JP3866452B2 - メソカーボンマイクロビーズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンマイクロビーズ焼成品およびメソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メソカーボンマイクロビーズ(メソフェーズ小球体、球晶とも称す。)は、石油・石炭系ピッチ類を熱処理した際に、350〜450℃付近でピッチ(ピッチマトリックス)中に生成する粒径が数μm〜数十μmの光学的異方性を有する微小球体である。
ピッチマトリックス中のメソカーボンマイクロビーズは、沈降分離、遠心分離、濾過分離等により、あるいはピッチマトリックスを溶媒に溶解して抽出除去することにより分離される。
【0003】
分離されたメソカーボンマイクロビーズは、上記のように球形の黒鉛類似構造を有しており、高密度・高強度の炭素材用原料として極めて優れた特徴を有している。このメソカーボンマイクロビーズは、そのままで使用することもできるが、自己焼結性を有することから、これを700℃〜1200℃程度の温度で焼成(炭化)さらには必要に応じて2000℃〜3000℃の温度で黒鉛化した後使用される。特に黒鉛化品は、リチウムイオン二次電池の負極用活性物質などとして好適である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなメソカーボンマイクロビーズの焼成、黒鉛化による炭素材料の製造では、焼成時に自己焼結性を有するメソカーボンマイクロビーズが強固に融着するため、製品仕様として適した粒度とするには強い解砕または粉砕処理を必要とし、通常、黒鉛化前の焼成品に解砕または粉砕処理を施している。
【0005】
焼成により強固に融着したメソカーボンマイクロビーズ粒子を解砕または粉砕する際には、粒子本体が割れ(チッピング)、微粉末(たとえば0.5μm程度)発生するという問題点がある。たとえば微粉末量が多い黒鉛化品をリチウムイオン二次電池の負極活性物質として使用した場合には、比表面積の増加、嵩密度および充填率の低下等により、電池容量が上がらないという問題点があった。
上記微粉末量を低減するにはふるい分級等による微粉末の除去を行えばよいが、粒度調整は黒鉛化品の歩留り低下をもたらし、製造コスト高を招く。
【0006】
このような問題を解決するものとして、ピッチマトリックスから分離したメソカーボンマイクロビーズを乾燥(低沸点溶媒除去)した後、700℃〜1200℃程度の温度で焼成するに先立って、この炭化焼成温度よりも低温で、たとえば約50℃でのエージング処理する方法が知られている。しかしながらこのエージング処理は、その効果を得るまでに約5ヶ月を要するため、黒鉛化品製造までの製造時間が長くなるといった問題がある。
【0007】
本出願人も、上記問題について検討し、先に、ピッチ中から分離したメソカーボンマイクロビーズを1000℃以上で焼成するに先立って、不活性雰囲気下、400℃〜500℃で熱処理することを提案している(特開平7−169458号)。この方法によれば、上記チッピングを低減して微粉末量を低減することができる。
しかしながら400〜500℃での熱処理により、メソカーボンマイクロビーズを構成する芳香族炭化水素の重縮合反応が促進され、熱処理品のトルエン不溶分(TI)、キノリン不溶分(QI)が目標値より高くなる傾向にあり、揮発分(VM)が目標値より低くなる傾向にあり、ユーザースペックをはずれやすい。TI、QI、VMの目標値は、それぞれTI:97〜99重量%程度、QI:89〜93重量%程度、VM:8.0〜11.0重量%程度が適切と考えられている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような従来技術に鑑みて、焼成品を解砕または粉砕する際にチッピングが少なく、微粉末発生量の少ない焼成品および黒鉛化品を得ることができるメソカーボンマイクロビーズの製造方法について検討したところ、ピッチマトリックスから分離された後焼成に供されるメソカーボンマイクロビーズに、予め300〜350℃の温度での熱処理を2回以上加えることにより、焼成品のチッピングを防止でき、微粉末の発生を低減できるとともに、TI、QI、VM量も目標値が得られやすいことを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明に係るメソカーボンマイクロビーズの製造方法は、
