JP3851094B2 - トロイダル型無段変速機及びこれに用いるローラの加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車の無段変速機に用いられるトロイダル型無段変速機及びこれに用いるローラの加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トロイダル型無段変速機は、複数の円盤状のローラを入力ディスクと出力ディスクとの間に配置して、各ローラの外周面(軌道面)と両ディスクに設けた各軌道面とを転がり接触させた構成を有している。各ローラは回転自在に軸支され、入力ディスクはエンジンにより回転駆動される入力軸に一体回転可能に取り付けられている。この入力軸の回転により、入力ディスクからローラを介在して出力ディスクにトルクが伝達される。変速は、ローラの回転軸が傾くことにより無段階で行われる。
上記のようなローラは、軸受鋼等の金属製の円盤状素材を所定形状に加工し、熱処理硬化させた後、仕上げ加工するものであり、主として上記の転がり接触によるトルク伝達を安定して行わせるために、特に外径を所望の寸法に高精度に仕上げることが要求されている。
【0003】
ここで、図3を参照して、従来のトロイダル型無段変速機のローラの加工方法について具体的に説明する。
従来のローラの加工方法では、図3(a)に示す断面矩形状の円盤状素材50に対して、一次旋削、熱処理、二次旋削、幅研削、内・外径研削、及び軌道面ラップを順次行い、所望のローラを形成していた。尚、図3(c)〜(f)に一点鎖線にて示す部分は、上記二次旋削、幅研削、内・外径研削、及び軌道面ラップでの加工部分をそれぞれ示している。
【0004】
詳細にいえば、図3(a)において、円盤状素材50の外周面50aを旋盤のチャック爪(図示せず)によってチャックし、一方の側面50bに対して、例えば外周面50aから中心軸Aの方向に旋削を行って同図(b)に示すボス部50dを形成する。その後、当該円盤状素材50を反転し上記チャック爪でボス部50dの外周をチャックして、他方の側面50cにも上記の旋削を行い、その側面50c側にもボス部50eを形成するとともに、円盤状素材50の中心部分に軸孔50gを形成し、さらに外周面50aの角落としを行いその断面形状を円弧状として、一次旋削を終了する。尚、図3(b)に示すように、一方のボス部50dは、少なくとも外周面50aに二次旋削を施すために、他方のボス部50eよりも大きい形状に形成されている。その後、その円盤状素材50をチャック爪から一旦取り外して焼入れ処理等の熱処理を行って硬化させる。
【0005】
次に、図3(c)に示すように、円盤状素材50の表面全体に対して二次旋削を行って、上記熱処理による熱膨張や熱歪み等の熱変形した部分が除去される。具体的には、まずボス部50d(図3(b))の外周をチャックして、外周面50a、側面50c、ボス部50e、及び軸孔50gの内周面50g1を旋削する。続いて、例えば外周面50aの外周をチャックした状態で、側面50bを旋削するとともに、ローラの回転バランスを確保するために、上記ボス部50dに旋削を行って他方のボス部50eと対称形状のボス部50fを形成する。
続いて、図3(d)において、例えば平面研削盤によってボス部50f,50eの各端面50f1,50e1を研削することにより、円盤状素材50の幅を所望の寸法に仕上げる幅研削が行われる。
【0006】
次に、図3(e)において、外周面50aをチャックした状態で、上記端面50e1を加工基準として内周面50g1を研削することにより、軸孔50gの内径が所望の寸法に仕上げられる。また、上記内周面50g1をチャックした状態で、上記側面50cを加工基準として外周面50aを研削することにより、円盤状素材50の外径が所望の寸法に仕上げられる。
続いて、図3(f)において、外周面50aにラップ仕上げを施すことにより、当該外周面50aがローラの軌道面として好適な表面粗さに仕上げられる。このように、この従来のローラの加工方法では、上述の一連の加工を円盤状素材50に施し所望のローラを形成していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のローラの加工方法では、少なくとも外周面50aを二次旋削するためのボス部50dを一方の側面50bに形成していたので、ローラとして実際に必要な幅寸法(図3(f)に”b”にて図示)よりもかなり大きい幅寸法(図3(a)に”B”にて図示)を有する円環状素材50からローラを形成する必要があり、円盤状素材(ローラ)50の素材歩留まりを向上することができず、当該無段変速機の製造コストが高くつくという問題があった。
