JP3832527B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子や振動子に使用されるニオブ酸リチウム(LN)、ニオブ酸タンタル(LT)あるいはレーザ発振装置に用いられるNd:YAG等の単結晶を回転引上げ法により製造する単結晶の製造方法に係り、特に、原料融液に対する過熱が防止されて製造プロセス時間の短縮とルツボ寿命の延長が図れると共に、製造コストの低減も図れる単結晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、LN(ニオブ酸リチウム:LiNbO3 )やLT(ニオブ酸タンタル:LiTaO3 )あるいはNd:YAG(Nd3+:Y3Al5O12)等の高融点酸化物単結晶材料の大型結晶は、通常、回転引上げ(CZ)法により製造されている。また、これ等の原料は一般に融点が高いことから、この製造方法に適用されるルツボには白金やイリジウム等高融点の貴金属ルツボが使用されている。
【0003】
ところで、単結晶の回転引上げ法は、例えば、図4に示すような製造装置を用いて行われている。すなわち、この製造装置aは、その外側が保温材bにより覆われ内部に原料cが投入されるルツボdと、上記保温材bの外側に配置されルツボd内の原料を加熱する高周波加熱コイルeと、上記ルツボdの上方側に昇降可能に設けられその先端に種結晶fが保持されると共に矢印方向へ回転する引上げ軸gとでその主要部が構成されており、かつ、これ等構成部材は図示外の密封された圧力容器内に組込まれている。
【0004】
そして、この製造装置を用いてニオブ酸リチウム(LN)等の単結晶を製造するには、まず、上記ルツボd内に原料cを投入して充填した後、高周波加熱コイルeに通電して上記ルツボdを高周波誘導加熱法により発熱させ、ルツボd内の原料cをその融点以上の温度に加熱して融解させる。
【0005】
次に、上記引上げ軸gを降下させて融解した原料融液の中心部に種結晶fとなるLN等の単結晶片を接触させる。そして、ルツボdに投入する高周波電力を調節して種結晶fを中心に原料融液を徐々に固化させると同時に、上記種結晶fを回転させながら上昇させるという操作を連続的に行うことにより、略円筒形状の大型単結晶hが製造されるものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、回転引上げ法の上記一連の工程の内、原料融解作業における融解終了時点の判定は、従来、オペレータが原料の様子を観察しながら決定するマニュアル操作によって行われていた。このため、上記判定操作を誤る場合があり、以下のような問題を生じていた。
【0007】
まず、上記判定が早過ぎて原料の融解が不十分であると、原料温度が低過ぎることに起因して種結晶fを原料融液に付けると同時に結晶の急激な固化が始まったり、あるいは原料融液表面に浮遊している微結晶粉が種結晶fに付着する等して多結晶化が生ずる問題を有していた。
【0008】
反対に上記判定が遅過ぎて原料融液の温度が上がり過ぎた場合には、原料融液に付けられる種結晶fが融解されて単結晶の育成が困難になるため、原料融液を適正な温度まで低下させる必要が生ずる。この際、ルツボd内に充填された原料の量が多い場合には熱容量が大きくなり、原料融液の温度がスムーズに下がらなくなるため、その分、時間のロスとなり、単結晶の製造プロセス時間が長くなる問題を有していた。
【0009】
更に、原料融液を過熱(オーバーヒート)させるとルツボに対し不要な熱ストレスを与えることになるため、ルツボの変形やクラックを誘発してルツボ寿命が短縮されてしまう問題を有していた。
【0010】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、上記原料の融解終了時点の判定が正確になされ、これにより原料融液に対する過熱が防止されて製造プロセス時間の短縮とルツボ寿命の延長が図れると共に、製造コストの低減も図れる単結晶の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
ルツボ内に収容された原料融液から回転引上げ法により単結晶を製造する単結晶の製造方法を前提とし、
上記原料温度を測定するための温度センサをルツボに設けると共に、この温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、上記二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点として原料融液の温度制御を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
そして、この請求項1記載の発明に係る単結晶の製造方法によれば、
