JP3851179B2 - ニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池およびその製造方法 - Google Patents

ニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に係り、特に、多孔性焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されたニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルカリ蓄電池の正極に使用されるニッケル電極としては、活物質の利用率が高く、電極の導電性に優れ、かつ放電性能やサイクル特性に優れるなどの特徴を有する焼結式ニッケル電極が広く使用されている。このような焼結式ニッケル電極はニッケル焼結基板(例えばニッケル焼結基板)に、所謂、化学含浸法により水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填して製造される。具体的には、まず、ニッケル粉末とカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を水で混練したスラリーを導電性芯体に塗着した後、還元性雰囲気で焼結して多孔性焼結基板を作製する。
【0003】
この後、得られた多孔性焼結基板を酸性ニッケル塩(例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルなど)を主体とする溶液に浸漬して、酸性ニッケル塩を多孔性焼結基板の細孔中に含浸する。ついで、乾燥した後、アルカリ溶液中に浸漬して、多孔性焼結基板の細孔中に含浸した酸性ニッケル塩を水酸化物に活物質化し、水洗、乾燥する。このような化学含浸法にあっては、酸性ニッケル塩の含浸→中間乾燥→活物質化するアルカリ処理→水洗、乾燥の一連の処理が1サイクルとなるが、1サイクルだけでは必要な活物質量を多孔性焼結基板中に充填することができず、通常、必要な充填量が得られるまで充填サイクルを繰り返して行うようにしている。
【0004】
近年、充放電が可能な二次電池(蓄電池)の需要が高まり、小型の機器のみならず、電動工具、アシスト自転車、電気自動車などの大電流用途にも需要が拡大するようになった。これに伴い、より大きな電流値を取り出すことができるように、正極および負極の両面から改良が進められている。例えば、正極面からの改良としては、水酸化ニッケルを主成分とする活物質に、導電剤として少量のコバルト化合物を添加することが一般に行われている。
【0005】
ところが、導電剤としてコバルト化合物を添加するだけでは、高容量で高性能なアルカリ蓄電池が得られないため、活物質となる水酸化ニッケル層の表面にコバルト化合物層を形成することが特開2001−76717号公報にて提案されるようになった。この特開2001−76717号公報にて提案された焼結式ニッケル電極においては、焼結式ニッケル電極の最表面層をコバルト化合物層で覆うことで、焼結式ニッケル電極の導電性が向上して、正極活物質の利用率が向上し、初期の放電時の作動電圧の低下も抑制できるようになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した焼結式ニッケル電極を使用したアルカリ蓄電池においては、焼結式ニッケル電極の導電性が向上することから、初期の放電時作動電圧が向上するものの、高温の雰囲気下で充放電サイクルを繰り返すと、導電性が向上した効果が低下して、高温でのサイクル寿命特性が劣化する問題が生じた。これは、高温下で充放電を繰り返すことにより、最表面層のコバルト化合物(コバルト水酸化物)がダメージを受け、導電性が低下することで高温サイクル寿命特性が劣化したと考えられる。
【0007】
即ち、最表面層のコバルト水酸化物は、初回の充電で導電性の高いコバルト酸化物に高次化されて、アルカリ水溶液中(電解液中)で安定になる。これを、高温の雰囲気下で充放電を繰り返すと、放電時に放電深度が深くなるために、コバルト酸化物がコバルト水酸化物に還元されてアルカリ水溶液中(電解液中)に溶出し、析出するようになる。これにより、焼結式ニッケル電極の導電性が次第に低下し、高温雰囲気下でのサイクル寿命が低下したと考えられる。
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点を改善するためになされたものであって、高温の雰囲気下で充放電サイクルを繰り返しても、焼結式ニッケル電極の導電性の低下を防止して、高温でのサイクル特性に優れたアルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池は、多孔性焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されているとともに、この多孔性焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面にコバルト化合物層を備え、かつこのコバルト化合物層中にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を添加するようにしている。
【0010】
このように、コバルト化合物層中にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が添加されていると、水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面を被覆するコバルト化合物が、電解液中に溶解して析出する速度を遅らせることができる。これにより、コバルト化合物層をより緻密な構造に変化させて、焼結式ニッケル電極中に良好な導電ネットワークを維持できるようになる。
【0011】
この場合、コバルト化合物層に添加するニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物の添加量がコバルト化合物層中のコバルト化合物の質量に対して2質量%(2wt%)未満であると、被覆したコバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅くする効果が十分に得られないことが分かった。また、その添加量が多すぎると、ニッケル電極中の活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に少なくなって、放電容量が減少する。このため、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物の添加量は、コバルト化合物の質量に対して2質量%(2wt%)以上にするのが望ましい。
