Q2+Q3+Q4+Q5 (式1)
ここで、Qはヒーターの一部αの単位時間の当たり発熱量で、Qi(i=1〜5)は、面Aまたは面Bと面iとの正味の熱の交換量であり、
i=(Ja・Sa・Fa-i−Ji・Si・Fi-a
+(Jb・Sb・Fb-i−Ji・Si・Fi-b
で表わせる。但し、Siは面iの面積、Fi-aは形態係数で面iを発するエネルギーで面aに達するエネルギーの割合で、Fa-iは面aを発するエネルギーで面iに達するエネルギーの割合を示す。
【0029】
また、面積Sと形態係数Fとの間には
i・Fi-a=Sa・Fa-i (式2)
の関係がある。Jiは射度で、単位時間・単位面積当たりに表面iから発する全ふく射エネルギーであって、更に、EとG、εによって次の関係がある。
【0030】
i=εi・Ei+(1・εi)Gi (式3)
但し、εiは射出率で、Eiは黒体射出量でEi=σ・Ti 4で与えられる。σはシュテファンボルツマン定数、Tiは面iの絶対温度である。更に、Giは入射量で、単位時間・単位面積当たりに表面iに入射する全ふく射エネルギーである。Fa-5=F5-a=Fb-4=F4-b=Fb-3=F3-b=0なので、1式は次のようになる。
【0031】
Figure 0003797643
るつぼが下方向に移動した場合、ヒーター以外の温度は変化しないとして式4の両辺を全微分する。
【0032】
Figure 0003797643
a-1+Fa-2+Fa-3=1かつFb-1+Fb-2+Fb-5=1、Sa=Sb、Sa・Fa-1=S1・F1-a等を代入する。その際、実際の形状はるつぼとヒーターの距離がヒーターの半径に比べて十分小さく、またFa-1とFa-2がFa-3やFa-4に比べて十分小さいので、ΔFa-1=ΔFa-2=0として、次に示す式5が得られる。
(ΔJa+ΔJb=[(J3−Ja)ΔFa-3+(J4−Ja)・ΔFa-4)](式5)
また、面Aに関しては面3(断熱材の表面)を見込む立体角が減った分だけ、面4(るつぼの側面)を見込む立体角が増加するので、ΔFa-3=−ΔFa-4と仮定することにより、次に示す式6が求まる。
【0033】
(ΔJa+ΔJb)=(J4−J3)・ΔFa-4 (式6)
ここで、Ji=εi・Ei+(1−εi)・Giであり、第2項は周囲の面から入射したエネルギーを反射する項である。反射された光線が再び周囲の面を照射するために、JとGを求めるには周囲の詳細な形状を求める必要があり複雑になってしまう。幸い射出率εiはカーボンで概ね0.8であるので、式を簡単化するためにεi=1とする。更に、ヒーターの温度は両面とも等しくT0とすると、次に示す式7が得られる。
【0034】
8・T0 3・ΔT=(T4 4−T3 4)・ΔFa-4
ΔFa-4=(8・T0 3/(T4 4−T3 4))・ΔT (式7)
但し、T3,T4は各々面3(るつぼ下の断熱材)と面4(るつぼの側壁)の温度とする。
【0035】
4>T3なので、式7はるつぼとヒーターとの間の形態係数Fa-4が増加すればヒーターの温度Tが上昇することを示している。T0=T4=1700K、T3=1500Kとし、温度変化の許容量ΔTを5Kとすると、
ΔFa-4<0.06 (式8)
となる。したがって、るつぼが下降してもヒーターの温度を一定に保つ条件は、ヒーターとるつぼとの間の形態係数が0.06以下しか変化しないるつぼ構造ということになる。
【0036】
次に、図13を参考しながら、るつぼとヒーターの半径から、実際のるつぼ構造を求める。図13に示す様に、ヒーターの一部αより下方にLだけ長いるつぼを考える。ヒーターの一部αより上方のるつぼの大きさは十分長いとして、るつぼが移動しても上方のるつぼの形態係数の変化は無いものとする。るつぼの半径rc、ヒーターの半径rhとすると、ヒーターの一部αとるつぼの形態係数Faは、以下の式で表わせる。
【0037】
a(X,Y)=Fa'(X,Y)+Fa'(∞,Y) (式9)
但し、X、Y、Fa'(X,Y)は以下に示す通りである。
【0038】
Figure 0003797643