ルツボに設けられた温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、この二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点としているため、原料の融解終了時点をオペレータのマニュアル操作に頼っていた従来法に較べその終了時点をより正確に判定できるようになり、この結果、ルツボ内の原料を加熱する高周波加熱コイルに投入する高周波電力を調節して原料融液に対する過熱を防止することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明と較べ原料の融解終了時点をより正確に判定できる単結晶の製造方法に関する。
【0014】
すなわち、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る単結晶の製造方法を前提とし、
温度の時間に対する上記二次微分値が負から正となり、かつ、その温度変化速度が0.1℃/min 以上の条件を満たした時点を上記原料の融解終了時点とすることを特徴とするものである。
【0015】
次に、請求項3〜4に係る発明は、LNやLTあるいはNd:YAG等の高融点酸化物単結晶の製造方法に本発明が適用された場合、使用するルツボや結晶の種類を特定した発明に関する。
【0016】
すなわち、請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る単結晶の製造方法を前提とし、
上記ルツボが、貴金属ルツボであることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1、2または3記載の発明に係る単結晶の製造方法を前提とし、
上記単結晶が、LN(LiNbO3 )、LT(LiTaO3 )若しくはNd:YAG(Nd3+:Y3Al5O12)であることを特徴とするものである。
【0017】
尚、本発明はLNやLTあるいはNd:YAG等の高融点酸化物単結晶の製造方法に適しているが、これ等高融点酸化物単結晶の製造に限定されるものではなく、他の単結晶(すなわち白金やイリジウム等の貴金属ルツボを使用しなくても製造できる単結晶)の製造にも当然のことながら適用可能である。
【0018】
また、上記ルツボに対する温度センサの配置部位については、ルツボ内の原料温度を測定できる部位なら基本的に任意であり、例えば、上記ルツボの底部若しくは側面、あるいはルツボ内部等の部位が挙げられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る単結晶の製造方法を実施するために使用される製造装置の概略を示す説明図である。
【0021】
すなわち、この製造装置は、その外側が保温材1により覆われ内部に原料2が投入されるルツボ3と、このルツボ3の底部に付設されルツボ3内の原料温度をモニターするための温度センサ4と、上記保温材1の外側に配置されかつ高周波電源5に接続されると共に上記ルツボ3を高周波誘導加熱する高周波加熱コイル6と、上記温度センサ4に接続されこの温度センサ4から出力される信号により原料2の温度を読取るデジタル温度計7と、このデジタル温度計7に接続されデジタル温度計7から出力される信号により温度の時間に対する微分値(温度の変化)及び温度の時間に対する二次微分値を演算しかつ得られた演算情報に基づき上記高周波電源5の適正な電力情報を出力するマイクロコンピュータ8と、このマイクロコンピュータ8に接続されマイクロコンピュータ8から出力される情報信号により上記高周波電源5の高周波電力値を制御する高周波電力調節器9とでその主要部が構成されており、かつ、従来の装置と同様に上記ルツボ3の上方側には図示外の引上げ軸が配設されていると共に、これ等の構成部材は密封された圧力容器(図示せず)内に組み込まれている。
【0022】
尚、上記温度センサ4の種類については特に限定されないが、原料2の融点温度に耐えかつ成長の雰囲気や原料融液と反応したり侵されたりせず、安定して温度信号を提供するものでなければならない。そして、育成させる単結晶が上述したLNやLT単結晶の場合には、JISに規定されたRないしBタイプの熱電対を適用するのが一般的であるが、光を使用したファイバセンサやパイロメータ等も当然のことながら利用することができる。
【0023】
ここで、図2は、この製造装置を用いて原料を融解させた際、原料の融解過程においてルツボ3底部に付設された熱電対(温度センサ4)により読み取られたルツボ3底部の温度変化と、高周波加熱コイル6に通電された高周波電源5における高周波電力の変化をそれぞれプロットしたグラフ図である。
【0024】
そして、この図2から、上記ルツボ3底部の温度変化は主に3つの領域に分けられることが確認される。
【0025】
第一領域は、ルツボ底部の温度が高周波電力の上昇に応じて上昇する領域である。また、第二領域は、高周波電力が増加するにも拘らずルツボ底部の温度の上昇速度が鈍くなる領域である。また、第三領域は、高周波電力が一定であるにも拘らずルツボ底部の温度が急激に上昇する領域である。