【0012】
なお、ニオブ化合物としては、NaNbO3,LiNbO3,KNbO3,Nb25・xH2O等から選択して用いるのが好ましい。また、チタン化合物としては、Na2Ti37,Li2TiO3,K2TiO3等から選択して用いるのが好ましい。また、タングステン化合物としては、WO2,WO3,Na2WO4,Li2WO2,K2WO4等から選択して用いるのが好ましい。さらに、モリブデン化合物としては、MoO3・H2O,MoO3・2H2O,Na2MoO4・2H2O,Li6Mo724・12H2O,K2MoO4等から選択して用いるのが好ましい。
【0013】
そして、多孔性焼結基板の細孔中に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填する活物質充填工程と、活物質が充填された多孔性焼結基板をコバルト塩とを含有する水溶液に浸漬して充填された活物質層の表面にコバルト塩を保持させるコバルト塩保持工程と、コバルト塩が保持された多孔性焼結基板をニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルカリ水溶液に浸漬するアルカリ浸漬工程とを備えるようにすると、水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面を被覆するコバルト化合物層中にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が添加されたニッケル電極を簡単、容易に得ることができる。
【0014】
この場合、アルカリ浸漬工程において、コバルト塩が保持された多孔性焼結基板をニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルカリ水溶液に浸漬して、活物質の表面に保持されたコバルト塩を水酸化コバルトに転換させるとともに、該転換された水酸化コバルト層中にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を析出させるようにすればよい。また、活物質充填工程において、多孔性焼結基板をニッケル塩とコバルト塩とを含有する水溶液に浸漬した後、アルカリ溶液中に浸漬して水酸化ニッケルを主体とする活物質を多孔性焼結基板の細孔中に充填する操作を所定回数繰り返すようにすればよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
1.焼結基板の作製
まず、ニッケル粉末にカルボキシメチルセルロース等の増粘剤および水を混練してスラリーを調製し、このスラリーをパンチングメタルからなる導電性芯体に塗着した。この後、スラリーを塗着した導電性芯体を還元性雰囲気下で焼結して、多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板を作製した。
【0016】
2.焼結式ニッケル電極の作製
ついで、得られた多孔性ニッケル焼結基板を比重が1.75の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液(ニッケルとコバルトの原子比がNi:Co=10:1になるように調製している)に浸漬し、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内にニッケル塩およびコバルト塩を保持させた。この後、この多孔性ニッケル焼結基板を25wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して、ニッケル塩およびコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトに転換させた。ついで、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥を行った。
このような一連の活物質充填操作を6回繰り返して、多孔性焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質が所定量だけ充填された活物質充填極板を得て、これをニッケル電極xとした。
【0017】
ついで、得られたニッケル電極xを濃度が4mol/lの硝酸コバルト水溶液に浸漬し、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面にコバルト塩を保持させた。この場合、コバルト塩の保持量が少なすぎると導電性を向上させる効果を発揮することができない。また、コバルト塩の保持量が多すぎると相対的に活物質量が減少するようになる。このため、コバルト塩の保持量が活物質となる水酸化ニッケルに対して0.5wt%〜5.0wt%になるように、硝酸コバルト水溶液への浸漬時間を調整する必要がある。
【0018】
ついで、上述のように活物質層の表面にコバルト塩を保持させた多孔性ニッケル焼結基板を水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に浸漬した。これにより、活物質層の表面に保持されたコバルト塩は、導電性に優れた水酸化コバルトに転換するこことなる。このようにして得られた極板をニッケル電極yとした。
【0019】
一方、NaNbO3を溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用意し、この水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に活物質層の表面にコバルト塩を保持させた多孔性ニッケル焼結基板を浸漬した。これにより、活物質層の表面に保持されたコバルト塩は水酸化コバルトに転換するとともに、この水酸化コバルト層内に均一にニオブ化合物が点在することとなる。この場合、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対して所定の添加量になるように、ニオブ化合物の濃度および浸漬時間を調整した。