である。図15は、ヒーターの一部αの内側の面aとるつぼ全体との間の形態係数Faを示すグラフである。るつぼの半径とヒーターの半径との比Yが1.20の場合、例えば、各々の半径が100mmと120mmの構造の形態係数を示すものである。横軸にLとるつぼの半径rcの比Xを、縦軸に形態係数Faをとった。
【0039】
るつぼが十分下降した(L=∞)場合の形態係数として図15のX=1.0の形態係数0.83を使用し、更に、式8からるつぼの下降開始時で、Fa(X,1.20)=0.83−0.06=0.77以上の1を選べば、温度変化ΔTを5K以下にすることが可能となる。図15から、Fa=0.77のX(=L/rc)は0.3なので、よって、L=0.3・rc=30mmが求められる。
【0040】
同様に、種々のヒーターの半径に対して、ヒーターの温度変化ΔTを5K,10K,15K以下にすることができるLを求めたものを図16のグラフに実線で示す。これらのグラフを1次近似する。
【0041】
X=const(ΔT)・(Y−1)
さらに、const(ΔT)を複数のΔTに対して求めて、最小2乗近似し式10を使ってX,Yを書き直すとヒーターの温度変化をΔT以下にする条件式12が得られる。
【0042】
L≧rc・(C2・ΔT2+C1・ΔT+C0)・(rh/rc−1)(式12)
但し、C2=0.004、C1=−0.166、C0=2.22である。
【0043】
式12を使用して、得られるXの値を図16中に、×印で示した。式12は、るつぼとヒーターの半径(それぞれrc、rh)と許容される温度変動値ΔTから、固液界面より下方のるつぼの大きさの最低値を決定するのものである。温度の変動値ΔTは、できた結晶の性質の均一性から決定される。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係る結晶作製装置の実施の形態について詳述する。なお、第1〜7の実施の形態には装置の基本構成例を示す。
【0045】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1に示す。図1は本発明に係る結晶作製装置の模式的な断面図であり、炉内が第1の領域(高温領域)と第2の領域(低温領域)に分けられ、それぞれ独立したヒーターによって温度が制御がされている炉において、本発明を適応した一例を示す断面図である。
【0046】
図1において、1aと1bはそれぞれは第1と第2のヒーター、2aと2bはそれぞれ第1と第2の熱電対、3は本るつぼであり、本るつぼの底が結晶成長の開始点となる。4は本るつぼ内に入れられた原料であるCaF2、5aと5bはそれぞれ第1と第2の電源、6aと6bはそれぞれ第1と第2の温度測定器、7は電源制御系である。8はるつぼ支持棒、9はるつぼ下断熱材、10は補助るつぼ、11は補助原料であるCaF2、14はチャンバー、15は断熱材である。
【0047】
チャンバー14は、その内部が減圧できる真空チャンバーであり、ステンレス等の金属で作製されており、不図示の真空ポンプに接続されチャンバー内は10-5Torrから10-6Torrの真空度に減圧される。
【0048】
断熱材15は、真空チャンバー14の内壁に取り付けられ、チャンバー内の熱が外部に逃げないようにするために用いた。
【0049】
ヒーター1aと1bは、カーボン等で構成され、それぞれ5aと5bの電源を通して通電することで発熱する。そして、発生した熱はヒーター内に配置されたるつぼ3に輻射によって供給される。
【0050】
るつぼ3は、作製する結晶の原料4と反応しないカーボン等の物質からなっており、るつぼ3内には原料4であるCaF2が入っている。そして、るつぼ3の下には、補助原料9が入っている補助るつぼ10が配置されている。補助原料11はCaF2であるが、るつぼ3と補助るつぼ10の間は隔壁で完全に仕切られているため、補助原料11が本るつぼ3の種結晶となることはない。したがって、本るつぼ3の最下部が本るつぼ3における結晶の成長開始点となる。さらに、補助るつぼ10の下には、るつぼを支える支持棒8が取り付けられている。支持棒8は不図示の昇降機構に取り付けられ、この昇降機構を駆動することによってるつぼ3は上下動される。
【0051】
