JP3832539B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光透過率が小さく、表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオ用、オーディオ用磁気記録再生用機器の長時間記録化、小型軽量化が進むにつれて、磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体に対する高性能化、即ち、高密度記録化、高出力特性、殊に周波数特性の向上、低ノイズ化の要求が益々強まっている。
【0003】
当業者間においては、磁気記録媒体のこれら諸特性を向上させるために、磁性粒子粉末の高性能化及び磁性層の薄層化の両面から、種々の試みがなされている。
【0004】
まず、磁性粒子粉末の高性能化について述べる。
【0005】
磁気記録媒体に対する上記のような要求を満足させるために適した磁性粒子粉末の特性は、高い保磁力と大きな飽和磁化とを有することである。
【0006】
近年、高出力並びに高密度記録に適する磁性粒子粉末として針状ゲータイト粒子粉末又は針状ヘマタイト粒子粉末を還元性ガス中で加熱還元することにより得られる鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末が広く使用されている。
【0007】
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、高い保磁力と大きな飽和磁化とを有するものであるが、磁気記録媒体に使用される鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、1μm以下、殊に、0.01〜0.3μm程度の非常に微細な粒子であるため、腐蝕しやすく、磁気特性が劣化し、殊に、飽和磁化及び保磁力の減少をきたすという欠点がある。
【0008】
従って、磁性粒子粉末として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を使用している磁気記録媒体の特性を長期にわたって維持するためには、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕を極力抑制することが強く要求される。
【0009】
次に、磁気記録層の薄層化について述べる。
【0010】
近時におけるビデオテープの高画像高画質化に対する要求は益々強まっており、従来のビデオテープに比べ、記録されるキャリアー信号の周波数が益々高くなっている。即ち、短波長領域に移行しており、その結果、磁気テープの表面からの磁化深度が著しく浅くなっている。
【0011】
短波長信号に対して、磁気記録媒体の高出力特性、殊に、S/N比を向上させるためには、磁気記録層の薄層化が強く要求されている。この事実は、例えば、株式会社総合技術センター発行「磁性材料の開発と磁粉の高分散化技術」(1982年)第312頁の「‥‥塗布型テープにおける高密度記録のための条件は、短波長信号に対して、低ノイズで高出力特性を保持できることであるが、その為には保磁力Hcと残留磁化Brが‥‥共に大きいことと塗布膜の厚みがより薄いことが必要である。‥‥」なる記載の通りである。
【0012】
磁気記録層の薄層化が進む中で、いくつかの問題が生じている。第一に、磁気記録層の平滑化と厚みむらの問題であり、磁気記録層を平滑で厚みむらがないものとするためには、ベースフィルムの表面もまた平滑でなければならない。この事実は、例えば、工学情報センター出版部発行「磁気テープ−ヘッド走行系の摩擦摩耗発生要因とトラブル対策−総合技術資料集(−以下、総合技術資料集という−)」(昭和62年)第180及び181頁の「‥‥硬化後の磁性層表面粗さは、ベースの表面粗さ(バック面粗さ)に強く依存し両者はほぼ比例関係にあり、‥‥磁性層はベースの上に塗布されているからベースの表面を平滑にすればするほど均一で大きなヘッド出力が得られS/Nが向上する。‥‥」なる記載の通りである。
【0013】
第二に、ベースフィルムもまた磁性層と同様に薄層化が進んでおり、その結果、ベースフィルムの強度が問題となってきている。この事実は、例えば、前出「磁性材料の開発と磁粉の高分散化技術」第77頁の「‥‥高密度記録化が今の磁気テープに課せられた大きなテーマであるが、このことは、テープの長さを短くしてカセットを小型化していく上でも、また長時間記録に対しても重要となってくる。このためにはフィルムベースの厚さを減らすことが必要な訳である。‥‥このように薄くなるにつれてテープのスティフネスが急激に減少してしまうためレコーダーでのスムーズな走行がむずかしくなる。ビデオテープの薄型化にともない長手方向、幅方向両方向に渡ってのこのスティフネスの向上が大いに望まれている。‥‥」なる記載の通りである。
【0014】
更に、近時における磁気記録媒体の高性能化の要求はとどまるところがなく、上述した磁気記録層の薄層化や非磁性支持体の薄層化に伴って、磁気記録層表面や磁気記録媒体自体の耐久性が低下することとなるため、磁気記録層表面や磁気記録媒体自体の耐久性を向上させることが強く要求されている。
【0015】
この事実は、特開平5−298679号公報の「・・・近年、磁気記録の発展と共に高画質、高音質の要求がますます高まっており、電磁変換特性の改良、特に強磁性粉末の微粒子化、高密度化が進められ、更に磁気テープの表面を平滑化することでノイズを下げ、C/Nを上げることが要求されている。・・・しかしながら、磁気テープの走行中において磁性層と装置系との接触の摩擦係数が増大する結果、短時間の使用で磁気記録媒体の磁性層が損傷を受け、あるいは磁性層が剥離する傾向がある。特にビデオテープではビデオヘッドと磁気記録媒体が高速で接触しながら走行するため、磁性層から強磁性粉末が脱落しやすく、磁気ヘッドの目詰まりの原因ともなる。従って、磁気記録媒体の磁性層の走行耐久性の向上が望まれている。・・・」なる記載から明らかである。
【0016】
ところで、現在、特にビデオテープ等の磁気記録媒体の磁気テープ終端の判定は、磁気記録媒体の光透過率の大きい部分をビデオデッキによって検知することにより行われている。磁気記録媒体の薄層化や磁気記録層中に分散されている磁性粒子粉末の超微粒子化に伴って磁気記録層全体の光透過率が大きくなるとビデオデッキによる検知が困難となるため、磁気記録層にカーボンブラック等を添加して光透過率を小さくすることが行われており、現行のビデオテープにおいては磁気記録層へのカーボンブラック等の添加は必須となっている。
【0017】
しかし、非磁性のカーボンブラック等を多量に添加することは、高密度記録化を阻害するばかりでなく、薄層化をも阻害する原因となる。磁気テープの表面からの磁化深度を浅くして、磁気テープの薄層化をより進めるためには、磁気記録層に添加するカーボンブラック等の非磁性粒子粉末をできるだけ少なくすることが強く要求されている。
【0018】
そこで、磁気記録層に添加するカーボンブラック量を少なくしても光透過率が小さい磁気記録媒体が強く要求されている。
【0019】
磁気記録層の薄層化及び非磁性支持体の薄層化に伴って、磁気記録層を形成するために、ベースフィルム等の非磁性支持体上にヘマタイト粒子等の非磁性粒子粉末を結合剤中に分散させてなる非磁性下地層を少なくとも1層設けることが行われており、既に、実用化されている(特公平6−93297号公報、特開昭62−159338号公報、特開昭63−187418号公報、特開平4−167225号公報、特開平4−325915公報、特開平5−73882号公報、特開平5−182177号公報、特開平5−347017号公報、特開平6−60362号公報等)。
【0020】
しかし、非磁性支持体上に非磁性粉末を結合剤樹脂中に分散させた非磁性下地層を形成し、その上層に磁気記録層を設けた磁気記録媒体は、表面平滑性は改善されるが、耐久性が悪いという問題があった。
この事実は、特開平5−182177号公報の「・・・支持体表面の非磁性の厚い下塗層を設けてから磁性層を上層として設けるようにすれば前記の支持体の表面粗さの影響は解消することができるが、ヘッド摩耗や耐久性が改善されないという問題があった。これは、従来、非磁性下層として熱硬化系樹脂を結合剤として用いるので、下層が硬化し、磁性層とヘッドとの摩擦や他の部材との接触が無緩衝状態で行われることや、このような下層を有する磁気記録媒体がやや可撓性に乏しい等のことに起因していると考えられる。・・・」なる記載の通りである。
【0021】
従って、磁気記録層の薄層化及び非磁性支持体の薄層化に伴って、光透過率が小さく、表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体は、現在最も要求されているところであるが、このような諸特性を十分に満たす磁気記録媒体は未だ得られていない。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、光透過率が小さく、表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体を得ることを技術的課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0024】
即ち、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末はAl換算で0.05〜10重量%のアルミニウムが存在している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末であり、且つ、前記非磁性粒子粉末が、平均長軸径0.005〜0.30μm、BET比表面積値35〜150m/gである針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液を酸濃度1.0N以上,pH値3.0以下,温度範囲20〜100℃の条件下酸による溶解処理を行い、該水性懸濁液中に存在する針状ヘマタイト粒子粉末全体量の5〜50重量%を溶解させた後、残存する針状ヘマタイト粒子粉末を水洗して得られる針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調製した後、80〜103℃の温度範囲で加熱処理し、次いで、濾別、水洗、乾燥して得られた平均長軸径0.004〜0.295μm、BET比表面積値35.9〜212m/g、粉体pH値が8以上、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO換算で150ppm以下の針状ヘマタイト粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0025】
また、本発明は、前記針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面が、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物又はケイ素の酸化物の少なくとも一種で被覆されている磁気記録媒体である。
【0026】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0027】
先ず、本発明における非磁性下地層について述べる。
【0028】
本発明における非磁性下地層は、非磁性支持体上に形成されており、針状ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂とからなる。
【0029】
非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板および各種の紙を使用することができ、その厚みは、材質により種々異なるが、通常は1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜200μmのものが用いられている。磁気ディスクの場合は、非磁性支持体としてポリエチレンテレフタレートが通常用いられ、その厚みは、通常50〜300μm、好ましくは60〜200μmである。磁気テープの場合、その厚みは材質により異なりポリエチレンテレフタレートの場合、通常3〜100μm、好ましくは4〜20μmであり、ポリエチレンナフタレートの場合は、通常3〜50μm、好ましくは4〜20μmであり、ポリアミドの場合は、通常2〜10μm、好ましくは3〜7μmである。