【0020】
ここで、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対してニオブ化合物の添加量が1wt%になるように調製し、所定の寸法になるように切断した極板をニッケル電極aとした。同様に、2wt%になるように調製した極板をニッケル電極bとし、5wt%になるように調製した極板をニッケル電極cとし、10wt%になるように調製した極板をニッケル電極dとし、20wt%になるように調製した極板をニッケル電極eとし、30wt%になるように調製した極板をニッケル電極fとし、40wt%になるように調製した極板をニッケル電極gとした。なおこの場合、水酸化ナトリウムに溶解させるニオブ化合物としてはNaNbO3,LiNbO3,KNbO3,Nb25・xH2O等から選択して用いるのが好ましい。
【0021】
2.水素吸蔵合金電極の作製
ミッシュメタル(Mm)、ニッケル(Ni:純度99.9%)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、およびマンガン(Mn)を所定のモル比になるようにそれぞれ混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉で誘導加熱して合金溶湯とした。この合金溶湯を公知の方法で鋳型に流し込み、冷却して、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。この水素吸蔵合金インゴットを機械的粉砕法により、平均粒子径が約60μmになるまで粉砕して、水素吸蔵合金粉末とした。ついで、得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、結着剤としての5wt%のポリエチレンオキサイド(PEO)の水溶液を20質量部を混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストをパンチングメタルからなる芯体の両面に塗布し、室温で乾燥させた後、所定の厚みに圧延し、所定の寸法に切断して水素吸蔵合金電極を作製した。
【0022】
3.ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した焼結式ニッケル電極a,b,c,d,e,f,g,x,yと水素吸蔵合金負極を用い、これらの間にポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介在させ、これらをスパイラル状に巻回して電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30wt%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量が1000mAhのニッケル−水素蓄電池をそれぞれ作製した。
【0023】
ここで、焼結式ニッケル電極aを用いたものを電池Aとし、焼結式ニッケル電極bを用いたものを電池Bとし、焼結式ニッケル電極cを用いたものを電池Cとし、焼結式ニッケル電極dを用いたものを電池Dとし、焼結式ニッケル電極eを用いたものを電池Eとし、焼結式ニッケル電極fを用いたものを電池Fとし、焼結式ニッケル電極gを用いたものを電池Gとした。また、焼結式ニッケル電極xを用いたものを電池Xとし、焼結式ニッケル電極yを用いたものを電池Yとした。
【0024】
4.電池試験
(1)放電容量の測定
ついで、上述のように作製した各電池A〜G,X,Yを用いて、これらの各電池A〜G,X,Yを25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池A〜G,X,Yの初期放電容量(mAh)を求めると、下記の表1に示すような結果になった。
【0025】
(2)高温サイクル寿命の測定
また、上述のように作製した各電池A〜G,X,Yを用いて、これらの各電池A〜G,X,Yを60℃の高温雰囲気下で、500mAの充電電流で2時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させるというサイクルを1サイクルとする充放電サイクル試験を繰り返し行った。そして、各サイクル後の放電容量が60℃での初期放電容量の80%に達した時点でのサイクル数を高温サイクル寿命として求めると、下記の表1に示すような結果になった。
【0026】
【表1】
Figure 0003851179
【0027】
上記表1の結果から明らかなように、水酸化ニッケルを主体とする活物質の表面にコバルト化合物層を形成したニッケル電極yを用いた電池Yと、水酸化ニッケルを主体とする活物質の表面にコバルト化合物層を形成しなかったニッケル電極xを用いた電池Xとを比較すると、電池Yの方が初期放電容量が大きいことが分かる。これは、水酸化ニッケルを主体とする活物質の表面にコバルト化合物層を形成すると、コバルト化合物層は導電性が優れているので、ニッケル電極の導電性が向上して活物質の利用率が向上したためである。この場合、コバルト化合物量が活物質となる水酸化ニッケルに対して0.5wt%より少なすぎると導電性を向上させる効果を発揮することができなくなる。逆に、コバルト化合物量が活物質となる水酸化ニッケルに対して5.0wt%より多すぎると相対的に活物質量が減少するようになる。このため、コバルト化合物量は活物質となる水酸化ニッケルに対して0.5wt%〜5.0wt%になるように調整するのが望ましい。
【0028】
また、コバルト化合物層にニオブ化合物を添加したニッケル電極a〜gを用いた電池A〜Gと、コバルト化合物層にニオブ化合物を添加しなかったニッケル電極yを用いた電池Yとを比較すると、コバルト化合物層にニオブ化合物を添加した方が高温サイクル寿命が向上することが分かる。これは、コバルト化合物層にニオブ化合物を添加すると、高温雰囲気下での放電時にコバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅らせることができるようになり、良好な導電ネットワークを維持できるようになったためと考えられる。
【0029】
