JP3840540B2 - 炭酸ガス吸収材及びその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸ガス吸収材に関するものであり、更に詳しくは、炭酸ガスの排出削減に有用な、石炭ガス化炉等より排出される高温ガスから炭酸ガスを効率よく捕捉することが可能な新規炭酸ガス吸収材及びその用途に関するものである。本発明は、800〜1000℃の高温度範囲で石炭ガス化炉等より排出される高温ガスから炭酸ガスを選択的に分離することを可能とする新規炭酸ガス吸収材及び炭酸ガス分離方法を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
石炭ガス化炉におけるガス化温度は、先行技術文献(例えば、特許文献1参照)に記載されているように、2000℃程度まで温度が上昇する。ガス化の吸熱反応による温度低下で、ガス化炉出口温度におけるガスの温度は1100℃程度となる。一般に、発電所などから排出される炭酸ガスの分離方法としては、アミン系溶媒による化学吸着法などが広く知られている。アミン系溶媒を用いた炭酸ガス分離では排ガス温度を200℃以下に抑える必要がある。
【0003】
高温における炭酸ガスの分離技術に関しては、先行技術文献(例えば、特許文献2参照)に記載されているように、リチウム系のシリーケートやジルコネート複合酸化物が知られている。リチウム系複酸化物の炭酸ガス吸収は、750℃程度の温度であり、これより更に高温で繰り返し使用可能な炭酸ガス吸収材料は開発されていない。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−161284号公報
【特許文献2】
特開2001−269533号公報
【0005】
以上に述べた炭酸ガス吸収材については、前記したように、アミン系溶媒を用いた炭酸ガス分離では、排ガス温度を200℃以下に抑える必要があり、高温に熱せられたガスの高温利用を勘案すると、炭酸ガス分離のためのエネルギー消費量が結果的に多くなるという問題があった。したがって、炭酸ガスの分離及び回収は高温で行う方がコスト的に有利である。また、高温で使用可能な炭酸ガス吸収材としては、前記したように、リチウム系化合物があるが、リチウム系化合物の炭酸ガスを吸収する温度は750℃程度であり、1000℃程度の高温となる石炭ガス化炉出口で、直接、炭酸ガスのみを高い効率で吸収する材料は開発されていない。
【0006】
また、リチウム系化合物については、リチウムの地上における物質存在量を示すクラーク数は小さく、ナトリウムやカリウムの1/400から1/500であり、発電所から排出される排ガス中の炭酸ガスを捕捉するような大容量の炭酸ガス吸着が要求される部位での炭酸ガス吸収材としては、物質存在量の観点から問題があった。また、リチウムは、希少な元素であるため、ナトリウムやカリウムのような他のアルカリ金属元素や、マグネシウムやカルシウムのような他のアルカリ土類金属元素と比較すると、コストが高いという問題もあった。
【0007】
また、一般に、酸化物セラミックスは、高温では焼結により粒子が成長し、大きくなる。したがって、表面反応を利用した機能は、粒子が大きくなることにより表面反応に寄与しない物質割合が増加するため、高温における長時間あるいは繰り返し使用で機能が低下するという問題がある。物質存在量が多いカルシウムやマグネシウム、あるいはナトリウムやカリウムなどの酸化物は、高温で若干昇華することが知られており、また、焼結による炭酸ガス吸収機能の低下と同時に蒸発による損耗が問題となる。
【0008】
このように、従来のアミン系炭酸ガス吸収材は、高温に熱せられたガスの高温利用を勘案した場合、炭酸ガス分離のためのエネルギー消費量が結果的に多くなるという問題があった。また、高温における炭酸ガスの分離を可能とするリチウム系炭酸ガス吸着材は、物質存在量及びコストの観点から問題があった。石炭ガス化炉のガス出口温度である1000℃程度において、高温で効果的に炭酸ガスを捕捉するための材料は、これまで開発されていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい炭酸ガス吸収材を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物を利用することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、物質存在量が豊富なカルシウムとナトリウムを用いて炭酸ガス吸収材を構成することで物質存在量の問題を解決すると共に、高温におけるカルシアの焼結及び蒸発を抑制し、800〜1000℃の高温度範囲で炭酸ガスを捕捉することにより、石炭ガス化炉等より出てくる高温ガスから、直接、炭酸ガスのみを捕捉すること及び繰り返し使用することを可能とする新規炭酸ガス吸収材、及び該炭酸ガス吸収材を用いた炭酸ガス分離方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、(1)800〜1000℃の高温域において可逆的に炭酸ガスを吸収及び放出し、かつ高温におけるカルシアの焼結による炭酸ガス吸収効率の低下を抑制する炭酸ガス吸収材であって、炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物からなることを特徴とする炭酸ガス吸収材、である。
