JP3876335B2 - ヘリウム用スクロール圧縮機 - Google Patents

ヘリウム用スクロール圧縮機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作動ガスとしてヘリウムガスを用い、超高真空分野のクライオポンプ装置用ヘリウム圧縮機等に使用される密閉形スクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の密閉形スクロール圧縮機において、油による冷却、いわゆる油インジェクション方式(油注入方式)としては、例えば特開昭61−187584号公報に開示されているように、吐出管の途中に油分離器を設け、この油分離器でガスから分離した油を圧縮機部へ注入するとともに、密閉容器内の油も圧縮機部へ注入するように構成したものがある。また、ヘリウム液化冷凍装置用圧縮機の例としては、特開平3−271583号公報に開示された油インジェクション方式のスクロール圧縮機がある。そして、上記従来技術のスクロール圧縮機では、スクロールラップの巻き数は2.7〜4前後と比較的大きく設定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、圧縮機をヘリウム用途に使用する場合、圧力比が1.5〜2など、これまでにない極端に低い圧力比域での運転ニーズが高まってきている。しかしながら、上記従来の圧縮機では、クライオポンプ装置用の圧縮機で圧力比が2.5〜7前後であり、極端に低い圧力比域では正常な運転が確保できない。すなわち、上記のように1.5〜2前後の低い圧力比条件の場合、従来の圧縮機では一般的に圧縮機の過圧縮動力損失が大きくなって、効率低下が顕著となるという問題が生じる。
【0004】
また、従来の圧縮機では、圧縮室内部ガス圧力の増大により旋回スクロールの軸方向変位量が増大するため不安定な旋回運動となり、ラップ同士の接触によるかじりなどを引き起こす場合がある。ヘリウムガスを作動ガスとした場合、他の冷媒ガス(例えば、冷凍空調用のフロンガスなど)に比べてガスの比熱比が大きいため、内部圧縮動力も大きくなり、また吐出ガス温度が高くなるため、ヘリウムガスの冷却を強化する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、極端に低い圧力比域でも効率低下することなく、かつ安定した運転が可能なヘリウム用スクロール圧縮機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するために、本発明のヘリウム用スクロール圧縮機は、作動ガスとしてのヘリウムガスを圧縮して吐出するスクロール圧縮機部と、該スクロール圧縮機部を駆動する電動機部とを密閉容器に収納し、前記スクロール圧縮機部は、鏡板に渦巻状のラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回可能に前記電動機部の回転軸の偏心機構に係合され、前記固定スクロールのラップに噛み合って圧縮室を形成する渦巻状のラップが鏡板に立設された旋回スクロールとを備え、前記固定スクロールは、鏡板の外周部に形成され前記圧縮室にヘリウムガスを吸引する吸入口と、鏡板の中央部に形成され前記圧縮室で圧縮されたヘリウムガスを吐出する吐出口とを有し、前記旋回スクロールは、鏡板背面側に配設されたフレームとの間に背圧室を形成し、前記圧縮室から圧縮途中のヘリウムガスの一部を前記背圧室に導く細穴からなる複数の第 1 の中間圧穴が鏡板に形成されてなり、前記背圧室の中間圧力と前記密閉容器の圧力との差圧で前記密閉容器内の底部に溜まった油を吸い上げて前記回転軸側に供給するものとし、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールは、下式に示すスクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.3になるスクロール歯形形状を有すると共に、前記旋回スクロールの鏡板には、前記圧縮室に開口させて鏡板内に形成された細穴と該細穴に連絡させて鏡板内に形成され該鏡板の外周部に開口された放射状横穴とからなる第2の中間圧穴が形成され、前記第1と第2の中間圧穴の細穴の前記圧縮室側の開口位置のスクロールラップ巻き角度を平均した値λbmが下式で定められる条件を満たすことを特徴とする。
Figure 0003876335
【0007】
図17は、Vrを変化させた場合の全断熱効率の圧力比に対する変化を示したもので、スクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.3のとき、全断熱効率は、従来機(例えばVr=2.7)に対して、圧力比で10数%から20数%向上している。特に、ヘリウムガスを使用したスクロール圧縮機は極端に低い圧力比での運転頻度が多いが、上記構成によれば、この極端に低い圧力比で全断熱効率が向上しており、高性能のスクロール圧縮機を得ることができる。また、各中間圧穴の位置を所定条件に従って決めることにより、中間圧力比を所期値(例えば1.5)に合わせることができるから、回転軸側の例えば主軸受に所要量の油を供給するための差圧を確保しつつ、スクロールラップ部の軸方向押し付け力を低減して摺動損失を軽減できる。
【0008】
スクロールラップ部は鋳物素材で形成するとともに、スクロールラップ巻始め部及びスクロールラップ巻終わり部の少なくとも一方に段差を設けることができる。
【0009】
