JP3865295B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、特定構造のオルガノポリシロキサンおよび、特定の無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩によって難燃化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは耐衝撃性、耐熱性、透明性などに優れたエンジニアリングプラスチックとして知られており、特にOA機器、家庭電化機器、情報通信機器の分野において幅広く用いられている。またこれらの分野においては部品形状の複雑化や薄肉化に対応するため、芳香族ポリカーボネートに対してスチレン系樹脂を配合して芳香族ポリカーボネートの溶融流動性を改良し、射出成形性を高めることも多く行われている。ここで用いられるスチレン系樹脂としては、耐衝撃性などの物性を考慮してゴム変性スチレン系樹脂が一般的に用いられる。
【0003】
一方、このような電気・電子関連の分野においては、製品の安全性を高めるため、用いられる材料に高度な難燃性が要求されている。芳香族ポリカーボネートは、難燃性の指標である限界酸素指数が26〜27であり、自己消火性の樹脂であることが知られている。これは、芳香族ポリカーボネート分子の主鎖が主に芳香環によって構成されているため、燃焼時に熱分解反応だけでなく転位反応、環化反応、架橋反応などを起こし、極めて難燃性の高い炭化層(チャー)を容易に形成するためと考えられる。
【0004】
これに対しスチレン系樹脂は、限界酸素指数が18しかない易燃性の樹脂であり、その燃焼を抑止することは極めて困難である。これは、スチレン系樹脂が燃焼により解重合し、生じたモノマー成分が燃料となって燃焼を継続させ、且つ加速度的に進行させるためと考えられる。従って、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂との樹脂混合物においては、成形性を改良するためにスチレン系樹脂の配合量を増やすほど、高度な難燃性を達成することが困難となる。
【0005】
樹脂に難燃性を付与する技術として、従来からハロゲン系難燃剤や酸化アンチモンなどの難燃助剤を配合する方法が用いられてきた。しかしながら、近年の環境問題に対する関心の高まりから、より安全性が高い難燃剤への転換が検討されている。
【0006】
芳香族ポリカーボネートや芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂との樹脂混合物に難燃性を付与する際には、一般にリン酸エステル化合物を難燃剤として用いる方法が取られている。しかしリン酸エステル化合物は加水分解や熱分解を受けやすく、生成したリン酸がポリカーボネートの分子量低下を引き起こして樹脂の機械的性質を低下させるという問題があるため、さらに安全で信頼性の高い難燃剤への要求が高まっている。
【0007】
オルガノポリシロキサンはその安全性の高さから、古くから検討されている非ハロゲン系難燃剤の一つである。一般に、オルガノポリシロキサンは、
【0008】
下記式(5):
【化5】
で表される一官能性単位(M単位)、
【0009】
下記式(6):
【化6】
で表される二官能性単位(D単位)、
【0010】
下記式(7):
【化7】
(式(5)〜(7)中のRは各々独立に1価の有機基である。)
で表される三官能性単位(T単位)、および
【0011】
下記式(8):
【化8】
で表される四官能性単位(Q単位)
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を複数個含む重合体である。
【0012】
例えば、特開平10−139964号公報(EP 0 829 521号公報に対応)および特開平11−140294号公報(ドイツ国特許第19850453号に対応)には、D単位とT単位を主たる構成単位とし、場合によってはさらにQ単位を含む分岐状オルガノポリシロキサンを芳香族ポリカーボネートの難燃剤として用いる技術が開示されている。
【0013】
しかしながら、オルガノポリシロキサンを単独で用いた場合の難燃性改善効果は不充分であるため、オルガノポリシロキサンに加えてさらに他の難燃剤を併用する技術が数多く検討されている。
【0014】
併用される難燃剤としては、芳香族スルホン酸金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩に代表される有機金属塩が一般的に用いられ、さらに燃焼時に生じる燃焼粒の滴下(ドリップ)を防止するために、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素オレフィン系樹脂が添加されることが多い。
【0015】
例えば、特開平6−306265号公報、特開平6−336547号公報(米国特許第5,449,710号公報に対応)などでは、芳香族ポリカーボネートに対し、主としてD単位からなるオルガノポリシロキサンとパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩を添加する方法が開示されている。
【0016】
特開平11−217494号公報(EP 1 035 169号公報に対応)、特開2000−302961号公報(国際出願公開WO2000/64976号公報に対応)、特開2000−226527号公報、特開2001−200150公報等には、主としてD単位、T単位、Q単位から構成される様々な分岐構造を持つオルガノポリシロキサンを、有機スルホン酸金属塩および含フッ素ポリマーと共にポリカーボネート樹脂に配合して利用する技術が開示されている。
【0017】
また、特開平8−176425号公報、特開平11−222559号公報(米国特許第6,184,312号公報に対応)、特開平11−263903号公報、特開2001−26704号公報にも種々の構造のオルガノポリシロキサンを有機金属塩と併用しながら芳香族ポリカーボネートの難燃剤として用いる技術が開示されている。
以上述べた公報においては、用いられている樹脂はすべて芳香族ポリカーボネートであり、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂からなる樹脂混合物に対する難燃性改善効果については、具体的な例は何ら開示されていない。これはおそらく、上述のようなスチレン系樹脂の燃焼のしやすさ故に、難燃性の改善効果が未だ不充分であるためと考えられる。
【0018】
芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂からなる樹脂混合物に対して、難燃剤としてオルガノポリシロキサンと有機スルホン酸塩を併用する技術を記載した例としては、例えば、国際出願公開WO99/40158号公報、特開平2000−159996号公報、特開平2000−256566号公報、特開平2000−345045号公報、国際出願公開WO2000/46299号公報、特開平2001−72867号公報が挙げられる。
【0019】
しかしながら、これらの公報の実施例においては、スチレン系樹脂を併用しつつ高度な難燃性を達成するために、多量の有機スルホン酸金属塩を使用している。
【0020】
パーフルオロアルカンスルホン酸や芳香族スルホン酸に代表される有機スルホン酸の金属塩、特にアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩は、少量の添加で芳香族ポリカーボネートの難燃化に効果があるため古くから利用されてきた(例えば、特公昭47−40445号公報、特公昭57−43099号公報、特公昭57−43100号公報参照)。
【0021】
スルホン酸金属塩の作用機構については、例えば、G.MontaudoらによるJournal of Polymer Science, Polymer Chemistry誌、第26巻、第2113頁(1988年)の論文において、有機スルホン酸塩がポリカーボネートの熱分解を加速して炭化層の形成を促進するためであると述べられている。
【0022】