また、本発明は、(2)ナトリウム−カルシウム複炭酸塩が、ナトリウムとカルシウムの比が1:1となるナトリウム−カルシウム複炭酸塩であることを特徴とする上記(1)の炭酸ガス吸収材、(3)炭酸ガス吸収材が、炭酸カルシウムに炭酸水素ナトリウムを添加し、200℃以上の高温で炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物としたものであることを特徴とする上記(1)の炭酸ガス吸収材、(4)炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加したことを特徴とする上記(1)の炭酸ガス吸収材、を好ましい実施態様とするものである。
また、本発明は、(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の炭酸ガス吸収材の前駆体であって、炭酸カルシウムに炭酸水素ナトリウムを、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加したことを特徴とする炭酸ガス吸収材前駆体、である。
また、本発明は、(6)上記(1)の炭酸ガス吸収材の炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、該炭酸ガス吸収材に、800〜1000℃の高温度範囲で石炭ガス化炉等より排出される高温ガス中の炭酸ガスを捕捉させて、該高温ガスから炭酸ガスを分離することを特徴とする炭酸ガス分離方法、である。
更に、本発明は、(7)炭酸ガスの吸収及び放出反応をナトリウムとカルシウムの比が1:1となるナトリウム−カルシウム炭酸塩の溶融状態下で行うことを特徴とする上記(6)の炭酸ガス分離方法、を好ましい実施態様とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加し、800〜1000℃の高温で炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物とし、前記複炭酸塩の溶融状態下でカルシアにより炭酸ガスを吸収させることにより、カルシアの焼結を抑制すると同時に高温におけるカルシアの蒸発をも抑制させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の炭酸ガス吸収材は、800〜1000℃の高温域において可逆的に炭酸ガスを吸収及び放出し、かつ高温におけるカルシアの焼結による炭酸ガス吸収効率の低下を抑制する炭酸ガス吸収材であって、炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物からなることを特徴とするものである。上記炭酸ガス吸収材は、炭酸カルシウムに炭酸水素ナトリウムを添加し、200℃以上の高温で炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物とした形で用いられる。この場合、炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加することが好ましい。即ち、本発明では、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを1モル以下の適宜のモル比で添加することができる。これにより、ナトリウムとカルシウムの比が1:1なるナトリウム−カルシウム複炭酸塩が生成する。
【0013】
本発明において、原料の炭酸カルシウム、及びナトリウム源としては、好適には、例えば、市販の炭酸カルシウム粉末(高純度化学社製)、及び市販の炭酸水素ナトリウム粉末(和光純薬社製)が用いられるが、これらに制限されるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。上記炭酸ガス吸収材の調製方法を具体的に例示すると、例えば、所定のモル比になるように炭酸カルシウム粉末及び炭酸水素ナトリウム粉末を秤量し、メノウ乳鉢で2時間程度混合する方法が例示されるが、これらに制限されるものではなない。また、本発明の炭酸ガス分離方法は、上記炭酸ガス吸収材の炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、該炭酸ガス吸収材に、800〜1000℃の高温度範囲で石炭ガス化炉等より排出される高温ガスを捕捉させて、該高温ガスから炭酸ガスを選択的に分離することを特徴とするものである。上記炭酸ガス吸収材に高温ガスを接触させる方法及び手段は、特に制限されるものではなく、適宜の方法及び手段を採用することができる。本発明の炭酸ガス分離方法は、上記石炭ガス化炉等より排出される高温ガスに限らず、それらと同等の高温ガスであれば、同様に適用される。