【0030】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.004〜0.295μmであり、BET比表面積値35.9〜212m/g、粉体pH値が8以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩をNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩をSO換算で150ppm以下含有している。
【0031】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の粒子形状は、針状である。ここで針状とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状などを含む意味である。
【0032】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径が0.295μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、塗膜の表面平滑性を害するので好ましくない。0.004μm未満の場合には、粒子の微粒子化による分子間力の増大により、ビヒクル中における分散が困難となる。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば、平均長軸径は0.008〜0.275μmが好ましく、より好ましくは0.016〜0.245μmである。
【0033】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の平均短軸径は、0.002〜0.147μmが好ましい。本発明における針状へマタイト粒子粉末の平均短軸径の下限値及び上限値を定めた理由は、上記平均長軸径の場合を定めた理由と同様である。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば、平均短軸径は0.004〜0.137μmがより好ましく、更により好ましくは0.008〜0.122μmである。
【0034】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の軸比(平均長軸径と平均短軸径の比、以下、単に「軸比」という。)は、2〜20が好ましい。軸比が2未満の場合には、十分な強度を有する塗膜が得られ難い。軸比が20を超える場合には、ビヒクル中での粒子の絡み合いが多くなり、分散性が悪くなったり、粘度が増加したりすることがある。ビヒクル中での分散性及び得られた塗膜の強度を考慮すれば、軸比は3〜10の範囲がより好ましい。
【0035】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末のBET比表面積値の下限値及び上限値を定めた理由は、上記平均長軸径の上限値及び下限値を定めた理由と同様である。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば、BET比表面積値は38〜141.4m/gが好ましく、より好ましくは41〜113.1m/gである。
【0036】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末は、長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下であることが好ましい。1.50を超える場合には、存在する粗大粒子が塗膜の表面平滑性に悪影響を与えるために好ましくない。塗膜の表面平滑性を考慮すれば、長軸径の幾何標準偏差値はより好ましくは1.48以下であり、更により好ましくは1.45以下である。工業的な生産性を考慮すれば、長軸径の幾何標準偏差値の下限値は1.01である。
【0037】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末は、密度化の程度が高いものが好ましく、密度化の程度をBET法により測定した比表面積SBET値と電子顕微鏡写真に示されている粒子から計測された長軸径及び短軸径から算出した表面積STEM値との比(SBET/STEM値)で示した場合、0.5〜2.5が好ましい。
【0038】
BET/STEM値が0.5未満の場合には、針状へマタイト粒子粉末の高密度化が達成されてはいるが、粒子及び粒子相互間の焼結により、粒子径が増大しており、十分な表面平滑性を有する塗膜が得られない。SBET/STEM値が2.5を超える場合には、高密度化が十分ではなく、粒子内部及び粒子表面に多数の脱水孔が存在するため、ビヒクル中における分散性が不十分となる。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮するとSBET/STEM値は0.7〜2.0が好ましく、より好ましくは0.8〜1.6である。
【0039】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の粉体pH値は8以上である。粉体pH値が8未満の場合には、非磁性下地層の上に形成されている磁気記録層中に含まれる鉄を主体とする針状金属磁性粒子粉末を徐々に腐蝕させ、磁気特性の劣化を引き起こす。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕防止効果を考慮すると、粉体pH値は8.5〜11が好ましく、より好ましくは粉体pH値が9.0〜10.5である。
【0040】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で300ppm以下である。300ppmを超える場合には、非磁性下地層の上に形成されている磁気記録層中に含まれる鉄を主体とする針状金属磁性粒子粉末を徐々に腐蝕させ、磁気特性の劣化を引き起こす。また、ビヒクル中におけるヘマタイト粒子粉末の分散特性が害されやすくなったり、磁気記録媒体の保存状態、特に湿度の高い環境下においては白華現象を生じる場合がある。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕防止効果を考慮すると、好ましくは250ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更により好ましくは150ppm以下である。工業的な生産性を考慮すれば、その下限値は0.01ppm程度である。
【0041】
本発明における針状ヘマタイト粒子の可溶性硫酸塩の含有量はSO換算で150ppm以下である。150ppmを超える場合には、非磁性下地層の上に形成されている磁気記録層中に含まれる鉄を主体とする針状金属磁性粒子粉末を徐々に腐蝕させ、磁気特性の劣化を引き起こす。また、ビヒクル中におけるヘマタイト粒子粉末の分散特性が害されやすくなったり、磁気記録媒体の保存状態、特に湿度の高い環境下においては白華現象を生じる場合がある。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕防止効果を考慮すると、好ましくは100ppm以下、より好ましくは70ppm以下、更により好ましくは50ppm以下である。工業的な生産性を考慮すれば、その下限値は0.01ppm程度である。
【0042】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末は、必要により、粒子表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物又はケイ素の酸化物の少なくとも1種の化合物(以下、アルミニウムの水酸化物等による被覆という。)で被覆されていてもよい。粒子表面が被覆物で被覆されている針状ヘマタイト粒子からなる針状ヘマタイト粒子粉末は、ビヒクル中に分散させた場合に結合剤樹脂とのなじみがよく、容易に所望の分散度が得られる。
【0043】
アルミニウムの水酸化物等の被覆量は、針状ヘマタイト粒子粉末に対しAl換算、SiO2 換算またはAl換算量とSiO2 換算量の総和で0.01〜50重量%が好ましい。0.01重量%未満の場合には、被覆による分散性向上効果が得られ難く、50重量%を越える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味が無い。ビヒクル中における分散性及び工業的な生産性を考慮すれば、アルミニウムの水酸化物等の被覆量は0.05〜20重量%がより好ましい。
【0044】
本発明におけるアルミニウムの水酸化物等で被覆されている針状ヘマタイト粒子粉末は、アルミニウムの水酸化物等で被覆されていない本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の場合とほぼ同程度の粒子サイズ、軸比、BET比表面積値、長軸径の幾何標準偏差値、SBET/STEM値、粉体pH値、可溶性ナトリウム塩及び可溶性硫酸塩を有している。
【0045】
次に、本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0046】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末は、被処理粒子粉末である針状ヘマタイト粒子粉末を、酸による溶解処理を特定の条件において行った後水洗し、得られた針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調整した後、80〜103℃の温度範囲で加熱処理することによって得ることができる。
【0047】
ここで、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末は、種々の方法によって得ることができる。例えば、湿式法により直接針状ヘマタイト粒子粉末を生成させる方法、アカゲナイト(β−FeOOH)粒子粉末を生成させた後、加熱脱水して針状ヘマタイト粒子粉末を得る方法等があるが、一般的な製造法としては、針状ヘマタイト粒子粉末の出発原料である針状ゲータイト粒子粉末を湿式法により生成し、得られた針状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理して、針状ヘマタイト粒子粉末を得る方法が工業的にも好ましい。
【0048】
そこで、まず、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の出発原料である針状ゲータイト粒子粉末の一般的な製造法について述べる。
【0049】
針状ゲータイト粒子は、後に詳述する通り、第一鉄塩と、水酸化アルカリ又は炭酸アルカリ又は水酸化アルカリと炭酸アルカリの混合アルカリのいずれかとを用いて反応して得られる鉄の水酸化物や炭酸鉄等の第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液に空気等の酸素含有ガスを通気して針状ゲータイト粒子を生成させることによって得られる。
【0050】
針状ゲータイト粒子の代表的な基本反応には、周知の通り、▲1▼第一鉄塩水溶液に当量以上の水酸化アルカリ水溶液を加えて得られる水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液をpH値11以上にて80℃以下の温度で酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより針状ゲータイト粒子を生成させる方法、▲2▼第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液とを反応させて得られるFeCOを含む懸濁液を、必要により熟成した後、酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより紡錘状を呈したゲータイト粒子を生成させる方法、▲3▼第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液及び水酸化アルカリとを反応させて得られる鉄含有沈澱物を含む懸濁液を、必要により熟成した後、酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより紡錘状を呈したゲータイト粒子を生成させる方法、▲4▼第一鉄塩水溶液に当量未満の水酸化アルカリ水溶液又は炭酸アルカリ水溶液を添加して得られる水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより針状ゲータイト核粒子を生成させ、次いで、該針状ゲータイト核粒子を含む第一鉄塩水溶液に、該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対し当量以上の水酸化アルカリ水溶液を添加した後、酸素含有ガスを通気して前記針状ゲータイト核粒子を成長させる方法、▲5▼第一鉄塩水溶液に当量未満の水酸化アルカリ水溶液又は炭酸アルカリ水溶液を添加して得られる水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより針状ゲータイト核粒子を生成させ、次いで、該針状ゲータイト核粒子を含む第一鉄塩水溶液に、該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対し当量以上の炭酸アルカリ水溶液を添加した後、酸素含有ガスを通気して前記針状ゲータイト核粒子を成長させる方法及び▲6▼第一鉄塩水溶液と当量未満の水酸化アルカリ又は炭酸アルカリ水溶液を添加して得られる水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより針状ゲータイト核粒子を生成させ、次いで、酸性乃至中性領域で前記針状ゲータイト核粒子を成長させる方法等がある。
