JP3845713B2 - ポリ乳酸成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜構造を有するポリ乳酸成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、天然資源の枯渇、環境保護の観点から大量生産・大量消費型の経済活動は見直され、循環型社会への移行を迫られている。プラスチックでは、再生産のできない化石燃料の消費や使用後の処理が問題となっている。埋め立て処分では処分場の不足や、埋め立てた廃棄物から染み出す有害物質による環境汚染、焼却処分の場合には燃焼温度が高すぎるために焼却炉を傷めたり、ダイオキシンなどの有害物質発生による環境汚染などがある。
【0003】
これらの問題を解決する方策として、生分解性プラスチックの開発、利用が重要視されてきており、最近、価格が低下したこともあって、種々の分野で利用され始めている。現状、生分解性プラスチックの利用はプラスチック市場全体の1%にも満たないが、2017年には10%に達するとの試算もある。
【0004】
生分解性プラスチックのなかでも農産廃棄物を原料として得られるポリ乳酸は、再生可能な資源から生まれるプラスチックであり、機械的特性、価格の面からも最も普及が期待されている。また環境面では生分解することから、廃棄物問題が生じない。
【0005】
しかしながら、自然環境中であまりに容易に分解するようでは、日常の使用に支障を来す。通常、プラスチックに要求される強度と生分解性は相反するものであり両立は難しい。生分解性プラスチックも自然環境での分解にはある程度の時間を必要とするため、分解を促進する必要がある。特にポリ乳酸は、ガラス転移温度以上の環境(例えばコンポスト)では分解は速いが、外気温度(土中埋設など)では分解に数年を要する。
【0006】
これまでに、ポリ乳酸の分解性を向上するためにポリ乳酸以外の成分とのブレンド法が検討されてきた。例えば、ポリエチレングリコール(J. Appl. Polym. Sci.、1997、66、1495)やクエン酸エステル(J. Appl. Polym. Sci.、1997、66、1507)、ポリビニルアルコール(J. Appl. Polym. Sci.、2001、 81、2151)、ポリカプロラクトン(J. Appl. Polym. Sci.、1998、67、405)、プルロニック(ポリアルキレンオキサイド共重合体)(Macromolecules、1992、25、116)、ゼラチン(J. Biomater. Sci. Polym. Ed.、1995、7、23)などに関する報告がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリ乳酸と異成分を均一にブレンドする方法ではポリ乳酸本来の強度を保つことが難しく、実用化の際の課題となっていた。
本発明は、ポリ乳酸本来の強度を保ったまま、環境中での生分解が容易であるようなポリ乳酸成形体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の他の成分により傾斜構造を形成する成形体とすることにより、ポリ乳酸本来の強度を保ったまま、分解を促進させることが可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の成分である以下の(a)〜(e)からなる群より選ばれる1又は2以上の物質との傾斜構造を有する成形体であって、環境中で生分解性を有することを特徴とするポリ乳酸成形体を要旨とするものである。
(a)水溶性物質、(b)生分解性物質、(c)非水溶性無機物質(ただし、チタニアファイバーを除く)、(d)可塑剤、(e)界面活性剤
【0010】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における傾斜構造とは、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の他の成分(以下、本明細書において異成分という。)との混合物から得られる成形体に関して、ある方向にそって、ポリ乳酸と異成分の混合比率が連続的または断続的に変化している構造を指す。
本発明の傾斜構造を有するポリ乳酸成形体は、ポリ乳酸含有率の高い部分を有しているため、この部分がポリ乳酸本来の強度を維持することができる。従来のポリ乳酸と異成分とが均一に混合された成形体では、ポリ乳酸含有率の高い部分は存在せず、ポリ乳酸の強度を維持することが困難であった。したがって、均一混合された成形体と全体としてポリ乳酸含有率が等しい場合には、本発明の傾斜構造材料の方が強度が高くなることになる。
【0011】