【0014】
本発明の炭酸ガス吸収材は、200℃までの加熱で炭酸水素ナトリウムが分離して炭酸ナトリウムを生成すると共に、炭酸カルシウムと炭酸ナトリウムが反応し、ナトリウムとカルシウムの比が1:1となるようなナトリウム−カルシウム複炭酸塩が生成する。このナトリウム−カルシウム複炭酸塩は、813℃で溶融し、この溶融した複炭酸塩に炭酸カルシウムは取り込まれ、900℃で炭酸カルシウムは炭酸ガスを放出し、一方、炭酸ガスを放出した後のカルシアは、炭酸ガスを吸収する。これらの炭酸ガスの吸収及び放出反応は、ナトリウム−カルシウム複炭酸塩の融液を介して行われるために、炭酸カルシウムの重量減少が低く抑えられ、920℃以上の高温でも、カルシアの焼結が抑制されると同時に蒸発も抑制され、それにより上記炭酸ガス吸収材は、繰り返し使用することが可能である。
【0015】
次に、本発明の炭酸ガス吸収材の作用について説明する。
炭酸カルシウムは、約920℃の高温で、下記(1)式に示すように、カルシアと炭酸ガスに分解する。炭酸ガス雰囲気下では、(1)式は、可逆的な反応となる。この可逆的な反応は、炭酸ガス雰囲気下では、およそ900℃で起こる。
CaCO3 (s) → CaO(s) + CO2 (g) (1)
高温で炭酸ガスを放出したカルシアは、1000℃程度の高温下では、焼結により粒子が大きくなると同時に若干の蒸発により損耗する。
【0016】
炭酸カルシウムに炭酸水素ナトリウムを添加し、炭酸ガス雰囲気下で加熱すると、下記(2)式のような、炭酸カルシウムと、ナトリウムとカルシウムの比が2:1となるナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物が生成する。
CaCO3 +x NaHCO3 →(1−x/2)CaCO3 +x/2 Na2Ca(CO3)2 (2)
前記ナトリウム−カルシウム複炭酸塩は、813℃で溶融することが知られている。上記(1)式で示した炭酸カルシウムとカルシアの可逆的な反応は、溶融したナトリウム−カルシウム複炭酸塩に取り囲まれて起こる。
【0017】
炭酸カルシウムが炭酸ガスを放出する温度の直前でナトリウム−カルシウム複炭酸塩が溶融するため、まず、炭酸カルシウムがナトリウム−カルシウム複炭酸塩の融液に取り込まれ、炭酸カルシウムの炭酸ガス放出は、複炭酸塩の融液を介して起こる。炭酸ガスを放出したカルシアは、依然として、複炭酸塩の融液に取り込まれた状態となるため、カルシアの焼結が促進される900℃以上の温度域でもカルシアの焼結を抑制することができると同時にカルシアの蒸発をも抑制することができる。
【0018】
本発明の炭酸ガス吸収材は、前記したように、炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加して調製されるが、該炭酸ガス吸収材は、200℃以上の高温条件下での炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩の溶融状態下で、炭酸ガスを吸収及び放出し、炭酸ガス吸収材としての実際の機能を発揮する。本発明は、上記炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加して調製される、上記炭酸ガス吸収材の前駆体、及び、これを200℃以上の高温下で、炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物としてなる炭酸ガス吸収材、の両者をその範囲に包含する。
【0019】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)炭酸ガス吸収材の調製
市販の炭酸カルシウム粉末及び市販の炭酸水素ナトリウム粉末を用い、炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまでの添加量で所定のモルに比秤量し、メノウ乳鉢で約2時間混合して炭酸ガス吸収材の前駆体を調製した。該前駆体を炭酸ガス気流中において一旦200℃まで加熱し、炭酸カルシウムと炭酸水素ナトリウムを化学反応させてナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物である炭酸ガス吸収材とした。
【0020】
(2)炭酸ガスの吸収及び放出試験