従って、芳香族ポリカーボネートに対して有機スルホン酸塩を多量に使用すると、芳香族ポリカーボネートの熱安定性が低下し、混練・成形作業中に分子量が低下して機械物性を損ないやすい。
【0023】
また後述するように、本発明者らの検討によれば、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂の樹脂混合物において機械物性の低下を避けるために有機スルホン酸塩の使用量を低減しようとすると、難燃性改善効果が低下するばかりか、却って燃焼が促進されることが見出された。
【0024】
一方、有機スルホン酸塩以外の塩を芳香族ポリカーボネートの難燃剤として用いる技術としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物を用いる方法(特開昭49−88944号公報、特開昭49−107049号公報、特開昭49−125464号公報、特開昭50−83448号公報等を参照);亜硫酸、チオ硫酸、亜二チオン酸、ピロ亜硫酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を用いる方法(特開昭52−17557号公報、特開昭52−17558号公報等を参照);ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムやヘキサフルオロケイ酸カリウムなどに例示される含フッ素錯体塩を用いる方法(特開昭48−43751号公報、特開昭53−88856号公報、特開昭53−96055号公報、特開昭55−151057号公報等を参照)等が挙げられる。
【0025】
しかしながら、これら有機スルホン酸塩以外の塩をオルガノポリシロキサンと併用しながら、芳香族ポリカーボネートおよびスチレン系樹脂からなる樹脂混合物の難燃剤として用いる技術については、これまで知られていない。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、樹脂成分に燃焼性の高いスチレン系樹脂を含んでいても、安全性の高いオルガノポリシロキサンを用いながら優れた難燃性を示す芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明者らはオルガノポリシロキサンと併用する塩に着目して鋭意研究を重ねた。その結果意外にも、無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩をオルガノポリシロキサンと併用すると、有機スルホン酸塩を用いた場合と比較して極めて少量の添加で、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂からなる樹脂混合物に難燃性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0028】
すなわち、本発明によれば、芳香族ポリカーボネート50〜95重量%およびスチレン系樹脂50〜5重量%よりなる樹脂成分(A)100重量部、オルガノポリシロキサン(B)0.1〜30重量部、および無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩(C)0.0005〜5重量部
を包含してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物(ただし、組成物中に有機ハロゲン系難燃剤を含まない)であって、
該オルガノポリシロキサン(B)が
【0029】
下記式(1):
【化9】
【0030】
(式中、Rは各々独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のメルカプトアルキル基、炭素数2〜20のシアノアルキル基、炭素数2〜20のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数6〜20のアミノアリール基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基および炭素数4〜20のグリシドキシアルキル基よりなる群から選ばれる1価の有機基である。)
で表される一官能性シロキサン単位(M単位);
【0031】
下記式(2):
【化10】
(式中、Rは上記式(1)で定義したものと同じである。)
で表される二官能性繰り返しシロキサン単位(D単位);
【0032】
下記式(3):
【化11】
(式中、Rは上記式(1)で定義したものと同じである。)
で表される三官能性繰り返しシロキサン単位(T単位);
【0033】
下記式(4):
【化12】
で表される四官能性繰り返しシロキサン単位(Q単位)
を含み、
【0034】
該オルガノポリシロキサン(B)中の該M単位、該D単位、該T単位、該Q単位の全モル量を基準にして、該オルガノポリシロキサン(B)中の該M単位、該D単位、該T単位、該Q単位の含有量が、各々0〜70モル%、0〜100モル%、0〜100モル%、0〜63モル%である
ことを特徴とする組成物が提供される。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる樹脂成分(A)は、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂との樹脂混合物よりなる。
【0036】
本発明において、樹脂成分(A)に用いる芳香族ポリカーボネートは、
下記式(9)
【化13】
【0037】
(式中、Arは2価のフェノール系化合物残基を表す。)
で表される繰り返し単位からなる主鎖を有するものであり、2価フェノール系化合物とカーボネート前駆体の反応や、カーボネートプレポリマーの重合などにより製造される。
【0038】
具体的には、2価フェノール系化合物とホスゲンを水酸化ナトリウム水溶液および塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(ホスゲン法)、2価フェノール系化合物とジフェニルカーボネートを反応させるエステル交換法(溶融法)、結晶化カーボネートプレポリマーを用いる固相重合法、などの方法により製造されたものを使用することができる。
【0039】
2価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’, 5,5’−テトラメチルジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコールなどが挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。これらの2価フェノール系化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
芳香族ポリカーボネートの分子量の調節のために、芳香族ポリカーボネートの製造のための重合反応を、フェノール、p−メチルフェノール、m−メチルフェノール、p−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどの1価フェノール化合物の存在下で行ってもよい。
【0041】
また、本発明に用いられる芳香族ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造を有する芳香族ポリカーボネートは、重合反応を分岐剤の存在下で行う以外は、上記の芳香族ポリカーボネートの製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0042】
分岐剤の例としては1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、α,α’,α”,−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、イサチンビスフェノール[3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシインドール]などが挙げられる。
【0043】
