JP3820719B2 - 生体状態測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体としての人体の状態を測定するために好適な生体状態測定装置に係り、特に心筋負荷指数の算出に好適な生体状態測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体の循環器系の状態について診断を行う場合、最も一般的には血圧や心拍数等が用いられている。
しかし、さらに詳しい診断を行うためには、血管の粘性抵抗やコンプライアンスといったいわゆる循環動態パラメータを測定することが必要となる。
【0003】
ところで、これらの循環動態パラメータをモデル化して表わす場合、動脈系の振る舞いを記述するモデルとして、四要素集中定数モデルが用いられている。
一方、上記循環動態パラメータを測定するには、大動脈起始部と切痕部における圧力波形や血流量を測定する必要がある。すなわち、動脈にカテーテルを挿入して直接測定する方法を採るか、或いは、超音波等で間接的に測定する方法を採ることになる。
【0004】
上記、脈にカテーテルを挿入して直接測定する方法では侵襲的な測定となるため被験者への負担が大きいとともに、装置も大がかりなものとなるという問題があった。
一方、超音波等で間接的に測定する方法では、血管内の血流を非侵襲的に観測することができ、被験者への負担を低減することはできるが、測定に熟練を要し、測定のための装置もやはり大がかりなものとなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者は、橈骨動脈の脈波波形と1回拍出量を測定することにより四要素集中定数モデルのパラメータを近似的に算出する方法を見い出した。そして、この方法を用いることにより、循環動態パラメータの評価を非侵襲的かつ手軽に行うことが可能な脈波解析装置を提案してきた(特開平6−205747号、発明の名称:脈波解析装置)。
【0006】
ところで、上記橈骨動脈の脈波波形と1回拍出量を測定することにより四要素集中定数モデルのパラメータを近似的に算出する方法においては、血管のコンプライアンスを動脈系の中枢部と末梢部とに分けて取り扱うモデルを採用していない。したがって、運動時や循環動態動作薬を患者に投与した場合等に、循環動態作動薬を患者に投与した場合に、その効果を中枢部と末梢部に分けて評価することはできなかった。
【0007】
次に、上述した血圧の測定について簡単に説明する。
従来から一般的に用いられている非観血型の血圧測定装置は、カフ(腕帯)を被験者の上腕部等に装着させ、カフに圧力をかけて被験者の脈波を検出することにより血圧値を測定している。
このように、被験者の末梢部における血圧の測定装置として、例えば、特開平4−276234号公報が挙げられる。すなわち、図29に示すように、カフ110を被験者の上肢の上腕部に巻回させて取り付けるとともに、バンド138を手首140に巻回し、脈波センサ134を被験者の橈骨動脈部に密着させて、被験者の脈波を検出する。そして、カフ110を加圧させた後に、降圧時において周知のオシロメトリック法により最高血圧値や最低血圧値を計測するものである。
【0008】
ところで、人体の動脈系における中枢側の血圧値と末梢側の血圧値を実測してみると、特に最高血圧値については、中枢側と末梢側の血圧値に差異が見られる。しかも、この差異の程度は、末梢側で観察される脈波の形状によって様々である。
図22〜図24に、このような脈波の形状に依存した血圧値の変動の様子を示す。
【0009】
これらの図には、中枢側である大動脈圧波形及び最高/最低血圧値、並びに、末梢側である橈骨動脈圧波形及び最高/最低血圧値を示してある。
図22に示す第1のタイプの脈波波形の場合には、点線で示す大動脈圧波形と実線で示す橈骨動脈波形から得られるそれぞれの最高血圧値は、若干橈骨動脈側が高いものの概ね等しいと言って良い。
【0010】
ところが、図23に示す第2のタイプの脈波波形の場合には、最高血圧差が14.9mmHg となって、図22に示した第1のタイプの脈波波形の場合と比較してかなり大きくなってくる。
さらに、図24に示す第3のタイプの脈波波形になると、最高血圧差は26.1mmHgといっそう大きくなる上に、第1ないし第2のタイプの脈波波形とは逆に、大動脈圧波形が全体的に橈骨動脈波形を大きく上回るようになる。
【0011】
ちなみに、これらの図22〜図24によれば、橈骨動脈側における最低血圧値は、脈波の形状によらず略同じであることがわかる。
ここで、既述した第1ないし第3のタイプの脈波について簡単に説明しておく。
第1のタイプの脈波波形は、正常な健康人の脈象であって、その波形はゆったりとして緩和であり、リズムが一定であって乱れの少ないことが特徴である。
【0012】
また、第2のタイプの脈波波形は、急激に立ち上がった後にすぐに下降し、大動脈切痕が深く切れ込むと同時に、その後の弛期峰が通常よりもかなり高いのが特徴である。
また、第3のタイプの脈波波形は、急激に立ち上がり、その後はすぐには下降せず血圧の高い状態が一定時間持続するのが特徴である。
【0013】
例示したこれらの図から導かれることは、橈骨部や上腕部といった末梢側の血圧値が高くとも大動脈起始部、すなわち中枢側,の血圧値が低い場合がある上、これとは逆に末梢側の血圧値が低くとも中枢側の血圧値が高い場合もある。このような関係は脈波波形の形状によって異なり、しかもこれらの関係が脈波波形の形状に如実に現れることである。
【0014】
例えば、高血圧治療のために患者に血圧降下剤を投与し、橈骨動脈部の血圧をもとにして薬の効果を見るとする。そうした場合、末梢側で測定した血圧が下がってきても、実際には中枢側の血圧は下がっていないこともあるわけである。
したがって、末梢側の血圧からだけでは、薬効を正しく把握することが困難な場合があると言える。
【0015】
また、これとは反対に、末梢側の血圧には変化が見られなくとも、大動脈圧波形が変化して中枢側での血圧が下がっていれば、実際には心臓の負担は軽くなっているわけである。このような場合には、無理に末梢側の血圧を下げなくとも、薬の効果は充分現われているわけであるが、これを末梢側の血圧だけから判断することは難しい。
【0016】
ところで、従来より心筋に対する負荷がどの程度であるのかを推し量るための指標として、心筋負荷指数(W−Product)が用いられている。
心筋負荷指数WPは、末梢側の血圧をPperiとし、心拍数をHRとすると、以下のように表される。
WP=Pperi×HR
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、末梢側の血圧値が高い場合でも大動脈起始部、すなわち、中枢側の血圧値が低い場合がある。さらに、これとは逆に末梢側の血圧値が低くい場合でも中枢側の血圧値が高い場合もあり、末梢側の血圧値は、必ずしも中枢側の血圧値に連動しているわけではない。
【0018】
ところで、心筋負荷指数は、本来心臓の負担がどの程度なのかを見るための指標とすべきものであるにもかかわらず、従来から行われているように末梢側で測定した血圧値(収縮期血圧)に基づいて心筋負荷指数を算出すると、心臓の負担を過大評価してしまうこともあるし、逆に過小評価してしまうという不具合があった。
【0019】
そこで、本発明の第1の目的は、簡易な構成で正確に中枢部血圧を推定することが可能な生体状態測定装置を提供することにある。
【0020】
また本発明の第2の目的は、実際の心筋負荷に対応するより正確な心筋負荷指数WPを算出することができる生体状態測定装置を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の構成は、生体の末梢部の脈波波形に基づいて前記生体の状態を測定する測定手段と、前記生体の状態をもとに、前記生体の中枢部から末梢部に至る動脈系の循環動態を表わす循環動態パラメータとして、大動脈の粘弾性を含む循環動態パラメータを算出する解析手段と、前記循環動態パラメータに基づいて前記生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出する大動脈血圧算出手段と、前記生体の心拍数を検出する心拍数検出手段と、前記大動脈起始部血圧の推定値及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する心筋負荷指数算出手段と、前記検出した心拍数の安静時の心拍数である基準心拍数に対する変動率が予め設定した基準心拍数変動率を越えたか否かを判別する判別手段と、を備え、前記心筋負荷指数算出手段は、前記判別に基づいて前記変動率が前記基準心拍数変動率以上の場合に、前記大動脈起始部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出することを特徴としている。
請求項2記載の構成は、請求項1記載の構成おいて、前記生体の末梢部血圧を非観血的に検出する末梢部血圧検出手段を有し、前記心筋負荷指数算出手段は、前記判別に基づいて前記変動率が前記基準心拍数変動率未満の場合に前記末梢部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出することを特徴としている。
請求項3記載の構成は、生体の末梢部の脈波波形に基づいて前記生体の状態を測定する測定手段と、前記生体の状態をもとに、前記生体の中枢部から末梢部に至る動脈系の循環動態を表わす循環動態パラメータとして、大動脈の粘弾性を含む循環動態パラメータを算出する解析手段と、前記循環動態パラメータに基づいて前記生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出する大動脈血圧算出手段と、前記生体の心拍数を検出する心拍数検出手段と、前記大動脈起始部血圧の推定値及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する心筋負荷指数算出手段と、を備え、前記心筋負荷指数算出手段は、前記算出した循環動態パラメータの所定のタイミングにおける前記循環動態パラメータである基準循環動態パラメータに対する変動率が予め設定したパラメータ基準変動率以上の場合に、前記大動脈起始部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出することを特徴としている。
請求項4記載の構成は、請求項3記載の構成おいて、前記生体の末梢部血圧を非観血的に検出する末梢部血圧検出手段を有し、前記心筋負荷指数算出手段は、前記判別に基づいて前記変動率が前記基準パラメータ変動率未満の場合に前記末梢部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出することを特徴としている。
【0027】
請求項5記載の構成は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の構成において、前記循環動態パラメータは、前記中枢部での血液粘性による血管抵抗,血液の慣性,前記末梢部での血管抵抗,前記末梢部での血管の粘弾性を含む、ことを特徴としている。
【0028】