また、この従来のローラの加工方法では、円盤状素材50の熱処理硬化後に、少なくともボス部50dに対して、上記の二次旋削を実施する必要があり、この二次旋削に時間及び手間を要するとともに旋削用工具の寿命が短く、生産性を高めることが困難であった。
【0008】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、ローラの素材歩留まりを向上して、製造コストを削減することができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
また、本発明は、製造コストを削減することができるとともに、生産性を高めることができるトロイダル型無段変速機に用いるローラの加工方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、回転自在に軸支された円盤状のローラを介在して入力ディスクと出力ディスクとの間のトルク伝達を行うトロイダル型無段変速機であって、
前記ローラの一側面の中心軸回りに、当該ローラをその加工時にチャックするための環状の凹部を形成し、当該ローラの回転バランスを確保するための凹部を他側面に形成し、当該ローラの両側面を面一に形成したことを特徴としている(請求項1)。
【0010】
上記のように構成されたトロイダル型無段変速機では、ローラをチャックするための環状の凹部を当該ローラの一側面の中心軸回りに形成し、当該ローラの回転バランスを確保するための凹部を他側面に形成し、当該ローラの両側面を面一に形成したことにより、その加工時においてローラの素材の幅寸法を大きくすることなく当該ローラをチャックすることができる。
【0011】
また、この発明のトロイダル型無段変速機のローラの加工方法は、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機のローラの加工方法において、
断面矩形状の円盤状素材の一側面の中心軸回りに、当該ローラをその加工時にチャックするための環状の凹部を旋削にて形成するとともに、当該ローラの回転バランスを確保するための凹部を他側面に旋削にて形成する工程と、
前記一側面に形成された前記凹部の周壁をチャックして、外周面を一次旋削する工程と、
前記凹部を形成した円盤状素材を熱処理硬化する工程と、
前記凹部の周壁をチャックして、少なくとも前記外周面を二次旋削により仕上げる工程と、
両側面を平面研削して幅寸法を仕上げる工程と、
前記凹部の周壁をチャックした状態で、前記両側面の一方を加工基準として中心軸の軸孔と前記外周面とを研削する工程とを備えたことを特徴としている(請求項2)。
【0012】
上記のように構成されたトロイダル型無段変速機のローラの加工方法では、断面矩形状の円盤状素材の一側面の中心軸回りに、当該ローラをその加工時にチャックするための環状の凹部を旋削にて形成するとともに、当該ローラの回転バランスを確保するための凹部を他側面に旋削にて形成する工程を行い、前記一側面に形成した凹部の周壁をチャックして、外周面を一次旋削する工程を行い、その形成した凹部の周壁をチャックして、少なくとも前記外周面を二次旋削により仕上げているので、円盤状素材の幅寸法を大きくすることなく当該円盤状素材を所望のローラに形成することができる。また、熱処理硬化する工程の前に、環状の凹部を形成しているので、当該凹部を形成する工程を容易に行うことができる。さらに、上記凹部は旋削等による仕上げ工程を実施する必要がないので、ローラの製造工数を削減することができる。
【0014】
入力ディスク1及び出力ディスク2の一側面には、凹湾曲状の軌道面1a及び2aがそれぞれ形成されており、各軌道面1a,2aが互いに対向するよう配置されている。また、これらの軌道面1a,2aの間はトロイド状隙間として構成されており、このトロイド状隙間において、上記ローラ3の軌道面である外周面3aと各軌道面1a,2aとが転がり接触することにより、入力ディスク1からローラ3を介して出力ディスク2にトルクを伝達している。尚、上記外周面3aと各軌道面1a,2aとの間には、潤滑剤として例えば潤滑油が供給されている。
【0015】
ローラ3は、軸受鋼等の金属により構成されたものであり、キャリッジ4によって回転自在に支持されている。具体的にいえば、ローラ3には、その中心部分に軸孔3fが形成されており、この軸孔3fに回転軸5が挿嵌されている。この回転軸5は、上記キャリッジ4に固定された玉軸受6,7によって回転自在に支持されたものであり、ローラ3とともに一体回転可能にキャリッジ4に取り付けられている。