この場合、電池Aのように、コバルト化合物層に添加されたニオブ化合物の添加量が1wt%で少ないと、充分に高温サイクル寿命の向上効果、即ち、コバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅くする効果を発揮できないことが分かる。このことから、コバルト化合物層に添加するニオブ化合物の添加量はコバルト化合物量中のコバルト化合物量に対して2wt%以上にするのが望ましいということができる。また、電池Gのように、コバルト化合物層に添加されたニオブ化合物の添加量が40wt%になっても、これ以上は高温サイクル寿命の向上効果を発揮できなく、逆に、相対的に活物質となる水酸化ニッケル量が少なくなって、初期放電容量が減少する。このため、コバルト層に添加するニオブ化合物(Nb25)の添加量はコバルト量に対して30wt%以下にするのが望ましいということができる。
【0030】
5.添加化合物の検討
上述した例においては、ニオブ化合物をコバルト層に添加する例について説明したが、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物をコバルト層に添加した場合についても検討した。
【0031】
(1)チタン化合物について
Na2Ti37を溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用意し、この水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に活物質層の表面にコバルト塩を保持させた多孔性ニッケル焼結基板を浸漬した。これにより、活物質層の表面に保持されたコバルト塩は水酸化コバルトに転換するとともに、この水酸化コバルト層内に均一にチタン化合物が点在することとなる。
【0032】
この場合、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対して所定の添加量になるように、チタン化合物の濃度およびアルカリ溶液への浸漬時間を調整した。ここで、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対してチタン化合物の添加量が1wt%になるように調製し、所定の寸法になるように切断した極板をニッケル電極hとした。同様に、2wt%になるように調製した極板をニッケル電極iとし、5wt%になるように調製した極板をニッケル電極jとした。なお、水酸化ナトリウムに溶解させるチタン化合物としては、Na2Ti37,Li2TiO3,K2TiO3等から選択して用いるのが好ましい。
【0033】
上述のように作製した焼結式ニッケル電極h,i,jと水素吸蔵合金負極を用い、これらの間にポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介在させ、これらをスパイラル状に巻回して電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量が1000mAhのニッケル−水素蓄電池H,I,Jをそれぞれ作製した。なお、焼結式ニッケル電極hを用いたものを電池Hとし、焼結式ニッケル電極iを用いたものを電池Iとし、焼結式ニッケル電極jを用いたものを電池Jとした。
【0034】
ついで、上述のように作製した各電池H,I,Jを用いて、これらの各電池H,I,Jを25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池H,I,Jの初期放電容量(mAh)を求めると、下記の表2に示すような結果になった。また、上述のように作製した各電池H,I,Jを用いて、これらの各電池H,I,Jを60℃の高温雰囲気下で、500mAの充電電流で2時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させるというサイクルを1サイクルとする充放電サイクル試験を繰り返し行った。そして、各サイクル後の放電容量が60℃での初期放電容量の80%に達した時点でのサイクル数を高温サイクル寿命として求めると、下記の表2に示すような結果になった。なお、下記の表2には、比較のために上述した電池Yの結果も併せて示している。
【0035】
【表2】
Figure 0003851179
【0036】
上記表2の結果から明らかなように、コバルト化合物層にチタン化合物を添加したニッケル電極h,i,jを用いた電池H,I,Jと、コバルト化合物層にチタン化合物を添加しなかったニッケル電極yを用いた電池Yとを比較すると、コバルト化合物層にチタン化合物を添加した方が高温サイクル寿命が向上することが分かる。これは、コバルト化合物層にチタン化合物を添加すると、高温雰囲気下での放電時にコバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅らせることができるようになり、良好な導電ネットワークを維持できるようになったためと考えられる。
【0037】
この場合、電池Hのように、コバルト化合物層に添加されたチタン化合物の添加量が1wt%で少ないと、充分に高温サイクル寿命の向上効果、即ち、コバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅くする効果を発揮できないことが分かる。このことから、コバルト化合物層に添加するチタン化合物の添加量はコバルト化合物層中のコバルト化合物量に対して2wt%以上にするのが望ましいということができる。また、上限値については上述したニオブ化合物の場合と同様に、チタン化合物の添加量が30et%以下になるように添加するのが望ましい。
【0038】
(2)タングステン化合物について
Na2WO4を溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用意し、この水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に活物質層の表面にコバルト塩を保持させた多孔性ニッケル焼結基板を浸漬した。これにより、活物質層の表面に保持されたコバルト塩は水酸化コバルトに転換するとともに、この水酸化コバルト層内に均一にタングステン化合物が点在することとなる。
【0039】