熱電対2aは、本るつぼ3の低部付近の温度が測定されるように、ヒーター1aに取り付けらている。熱電対2bは、本るつぼ3の底と補助るつぼ10の底の間もしくは補助るつぼ10の底部付近の温度が測定されるように、ヒーター1bに取付けられている。
【0052】
ヒーター1aは、電源5aから電力が供給される。また、熱電対2aの電圧信号は測定器6aによって温度信号に変換され制御系7に送られる。そして、制御系7は電源5aを制御し、ヒーター1aへの投入電力を制御する役割を担っている。同様に、ヒーター1bは、電源5bによって電力を供給される。また、熱電対2bの電圧信号は測定器6bによって温度信号に変換され制御系7に送られる。そして、制御系7は電源5bを制御し、ヒーター1bへの投入電力を制御する。
【0053】
以下では、図1に示した構成からなる装置の動作について、結晶の作製手順に従って説明する。
【0054】
(1)初め熱電対2aの温度Taが結晶の融点の上、即ちCaF2の融点1360℃より高い温度になるように、ヒーター1aへの入力が制御される。熱電対2bの温度Tbが結晶の融点の下、即ちCaF2の融点1360℃より低い設定になるように、ヒーター1bへの入力が制御される。
【0055】
(2)ヒーターからの熱を受けて本るつぼ3は暖められ、やがて本るつぼ3内の原料4はCaF2の融点に達し溶けはじめ、ついには本るつぼ3内の原料4は完全に融解する。
【0056】
(3)さらに、補助るつぼ10内の補助原料11のCaF2の一部も融解する。この状態で、十分時間が経過し融液が安定するまで放置される。補助るつぼ10の最下部はCaF2の融点より低い温度に設定されているために、補助るつぼ10内の補助原料11のCaF2は時間が十分経過しても補助るつぼ10の底まで完全に融解することはない。
【0057】
(4)融液が安定したら、徐々にるつぼを引き下げはじめる。
その際、補助るつぼ10の内部の補助原料11は完全に融けていないので、結晶成長開始点が複数できる可能性があり、単結晶のできる可能性は低い。また、結晶成長の開始点である本るつぼ3の下部と補助るつぼ10の上部は仕切られているので、補助るつぼ10の結晶性が本るつぼ3の結晶性に影響を及ぼすことはない。
【0058】
次に、温度変動に関して考察する。固液界面付近である位置Aのヒーターの温度は、本るつぼ3が引き下げられてもほとんど変動しない。何故ならば、位置Aのヒーター1aは本るつぼ3の移動開始以前から本るつぼ3と面しており、本るつぼ3が引き下げられても、本るつぼ3と位置Aのヒーター1aとの位置関係は変わらないからである。しかし、初め本るつぼ3が内側になかった位置Cのヒーター1bの温度は、本るつぼ3が下降するにしたがって急激に上昇する。しかし、位置Cの温度は融点より十分低く位置も固液界面から十分離れているので、位置Cの温度変動が、固液界面付近の位置Aにあるヒーター1aの温度に影響を及ぼす可能性は小さい。
【0059】
また、上述したように固液界面付近の温度は本るつぼ3の位置に依存しないので、固液界面の上下に設けられた熱電対2aと2bの出力の変動は、結晶作製装置の環境の変化によるものと考えてよい。従って、熱電対2aと2bの出力が一定になるように、制御系7によって電源5aと5bを制御し、ヒーター1aと1bへの投入電力を制御することによって、さらに本るつぼ3の温度を一定に保てるので、結晶作製装置の環境が変化しても安定した結晶の成長が可能となる。
【0060】
ゆえに、本発明に係る装置では、るつぼが移動しても固液界面付近の位置および温度勾配は変動しない、言い換えれば、るつぼの移動に伴い、るつぼに入れた原料の固液界面付近を、ヒーター側から見た立体角が変わらないので、安定した結晶の作製が可能となる。さらに、熱電対の出力を一定に保つことにより結晶作製装置の環境の影響をも排除することが可能となる。
【0061】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る結晶作製装置の要部、すなわち図1における本るつぼ3、補助るつぼ10及びこれらに付属する部分のみを示した模式的な断面図である。図2の装置は、成長させる結晶の方位を制御するために、本るつぼの下部に種結晶を入れるための本るつぼの直径より細い円筒形の部分を設けた点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。