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネートは、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は10,000〜100,000のものが好ましく、特に14,000〜40,000のものが好適である。芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、溶液粘度(塩化メチレンを溶媒として使用)から換算することによって求めることができる。
【0044】
本発明において、樹脂成分(A)に用いるスチレン系樹脂は、ゴム変性スチレン系樹脂および/またはゴム非変性スチレン系樹脂であり、特にゴム変性スチレン系樹脂単独またはゴム変性スチレン系樹脂とゴム非変性スチレン系樹脂からなる混合物が好ましい。
【0045】
ゴム変性スチレン系樹脂とは、スチレン系樹脂よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、または、所望であれば、上記芳香族ビニル単量体に、それと共重合可能な他の単量体を加えて得られる単量体混合物を、公知の塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法によりグラフト(共)重合して得られる。
【0046】
ここで用いられるゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)、エチレン−オクテン共重合体ゴム、オルガノポリシロキサン成分と(メタ)アクリル酸アルキル成分を含む複合ゴム(シリコン・アクリル複合ゴム)等が挙げられる。
【0047】
上記芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル単量体や、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどのビニル単量体等が挙げられる。
【0048】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体の含有量は、5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲である。ゴム状重合体の含有量が5重量%未満であると樹脂組成物の耐衝撃性が不充分となり、また80重量%を越えると剛性や熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下やゲルの発生、着色などの問題が生じる。ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体の平均粒子径は、0.1〜2.0μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0μm、さらに好ましく0.2〜0.6μmである。0.1μm未満では、樹脂組成物の耐衝撃性の改善が不充分であり、2.0μmを越えると、樹脂組成物の流動性や、成形品の外観が悪くなる。
【0049】
ゴム変性スチレン系樹脂の好ましい例としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。またシリコン・アクリル複合ゴムに上記ビニル単量体をグラフトした複合ゴム系グラフト共重合体も、ゴム変性スチレン系樹脂として使用できる。
【0050】
一方、ゴム非変性スチレン系樹脂とは、ゴム状重合体を用いない点以外は、上記ゴム変性スチレン系樹脂と同様の方法で得られるものである。即ち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、および所望であればアクリロニトリルやメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル単量体や、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどのビニル単量体を(共)重合して得られる重合体である。ゴム非変性スチレン系樹脂の例としては、ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体(BAAS樹脂)などが挙げられる。
【0051】
本発明に用いられるスチレン系樹脂の分子量の尺度である、マトリックス樹脂部分の還元粘度ηsp/c(0.005g/cm3、30℃の条件で、マトリックス樹脂がポリスチレンの場合はトルエン溶液、マトリックス樹脂が不飽和ニトリル−芳香族ビニル共重合体の場合はメチルエチルケトン溶液にて測定。)は、30〜80cm3/gの範囲にあることが好ましく、さらには40〜60cm3/gの範囲にあることがより好ましい。スチレン系樹脂の還元粘度ηsp/cに関する上記要件を満たすための手段としては、重合開始剤量、重合温度、連鎖移動剤量の調整等を挙げることができる。
【0052】
本発明の樹脂成分(A)における、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂の配合比は、芳香族ポリカーボネート50〜95重量%、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは75〜90重量%に対し、スチレン系樹脂50〜5重量%、好ましくは35〜5重量%、より好ましくは25〜10重量%である。芳香族ポリカーボネートが50重量%未満では耐熱性、強度および難燃性が充分ではなく、スチレン系樹脂が5重量%未満では成形性の向上効果が不充分である。
【0053】
本発明の(B)成分として用いられるオルガノポリシロキサンは、樹脂成分(A)に対し難燃性を付与する上で重要な役割を果たす成分の1つである。
【0054】
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(B)は、一官能性シロキサン単位(以降「M単位」と称する)、二官能性繰り返しシロキサン単位(以降「D単位」と称する)、三官能性繰り返しシロキサン単位(以降「T単位」と称する)、および四官能性繰り返しシロキサン単位(以降「Q単位」と称する)を含む。
【0055】
オルガノポリシロキサン(B)中の各単位の含有量は、オルガノポリシロキサン(B)中のM単位、D単位、T単位、Q単位の全モル量を基準にして、M単位が0〜70モル%、D単位が0〜100モル%、T単位が0〜100モル%、Qが単位0〜63モル%である。
【0056】
M単位は末端基を構成する単位であり、その含有量が70モル%を越えると、オルガノポリシロキサン(B)の分子量が低くなり、その結果後述するように、オルガノポリシロキサン(B)の揮発性が高すぎたり、樹脂成分(A)との相溶性が高すぎて、樹脂成分(A)を可塑化させたりする結果、樹脂組成物の難燃性が低下するので好ましくない。
【0057】
また、Q単位は架橋構造を形成する単位であり、その含有量が63モル%を越えると、オルガノポリシロキサン(B)の製造時にゲル化を起こしたり、オルガノポリシロキサン(B)の分子量が高くなりすぎて、樹脂成分(A)への分散性が低下し、難燃性改善効果が低下する等の問題点が生じるため好ましくない。
【0058】
オルガノポリシロキサン(B)中のD単位およびT単位については、その含有量に制限はなく、任意に使用できる。
【0059】
オルガノポリシロキサン(B)中の各単位のより好ましい含有量は、オルガノポリシロキサン(B)中のM単位、D単位、T単位、Q単位の全モル量を基準にして、M単位が0〜50モル%、D単位が0〜100モル%、T単位が0〜90モル%、Qが単位0〜60モル%である。
【0060】
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(B)を構成するM単位、D単位およびT単位中の有機基Rは、各々独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のメルカプトアルキル基、炭素数2〜20のシアノアルキル基、炭素数2〜20のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数6〜20のアミノアリール基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基および炭素数4〜20のグリシドキシアルキル基よりなる群から選ばれる1価の有機基である。
