JP3852829B2 - 濾過装置の逆洗方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、濾過装置の逆洗方法および装置に関し、とくに、加圧水型原子力発電所や火力発電所等の発電プラントの復水処理に用いる濾過装置の逆洗に好適な方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧水型原子力発電所や火力発電所等の発電プラントにおいては、例えば用水の処理方法の一つとして、濾過装置により、被処理水中の主に酸化鉄からなる懸濁物質を濾過し、分離濃縮している。濾過操作を継続すると、濾材表面での懸濁物質の捕捉量が増加し、濾過装置の差圧が増加する。濾過装置の差圧とは、濾材がクリーンな状態の初期差圧と濾材外表面に蓄積された懸濁物質により生じる差圧が合計されたものである。濾過装置の差圧が増加すると、通常、純水と空気による逆洗を行い、濾材表面に捕捉されていた懸濁物質を排出し、濾材をクリーンな状態に戻し、濾過装置の差圧を回復させるようにしている。
【0003】
この差圧回復操作の際に排出される逆洗水の簡単な処理方法として、沈降分離タンクで静置しての固液分離がある。この場合、逆洗水中の懸濁物質は沈降し、懸濁物質と上澄み液とに分離可能になり、逆洗水の減容化が図れ、沈降したスラッジは脱水処理をして産業廃棄物として処理することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、処理される逆洗水中に微細な懸濁物質や粒子が含有されていると、それらは沈降分離タンクにおいて沈降しにくいため固液分離性能が低下する。とくに、近年高性能のプリーツフィルタの使用が検討されているが、プリーツフィルタの特徴として、沈降しにくい極めて微細な粒子まで精度良くフィルタに捕捉される。したがって、逆洗水中の懸濁物質も極めて微細な粒子となるため、沈降分離タンクにおいて懸濁物質の沈降性が悪く、容易に十分な固液分離ができないという問題が生じる。固液分離性能が低下すると、沈降スラッジの脱水処理や上澄水の処理にコストと時間がかかることになる。
【0005】
また、このような問題を防止あるいは軽減するためには、沈降分離タンクあるいはそれに逆洗水を導入する経路に、沈降剤(沈降促進剤)を添加する必要が生じる。沈降剤としては、通常、Na2CO3やNa2SO4などの無機塩や高分子凝集剤、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド、FeCl3などの無機凝集剤が用いられる。しかし、このような沈降剤を添加すると、そのための工程が必要になるとともに処理コストが増加することになる。
【0006】
そこで本発明の課題は、上記のような純水と空気による逆洗を行うための濾過装置の逆洗水の処理における問題点に着目し、沈降剤を添加することなく、特に酸化鉄を効率よく分離することを可能にし、逆洗水処理のための工程の簡素化とコストの低減をはかることのできる濾過装置の逆洗方法および装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る濾過装置の逆洗方法は、純水と空気による逆洗を行うための濾過装置の逆洗用水として、純水の代わりにpH8以上のアルカリ側に調整した水を用いることを特徴とする方法からなる。
【0008】
また、本発明に係る濾過装置の逆洗装置は、純水と空気による逆洗を行うための濾過装置の逆洗用水として純水の代わりにpH8以上のアルカリ側に調整した水を用いることを特徴とするものからなる。
【0009】
濾過装置の濾材として中空糸膜フィルタ、セラミックフィルタ、カーボンフィルタ、電磁フィルタ、プリーツフィルタ等が挙げられるが、本発明に係る濾過装置の逆洗方法および装置は、プリーツフィルタを用いる場合にとくに有効なものである。プリーツフィルタは、濾材をプリーツ型に加工し濾過のための表面積を拡大したしたものであり、前述したように、沈降しにくい極めて微細な粒子まで精度良く捕捉できる特徴を有しているので、逆洗水中の懸濁物質も極めて微細な粒子となり、沈降分離タンクにおいて懸濁物質の沈降性が悪く、容易に十分な固液分離ができないという問題があったが、本発明の適用により、このような微細な懸濁物質、とくに酸化鉄を良好に沈降分離できるようになる。
【0010】