【0051】
なお、ゲータイト粒子の生成反応中に、粒子の長軸径、短軸径、軸比等の諸特性向上のために通常添加されているNi、Zn、P、Si等の異種元素が添加されていても支障はない。
【0052】
本発明における出発原料としての針状ゲータイト粒子粉末は、通常、平均長軸径が0.005〜0.4μm、平均短軸径が0.0025〜0.2μmであって、軸比が2〜20、長軸径の幾何標準偏差値が1.70以下、BET比表面積値が50〜250m/g、粉体pH値が3〜9であり、可溶性ナトリウム塩をNa換算で300〜1500ppm、可溶性硫酸塩をSO換算で150〜3000ppm含有している。
【0053】
次に、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0054】
本発明における被処理粒子粉末である針状ヘマタイト粒子粉末は、出発原料である前記針状ゲータイト粒子粉末を550〜850℃の温度範囲で加熱脱水処理して得ることができる。
【0055】
加熱脱水処理の温度が550℃未満の場合には、高密度化が不十分であるため針状ヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在しており、酸による溶解処理の際に脱水孔から溶解が進行する等により粒子形状が維持されず、得られた針状ヘマタイト粒子粉末のビヒクル中における分散性が不十分となり、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくい。850℃を超える場合には、針状へマタイト粒子の高密度化は十分なされているが、粒子及び粒子相互間の焼結が生じるため、粒子径が増大し、同様に表面平滑な塗膜は得られにくい。加熱脱水温度の上限値は好ましくは800℃である。
【0056】
なお、本発明における被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末は、針状ゲータイト粒子粉末を250〜500℃の温度範囲で低温加熱脱水処理して低密度針状ヘマタイト粒子粉末を得、次いで、該低密度針状ヘマタイト粒子粉末を550〜850℃の温度範囲で高温加熱処理を行うことにより得られる高密度化された針状ヘマタイト粒子粉末であることが好ましい。
【0057】
低温加熱脱水温度が250℃未満の場合には、脱水反応に長時間を要するために好ましくない。低温加熱脱水温度が500℃を超える場合には、脱水反応が急激に生起し、粒子の形状が崩れやすくなったり、粒子相互間の焼結を引き起こす可能性がある。低温加熱脱水処理して得られる低密度針状ヘマタイト粒子粉末は、針状ゲータイト粒子粉末からHOが脱水され、脱水孔を多数有する低密度粒子からなり、BET比表面積値が出発原料である針状ゲータイト粒子粉末の1.2〜2倍程度となる。
【0058】
得られた低密度針状ヘマタイト粒子粉末は、通常、平均長軸径が0.005〜0.30μm、平均短軸径が0.0025〜0.15μmであって、軸比が2〜20、長軸径の幾何標準偏差値が1.70以下、BET比表面積値が70〜350m/g、SBET/STEM値が2.6以上、粉体pH値が3〜9であり、可溶性ナトリウム塩をNa換算で500〜3000ppm、可溶性硫酸塩をSO換算で300〜4000ppm含有している。
【0059】
次いで、低密度ヘマタイト粒子粉末を550〜850℃で高温加熱処理して高密度化された針状ヘマタイト粒子粉末とする。高温加熱処理温度が550℃未満の場合には、高密度化が不十分であるためヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在しており、酸による溶解処理の際に脱水孔から溶解が進行する等により粒子形状が維持されず、得られた針状ヘマタイト粒子粉末のビヒクル中における分散性が不十分となり、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくい。850℃を超える場合には、ヘマタイト粒子の高密度化は十分なされているが、粒子及び粒子相互間の焼結が生じるため、粒子径が増大し、同様に表面平滑な塗膜は得られにくい。加熱脱水温度の上限値は好ましくは800℃である。
【0060】
得られた高密度針状ヘマタイト粒子粉末は、通常、平均長軸径が0.005〜0.30μm、平均短軸径が0.0025〜0.15μmであって、軸比が2〜20、長軸径の幾何標準偏差値が1.70以下、BET比表面積値が35〜150m/g、SBET/STEM値が0.5〜2.5、粉体pH値が2.5〜9であり、可溶性ナトリウム塩をNa換算で500〜4000ppm、可溶性硫酸塩をSO換算で300〜5000ppm含有している。
【0061】
本発明における針状へマタイト粒子粉末は、550〜850℃の温度範囲での加熱脱水処理又は高温加熱処理に先立って、あらかじめ粒子表面を焼結防止剤で被覆処理しておくことが好ましい。焼結防止剤による被覆処理は、出発原料粒子粉末である針状ゲータイト粒子粉末又は250〜500℃の温度範囲で低温加熱脱水処理して得られる低密度針状ヘマタイト粒子粉末を含む水懸濁液中に焼結防止剤を添加し、混合攪拌した後、濾別、水洗、乾燥すればよ
い。
【0062】
前記焼結防止剤としては、通常使用されるヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸、オルトリン酸等のリン化合物、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等のケイ素化合物、ホウ酸等のホウ素化合物、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ソーダ等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、オキシ硫酸チタン等のチタン化合物を使用することができる。
【0063】
針状ゲータイト粒子粉末の粒子表面に存在する焼結防止剤の量は、焼結防止剤の種類や量、アルカリ水溶液中におけるpH値や加熱処理温度等の諸条件により異なるが、粒子の全重量に対し0.05〜10重量%である。
【0064】
次に、本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0065】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末は、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液を、酸濃度1.0N以上,pH値3.0以下,温度範囲20〜100℃の条件で溶解処理を行い、該水性懸濁液中に存在する針状ヘマタイト粒子粉末全体量の5〜50重量%を溶解させた後、残存する針状ヘマタイト粒子粉末を水洗して得られる針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調整した後、80〜103℃の温度範囲で加熱処理して得ることができる。
【0066】
まず、本発明における被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末について述べる。
【0067】
被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の粒子形状は、針状である。ここで針状とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状などを含む意味である。
【0068】
被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.005〜0.3μm、であり、BET比表面積値が35〜150m/gである。
【0069】
被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径が0.3μmを超える場合には、上記処理後に得られる本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の粒子サイズが大きすぎるため、塗膜の表面平滑性を害するので好ましくない。0.005μm未満の場合には、上記処理後に得られる本発明における針状ヘマタイト粒子粉末の粒子の微粒子化による分子間力の増大により、ビヒクル中における分散が困難となる。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば、平均長軸径は好ましくは0.02〜0.25μmである。
【0070】
被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末のBET比表面積値の下限値及び上限値を定めた理由は、上記平均長軸径の上限値及び下限値を定めた理由と同様である。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば、BET比表面積値は好ましくは37〜135m/gである。
【0071】
被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末は、平均短軸径が0.0025〜0.15μm、長軸径の幾何標準偏差値が1.70以下、SBET/STEM値が0.5〜2.5、粉体pH値が2.5〜9であって、可溶性ナトリウム塩がNa換算で500〜4000ppm、可溶性硫酸塩がSO換算で300〜5000ppm以下であることが好ましい。
【0072】
次に、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の酸による溶解処理について述べる。
【0073】
被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末は、酸による溶解処理を行うにあたって、あらかじめ乾式で粗粉砕をして粗粒をほぐした後、スラリー化し、次いで、湿式粉砕することにより更に粗粒をほぐしておくことが好ましい。湿式粉砕は、少なくとも二次凝集粒子の44μm以上の粗粒が無くなるようにボールミル、サンドグラインダー、コロイドミル等を用いて行えばよい。湿式粉砕の程度は44μm以上の粗粒が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは0%である。44μm以上の粗粒が10%を超えて残存していると、次工程における酸による溶解処理の効果が得られ難い。
【0074】
酸による溶解処理に用いる水性懸濁液中の針状ヘマタイト粒子粉末の濃度は、1〜500g/lが好ましく、10〜250g/lがより好ましい。1g/l未満の場合には処理単位当たりの処理量が少なすぎるため工業的に好ましくない。500g/lを超える場合には、均一な溶解処理を行うことが困難となる。
【0075】
酸による溶解処理に用いる酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、亜硫酸、塩素酸、過塩素酸、シュウ酸のいずれをも用いることができる。高温での処理を行う場合や溶解処理を行う容器の腐蝕、劣化及び経済性等を考慮すると、硫酸が好ましい。
【0076】
酸による溶解処理における酸濃度は、1.0N以上、好ましくは1.2N以上、より好ましくは1.5N以上である。1.0N未満の場合には、針状ヘマタイト粒子粉末を溶解させるために非常に長時間を要するため工業的に不利となる。
