JP3860320B2 - インクジェット式プリンター用インク吸収体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不織布からなるインクジェット式プリンター用のインク吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式プリンター等のインク吸収体として従来、吸水性樹脂または吸水性繊維を混綿した不織布が多く使用されている。例えば特開平08−311755号公報には不織布にアクリル酸系高吸水性樹脂あるいは繊維を混綿した吸収体が記載されている。しかし、かかる吸収体は吸水性樹脂または吸水性繊維を混綿しているためフリーの状態ではある程度の吸液性を持つものの、一端を持ち上げて傾けた場合、あるいは遠心力がかかった場合に吸収した液体が保持できずにボタ落ちしてしまうという問題点がある。
【0003】
また、特開平06−70954号公報には極細分割繊維を混綿することにより繊維間隙による毛細管現象を利用し、吸収体の保持性を向上させた吸収体が記載されている。しかし、かかる吸収体は極細分割繊維の使用により不織布中の空隙率が減少し、繊維どうしの絡みが増加するため、フリーの状態での吸液時の膨潤が抑制されて吸液性が逆に低下するという問題点がある。
【0004】
さらにインクジェット式プリンター等のインク吸収体では一端から液体を滴下した場合、横方向に素早く浸透し吸収体全体に拡散する必要がある。このため不織布層中の平均繊度を高くして液体の移行速度を速くしなければならないが、その場合下方向への移行速度も増加し、短時間で吸収体下部から液漏れが発生するという問題点がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはインクジェット式プリンター用のインク吸収体を構成する素材の調合、並びに製造方法を研究し、本発明の完成に至った。即ち、本発明は、吸水量が10g/g以上である吸水性繊維を除く、合成繊維及び/または天然繊維と吸水量が10g/ g 以上である吸水性繊維からなる不織布を積層した吸収体であって、1層が平均繊度のより高い繊維からなる不織布層、もう1層が平均繊度のより低い繊維からなる不織布層であることを特徴とするインクジェット式プリンター用インク吸収体(以下、単に「吸収体」ともいう)である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するマトリックス繊維である合成繊維及び天然繊維は特に限定されない。合成繊維を使用する場合、例えばアクリルやモダクリルなどのアクリル系、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ナイロン6やナイロン66のなどのポリアミド系などがある。またこれらの共重合体なども使用することができる。さらに、これらの二種以上の混合であっても構わない。
天然繊維を使用する場合、例えばセルロース、羊毛、コットン、シルクなどを使用することができる。また、これらの二種以上の混合であっても構わない。
【0007】
また本発明で使用する吸水性繊維の例としては、カルボン酸およびカルボン酸のアルカリ金属塩からなる繊維がある。このポリマーは、カルボン酸基を与えるモノマーと、カルボン酸基と反応してエステル架橋結合を形成するヒドロキシル基を含有するモノマーからなる。カルボン酸基を与えるモノマーとしてはアクリル酸およびその水溶性塩などが用いられる。
【0008】
ヒドロキシル基を含有するモノマーとしてはビニルアルコール、アリルアルコール、エポキシド置換ビニルモノマーおよびビニルカルボン酸モノマーのヒドロキシアルキルエステルなどが用いられる。具体的な化合物名としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセリルモノメタクリレート、グリセリルモノアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは各々複数の種類用いてもよい。
【0009】
ヒドロキシル基を持つモノマーはフリーのアクリル酸と当量以下で0.5重量%以上含まれることが好ましい。0.5重量%以上だと架橋が十分に進行し、繊維の強度が保たれるため不織布製造時の操業性が良好である。
【0010】
上記のモノマー以外に可塑性を付与するために他のビニルモノマー、例えば酢酸ビニル、アクリロニトリル等を用いてもよい。