請求項6記載の構成は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の構成において、前記血圧算出手段は、大動脈弁に対応するダイオードと,前記中枢部での血液粘性による血管抵抗に対応する第1の抵抗と,前記中枢部での血液の慣性に対応するインダクタンスと,前記大動脈の粘弾性に対応する第1の静電容量と,前記末梢部での血管抵抗に対応する第2の抵抗と,前記末梢部での血管の粘弾性に対応する第2の静電容量を有するモデルであって、一対の入力端子間に前記ダイオードと前記第1の静電容量の直列回路が接続され、一対の出力端子間に前記第2の静電容量及び前記第2の抵抗からなる並列回路が挿入され、前記第1の静電容量の両端子間と前記出力端子との間に前記第1の抵抗及び前記インダクタンスからなる直列回路が挿入されてなる五要素集中定数モデルにより前記動脈系の循環動態をモデル化して、前記循環動態パラメータを決定するとともに、前記第1の静電容量の両端子間の電圧波形を前記大動脈圧波形とする、ことを特徴としている。
【0029】
請求項7記載の構成は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の構成において、前記生体の状態は前記動脈系の末梢部における脈波であり、前記血圧算出手段は、前記生体の左心室圧に対応する電気信号が前記入力端子間に与えられたときに、前記脈波の波形に対応する電気信号が前記出力端子から得られるように、前記五要素集中定数モデルを構成する各素子の値を決定することを特徴としている。
【0030】
請求項8記載の構成は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の構成において、前記生体の状態は前記動脈系の末梢部における脈波であり、前記脈波の波形から該脈波のひずみを算出するひずみ算出手段を有し、前記血圧算出手段は、前記循環動態パラメータと前記脈波のひずみとの相関関係に基づいて前記循環動態パラメータを決定することを特徴としている。
【0031】
請求項9記載の構成は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の構成において、前記生体の1回拍出量を検出する1回拍出量検出手段を有し、前記血圧算出手段は、前記大動脈圧波形から得られる1回拍出量の計算値と、前記1回拍出量測定手段で測定された1回拍出量の実測値とが一致するように、前記循環動態パラメータの値を調整することを特徴としている。
【0032】
請求項10記載の構成は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の構成において、前記大動脈圧波形に基づいて前記生体の心臓の仕事量を算出する仕事量算出手段を有することを特徴としている。
【0044】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
第1実施形態
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0045】
[1] 血圧測定装置の概要構成
図1に第1実施形態による生体状態測定装置としての血圧測定装置の構成ブロック図を示す。
本第1実施形態では、非侵襲的なセンサによって人体から得た情報に基づいて、人体の動脈系の循環動態パラメータを評価し、得られた循環動態パラメータに基づいて中枢部における最高血圧、最低血圧、心筋負荷指数及び心仕事量を算出するが、循環動態パラメータの具体的内容については後述することとする。
【0046】
脈波検出装置1は、図2に示すように、被験者の手首へ装着された圧力センサS2を介して橈骨動脈波形を検出するとともに、被験者の上腕部に装着されたカフ帯S1を介して被験者の血圧を検出する。
そして、測定した橈骨動脈波形を血圧によって校正し、アナログ電気信号として出力する。このアナログ信号は、A/D(アナログ/デジタル)変換器3へ入力され、所定のサンプリング周期毎にデジタル信号に変換される。
【0047】
1回拍出量測定器2は、図2に示すように、カフ帯S1に接続されており、このカフ帯S1を介して、心臓から1回の拍で流出される血液の量である1回拍出量を測定し、その測定結果を1回拍出量データとしてデジタル信号で出力する。この種の測定器としては、いわゆる収縮期面積法により測定を行う装置を用いることができる。
【0048】
マイクロコンピュータ4は、A/D変換器3から取り込んだ脈波波形を格納するための波形メモリと、作業領域としての一時記憶メモリを内蔵している。
そして、マイクロコンピュータ4は、入力装置であるキーボード5から投入されたコマンドに従って、図6に示すような、各種の処理を行い、これら処理から得られた結果を出力装置6へ出力する。
【0049】
ここでは、処理の概要についてのみ説明し、それらの処理の詳細に関しては、動作説明の際に詳述することとする。
▲1▼ 脈波の測定データ読込処理(ステップS1)
a) A/D変換器3を介して得られる橈骨動脈波形の時系列デジタル信号を内蔵の波形メモリ(図示略)に取り込む。
b) 波形メモリへ取り込んだ橈骨動脈波形を”拍”毎に平均化して、1拍に対応した橈骨動脈波形(以下、平均波形と呼ぶ)を求める。
【0050】
▲2▼ 1回拍出量の測定データ読込処理(ステップS2)
1回拍出量データを、マイクロコンピュータ4内蔵の一時記憶メモリへ取り込む
▲3▼ パラメータ算出処理(ステップS3)
1拍に対応した橈骨動脈波形を表わす数式を求め、この数式に基づいて動脈系に対応した電気的モデルの各パラメータを算出する。
【0051】
▲4▼ データ算出処理(ステップS4)
得られた循環動態パラメータから、大動脈起始部における脈波波形を求めるとともに、大動脈起始部における最高血圧値,最低血圧値,心筋負荷指数WP及び心臓の仕事量を算出する。
▲5▼ 出力処理(ステップS5)
得られた循環動態パラメータ,最高血圧値,最低血圧値,心筋負荷指数WP及び心臓の仕事量を出力装置6へ出力する。
【0052】
[2] 出力装置の詳細構成
次に、出力装置6の詳細について図1を参照して説明する。
実測血圧表示部61は、橈骨動脈波形に基づいて実測された最高血圧、最低血圧および平均血圧を表示する。
【0053】
中枢部推定血圧表示部62は、後述する処理によって求められた中枢部の平均血圧E01、最高血圧Em’、最低血圧Eoを表示する。
警告表示部63は、横一列に配列された複数のLEDによって構成されており、これらLEDは、実測された最高血圧と中枢部の最高血圧Em’との差に対応して点灯する。
【0054】
すなわち、両者の差が±10mmHg以下であれば、「NORMAL」の緑色のLEDが点灯され、差が±10mmHgを越えた場合は「CAUTION」の赤色のLEDが点灯される。
【0055】
パラメータ表示部64は、マイクロコンピュータ4から静電容量Cc、電気抵抗Rc、インダクタンスL、静電容量C、電気抵抗Rp、左心室加圧時間ts、1拍の時間tp、1回拍出量SVおよび心仕事量Wsが供給されると、これらのパラメータを表示する。なお、これらパラメータの詳細については後述する。
CRTディスプレイ67は、橈骨動脈波形、左心室圧波形、大動脈圧波形等、各種の波形を表示する。
【0056】
プリンタ65は、プリント指令ボタン66が押下されると、実測血圧表示部61、中枢部推定血圧表示部62、警告表示部63、パラメータ表示部64に表示された各種のデータと、CRTディスプレイ67に表示された波形とを用紙にプリントアウトする。
【0057】
心筋負荷指数表示部68は、後述する処理によって求められた心筋負荷指数WPを表示する。
ここで、警告表示部63において警告表示を行う意義について説明する。
【0058】
先に図22〜図24について説明したように、推定された大動脈圧波形と橈骨動脈波形の最高血圧差には3つのタイプがある。そして、脈波波形が第1のタイプ(図22)である被験者は健康人である可能性が高く、第2および第3のタイプの場合は被験者が何らかの疾患を有している場合が多い。
【0059】
例えば、第2のタイプ(図23)は血流状態の異常に原因するもので、浮腫,肝腎疾患,呼吸器疾患,胃腸疾患,炎症性疾患などの疾患を有する可能性が高い。また、第3のタイプは、血管壁の緊張度の上昇に原因するもので、肝胆疾患,皮膚疾患,高血圧,疼痛性疾患などを有する可能性が高い。
【0060】
そこで、本実施形態にあっては、最高血圧差が異常であると考えられる場合に、赤色のLEDを点灯させて警告表示を行うこととしたものである。
なお、上記例にあっては、大動脈圧波形と橈骨動脈波形の最高血圧差に基づいて診断を行ったが、最高血圧差に代えて最低血圧差あるいは平均血圧差を用いてもよい。さらに、最高血圧差、最低血圧差および平均血圧差の全てを用いて診断を行ってもよいことは言うまでもない。
【0061】
[3] 五要素集中定数モデルについて
本第1実施形態では、動脈系の電気的モデルとして新たに「五要素集中定数モデル」を採用している。
この五要素集中定数モデルでは、人体の循環系の挙動を決定する要因のうち、特開平6−205747号(発明の名称:脈波解析装置)が開示する四要素集中定数モデルで採用されている中枢部での血液による慣性,中枢部での血液粘性による血管抵抗(粘性抵抗),末梢部における血管のコンプライアンス(粘弾性),末梢部における血管抵抗(粘性抵抗)の4つのパラメータに、新たなパラメータとして大動脈コンプライアンスを追加し、これらの5つのパラメータを電気回路としてモデリングしたものである。なお、コンプライアンスとは血管の軟度を表わす量である。
【0062】
図3(a)には、四要素集中定数モデルの回路図を示してあり、また、図3(b)には、五要素集中定数モデルの回路図を示してある。以下、五要素集中定数モデルを構成する各素子と各パラメータの対応関係を示す。
静電容量Cc :大動脈コンプライアンス〔cm5/dyn〕
電気抵抗Rc :動脈系中枢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm5〕
インダクタンスL:動脈系中枢部での血液の慣性 〔dyn・s2/cm5〕
静電容量C :動脈系末梢部での血管のコンプライアンス〔cm5/dyn〕
電気抵抗Rp :動脈系末梢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm5〕
【0063】
ここで、電気回路内の各部を流れる電流i,ip,ic,isは、各々対応する各部を流れる血 流〔cm3/s〕に相当する。中でも、電流iは大動脈血流であり、電流isは左心室から拍出される血流である。また、入力電圧eは左心室圧〔dyn/cm2〕に相当し、電圧v1は大動脈起始部の圧力〔dyn/cm2〕に相当する。さらに、静電容量Cの端子電圧vpは橈骨動脈部での圧力〔dyn/cm2〕に相当するものである。加えて、図3(b)に示すダイオードDは大動脈弁に相当するものであって、収縮期に相当する期間においてオン(弁が開いた状態)となり、拡張期に相当する期間ではオフ(弁が閉じた状態)となる。
【0064】
後述するように、本第1実施形態においては、これら5つのパラメータを一度に算出してしまうのではなく、静電容量Ccを除くパラメータを前述の文献に開示されている四要素集中定数モデルを用いて算出した後に、静電容量Ccを決定するようにしている。そこで、まず、図3(a)に示す四要素集中定数モデルの挙動についての理論的説明を行うこととする。
【0065】
同図(a)に示す四要素集中定数モデルにおいては、下記微分方程式が成立する。
v1=Rci+L(di/dt)+vp …(1)
ここで、電流iは、
i=ic+ip=C(dvp/dt)+(vp/Rp) …(2)
と表わすことができるから、式(1)は次式のように変形される。
v1=LC(d2vp/dt2)+{RcC+(L/Rp)}(dvp/dt)+{1+(Rc/Rp)}vp …(3)
【0066】
周知のように、式(3)によって示される2次の定係数常微分方程式の一般解は、式(3)を満足する特殊解(定常解)と、次式の微分方程式を満足する過渡解の和によって与えられる。