【0077】
酸による溶解処理における初期pH値は、pH値3.0以下、好ましくはpH値2.0以下、より好ましくはpH値1.0以下である。溶解時間等を考慮するとpH値1.0以下が適している。pH値3.0を超える場合には、針状ヘマタイト粒子粉末を溶解させるのに非常に長時間を要するため、工業的に不利となる。
【0078】
酸による溶解処理における水性懸濁液の温度範囲は20〜100℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜100℃である。20℃未満の場合には針状ヘマタイト粒子粉末を溶解させるために非常に長時間を要するため、工業的に不利となる。100℃を超える場合には、粒子の溶解が急速に進行するためその制御が困難となり、またオートクレーブ等の装置を必要とするため工業的に好ましくない。
【0079】
なお、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径が比較的大きい領域である0.05〜0.30μmの場合には、溶解処理の条件をハードな条件、例えば、酸濃度1.5N以上、pH値1.0以下及び温度範囲70〜100℃で行うことが好ましく、平均長軸径が比較的小さい領域である0.005〜0.05μmの場合には、溶解処理の条件をソフトな条件、例えば、酸濃度1.0〜1.5N、pH値1.0〜3.0、温度範囲20〜70℃で行うことが好ましい。
【0080】
酸による溶解処理は、被処理粒子粉末である針状ヘマタイト粒子粉末全体量の5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは15〜40重量%を溶解させるまで行う。5重量%未満の場合には、微粒子成分が溶解によって十分に除去されず、50重量%を超える場合には、粒子粉末全体が微粒子化してしまい、また、溶解による損失が大きいため工業的に好ましくない。
【0081】
なお、酸による溶解処理によって溶解した鉄塩の水溶液は、濾別することによってスラリーから分離して、資源の再利用という観点から針状ゲータイト粒子粉末の製造の第一鉄塩原料として使用することができる。
【0082】
次に、被処理粒子粉末としての針状ヘマタイト粒子粉末のアルカリ性懸濁液中における加熱処理について述べる。
【0083】
針状ヘマタイト粒子粉末のアルカリ性懸濁液中における加熱処理にあたって、酸による溶解処理後の残存針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液を濾別、水洗して得られたケーキを再度、水中に分散させた針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液としておくか、又は、残存針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液をデカンテーションによって水洗した針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液としておくことが好ましい。
【0084】
アルカリ性懸濁液の加熱処理に用いるアルカリ性懸濁液中の針状ヘマタイト粒子粉末の濃度は、50〜250g/lが好ましい。
【0085】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリの水溶液を用いることができる。
【0086】
針状ヘマタイト粒子粉末を含むアルカリ性懸濁液中のpH値は13以上である。pH13未満の場合には、針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に存在する焼結防止剤に起因する固体架橋を効果的に取りはずすことができず、粒子内部及び粒子表面に存在する可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しができない。その上限は、pH値が14である。針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に存在する焼結防止剤に起因する固体架橋の取りはずしや可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しの効果、更には、アルカリ性懸濁液の加熱処理中に針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去するための洗浄効果を考慮すれば、pH値は13.1〜13.8の範囲が好ましい。
【0087】
前記針状ヘマタイト粒子粉末を含むpH値が13以上のアルカリ性懸濁液の加熱温度は、80℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上である。80℃未満の場合には、針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に存在する焼結防止剤に起因する固体架橋を効果的に取りはずすことが困難となる。加熱温度の上限値は103℃が好ましく、より好ましくは100℃である。103℃を超える場合には、固体架橋は効果的に取りはずすことはできるが、オートクレーブ等が必要となったり、常圧下においては、被処理液が沸騰するなど工業的に不利となる。
【0088】
アルカリ性懸濁液中で加熱処理した針状ヘマタイト粒子粉末は、常法により、濾別、水洗することにより、針状ヘマタイト粒子内部及び粒子表面から洗い出した可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩やアルカリ性懸濁液の加熱処理中に針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去し、次いで、乾燥する。
【0089】
水洗法としては、デカンテーションによって洗浄する方法、フィルターシックナーを使用して希釈法で洗浄する方法、フィルタープレスに通水して洗浄する方法等の工業的に通常使用されている方法を使用すればよい。
【0090】
なお、針状ヘマタイト粒子粉末の粒子内部に含有されている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を水洗して洗い出しておけば、それ以降の工程、例えば、後出する被覆処理工程において針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩が付着しても水洗により容易に除去することができる。
【00091】
次に、本発明におけるアルミニウムの水酸化物等で被覆されている針状ヘマタイト粒子粉末の表面被覆処理は、本発明における針状ヘマタイト粒子粉末を水溶液中に分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、または、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記針状ヘマタイト粒子の粒子表面に、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物を被覆すればよく、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を行ってもよい。
【00092】
表面被覆処理に用いるアルミニウム化合物及びケイ素化合物としては、前出焼結防止剤として用いているアルミニウム化合物及びケイ素化合物と同じものが使用できる。
【0093】
アルミニウム化合物の添加量は、針状ヘマタイト粒子粉末に対しAl換算で0.01〜50重量%である。0.01重量%未満である場合には、ビヒクル中における分散が不十分であり、50重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0094】
ケイ素化合物の添加量は、針状ヘマタイト粒子粉末に対しSiO換算で0.01〜50重量%である。0.01重量%未満である場合には、ビヒクル中における分散が不十分であり、50重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0095】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合には、針状ヘマタイト粒子粉末に対し、Al換算量とSiO換算量との総和で0.01〜50重量%が好ましい。
【0096】
結合剤樹脂としては、現在、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、ウレタンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等とその混合物を使用することができる。また、各結合剤樹脂には−OH、−COOH、−SOM、−OPO、−NH等の極性基(但し、MはH、Na、Kである。)が含まれていてもよい。粒子の分散性を考慮すれば、極性基として−COOH、−SOMが含まれている結合剤樹脂が好ましい。
【0097】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対し、針状ヘマタイト粒子粉末が5〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。
【0098】
本発明における非磁性支持体上に形成された非磁性下地層の塗膜厚さは、0.2〜10.0μmの範囲である。0.2μm未満の場合には、非磁性支持体の表面粗さを改善することが困難となり、強度も不十分となりやすい。磁気記録媒体の薄層化及び塗膜の強度を考慮すれば、塗膜厚さはより好ましくは0.5〜5.0μmである。
【0099】
尚、非磁性下地層に、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が、必要により含まれていてもよい。
【0100】
粒子表面が前記アルミニウムの水酸化物等によって被覆されていない本発明における針状へマタイト粒子粉末を用いた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が187〜300%、好ましくは193〜300%、より好ましくは195〜300%、塗膜の表面粗度Raが0.5〜8.5nm、好ましくは0.5〜8.0nm、より好ましくは0.5〜7.5nm、塗膜のヤング率(相対値)が119〜160、好ましくは120〜160である。
【0101】
粒子表面がアルミニウムの水酸化物等によって被覆されている針状ヘマタイト粒子粉末を用いた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が190〜300%、好ましくは195〜300%、より好ましくは197〜300%、塗膜の表面粗度Raが0.5〜8.3nm、好ましくは0.5〜7.8nm、より好ましくは0.5〜7.3nm、塗膜のヤング率(相対値)が120〜160、好ましくは123〜160である。
【0102】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0103】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上に形成された非磁性下地層の上に、アルミニウムが存在している鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる磁気記録層とから形成されている。
【0104】
本発明における鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、Al換算で0.05〜10重量%のアルミニウムが存在している。
【0105】
アルミニウムの存在量がAl換算で0.05重量%未満の場合には、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末のビヒクル中における樹脂吸着強度が十分ではなく、分散が困難となり、本発明の目的とする耐久性に優れた磁気記録媒体を得ることができない。10重量%を超える場合には、磁気記録媒体の耐久性向上効果が認められるが、効果は飽和しており必要以上に存在させる意味がない。また、非磁性成分であるアルミニウムの増大により鉄を主成分とする針状金属磁性粒子の磁気特性が損なわれる。
【0106】