また、ローラ3は、上記キャリッジ4によって各軌道面1a,2aとの相対位置を調整できるようになっている。このように、ローラ3の相対位置をキャリッジ4によって調整することにより、出力ディスク2の回転数(変速比)を増減させることができる。
また、上記ローラ3の両側面3b,3cには、環状の凹部3d,3eがそれぞれ形成されている。これらの凹部3d,3eは、対応する側面3b,3cを対称形状に旋削して中心軸回りに設けられたものであり、その加工時において旋盤のチャック爪等により当該ローラ3をチャック可能に構成されている。
【0016】
ここで、上記ローラ3の加工方法について、図2を参照して具体的に説明する。
本実施形態のローラの加工方法では、図2(a)に示す断面矩形状の円盤状素材30に対して、一次旋削、熱処理、二次旋削、幅研削、内・外径研削、及び軌道面ラップを順次行い、所望のローラ3を形成する。上記円盤状素材30は、その幅寸法が上記ローラ3とほぼ同じ幅寸法のものが用いられている。尚、図2(c)〜(f)に一点鎖線にて示す部分は、上記二次旋削、幅研削、内・外径研削、及び軌道面ラップでの加工部分をそれぞれ示している。
【0017】
詳細にいえば、図2(a)において、円盤状素材30の外周面30aを旋盤のチャック爪(図示せず)によってチャックし、一側面30bに対して、図示を省略した切削バイトを用いて中心軸A回りに旋削処理を行い同図(b)に示す凹部30dを形成する。これにより、中心軸Aの回りにボス部30gが形成される。尚、この凹部30dの具体的な深さ(上記チャック爪のチャック代)は、例えば5mmであり、その大径側は、ローラ3の外周付近に達している。
その後、この凹部30dの小径側の周壁(ボス部30gの外周)をチャック爪でチャックして、他側面30cにも上記の旋削を行い、その側面30c側にも凹部30eを形成する。これらの凹部30d,30eは上記ローラ3の凹部3d,3eをそれぞれ構成するものであり、対称形状に形成されているのでローラ3の回転バランスを確保することができる。
続いて、例えば凹部30dの小径側の周壁をチャックした状態で、旋削によって外周面30aの角落としを行いその断面形状を円弧状とし、さらに円盤状素材30の中心部分に軸孔30fを旋削にて形成し、一次旋削を終了する。その後、その円盤状素材30をチャック爪から一旦取り外して焼入れ処理等の熱処理を行って硬化させる。尚、上記説明以外に、外周面30aをチャックして軸孔30fを形成し、その軸孔30fの内周面30f1をチャックして外周面30aの角落としを行ってもよい。
【0018】
次に、図2(c)に示すように、凹部30d,30eを除いた側面30b,30cと軸孔30fの内周面30f1に対して二次旋削を行って、上記熱処理による熱膨張や熱歪み等の熱変形した部分が除去される。具体的には、まず一方の凹部30d(図2(b))の小径側の周壁をチャックして、外周面30a、側面30c、及び軸孔30fの内周面30f1を旋削する。続いて、例えば他方の凹部30eの小径側の周壁をチャックした状態で、側面30bを旋削する。尚、上記熱処理による熱変形量が少なければ、両側面30b,30cに対する二次旋削を省略して、後続の幅研削で当該両側面30b,30cにおける熱変形した部分を除去してもよい。
続いて、図2(d)において、例えば平面研削盤を用いて側面30c,30bをそれぞれ研削することにより、円盤状素材30の幅を所望の寸法に仕上げる幅研削が行われる。
【0019】
次に、図2(e)において、外周面30aと内周面30f1とを選択的にチャックした状態で、側面30cを加工基準として内周面30f1及び外周面30aを研削することにより、軸孔30fの内径及び円盤状素材30の外径がそれぞれ所望の寸法に仕上げられる。
続いて、図2(f)において、例えば凹部30dの小径側の周壁をチャックした状態で、外周面30aにラップ仕上げを施すことにより、当該外周面30aがローラ3の外周面(軌道面)3aとして好適な表面粗さに仕上げられる。
【0020】
上記のように構成されたトロイダル型無段変速機及びローラの加工方法では、円盤状素材30の両側面30b,30cを対称形状に旋削して環状の凹部30d,30eを中心軸回りに形成している。そして、一側面30bに形成した凹部30dの小径側の周壁をチャックして、少なくとも上記外周面30aを二次旋削により仕上げている。これにより、円盤状素材30の幅寸法を大きくすることなく当該円盤状素材30を所望のローラ3に形成することができる。従って、ローラ3の素材歩留まりを向上して、製造コストを削減することができる。
【0021】