本発明のポリ乳酸成形体において、成形体全体が傾斜構造となっていてもよく、また成形体の一部分が傾斜構造となっていても構わない。傾斜構造を形成している部分におけるポリ乳酸および異成分の含有率に特に制限はなく、0%を超え、100%未満であれば可能である。しかしながら、ポリ乳酸の強度特性を保つためにはポリ乳酸の含有量が30%以上の部分が成形体の一部分において存在していることが好ましく、さらに好ましくは50%以上である。
【0012】
本発明における異成分としては、有機物および/または無機物であり、ポリ乳酸とともに成形体が得られ、ポリ乳酸の分解を阻害しない物質であれば何でも良い。異成分は1種類であっても2種類以上であってもよく、また、2種類以上の混合物であってもよい。さらに、異成分がポリ乳酸を含む混合物や共重合体であっても構わない。
【0013】
異成分が有機物の場合、水溶性物質または生分解性物質が好ましい。
水溶性物質は、ポリ乳酸成形体を廃棄した際、水分に接触すると溶けだし、成形体中に微細な穴を形成し、ポリ乳酸の表面積を増大する。また水溶性物質が水分を吸着し、ポリ乳酸と水分との接触を促進する効果もある。これらの効果によってポリ乳酸の分解が促進されていると考えられる。
【0014】
そのような水溶性物質としては、天然あるいは変性の多糖類、オリゴ糖類または単糖類、合成高分子、タンパク質などがあげられる。具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、寒天、ゼラチン、プルラン、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリイソプロピルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアミン、アミノエチル化ポリマー、カチオン化デンプン、ポリビニルアミン、カチオン化ポリアクリルアミドなどがあげられる。また、これらの共重合体、化学修飾体であってもよい。これらのうち、ポリ乳酸との相溶性の点でポリエチレンオキサイドが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、ポリ乳酸の分解を大きく阻害しないものであれば何でも用いることができる。
【0015】
ここで用いられるポリエチレンオキサイドの数平均分子量は、水溶性の点で10万以下が好ましく、さらに好ましくは1万以下である。
【0016】
異成分として用いられる生分解性物質は、ポリ乳酸成形体を廃棄した際、水分や細菌の存在する土壌などに接触することで分解し、成形体中に微細な穴を形成し、ポリ乳酸の表面積を増大する。また生分解性物質が水分を吸着し、ポリ乳酸と水分との接触を促進する効果もある。これらの効果によってポリ乳酸の分解が促進されていると考えられる。
【0017】
そのような生分解性物質としては、天然あるいは変性の多糖類、オリゴ糖類または単糖類、天然高分子、微生物産生高分子、合成高分子、タンパク質などが考えられる。具体的にはセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエーテルウレタン変性物、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、カラギーナン、カードラン、アルブミン、カゼイン、アルギン酸、アルギン酸エステル、ヒアルロン酸、コラーゲン、デンプン、天然ゴム、アラビナン、キチン、キトサン、シルクフィブロイン、グアーガム、ローカストビーンガム、グリコーゲン、グルコマンナン、マンナン、デキストラン、プルラン、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリブチレンテレフタレート/アジペートなどがあげられる。また、これらの共重合体、化学修飾体であってもよい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、ポリ乳酸の分解を大きく阻害しないものであれば何でも用いることができる。
【0018】
本発明において異成分として無機物質でもよい。無機物質はポリ乳酸成形体を廃棄した際、水分に接触すると溶けだし、成形体中に微細な穴を形成し、ポリ乳酸の表面積を増大する。または、水分を吸着しポリ乳酸と水分との接触を促進したり、土壌中の分解細菌の生育を促進したりすると考えられる。これらの効果によってポリ乳酸の分解が促進されていると考えられる。
【0019】