【0011】
上記のモノマーを重合する方法は特に限定しない。モノマー組成が水溶性であれば水系重合が好ましく、重合開始剤には一般に用いる過硫酸ナトリウム等を用いればよい。
【0012】
上記のポリマーから本発明に使用する吸水性繊維を製造する紡糸方法は、水系重合の場合、乾式紡糸が好ましい。湿式紡糸の場合は凝固剤に水を使用できないため有機溶剤系を用いなければならない。
【0013】
乾式紡糸した後、吸水性繊維の湿分含有率を、一般に繊維の乾燥重量基準で8〜25%の状態にして延伸、クリンプ加工、カット等を適宜行う。湿分含有率が8%未満の状態では繊維の強度が不足し、脆くなるため不適切である。
【0014】
このように引き取られた吸水性繊維はポリマーを不溶性にするため加熱処理によるポリマー鎖の架橋を行う。先ずこれらの繊維は0〜10%、好ましくは4〜8%の湿分含有率に更に乾燥される。乾燥は、繊維の構造内に加熱蒸気の泡の形成による損傷を避けるため100℃以下の温度で行われる。一般に50℃を上回る温度、例えば、60〜90℃の炉内を通して繊維を通過させることにより行われる。
【0015】
次に架橋工程において、水溶性ポリマーを不溶性にするために十分なポリマー鎖の架橋を起こさせるように加熱される。この時の温度は一般に125〜250℃の範囲である。カルボン酸及びヒドロキシル基の反応によりエステル架橋が形成されるときに、架橋に好ましい温度は少なくとも150℃又は160℃であり、そして好ましくは225℃以下である。150℃以下であると架橋の進行が遅くなるため、繊維として所定の吸水時のゲル強度が得られない恐れがある。また225℃以上であると高温のため架橋工程時にポリマーが劣化する恐れがある。
【0016】
架橋工程が行われる時間は一般に2分間〜2時間の範囲であり、好ましくは5〜15分間の間である。2分以下の場合、ポリマー中の架橋が不十分であるため繊維として所定の吸水時のゲル強度が得られない恐れがある。また2時間以上であると逆にポリマー中の架橋が増大し、繊維として所定の吸水量が得られない恐れがある。
【0017】
これらの吸水性繊維の単位重量あたりの吸水量は10g/g以上である。10g/g以上であると、吸収体として十分な吸液性および吸液保持性が得られる。
【0018】
上記の類の吸水性繊維の例としてはテクニカルアブソーバント社が製造し、カネボウ合繊(株)が輸入販売を行っている「ベルオアシス」(商品名)がある。
【0019】
上記の合成繊維及び/または天然繊維と吸水性繊維は開繊、混綿した後にカードを通しウエブを作製し、さらにニードルパンチをかけて不織布吸収体を製造する。この時、1層が平均繊度の高い繊維からなる不織布層、もう1層が平均繊度の低い繊維からなる不織布層を積層した吸収体であることが必要である。平均繊度の異なる不織布の積層によって、吸液性、吸液保持性という相反する性能を併せ持つことが可能となる。
【0020】
また、平均繊度の高い繊維からなる不織布層にて液体の横方向へ浸透性を向上させることが可能となる。さらに平均繊度の低い繊維からなる不織布層にて液体の下方向への移行速度を抑制することによって吸収体下部からの液漏れを防ぐことが可能となる。
【0021】
平均繊度の高い繊維からなる不織布層中の平均繊度は2デニール以上であることが好ましい。2デニール以上であると、不織布中の空隙率が大きく、繊維どうしの絡みも少ないため、フリーの状態での吸液時の膨潤が抑制されず吸収体として十分な吸液性が得られる。さらに液体の移行速度も速くなり吸収体中の横方向への浸透性が高くなる。また該不織布層中の吸水性繊維の混率は5〜40重量%であることが好ましい。混率がこの範囲にあると、さらに吸液性が向上し、またカード工程における繊維の脱落もないので好ましい。
【0022】
また平均繊度の低い繊維からなる不織布層中の平均繊度は2デニール未満であることが好ましい。2デニール未満であると、毛細管現象による効果のため吸収体として十分な吸液保持性が得られる。さらに空隙率が小さくなり液体の下方向への移行速度を抑制するため、吸収体下部からの液漏れを防ぐことが可能となる。また該不織布層中の吸水性繊維の混率は5〜40重量%であることが好ましい。混率がこの範囲にあると、さらに吸液保持性が向上し、またカード工程における繊維の脱落もないので好ましい。
なおここでいう吸液保持性とは、吸収体の一端を持ち上げて傾ける、あるいは一定の遠心力がかかった状態にあるときの液体に対する吸収性能を示す。