この場合、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対して所定の添加量になるように、タングステン化合物の濃度およびアルカリ溶液への浸漬時間を調整した。ここで、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対してタングステン化合物の添加量が1wt%になるように調製し、所定の寸法になるように切断した極板をニッケル電極kとした。同様に、2wt%になるように調製した極板をニッケル電極lとし、5wt%になるように調製した極板をニッケル電極mとした。なお、水酸化ナトリウムに溶解させるタングステン化合物としては、WO2,WO3,Na2WO4,Li2WO2、,K2WO4等から選択して用いるのが好ましい。
【0040】
上述のように作製した焼結式ニッケル電極k,l,mと水素吸蔵合金負極を用い、これらの間にポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介在させ、これらをスパイラル状に巻回して電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量が1000mAhのニッケル−水素蓄電池K,L,Mをそれぞれ作製した。なお、焼結式ニッケル電極kを用いたものを電池Kとし、焼結式ニッケル電極lを用いたものを電池Lとし、焼結式ニッケル電極mを用いたものを電池Mとした。
【0041】
ついで、上述のように作製した各電池K,L,Mを用いて、これらの各電池K,L,Mを25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池K,L,Mの初期放電容量(mAh)を求めると、下記の表3に示すような結果になった。また、上述のように作製した各電池K,L,Mを用いて、これらの各電池K,L,Mを60℃の高温雰囲気下で、500mAの充電電流で2時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させるというサイクルを1サイクルとする充放電サイクル試験を繰り返し行った。そして、各サイクル後の放電容量が60℃での初期放電容量の80%に達した時点でのサイクル数を高温サイクル寿命として求めると、下記の表3に示すような結果になった。なお、下記の表3には、比較のために上述した電池Yの結果も併せて示している。
【0042】
【表3】
Figure 0003851179
【0043】
上記表3の結果から明らかなように、コバルト化合物層にタングステン化合物を添加したニッケル電極k,l,mを用いた電池K,L,Mと、コバルト化合物層にタングステン化合物を添加しなかったニッケル電極yを用いた電池Yとを比較すると、コバルト化合物層にタングステン化合物を添加した方が高温サイクル寿命が向上することが分かる。これは、コバルト化合物層にタングステン化合物を添加すると、高温雰囲気下での放電時にコバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅らせることができるようになり、良好な導電ネットワークを維持できるようになったためと考えられる。
【0044】
この場合、電池Kのように、コバルト化合物層に添加されたタングステン化合物の添加量が1wt%で少ないと、充分に高温サイクル寿命の向上効果、即ち、コバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅くする効果を発揮できないことが分かる。このことから、コバルト化合物層に添加するタングステン化合物の添加量はコバルト化合物層中のコバルト化合物量に対して2wt%以上にするのが望ましいということができる。また、上限値については上述したニオブ化合物の場合と同様に、タングステン化合物の添加量が30wt%以下になるように添加するのが望ましい。
【0045】
(3)モリブデン化合物について
Na2MoO4・2H2Oを溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用意し、この水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に活物質層の表面にコバルト塩を保持させた多孔性ニッケル焼結基板を浸漬した。これにより、活物質層の表面に保持されたコバルト塩は水酸化コバルトに転換するとともに、この水酸化コバルト層内に均一にモリブデン化合物が点在することとなる。
【0046】
この場合、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対して所定の添加量になるように、モリブデン化合物の濃度およびアルカリ溶液への浸漬時間を調整した。ここで、活物質層の表面に形成された水酸化コバルトの質量に対してモリブデン化合物の添加量が1wt%になるように調製し、所定の寸法になるように切断した極板をニッケル電極nとした。同様に、2wt%になるように調製した極板をニッケル電極oとし、5wt%になるように調製した極板をニッケル電極pとした。なお、水酸化ナトリウムに溶解させるモリブデン化合物としては、MoO3・H2O,MoO3・2H2O,Na2MoO4・2H2O,Li6Mo724・12H2O,K2MoO4等から選択して用いるのが好ましい。
【0047】
上述のように作製した焼結式ニッケル電極n,o,pと水素吸蔵合金負極を用い、これらの間にポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介在させ、これらをスパイラル状に巻回して電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量が1000mAhのニッケル−水素蓄電池N,O,Pをそれぞれ作製した。なお、焼結式ニッケル電極nを用いたものを電池Nとし、焼結式ニッケル電極oを用いたものを電池Oとし、焼結式ニッケル電極pを用いたものを電池Pとした。
【0048】
ついで、上述のように作製した各電池N,O,Pを用いて、これらの各電池N,O,Pを25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池N,O,Pの初期放電容量(mAh)を求めると、下記の表4に示すような結果になった。また、上述のように作製した各電池N,O,Pを用いて、これらの各電池N,O,Pを60℃の高温雰囲気下で、500mAの充電電流で2時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させるというサイクルを1サイクルとする充放電サイクル試験を繰り返し行った。そして、各サイクル後の放電容量が60℃での初期放電容量の80%に達した時点でのサイクル数を高温サイクル寿命として求めると、下記の表4に示すような結果になった。なお、下記の表4には、比較のために上述した電池Yの結果も併せて示している。