そのような無機物質としては、熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、肥料、着色料、増粘剤などが考えられる。具体的には、硫酸アンモニウムや硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、石灰窒素、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、尿素、水酸化アルミニウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、トリエチルフォスフェート、重合性リン化合物、ポリリン酸などの水溶性物質が好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、ポリ乳酸の分解を大きく阻害しないものであれば何でも用いることができる。
【0020】
また、本発明における異成分として、非水溶性物質を界面活性剤と混合して用いたり、水溶性または生分解性物質と混合したりして用いると、ポリ乳酸成形体より脱離し易くなり、脱離した際、微細な穴を形成してポリ乳酸の分解を促進する。
【0021】
そのような非水溶性物質としては、熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、肥料、着色料、増粘剤などが考えられる。具体的には、タルクや層状ケイ酸塩、ハイドロタルサイト、ゼオライト、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、ハイドロキシアパタイト、シリコーン、炭酸カルシウム、モリブデン、ジルコニウム、酸化スズ、五酸化リン、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、クレーなどがあげられる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、ポリ乳酸の分解を大きく阻害しないものであれば何でも用いることができる。
【0022】
本発明における異成分として、可塑剤や界面活性剤を用いることもできる。可塑剤や界面活性剤はポリ乳酸成形体を廃棄した際、水分に接触すると溶けだし、成形体中に微細な穴を形成し、ポリ乳酸の表面積を増大する。または水分を吸着し、ポリ乳酸と水分との接触を促進する効果もある。これらの効果によってポリ乳酸の分解が促進していると考えられる。
【0023】
そのような可塑剤としては、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド共重合体、ポリアルキレンオキサイドトリオール、クエン酸誘導体、ソルビトール、マンニトール、ペンタエルスリトールエステル、グリセリンエステル、硬化ひまし油、エポキシ化植物油、ポリエステルオリゴマー、リン酸エステル、二塩基酸(セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、フタル酸など)エステル、トリメリット酸エステル、エポキシ系オリゴマーなどがあげられる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、ポリ乳酸の分解を大きく阻害しないものであれば何でも用いることができる。
【0024】
また界面活性剤としては、リン酸エステル、石鹸(脂肪酸塩)、高級アルコールのポリオキシエチレンエーテル、硫酸化エステル塩、脂肪族アミンまたはアミドの硫酸塩、脂肪族アミンおよびアミドの塩類、アルキルエーテル類、アルキルエステル類、オキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン、ポリアルキレンオキサイド共重合体、ポリエーテル変性シリコーンなどがあげられる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、ポリ乳酸の分解を大きく阻害しないものであれば何でも用いることができる。
【0025】
本発明のポリ乳酸成形体においては、ポリ乳酸および上記した異成分の他に、ポリ乳酸自身の特性を改良するために可塑剤を加えたり、ポリ乳酸と異成分との親和性を向上させるために界面活性剤などを含有してよい。
【0026】
本発明のポリ乳酸成形体の形態としては、繊維、フィルム、スパンボンドなど様々な形態に加工されていてもよい。
【0027】
次に、本発明のポリ乳酸成形体の作製方法について説明する。
本発明のポリ乳酸成形体を作製するには、溶液拡散法や積層法を採用することができる。しかしながら、これらに限定されるものではない。