ピッチの熱処理により生成し、ピッチマトリックスから分離されたメソカーボンマイクロビーズに、300〜350℃の温度での熱処理を加え、冷却した後、さらに300〜350℃の温度での熱処理を少なくとも1回加えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るメソカーボンマイクロビーズ焼成品の製造方法では、上記で得られたメソカーボンマイクロビーズを、700〜1200℃の温度で焼成する。
また本発明では、上記メソカーボンマイクロビーズ焼成品を黒鉛化してメソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品を製造する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、ピッチの熱処理により生成し、ピッチマトリックスから分離されたメソカーボンマイクロビーズに、300〜350℃の温度での熱処理を加え、冷却した後、さらに300〜350℃の温度での熱処理を少なくとも1回加えてメソカーボンマイクロビーズを得ている。
このメソカーボンマイクロビーズは、次いで焼成さらには黒鉛化に供される。
【0012】
図1に本発明におけるメソカーボンマイクロビーズ、その焼成品および黒鉛化品の製造方法の好ましい態様例を一連のプロセスフローで示す。本発明では、
(1)ピッチを熱処理してピッチマトリックス中にメソカーボンマイクロビーズを生成させ、
(2)生成したメソカーボンマイクロビーズとピッチマトリックスとを分離し、
(3)上記(2)で分離されたメソカーボンマイクロビーズを乾燥し、
(4)上記(3)で乾燥されたメソカーボンマイクロビーズに、300〜350℃での熱処理を加え、
(5)上記(4)で熱処理されたメソカーボンマイクロビーズを冷却後、さらに300〜350℃での熱処理を少なくとも1回加えてメソカーボンマイクロビーズを得る。
(6)上記(5)で得られたメソカーボンマイクロビーズを焼成して焼成品を得る。
(7)上記(6)で得られたメソカーボンマイクロビーズ焼成品を黒鉛化することによりメソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品を得る。
以下、上記のような本発明をより具体的に説明する。
【0013】
(1)メソカーボンマイクロビーズの生成
石油系または石炭系コールタールピッチを熱処理すると、ピッチ成分である芳香族炭化水素化合物が重縮合反応して高分子化し、粒径数〜数十μmの光学的異方性を有するメソカーボンマイクロビーズ(メソフェーズ小球体、球晶)が、ピッチマトリックス中に生成する。
【0014】
メソカーボンマイクロビーズを生成させる際のピッチの熱処理温度は300℃〜500℃であることが望ましい。熱処理温度が300℃未満では、芳香族炭化水素化合物の重縮合反応が極めて遅く、メソカーボンマイクロビーズの生成に長時間を要し、実用的ではない。また熱処理温度が500℃以上の場合には、芳香族炭化水素化合物の重縮合反応が極めて速く、メソカーボンマイクロビーズ生成の制御が困難となる。このことより、熱処理温度は350℃〜450℃が好ましい。
【0015】
(2)メソカーボンマイクロビーズの分離
ピッチの熱処理により生成したメソカーボンマイクロビーズは、沈降分離、遠心分離、濾過分離等の種々の分離手段を利用してピッチマトリックスから分離することができる。あるいはメソカーボンマイクロビーズを含有するピッチマトリックスに、ベンゼン、トルエン、キシレン、タール中油、タール重油等のピッチマトリックスを溶解しうる溶媒(ピッチ良溶媒)を添加し、ピッチマトリックスを抽出除去することによりメソカーボンマイクロビーズを回収してもよい。