【0026】
この3つの領域は、温度の時間に対する微分、すなわち温度変化をみると図3のグラフ図に示すような形となることから容易に区別することができる。すなわち、第一領域では温度変化は徐々に増加するが、第二領域では減少し、更に第三領域では急増する。
【0027】
本発明者の詳細な観察によれば、第一領域では高周波電力により高周波加熱コイル6を介しルツボ3に投入された熱エネルギーは原料2とルツボ3周辺の耐火物の温度上昇に消費されるのみであり原料2の融解はほとんど起きていない。しかし、第二領域になるとルツボ3に接触する部分から原料2の融解が始まり、これにより原料の融解熱に大量のエネルギーが消費されることから温度の上昇速度は低下する。第三領域では原料2が全て融解し、融解熱の消費がなくなった結果、原料融液の温度は急激に上昇することが明らかとなった。
【0028】
そして、これ等の技術的知見に基づき、ルツボ底部の温度を連続かつ詳細に測定し、これ等を分析して第三領域に至った時点を検出した後、上記高周波加熱コイルに投入している高周波電力を予め設定された適正値に速やかに低下させることにより、原料融液の過熱(オーバーヒート)を完全に防止することが可能となる。
【0029】
ここで、原料融液の温度が上記第二領域から第三領域に遷移したことを判断する条件には、次のようなパラメータが考えられる。
【0030】
(1)原料融液の温度がある値に到達したとき。
【0031】
(2)原料融液温度の時間に対する二次微分値が負から正になったとき。
【0032】
しかし、上記判断基準(1)は、温度センサの取り付け位置や熱電対の劣化の影響を受けるためその再現性と精度に問題がある。
【0033】
そこで、本発明においては上記判断基準(2)を採用することで上記第二領域から第三領域への遷移点を精度よく検出できるようにしている。
【0034】
但し、実際の温度変化速度には若干の変動がみられるため、判断基準(2)のみでは第二領域から第三領域への遷移点を判断し損なう場合も起こり得る。
【0035】
そこで、上記判断基準(2)に温度変化速度が0.1〜1℃/min 以上、すなわち0.1℃/min 以上になるとする条件を追加することで、更に再現性よく上記遷移点が検出されることを可能にしている(請求項2)。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0037】
図1に示した製造装置を用いてLT(LiTaO3 )単結晶の成長を試みた。また、育成には直径150mmφ、高さ150mm、厚さ3mmのイリジウム製ルツボ3を使用し、約5kgのLT粉末をルツボ3内に充填した。尚、原料の加熱融解は高周波誘導加熱により行い、かつ、育成の雰囲気は2%の酸素が添加された窒素雰囲気とした。
【0038】
また、原料融液の温度をモニターする温度センサ4にはBタイプの熱電対を使用した。尚、LTの融点は1700℃以上であり、熱電対をルツボに直接接触させると劣化が激しいため、上記熱電対はルツボ3底部の中心部に耐火物(図示せず)を介して設置した。この熱電対の出力電圧はデジタル温度計7により温度信号に変換させた後、マイクロコンピュータ8に取り込んだ。温度変化と温度の時間に対する二次微分は読み込まれた温度を基に計算により求めた。
【0039】
そして、上記マイクロコンピュータ8と高周波電源5の高周波電力調節器9は通信回線で結び、ルツボ3の加熱に使用される高周波電力の大きさは上記マイクロコンピュータにより制御した。すなわち、高周波電力を3kW/hの速度で18kWまで上昇させて原料を融解し、温度の上昇速度が一度減少した後再び上昇に転じ、その上昇速度が0.5℃/min となった時点で高周波電力を15kWに低下させ、原料融液の温度が適正に収まるか否かを測定した。
【0040】
このときに使用した15kWの電力値は、実際には製造装置における炉の構成により大きく変動する。従って、成長炉の構成を変更した場合には、予め適切な高周波電力値を求めておく必要がある。
【0041】
そして、この実施例による場合と、原料の融解終了時点をマニュアル操作により判定する従来例とで、『原料融液のオーバーヒートの大きさ(℃)』、『融解開始からシーディング(結晶成長)できるまでの時間(min )』及び『ルツボ寿命(本数)』についてそれぞれ比較調査した。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
この表1から明らかなように、実施例の場合にはマニュアル操作の場合に較べ原料融液のオーバーヒートの最大幅を約1/5に減少させることができた。
【0044】
また、この結果、シーディングを始める時間がマニュアル操作の場合に較べて約40分短縮され、この余分な時間を結晶育成に利用することにより同じ時間内でより長尺の単結晶を育成させることが可能となった。