【0023】
平均繊度の低い繊維からなる不織布層には、極細繊維を混綿することも可能である。2デニール未満、好ましくは0.8デニール未満の極細繊維を混綿することによって、さらに吸液保持性に優れた吸収体が得られる。
【0024】
かかる2デニール未満の極細短繊維を使用する場合、使用割合は吸収体全体に対して5〜40重量%、更には10〜30重量%であることが好ましい。含有率がこの範囲にあると、優れた吸液保持性を示し、また吸収体製造時の針折れも少ないので好ましい。
【0025】
本発明で使用する2デニール未満の極細短繊維は特に限定するものではないが、物理的手法、又は化学的手法により分割される複合繊維が好ましい。
【0026】
物理的手法により分割される繊維の例としてはポリエチレンとポリエチレンテレフタレートを星状の部分とその足の部分とに複合化した繊維が市販されている(カネボウ合繊(株)、商品名E91など)。このような複合繊維は当然、星の足の数が4本であれば5分割となる。したがって複合繊維の繊度が2デニールであれば、分割後の繊維の平均繊度は0.4デニールとなる。
【0027】
また、化学的手法により分割される繊維としては、通常のPETとアルカリ処理により容易に溶解される共重合PETの2成分からなる複合繊維が市販されている(カネボウ合繊(株)、商品名NX103など)。
【0028】
上記の物理的手法により分割される繊維は、カード工程やニードルパンチ工程で分割される。理想的にはカード工程では分割されずに、ニードルパンチ工程で分割されることが好ましい。上記のE91(商品名)はかかる点においても優れている。またNX103(商品名)などの化学的手法により分割される繊維は、製品になった後の工程でアルカリ処理等により分割される。
【0029】
それ以外に混綿される他の繊維の素材は特に限定しない。用途により適宜選択すれば良い。一般的な合成繊維、天然繊維、再生繊維が使用できる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は平均繊度の異なる不織布の積層化によって吸液性、吸液保持性という相反する性能を併せ持ち、且つ、横方向への浸透性を向上し、吸収体下部からの液漏れを防いだインクジェット式プリンター用インク吸収体である。
【0031】
【実施例】
(吸水性繊維の吸水量の測定方法)
吸水性繊維0.5gを5cm×5cmのティーバッグに入れて、イオン交換水に十分浸漬する。これを取り出し、0.5psiの荷重を30分間かけて繊維間隙の水を除去した後、重量を測定して吸水性繊維1gに対する吸水量を算出した。
【0032】
(吸液性の測定方法および評価方法:金網法)
サンプルを10cm×10cmに切り出し、その重量をはかった。これを液体中に十分に浸漬した後、40メッシュの金網の上に静置し、雫が落ちないようになってから重量を測定し、10cm×10cmあたりの吸液量を求めた。
また評価は吸液量150g以上を◎、130g以上150g未満を○、130g未満を△とした。
【0033】
(吸液保持性の測定方法および評価方法)
上記の金網法にて吸液量を測定した10cm×10cmのサンプルの一端に紐を通し、そのまま持ち上げ垂直に吊り下げ、金網法ではまだ残存していた繊維間に付着していた液体をさらに脱落させる。そのまま静置し、雫が落ちないようになってから重量を測定し、10cm×10cmあたりの吸液保持量を求め、前記吸液量との比から吸液保持率を算出した。
また評価は吸液保持率85%以上を◎、80%以上85%未満を○、80%未満を△とした。
【0034】
(横方向への浸透性と吸収体下部からの液漏れの測定方法および評価方法)
サンプルを2cm×14cmに切り出し、一端に液体を1ml/minの速度で滴下する。この時液が滴下部より10cmの部分に到達する時間を測定し、浸透時間とした。
評価は浸透時間500秒未満を◎、500秒以上1000秒未満を○、1000秒以上を△とした。
また吸収体下部から液漏れが発生した場合、その時間も測定した。評価は液漏れが発生しない場合を◎、600秒以上経過した後、発生した場合を○、600秒未満に発生した場合を△とした。
【0035】
実施例1
< 上層の調合>
カネボウ合繊(株)製吸水性繊維「ベルオアシス」9デニール、51mm(吸水量65g/g)を5重量%、マトリックス繊維としてカネボウ合繊(株)製難燃アクリル繊維「ルフネン」2デニール、51mmを75重量%、コージン(株)製レギュラーレーヨン2デニール、51mmを20重量%混綿した。平均繊度は2.35デニールであった。