【0062】
図2の装置では、本るつぼ3の下部に本るつぼ3の直径より細い円筒形の部分20を設ける。そして、円筒形の部分20の周囲、すなわち本るつぼ3の下部に、補助るつぼ10を取り付け、補助るつぼ10の内部には、補助原料11を入れる。
【0063】
本るつぼ3において結晶を成長する際に用いる種結晶は、所望の方位の結晶が成長できるように円筒形の部分20内に入れる。そして、円筒形の部分20の上部の温度は原料4の融点より高く、円筒形の部分20の下部の温度は原料4の融点より低くなるように、ヒーター(不図示)のパワーを制御系(不図示)で調整する。このような温度制御によって、円筒形の部分20の内部の種結晶は上部が溶け下部が結晶の状態となる。
【0064】
このような状態に種結晶をしてから、第1の実施の形態と同様に、本るつぼ3を引き下げることによって結晶の成長が開始される。本るつぼ3における固液界面に対応する温度領域は補助るつぼ10の内部にあるので、本るつぼ3が移動しても固液界面付近の位置および温度勾配は変動しない。さらに、円筒形の部分20の内部の種結晶の下部は溶けていないので、種結晶と融液の界面を成長の開始点として結晶が成長する。従って、図2の装置では、所望の方位の結晶が安定して得られる。
【0065】
上述した実施の形態では、補助るつぼ10内にいれる補助原料11としてCaF2を用いたが、補助原料11は、必ずしもCaF2である必要は無く、熱容量(Cp)と密度(ρ)との積及び熱伝導率(λ)がCaF2と同等の材料であればよい。
【0066】
従って、補助原料11としては、表1に示すようなAl23やMgOなどのセラミックが使用できる。
【0067】
【表1】
Figure 0003797643
【0068】
さらに、本るつぼ3の引き下げ速度が十分小さい場合には、熱容量(Cp)と密度(ρ)との積のみCaF2と同等な物質を、補助原料11として用いても構わない。
【0069】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る結晶作製装置の要部、すなわち図1における本るつぼ3、補助るつぼ10及びこれらに付属する部分のみを示した模式的な断面図である。図3の装置は、原料4としてCaF2の融点より高温の融点をもつ材料を補助材料11として使用した点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。
【0070】
この場合には、本るつぼ3の位置に関係無くヒーターの熱流出量を等しくするために、図3に示す様にヒーター(不図示)と向かい合う面は本るつぼ3の輻射率と同じ材料で覆う必要があるが、下部は補助原料11が剥きだしでもよい。
【0071】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る結晶作製装置の要部、すなわち図1における本るつぼ3、補助るつぼ10及びこれらに付属する部分のみを示した模式的な断面図である。図4の装置は、補助原料11の形状の簡単化を図った点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。
【0072】
図4に示す様に、本るつぼ3の底を平面(図4)にすることによって、本るつぼ3及び補助るつぼ10の作製が容易な結晶作製装置が得られる。このように、本発明は、本るつぼ3の形状に依存せず様々な形状のるつぼに適応できる技術である。
【0073】
(第5の実施の形態)
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る結晶作製装置の要部、すなわち図1における本るつぼ3、補助るつぼ10及びこれらに付属する部分のみを示した模式的な断面図である。図5の装置は、本るつぼ3を複数の領域に分かれているディスク型るつぼとした点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。図5において、12はダミーるつぼであり、この領域で成長した結晶が、上の領域の結晶の種となる構造である。実施例1と同様にダミーるつぼ12の下部に補助るつぼ10が取り付けられ、補助るつぼ10の上部と底部との間に補助原料11の融点がくるようにヒーターへの投入電力が調整されている。このような構成のるつぼにも、本発明は十分に適用できる。