【0045】
更に、ルツボ寿命をマニュアル操作の場合に較べて約50%延長させることも可能となった。
【0046】
これ等の結果、LNやLT等の高融点酸化物単結晶の製造コストを約10%削減させることが可能となった。
【0047】
【発明の効果】
請求項1〜4記載の発明に係る単結晶の製造方法によれば、
ルツボに設けられた温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、この二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点としているため、原料の融解終了時点をオペレータのマニュアル操作に頼っていた従来法に較べその終了時点をより正確に判定できるようになり、この結果、原料融液の温度制御が適正になされるようになることから原料融液に対する過熱(オーバーヒート)を防止することが可能となる。
【0048】
このため、製造プロセス時間の短縮とルツボ寿命の延長が図れると共に、製造コストの低減も図れる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る単結晶の製造方法を実施するために使用される製造装置の概略を示す説明図。
【図2】回転引上げ法による単結晶の製造方法において投入する高周波電力及びルツボ底部の温度と時間との関係を示すグラフ図。
【図3】回転引上げ法による単結晶の製造方法においてルツボ底部の温度変化と時間との関係を示すグラフ図。
【図4】単結晶の回転引上げ法に適用される製造装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
1 保温材
2 原料
3 ルツボ
4 温度センサ
5 高周波電源
6 高周波加熱コイル
7 デジタル温度計
8 マイクロコンピュータ
9 高周波電力調節器
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子や振動子に使用されるニオブ酸リチウム(LN)、ニオブ酸タンタル(LT)あるいはレーザ発振装置に用いられるNd:YAG等の単結晶を回転引上げ法により製造する単結晶の製造方法に係り、特に、原料融液に対する過熱が防止されて製造プロセス時間の短縮とルツボ寿命の延長が図れると共に、製造コストの低減も図れる単結晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、LN(ニオブ酸リチウム:LiNbO3 )やLT(ニオブ酸タンタル:LiTaO3 )あるいはNd:YAG(Nd3+:Y3Al5O12)等の高融点酸化物単結晶材料の大型結晶は、通常、回転引上げ(CZ)法により製造されている。また、これ等の原料は一般に融点が高いことから、この製造方法に適用されるルツボには白金やイリジウム等高融点の貴金属ルツボが使用されている。
【0003】
ところで、単結晶の回転引上げ法は、例えば、図4に示すような製造装置を用いて行われている。すなわち、この製造装置aは、その外側が保温材bにより覆われ内部に原料cが投入されるルツボdと、上記保温材bの外側に配置されルツボd内の原料を加熱する高周波加熱コイルeと、上記ルツボdの上方側に昇降可能に設けられその先端に種結晶fが保持されると共に矢印方向へ回転する引上げ軸gとでその主要部が構成されており、かつ、これ等構成部材は図示外の密封された圧力容器内に組込まれている。
【0004】
そして、この製造装置を用いてニオブ酸リチウム(LN)等の単結晶を製造するには、まず、上記ルツボd内に原料cを投入して充填した後、高周波加熱コイルeに通電して上記ルツボdを高周波誘導加熱法により発熱させ、ルツボd内の原料cをその融点以上の温度に加熱して融解させる。
【0005】
次に、上記引上げ軸gを降下させて融解した原料融液の中心部に種結晶fとなるLN等の単結晶片を接触させる。そして、ルツボdに投入する高周波電力を調節して種結晶fを中心に原料融液を徐々に固化させると同時に、上記種結晶fを回転させながら上昇させるという操作を連続的に行うことにより、略円筒形状の大型単結晶hが製造されるものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、回転引上げ法の上記一連の工程の内、原料融解作業における融解終了時点の判定は、従来、オペレータが原料の様子を観察しながら決定するマニュアル操作によって行われていた。このため、上記判定操作を誤る場合があり、以下のような問題を生じていた。
【0007】
まず、上記判定が早過ぎて原料の融解が不十分であると、原料温度が低過ぎることに起因して種結晶fを原料融液に付けると同時に結晶の急激な固化が始まったり、あるいは原料融液表面に浮遊している微結晶粉が種結晶fに付着する等して多結晶化が生ずる問題を有していた。
【0008】