上記炭酸ガス吸収材に、炭酸ガスを5ml/minの流量で流通させ、昇温及び降温速度を10℃/minとして、室温から1000℃までの温度範囲で昇温及び降温させた。上記方法において、炭酸ガス雰囲気下で室温から1000℃までの温度範囲で昇温及び降温させたときの熱流(heat flow)を示差熱分析計で測定した。また、上記昇温及び降温過程における炭酸ガス吸収材の重量減少率を熱重量分析計で測定した。また、1回の昇温及び降温で、600℃の条件で、炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの添加量を、カルシウムに対するナトリウムの原子比に換算した場合の、カルシウムに対するナトリウムの添加量と炭酸ガス吸収材の重量減少率との関係を調べた。
【0021】
更に、降温時の600℃において、カルシウムに対するナトリウムの添加量と炭酸ガス吸収率との関係を調べた。比較例として、純粋な炭酸カルシウムを用いて、該炭酸カルシウムに炭酸ガスを5ml/minの流量で流通させ、昇温及び降温速度を10℃/minとして、200℃から1200℃までの温度範囲で昇温及び降温させた。上記方法において、昇温及び降温による炭酸カルシウムの重量減少率を炭酸ガス気流中で熱重量分析計により測定した。
【0022】
(3)試験結果
図1に、純粋な炭酸カルシウムを用いて、炭酸ガス気流中で測定した熱重量分析の結果を示す。炭酸カルシウムは、炭酸ガス気流の雰囲気下で、920℃程度の温度から炭酸ガスを放出し始めてカルシアとなり、カルシアは、降温過程で880℃程度の温度から炭酸ガスを吸収し始め、炭酸カルシウムへ戻った。この炭酸ガス吸収及び放出反応は可逆的である。上記試験条件下では、炭酸ガスを放出した後のカルシアの920℃以上の高温における蒸発は少なく、ほぼ一定の値となった。カルシアの蒸発は低く抑えられているが、カルシアが、再び、炭酸ガスを吸収して炭酸カルシウムとなる場合、繰り返し毎に重量が減少した。200℃から600℃までの温度範囲では重量の変化がないので、600℃において炭酸カルシウムの重量減少率を測定したところ、1回の昇温及び降温での重量減少率は、24%であった。
【0023】
上記重量減少は、920℃で炭酸ガスを放出した後のカルシアが、上記試験条件下で焼結し、粒成長により比表面積が低下して、反応に寄与しないカルシアの体積が増加することに基づくと考えられる。上記試験条件では、炭酸ガスを放出した後、再び炭酸ガスを吸収するまでの時間は、わずか1時間であり、わずかな時間で、カルシアは焼結が進み、炭酸ガス吸収の機能が劣化した。昇温及び降温を繰り返す毎に重量減少率及び炭酸ガス吸収率は飽和していくことが分かった。昇温及び降温を6回繰り返した後の炭酸ガス吸収率は、11%に低下し、重量減少は、33%にまで増加した。
【0024】
図2に、炭酸カルシウムにカルシウムとナトリウムの原子比で1:0.305となるように炭酸水素ナトリウムを混合し、炭酸ガス雰囲気下で室温から1000℃までの温度範囲で昇温及び降温させたときの熱流(heat flow)を示差熱分析した結果を示す。200℃付近の吸熱反応は、前記(2)の化学反応式に対応する反応であり、200℃までの加熱で炭酸水素ナトリウムが分解して炭酸ナトリウムを生成すると共に、炭酸カルシウムと炭酸ナトリウムが反応し、ナトリウムとカルシウムの比が1:1となるようなナトリウム−カルシウム複炭酸塩の生成に対応した。ナトリウムとカルシウムの比が1:1となるようなナトリウム−カルシウム複炭酸塩は、813℃で溶融した後、溶融した複炭酸塩に炭酸カルシウムが取り込まれ、900℃で炭酸カルシウムは、炭酸ガスを放出した。炭酸ガスの放出反応は、ナトリウム−カルシウム複炭酸塩の融液を介して行われる。
【0025】
炭酸ガスを放出した後のカルシアもそのまま融液に取り込まれているため、920℃以上の高温でも粒同士の接触があまり起こらず、焼結が抑制されると同時に蒸発も抑制された。降温時には1000〜850℃の温度範囲で融液中のカルシアが炭酸ガスを吸収した。この場合の炭酸ガス吸収反応も、ナトリウム−カルシウム複炭酸塩の融液を介して行われる。炭酸ガスの吸収反応は、炭酸ガスが一旦融液に取り込まれる反応となり、これが律速段階となり、炭酸ガスは徐々に融液に取り込まれるため、炭酸ガスを吸収する時の発熱ピークは、炭酸ガスを放出するときの発熱ピークと比較して小さくなる。炭酸ガスの吸収は、ナトリウム−カルシウム複炭酸塩の凝固までに完了した。
【0026】