このような方法および装置においては、濾過装置に上記アルカリ側に調整された逆洗用水を濾過装置に導入するラインを設け(例えば、濾過装置の二次側に導入するラインを設け)、その逆洗用水を容易に濾過装置に導入できるようにしておくことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る濾過装置の逆洗方法および装置は、とくに発電所に設けられている濾過装置の逆洗に有効なものであり、逆洗用水として発電所の系統水、たとえば復水を用いることができる。発電所内では、とくに酸化鉄を除去対象とした逆洗式の濾過装置が用いられており、たとえば加圧水型原子力発電所に関しては、二次系の復水フィルタが本発明の適用対象となり、さらに今後、高温ヒータドレン系や給水系等に設けられるフィルタへの適用も可能と考えられる。また、火力発電所に関しては、復水フィルタ、ボイラーブロー水の回収水フィルタ等が本発明の適用対象となる。さらに、沸騰水型原子力発電所に関しても、復水フィルタ、機器ドレンフィルタ等を本発明の適用対象とすることができる。
【0012】
本発明において、濾過装置の逆洗用水として用いられる、pH8以上のアルカリ側に調整した水は、専用のpH調整手段を設けて目標とするpHの範囲の逆洗用水を調製することも可能であるが、とくに加圧水型原子力発電所や火力発電所では、系統水、とくに復水がアルカリ側のpHを有しているので、これをそのまま逆洗用水として使用することができる。日本における加圧水型原子力発電所復水のpHは、通常、9.1〜9.8程度の範囲で運用されており、火力発電所復水のpHは、通常、8.5〜9.5程度の範囲で運用されている。本発明における逆洗用水のpHは、8以上であり、たとえば8〜10の範囲で運用すればよい。好ましくは、pHが8.5〜9.9の範囲であり、より好ましくは8.9〜9.9の範囲である。したがって、上記のような加圧水型原子力発電所や火力発電所における系統水を、さらにpH調整することなくそのまま使用することが可能である。ただし、沸騰水型原子力発電所においては、通常、復水は中性であるので、本発明で規定したpHの範囲となるように、pH調整手段を設ける必要がある。
【0013】
このような本発明に係る濾過装置の逆洗方法および装置においては、濾過装置の逆洗用水として従来の中性の純水ではなく、pHが8以上の逆洗用水、たとえばpH8以上の系統水を用いることで、逆洗水中のpHを上昇させ、逆洗水処理を行う沈降分離タンクでの沈降性、とくに微細な酸化鉄の沈降性を向上させることができる。この酸化鉄の沈降性の向上は、次のような理由により達成されると考えられる。すなわち、一般的に酸化鉄は、化学形態によって多少の差はあるものの、pH8〜9前後で粒子の荷電状態を表すゼータ電位がゼロに近くなる。ゼータ電位とは、分散された粒子の分散安定性の指標として用いられるもので、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなり粒子の安定性は高くなる。逆に、ゼータ電位がゼロに近くなると、粒子は凝集しやすくなる。したがって、逆洗用水としてpH8以上の水、とくにpH8〜10程度の範囲内の水を用いることで、ゼータ電位をゼロ近くにして、逆洗水中の微小懸濁物質の沈降性を向上することができ、沈降剤を添加することなく、沈降分離タンクにおいて、十分に濃度の高い沈降スラッジと、十分に濃度の低い上澄水とに効率よく分離することが可能になる。その結果、逆洗水処理の容易化、処理コストの低減が可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る濾過装置の逆洗方法および装置における逆洗水処理工程のフローを示しており、とくに、発電所における復水フィルタ逆洗水の処理工程の一例を示している。図2は、図1の処理に対応する従来の逆洗水処理工程のフローを示している。
【0015】
図1において、復水フィルタの逆洗用水として、たとえばpH8以上の復水自身が使用され、逆洗後の排水が、復水フィルタ逆洗水1として沈降分離タンクである逆洗水分離タンク2に送られる。一方、図2に示した従来工程では、復水フィルタの逆洗用水として、たとえば純水からなる系統への補給水が使用され、逆洗後の排水が、復水フィルタ逆洗水3として沈降分離タンクである逆洗水分離タンク2に送られるが、このとき、後の沈降分離処理の効率あるいは効果を考慮して、前述したような沈降剤添加工程4が設けられている。
【0016】