【0061】
炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、4−ビニルシクロヘキシル基などのアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などのアリール基;ベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基などのアラルキル基などを挙げることができる。
【0062】
ハロゲン化炭化水素基の例としては、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンチル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリフルオルトリル基などを挙げることができる。
【0063】
メルカプトアルキル基の例としては、2−メルカプトエチル基、3−メルカプトプロピル基などを挙げることができる。
【0064】
シアノアルキル基の例としては、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基などを挙げることができる。
【0065】
アシルオキシアルキル基の例としては、3−アクリルオキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基などを挙げることができる。
【0066】
アミノアルキル基の例としては、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−(2−メチル)−プロピル基などを挙げることができる。
【0067】
アミノアリール基の例としては、アミノフェニル基などを挙げることができる。
【0068】
ヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシプロピル基などを挙げることができる。
【0069】
グリシドキシアルキル基の例としては、3−グリシドキシプロピル基などを挙げることができる。
【0070】
これらのうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソオクチル基、ビニル基、フェニル基よりなる群から選ばれる有機基を用いることが、性能、経済性の点で好ましい。
【0071】
オルガノポリシロキサン(B)の配合割合は、樹脂成分(A)100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部の範囲である。0.1重量部未満では難燃性の改善が充分ではなく好ましくない。逆に30重量部を越えると、耐衝撃性などの機械物性が低下し好ましくない。オルガノポリシロキサン(B)は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
オルガノポリシロキサン(B)の製造方法は特に限定されず、公知の方法が利用できる。例えば、オルガノクロロシランやオルガノアルコキシシラン等を、過剰の水、および酸や塩基などの触媒の存在下で加水分解縮重合させることにより得ることができる。その際、用いるオルガノクロロシランやオルガノアルコキシシラン等の構造およびその配合量を調節することにより、M単位、D単位、T単位、Q単位の各含有量を制御し、所望の分岐構造を持つオルガノポリシロキサン(B)を得ることができる。また、用いる触媒の種類や量、水の量、加水分解縮重合反応の温度や時間、M単位の導入量などを調節することにより、オルガノポリシロキサン(B)の分子量を調節することができる。
【0073】
オルガノポリシロキサン(B)の分岐構造は、M単位、D単位、T単位、Q単位の各含有量が上述の範囲であれば特に制限はなく、種々のものが利用できる。例えば、D単位からなる直鎖構造、環状構造、ならびにT、DT、DQ、TQ、DTQの各組み合わせからなる分岐構造が挙げられる。また、さらにM単位からなる末端基を導入した構造として、MDの組み合わせからなる直鎖構造、ならびにMT、MQ、MDT、MDQ、MTQ、MDTQの各組み合わせからなる分岐構造が挙げられる。
【0074】
D単位、T単位、Q単位から選ばれる組み合わせにより合成されたオルガノポリシロキサン(B)は、その製造方法に依存して、ケイ素原子に直結した水酸基および/またはアルコキシ基を末端基として含有する。アルコキシ基中のアルキル基は、オルガノポリシロキサン(B)製造の出発原料や製造に用いる溶媒によって決まり、通常メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの低級アルキル基である。
【0075】
これらの末端基、中でも水酸基は、反応性が高いので、オルガノポリシロキサン中に多量に存在すると加水分解を受けた後架橋を形成し、樹脂組成物の成形性を低下させたり、樹脂成分に配合する際、高温下で芳香族ポリカーボネートと反応し、芳香族カーボネートの分子量低下を引き起こすなどの副反応が起こることがあるため好ましくない場合がある。
このような場合、末端の水酸基を後述するシリル化剤で処理することにより、M単位に変換し、オルガノポリシロキサン(B)を安定化させることができる。
【0076】
オルガノポリシロキサン(B)の骨格中へのM単位の導入は、このような加水分解縮重合後のシリル化処理だけでなく、加水分解縮重合の際に同時に行うこともできる。
【0077】
オルガノポリシロキサン(B)の製造に用いられるオルガノクロロシランやオルガノアルコキシシラン、ならびにその他の原料の具体例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0078】
D単位の原料としては、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0079】
上記以外のD単位の原料として、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0080】
T単位の原料としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0081】
Q単位の原料としては、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン等が挙げられる。
【0082】
M単位を導入するためのシリル化剤の例としては、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシランなどのクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザンなどのジシラザンなどが挙げられる。
【0083】
上記シリル化剤以外のM単位の原料として、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0084】
オルガノポリシロキサン(B)中の末端水酸基の含有量は5重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下である。また、オルガノポリシロキサン(B)中の末端アルコキシ基の含有量は10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下である。
【0085】
水酸基の含有量は、例えば無水溶媒中でアルキルリチウムやアルキルマグネシウムハライド(グリニヤール試薬)などの有機金属化合物と反応させた際に発生するガスの量を定量する方法により決定できる。またアルコキシ基の含有量は、例えば適当な内部標準物質を併用してプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトルのシグナル面積比より計算できる。
【0086】
オルガノポリシロキサン(B)の重量平均分子量は500〜100,000が好ましく、1,000〜40,000がより好ましく、1,000〜10,000がさらに好ましい。