0=LC(d2vp/dt2)+{RcC+(L/Rp)}(dvp/dt)+{1+(Rc/Rp)}vp …(4)
【0067】
次に、微分方程式(4)の解は次のようにして得られる。まず、微分方程式(4)の解として次式によって表わされる減衰振動波形を仮定する。
vp=exp(st) …(5)
式(5)を式(4)に代入すると、式(4)は次のように変形される。
[LCs2+{RcC+(L/Rp)}s+{1+(Rc/Rp)}]vp=0…(6)
【0068】
式(6)をsについて解くと、
s=[−{RcC+(L/Rp)}±√{{RcC+(L/Rp)}2−4LC{1+(Rc/Rp)}}]/2LC …(7)
となる。
式(7)において、
{RcC+(L/Rp)}2<4LC{1+(Rc/Rp)} …(8)
である場合には、第2項の根号√の中が負となり、sは以下のようになる。
【0069】
ここで、減衰率をα,角周波数をωとしており、
である。そして、
A1=LC …(12)
A2=(L+RcRpC)/Rp …(13)
A3=(Rc+Rp)/Rp …(14)
とおくと、式(10),式(11)は以下のように表わすことができる。
α=(A2/2A1) …(15)
ω=√{(A3/A1)−α2} …(16)
【0070】
このようにしてsの値が確定し、微分方程式(4)を満足する解が得られる。
以上の知見に基づくことで、四要素集中定数モデルの応答波形に含まれる減衰振動成分を近似する式として、式(5)を用いることができる。
次に、大動脈起始部における圧力波形のモデリングを行う。一般に、大動脈起始部の圧力波形は図4の太線の如き波形であって、同図における時間tp は波形の1拍分の時間,時間tsは左心室の加圧時間である。四要素集中定数モデルでは、この圧力波形を図5に示す三角波で近似することにする。図5において近似波形の振幅と時間がEo,Em,tp,tp1で表わされるとすると、任意の時間tにおける大動脈圧v1は以下の式で表わされる。ここで、Eoは最低血圧(拡張期血圧)、Emは脈圧,(Eo+Em)は最高血圧(収縮期血圧),tpは1拍の時間、tp1は大動脈圧の立ち上がりから圧力が最低血圧値になるまでの時間である。
0≦t<tp1の区間:
v1=Eo+Em{1−(t/tp1)} …(17)
tp1≦t<tpの区間:
v1=Eo …(18)
【0071】
そして、式(17),式(18)によって表わされる電圧v1を図3(a)の等価回路へ入力した時の応答波形vp(即ち橈骨動脈波)は以下のようになる。
0≦t<tp1の区間:
tp1≦t<tpの区間:
【0072】
ここで、Eminは、脈波検出装置1が測定する橈骨動脈波形における最低の血圧値(後述する 図11を参照)である。
式(19)における右辺第3項および式(20)における右辺第2項が既述した式(5)の減衰振動成分であって、これらの項におけるαおよびωは式(15),式(16)により与えられている。なお、B,tb,Dm1,Dm2は後述する手順にしたがって算出される定数値である。
【0073】
次に、式(19),式(20)の各定数のうち、既に確定したα,ω以外のものについて検討する。まず、式(17),式(19)を微分方程式(3)に代入すると、次式が得られる。
【0074】
式(21)が成立するためには、以下の条件が必要となる。
【0075】
なお、式(24)および(25)はαおよびωを拘束するものであるが、既に式(15),式(16)により得られたα,ωはこれらの式を満足する。
一方、式(18),式(20)を微分方程式(3)に代入すると、次式が得られる。
【0076】
式(26)が成立するためには式(24),式(25)が成立することに加えて、次式が成立することが必要である。
Eo={1+(Rc/Rp)}Emin=A3Emin …(27)
次に、微分方程式(3)が成立するための条件式(22)〜(25),式(27)に基づいて、式(19),式(20)の各定数を算定する。
【0077】
まず、Eminは式(27)より次式のように得られる。
Emin=(EO/A3) …(28)
また、式(23)よりBは、
B=(tbEm)/(tp1A3) …(29)
となる。また、式(22)に式(29)を代入して、tbについて解くと、
tb=(tp1A3+A2)/(A3) …(30)となる。
【0078】
さらに、残りの定数Dm1,Dm2,θ1,θ2は、橈骨動脈波形vpがt=0,tp1,tpにおいて連続性を維持し得るような値、すなわち、下記に示す条件▲1▼〜▲4▼を満足する値が選ばれる。
▲1▼ 式(19)のvp(tp1)と式(20)のvp(tp1)とが一致すること
▲2▼ 式(20)のvp(tp)と式(19)のvp(0)とが一致すること
▲3▼ 式(19)および式(20)におけるt=tp1の微分係数が一致すること
▲4▼ 式(19)のt=0での微分係数と、式(20)のt=tpでの微分係数が一致すること
【0079】
すなわち、Dm1およびθ1は、
Dm1=√(D112+D122)/ω …(31)
θ1=tan-1(D11/D12) …(32)
なる値が選ばれる。ただし、
D11=(vO1−B−Emin)ω …(33)
D12=(vO1−B−Emin)α+(B/tp)+(iO1/C) …(34)
であり、vO1とiO1はt=0におけるvpとicの初期値である。
【0080】
また、Dm2およびθ2は、
Dm2=√(D212+D222)/ω …(35)
θ2=tan-1(D21/D22) …(36)
なる値が選ばれる。ただし、
D21=(vO2−Emin)・ω …(37)
D22=(vO2−Emin)・α+(iO2/C) …(38)
であり、vO2とiO2はt=tp1でのvpとicの初期値である。
【0081】
このようにして、式(19),式(20)の各定数が得られた。
さて、式(16)の角周波数ωから逆算することにより、血管抵抗RCは、
Rc=[L−2Rp√{LC(1−ω2LC)}]/CRp …(39)
となる。ここで、Rcが実数でかつ正となる条件は、
{4Rp2C}/{1+(2ωRpC)2}≦L≦(1/ω2C) …(40)
である。
【0082】
一般に、Rpは103[dyn・s/cm5]程度,Cは10-4[cm5/dyn]程度であり、ωは脈波に重 畳している振動成分の角周波数であるから10(rad/s)以上であるとみてよい。このため、式(40)の下限はほぼ1/(ω2C)と見なせる。そこで、簡略化のため、Lを近似的に、
L=1/(ω2C) …(41)
とおくと、Rcは、
Rc=L/(CRp) …(42)
となる。
【0083】
また、式(41),式(42)の関係より式(15)の減衰定数αは、
α=1/(CRp) …(43)
となる。
式(41)〜式(43)の関係を用いて、α,ω,Lによって四要素集中定数モデルの残りのパラメータを表わすと、
Rc=αL …(44)
Rp=(ω2L/α) …(45)
C=1/(ω2L) …(46)
となる。これらの式(44)〜式(46)より、パラメータはα,ω,Lが得られることにより確定することが明らかである。
【0084】
ここで、後述するようにα,ω,B,tbは橈骨動脈波の実測波形から得られ、Lは1回拍出量SVに基づいて算出できる。以下に1回拍出量SVに基づくLの算出手順について説明する。
まず、大動脈起始部の圧力波の平均値E01は次式により与えられる。
E01={Eotp+(tp1Em/2)}/tp …(47)
一方、Rc,Rp,α,ω,Lの間には次式が成立する。
Rc+Rp=αL+(ω2L/α)=(α2+ω2)L/α …(48)
【0085】
そして、四要素集中定数モデルを流れる平均電流,すなわち平均値E01,を(Rc+Rp)によって除算したものは、拍動により動脈を流れる血流の平均値(SV/tp)に相当するから、次式が成立する。
【0086】
このようにして得られた式(49)をLについて解くことにより、1回拍出量SVからLを求めるための式が次の通りに得られる。
L= α・{Eotp+(tp1Em/2)}/{(α2+ω2)SV} …(50)
なお、血流量を測定することにより式(49)中の平均電流(1/tp){Eotp+(tp1Em/2)}に相当する値を求め、この結果に基づいてインダクタンスLを算出してもよい。血流量を測定する装置としては、インピーダンス法によるもの,ドップラー法によるもの等が知られている。また、ドップラー法による血流量測定装置には、超音波を利用したもの,レーザを利用したもの等がある。
【0087】
[4] 循環動態パラメータの算出方法の原理説明
次に、五要素集中定数モデルに基づいた循環動態パラメータの算出方法の原理的な説明をおこなう。先に触れたように、循環動態パラメータの中のRc,Rp,C,Lが、四要素集中定数モデルを用いて決定されるので、これらのパラメータをもとに静電容量Ccの値を決定する。そのために、図3(b)における電流i,電流is,電圧v1,電圧vp等を求める必要がある。
【0088】
まず、左心室圧波形eを図4に示すような正弦波で近似する。すなわち、
ωs=π/ts
とおいて、左心室圧波形eを次式で表わす。
e=Em’ sinωst …(51)
ここで、Em’は最高血圧であって、図5で言えば(Em+Eo)に相当する。以下、図4に示すように、時間tがt1≦t<t2の収縮期とt2≦t<(tp+t1)の拡張期に場合分けして説明することとする。ここで、時刻t1,時刻t2は左心室圧波形と大動脈圧波形との交点における時刻である。
【0089】
[4.1] 収縮期
この場合、v1=eが成立するとともに、電圧v1と電流iについてはそれぞれ式(1)と式(2)が成立する。したがって、式(1)〜式(3)と式(12)〜式(14),式(51)から、次に示す微分方程式が成立する。
A1(d2vp/dt2)+A2(dvp/dt)+A3vp=Em’sinωst…(52)
【0090】
そこでまず、四要素集中定数モデルと同様にして、この微分方程式の定常解vpstを求める。そのために、定常解vpstを次式のように仮定する。
vpst=E1cosωst+E2sinωst …(53)
式(53)を式(52)のvpに代入して係数を比較することにより、次の2式が得られる。
(A3・ωs2A1)E1+ωsA2E2=0 …(54)
−ωsA2E1+(A3−ωs2A1)E2=Em’ …(55)
【0091】
これらの式を解くことにより、
E1=(−ωsA2Em’)/{(ωsA2)2+(A3−ωs2A1)2} …(56)
E2={(A3−ωs2A1)Em’}/{(ωsA2)2+(A3−ωs2A1)2}…(57)
が得られる。
【0092】
次に、式(52)の微分方程式の過渡解vptrを求める。そのために、
vptr=exp(λt)
とおいて、次式のvpへ代入する。
A1(d2vp/dt2)+A2(dvp/dt)+A3vp=0 …(58)
これにより、次式が得られる。
A1λ2+A2λ+A3=0 …(59)
【0093】
そこで、この式をλについて解くと次式が得られる。
【0094】
ここで、{A2/(2A1)}2<(A3/A1)とする(振動モード)と、次式が得られる。
【0095】
このとき、
β1=A2/(2A1) …(62)
ω1=√(A3/A1−β12 …(63)
である。
【0096】
ここで、さらに過渡解vptrを次式のように置く。
vptr=(a1cosω1t+ja2sinω1t)exp(−β1t)…(64)
すると、電圧vpは定常解と過渡解との和で表わされることから、式(53)と式(64)によって次式で与えられる。
vp=(E1cosωst+E2sinωst)+(a1cosω1t+ja2sinω1t)exp(−β1t)…(65)
【0097】