逆洗水分離タンク2からの上澄水は、たとえば他系統からの排水が加えられた状態で排水貯槽5に送られ、中和槽6を介して、たとえば凝集剤添加工程7を伴う凝集沈殿処理工程8に送られる。一方、逆洗水分離タンク2における沈降スラッジは、汚泥貯槽9に送られ、凝集沈殿処理工程8からの沈降スラッジとともに貯留されて、脱水機10を介して、産業廃棄物処理工程11(産廃処理)に供される。凝集沈殿処理工程8からの上澄水は、たとえば濾過工程12を経た後、放流工程13に送られる。
【0017】
すなわち、図1に示した本発明の一実施態様に係る濾過装置の逆洗方法および装置においては、図2に示した従来の逆洗方法および装置に比べ、復水フィルタ逆洗水を逆洗水分離タンク2に送ってスラッジの沈降分離処理を行うに際し、逆洗用水にpH8以上の水を使用すること(本実施態様では、pH8以上の復水を使用すること)と、沈降剤を添加しないことが、異なっている。
【0018】
このような処理を簡単に実施するためには、たとえば図3に示すような構成を採ることができる。図3に、本発明の一実施態様に係る濾過装置の逆洗方法および装置を実施するための濾過装置周りのライン構成を、図4に、比較のために、従来のライン構成を、それぞれ示す。
【0019】
たとえば濾材としてプリーツフィルタ21を収容した濾過装置22に対し、図3に示す装置においては、通常の濾過処理のための復水入口ライン23から分岐され、濾過装置の二次側へと接続された逆洗水供給ライン24を介して、復水自身が濾過装置の逆洗用水として供給される。一方、図4に示した従来装置においては、純水からなる補給水が逆洗水供給ライン25を介して、濾過装置の逆洗用水として濾過装置の二次側へ供給される。
【0020】
逆洗は、たとえば逆洗用水と逆洗用空気供給ライン26から供給される空気を用いて行われ、逆洗後の排水が逆洗水としてドレンライン27から前述の逆洗水分離タンク2に送られる。28は、通常の濾過処理後の濾過水を次工程に送る濾過水送給ラインを示している。
【0021】
図1、図3に示したような工程および装置により、pH8以上の逆洗用水(復水)を用いて逆洗が行われる。逆洗後の排水が、濾材から除去された酸化鉄等の微細な捕捉物まで含む逆洗水として逆洗水分離タンク2に送られるが、このとき、従来方法におけるような沈降剤は添加されない。逆洗水分離タンク2に貯留された逆洗水は、pH8以上のアルカリ側にあるから、前述したように酸化鉄粒子のゼータ電位がゼロ近くになり、凝集しやすくなって、スラッジの沈降特性が向上され、沈降スラッジが上澄水と効率よく分離されることになる。この高pHによる沈降特性の向上は、以下の実施例によって確かめられた。
【0022】
【実施例】
加圧水型原子力発電所復水を通水し、復水中の主に酸化鉄からなる懸濁物質を捕捉したプリーツフィルタについて、従来のように純水で逆洗した場合と、pH8以上のプラント系統水で逆洗した場合とについて、沈降分離タンクの逆洗上澄水Fe濃度を調査した。加圧水型原子力発電所二次系の復水水質は一般的にpH9.1〜9.8程度であり、本実施例では9.3の復水であった。
【0023】
プリーツフィルタを純水逆洗、系統水逆洗して得られた逆洗水それぞれ500mlを攪拌後メスシリンダーに入れて静置し、上澄水Fe濃度及びpHを一定時間毎に測定した。結果を表1と図5に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1、図5から明らかなように、高pHの系統水で逆洗した場合静置後1時間で初期濃度の約1/10、12時間で約1/70までFe濃度が下がったのに対し、純水で逆洗した場合には静置後1時間では初期濃度とほとんど変わらず、12時間でも約1/2程度までしかFe濃度が下がらなかった。この結果から、高pHの系統水で逆洗した場合、明らかに、とくに酸化鉄を主成分とするスラッジの沈降特性向上に効果があることが明らかになった。
【0026】
なお、上記実施例のように、pH8以上の復水等、本発明における逆洗用水としてそのまま使用できる系統水がある場合にはそれを使用すればよいが、このような水がない場合には、周知のpH調整手段を設けてpH8以上の逆洗用水を調製すればよい。
【0027】
また、本発明は、前記図3に示した形態の濾過装置の他にも、図6に示すようなフィルタエレメント吊り下げ型の濾過装置にも適用可能である。図6に示す、本発明の別の実施態様に係る濾過装置の逆洗装置について、図7に示した対応する従来装置と比較しながら説明する。
【0028】