【0087】
重量平均分子量が500より低いと、オルガノポリシロキサン(B)の揮発性が高すぎたり、樹脂成分(A)との相溶性が高すぎて、樹脂成分(A)を可塑化させたりする結果、樹脂組成物の難燃性が低下するので好ましくない。逆に、重量平均分子量が100,000を越えると、オルガノポリシロキサン(B)の樹脂成分(A)中における分散性が低下し、樹脂組成物の難燃性が不充分となったり、樹脂組成物の機械物性が低下したりするので好ましくない。
【0088】
オルガノポリシロキサン(B)の好ましい構造は、MDの組み合わせからなる直鎖構造、DT、MDT、MQ、MDQ、MTQ、MDTQの各組み合わせからなる分岐構造である。
【0089】
特に、MQ構造を主体とし、所望に応じてD単位および/またはT単位を導入して得られるオルガノポリシロキサン(いわゆるMQレジン)は特に好ましい構造である。このようなオルガノポリシロキサンは、例えば特公平8−22921号公報(米国特許第5,548,053号公報に対応)および特許第2941701号公報(米国特許第5,786,413号公報に対応)に開示された方法によって良好に製造できる。
【0090】
オルガノポリシロキサン(B)の好ましい構造を組成で示すと、オルガノポリシロキサン(B)がDT構造を主体とする場合には、M単位が0〜30モル%、D単位とT単位の合計が70〜100モル%となる範囲であり、さらに好ましくは、M単位が0〜30モル%、D単位とT単位の合計が70〜100モル%であり、かつD単位とT単位のモル比が10/90〜90/10となる範囲である。また、オルガノポリシロキサン(B)がMQ構造を主体とする場合には、M単位が10〜50モル%、Q単位が15〜60モル%、D単位とT単位の合計が0〜70モルとなる範囲であり、さらに好ましくは、M単位が10〜50モル%、Q単位が15〜60モル%、D単位とT単位の合計が5〜70モルとなる範囲である。
【0091】
本発明の(C)成分として用いられる無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩(以下、「無機金属塩」と称する)は、本発明の特徴をなす成分であり、オルガノポリシロキサン(B)との相乗効果によって樹脂成分(A)に対し難燃性を付与する上で重要な役割を果たす成分である。
【0092】
本発明の(C)成分に用いられる無機アルカリ金属塩および無機アルカリ土類金属塩は、各々無機酸とアルカリ金属元素、無機酸とアルカリ土類金属元素との間で生成したものである。
【0093】
無機金属塩(C)に用いられるアルカリ金属元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムであり、好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0094】
また無機金属塩(C)に用いられるアルカリ土類金属元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムであり、好ましくはマグネシウム、カルシウムである。
【0095】
無機金属塩(C)の生成に用いられる無機酸の例としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、ピロ亜硫酸、亜二チオン酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、ピロリン酸、ホウ酸、ヘキサフルオロアルミン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸などが挙げられる。
【0096】
無機金属塩(C)の好ましい例は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素と、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の間で生成する、ハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ土類金属塩である。
【0097】
ハロゲン化アルカリ金属塩およびハロゲン化アルカリ土類金属塩の具体的な例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2が挙げられる。これらのうち、特にNaCl、NaBr、KCl、KBrを用いることが好ましい。
【0098】
上記以外の無機金属塩(C)の具体的な例としては、Na2SO4、K2SO4、MgSO4、CaSO4、Na2SO3、K2SO3、MgSO3、CaSO3、Na2S2O3、K2S2O3、MgS2O3、CaS2O3、Na2S2O5、K2S2O5、MgS2O5、CaS2O5、Na2S2O4、K2S2O4、MgS2O4、CaS2O4、NaNO3、KNO3、Mg(NO3)2、Ca(NO3)2、NaNO2、KNO2、Mg(NO2)2、Ca(NO2)2、Na3PO4、K3PO4、Mg3(PO4)2、Ca3(PO4)2、Na4P2O7、K4P2O7、Mg2P2O7、Ca2P2O7、Na2B4O7、K2B4O7、MgB4O7、CaB4O7、Na3AlF6、K3AlF6、Mg3(AlF6)2、Ca3(AlF6)2、Na2SiF6、K2SiF6、MgSiF6、CaSiF6、Na2TiF6、K2TiF6、MgTiF6、CaTiF6、NaPF6、KPF6、Mg(PF6)2、Ca(PF6)2、NaBF4、KBF4、Mg(BF4)2、Ca(BF4)2が挙げられる。
【0099】
無機金属塩(C)の配合割合は、樹脂成分(A)100重量部に対して0.0005〜5重量部、好ましくは0.001〜2重量部、より好ましくは0.005〜1重量部の範囲である。0.0005重量部未満では難燃性の改善が充分ではなく好ましくない。逆に5重量部を越えると、芳香族ポリカーボネートの熱安定性、耐加水分解性が低下するため、耐衝撃性などの機械物性が損なわれやすく好ましくない。無機金属塩(C)は、無機アルカリ金属塩または無機アルカリ土類金属塩を各々単独で使用してもよく、任意の組み合わせで2種類以上を併用してもよい。
【0100】
本発明において、オルガノポリシロキサン(B)と無機金属塩(C)を併用することは必須である。樹脂成分(A)にオルガノポリシロキサン(B)を添加するだけでは、難燃性改善効果は不充分であるが、さらに無機金属塩(C)を添加することにより難燃性を大きく改善することができる。また、樹脂成分(A)に無機金属塩(C)のみを添加しても難燃性改善効果はほとんど得られない。
【0101】
本発明の特徴は、オルガノポリシロキサン(B)に加えて、無機金属塩(C)を少量併用することにより、両成分の相乗効果により、易燃性のスチレン系樹脂を含む樹脂成分(A)の難燃性を改善できる点にある。これに対し、芳香族ポリカーボネートの難燃剤として広く知られている有機スルホン酸金属塩を用いる場合には、このようなオルガノポリシロキサンとの相乗効果は得られないか、あるいは難燃効果を得るために多量の有機スルホン酸金属塩の添加を必要とすることが判った。
【0102】
本発明において、上記のようにオルガノポリシロキサン(B)と無機金属塩(C)を併用することにより優れた難燃性改善効果が発現する理由は、現時点では明らかではないが、以下のように推察される。
【0103】
燃焼時に樹脂成分、特に芳香族ポリカーボネートから炭化層(チャー)が形成される際、難燃剤であるオルガノポリシロキサンが共存すると、オルガノポリシロキサンから誘導されるSiO2が炭化層と一体化して、難燃性の高いバリアー層が形成されると考えられる。樹脂成分中にスチレン系樹脂のような易燃性の樹脂が共存する場合には、その分解を抑止するために、バリアー層の形成をより素早く効率よく行う必要があると考えられる。無機金属塩(C)はオルガノポリシロキサン(B)と芳香族ポリカーボネートからのバリアー層の形成を効率よく加速する作用があるものと推定される。
【0104】
本発明の難燃性樹脂組成物を製造する方法は、公知の方法が利用でき、特に限定されない。
【0105】