また、電流iは、式(65)を式(2)へ代入することによって、次式のように得られる。
【0098】
次に、t=t1のときのvp,iを各々v02,i0として次式の如く仮定する。
i0=J0+(a1J1+ja2J2)exp(−β1t1) …(68)
v02=P0+(a1P1+ja2P2)exp(−β1t1) …(69)
すると、式(65)〜式(69)より以下の式が成立する。
J0=(E1/Rp+ωsCE2)cosωst1+−ωsCE1+E2/Rp)・sinωst1 …(70)
J1={(1−β1CRp)/Rp}cosω1t1−ω1Csinω1t1…(71)
J2=ω1Ccosω1t1+{(1−β1CRp)/Rp}sinω1t1…(72)
P0=E1cosωst1+E2sinωst1 …(73)
P1=cosω1t1 …(74)
P2=sinω1t1 …(75)
【0099】
また、式(68)〜式(69)をa1,a2について解くと、次のようになる。
【0100】
さらに、式(71)〜式(75)から次式の関係が成立することがわかる。
J2P1−J1P2=ω1C …(78)したがって、式(64)に式(76)〜式(77)を代入し、その際に式(78)を用いると、過渡解vptrとして次式が得られる。
【0101】
ここで、
B1tr=v02−P0 …(81)
t’ =t−t1 …(82)
B2tr=−{(1−β1CRp)(v02−P0)−Rp(i0−J0)}/(ω1CRp) …(83)
とおくと、
vptr=(B1trcosω1t’+B2trsinω1t’) exp(−β1t’)…(84)
が得られる。
【0102】
結局、式(65)は次式のようになる。
【0103】
次に、前述した式(67)において
D1st=(E1/Rp)+ωsCE2 …(86)
D2st=−ωsCE1+(E2/Rp) …(87)
D1tr={(1−β1CRp)/Rp}B1tr+ω1CB2tr …(88)
D2tr=−ω1CB1tr+{(1−β1CRp)/Rp}B2tr …(89)
とする。
【0104】
すると、電流iとしては、
が得られる。
【0105】
また、電流isは、
is=Cc(dv1/dt)+i=ωsCcEm’cosωst+i …(91)
として得られる。
【0106】
[4.2] 拡張期
拡張期においては、ダイオードDがオフとなって、左心室圧eがダイオードDのカソード側の回路へ印加されなくなり、静電容量CCを流れる電流は、電流iと大きさが等しく、逆方向の電流となる。したがって、電圧v1は上述した式(1)で表わされるとともに、電流i,電流icはそれぞれ以下の式で表わされる。
i=−Cc(dv1/dt) …(92)
ic=C(dvp/dt) …(93)
【0107】
したがって、電圧vpは、
となる。
【0108】
また、i−ic=ip=vp/Rp であるから、
i=vp/Rp+C(dvp/dt) …(95)
となる。
【0109】
次に、式(1)に式(95)を代入して、得られた式の両辺を時間tで微分すると次式が得られ る。
【0110】
また、式(92)と式(95)から次式が導かれる。
dv1/dt=−{vp/Rp+C(dvp/dt)}/Cc …(97)
そして、式(96)と式(97)から次式が得られる。
【0111】
したがって、この式を変形すると次式が得られる。
(d3vp/dt3)+A1’(d2vp/dt2)+A2’(dvp/dt)+A3’vp=0 …(99)
ここで、
A1’=(L+CRcRp)/(LCRp) …(100)
A2’=(CcRc+CcRp+CRp)/(LCcCRp) …(101)
A3’=1/(LCcCRp) …(102)
【0112】
次に、vp=exp(λt)とおいて、これを式(99)へ代入すると次式が得られる。
(λ3+A1’λ2+A2’λ+A3’)exp(λt)=0 …(103)
さらに、以下のような定義をおこなう。
p=(A1’2/9)−(A2’/3) …(104)
q=−A1’3/27+(A1’A2’)/6−A3’/2 …(105)
u={q+√(q2−p3)}1/3 …(106)
v={q−√(q2−p3)}1/3 …(107)
α’=−(u+v)+A1’/3 …(108)
β2=(u+v)/2+A1’/3 …(109)
ω2=(u−v)√(3)/2 …(110)
λ1=−α’ …(111)
λ2=−β2+jω2 …(112)
λ3=−β2−jω2 …(113)
なお、(q2−p3)>0であれば振動モードである。
【0113】
そして、電圧vpをさらに次式のように仮定する。
【0114】
すると、式(95)へ式(114)を代入することにより、電流iは次式のように変形される。
【0115】
ここで、
g0=(1−α’CRp)/Rp …(116)
g1=(1−β2CRp)/Rp …(117)
g2=(ω2CRp)/Rp …(118)
【0116】
したがって、電圧v1は式(115)から次式のようになる。
【0117】
ここで、
f0=g0/(α’Cc) …(120)
f1=(β2g1−ω2g2)/{(β22+ω22)Cc} …(121)
f2=(ω2g1+β2g2)/{(β22+ω22)Cc} …(122)
次に、計算の簡略化を図るために、以後の説明においては、図4に示す時刻t2をt=0とおくことにする。そして、t=0における電圧v1,電圧vp,電流iを各々v01,v02,i0とすると、これらは式(119),式(114),式(115)のtをt=0とおくことで以下のように得られる。
v01=f0b1+(f1+jf2)b2+(f1−jf2)b3 …(123)
v02=b1+b2+b3 …(124)
i0=g0b1+(g1+jg2)b2+(g1−jg2)b3 …(125)
【0118】
次に、式(114)における第2項と第3項を変形することで、電圧vp は次式のようになる。
【0119】
ここで、
であって、
k1=v01−f0v02 …(130)
k2=i0−g0v02 …(131)
k3=g1−g0 …(132)
k4=f1−f0 …(133)
である。
【0120】
次いで、式(126)のvp を式(2)へ代入することにより、電流iは以下のようになる。
ここで、
D0={(1−α’CRp)/Rp}B0 …(135)
D1={(1−β2CRp)/Rp}B1+ω2CB2 …(136)
D2=−ω2CB1+{(1−β2CRp)/Rp}B2 …(137)
【0121】
したがって、式(134)から電圧v1は、
となる。ここで、
H0=D0/(α’Cc) …(139)
H1=(β2D1+ω2D2)/{(β22+ω22)Cc} …(140)
H2=(−ω2D1+β2D2)/{(β22+ω22)Cc} …(141)
【0122】
上述したように、以上の説明では時刻t2をt=0としていた。そこで、時間スケールを合わせるために、t→(t−t2)の置き換えを行う。これにより、電圧v1,電圧vp,電流iは各々式(138),式(126),式(134)から以下のように求められる。
【0123】
ここで、
Hm=√(H12+H22) …(145)
φ21=tan-1(H1/H2) …(146)
Bm=√(B12+B22) …(147)
φ22=tan-1(B1/B2) …(148)
Dm=√(D12+D22) …(149)
φ23=tan-1(D1/D2) …(150)
【0124】
ちなみに、拡張期における電流isは「0」である。
次いで、1回拍出量SVの理論値を求める。1回拍出量SVは、収縮期における電流isの面積で与えられることから、式(91)で示す電流isを時刻t1〜時刻t2について積分することによって得られる。すなわち、
【0125】
[5]脈波解析装置の動作
次に、本実施形態による脈波解析装置の動作を図6ないし図12を参照して説明する。
図6〜図10に、第1実施形態における脈波解析装置の動作を示すフローチャートを示す。
【0126】
また、図11に、上述した平均化処理により得られる平均波形の波形図を示す。
さらに図12に、後述するパラメータ算出処理により得られる橈骨動脈波形と、平均化処理により得られた平均波形とを対比した波形図を示す。
以下、これらの図を参照して動作説明を行うこととする。
【0127】
▲1▼ 脈波の測定データ読込処理(ステップS1)
(a) 脈波読取処理
循環動態パラメータの評価を行うに際して、被験者の診断を担当する診断者は、図2に示すようにカフ帯S1及び圧力センサS2を被験者に装着させ、測定開始のコマンドをキーボード5から入力する。マイクロコンピュータ4はこのコマンドに応答して、脈波の測定指示を脈波検出装置1へ送出する。
この結果、脈波検出装置1が橈骨動脈波を検出して、この橈骨動脈波を表わす時系列デジタル信号をA/D変換器3が出力する。マイクロコンピュータ4は、このデジタル信号を一定時間(約1分間)にわたって内蔵の波形メモリへ取り込む。このようにして、波形メモリには複数拍分の橈骨動脈波形が取り込まれる。
【0128】
(b) 平均化処理
次に、マイクロコンピュータ4は、複数拍分の橈骨動脈波形を1拍毎ごとに重ね合わせ、上記の一定時間における1拍当たりの平均波形を求める。そして、この平均波形を橈骨動脈波形の代表波形として内蔵メモリへ格納する。このようにして作成された平均波形の代表波形W1を、図11に例示する。
【0129】
▲2▼ 1回拍出量データ取込処理(ステップS2)
次いで、マイクロコンピュータ4は1回拍出量測定器2へ1回拍出量の測定指示を送る。この結果、1回拍出量測定器2が被験者の1回拍出量を測定し、その測定結果がマイクロコンピュータ4によって内蔵の一時記憶メモリへ取り込まれる。
【0130】
▲3▼ パラメータ算出処理(ステップS3)
つぎに、四要素集中定数モデルに基づいて、五要素集中定数モデルを構成する5つの循環動態パラメータのうち、静電容量Ccを除く4つの循環動態パラメータの決定を行う。
【0131】
マイクロコンピュータ4は、図7〜図8に示すパラメータ算出処理ルーチンを実行する。その際、当該ルーチンの実行に伴って、図9に示すα,ω算出処理ルーチンが実行され(ステップS109、S117)る。また、当該α,ω算出処理ルーチンの実行に伴って、図10に示すω算出ルーチンが実行される(ステップS203)。
【0132】
以下、これらのルーチンの処理内容について説明する。
まず、マイクロコンピュータ4は、図11に示すごとき橈骨動脈の平均波形について、血圧が最大となる第1ポイントP1に対応する時間t1’と血圧値y1,第1ポイントの後に血圧が一旦落込む第2ポイントに対応する時間t2’と血圧値y2,2番目のピーク点である第3ポイントP3に対応する時間t3’と血圧値y3,1拍分の時間tp,最低血圧値Emin(上述した式(3)と式(4)の第1項に相当する)を求める(ステップS101)。
【0133】
なお、脈波が”なだらか”であって第2ポイントP2や第3ポイントP3を区別するのが困難であれば、第2ポイントと第3ポイントの時間を各々t2’=2t1’、t3’=3t1’と想定する。
次に、処理を簡略化するために、図13に示すA点の血圧値y0を用いて血圧値y1〜y3の正規化処理を行い(ステップS102,S103)、B点の値を(y0/2)−0.1に初期設定する(ステップS104)。
【0134】
次いで、以下の手順に従ってB,tb,α,ωの最適値を決定する。
(a) まず、Bを
「(y0/2)〜y0」
の範囲で変化させ、同時に、tbを
「(tp/2)〜tp」
の範囲で変化させる。その際、Bとtbは何れも+0.1間隔で変化させるようにする。そして、B及びtbの各々について、
|vp(t1’)−y1|,
|vp(t2’)−y2|,
|vp(t3’)−y3|
が最小となるα,ωを求める。
【0135】
(b) (a)において求めたB,tb,α,ωの中で