【0074】
(第6の実施の形態)
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る結晶作製装置の要部、すなわち図1における本るつぼ3、補助るつぼ10及びこれらに付属する部分のみを示した模式的な断面図である。図6の装置は、本るつぼ3を複数の領域に分かれているディスク型るつぼとし、さらに本るつぼ3で成長させる結晶の方位を制御するために、ダミーるつぼの代わりに本るつぼ3の底に円筒形の部分20を取り付けた点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。
【0075】
図6の装置では、所望の方位の結晶が成長できるように円筒形の部分20内に種結晶を入れる。ここで、円筒形の部分20の上部の温度が融点より高く、円筒形の部分20の下部の温度が融点より低くなるように、ヒーター(不図示)のパワーを制御して用いる。
【0076】
(第7の実施の形態)
図7は、本発明の第7の実施の形態に係る結晶作製装置の模式的な断面図である。図7の装置は、ヒーターが分割されておらず一つの構造体である点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。
【0077】
図7の装置では、ヒーター1aの最も低い位置より、補助るつぼ10の底が低くなるようにヒーター1aとるつぼ3及び補助るつぼ10との相対的な位置関係を設定した。この状態において、ヒーター1aの最低部の温度が原料4の融点より低く、かつ、本るつぼ3の最低部の温度が原料4の融点より高くなるように、ヒーターの投入電力を制御する。このような構成により、るつぼ3が引き下げられても、ヒーター1aの全ての点は本るつぼ3の引き下げ前から、本るつぼ3もしくは補助るつぼ10と面しているために、ヒーター1aの温度分布は変化しない。よって、上述した本発明の作用が得られる。
【0078】
(第8の実施の形態)
図17は、本発明の第8の実施の形態に係る結晶作製装置の模式的な断面図である。図17の装置は、補助るつぼの代わりに、るつぼ3の底が厚い即ち結晶の成長点であるCとるつぼ3の底との距離を大きく取ることで、固液界面近辺の温度変化を小さくした点が図1の装置と異なっている。他の点は、図1の装置と同様とした。
【0079】
図17の装置では、るつぼ3の外周の半径をrc、ヒーターの内側の半径をrhとし、るつぼ3の大きさと設置位置を決める。温度が融点であるヒーターの位置をA、位置Aとるつぼの底の高さの差をLとする。るつぼ3が下降しても位置Aの温度上昇ΔTが5K以下の変動にするには、式12からLを求めればよい。例えば、rc=100mm、rh=120mmの場合、rh/rc=1.2となるので、
L≧0.3・100mm=30mm
となる。
【0080】
よって、るつぼの底の厚さは30mm以上例えば40mmとして、位置Aとるつぼ3の底の距離Lが30mmとなるようにるつぼ3の位置とヒーターの温度が調節され、原料をいれたるつぼ3が設置されて原料が溶かされる。結晶成長の開始点Cは位置Aより高い位置にあるので、結晶成長の開始点でも原料は溶ける。るつぼ内の原料が十分溶かされ安定した後、るつぼが徐々に引き下げられる。そして、融点の位置Aに結晶成長の開始点Cが達したとき、結晶成長が開始される。るつぼが下降してきても、位置Aの温度変動は5K程度しか変動しないので、固液界面の位置は変化せず安定した結晶成長が可能となる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る結晶作製装置は、るつぼの移動に伴い、該るつぼに入れた原料の固液界面付近を、ヒーター側から見た立体角が変わらないので、るつぼの移動開始前後で、ヒーターとるつぼに入れた原料の固液界面との位置関係を所定の位置関係に保持することができる。
【0082】
従って、るつぼに入れた原料の固液界面の位置と、固液界面に対して垂直方向の温度勾配とを一定に保つことが可能な結晶作製装置が得られる。