図3に、図2に対応する昇温及び降温過程における熱重量分析の結果を示す。1回の昇温及び降温による600℃における重量減少率は、およそ19%であり、炭酸カルシウムの時の24%と比較すると、重量減少が低く抑えられていた。これは、900℃以上の高温で炭酸ガスを放出したカルシアの焼結が抑制されたことを意味する。図4に、炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの添加量をカルシウムに対するナトリウムの原子比に換算した場合の、カルシウムに対するナトリウムの添加量と1回の昇温及び降温での重量減少率との関係を600℃で測定した値を示す。ナトリウムを添加し、前記のようなメカニズムで炭酸ガスの放出及び吸収反応を行わせることにより、重量減少率は直線的に減少した。このことは、高温におけるカルシアの焼結を抑制する効果は、ナトリウムの添加量に比例して大きくなることを意味する。ナトリウムを1モル%添加する毎に0.2%ほど重量減少を抑制することができた。
【0027】
ナトリウム添加量の増加と重量減少率が反比例するのは、ナトリウム添加量の増加に伴い、ナトリウム−カルシウム複炭酸塩の生成量が増加し、813℃以上での融液の体積も増加し、融液に取り込まれる炭酸カルシウムの量も増加するためであり、しかも、ナトリウムの添加量、複炭酸塩の生成量、融液の体積、取り込まれる炭酸カルシウムの量が、互いに線形の関係にあるためであると考えられる。図5に、降温時の600℃における炭酸ガスの吸収率をナトリウムの添加量に対してプロットした結果を示す。炭酸ガスの吸収量は、ナトリウムの添加量の増加に伴って若干減少するものの、ほぼ一定であった。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、炭酸ガス吸収材及びその用途に係るものであり、本発明の炭酸ガス吸収材は、1)物質存在量の問題を解決し、1000℃の高温においても、カルシアの焼結を抑制し、炭酸ガス吸収効率の低下を抑制することができる、2)800〜1000℃の高温度範囲で石炭ガス化炉等より出てくる高温ガスから、直接、かつ繰り返し使用可能で炭酸ガスのみを捕捉することができる炭酸ガス吸収材を提供することができる、3)上記炭酸ガス吸収材の炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、800〜1000℃の高温ガスから炭酸ガスを選択的に分離することが可能な炭酸ガス分離方法を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】純粋な炭酸カルシウムの熱重量分析の結果を示す。
【図2】カルシウムとナトリウムの原子比が1:0.93のときの示差熱分析の結果を示す。
【図3】カルシウムとナトリウムの原子比が1:0.93のときの熱重量分析の結果を示す。
【図4】ナトリウムの添加量に対する1回の昇温及び降温での重量減少率を示す。
【図5】ナトリウムの添加量に対する降温時の600℃における炭酸ガス吸収率を示す。

Claims (7)

  1. 800〜1000℃の高温域において可逆的に炭酸ガスを吸収及び放出し、かつ高温におけるカルシアの焼結による炭酸ガス吸収効率の低下を抑制する炭酸ガス吸収材であって、炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物からなることを特徴とする炭酸ガス吸収材。
  2. ナトリウム−カルシウム複炭酸塩が、ナトリウムとカルシウムの比が1:1となるナトリウム−カルシウム複炭酸塩であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス吸収材。
  3. 炭酸ガス吸収材が、炭酸カルシウムに炭酸水素ナトリウムを添加し、200℃以上の高温で炭酸カルシウムとナトリウム−カルシウム複炭酸塩との混合物としたものであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス吸収材。
  4. 炭酸カルシウムに対する炭酸水素ナトリウムの混合比が、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加したことを特徴とする請求項3記載の炭酸ガス吸収材。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の炭酸ガス吸収材の前駆体であって、炭酸カルシウムに炭酸水素ナトリウムを、原子比でカルシウム1モルに対してナトリウムを最大1モルまで添加したことを特徴とする炭酸ガス吸収材前駆体。
  6. 請求項1記載の炭酸ガス吸収材の炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、該炭酸ガス吸収材に、800〜1000℃の高温度範囲で石炭ガス化炉等より排出される高温ガス中の炭酸ガスを捕捉させて、該高温ガスから炭酸ガスを分離することを特徴とする炭酸ガス分離方法。
  7. 炭酸ガスの吸収及び放出反応を、ナトリウムとカルシウムの比が1:1となるナトリウム−カルシウム炭酸塩の溶融状態下で行うことを特徴とする請求項6記載の炭酸ガス分離方法。
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