|vp(t1’)−y1|,
|vp(t2’)−y2|,
|vp(t3’)−y3|
が最小となるB,tb,α,ωを求める。
【0136】
(c) (b)において求めたB,tbを基準にして、Bについては
B±0.05,
tbについては
tb±0.05
の範囲で、上記の(a),(b)の処理を再実行する。
【0137】
(d) 上記(a)〜(c)の処理の際、αは3〜10の範囲を0.1間隔で変化させ、各αについて最適なωを算出する。
またωは、各αにおいて、
dvp(t2’)/dt=0
となる点について二分法を用いて求める(図10のフローチャートを参照)。
【0138】
なお、上記の各処理におけるvpの値の演算に際して、式(33)の初期値vo1は零とする。
以上のような処理によって、B,tb,α,ωが最終的に決定される。
【0139】
(e) tp1,Em,Eoを式(28)〜式(30),式(44)〜式(46)に基づいて算出する(ステップS123、S124)。
(f) 式(50)を用いて、測定した1回拍出量SVをもとにLの値を算出し(ステップS125)、残りのパラメータRc,Rp,Cを式(44)〜式(46)から求める(ステップS126)。
【0140】
次に、五要素集中定数モデルに基づいて、最後の循環動態パラメータである静電容量Ccを決定する。
その際、1回拍出量SVの計算値と実測値が一致するように静電容量Ccを決定する方法と、計算脈波の最低血圧と実測脈波の最低血圧とが一致するように静電容量Ccを決定する方法とが考えられる。そこで、各々の方法について場合を分けて説明する。
【0141】
▲3▼−1 1回拍出量SVの計算値と実測値とが一致するように静電容量Cc(大動脈コンプライアンス)を決定する方法
最初に、1回拍出量SVの計算値と実測値とが一致するように静電容量Ccを決定するための具体的な方法について説明する。
まず初めに、静電容量Ccの値を、四要素集中定数モデルにより算出した静電容量Cをもとに、次式のように推定する。また、その他の循環動態パラメータ,すなわちRc,Rp,C,Lの値は、四要素集中定数モデルで得られたものを用いる。
Cc=10・C …(153)
次いで、これらの循環動態パラメータを用いて、1回拍出量SVの計算値を式(152)によって算出する。
【0142】
その際、左心室加圧時間tsは、四要素集中定数モデルによって得られた1拍の時間tpから、次式によって推定することとする。
ts=(1.52−1.079tp)tp …(154)
この関係式は、心エコーで左心室の収縮時間を測定した結果から得られた実験式であって、図14に示すように、相関係数としては−0.882が得られている。また、最高血圧Em’については、四要素集中定数モデルにより得られた値を用いる(式(22),式(28)を参照)。
【0143】
また、時刻t1,時刻t2に関しては、左心室内圧=大動脈圧の関係から求めることができる。さらに、前述したようにv02とi0はt=t1におけるvp,iの値であるから、式(85),式(90)に存在するtへt1を代入することで、v02とi0を得ることができる。
次に、上記のようにして求めた1回拍出量SV計算値が、1回拍出量測定器2から取り込んだ測定値と一致するように静電容量Ccの値を決定する。すなわち、静電容量Ccの値を式(153)で求めた初期値から所定の範囲内で変化させてゆく。そして、1回拍出量の測定値と、各静電容量Ccの値から計算された計算値とを比較して、測定値の整数部分と計算値の整数部分が一致するかどうかを調べる。もし整数部分に一致が見られれば、測定値と計算値とが一致したものと見なし、静電容量Ccが決定されてパラメータ算出処理が終了する。
【0144】
一方、静電容量Ccの値を調整しただけでは1回拍出量の測定値と計算値に一致が見られない場合には、調整した静電容量Ccの値の中で、1回拍出量の測定値と計算値との差分が最小であった静電容量Ccの値を最終的な値とする。次いで、最高血圧Em’の値を±3mmHgの範囲内で1mmHg毎に変化させて、上記と同様に1回拍出量の測定値と計算値との一致の有無を調べる。もし、一致が見られる最高血圧Em’が存在すれば、その値を最終的な最高血圧Em’として、パラメータ算出処理を終える。
【0145】
他方、最高血圧Em’の値を調整しても、まだ1回拍出量の測定値と計算値に一致が見られない場合には、さらに抵抗Rpの値を調整する。そこで、調整した最高血圧値Em’の値の中で、1回拍出量の測定値と計算値との差分が最小であった最高血圧値Em’の値を最終的な値とする。次いで、抵抗Rpを例えば10[dyn・s/cm5]刻みで増減させて、1回拍出量の測定値と計算値との差分が最も小さい値を最終的な抵抗Rpの値に決定する。
【0146】
以上説明した過程を実現するフローチャートの一例を図31に示す。なお、プログラム中で所定の範囲内で変動されるパラメータに対しては、元々のパラメータ名に対して下添字の「v」を付けた。
【0147】
▲3▼−2 計算脈波の最低血圧と実測脈波の最低血圧とが一致するように静電容量Ccを決定する方法
次に、計算脈波の最低血圧と実測脈波の最低血圧とが一致するように静電容量Ccを決定する方法について説明する。
この場合において、従来は、収縮期時間QTを初期値として用いて静電容量Ccを決定していた。
【0148】
この初期値として用いる収縮期時間QTの算出方法としては、従来は、被験者の心電図より収縮期時間QTを予め求めたり、心電図あるいは脈波波形より得た心拍数HRから収縮期時間QTを求める回帰式を用いて算出したりしていた。
そして、この予め得られた収縮期時間QTに対して、左心室加圧時間tsvを「QT+0.1〔sec〕」〜「QT+0.2〔sec〕」の範囲で「0.01〔sec〕」間隔で変化させ、同時に最高血圧Emv’を「Eo+Em−20〔mmHg〕」〜「Eo+Em+20〔mmHg〕」の範囲で「1mmHg」間隔で変化させる、すなわち、これら左心室加圧時間tsvおよび最高血圧Emv’の各々に対して、451通りの組合せが想定され、これら各組合せにおいて、計算脈波の最低血圧と実測脈波の最低血圧とが一致するような静電容量Ccが計算する構成としていた。
【0149】
しかしながら、上記従来の心電図から収縮期時間QTを求める方法においては、予め心電図を採取する必要があり、装置構成が大型化、複雑化してしまうという問題点があった。
また、心拍数HRから回帰式を用いて収縮時間QTを求める方法においては、正確な回帰式を求めることが困難であるという問題点があった。
【0150】
図33に、一般的な脈波波形を示す。
ところで、脈波波形は、心臓の収縮・拡張によって生じる血液流の脈動を末梢部で測定したものであるから、その波形形状には、心臓の動きが反映されている。図中のEED(Estimated Ejection Duration)は概略駆出期間と呼ばれ、1回の心拍中に心臓から血液が流れ出る時間、ひいては、収縮期時間QTに対応している。
【0151】
そこで、本実施形態においては、この収縮期時間QTに代えて、概略駆出時間EED(Estimated Ejection Duration)を用い、この概略駆出時間EEDに対して、左心室加圧時間tsvを「EED+0.1〔sec〕」〜「EED+0.2〔sec〕」の範囲で「0.01〔sec〕」間隔で変化させ、同時に最高血圧Emv’を「Eo+Em−20〔mmHg〕」〜「Eo+Em+20〔mmHg〕」の範囲で「1mmHg」間隔で変化させる。
【0152】
すなわち、これら左心室加圧時間tsvおよび最高血圧Emv’の各々に対して、451通りの組合せが想定されることになる。これら各組合せにおいて、計算脈波の最低血圧と実測脈波の最低血圧とが一致するような静電容量Ccが計算される。
この結果、各被験者自身の末梢部における圧脈波波形によるEEDを用いて循環動態をパラメータを求めることができるため、心電計が不要となるなど装置構成を簡略化でき、被験者の循環動態を反映したより正確な循環動態パラメータを算出することができるのである。
【0153】
次に、各組合せにおける計算脈波のサンプリング値をP1(t)とし、実測脈波のサンプリング値をP2(t)としたとき、各組合せにおける波形平均誤差εは下式により求まる。そして、波形平均誤差εが最も小さい場合における静電容量Cc(大動脈コンプライアンス)が採用される。以上説明した過程を実現するフローチャートの一例を図32に示す。
ε=Σt=0tp(|P2(t)−P2(t)|)/(N) …(155)
【0154】
以上のようにして、1回拍出量の測定値と計算値が一致する循環動態パラメータが全て決定されたことになる。
ここで、32歳の男性を被験者とした場合について橈骨動脈波形から算出した循環動態パラメータ等の値を以下に示す。
静電容量Cc = 0.001213〔cm5/dyn〕
電気抵抗Rc = 98.768〔dyn・s/cm5〕
インダクタンスL = 15.930〔dyn・s2/cm5〕
静電容量C = 0.0001241〔cm5/dyn〕
電気抵抗Rp = 1300.058〔dyn・s/cm5〕
左心室加圧時間ts = 0.496〔s〕
1拍の時間tp = 0.896〔s〕
1回拍出量SV = 83.6〔cc/拍〕
最高血圧Em’ = 117.44〔mmHg〕
また、図12に示す通り、算出したパラメータから求めた橈骨動脈の計算波形と実測波形とは良く一致していることがわかる。
【0155】
▲5▼ データ算出処理(ステップS4)
さらに、循環動態パラメータL,C,Cc,Rc,Rpの値等をもとにして、大動脈圧波形が求められる。すなわち、収縮期にあっては式(51)を用い、拡張期にあっては式(142)を用いることにより、電圧v1の波形を1拍分(すなわち、時刻0〜時刻tp或いは時刻t1〜時刻(t1+tp))だけ計算する。
【0156】
そして、次に、得られた大動脈起始部の波形の時刻t1における値をこれらの式から算出して、その算出結果を最低血圧値Eoとする。
次に先に求めた最高血圧値Em‘に心拍数HR(=60/tp)を乗じることにより、心筋負荷指数WPを算出する。
【0157】
▲6▼ データ出力処理(ステップS5)
次にマイクロコンピュータ4は、パラメータ算出処理により得られた循環動態パラメータL,C,Cc,Rc,Rpを出力装置6へ出力し、出力装置上に表示する。
また、得られた計算波形を出力装置6へ出力して大動脈圧波形の表示を行う。さらに最高血圧値Em’、心筋負荷指数WPを最低血圧値Eoと一緒に出力装置6へ送出して、これらの値を出力装置6上に表示させる。
【0158】
[6] 第1実施形態のまとめ
ところで、従来の血圧測定装置では、橈骨動脈部,上腕部等の末梢側において血圧を測定しており、心臓の負担を間接的に測定する手法であると言える。ところが、心臓の負担の変化が末梢側の血圧に反映されているとは限らないのであって、心臓の負担を末梢側で見るということは、必ずしも的確なものとは言えない。
【0159】
このようなことから、本第1実施形態では、とりわけ中枢部の血圧波形が心臓の負担を見る上で重要であることに着目し、大動脈起始部(動脈系の中枢部)の血圧波形を末梢側で測定した脈波波形から推定して求めるようにしている。そして、推定された大動脈圧波形から、大動脈起始部における最高血圧値,最低血圧値並びに心筋負荷指数WPを算出すれば、これらの値が心臓の負担を直接的に表わす指標となりうる。
【0160】
このように、本実施形態によれば、各種の循環動態パラメータとともに、中枢側の最高血圧,最低血圧,心筋負荷指数、大動脈圧波形を診断者や被験者に対して示すことができる。
【0161】
なお、式(51)は左心室圧波形そのものを示すことから、中枢部における圧波形として、上述した大動脈圧波形の代わりに左心室圧波形を出力装置6へ表示させるようにしても良い。