アルミニウムの存在位置は、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子の中央部分のみに含有されている場合、表層部分のみに含有されている場合、中心部から表面に至るまでほぼ均一に含有されている場合のいずれの場合でもよく、また、粒子の表面に被覆層を形成したものであってもよく、更に、これら各種存在位置を組み合わせたものでもよい。磁気記録層の表面や磁気記録媒体の耐久性を考慮すれば、アルミニウムが中心部から表面に至るまでほぼ均一に含有されているとともに、粒子表面に被覆層が形成されている粒子からなる鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末が好ましい。
【0107】
粒子内部にアルミニウムを含有している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、周知の通り、前述した針状ゲータイト粒子の生成反応工程において、アルミニウム化合物の添加時期を種々変化させることにより、粒子内部の所望の位置にアルミニウムを含有している針状ゲータイト粒子粉末を得、該針状ゲータイト粒子粉末又は該針状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理して得られる粒子内部の所望の位置にアルミニウムを含有している針状ヘマタイト粒子粉末を300〜500℃の温度範囲で加熱還元することにより得られる。
【0108】
粒子表面がアルミニウムで被覆されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、粒子表面がアルミニウムの酸化物や水酸化物等のアルミニウム化合物で被覆されている針状ゲータイト粒子粉末や該針状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理して得られる粒子表面がアルミニウムの酸化物や水酸化物等のアルミニウム化合物で被覆されている針状ヘマタイト粒子粉末を300〜500℃の温度範囲で加熱還元することにより得られる。
【0109】
本発明における鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、鉄を50〜99重量%、好ましくは60〜95重量%含有している粒子であり、必要により、鉄及びAl以外のCo、Ni、P、Si、B、Nd、La、Y等を0.05〜10重量%程度含有していてもよい。AlとNd、La、Y等の希土類金属とが存在している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を使用して、本発明に係る磁気記録媒体を製造した場合には、より耐久性に優れた磁気記録層や磁気記録媒体を得ることができる。殊に、AlとNdとが存在している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末が最も好ましい。
【0110】
本発明における鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、平均長軸径が0.01〜0.50μm、好ましくは0.03〜0.30μmであって、平均短軸径が0.0007〜0.17μm、好ましくは0.003〜0.10μmであって、軸比が3以上、好ましくは5以上の粒子であり、ビヒクル中での分散性を考慮すれば、軸比の上限値は、15、好ましくは10である。
【0111】
粒子の形状は、針状である。ここで、針状とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状などを含む意味である。
【0112】
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の磁気特性は、高密度記録化等の特性を考慮すれば、保磁力は900〜3500Oeが好ましく、より好ましくは1000〜3500Oeであり、飽和磁化は90〜170emu/gが好ましく、より好ましくは100〜170emu/gである。
【0113】
本発明における鉄を主成分とする針状金属磁性粒子は、樹脂吸着強度が65%以上であり、好ましくは68%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0114】
磁気記録層の形成に使用する結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層を形成するのに用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0115】
磁気記録層における磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対し、磁性粒子粉末が200〜2000重量部、好ましくは300〜1500重量部である。
【0116】
非磁性下地層上に設けられた磁気記録層の塗膜厚さは、0.01〜5.0μmの範囲である。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難で塗りむら等の現象が出やすくなるため好ましくない。5.0μmを超える場合には、反磁界の影響のため、所望の電磁変換特性が得られにくくなる。好ましくは0.05〜1.0μmの範囲である。
【0117】
磁気記録層中には、通常用いられる潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が必要により含まれていてもよい。
【0118】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性下地層用非磁性粒子粉末としてアルミニウムの水酸化物等によって被覆されていない本発明における針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、保磁力が900〜3500Oe、好ましくは1000〜3500Oe、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.86〜0.95、好ましくは0.87〜0.95、塗膜の光沢度が195〜300%、好ましくは200〜300%、塗膜表面粗度Raが8.5nm以下、好ましくは0.5〜8.3nm、より好ましくは0.5〜8.0nm、塗膜の線吸収係数が1.10〜2.00μm−1、好ましくは1.20〜2.00μm−1、塗膜のヤング率(相対値)が120〜160、好ましくは122〜160であり、耐久性のうち走行耐久性は18分以上、好ましくは20分以上、更に好ましくは22分以上、すり傷特性はB又はA、好ましくはAであり、保磁力の変化率(%)で示す腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下、飽和磁束密度の変化率(%)で示す腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下である。
【0119】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性下地層用非磁性粒子粉末としてアルミニウムの水酸化物等によって被覆されている本発明における針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、保磁力が900〜3500Oe、好ましくは1000〜3500Oe、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.86〜0.95、好ましくは0.87〜0.95、塗膜の光沢度が200〜300%、好ましくは205〜300%、塗膜表面粗度Raが8.3nm以下、好ましくは0.5〜8.0nm、より好ましくは0.5〜7.8nm、塗膜の線吸収係数が1.10〜2.00μm−1、好ましくは1.20〜2.00μm−1、塗膜のヤング率(相対値)が122〜160、好ましくは124〜160であり、耐久性のうち走行耐久性は20分以上、好ましくは22分以上、更に好ましくは24分以上、すり傷特性はB又はA、好ましくはAであり、保磁力の変化率(%)で示す腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下、飽和磁束密度の変化率(%)で示す腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下である。
【0120】
次に、本発明における非磁性下地層の製造法について述べる。
【0121】
本発明における非磁性下地層は、非磁性支持体上に、本発明における針状ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂と溶剤とを含む非磁性塗料を塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより得られる。
【0122】
溶剤としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているメチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン及びその混合物等を使用することができる。
【0123】
溶剤の使用量は、針状ヘマタイト粒子粉末100重量部に対しその総量で50〜1000重量部である。50重量部未満では非磁性塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮散量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
【0124】
次に、本発明に係る磁気記録媒体の製造法について述べる。
【0125】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上に形成された非磁性下地層の上に、アルミニウムが存在している鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末と結合剤樹脂と溶剤とを含む磁性塗料を塗布し塗膜を形成した後、乾燥して磁気記録層を形成することにより得られる。
【0126】
磁性塗料の製造に使用する溶剤としては、前記非磁性下地層を形成するのに用いた溶剤を使用することができる。
【0127】
溶剤の使用量は、アルミニウムが存在している鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末100重量部に対しその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では磁性塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を越える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮散量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
【0128】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0129】
フルイ残量は、湿式粉砕後のスラリー濃度を別途に求めておき、固形分100gに相当する量のスラリーを325メッシュ(目開き44μm)のフルイに通し、フルイに残った固形分の量を定量することによって求めた。
【0130】
粒子の平均長軸径、平均短軸径は、電子顕微鏡写真(×30000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個について長軸径、短軸径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0131】
軸比は、平均長軸径と平均短軸径との比で示した。
【0132】
粒子の長軸径の幾何標準偏差値は、下記の方法により求めた値で示した。即ち、上記拡大写真に示される粒子の長軸径を測定した値を、その測定値から計算して求めた粒子の実際の長軸径と個数から統計学的手法に従って対数正規確率紙上に横軸に粒子の長軸径を、縦軸に所定の長軸径区間のそれぞれに属する粒子の累積個数(積算フルイ下)を百分率でプロットする。そして、このグラフから粒子の個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する長軸径の値を読みとり、幾何標準偏差値=積算フルイ下84.13%における長軸径/積算フルイ下50%における長軸径(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が1に近いほど、粒子の長軸径の粒度分布が優れていることを意味する。