溶液拡散法は、予め作製したポリ乳酸成形体表面に異成分を溶解した溶液を接触させ、ポリ乳酸と異成分とを混合させることにより表面に対して垂直方向に傾斜構造を形成させる方法である。したがって、ここで用いられる溶媒は、ポリ乳酸を溶解または膨潤する性質を有している必要がある。また、表面の一部に異成分の溶液を接触させた場合には表面に対し、平行な方向にも傾斜構造を形成することができる。また、ポリ乳酸と異成分との均一混合でできた成形体表面にポリ乳酸溶液を接触させ、同様の操作を行ってもよいし、接触させる溶液がポリ乳酸と異成分との混合物でもよい。
【0028】
積層法は、ポリ乳酸と異成分の混合比率の異なる成形体を作製し、それらを重ね合わせることで傾斜構造を得る方法である。
【0029】
本発明の傾斜構造を有するポリ乳酸成形体は、例えば包装容器に用いた場合、外気に接触する部分はポリ乳酸成分の多い構造とし、内部を異成分の多い構造とする。そうして使用後、廃棄する際に内部を外部環境にさらすと迅速な分解が始まる。また、ポリ乳酸成形体の傾斜構造をコントロールすることで分解速度を制御することも可能となる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例中の各種の分析方法は以下の通りである。
【0031】
(1)分子量の測定
ポリ乳酸の分子量はGPC法によって測定した。GPC装置として、東ソー社製8020システムを用いた。カラムは東ソー社製のKF803L×1、KF806F×2を用い、THFを溶媒として流速1ml/minで測定を行った。ポリスチレンを分子量標準試料として用いた。
【0032】
(2)顕微ラマン分光法による厚み方向のブレンド組成割合の測定
傾斜構造材料の厚み方向の成分濃度変化を調べるため、試料を切断し、断面を顕微ラマン分光分析器(RENISHAW社製、RAMASCOPE JRS-SYSTEM-1000)を用いて、小さなスポット領域(Φ2μm)を測定、評価した。成分比はラマンスペクトルで得られる各成分固有のピークを比較することで行った。例えば、ポリ乳酸ピークは873cm-1、PEOは844cm-1である。
【0033】
(3)引っ張り試験
傾斜構造を有する成形体を10mm×30mmの短冊状に切断し、試料とし、オートグラフ(島津製作所製DSS-5000)を用いて引っ張り試験を行った。引っ張り試験はチャック間距離10mm、引っ張り速度5mm/minであった。測定はそれぞれ3回行い、その平均値を測定結果とした。
【0034】
(4)酵素による分解実験
酵素溶液はpH7に調整した0.02%のアジ化ナトリウムを含有する10mMリン酸カリウム緩衝溶液にプロテイナーゼK(フナコシ(株)より購入)を5mg/mlだけ加えて調整した。さらに実験に用いた酵素分解実験溶液は酵素溶液2に対し、蒸留水42.5、2%アジ化ナトリウム水溶液0.5、リン酸カリウム緩衝溶液(0.5M、pH7)5の割合で混合することにより調整した。酵素分解実験溶液10mlに100mgのポリ乳酸フィルムを浸漬し、その重量減少および、形状変化を観察した。反応は振盪培養器中、27℃で振盪しながら行った。
【0035】
ただし、重量減少は、ポリ乳酸成分の重量減少率を以下の方法によって算出した。酵素のない溶液を用いて同じフィルムの分解実験を行い、この重量減少量はポリ乳酸以外の成分の重量減少分であるとしてフィルム全体の重量減少量から除いた。この値をポリ乳酸の重量減少分として、はじめのポリ乳酸量(1g)に対する重量減少率を計算した。
【0036】
(5)土中分解実験
フィルム状の成形体を用いて土中分解実験を行った。10cm×10cmの各種傾斜構造を有する(または有さない)試料を屋外の土壌の地下5cmに埋設し、重量変化および形態変化を観察した。観察期間は5ヶ月間で、平均気温は25℃、降雨量は750mmであった。
ただし、回収した試料を秤量してGPC測定を行い、実験前のポリ乳酸ピークの減少量をポリ乳酸成分の重量減少率として算出した。
【0037】
実施例1〔溶液拡散法による傾斜構造材料の作製〕
ポリ乳酸(カーギル・ダウ社製、平均分子量210,000)1gにクロロホルム40mlを加えて溶解させた後、シャーレにキャストし、室温で溶媒を留去することによりポリ乳酸フィルムを得た。次ぎに、ポリエチレンオキサイド(PEO)(ポリエチレングリコール4000、平均分子量3,000、和光純薬工業より購入)0.6gをクロロホルムに溶解し、溶液をシャーレ中のポリ乳酸フィルム上にキャストした。さらに、クロロホルムの量を60mlおよび80mlとすることで異なる傾斜構造を有する3種類の試料を調整した。得られたフィルムはラマン分光法により、傾斜組成を確認した後(図1)、引っ張り試験(図3、表1)、酵素分解試験(図4、表1)、土中分解試験(図5、表1)を行った。結果はそれぞれ図表に示した。
【0038】
実施例2〔積層法による傾斜構造材料の作製〕