【0162】
第2実施形態
上記第1実施形態では、橈骨動脈波形と1回拍出量から循環動態パラメータの各値を算出することとした。しかるに、上述したように、1回拍出量の検出を行うには、被験者がカフ帯S1を装着する必要があるため、被験者にとって煩わしいものと言える。
【0163】
そこで、本第2実施形態では、橈骨動脈波形の形状によって大動脈圧が変化するという現象に着眼して、波形の形状をひずみ率で代表させて中枢側の血圧値等を推定するものである。すなわち、本実施形態では、橈骨動脈波形から得られるひずみ率dをもとにして循環動態パラメータを導出する。
【0164】
まず、マイクロコンピュータ4は、第1実施形態と同様にして、▲1▼脈波読み取り処理と▲2▼平均化処理を実施して、橈骨動脈波形の1拍分の平均波形を求める。次に、この平均波形に対して周知のFFT(高速フーリエ変換)処理を施すことによって、脈波のフーリエ解析を行う。そして、解析の結果として得られた周波数スペクトルから、基本波の振幅A1,第2高調波の振幅A2,第3高調波の振幅A3,…,第n高調波の振幅Anを求める。なお、n(nは自然数)の値は、高調波の振幅の大きさを考慮して適宜決定するものとする。そして、これらの振幅値をもとにして、次式で定義されるひずみ率dを算出する。
ひずみ率d=(A22+A32+…+An2)1/2/A1 …(156)
【0165】
次いで、得られたひずみ率dから循環動態パラメータを推定する。推定にあたっては、橈骨動脈波形のひずみ率と循環動態パラメータの各値の間に相当程度の相関関係があるという知見に基づいて行う。すなわち、予め多数の被験者についてひずみ率dと循環動態パラメータとを測定して、ひずみ率と各循環動態パラメータの間の関係式を導出しておく。ここで、ひずみ率dと循環動態パラメータRC,Rp,L,Cの測定結果との相関関係の一例を、図25〜図28に示しておく。なお、大動脈コンプライアンスCCに関しては図示していないが、他の四つのパラメータと同様に相関係数と関係式を求めることができる。
【0166】
そして、上記の式(156)で算出したひずみ率dと図25〜図28に各々図示した関係式に基づいて、循環動態パラメータRc,Rp,L,C,Ccを計算する。
次いで、第1実施形態における▲5▼および▲6▼の出力処理と同様にして、算出した循環動態パラメータから、大動脈圧波形の1拍分の波形を求めるとともに、大動脈起始部における最低血圧値Eo、最高血圧値Em‘及び心筋負荷指数WPを算出して、これらを出力装置6上へ表示させる。
【0167】
第3実施形態
本第3実施形態は、大動脈起始部における最高血圧値、最低血圧値あるいは心筋負荷指数WPに加え、上記のようにして求めた大動脈起始部の血圧波形から、心臓の仕事量(以下、心仕事量と呼ぶ)を算出して、これを表示させるものである。
【0168】
この心仕事量は、心臓の負担を表わす1指標であって、1回拍出量と大動脈圧との積で定義され、1分あたりの心拍出量を仕事量に換算したものである。
ここで、1回拍出量は、1回の拍動で心臓から送り出される血流量で定義され、心臓から出る血流波形の面積に相当するものである。この1回拍出量は、大動脈圧波形の収縮期の面積と相関があり、大動脈圧波形に対して収縮期面積法を適用することで1回拍出量を求めることができる。
【0169】
すなわち、まず、心臓の収縮期に対応する部分の脈波波形の面積Sを算出する。これを図29の脈波波形で説明すると、脈波の立ち上がりの部分から窪み(ノッチ)に至る領域の面積,即ち同図でハッチングを付した部分が、面積Sに相当する。次いで、所定の定数をKとすると、1回拍出量SVを次式によって算出することができる。
1回拍出量SV[ml]=面積S[mmHg・s]×定数K
【0170】
一方、心拍出量は、心臓から1分間に送り出される血流量で定義される。したがって、心拍出量は1回拍出量を1分間に換算することで得られる。すなわち、心拍出量は、1回拍出量と心拍数の積によって求められる。
本実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態の▲5▼の出力処理において、マイクロコンピュータ4が、算出された左心室圧波形をもとに心仕事量を算出して出力装置6へ表示する。その他の処理は、第1実施形態或いは第2実施形態と同じであり、その説明は省略する。
【0171】
ここで、マイクロコンピュータ4は、以下に示す手順によって心仕事量Wsを算出する。
まず、wsをe・isで定義すると、これは式(51),式(90),式(91)から次式のように算出される。
【0172】
ここで、式(157)における第1項,第2項,第3項をそれぞれw1,w2,w3とすると、各々は以下の式のように変形される。
【0173】
次に、式(82)より
とおき、
ωst−ω1t’=(ωs−ω1)t+ω1t1=ωbt+Φ …(165)
とおく。
【0174】
すなわち、
ωa=ωs+ω1 …(166)
ωb=ωs−ω1 …(167)
Φ =ω1t1 …(168)
である。
【0175】
すると、式(163)は次式のようになる。
【0176】
次に、W1,W2,W3をそれぞれ以下のように定義し、式(161),式(162),式(169)から以下の式を導出する。
【0177】
仕事量Wsは、上記のW1,W2,W3の総和を”分”あたりに換算して得られることから、最終的に次式で表わされる。
Ws=(W1+W2+W3)×10-7×60/tp〔J/分〕 …(176)
大動脈起始部における最高血圧値,最低血圧値及び心筋負荷指数WPに加えて、以上説明したような心仕事量を表示する意味は次のようなものである。
【0178】
大動脈圧波形をもとに上述した心仕事量を求めることで、心臓の負担を表わす指標として、大動脈起始部の最高血圧値,最低血値値あるいは心筋負荷指数WPとは別の有用な指標を提供することも可能となる。
ここで、心仕事量を算出することによる意義について以下に例を挙げて説明することとする。
【0179】
いま、患者へ降圧剤を投与して高血圧の治療を行う場合を考えてみる。通常、薬が効いているのであれば、橈骨動脈部で測定される最高血圧値,最低血圧値に変化が現れて薬の効果を確認することができる。
ところが、最高血圧値,最低血圧値に変化が見られない場合であっても、実際には薬が効いていて、心臓の負荷自体は軽くなっていることがある。
これは、降圧剤の役割としては動脈系のどこかで心臓の負荷を小さくしていれば良く、必ずしも橈骨動脈部における血圧が下がっている必要はないからである。
【0180】
このように、橈骨動脈部等の動脈系の末梢部における血圧値に顕著な変化が見られない場合であっても、大動脈起始部の血圧波形から求めた心仕事量を算出することで、真の心臓の負担を知ることが可能となるのである。
ところで、このような心臓の負担の変化は、大動脈起始部の血圧波形を子細に検討することで見い出せるのではあるが、心仕事量を算出することによって微妙な波形の変化を定量的に表現できるようになるのである。
【0181】
したがって、最高血圧値や最低血圧値ばかりでなく、心筋負荷指数WP及び心仕事量を求めてこれを表示することによって、降圧剤療法の評価をいっそうきめ細かく行うことが可能となるのである。
図22〜図24に上述した第1ないし第3のタイプの各脈波形状について心仕事量を算出した結果を示す。
【0182】
第4実施形態
以上の第1ないし第3実施形態においては、心筋負荷指数WPを算出するに際しては、常に大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいていたが、本第4実施形態は末梢部血圧と大動脈起始部血圧との差を無視することが可能な心拍数範囲では、大動脈起始部血圧に代えて末梢部血圧を用い、末梢部血圧と大動脈起始部血圧との差を無視することができない心拍数範囲では、大動脈起始部血圧を用いることにより、全体として演算処理の軽減を図るための実施形態である。
【0183】
一般に心拍数が増加すると、大動脈起始部血圧と末梢部血圧との差は大きくなることが知られている。
そこで本第4実施形態においては、心拍数の変動範囲が所定の基準心拍数変動範囲内である場合には、末梢部血圧(最高血圧)及び検出した心拍数を用いて心筋負荷指数WPを求め、心拍数の変動範囲が基準心拍数変動範囲以上となった場合には、大動脈起始部血圧(最高血圧)及び検出した心拍数を用いて心筋負荷指数を求めることとした。
【0184】
より具体的には、安静時におけるヒトの心拍数(もちろん、個人差を有する)である基準心拍数に対する心拍数変動は、±10[%]程度である。
従って、例えば、実際の心拍数変動が安静時の基準心拍数に対して±10[%]未満であるならば、末梢部血圧と大動脈起始部血圧との差を無視することが可能であると判断して末梢部血圧Pperi及び心拍数HRに基づいて次式により心筋負荷指数WPを算出する。
WP=Pperi×HR
一方、実際の心拍数変動が安静時の基準心拍数に対して、測定誤差マージンを考慮した±15[%]以上となった場合には、末梢部血圧と大動脈起始部血圧との差を無視することができないと判断して、大動脈起始部血圧Pcent及び心拍数HRに基づいて次式により心筋負荷指数WPを算出することとなる。
WP=Pcent×HR
これにより本第4実施形態によれば、実際の心拍数変動が安静時の基準心拍数に対して所定範囲未満であれば、末梢部血圧を用いて心筋負荷指数WPを算出することとなるので、常に大動脈起始部血圧を用いて心筋負荷指数を算出する場合と比較して、処理を簡略化し、処理速度の向上を図ることが可能となる。
【0185】
また、実際の心拍数変動が安静時の基準心拍数に対して所定範囲以上であれば、循環動態パラメータに基づいて算出した大動脈起始部血圧を用いて心筋負荷指数WPを算出することとなるので、末梢部血圧を用いて心筋負荷指数WPを算出する場合と比較してより正確な心筋負荷指数を算出することが可能となる。
このように本第4実施形態によれば、全体として処理を簡略化することができるにも拘わらず、常に正確な心筋負荷指数WPを算出することが可能となる。
【0186】
第5実施形態
上記第1実施形態ないし第3実施形態においては、所定のタイミングで常時、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数WPを算出する構成としていたが、大動脈起始部血圧があまり変化したとは考えられない場合には、必ずしも心筋負荷指数WPを継続的に算出する必要はないと考えられる。
【0187】
そこで、本第5実施形態は、大動脈起始部血圧が大きく変化したと考えられる場合にのみ新たに心筋負荷指数WPを算出し、大動脈起始部血圧があまり変化したとは考えられない場合には、心筋負荷指数WPの算出を行わずに前回求めた心筋負荷指数WPを保持、表示することにより演算処理量を低減するための実施形態である。
【0188】
ところで、大動脈起始部血圧を算出するためには、それに先だって循環動態パラメータの算出が必要である。
この場合において、今回求めた循環動態パラメータの前回(あるいは複数回前)に求めた循環動態パラメータに対する変化(変化率)が小さい場合には、今回求めた循環動態パラメータにより得られるであろう大動脈起始部血圧の前回に求めた循環動態パラメータにより得られるであろう大動脈起始部血圧に対す変化(変化率)も小さいと考えられる。
【0189】
そこで、本第5実施形態においては、今回求めた循環動態パラメータと前回求めた循環動態パラメータとを比較し、各循環動態パラメータの変化率が予め定めた基準変化率未満である場合には、大動脈起始部血圧の算出、ひいては、心筋負荷指数WPの算出を行わずに前回(あるいは複数回前)に求めた心筋負荷指数を保持し、表示を継続する。