【0083】
上記装置を用いることにより、屈折率の均質性に優れた大口径の単結晶光学材を安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る結晶作製装置の模式的な断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係る結晶作製装置の要部を示した模式的な断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係る結晶作製装置の要部を示した模式的な断面図である。
【図4】第4の実施の形態に係る結晶作製装置の要部を示した模式的な断面図である。
【図5】第5の実施の形態に係る結晶作製装置の要部を示した模式的な断面図である。
【図6】第6の実施の形態に係る結晶作製装置の要部を示した模式的な断面図である。
【図7】第7の実施の形態に係る結晶作製装置の模式的な断面図である。
【図8】従来の結晶作製装置の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】図8の装置において、原料が溶融状態になったときのヒーターの温度分布を示すグラフである。
【図10】従来の結晶作製装置の他の一例を示す模式的な断面図である。
【図11】図10の装置において、るつぼが上方にあった場合の温度分布(実線a)と、るつぼが下降してきた場合の温度分布(実線b)とを示すグラフである。
【図12】図10の装置において、るつぼの移動に伴う、位置A及びBのヒーターの温度変化を示すグラフである。
【図13】るつぼとヒーターとの位置関係を示す模式図である。
【図14】るつぼ及びヒーターからなるチャンバの模式的な断面図であり、ヒーターと周囲の壁との熱収支を説明する図面である。
【図15】るつぼの構造に対する形態係数を示すグラフである。
【図16】炉の構造とヒーターの温度変化との関係を示すグラフである。
【図17】第8の実施の形態に係る結晶作製装置の模式的な断面図である。
【符号の説明】
1a、1b ヒーター、
2a、2b 熱電対、
3 本るつぼ、
4 原料、
5a、5b 電源、
6a、6b 温度測定器、
7 電源制御系、
8 つぼ支持棒、
9 るつぼ下断熱材、
10 補助るつぼ、
11 補助原料、
12 ダミーるつぼ、
14 チャンバー、
15 断熱材、
20 円筒形の部分。

Claims (6)

  1. 原料を入れたるつぼと、該るつぼを取り囲む様に配置されたヒーターとを備え、該るつぼを該ヒーターに対して引き下げることによって、該原料を該るつぼの下方から冷却し結晶を作製する装置において、前記るつぼに入れた原料の固液界面に相当する温度の位置より下方のるつぼの長さLが、次式を満たすことを特徴とする結晶作製装置。
    L≧rc・(C2・ΔT2+C1・ΔT+C0)・(rh/rc−1)
    (但し、C2=0.004、C1=−0.166、C0=2.22で、rcはるつぼの半径、rhはヒーターの半径、ΔTはヒーターの温度変化の許容値である)
  2. 前記原料を入れたるつぼの下に、該原料と同じ、熱容量と密度との積を有する補助原料を設置し、該補助原料の上部の温度が該原料の融点より高く該補助原料の下部の温度が該原料の融点より低くなるように前記ヒーターへの入力を制御する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の結晶作製装置。
  3. 前記補助原料が、MgOであることを特徴とする請求項2に記載の結晶作製装置。
  4. 前記補助原料が、Al23であることを特徴とする請求項2に記載の結晶作製装置。
  5. 前記るつぼは、該るつぼの中央に小孔の開いた板によって区切られた複数の領域を有することを特徴とする請求項2に記載の結晶作製装置。
  6. 前記るつぼを構成する複数の領域のうち、前記原料を入れた最下部の領域をなす該るつぼの底に、種結晶を入れる小穴が設けられていることを特徴とする請求項に記載の結晶作製装置。
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