ポリ乳酸0.2gおよびPEO0.32gにクロロホルム40mlを加えて溶解させた後、シャーレにキャストし、室温で溶媒を留去することによりポリ乳酸ブレンドフィルムを得た。さらにポリ乳酸は0.2gのまま、PEOをそれぞれ0.16g、0.08g、0.04g、0gとして同様にブレンドフィルムを作製した。これらのフィルムをPEOの組成比の順に重ね合わせて、170℃、5秒間、熱プレスした。すぐに冷却し、傾斜構造を有するフィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験(図3、表1)、酵素分解試験(図4、表1)、土中分解試験(図5、表1)を行った。結果はそれぞれ図表に示した。
【0039】
実施例3〔積層法による傾斜構造材料の作製〕
ポリ乳酸0.33gおよびPEO0.4gにクロロホルム40mlを加えて溶解させた後、シャーレにキャストし、室温で溶媒を留去することによりポリ乳酸ブレンドフィルムを得た。さらにポリ乳酸は0.33gのまま、PEOをそれぞれ0.2g、0gとして同様にブレンドフィルムを作製した。これらのフィルムをPEOの組成比の順に重ね合わせて170℃、5秒間、熱プレスした。すぐに冷却し、傾斜構造を有するフィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験(図3、表1)、酵素分解試験(図4、表1)、土中分解試験(図5、表1)を行った。結果はそれぞれ図表に示した。
【0040】
比較例1〔ポリ乳酸フィルムの作製〕
ポリ乳酸1.6gにクロロホルム40mlを加えて溶解させた後、シャーレにキャストし、室温で溶媒を留去することによりポリ乳酸フィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験(図3、表1)、酵素分解試験(図4、表1)、土中分解試験(図5、表1)を行った。結果はそれぞれ図表に示した。
【0041】
比較例2〔均一ブレンド材料の作製〕
ポリ乳酸1gおよびPEO0.6gにクロロホルム40mlを加えて溶解させた後、シャーレにキャストし、室温で溶媒を留去することによりポリ乳酸-PEO均一ブレンドフィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験(図3、表1)、酵素分解試験(図4、表1)、土中分解試験(図5、表1)を行った。結果はそれぞれ図表に示した。
【0042】
比較例3〔二層構造材料の作製〕
ポリ乳酸1gにクロロホルム40mlを加えて溶解させた後、シャーレにキャストし、室温で溶媒を留去することによりポリ乳酸フィルムを得た。次ぎに、PEO0.6gをメタノール50mlに溶解し、溶液をシャーレ中のポリ乳酸フィルム上にキャストした。室温でメタノールを留去し、二層構造を有するフィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験(図3、表1)、酵素分解試験(図4、表1)、土中分解試験(図5、表1)を行った。結果はそれぞれ図表に示した。
【0043】
実施例4〔溶液拡散法による傾斜構造材料の作製〕
PEOの代わりにビオノーレ(ビオノーレ#1010、平均分子量80,000、昭和高分子社製)を用いた以外は実施例1と同様に傾斜構造フィルムを作製した。ただし作製したフィルムは1種類のみである。得られたフィルムはラマン分光法により、傾斜組成を確認した後(図2)、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0044】
比較例4〔均一ブレンドフィルムの作製〕
PEOの代わりにビオノーレを用いた以外は比較例2と同様に均一ブレンドフィルムを作製した。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果をそれぞれ表1に示した。
【0045】
実施例5〔溶液拡散法による傾斜構造材料の作製〕
PEOの代わりにBis(butyldiglycol)adipate(BXA)(大八化学社製)0.3gを用いた以外は実施例1と同様に傾斜構造フィルムを作製した。ただし作製したフィルムは1種類のみである。得られたフィルムはラマン分光法により、傾斜組成を確認した後(図2)、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0046】
比較例5〔均一ブレンドフィルムの作製〕
PEOの代わりにBXA0.3gを用いた以外は比較例2と同様に均一ブレンドフィルムを作製した。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0047】
実施例6〔積層法による傾斜構造材料の作製〕