例えば樹脂成分(A)、オルガノポリシロキサン(B)、および無機金属塩(C)を予備混合した後、樹脂成分(A)の軟化点以上の温度で溶融混合する方法;樹脂成分(A)と無機金属塩(C)を予備混合し、さらに溶融状態とした後、オルガノポリシロキサン(B)を混合する方法;オルガノポリシロキサン(B)と無機金属塩(C)を予備混合した後、溶融状態の樹脂成分(A)に混合する方法;オルガノポリシロキサン(B)と無機金属塩(C)を予め樹脂成分(A)の一部と溶融混合してマスターバッチとし、樹脂成分(A)の残りに添加する方法、などが挙げられる。
【0106】
予備混合の方法としては、ドライブレンド法;ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブルミキサー、リボンブレンダーなどを用いる方法;(A)〜(C)成分の一部またはすべてを水や溶剤に溶解して混合した後、乾燥する湿式法、などが利用できる。
【0107】
また、溶融混合する方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー等を用いる方法が利用できる。
【0108】
本発明の難燃性樹脂組成物を製造するための特に好ましい方法の一つとして、無機金属塩(C)をオルガノポリシロキサン(B)中に予め均一に混合し、無機金属塩を含有するオルガノポリシロキサンを製造した後、これを樹脂成分(A)と混合する方法が挙げられる。この製造方法を用いることにより、オルガノポリシロキサン(B)と無機金属塩(C)の相乗効果が発揮され易くなり、より高度な難燃性改善効果が得られる。
【0109】
無機金属塩(C)をオルガノポリシロキサン(B)中に均一に混合する方法としては、オルガノポリシロキサン(B)をその軟化点以上の温度に加熱した後、無機金属塩(C)を添加して溶融混合する方法;オルガノポリシロキサン(B)と無機金属塩(C)を各々同一のまたは異なる溶媒に溶解した後それらの溶液を混合し、乾燥する方法;オルガノポリシロキサン(B)を上述した方法で製造する際に用いる酸・塩基触媒や、それらをさらに中和する際に用いる酸・塩基等から生成する塩を、除去せずにオルガノポリシロキサン中に残したまま該オルガノポリシロキサンを回収して使用する方法、などが挙げられる。特に、オルガノポリシロキサン(B)を製造する際に生成する塩を利用する方法は、安価に無機金属塩を均一に分散できるので、好ましい。
【0110】
例えば、上述の特公平8−22921号公報に開示されたMQレジンの製造法においては、原料であるアルコキシシラン類を、酸触媒を用いた重縮合工程(第1工程)と塩基触媒を用いた重縮合工程(第2工程)の2段の工程で反応させ、さらに該塩基触媒を酸で中和する第3工程を経て、MQレジンが製造される。ここで、例えば第1工程および第3工程においてHClを酸として用い、第2工程においてNaOHを塩基として用いることにより、NaClを含有するMQレジンが製造できる。このようにして製造されるMQレジンは、無機金属塩(C)を含有するオルガノポリシロキサン(B)として本発明において好適に用いられる。
【0111】
本発明の難燃性樹脂組成物や、オルガノポリシロキサン(B)中に含まれた無機金属塩(C)の含有量は、公知の方法により定量することができる。例えば、無機金属塩(C)を含有する樹脂組成物やオルガノポリシロキサンを、溶剤に溶解した後、水等で抽出する方法、酸や過酸化物の共存下または非存在下に高温で分解した後、溶剤中に抽出する方法等により、定量したい元素を回収し、電量滴定法、原子吸光法、発光分析法、イオンクロマトグラフィー法、蛍光X線法等の方法により定量することができる。また、無機金属塩(C)を含有する樹脂組成物やオルガノポリシロキサンを、直接蛍光X線法により分析し、FP法(Fundamental Parameter法)、検量線法等の方法により定量することもできる。
【0112】
本発明においては更に高度な難燃性を付与するために、オルガノポリシロキサン(B)および無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩(C)以外の難燃剤を併用することも可能である。例えば、a)リン酸エステル系化合物、b)赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどの無機系リン化合物、c)ハロゲン系有機化合物、d)メラミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロン等の窒素含有有機化合物、e)ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛などのアルカリおよびアルカリ土類金属以外の無機金属塩、f)酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、g)ポリフェノキシホスファゼン、ポリトリルオキシホスファゼン、ポリメトキシホスファゼン、ポリフェノキシメトキシホスファゼン、ポリフェノキシトリルオキシホスファゼンなどの、環状または直鎖状のホスファゼンポリマーまたはオリゴマー、h)フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノール、フェニルフェノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドから製造される、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などのフェノール樹脂等、から選ばれる1種または2種以上の化合物が用いられる。これらの中でも、毒性や物性低下の比較的少ないa)リン酸エステル系化合物が好ましい。
【0113】
a)リン酸エステル系化合物としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシリルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステルや、これらに各種置換基を導入した化合物、および下式(10)で表される縮合リン酸エステル系化合物が挙げられる。
【0114】
【化14】
【0115】
(式中、nは1〜10の整数であり、Ar1、Ar2、Ar4、Ar5は各々独立に無置換または炭素数1〜10の炭化水素基で少なくとも一つ置換されたフェニル基から選ばれる芳香族基であり、Ar3は炭素数6〜20の2価の芳香族基である。)
【0116】
縮合リン酸エステル系化合物としては、特にビスフェノールAテトラフェニルジホスフェート、ビスフェノールAテトラトリルジホスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジホスフェート、ビスフェノールAジ(フェニルキシリルホスフェート)、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート、レゾルシノールテトラキシリルジホスフェートが好適に用いられる。
【0117】
また本発明においては、燃焼時の燃焼粒の滴下を更に減少させるためにフルオロオレフィン樹脂を使用することができる。ここで用いられるフルオロオレフィン樹脂は、フルオロエチレン構造を含む単独または共重合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、トリフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体などである。特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好適に用いられ、その分子量や形態は特に限定されないが、組成物中に直径0.5μm以下のフィブリル状に分散していることが好ましい。フルオロオレフィン樹脂の添加量は、樹脂成分(A)100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲である。この範囲よりも使用量が少ないと滴下防止効果が充分ではなく、この範囲よりも多いと流動性が低下するとともに難燃性も低下してしまい好ましくない。
【0118】