反対に上記判定が遅過ぎて原料融液の温度が上がり過ぎた場合には、原料融液に付けられる種結晶fが融解されて単結晶の育成が困難になるため、原料融液を適正な温度まで低下させる必要が生ずる。この際、ルツボd内に充填された原料の量が多い場合には熱容量が大きくなり、原料融液の温度がスムーズに下がらなくなるため、その分、時間のロスとなり、単結晶の製造プロセス時間が長くなる問題を有していた。
【0009】
更に、原料融液を過熱(オーバーヒート)させるとルツボに対し不要な熱ストレスを与えることになるため、ルツボの変形やクラックを誘発してルツボ寿命が短縮されてしまう問題を有していた。
【0010】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、上記原料の融解終了時点の判定が正確になされ、これにより原料融液に対する過熱が防止されて製造プロセス時間の短縮とルツボ寿命の延長が図れると共に、製造コストの低減も図れる単結晶の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
ルツボ内に収容された原料融液から回転引上げ法により単結晶を製造する単結晶の製造方法を前提とし、
上記原料温度を測定するための温度センサをルツボに設けると共に、この温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、上記二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点として原料融液の温度制御を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
そして、この請求項1記載の発明に係る単結晶の製造方法によれば、
ルツボに設けられた温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、この二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点としているため、原料の融解終了時点をオペレータのマニュアル操作に頼っていた従来法に較べその終了時点をより正確に判定できるようになり、この結果、ルツボ内の原料を加熱する高周波加熱コイルに投入する高周波電力を調節して原料融液に対する過熱を防止することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明と較べ原料の融解終了時点をより正確に判定できる単結晶の製造方法に関する。
【0014】
すなわち、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る単結晶の製造方法を前提とし、
温度の時間に対する上記二次微分値が負から正となり、かつ、その温度変化速度が0.1℃/min 以上の条件を満たした時点を上記原料の融解終了時点とすることを特徴とするものである。
【0015】
次に、請求項3〜4に係る発明は、LNやLTあるいはNd:YAG等の高融点酸化物単結晶の製造方法に本発明が適用された場合、使用するルツボや結晶の種類を特定した発明に関する。
【0016】
すなわち、請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る単結晶の製造方法を前提とし、
上記ルツボが、貴金属ルツボであることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1、2または3記載の発明に係る単結晶の製造方法を前提とし、
上記単結晶が、LN(LiNbO3 )、LT(LiTaO3 )若しくはNd:YAG(Nd3+:Y3Al5O12)であることを特徴とするものである。
【0017】
尚、本発明はLNやLTあるいはNd:YAG等の高融点酸化物単結晶の製造方法に適しているが、これ等高融点酸化物単結晶の製造に限定されるものではなく、他の単結晶(すなわち白金やイリジウム等の貴金属ルツボを使用しなくても製造できる単結晶)の製造にも当然のことながら適用可能である。
【0018】
また、上記ルツボに対する温度センサの配置部位については、ルツボ内の原料温度を測定できる部位なら基本的に任意であり、例えば、上記ルツボの底部若しくは側面、あるいはルツボ内部等の部位が挙げられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る単結晶の製造方法を実施するために使用される製造装置の概略を示す説明図である。
【0021】