また、本実施形態のローラの加工方法では、上記の熱処理を行って円盤状素材30を硬化する前に、凹部30d,30eを円盤状素材30に形成しているので、それらの凹部30d,30eを容易に形成することができ、当該トロイダル型無段変速機の生産性を高めることができる。また、図2(c)及び(d)にそれぞれ示したように、二次旋削や幅研削を凹部30d,30eに施す必要がないので、円盤状素材30の加工工数(ローラ3の製造工数)を削減することができる。さらに、これらの凹部30d,30eは対称形状に形成しているので、ローラ3の回転バランスを確保することができる。
また、円盤状素材30の幅寸法が完成品のローラ3の幅寸法とほぼ同じ寸法であるので、上記ローラ3の歩留まりを向上して、当該ローラ3及びこれを用いたトロイダル型無段変速機の製造コストをより削減することができる。
【0022】
尚、上記の説明では、両側面3b,3cに対称形状の環状の凹部3d,3eをそれぞれ設けた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ローラ3をチャックするための環状の凹部3dをローラ3の一側面3bの中心軸回りに形成し、かつ当該ローラ3の回転バランスを確保するための凹部3eを他側面3cに形成したものであれば何等限定されない。具体的には、上記環状の凹部3eの代わりに、例えば複数の凹部を他側面3cに同心状にて一定間隔に設けて、ローラ3の回転バランスを確保する構成でもよい。
また、上記の説明では、チャック爪により凹部30d,30eの小径側の周壁をチャックして、二次旋削等の加工を施す場合について説明したが、凹部30d,30eの大径側の周壁をチャックして、上記の加工を行ってもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は次の効果を奏する。
請求項1のトロイダル型無段変速機によれば、加工時においてローラの素材の幅寸法を大きくすることなくローラをチャックすることができるので、そのチャックした状態で一方の側面を加工基準として当該ローラの外径を所望の寸法に高精度に仕上げることができる。従って、ローラの素材歩留まりを向上して、製造コストを削減することができる。
【0024】
請求項2のトロイダル型無段変速機のローラの加工方法によれば、円盤状素材の幅寸法を大きくすることなく当該円盤状素材を所望のローラに形成することができるので、当該トロイダル型無段変速機の製造コストを削減することができる。上記凹部を形成する工程を容易に行うことができるので、当該トロイダル型無段変速機の生産性を高めることができる。さらに、上記凹部は旋削等による仕上げ工程を実施する必要がないので、ローラの製造工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態であるトロイダル型無段変速機の要部構成を示す概略図であり、(b)は(a)のB−B線における拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるトロイダル型無段変速機のローラの加工方法を示す説明図である。
【図3】従来のトロイダル型無段変速機のローラの加工方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 入力ディスク
2 出力ディスク
3 ローラ
3a 外周面
3d,3e 凹部
30 円盤状素材
30a 外周面
30d,30e 凹部
Claims (2)
- 回転自在に軸支された円盤状のローラを介在して入力ディスクと出力ディスクとの間のトルク伝達を行うトロイダル型無段変速機であって、
前記ローラの一側面の中心軸回りに、当該ローラをその加工時にチャックするための環状の凹部を形成し、当該ローラの回転バランスを確保するための凹部を他側面に形成し、当該ローラの両側面を面一に形成したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項1に記載のトロイダル型無段変速機のローラの加工方法において、
断面矩形状の円盤状素材の一側面の中心軸回りに、当該ローラをその加工時にチャックするための環状の凹部を旋削にて形成するとともに、当該ローラの回転バランスを確保するための凹部を他側面に旋削にて形成する工程と、
前記一側面に形成された前記凹部の周壁をチャックして、外周面を一次旋削する工程と、
前記凹部を形成した円盤状素材を熱処理硬化する工程と、
前記凹部の周壁をチャックして、少なくとも前記外周面を二次旋削により仕上げる工程と、
両側面を平面研削して幅寸法を仕上げる工程と、
前記凹部の周壁をチャックした状態で、前記両側面の一方を加工基準として中心軸の軸孔と前記外周面とを研削する工程と
を備えたことを特徴とするトロイダル型無段変速機のローラの加工方法。
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