【0036】
< 下層の調合>
カネボウ合繊(株)製極細分割繊維「E91」2デニール(カード通過後5分割:平均0.4デニール)51mmを40重量%、カネボウ合繊(株)製吸水性繊維「ベルオアシス」9デニール、51mm(吸水量65g/g)を5重量%、マトリックス繊維としてカネボウ合繊(株)製難燃アクリル繊維「ルフネン」2デニール、51mmを35重量%、コージン(株)製レギュラーレーヨン2デニール、51mmを20重量%混綿した。平均繊度は1.71デニールであった。
【0037】
< 吸収体の製造方法>
上層と下層をそれぞれカーディング、クロスレイ、ニードルパンチからなる通常のフェルト製造工程で作製した。この後積層し、さらにニードルパンチを行って吸収体を製造した。厚さは上層4mm、下層4mmでトータル8mm、目付けは1600g/m2 とした。以上の結果を表1に示す。
【0038】
製造した吸収体のイオン交換水に対する吸液量は138.8g、吸液保持率は88.0%と吸液量・吸液保持率ともに良好であった。
また平均繊度の高い繊維からなる不織布層を上側にした場合の浸透時間630秒で、吸収体下部からの液漏れは発生しなかった。評価結果を表2に示す。
【0039】
比較例1
< 調合>
カネボウ合繊(株)製吸水性繊維「ベルオアシス」9デニール、51mm(吸水量65g/g)を5重量%、マトリックス繊維としてカネボウ合繊(株)製難燃アクリル繊維「ルフネン」2デニール、51mmを75重量%、コージン(株)製レギュラーレーヨン2デニール、51mmを20重量%混綿した。平均繊度は2.35デニールであった。
【0040】
< 吸収体の製造方法>
カーディング、クロスレイ、ニードルパンチからなる通常のフェルト製造工程で作製した。厚さは8mm、目付けは1600g/m2 とした。以上の結果を表1に示す。
【0041】
製造した本発明の吸収体のイオン交換水に対する吸液量は147.0gと実施例を上回ったが、吸液保持率は75.2%と実施例を下回った。
また浸透時間640秒だが、吸収体下部からの液漏れが390秒後に発生した。評価結果を表2に示す。
【0042】
比較例2
< 調合>
カネボウ合繊(株)製極細分割繊維「E91」2デニール(カード通過後5分割:平均0.4デニール)51mmを40重量%、カネボウ合繊(株)製吸水性繊維「ベルオアシス」9デニール、51mm(吸水量65g/g)を5重量%、マトリックス繊維としてカネボウ合繊(株)製難燃アクリル繊維「ルフネン」2デニール、51mmを35重量%、コージン(株)製レギュラーレーヨン2デニール、51mmを20重量%混綿した。平均繊度は1.71デニールであった。
【0043】
< 吸収体の製造方法>
カーディング、クロスレイ、ニードルパンチからなる通常のフェルト製造工程で作製した。厚さは8mm、目付けは1600g/m2 とした。以上の結果を表1に示す。
【0044】
製造した本発明の吸収体のイオン交換水に対する吸液量は120.0gと実施例を下回った。吸液保持率は89.0%であった。
また浸透時間1020秒と実施例と比較して非常に遅かった。吸収体下部からの液漏れは発生しなかった。評価結果を表2に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0003860320
【0046】
【表2】
Figure 0003860320

Claims (3)

  1. 吸水量が10g/g以上である吸水性繊維を除く、合成繊維及び/または天然繊維と吸水量が10g/ g 以上である吸水性繊維からなる不織布を積層した吸収体であって、1層が平均繊度のより高い繊維からなる不織布層、もう1層が平均繊度のより低い繊維からなる不織布層であることを特徴とするインクジェット式プリンター用インク吸収体。
  2. 前記平均繊度のより高い繊維からなる不織布層の平均繊度が2デニール以上であり、吸水性繊維の混率が5〜40重量%である請求項1記載のインクジェット式プリンター用インク吸収体。
  3. 前記平均繊度のより低い繊維からなる不織布層の平均繊度が2デニール未満であり、そのうち吸水性繊維の混率が5〜40重量%である請求項1又は2記載のインクジェット式プリンター用インク吸収体。
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