溶媒添加量は、熱処理されたピッチ全量に対して、通常5〜6倍当量(重量比)程度で良い。またピッチマトリックスの抽出除去操作は複数回行なってもよい。
【0016】
(3)メソカーボンマイクロビーズの乾燥
分離されたメソカーボンマイクロビーズは、次いで熱処理するに先立って、乾燥し、軽沸点油分を除去することが好ましい。
乾燥は減圧下または常圧下で100℃〜150℃で加熱することが望ましい。
なおこの乾燥が不十分であれば次工程の熱処理時に、熱負荷が大きくなる。また過剰乾燥の場合には、熱処理または焼成工程でのメソカーボンマイクロビーズ表面に残存するレジン分の重縮合反応が遅くなり、メソカーボンマイクロビーズの結晶性が低下しやすい。
【0017】
(4)メソカーボンマイクロビーズの熱処理
本発明では、上記のようにピッチメトリックスから分離され、好ましくは乾燥されたメソカーボンマイクロビーズに、まず300℃〜350℃での熱処理を加える。この熱処理は、通常、不活性雰囲気下で、1〜6時間好ましくは1〜2時間行われる。
この熱処理後、一旦150℃以下、好ましくは50℃以下に冷却する。
【0018】
(5)メソカーボンマイクロビーズの再熱処理
本発明では、上記熱処理の後、一旦冷却されたメソカーボンマイクロビーズに、再び300℃〜350℃での熱処理を少なくとも1回加える。
この再熱処理は、メソカーボンマイクロビーズを形成する芳香族炭化水素の重縮合反応による品質変動の抑制を考慮すると、300℃〜350℃の温度で行われる。再熱処理時間は、通常、不活性雰囲気下で、1回につき1〜6時間好ましくは1〜2時間行われる。再熱処理を2回以上行うときには、熱処理後、一旦150℃以下、好ましくは50℃以下に冷却した後、再び加熱することが望ましい。
【0019】
上記のように熱処理されたメソカーボンマイクロビーズは、焼成に供する前に、必要に応じて解砕(あるいは粉砕)・分級処理して粒度調整しておくことが望ましい。この粒度調整は、上記(4)または(5)のいずれかの処理後に行ってもよいが、1回目の熱処理(4)後に一旦行うことが効率的である。さらに再熱処理(5)後に行ってもよい。
【0020】
上記のような熱処理を特定温度で繰り返し行うことにより、メソカーボンマイクロビーズの焼結活性を低減させることができる。
上記のような本発明で得られるメソカーボンマイクロビーズ(熱処理品)は、焼成後に解砕または粉砕の際に、チッピングを防止でき、微粉末の発生を低減できるとともに、TI、QI、VM量も目標値が得られやすい。
具体的にこのメソカーボンマイクロビーズ熱処理品のトルエン不溶分(TI)は、97〜99重量%であり、キノリン不溶分(QI)は、89〜93重量%であり、揮発分VM(800℃で7分間処理した後の重量減少率)は8〜11重量%であることが望ましい。なお上記TIおよびQIはJIS K2425に準拠して測定される。
【0021】
(6)メソカーボンマイクロビーズの焼成
本発明では、上記のようなメソカーボンマイクロビーズ(熱処理品)を、700〜1200℃の温度で焼成すること以外は、焼成は公知の焼成(炭化)条件により行うことができる。焼成は、通常、不活性雰囲気下で行われる。
焼成後には、焼成品は通常塊状で得られるので、これを粉砕する。
【0022】
本発明では、ショア硬度が100以下で、焼成品の嵩比重が1.6(g/cm3 )以下の焼成品を得ることができる。このため、焼成品は粉砕されやすく、またメソカーボンマイクロビーズ粒子同士の融着が弱いため、緩やかな条件で解砕・粉砕処理が可能となり、チッピングによる微粉末の発生量が飛躍的に抑制できる。さらに必要に応じて分級による粒度調整を行なってもよい。
本発明では、微粉末の少ない焼成品を得ることができる。
【0023】
(7)メソカーボンマイクロビーズの黒鉛化
上記で得られたメソカーボンマイクロビーズ焼成品は、通常、不活性雰囲気下、2000℃〜3000℃の温度で黒鉛化される。
本発明で得られる黒鉛化品は、微粉末量が極めて少なく、特にリチウムイオン二次電池の負極活性物質として好適である。
【0024】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお本発明では、特にことわらない限り%は重量%である。