【0049】
【表4】
Figure 0003851179
【0050】
上記表4の結果から明らかなように、コバルト化合物層にモリブデン化合物を添加したニッケル電極n,o,pを用いた電池N,O,Pと、コバルト化合物層にモリブデン化合物を添加しなかったニッケル電極yを用いた電池Yとを比較すると、コバルト化合物層にモリブデン化合物を添加した方が高温サイクル寿命が向上することが分かる。これは、コバルト化合物層にモリブデン化合物を添加すると、高温雰囲気下での放電時にコバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅らせることができるようになり、良好な導電ネットワークを維持できるようになったためと考えられる。
【0051】
この場合、電池Nのように、コバルト化合物層に添加されたモリブデン化合物の添加量が1wt%で少ないと、充分に高温サイクル寿命の向上効果、即ち、コバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅くする効果を発揮できないことが分かる。このことから、コバルト化合物層に添加するモリブデン化合物の添加量はコバルト化合物層中のコバルト化合物量に対して2wt%以上にするのが望ましいということができる。また、上限値については上述したニオブ化合物の場合と同様に、モリブデン化合物の添加量が30wt%以下になるように添加するのが望ましい。
【0052】
【発明の効果】
上述したように、本発明においては、水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面にコバルト化合物層が形成されており、このコバルト化合物層にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が均一に添加されている。このため、活物質層の表面を被覆するコバルト化合物が、電解液中に溶解して析出する速度を遅めることができる。これにより、コバルト化合物層をより緻密な構造に変化させて、導電ネットワークを向上させることが可能になる。
【0053】
なお、ニッケル電極中にイットリウム、イッテルビウム、カルシウム、アルミニウム、エルビウム、ガドリニウム、ツリウム、ルテチウム、及び亜鉛よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素又はその化合物が添加されているようにすると、高温雰囲気下における充放電特性がより一層向上されるようになる。特に、イットリウム又はその化合物を添加されているようにすると、その作用が大きいため、高温雰囲気下における充放電サイクル特性が著しく向上し、なかでもイットリウム化合物としてY23を用いることがより好ましい。

Claims (4)

  1. 多孔性焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されたニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池であって、
    前記水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面にコバルト化合物層を備えるとともに、
    前記コバルト化合物層中にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が添加されていることを特徴とするアルカリ蓄電池。
  2. 前記コバルト化合物層中に添加された前記ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物の添加量は前記コバルト化合物層のコバルト化合物の質量に対して2質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
  3. 多孔性焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填して形成するニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池の製造方法であって、
    前記多孔性焼結基板の細孔中に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填する活物質充填工程と、
    前記活物質が充填された多孔性焼結基板をコバルト塩とを含有する水溶液に浸漬して前記充填された活物質層の表面にコバルト塩を保持させるコバルト塩保持工程と、
    前記コバルト塩が保持された多孔性焼結基板をニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルカリ水溶液に浸漬するアルカリ浸漬工程とを備え、
    前記多孔性焼結基板の細孔中に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質層の表面にニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有するコバルト化合物層を形成するようにしたことを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
  4. 前記アルカリ浸漬工程において、前記コバルト塩が保持された多孔性焼結基板をニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルカリ水溶液に浸漬して、前記活物質の表面に保持されたコバルト塩を水酸化コバルトに転換させるとともに、該転換された水酸化コバルト層中に前記ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を析出させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
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