本発明の難燃性樹脂組成物には、成形性、耐衝撃性、剛性、耐候性、外観等の改善の目的で、熱可塑性樹脂に常用されている各種の添加剤を添加することができる。添加剤の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)、離型剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、他の樹脂やゴム等の重合体、充填材などが挙げられる。その添加量については、本発明の難燃性樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0119】
本発明の難燃性樹脂組成物は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、携帯電話、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器のハウジングまたはそれらの各種部品、さらには自動車部品などの用途に好適に用いられる。
【0120】
【発明の実施の形態】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0121】
実施例、比較例では以下の成分を用いた。
(A−1)芳香族ポリカーボネート
PC:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ビスフェノールAポリカーボネート ユーピロンS3000 粘度平均分子量20,000
(A−2)スチレン系樹脂
AS:旭化成(株)製 アクリロニトリル−スチレン共重合体 スタイラックAS T8801
ABS:三菱レーヨン(株)製 粉末状アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体 RV
【0122】
(B)オルガノポリシロキサン
S−1およびS−8〜S−15:特公平8−22921号公報に開示された方法に従って、対応するエトキシシランより酸触媒(HCl)および塩基触媒(NaOH)を用いて合成した。
S−2およびS−3:対応するクロロシランを加水分解縮重合することにより合成した。
S−4:クロロシランの加水分解縮重合で得たT単位100%のオルガノポリシロキサンを、さらにヘキサメチルジシラザンと反応させてM単位を導入することにより合成した。
S−5:Gelest社製 PMM0021を用いた。
S−6:特公平8−22921号公報に開示された方法を参考に、対応するエトキシシランより酸触媒(HCl)および塩基触媒(NaOH)を用いて合成した。
S−7:酸触媒(HCl)のみを用い、塩基触媒(NaOH)を用いない以外は、S−6と同じ方法により合成した。
S−16:信越化学工業(株)製 LS−8730を用いた。
【0123】
オルガノポリシロキサン(B)を構成するM単位、D単位、T単位、Q単位のモル比、および有機基Rの構造と組成比(モル比)は、プロトンおよびケイ素29核磁気共鳴(1H−および29Si−NMR)分光分析法により確認した。1H−および29Si−NMRスペクトルは、重ベンゼンを溶媒とし、Avance DPX400型またはDPX300型核磁気共鳴装置(いずれもドイツ国ブルカー社製)を用いて、あるいは重クロロホルムを溶媒とし、JNM−α400型核磁気共鳴装置(日本電子社製)を用いて得た。
【0124】
オルガノポリシロキサン(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めた。GPC測定は、次の条件1または条件2のいずれかで行った。
【0125】
<条件1>
装置 :ドイツ国Abimed社製307型クロマトグラフ
カラム:Pl gel Mixed−Cおよび100A(いずれも米国ヒューレット・パッカード社製)を直列につないで使用
溶離液:トルエンまたはテトラヒドロフラン
検出 :ドイツ国Bischoff社製8120型示差屈折率検出器
【0126】
<条件2>
装置 :島津製作所製LC−10型クロマトグラフ
カラム:Shodex K−806M、K−804およびK−802.5(いずれも昭和電工製)を直列につないで使用
溶離液:クロロホルム
検出 :島津製作所製SPD−10A型紫外吸光検出器
【0127】
オルガノポリシロキサン(B)は、末端基としてケイ素原子に直結した水酸基(シラノール基)およびエトキシ基を有する。その含有量は次のようにして求めた。
【0128】
(1)シラノール基の含有量(重量%)
ポリオルガノシロキサン(B)を無水キシレン中でヨウ化メチルマグネシウム(MeMgI、グリニヤール試薬)と反応させ、発生したメタンの体積から求めた。
【0129】
(2)末端エトキシ基の含有量(重量%)
テトラクロロエタンまたはジクロロメタンを内部標準として用い、1H−NMRスペクトルにおけるシグナル面積の比から求めた。1H−NMRスペクトルは上記と同じ条件で得た。
【0130】
オルガノポリシロキサン(B)中の無機金属塩の含有量は、蛍光X線分析装置またはフレームレス原子吸光光度計を用いて求めた。蛍光X線分析は、理学製RIX3000蛍光X線分析装置を用いて、FP(Fundamental Parameter)法により行った。またフレームレス原子吸光分析は、オルガノポリシロキサンを硫酸とフッ化水素酸で前処理後、日立製作所製Z−8270を用いて行った。オルガノポリシロキサンS−1〜S−5、S−7およびS−16からは無機金属塩は検出されなかったが、これら以外のオルガノポリシロキサンからは、合成時の触媒から由来するNaClが検出された。
以上の方法で求めたオルガノポリシロキサン(B)の特性を表1に示す。
【0131】
また、比較例において、以下の市販の有機スルホン酸金属塩を用いた。
F114P:大日本インキ化学工業(株)製 パーフルオロブタンスルホン酸カリウム メガファックF114P
KSS:UCBジャパン製 ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム
【0132】
【実施例1〜6】
表2に示した組成で、まず無機金属塩(C)のメタノール溶液または水溶液を芳香族ポリカーボネートと混合し、120℃で4時間乾燥することにより芳香族ポリカーボネートと無機金属塩の予備混合物を得た。この予備混合物と、スチレン系樹脂およびオルガノポリシロキサン(B)を表2に示した組成でポリエチレン製バッグに入れ、徒手的に混合することによってさらに予備混合し、日本国テクノベル社製押出機(KZW15−45MG)を用いて250℃にて溶融混練した。得られた樹脂組成物(ペレット)を日本国モダンマシナリー社製小型射出成形機(MJEC10)にて250℃で成形し、厚さ3.18mmの試験片を作成した。
【0133】
作成した試験片を用いてUL−94に準拠した垂直燃焼試験を行い、樹脂組成物の自己消火性を評価した。結果を表2に示す。
【0134】
表2から明らかな通り、本発明の樹脂組成物は、燃焼粒の滴下を起こさず、いずれも優れた難燃性(自己消火性)を示す。
【0135】
【比較例1】
オルガノポリシロキサンおよび無機金属塩を用いず、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂のみを用いて試験片を作成する以外、実施例1〜6と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2から明らかな通り、燃焼粒の滴下が生じ、燃焼時間も長かった。
【0136】
【比較例2】
無機金属塩を用いず、芳香族ポリカーボネート、スチレン系樹脂およびオルガノポリシロキサンからなる樹脂混合物を用いて試験片を作成する以外、実施例1〜6と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2から明らかな通り、燃焼粒の滴下が生じ、燃焼時間も長かった。この結果から、オルガノポリシロキサンのみでは難燃性の改善効果が不充分であることがわかる。
【0137】
【比較例3および4】