すなわち、この製造装置は、その外側が保温材1により覆われ内部に原料2が投入されるルツボ3と、このルツボ3の底部に付設されルツボ3内の原料温度をモニターするための温度センサ4と、上記保温材1の外側に配置されかつ高周波電源5に接続されると共に上記ルツボ3を高周波誘導加熱する高周波加熱コイル6と、上記温度センサ4に接続されこの温度センサ4から出力される信号により原料2の温度を読取るデジタル温度計7と、このデジタル温度計7に接続されデジタル温度計7から出力される信号により温度の時間に対する微分値(温度の変化)及び温度の時間に対する二次微分値を演算しかつ得られた演算情報に基づき上記高周波電源5の適正な電力情報を出力するマイクロコンピュータ8と、このマイクロコンピュータ8に接続されマイクロコンピュータ8から出力される情報信号により上記高周波電源5の高周波電力値を制御する高周波電力調節器9とでその主要部が構成されており、かつ、従来の装置と同様に上記ルツボ3の上方側には図示外の引上げ軸が配設されていると共に、これ等の構成部材は密封された圧力容器(図示せず)内に組み込まれている。
【0022】
尚、上記温度センサ4の種類については特に限定されないが、原料2の融点温度に耐えかつ成長の雰囲気や原料融液と反応したり侵されたりせず、安定して温度信号を提供するものでなければならない。そして、育成させる単結晶が上述したLNやLT単結晶の場合には、JISに規定されたRないしBタイプの熱電対を適用するのが一般的であるが、光を使用したファイバセンサやパイロメータ等も当然のことながら利用することができる。
【0023】
ここで、図2は、この製造装置を用いて原料を融解させた際、原料の融解過程においてルツボ3底部に付設された熱電対(温度センサ4)により読み取られたルツボ3底部の温度変化と、高周波加熱コイル6に通電された高周波電源5における高周波電力の変化をそれぞれプロットしたグラフ図である。
【0024】
そして、この図2から、上記ルツボ3底部の温度変化は主に3つの領域に分けられることが確認される。
【0025】
第一領域は、ルツボ底部の温度が高周波電力の上昇に応じて上昇する領域である。また、第二領域は、高周波電力が増加するにも拘らずルツボ底部の温度の上昇速度が鈍くなる領域である。また、第三領域は、高周波電力が一定であるにも拘らずルツボ底部の温度が急激に上昇する領域である。
【0026】
この3つの領域は、温度の時間に対する微分、すなわち温度変化をみると図3のグラフ図に示すような形となることから容易に区別することができる。すなわち、第一領域では温度変化は徐々に増加するが、第二領域では減少し、更に第三領域では急増する。
【0027】
本発明者の詳細な観察によれば、第一領域では高周波電力により高周波加熱コイル6を介しルツボ3に投入された熱エネルギーは原料2とルツボ3周辺の耐火物の温度上昇に消費されるのみであり原料2の融解はほとんど起きていない。しかし、第二領域になるとルツボ3に接触する部分から原料2の融解が始まり、これにより原料の融解熱に大量のエネルギーが消費されることから温度の上昇速度は低下する。第三領域では原料2が全て融解し、融解熱の消費がなくなった結果、原料融液の温度は急激に上昇することが明らかとなった。
【0028】
そして、これ等の技術的知見に基づき、ルツボ底部の温度を連続かつ詳細に測定し、これ等を分析して第三領域に至った時点を検出した後、上記高周波加熱コイルに投入している高周波電力を予め設定された適正値に速やかに低下させることにより、原料融液の過熱(オーバーヒート)を完全に防止することが可能となる。
【0029】
ここで、原料融液の温度が上記第二領域から第三領域に遷移したことを判断する条件には、次のようなパラメータが考えられる。
【0030】
(1)原料融液の温度がある値に到達したとき。
【0031】
(2)原料融液温度の時間に対する二次微分値が負から正になったとき。
【0032】
しかし、上記判断基準(1)は、温度センサの取り付け位置や熱電対の劣化の影響を受けるためその再現性と精度に問題がある。
【0033】
そこで、本発明においては上記判断基準(2)を採用することで上記第二領域から第三領域への遷移点を精度よく検出できるようにしている。
【0034】
但し、実際の温度変化速度には若干の変動がみられるため、判断基準(2)のみでは第二領域から第三領域への遷移点を判断し損なう場合も起こり得る。
【0035】
そこで、上記判断基準(2)に温度変化速度が0.1〜1℃/min 以上、すなわち0.1℃/min 以上になるとする条件を追加することで、更に再現性よく上記遷移点が検出されることを可能にしている(請求項2)。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0037】
図1に示した製造装置を用いてLT(LiTaO3 )単結晶の成長を試みた。また、育成には直径150mmφ、高さ150mm、厚さ3mmのイリジウム製ルツボ3を使用し、約5kgのLT粉末をルツボ3内に充填した。尚、原料の加熱融解は高周波誘導加熱により行い、かつ、育成の雰囲気は2%の酸素が添加された窒素雰囲気とした。
【0038】