(実施例1)
(1)コールタールピッチを原料として450℃で熱処理することにより、メソカーボンマイクロビーズを生成させた。
(2)このコールタールピッチに、溶媒としてタール中油を6倍当量添加したあと、フィルターにより2.0(kg/cm2 )の加圧下でろ過し、メソカーボンマイクロビーズを分離した。
(3)次いで、得られたメソカーボンマイクロビーズを常圧下、120℃で乾燥した。
(4)この乾燥品を、円筒形キルン中、窒素雰囲気下、350℃で1時間加熱した後、室温まで自然冷却した。
次いで熱処理品をアトマイザーで解砕後、粗粉分(150μm以上)を除去した。
(5)上記(4)で熱処理されたメソカーボンマイクロビーズを、再び円筒形キルン中に装入し、窒素雰囲気下、320℃で1時間加熱した。
得られたメソカーボンマイクロビーズのTIは97.8重量%、QIは91.2重量%、VMは8.8重量%であった。
(6)上記(5)で得られたメソカーボンマイクロビーズを、さらに1000℃で焼成した。焼成品のショア硬度は90であり、また嵩比重は1.46(g/cm3 )であった。
【0025】
この焼成体を粉砕したあと、粒度測定を行なった結果、チッピングは発生せず、最小粒径Dminは2.5μmであった。
(7)次いで3000℃で黒鉛化した。黒鉛化時には、粒子同士の融着は起こらず、黒鉛化後の粒度分布測定結果、最小粒径Dminは2.6μmであった。
【0026】
(比較例1)
実施例1の工程(5)の熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを製造した後、この焼成品を得た。
得られた焼成体のショア硬度は145であり、嵩比重は測定上限を超越した(1.7(g/cm3 )以上)。この焼成体を粉砕時、チッピングが生じ、最小粒径Dminは0.6μmであった。これに実施例と同様の黒鉛化処理をした後の粒度分布を測定した結果、最小粒径Dminは0.7μmであった。
【0027】
(比較例2)
実施例1の工程(4)の熱処理時間を2時間延長し、工程(5)の熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを製造した後、この焼成品を得た。
得られた焼成体のショア硬度は143であり、嵩比重は測定上限を超越した(1.7(g/cm3 )以上)。この焼成体を粉砕時、チッピングが生じ、最小粒径Dminは0.7μmであった。これに実施例と同様の黒鉛化処理をした後の粒度分布を測定した結果、最小粒径Dminは0.7μmであった。
【0028】
【発明の効果】
本発明のメソカーボンマイクロビーズの製造方法によれば、焼成品の解砕または粉砕時のチッピングを防止でき、微粉末の発生を低減できるメソカーボンマイクロビーズを得ることができる。またこのメソカーボンマイクロビーズの、TI、QI、VM量も目標値が得られやすい。本発明では、このメソカーボンマイクロビーズを用いて、微粉末の少ない焼成品、さらには微粉末の少ない黒鉛化品を得ることができる。黒鉛化品は、リチウムイオン2次電池の負極用活性物質として最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るメソカーボンマイクロビーズ、その焼成品および黒鉛化品の製造方法の態様例をプロセスフローで示す図である。
Claims (3)
- ピッチの熱処理により生成し、ピッチマトリックスから分離されたメソカーボンマイクロビーズに、300〜350℃の温度での熱処理を加え、冷却した後、さらに300〜350℃の温度での熱処理を少なくとも1回加えるメソカーボンマイクロビーズの製造方法。
- 請求項1に記載の方法で得られたメソカーボンマイクロビーズを、700〜1200℃の温度で焼成するメソカーボンマイクロビーズ焼成品の製造方法。
- 請求項2に記載の方法で得られたメソカーボンマイクロビーズ焼成品を黒鉛化するメソカーボンマイクロビーズ黒鉛化品の製造方法。
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