図6、図7に示す濾過装置31においては、フィルタエレメントとしてのプリーツフィルタ32が濾過塔内に吊下された状態で収容されており、装置下部側に復水入口ライン33、ドレンライン34が接続され、上部側に濾過水送給ライン35、逆洗用空気供給ライン36が接続されている。そして、図7に示す従来の逆洗装置では、補給水等を逆洗用水として供給する逆洗水供給母管39からの逆洗水供給ライン37が装置下部側に接続されていたが、図6に示す本発明に係る逆洗装置では、復水母管40からバルブを介し復水分岐ライン41、逆洗水供給母管39を通して、pH8以上のアルカリ側に調整した水を逆洗用水として供給する逆洗水供給ライン38が接続されている。すなわち、図6に示す態様では、pH8以上のアルカリ側に調整した逆洗用水として、復水が用いられている。
【0029】
図6に示した形態において濾過装置31の差圧が上昇し逆洗操作に入る場合、先ず復水入口ライン33についているバルブを閉じ、前段にある復水母管40からの復水の供給を停止し、他の濾過操作を行っている濾過装置の系統から切り離す。その後、逆洗水供給母管39から分岐した逆洗水供給ライン38のバルブを開け、逆洗用水を濾過装置31内に導入する。このとき、復水分岐ライン41のバルブを開け、復水を逆洗用水として導入する。このように、フィルタエレメント吊り下げ型の濾過装置に対しても、本発明は容易に適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る濾過装置の逆洗方法および装置によれば、逆洗用水としてpH8以上のアルカリ側に調整した水を用いることにより、沈降剤を添加することなく、沈降分離タンクにおける特に酸化鉄の沈降特性を向上することができ、上澄水と沈降スラッジを効率よく分離することができ、逆洗水処理のための工程を沈降剤添加なしの簡素なものとすることができるとともに、処理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る濾過装置の逆洗方法および装置における逆洗水処理工程のフロー図である。
【図2】従来の濾過装置の逆洗方法および装置における逆洗水処理工程のフロー図である。
【図3】図1のフローにおける濾過装置周りの配管系統図である。
【図4】図3のフローにおける濾過装置周りの配管系統図である。
【図5】実施例の結果を示す上澄水鉄濃度の遷移特性図である。
【図6】本発明の別の実施態様に係る濾過装置の逆洗方法および装置における濾過装置周りの配管系統図である。
【図7】図6の装置に対応する従来の濾過装置の逆洗方法および装置における濾過装置周りの配管系統図である。
【符号の説明】
1 本発明における復水フィルタ逆洗水
2 逆洗水分離タンク
3 従来の復水フィルタ逆洗水
4 沈降剤添加工程
5 排水貯槽
6 中和槽
7 凝集剤添加工程
8 凝集沈殿処理工程
9 汚泥貯槽
10 脱水機
11 産業廃棄物処理工程
12 濾過工程
13 放流工程
21 プリーツフィルタ
22 濾過装置
23 復水入口ライン
24 本発明における逆洗水供給ライン
25 従来の逆洗水供給ライン
26 逆洗用空気供給ライン
27 ドレンライン
28 濾過水送給ライン
31 濾過装置
32 プリーツフィルタ
33 復水入口ライン
34 ドレンライン
35 濾過水送給ライン
36 逆洗用空気供給ライン
37 従来の逆洗水供給ライン
38 本発明における逆洗水供給ライン
39 逆洗水供給母管
40 復水母管
41 復水分岐ライン
Claims (10)
- 純水と空気による逆洗を行うための濾過装置の逆洗用水として、純水の代わりにpH8以上のアルカリ側に調整した水を用いることを特徴とする、濾過装置の逆洗方法。
- 濾過装置の濾材としてプリーツフィルタを用いる、請求項1の濾過装置の逆洗方法。
- 発電所に設けられている濾過装置を逆洗する、請求項1または2の濾過装置の逆洗方法。
- 逆洗用水として発電所の系統水を用いる、請求項3の濾過装置の逆洗方法。
- 系統水が復水である、請求項4の濾過装置の逆洗方法。
- 純水と空気による逆洗を行うための濾過装置の逆洗用水として純水の代わりにpH8以上のアルカリ側に調整した水を用いることを特徴とする濾過装置の逆洗装置。
- 濾過装置の濾材としてプリーツフィルタを有する、請求項6の濾過装置の逆洗装置。
- 濾過装置が発電所に設けられたものである、請求項6または7の濾過装置の逆洗装置。
- 発電所の系統水を逆洗用水として導入するラインを有する、請求項8の濾過装置の逆洗装置。
- 逆洗用水として導入される系統水が復水である、請求項9の濾過装置の逆洗装置。
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