【0190】
また、今回求めた循環動態パラメータと前回求めた循環動態パラメータとを比較し、各循環動態パラメータの変化率が予め定めた基準変化率以上である場合には、今回求めた循環動態パラメータに基づいて大動脈起始部血圧の算出並びに心筋負荷指数WPの算出を行うものである。
【0191】
より具体的には、今回もとめた循環動態パラメータと前回(あるいは複数回前)に求めた循環動態パラメータとを比較し、各循環動態パラメータの変化率が±5[%]以上である場合には大動脈起始部血圧の算出及びこの算出した大動脈起始部血圧に基づく心筋負荷指数WPの算出を行う。
【0192】
一方、各循環動態パラメータの変化率が±5[%]未満の場合には、大動脈起始部血圧の算出及び心筋負荷指数WPの算出を行わず、前回(あるいは複数回前)に求めた心筋負荷指数を保持し、表示を継続する。
この結果、本第5実施形態によれば、不必要な演算を行う必要がなくなり、演算処理量を低減し、処理を簡略化して、全体的な処理速度の向上を図ることが可能となる。
【0193】
実施形態の変形例
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。例えば、1回拍出量SVの測定を行うことなく循環動態パラメータを求める形態も考えられる。
すなわち、この実施形態によれば、循環動態パラメータのうちのインダクタンスLは固定値とすることとして、被験者から測定した橈骨動脈脈波の波形のみに基づいて、その他の循環動態パラ メータの値を算出するようにする。このようにすれば、図1の構成において必要とされた1回拍出量測定器2を、図15に示す如く省略することが可能となる。したがって、この実施形態における測定の態様は、図16に示されるように、図2で必要とされたカフ帯S1が不要となっている。
【0194】
ところで、このようにインダクタンスLの値を固定してしまうと、実測した1回拍出量を用いた方法に比して、得られる循環動態パラメータの精度が低下する。そこでこの点を補うため、図17に示すように、測定により得られた橈骨動脈波形(測定波形)W1と計算により得られた橈骨動脈波形(計算波形)W2とを重ねて出力装置6に表示させる。そして、まず、インダクタンスLの値を上記の固定値に設定して計算波形W2を求め、この波形を出力装置6に表示させて測定波形W1との波形の一致の程度を見る。次に、診断者が、上記の固定値とは異なる適当な値をインダクタンスLとして決めて、再度、計算波形W2を求めて測定波形W1との一致の程度を出力装置6上で見る。そして、以後は、診断者が上記と同様にインダクタンスLの値を幾つか適当に決めて、それぞれのインダクタンスLの値について計算波形W2を求め、出力装置6上で計算波形W2の各々と測定波形W1とを比較する。そして、これらの計算波形W2の中で測定波形W1と最も良く一致する波形を一つ選んで、その時のインダクタンスLの値を最適値として決定する。
【0195】
なお、大動脈起始部の圧波形のモデルとしては、上述した三角波の代わりに台形波を使用することが考えられる。このようにすると、三角波で近似する場合に比べて実際の圧波形により近い波形となるため、さらに正確な循環動態パラメータを算出することができる。
【0196】
また、脈波や1回拍出量の測定箇所は、図2や図16に示す場所に限られるものではなく、被験者の体の如何なる部位であっても良い。すなわち、上述した実施形態では、被験者の上腕部にカフ帯S1を装着させた測定態様としたが、被験者の利便を考えるとカフ帯を使用しない形態が好ましいと言える。
【0197】
その一例として、手首において橈骨動脈波形と1回拍出量の双方を測定する形態が考えられる。この種の構成例としては、図18に示すように、血圧測定用のセンサおよび1回拍出量測定用のセンサからなるセンサ12を腕時計11のベルト13に装着するとともに、脈波解析装置のうちセンサ12以外の構成部分10を腕時計11の本体部分に内蔵させた構成が考えられる。そして、図に示すように、センサ12が取り付け具14によってベルト13へ摺動自在に取り付けられており、被験者が腕時計11を手首にはめることで、センサ12が適度な圧力で橈骨動脈部へ押し当てられるようになっている。
【0198】
また、指において脈波と1回拍出量とを測定する形態も考えられるのであって、この形態による装置の構成例を図19に示す。同図に示すように、血圧測定用のセンサおよび1回拍出量測定用のセンサからなるセンサ22を指(この図の例では人差し指)の根元に取り付けるとともに、脈波解析装置のうちセンサ22以外の構成部分10を腕時計21に内蔵させてリード線23,23を介してセンサ22へ接続してある。
【0199】
さらに、これら2つの測定形態を組み合わせることによって、手首において1回拍出量を測定するとともに指において脈波を測定する形態,指において1回拍出量を測定するとともに手首において橈骨動脈波を測定する形態を実現することが可能となる。
【0200】
そして、これらの如くカフ帯なしの構成とすることで被験者が腕をまくらずに済み、測定にあたって被験者の負担が軽減される。
他方、カフ帯だけを用いた形態として図20に示す構成が考えられる。同図に示すように、血圧測定用のセンサおよび1回拍出量測定用のセンサからなるセンサ32と、脈波解析装置のうちセンサ32以外の構成部分10とを、カフ帯によって被験者の上腕部へ固定させており、図2と比較しても簡易な構成となっていることがわかる。
【0201】
また、上記の実施形態においては、循環動態パラメータを算出するにあたって脈波を用いることとしたが、これに限定されるものではなく、その他の生体の状態を用いることが可能なことは言うまでもない。
以上の実施形態においては、算出した循環動態パラメータに基づく大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成としていたが、生体の末梢部血圧あるいは生体の末梢部の脈波波形に基づいて、生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出すれば、算出方法の如何を問わず、同様に大動脈起始部血圧の推定値及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出することが可能である。
【0202】
例えば、循環動態パラメータに基づいて算出した大動脈起始部血圧に代えて、生体の末梢部の脈波波形からGTF(Genelal Transfer Function)等の予め求めた所定の伝達関数に基づいて生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出し、この算出した大動脈起始部血圧の推定値及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するように構成することも可能である。
この場合において、所定の伝達関数としては、万人に適用可能な一般的な伝達関数に限らず、特定の生体に固有の補正を加えた伝達関数を用いることも可能である。
【0203】
実施形態の効果
本実施形態によれば、算出した循環動態パラメータに基づく大動脈起始部血圧の推定値及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、末梢部血圧を用いて心筋負荷指数を算出する場合と比較して、より広範な条件下で、最適な心筋負荷指数を算出することが可能となる。
【0204】
また、心拍数の変動率が基準心拍数変動率以上の場合に、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、常に大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成と比較して、より処理を簡略化することができ、処理の高速化を図ることができる。
【0205】
さらに心拍数の変動率が基準心拍数変動率未満の場合に末梢部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成によれば、正確な心筋負荷指数を得られるにも拘わらず、処理を簡略化することが可能となる。
さらにまた、算出した循環動態パラメータの基準循環動態パラメータに対する変動率が予め設定したパラメータ基準変動率以上の場合に、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成によれば、心筋負荷指数があまり変化しない状態においては、不必要に演算処理を行うことがないので、処理の簡略化を図ることができる。
【0206】
また、循環動態パラメータの変動率が基準パラメータ変動率未満の場合に末梢部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成によれば、正確な心筋負荷指数を得られるにも拘わらず、処理を簡略化することが可能となる。
さらに生体の末梢部血圧あるいは生体の末梢部の脈波波形に基づいて、生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出し、生体の心拍数を検出し、大動脈起始部血圧の推定値及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成によれば、簡易、正確、かつ、迅速に心筋負荷指数を算出することが可能となる。
【0207】
さらにまた、生体の末梢部の脈波波形及び所定の伝達関数に基づいて生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出し、生体の心拍数を検出し、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成によれば、簡易、正確、かつ、迅速に心筋負荷指数を算出することが可能となる。
【0208】
【発明の効果】
本発明によれば、循環動態パラメータを算出するに際し、前記概略駆出期間を初期値として算出した左心室加圧時間を用いることにより、心電計が不要となるなど装置構成を簡略化でき、被験者の循環動態を反映したより正確な循環動態パラメータを算出することができるので、得られた循環動態パラメータに基づいて生体の大動脈起始部血圧の推定値をより正確に算出することができる。
【0209】
また、生体の末梢部血圧あるいは生体の末梢部の脈波波形に基づいて、生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出し、生体の心拍数を検出し、大動脈起始部血圧の推定値及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、簡易、正確、かつ、迅速に心筋負荷指数を算出することが可能となる。
【0210】
また、生体の末梢部の脈波波形及び所定の伝達関数に基づいて生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出し、生体の心拍数を検出し、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、簡易、正確、かつ、迅速に心筋負荷指数を算出することが可能となる。
【0211】
さらに、算出した循環動態パラメータに基づく大動脈起始部血圧及び心電図などにより別個に検出した心拍数あるいは脈波波形から検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、末梢部血圧を用いて心筋負荷指数を算出する場合と比較して、より広範な条件下で、最適な心筋負荷指数を算出することが可能となる。
【0212】