PEOの代わりに硫酸ナトリウム(和光純薬工業より購入)を用いた以外は実施例2と同様にキャストフィルムを作製した。作製したフィルムは硫酸ナトリウムの組成比の順に重ね合わせ、170℃で5秒間、熱プレスした後、急冷し、傾斜構造フィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0048】
比較例6〔均一ブレンドフィルムの作製〕
PEOの代わりに硫酸ナトリウムを用いた以外は比較例2と同様に均一ブレンドフィルムを作製した。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0049】
実施例7〔積層法による傾斜構造材料の作製〕
PEOの代わりにタルク(MICEL-TONE、平均粒径1.4μm、林化成社製)およびPEOを用いた以外は実施例2と同様にキャストフィルムを作製した。タルクとPEOの割合は1:1であった。作製したフィルムはタルクとPEO混合物の組成比の順に重ね合わせ、170℃で5秒間、熱プレスした後、急冷し、傾斜構造フィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果をそれぞれ表1に示した。
【0050】
比較例7〔均一ブレンドフィルムの作製〕
PEOの代わりにタルクとPEO混合物を用いた以外は比較例2と同様に均一ブレンドフィルムを作製した。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0051】
実施例8〔積層法による傾斜構造材料の作製〕
PEOの代わりにポリビニルアルコール(PVA)(ポリビニルアルコール、平均重合度2,000、和光純薬工業より購入)、クロロホルムの代わりにヘキサフルオロイソプロパノールを用いた以外は実施例2と同様にキャストフィルムを作製した。作製したフィルムはPVAの組成比の順に重ね合わせ、170℃で5秒間、熱プレスした後、急冷し、傾斜構造フィルムを得た。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0052】
比較例8〔均一ブレンドフィルムの作製〕
PEOの代わりにPVAを用いた以外は比較例2と同様に均一ブレンドフィルムを作製した。得られたフィルムは、引っ張り試験、酵素分解試験、土中分解試験を行った。結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
Figure 0003845713
【0054】
図1の結果から、溶液拡散法によって傾斜構造材料が得られたことが確認できた。図3および表1の結果を見ると、傾斜構造材料を有するフィルムの強度はポリ乳酸フィルムや二層構造フィルムに比較しても同等の強度を保持していることがわかる。均一ブレンドフィルムでは強度の低下が顕著である。
【0055】
図4、図5および表1からは傾斜構造材料におけるポリ乳酸成分の分解が均一ブレンドフィルムに比べても非常に速いことがわかる。二層構造材料およびポリ乳酸フィルムではポリ乳酸の分解は非常に遅い。
【0056】
以上の結果から、傾斜構造を有するポリ乳酸成形体はポリ乳酸の強度は保ったまま、他の構造のポリ乳酸成形体に比べて分解速度が著しく速くなることがわかった。したがって、本発明のポリ乳酸成形体は、ポリ乳酸成型品の強度は保ったまま、分解性を向上することが可能となった。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸成形体の強度を保ったまま、分解性を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたフィルムについて、ラマン分光法によるフィルム厚み方向に対するポリ乳酸比率を示した図である。
【図2】実施例4および5で得られたフィルムについて、ラマン分光法によるフィルム厚み方向に対するポリ乳酸比率を示した図である。
【図3】実施例1〜3、比較例1〜3で得られたフィルムについて引っ張り強度を示した図である。
【図4】実施例1〜3、比較例1〜3で得られたフィルムについて酵素による分解結果を示した図である。
【図5】実施例1〜3、比較例1〜3で得られたフィルムについて土中での分解結果を示す図である。

Claims (1)

  1. ポリ乳酸とポリ乳酸以外の成分である以下の(a)〜(e)からなる群より選ばれる1又は2以上の物質との傾斜構造を有する成形体であって、環境中で生分解性を有することを特徴とするポリ乳酸成形体。
    (a)水溶性物質、(b)生分解性物質、(c)非水溶性無機物質(ただし、チタニアファイバーを除く)、(d)可塑剤、(e)界面活性剤
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