また、原料融液の温度をモニターする温度センサ4にはBタイプの熱電対を使用した。尚、LTの融点は1700℃以上であり、熱電対をルツボに直接接触させると劣化が激しいため、上記熱電対はルツボ3底部の中心部に耐火物(図示せず)を介して設置した。この熱電対の出力電圧はデジタル温度計7により温度信号に変換させた後、マイクロコンピュータ8に取り込んだ。温度変化と温度の時間に対する二次微分は読み込まれた温度を基に計算により求めた。
【0039】
そして、上記マイクロコンピュータ8と高周波電源5の高周波電力調節器9は通信回線で結び、ルツボ3の加熱に使用される高周波電力の大きさは上記マイクロコンピュータにより制御した。すなわち、高周波電力を3kW/hの速度で18kWまで上昇させて原料を融解し、温度の上昇速度が一度減少した後再び上昇に転じ、その上昇速度が0.5℃/min となった時点で高周波電力を15kWに低下させ、原料融液の温度が適正に収まるか否かを測定した。
【0040】
このときに使用した15kWの電力値は、実際には製造装置における炉の構成により大きく変動する。従って、成長炉の構成を変更した場合には、予め適切な高周波電力値を求めておく必要がある。
【0041】
そして、この実施例による場合と、原料の融解終了時点をマニュアル操作により判定する従来例とで、『原料融液のオーバーヒートの大きさ(℃)』、『融解開始からシーディング(結晶成長)できるまでの時間(min )』及び『ルツボ寿命(本数)』についてそれぞれ比較調査した。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
この表1から明らかなように、実施例の場合にはマニュアル操作の場合に較べ原料融液のオーバーヒートの最大幅を約1/5に減少させることができた。
【0044】
また、この結果、シーディングを始める時間がマニュアル操作の場合に較べて約40分短縮され、この余分な時間を結晶育成に利用することにより同じ時間内でより長尺の単結晶を育成させることが可能となった。
【0045】
更に、ルツボ寿命をマニュアル操作の場合に較べて約50%延長させることも可能となった。
【0046】
これ等の結果、LNやLT等の高融点酸化物単結晶の製造コストを約10%削減させることが可能となった。
【0047】
【発明の効果】
請求項1〜4記載の発明に係る単結晶の製造方法によれば、
ルツボに設けられた温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、この二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点としているため、原料の融解終了時点をオペレータのマニュアル操作に頼っていた従来法に較べその終了時点をより正確に判定できるようになり、この結果、原料融液の温度制御が適正になされるようになることから原料融液に対する過熱(オーバーヒート)を防止することが可能となる。
【0048】
このため、製造プロセス時間の短縮とルツボ寿命の延長が図れると共に、製造コストの低減も図れる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る単結晶の製造方法を実施するために使用される製造装置の概略を示す説明図。
【図2】回転引上げ法による単結晶の製造方法において投入する高周波電力及びルツボ底部の温度と時間との関係を示すグラフ図。
【図3】回転引上げ法による単結晶の製造方法においてルツボ底部の温度変化と時間との関係を示すグラフ図。
【図4】単結晶の回転引上げ法に適用される製造装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
1 保温材
2 原料
3 ルツボ
4 温度センサ
5 高周波電源
6 高周波加熱コイル
7 デジタル温度計
8 マイクロコンピュータ
9 高周波電力調節器
Claims (4)
- ルツボ内に収容された原料融液から回転引上げ法により単結晶を製造する単結晶の製造方法において、
上記原料温度を測定するための温度センサをルツボに設けると共に、この温度センサにより測定された温度の時間に対する二次微分値から原料の融解状態を検出し、上記二次微分値が負から正となる時点を原料の融解終了時点として原料融液の温度制御を行うようにしたことを特徴とする単結晶の製造方法。 - 温度の時間に対する上記二次微分値が負から正となり、かつ、その温度変化速度が0.1℃/min 以上の条件を満たした時点を上記原料の融解終了時点とすることを特徴とする請求項1記載の単結晶の製造方法。
- 上記ルツボが、貴金属ルツボであることを特徴とする請求項1または2記載の単結晶の製造方法。
- 上記単結晶が、LN(LiNbO3 )、LT(LiTaO3 )若しくはNd:YAG(Nd3+:Y3Al5O12)であることを特徴とする請求項1、2または3記載の単結晶の製造方法。
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