また心筋負荷指数算出手段は、心拍数の変動率が基準心拍数変動率以上の場合に、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、常に大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する構成と比較して、より処理を簡略化することができ、処理の高速化を図ることができる。
【0213】
さらにまた、心筋負荷指数算出手段は、心拍数の変動率が基準心拍数変動率未満の場合に末梢部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、正確な心筋負荷指数を得られるにも拘わらず、処理を簡略化することが可能となる。
【0214】
また心筋負荷指数算出手段は、算出した循環動態パラメータの基準循環動態パラメータに対する変動率が予め設定したパラメータ基準変動率以上の場合に、大動脈起始部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、心筋負荷指数があまり変化しない状態においては、不必要に演算処理を行うことがないので、処理の簡略化を図ることができる。
【0215】
さらに心筋負荷指数算出手段は、循環動態パラメータの変動率が基準パラメータ変動率未満の場合に末梢部血圧及び検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出するので、正確な心筋負荷指数を得られるにも拘わらず、処理を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態による脈波解析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 第1実施形態における脈波検出装置,1回拍出量測定器を用いた測定態様を示す図である。
【図3】 (a)は、人体の動脈系をモデル化した四要素集中定数モデルを示す回路図、(b )は同じく五要素集中定数モデルを示す回路図である。
【図4】 左心室圧波形と大動脈起始部の血圧波形とを示す図である。
【図5】 大動脈起始部の血圧波形をモデル化した波形を示す図である。
【図6】 第1実施形態における脈波解析装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【図7】 第1実施形態における脈波解析装置のパラメータ算出処理の動作を示すフローチャートである。
【図8】 第1実施形態における脈波解析装置のパラメータ算出処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】 第1実施形態における脈波解析装置のα,ω算出処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】 第1実施形態における脈波解析装置のω算出処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】 第1実施形態における脈波解析装置の平均化処理により得られた橈骨動脈波形を例示する波形図である。
【図12】 第1実施形態における脈波解析装置の演算処理により得られた橈骨動脈波形と平均化処理により得られた橈骨動脈波形とを重ね表示した波形図である。
【図13】 第1実施形態における脈波解析装置の平均化処理により得られた橈骨動脈波形へ適用する正規化の処理内容を説明する図である。
【図14】 左心室加圧時間tsと1拍の時間tpとの相関を示す図である。
【図15】 第2実施形態による脈波解析装置の構成を示すブロック図である。
【図16】 第2実施形態における脈波検出装置を用いた測定態様を示す図である。
【図17】 第2実施形態において、出力装置に表示される橈骨動脈波の測定波形と計算波形の重ね表示を示す図である。
【図18】 センサを除く脈波解析装置の構成部分を腕時計に内蔵させ、センサを腕時計のバンドへ装着させた形態の斜視図である。
【図19】 センサを除く脈波解析装置の構成部分を腕時計に内蔵させ、センサを指の根元に装着させた形態の斜視図である。
【図20】 センサを除く脈波解析装置の構成部分とセンサをカフ帯によって上腕部に取り付けた形態の構成図である。
【図21】 本発明の第3実施形態による血圧測定装置の構成を示すブロック図である。
【図22】 第1のタイプの脈波における大動脈圧波形(点線)と橈骨動脈波形(実線)の関係を表わす図である。
【図23】 、第2のタイプの脈波における大動脈圧波形(点線)と橈骨動脈波形(実線)の関係を表わす図である。
【図24】 第3のタイプの脈波における大動脈圧波形(点線)と橈骨動脈波形(実線)の関係を表わす図である。
【図25】 中枢部血管抵抗Rcとひずみ率dの関係を表わす図である。
【図26】 末梢部血管抵抗Rpとひずみ率dの関係を表わす図である。
【図27】 血流による慣性Lとひずみ率dの関係を表わす図である。
【図28】 コンプライアンスCとひずみ率dの関係を表わす図である。
【図29】 収縮期面積法を説明した図である。
【図30】 従来の技術による血圧測定装置の構成を示す図である。
【図31】 静電容量Ccを求めるプログラムのフローチャートである。
【図32】 静電容量Ccを求める他のプログラムのフローチャートである。
【図33】 脈波波形の説明図である。
【符号の説明】
1 脈波検出装置
2 1回拍出量測定器
3 A/D変換器
4 マイクロコンピュータ
5 キーボード
6 出力装置
7 モニタ
61 実測血圧表示部
62 中枢部推定血圧表示部
63 警告表示部
64 パラメータ表示部
65 プリンタ
66 プリント指令ボタン
67 CRTディスプレイ
68 心筋負荷指数表示部
Claims (10)
- 生体の末梢部の脈波波形に基づいて前記生体の状態を測定する測定手段と、
前記生体の状態をもとに、前記生体の中枢部から末梢部に至る動脈系の循環動態を表わす循環動態パラメータとして、大動脈の粘弾性を含む循環動態パラメータを算出する解析手段と、
前記循環動態パラメータに基づいて前記生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出する大動脈血圧算出手段と、
前記生体の心拍数を検出する心拍数検出手段と、
前記大動脈起始部血圧の推定値及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する心筋負荷指数算出手段と、
前記検出した心拍数の安静時の心拍数である基準心拍数に対する変動率が予め設定した基準心拍数変動率を越えたか否かを判別する判別手段と、
を備え、前記心筋負荷指数算出手段は、前記判別に基づいて前記変動率が前記基準心拍数変動率以上の場合に、前記大動脈起始部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1記載の生体状態測定装置において、
前記生体の末梢部血圧を非観血的に検出する末梢部血圧検出手段を有し、
前記心筋負荷指数算出手段は、前記判別に基づいて前記変動率が前記基準心拍数変動率未満の場合に前記末梢部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 生体の末梢部の脈波波形に基づいて前記生体の状態を測定する測定手段と、
前記生体の状態をもとに、前記生体の中枢部から末梢部に至る動脈系の循環動態を表わす循環動態パラメータとして、大動脈の粘弾性を含む循環動態パラメータを算出する解析手段と、
前記循環動態パラメータに基づいて前記生体の大動脈起始部血圧の推定値を算出する大動脈血圧算出手段と、
前記生体の心拍数を検出する心拍数検出手段と、
前記大動脈起始部血圧の推定値及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する心筋負荷指数算出手段と、
を備え、前記心筋負荷指数算出手段は、前記算出した循環動態パラメータの所定のタイミングにおける前記循環動態パラメータである基準循環動態パラメータに対する変動率が予め設定したパラメータ基準変動率以上の場合に、前記大動脈起始部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項3記載の生体状態測定装置において、
前記生体の末梢部血圧を非観血的に検出する末梢部血圧検出手段を有し、
前記心筋負荷指数算出手段は、前記判別に基づいて前記変動率が前記基準パラメータ変動率未満の場合に前記末梢部血圧及び前記検出した心拍数に基づいて心筋負荷指数を算出する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の生体状態測定装置において、
前記循環動態パラメータは、前記中枢部での血液粘性による血管抵抗,血液の慣性,前記末梢部での血管抵抗,前記末梢部での血管の粘弾性を含む、
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の生体状態測定装置において、
前記大動脈血圧算出手段は、大動脈弁に対応するダイオードと,前記中枢部での血液粘性による血管抵抗に対応する第1の抵抗と,血液の慣性に対応するインダクタンスと,前記大動脈の粘弾性に対応する第1の静電容量と,前記末梢部での血管抵抗に対応する第2の抵抗と,前記末梢部での血管の粘弾性に対応する第2の静電容量を有するモデルであって、一対の入力端子間に前記ダイオードと前記第1の静電容量の直列回路が接続され、一対の出力端子間に前記第2の静電容量及び前記第2の抵抗からなる並列回路が挿入され、前記第1の静電容量の両端子間と前記出力端子との間に前記第1の抵抗及び前記インダクタンスからなる直列回路が挿入されてなる五要素集中定数モデルにより前記動脈系の循環動態をモデル化して、前記循環動態パラメータを決定するとともに、前記第1の静電容量の両端子間の電圧波形を前記大動脈圧波形とする、
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の生体状態測定装置において、
前記生体の状態は前記動脈系の末梢部における脈波であり、
前記血圧算出手段は、前記生体の左心室圧に対応する電気信号が前記入力端子間に与えられたときに、前記脈波の波形に対応する電気信号が前記出力端子から得られるように、前記五要素集中定数モデルを構成する各素子の値を決定する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の生体状態測定装置において、
前記生体の状態は前記動脈系の末梢部における脈波であり、
前記脈波の波形から該脈波のひずみを算出するひずみ算出手段を有し、
前記血圧算出手段は、前記循環動態パラメータと前記脈波のひずみとの相関関係に基づいて前記循環動態パラメータを決定する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の生体状態測定装置において、
前記生体の1回拍出量を検出する1回拍出量検出手段を有し、
前記血圧算出手段は、前記大動脈圧波形から得られる1回拍出量の計算値と、前記1回拍出量測定手段で測定された1回拍出量の実測値とが一致するように、前記循環動態パラメータの値を調整する
ことを特徴とする生体状態測定装置。 - 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の生体状態測定装置において、
前記大動脈圧波形に基づいて前記生体の心臓の仕事量を算出する仕事量算出手段を有する
ことを特徴とする生体状態測定装置。
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