オルガノポリシロキサンを用いず、芳香族ポリカーボネート、スチレン系樹脂および有機スルホン酸金属塩(F114P)または無機金属塩(NaCl)からなる樹脂混合物を用いて試験片を作成する以外、実施例1〜6と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2から明らかな通り、燃焼粒の滴下が生じ、燃焼時間も長かった。この結果から、塩単独では難燃性の改善効果がないことがわかる。
【0138】
【比較例5〜8】
無機金属塩の代わりに有機スルホン酸金属塩(F114P、KSS)を用いて試験片を作成する以外、実施例1〜6と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2から明らかな通り、有機スルホン酸金属塩は難燃性改善に効果がないばかりか、比較例1と比べてさらに燃焼時間が長くなっていることがわかる。
【0139】
以上の実施例1〜6と比較例1〜8の結果から、オルガノポリシロキサンと無機金属塩の併用によって初めて大きな難燃性改善効果が得られること、その際使用する無機金属塩は少量で効果を発揮すること、これに対し、従来用いられていた有機スルホン酸金属塩は効果を発揮しないことがわかる。
【0140】
【実施例7〜11】
オルガノポリシロキサン(B)として種々の構造を持つオルガノポリシロキサンS−2〜S−5を用いた。表3に示した組成に従い、実施例1〜6に記載した方法と同じ操作により、試験片の作成と自己消火性の評価を行った。実施例9および11では、得られた樹脂組成物(ペレット)を圧縮成形機を用いて250℃にて圧縮成形することにより、厚さ3.18mmの試験片を作成した。結果を表3に示す。
表3から明らかな通り、オルガノポリシロキサンの構造にかかわらず、いずれも優れた難燃性改善効果を示した。
【0141】
【比較例9〜12】
実施例7〜11で用いたものと同じオルガノポリシロキサンS−2〜S−5を使用し、無機金属塩を用いずに同様の操作を繰り返した。結果を表3に示す。
表3から明らかな通り、無機金属塩を併用しない場合、燃焼粒の滴下を防ぐことはできず、燃焼時間も長くなる。
【0142】
【実施例12〜16】
合成時に使用した触媒に由来するNaClを含むオルガノポリシロキサンS−6、S−8、S−10、S−12、S−14を使用した。表4に示した組成で芳香族ポリカーボネート、スチレン系樹脂およびオルガノポリシロキサンを予備混合し、実施例1〜6に記載した方法と同じ操作により、試験片の作成と自己消火性の評価を行った。無機金属塩は外部からは加えず、オルガノポリシロキサン中に予め含まれるNaClのみを利用した。結果を表4に示した。
表4から明らかな通り、無機金属塩を外部から添加していないにもかかわらず、優れた難燃性改善効果が認められた。
【0143】
【比較例13〜16】
上記実施例12〜15で使用したオルガノポリシロキサンS−6、S−8、S−10、S−12と同一ないしほぼ同一の構造を持ち、無機金属塩の含有量が低いオルガノポリシロキサンS−7、S−9、S−11、S−13を用いた。表4に示した組成で芳香族ポリカーボネート、スチレン系樹脂およびオルガノポリシロキサンを予備混合し、実施例1〜6に記載した方法と同じ操作により、試験片の作成と自己消火性の評価を行った。無機金属塩は外部からは加えず、オルガノポリシロキサン中に予め含まれるNaClのみを利用した。結果を表4に示した。
表4から明らかな通り、樹脂組成物中の無機金属塩の含有量が0.0005重量%未満であるために、燃焼粒の滴下が生じたり、燃焼時間が著しく長くなる。
【0144】
【比較例17、18】
比較例17では、オルガノポリシロキサン(B)として、Q単位を65モル%含有する高分子量のMQレジンS−15を用いた。表4に示した組成で芳香族ポリカーボネート、スチレン系樹脂およびオルガノポリシロキサンを予備混合し、実施例1〜6に記載した方法と同じ操作により、試験片の作成と自己消火性の評価を行った。S−15は、合成時に使用した触媒に由来するNaClを含んでおり、他の無機金属塩は外部から添加せずに評価を行った。
【0145】
また比較例18では、オルガノポリシロキサン(B)として、M単位を75モル%含有する低分子量のシリコーン化合物S−16を用いた。S−16は無機金属塩を含まないため、実施例1〜6と同様の操作により、NaClを添加して試験片の作成と自己消火性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0146】
表4から明らかな通り、燃焼粒の滴下が生じ、燃焼時間も長かった。この結果から、Q単位またはM単位の含有量が高いオルガノポリシロキサンは、無機金属塩を併用しても難燃性改善効果に劣ることがわかる。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、安全性の高いオルガノポリシロキサンを使用しており、しかも良好な難燃性と成形性を示す。従って本発明の樹脂組成物は、OA機器、情報通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車部品などの大型化、薄肉化に充分対応できる材料であり、その応用分野の拡大が期待される。
Claims (4)
- 芳香族ポリカーボネート50〜95重量%およびスチレン系樹脂50〜5重量%よりなる樹脂成分(A)100重量部、オルガノポリシロキサン(B)0.1〜30重量部、および無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩(C)0.0005〜5重量部を包含してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物(ただし、組成物中に有機ハロゲン系難燃剤を含まない)であって、
該オルガノポリシロキサン(B)が下記式(1):
(式中、Rは各々独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のメルカプトアルキル基、炭素数2〜20のシアノアルキル基、炭素数2〜20のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数6〜20のアミノアリール基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基および炭素数4〜20のグリシドキシアルキル基よりなる群から選ばれる1価の有機基である。)
で表される一官能性シロキサン単位(M単位);
下記式(2):
(式中、Rは上記式(1)で定義したものと同じである。)
で表される二官能性繰り返しシロキサン単位(D単位);
下記式(3):
(式中、Rは上記式(1)で定義したものと同じである。)
で表される三官能性繰り返しシロキサン単位(T単位);
下記式(4):
で表される四官能性繰り返しシロキサン単位(Q単位)
を含み、
該オルガノポリシロキサン(B)中の該M単位、該D単位、該T単位、該Q単位の全モル量を基準にして、該オルガノポリシロキサン(B)中の該M単位、該D単位、該T単位、該Q単位の含有量が、各々0〜70モル%、0〜100モル%、0〜100モル%、0〜63モル%であることを特徴とする組成物。 - 式(1)、(2)、(3)中の有機基Rが、各々独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソオクチル基、ビニル基、フェニル基よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
- 無機アルカリ金属塩および/または無機アルカリ土類金属塩(C)が、ハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ土類金属塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1ないし2記載の組成物。
- NaCl、KCl、NaBr、KBrよりなる群から選ばれた少なくとも1種を成分(C)として用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
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