【0133】
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0134】
針状ヘマタイト粒子の高密度化の程度は、前述した通り、SBET/STEM値で示した。ここで、SBET値は、上記BET法により測定した比表面積値である。STEM値は、前記電子顕微鏡写真から測定した粒子の平均長軸径lcm、平均短軸径wcmを用いて粒子を直方体と仮定して下記式に従って算出した値である。
【0135】
TEM(m/g)=〔(4lw+2w)/(lw・ρ)〕×10−4(ただし、ρはヘマタイトの真比重であり、5.2g/cmを用いた。)
【0136】
針状ヘマタイト粒子粉末もしくは鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl、Si、P及びNd等のそれぞれの量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業(株)製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0137】
粉体pH値は、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷し、減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液のpHをJIS Z 8802−7に従って測定し、得られた値を粉体pH値とした。
【0138】
針状ヘマタイト粒子粉末の可溶性ナトリウム塩の含有量及び可溶性硫酸塩の含有量は、上記粉体pH値の測定用に作製した上澄み液をNo.5Cの濾紙を用いて濾過し、濾液中のNa及びSO 2−を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0139】
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度を、E型粘度計EMD−R(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec−1における値で示した。
【0140】
樹脂吸着強度は、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末に吸着した樹脂の吸着強度を示すものであり、下記の方法により求めた値T%が100に近いほど、樹脂が粒子の表面に強く吸着されていることを示す。
【0141】
先ず、樹脂吸着量Waを求める。
【0142】
被測定粒子粉末20gとスルホン酸ナトリウム基を有する塩化ビニル樹脂2gを溶解させた混合溶剤(メチルエチルケトン27.0g、トルエン16.2g、シクロヘキサノン10.8g)56gとを3mmφスチールビーズ120gとともに100mlポリビンに入れ、60分間ペイントシェーカーで混合分散する。
【0143】
次に、この塗料組成物50gを取り出し50mlの沈降管に入れ回転数10000rpmで15分間遠心分離を行い、固形部分と溶剤部分とを分離する。そして、溶剤部分に含まれる樹脂固形分濃度を重量法によって定量し、仕込みの樹脂量との差し引きにより、固形部分に存在する樹脂量を求め、これを粒子に対する樹脂吸着量Wa(mg/g)とする。
【0144】
次に、先に分離した固形部分のみを100mlトールビーカーに全量取り出し、これに混合溶剤(メチルエチルケトン25.0g、トルエン15.0g、シクロヘキサノン10.0g)50gを加え、15分間超音波分散を行って懸濁状態とした後、50ml沈降管に入れ回転数10000rpmで15分間遠心分離を行い、固形部分と溶剤部分とを分離する。そして、溶剤部分の樹脂固形分濃度を測定することによって、粒子表面に吸着していた樹脂のうち溶剤相に抽出された樹脂量を定量する。
【0145】
更に、上記固形部分のみの100mlトールビーカーへの全量取り出しから溶剤相に溶け出した樹脂量の定量までの操作を2回繰り返し、合計3回の溶剤相中における樹脂の抽出量の総和We(mg/g)を求め、下記の式に従って求めた値を樹脂吸着強度T(%)とした。
【0146】
T(%)=〔(Wa−We)/Wa〕×100
【0147】
非磁性下地層及び磁気記録層の塗膜表面の光沢度は、「グロスメーターUGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて塗膜の45°光沢度を測定して求めた。
【0148】
表面粗度Raは、「Surfcom−575A」(東京精密株式会社製)を用いて塗布膜の中心線平均粗さRaを測定した。
【0149】
磁気記録媒体の耐久性については、次の走行耐久性とすり傷特性を評価した。
【0150】
走行耐久性は、「Media Durability Tester MDT−3000」(Steinberg Associates社製)を用いて、負荷200gw、ヘッドとテープとの相対速度16m/sにおける実可動時間で評価した、実可動時間が長いほど走行耐久性が良好であることを示す。
【0151】
すり傷特性は、走行後のテープの表面を顕微鏡で観察し、すり傷の有無を目視で評価し、下記の4段階の評価を行った。
A:すり傷なし
B:すり傷若干有り
C:すり傷有り
D:ひどいすり傷有り
【0152】
塗膜の強度は、「オートグラフ」(株式会社島津製作所製)を用いて塗膜のヤング率を測定して求めた。ヤング率は市販ビデオテープ「AV T−120(日本ビクター株式会社製)」との相対値で表した。相対値が高いほど塗膜の強度が良好であることを示す。
【0153】
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末及び磁気記録媒体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を使用し、外部磁場10KOeまでかけて測定した。
【0154】
磁気記録層中の鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気記録媒体の磁気特性の経時変化は、磁気記録媒体を温度60℃、相対湿度90%の環境下に14日間放置し、放置前後の保磁力値及び飽和磁束密度値を測定し、その変化量を放置前の値で除した値を変化率として百分率で示した。
【0155】
光透過の程度は、「自記分光光度計UV−2100」(株式会社島津製作所製)を用いて磁気記録媒体について測定した光透過率の値を下記式に挿入して算出した線吸収係数で示した。線吸収係数は、その値が大きいほど、光を透しにくいことを示す。光透過率の値を測定するにあたっては、上記磁気記録媒体に用いた非磁性支持体と同一の非磁性支持体をブランクとして用いた。
【0156】
線吸収係数(μm−1)=〔ln(1/t)〕/FT
t:λ=900nmにおける光透過率(−)
FT:測定に用いたフィルムの塗布層(非磁性下地層の膜厚と磁気記録層の膜厚との総和)の厚み(μm)
【0157】
磁気記録媒体を構成している非磁性支持体、非磁性下地層及び磁気記録層の各層の厚みは、下記の方法によって測定した。
即ち、デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みはB−Aで示し、磁気記録層の厚みはC−Bで示した。
【0158】
<紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造>
硫酸第一鉄水溶液と炭酸ナトリウム水溶液とを用いて、前記ゲータイト粒子粉末の製造法▲2▼により得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末(平均長軸径0.171μm、平均短軸径0.0213μm、軸比8.0、長軸径の幾何標準偏差値1.34、BET比表面積値151.6m/g、粉体pH値5.8、可溶性ナトリウム塩の含有量(Na換算721ppm、可溶性硫酸塩の含有量(SO換算1121ppm)1200gを水中に懸濁させてスラリーとし、固形分濃度を8g/lに調整した。このスラリー150lを加熱し、温度を60℃とし、0.1NのNaOH水溶液を加えてスラリーのpH値を10.0に調整した。
【0159】
次に、上記アルカリ性スラリー中に、焼結防止剤として3号水ガラス36gを徐々に加え、添加が終わった後、60分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1Nの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を6.0に調整した。その後、常法により、濾別、水洗、乾燥、粉砕を行い、ケイ素の酸化物が粒子表面に被覆されている紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。ケイ素の含有量はSiO換算で0.78重量%であった。
【0160】
得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末1000gを、ステンレス製回転炉に投入し、回転駆動させながら空気中350℃で40分間加熱脱水処理を行い、低密度紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0161】
得られた低密度紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.145μm、平均短軸径が0.0193μm、軸比が7.5、長軸径の幾何標準偏差値が1.34、BET比表面積値(SBET)が176.5m/g、密度化の程度を示すSBET/STEM値が4.15、粉体pH値が6.3、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で1717ppm、可溶性硫酸塩がSO換算で1011ppm、ケイ素の含有量はSiO換算で0.85重量%であった。
【0162】
次に、上記低密度紡錘状ヘマタイト粒子粉末850gをセラミック製の回転炉に投入し、回転駆動させながら空気中610℃で30分間熱処理を行い、脱水孔の封孔処理を行った。
【0163】
高密度化された紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.137μm、平均短軸径が0.0190μm、軸比が7.2、長軸径の幾何標準偏差値1.35、BET比表面積値(SBET)が55.3m/g、密度化の程度を示す比SBET/STEM値が1.28、粉体pH値が5.3、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で2626ppm、可溶性硫酸塩がSO換算で3104ppm、ケイ素の含有量はSiO換算で0.85重量%であった。
【0164】
得られた高密度化された紡錘状ヘマタイト粒子粉末800gをあらかじめ奈良式粉砕機で粗粉砕した後、純水4.7lに投入し、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて60分間解膠した。
【0165】
次に、高密度化された紡錘状ヘマタイト粒子粉末のスラリーを横型SGM(ディスパマットSL:エスシー・アディケム株式会社製)で循環しながら、軸回転数2000rpmのもとで3時間混合・分散した。スラリー中の紡錘状ヘマタイト粒子粉末の325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。
【0166】
<紡錘状ヘマタイト粒子粉末の酸による溶解処理>
得られた高密度化された紡錘状ヘマタイト粒子粉末のスラリーに水を添加して該スラリーの濃度を100g/lとした後、当該スラリーを7l採取した。採取したスラリーを攪拌しながら、70重量%の硫酸水溶液を加えてスラリーの酸濃度を1.3Nとした。この時のスラリーのpH値は0.65であった。次に、このスラリーを攪拌しながら加熱して80℃まで昇温し、その温度で5時間保持して溶解処理を行い、液中に存在している紡錘状ヘマタイト粒子粉末全体量の29.7重量%を溶解させた。
【0167】
次に、このスラリーを濾別して濾液(硫酸鉄の酸性水溶液)を分離した。
スラリーから濾液を分離後、デカンテーション法により水洗し、pH値が5.0の水洗スラリーとした。この時点でのスラリー濃度を確認したところ68g/lであった。
【0168】
ここで、得られた水洗スラリーの一部を分取してブフナーロートを用いて濾別し、純水を通水して濾液の電導度が30μs以下になるまで水洗し、その後、常法によって乾燥させた後、粉砕して、紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0169】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.131μm、平均短軸径が0.0181μm、軸比が7.2、長軸径の幾何標準偏差値が1.35、BET比表面積値(SBET)が58.1m/g、密度化の程度を示すSBET/STEM値が1.28、粉体pH値が4.8、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で138ppm、可溶性硫酸塩の含有量がSO換算で436ppmであった。
【0170】
<紡錘状ヘマタイト粒子粉末のアルカリ性懸濁液の加熱処理>
上記酸による溶解処理後の紡錘状ヘマタイト粒子粉末の水洗スラリーに水を添加して濃度を50g/lとし、スラリー5lを採取した。このスラリーを攪拌しながら、6NのNaOH水溶液を加えてスラリーのpH値を13.6に調整した。次に、このスラリーを攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
【0171】
次に、このスラリーをデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5のスラリーとした。正確を期すため、この時点でのスラリー濃度を確認したところ98g/lであった。
【0172】
次に、得られた水洗スラリー1lをブフナーロートを用いて濾別し、純水を通水して濾液の電導度が30μs以下になるまで水洗し、その後、常法によって乾燥させた後、粉砕して、目的とする紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0173】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.131μm、平均短軸径が0.0181μm、軸比が7.2、長軸径の幾何標準偏差値が1.35、BET比表面積値(SBET)が57.8m/g、密度化の程度を示すSBET/STEM値が1.27、粉体pH値が9.3、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で99ppm、可溶性硫酸塩の含有量がSO換算で21ppmであった。
【0174】
<磁気記録媒体の製造−非磁性支持体上への非磁性下地層の形成>
上記で得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末12gと結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率72%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
【0175】
この混練物を140mlガラス瓶に1.5mmφガラスビーズ95g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンとともに添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って塗料組成物を得た。この時の塗料粘度は384cPであった。
【0176】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末を含む塗料の組成は、下記の通りであった。
Figure 0003832539
【0177】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末を含む塗料を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターを用いて55μmの厚さに塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。非磁性下地層の厚みは3.5μmであった。
【0178】
得られた非磁性下地層は、光沢が204%、表面粗度Raが6.6nm、塗膜のヤング率(相対値)は124であった。
【0179】
<磁気記録媒体の製造−磁気記録層の形成>
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末(平均長軸径0.115μm、平均短軸径0.0145μm、軸比7.9、保磁力1909Oe、飽和磁化値133.8emu/g、Al含有量(中心部1.26重量%、表層部0.84重量%、表面被覆0.75重量%)、Nd含有量0.12重量%、樹脂吸着強度81.6%)12g、研磨剤(商品名:AKP−30、住友化学(株)製)1.2g、カーボンブラック(商品名:#3250B、三菱化成(株)製)0.36g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率78%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
【0180】
この混練物を140mlガラス瓶に1.5mmφガラスビーズ95g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンとともに添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行った後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散して磁性塗料を得た。
【0181】
得られた磁性塗料の組成は下記の通りであった。
Figure 0003832539
【0182】
上記磁性塗料を前記非磁性下地層の上にアプリケーターを用いて15μmの厚さに塗布した後、磁場中において配向・乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行い0.5インチ幅にスリットして磁気テープを得た。磁気記録層の厚みは1.0μmであった。
【0183】
得られた磁気テープは、保磁力値が1980Oe、角型比(Br/Bm)が0.88、光沢度が223%、表面粗度Raが6.4nm、塗膜のヤング率(相対値)が128、線吸収係数が1.24μm−1、走行耐久性が28.9分、すり傷特性がAであり、磁気テープの耐腐蝕性を示す保磁力の変化率は4.6%、飽和磁束密度の変化率は2.7%であった。
【0184】
【作用】
本発明において最も重要な点は、平均長軸径0.005〜0.30μm、BET比表面積値35〜150m/gである針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液を酸濃度1.0N以上,pH値3.0以下,温度範囲20〜100℃の条件で酸による溶解処理を行い、該水性懸濁液中に存在する針状ヘマタイト粒子粉末全体量の5〜50重量%を溶解させた後、残存する針状ヘマタイト粒子粉末を水洗して得られる針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調製した後、80〜103℃の温度範囲で加熱処理し、次いで、濾別、水洗、乾燥して得られた平均長軸径0.004〜0.295μm、BET比表面積値35.9〜212m/g、粉体pH値が8以上、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO換算で150ppm以下の針状ヘマタイト粒子粉末を非磁性下地層用の非磁性粒子粉末として使用した場合には、該結合剤樹脂中における分散性が優れていることに起因して、非磁性下地層の表面平滑性と基体の強度を向上させることができ、当該非磁性下地層の上にアルミニウムが存在している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を用いた磁気記録層を設けた場合に、磁気記録層の光透過率が小さく、強度が大きいとともに、より表面平滑であって、且つ、より耐久性に優れている磁気記録媒体を得ることができるとともに、磁気記録層中に分散させているアルミニウムが存在している鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化を抑制することができるという事実である。
【0185】
非磁性下地層の表面平滑性と基体の強度を向上させることができた理由について、本発明者は、高密度針状ヘマタイト粒子相互を強固に架橋して凝集させる原因となっている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を十分水洗除去することができたことに起因して、凝集物が解きほぐされて、実質的に独立している粒子とすることができ、その結果、ビヒクル中における分散性が優れた針状ヘマタイト粒子粉末が得られることによるものと考えている。
【0186】
本発明に係る磁気記録媒体の表面平滑性が向上する理由について、本発明者は、本発明における針状ヘマタイト粒子の長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下であり、粗大な粒子や微細な粒子の存在が少ない粒子であること及びBET比表面積値が35.9〜212m/gであり、粒子内部及び粒子表面に脱水孔が少ない粒子であることの相乗効果により、ビヒクル中での分散性が向上し、その結果、得られる非磁性下地層の表面平滑性が向上したためと考えている。
【0187】
また、本発明に係る磁気記録媒体の表面平滑性が優れているもう一つの理由として、本発明者は、針状ヘマタイト粒子相互を強固に架橋して凝集させる原因となっている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を十分水洗除去することができたことに起因して、凝集物が解きほぐされて、実質的に独立している粒子とすることができ、その結果、ビヒクル中における分散性が優れた針状ヘマタイト粒子が得られることによるものと考えている。
【0188】
本発明における針状ヘマタイト粒子粉末はビヒクル中における分散性が優れているという事実について、以下に説明する。
【0189】
出発原料として使用する針状ゲータイト粒子粉末は、前述した通り、各種製造法により製造されるが、いずれの方法においても針状ゲータイト粒子粉末を製造する主な原料が硫酸第一鉄である場合には当然反応母液中に硫酸塩〔SO 2−〕が多量に存在している。
【0190】
特に、酸性溶液中からゲータイト粒子を生成する場合には、同時に、NaSO等水可溶性硫酸塩を生じるとともに、反応母液にはK、NH4+、Na等アルカリ金属を含んでいるので、アルカリ金属や硫酸塩を含む沈澱を生じ易く、この沈澱はRFe(SO)(OH)(R=K、NH4+、Na)で示される。これら沈澱物は難溶性の含硫鉄塩で常法による水洗によっては除去することができない。この難溶性塩はその後の加熱処理工程において可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩になるが、この可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩は、高密度化のための高温加熱処理工程において針状ヘマタイト粒子の形状の変形、粒子相互間の焼結を防止するために必須である焼結防止剤によって、針状ヘマタイト粒子相互を架橋しながら粒子内部及び粒子表面に強固に結合されることにより、針状ヘマタイト粒子相互間の凝集が一層強まる。その結果、殊に、粒子内部や凝集物内部に閉じ込められた可溶性硫酸塩や可溶性ナトリウム塩は、常法による水洗によって除去することが極めて困難となる。
【0191】
硫酸第一鉄と水酸化ナトリウムとを用いてアルカリ性水溶液中で針状ゲータイト粒子を生成する場合には、同時に生成される硫酸塩はNaSOであり、また、母液中にNaOHが存在し、これらは共に可溶性であるため針状ゲータイト粒子を十分水洗すれば本質的にはNaSO及びNaOHを除去できるはずである。しかし、一般には針状ゲータイト粒子の結晶性が小さいため、水洗効率が悪く、常法により水洗した場合、なお、粒子中に可溶性硫酸塩〔SO 2−〕、可溶性ナトリウム塩〔Na〕等水可溶性分を含んでいる。そして、この水可溶性分は、前述した通り、焼結防止剤によって針状ヘマタイト粒子相互を架橋しながら粒子内部及び粒子表面に強固に結合されることにより、針状ヘマタイト粒子相互間の凝集が一層強まる。その結果、殊に、粒子内部や凝集物内部に閉じ込められた可溶性硫酸塩や可溶性ナトリウム塩は、常法による水洗によって除去することが極めて困難となる。
【0192】
上述した通り、可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩が焼結防止剤を介在して粒子内部や粒子表面及び凝集物内部に強く結合されている高密度ヘマタイト粒子は、湿式粉砕して粗粒をほぐした後、スラリーのpH値を13以上に調整し、80℃以上の温度で加熱処理すると、アルカリ性水溶液が高密度ヘマタイト粒子の粒子内部まで十分浸透し、その結果、粒子内部や粒子表面及び凝集物内部に強く結合している焼結防止剤の結合力が徐々に弱まり、粒子内部や粒子表面及び凝集物内部から解離され、同時に水可溶性ナトリウム塩や水可溶性硫酸塩も水洗除去しやすくなるものと考えられる。
【0193】
また、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制される理由について、本発明者は、非磁性下地層用針状ヘマタイト粒子粉末の金属の腐蝕を促進する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩等の可溶性分が少ないこと及び粉体pH値が8以上と高いことに起因して、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕の進行を抑制できたものと考えている。
【0194】
事実、本発明者は、後出の実施例及び比較例に示す通り、湿式粉砕後の針状ヘマタイト粒子粉末を、pH値が13未満のアルカリ性懸濁液中で80℃以上の温度をかけて加熱処理した場合、湿式粉砕後の針状ヘマタイト粒子粉末を、pH値が13以上のアルカリ性懸濁液中で80℃未満の温度をかけて加熱処理した場合、針状ヘマタイト粒子粉末を湿式粉砕をすることなく粗粒を含んだままで、pH値13以上のアルカリ性懸濁液中で80℃以上の温度をかけて加熱処理した場合のいずれの場合にも、アルミニウムが存在している鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の腐蝕の進行を十分には抑制できないことから、可溶性分が少ないことと、粉体pH値が8以上であることの相乗効果により鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の腐蝕の進行が抑制できるという現象を確認している。
【0195】
また、本発明に係る磁気記録媒体の耐久性が向上した理由については未だ明らかではないが、本発明者は、アルミニウムが存在している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を磁性粒子として用いたことに起因して、塗料中における磁性粒子に対する結合剤樹脂の吸着強度が高まり、その結果、磁気記録層中における磁性粒子や磁気記録層自体の非磁性下地層に対する密着度が高まったことによるものと考えている。
【0196】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0197】
<針状ゲータイト粒子粉末の種類>
出発原料1〜6
針状ヘマタイト粒子粉末の出発原料として、表1に示す特性を有する針状ゲータイト粒子粉末を準備した。
【0198】
【表1】
Figure 0003832539
【0199】
<低密度針状ヘマタイト粒子粉末の製造>
実施例1〜7、比較例1〜6
出発原料である針状ゲータイト粒子粉末の種類、焼結防止剤の種類及び添加量、加熱脱水温度及び時間を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして、低密度針状ヘマタイト粒子粉末を得た。なお、比較例4で得られた粒子粉末は、針状ゲータイト粒子粉末である。
【0200】
この時の主要製造条件を表2に、得られた低密度針状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0201】
【表2】
Figure 0003832539
【0202】
【表3】
Figure 0003832539
【0203】
<高密度針状ヘマタイト粒子粉末の製造>
実施例8〜14、比較例7〜11
低密度針状ヘマタイト粒子粉末の種類、高密度化加熱処理の温度及び時間を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして、高密度針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0204】
この時の主要製造条件を表4に、得られた高密度針状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表5に示す。
【0205】
【表4】
Figure 0003832539
【0206】
【表5】
Figure 0003832539
【0207】
<針状ヘマタイト粒子粉末の酸による溶解処理>
実施例15〜21、比較例12〜13
高密度針状ヘマタイト粒子粉末の種類、湿式粉砕の有無、酸濃度、スラリーのpH値、加熱温度及び加熱時間を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして、針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0208】
この時の主要製造条件を表6に、得られた針状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表7に示す。
【0209】
【表6】
Figure 0003832539
【0210】
【表7】
Figure 0003832539
【0211】
<針状ヘマタイト粒子粉末のアルカリ性懸濁液の加熱処理>
実施例22〜28、参考例1〜2
針状ヘマタイト粒子粉末の種類、アルカリ性懸濁液のpH値、加熱温度及び加熱時間を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0212】
この時の主要製造条件を表8に、得られた針状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表9に示す。
【0213】
【表8】
Figure 0003832539
【0214】
【表9】
Figure 0003832539
【0215】
<針状ヘマタイト粒子粉末の表面被覆処理>
実施例29
アルカリ性懸濁液中における加熱処理後にデカンテーション法により水洗して得られた実施例22のpH値が10.5の水洗スラリーは、スラリー濃度が68g/lであった。この水洗スラリー5lを再度加熱して60℃とし、該スラリーに1.0Nのアルミン酸ナトリウム水溶液126ml(針状ヘマタイト粒子に対しAl換算で1.0重量%に相当する。)を加え、30分間保持した後、酢酸水溶液を用いてpH値を8.0に調整した。次いで、前記本発明の実施の形態と同様にして、濾別、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面が被覆物により被覆されている粒子からなる針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0216】
この時の主要製造条件を表10に、得られた針状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表11に示す。
【0217】
実施例30〜35
針状ヘマタイト粒子粉末の種類、表面処理物の種類及び添加量を種々変化させた以外は、実施例29と同様にして、常法により粒子表面が被覆物により被覆されている粒子からなる針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0218】
この時の主要製造条件を表10に、得られた針状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表11に示す。
【0219】
【表10】
Figure 0003832539
【0220】
【表11】
Figure 0003832539
【0221】
<磁気記録媒体の製造−非磁性支持体上への非磁性下地層の形成>
実施例36〜49、比較例14〜22、参考例3〜11
実施例15〜35、比較例1、3、7〜13及び参考例1、2で得られた針状ヘマタイト粒子粉末を用いて、前記本発明の実施の形態と同様にして、非磁性下地層を形成した。
【0222】
この時の主要製造条件及び諸特性を表12乃び表13に示す。
【0223】
【表12】
Figure 0003832539
【0224】
【表13】
Figure 0003832539
【0225】
<磁気記録媒体の製造−磁気記録層の形成>
磁気記録層の形成に用いた磁性粒子粉末とその諸特性を表14に示す。
【0226】
【表14】
Figure 0003832539
【0227】
実施例50〜63、比較例23〜31、参考例12〜20
実施例36〜49、比較例14〜22及び参考例3〜11で得られた非磁性下地層の種類、磁性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして、磁気記録媒体を製造した。
【0228】
この時の主要製造条件及び諸特性を表15乃び表16に示す。
【0229】
【表15】
Figure 0003832539
【0230】
【表16】
Figure 0003832539
【0231】
【発明の効果】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性下地層用非磁性粉末として針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、微粒子成分が少ないこと、及び、粉体pHが8以上であって、可溶性塩の含有量が少ないことに起因してビヒクル中での分散性が優れているので強度と表面平滑性に優れている非磁性下地層を得ることができ、該非磁性下地層を用い、且つ、磁気記録層の磁性粒子粉末として所定量のAlを含有する鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を用いて磁気記録媒体とした場合には、光透過率が小さく、表面平滑性に優れ、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化を抑制することができるので高密度磁気記録媒体として好適である。

Claims (2)

  1. 非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末はAl換算で0.05〜10重量%のアルミニウムが存在している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末であり、且つ、前記非磁性粒子粉末が、平均長軸径0.005〜0.30μm、BET比表面積値35〜150m/gである針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液を酸濃度1.0N以上,pH値3.0以下,温度範囲20〜100℃の条件で酸による溶解処理を行い、該水性懸濁液中に存在する針状ヘマタイト粒子粉末全体量の5〜50重量%を溶解させた後、残存する針状ヘマタイト粒子粉末を水洗して得られる針状ヘマタイト粒子粉末の水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調製した後、80〜103℃の温度範囲で加熱処理し、次いで、濾別、水洗、乾燥して得られた平均長軸径0.004〜0.295μm、BET比表面積値35.9〜212m/g、粉体pH値が8以上、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO換算で150ppm以下の針状ヘマタイト粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 磁気記録媒体の非磁性下地層用針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面が、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物又はケイ素の酸化物の少なくとも一種で被覆されている請求項1記載の磁気記録媒体。
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