また、設定容積比Vrは2.1とすると良い。設定容積比Vrを2.1とする理由は、図17から分かるように、低圧力比域での性能向上効果がある一方、高圧力比域(Pd/Ps=5前後)での性能低下が比較的小さいためである。
【0010】
また、スクロールラップ部先端の肉厚をスクロールラップ部の平均的な厚さより厚くすると、スクロールラップの強度を向上させることができる。
【0011】
また、固定スクロールを旋回スクロールの背面側に設けられたフレームに固定して、フレームと旋回スクロールの鏡板背面とで背圧室を形成する一方、ヘリウムガスを冷却するための油を、固定スクロールと旋回スクロールで形成される圧縮室に注入する油注入ポートを固定スクロールの鏡板に設けるとともに、圧縮室で圧縮途中のヘリウムガスの一部を背圧室に導く細穴を旋回スクロールの鏡板に形成し、かつ背圧室の圧力Pbと吸入圧力Psとの比Pb/Psを約1.5に設定する。
【0012】
また、本発明では、下限運転圧力比(Pd/Ps)minと設定中間圧力比(Pb/Ps)mとは、(Pd/Ps)min ≒ (Pb/Ps)m + 0.2の関係を満たしている。
【0013】
さらに、本発明は、ヘリウム冷凍装置に用いられ、圧縮機の運転圧力範囲として、吐出圧力と吸入圧力との比が約1.5〜5前後の運転圧力比条件の範囲であって、吸入圧力の上限値において運転圧力比の下限値に設定した運転範囲としたことを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、本発明は、運転圧力比1.5〜2前後の低い圧力比範囲だけを対象にして高性能化を目指すため、スクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.0のスクロール歯形形状を有する互に噛み合わされた固定スクロール及び旋回スクロールを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に係るスクロール圧縮機の旋回スクロールの先端部形状を示している。ここで図2及び図3は、スクロール圧縮機の量産性、生産性を向上させるため、設定容積比Vrが例えば約2.7の空調用スクロールラップ部をヘリウム用スクロールラップ部に流用した例である。空調用スクロールラップ部は一般に鋳物素材で形成されており、この例では、スクロールラップ巻始め部の一部を残した段差形状のスクロールラップ部を鋳物素材で形成し、ヘリウム用として適正なスクロールラップ形状としている。
【0016】
上述したように、スクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.3であれば、スクロール圧縮機は、極端に低い圧力比域でも効率低下することなく、かつ安定した運転が可能となる。図1〜図3に示した旋回スクロールは、スクロールラップ部の設定容積比Vrが2.1のスクロール歯形形状を有している。また、この旋回スクロールと噛み合う固定スクロールも、スクロールラップ部の設定容積比Vrが2.1のスクロール歯形形状を有している。
【0017】
Vrは下式で表される。
【数4】
Figure 0003876335
ここで、λl:ラップ巻き終り角度(インボリュート伸開角)
λs:ラップ巻き始め角度(インボリュート伸開角)
π:円周率
α:旋回半径εthとスクロールラップの基礎円半径aの比(=εth/a)
【0018】
図1において、65はインボリュート曲線で、a点が始点(λs=2.53rad)である。d点とc点を結ぶ曲線67は内側円弧曲線(中心は点O2で半径r3)で、先端部のc点はなめらかな円弧曲線66(中心は点O1で半径r1)によってa点に結ばれている。円弧曲線66で囲まれた部分はラップの中央先端部6pである。d点より外側の曲線68もインボリュート曲線である。図中、破線部は、空調用スクロールラップ部の設定容積比Vrが例えば約2.7のスクロール歯形形状を示している。このスクロール歯形形状は、その先端部のb点とc点がめらかな円弧曲線69(半径r2)によって結ばれている。また、内側円弧曲線67の半径r3は、歯溝寸法(図4のDt寸法)の半分の値である。なお、Dtは次式で与えられる。
Dt = 2×εth +t ………………(3)
【0019】
例えば、Dt=17.5mmとなり、r3=8.75mmとなる。一方、r1=2.43mmとラップ先端部の円弧直径は4.86mmとなり、その値はラップ厚さ(たとえば、t=4.5mm)より大きい値に設定できる効果がある。このように、ラップ先端部の肉厚はラップ6bの平均的な厚さtより大きく設定されている(図8に示す固定スクロール5のラップ5bの場合も同じ)。このため、巻始め部の位置を図1のb点からa点へと移すことによって、ラップ先端部の厚さが大きくなり(r2の2倍→r1の2倍に)、ガス圧荷重による応力集中が緩和されて、ラップ強度を向上させることができる。
【0020】
また、図2及び図3において、6kはスクロールラップ巻始め側の空調用ラップ先端部であった部位を、ラップ根元部のみ残して上部がカットされた段差部である。この段差部6kの高さL1は例えば1mm位である。段差部6kを除いて中央先端部6pは図1の場合と同じ構成である。
【0021】
このような構成においても、中央先端部6pの加工精度が緩和化されることにより、加工性(生産性)の向上、及び中央先端部6pのラップ強度の向上を図ることができる。
【0022】
図4は旋回スクロールの平面図、図5はその縦断面図である。図4及び図5の旋回スクロールは、その先端部が図1又は図2〜図3に示したスクロール歯形形状に形成されている。図4に示すように、旋回スクロール6は円板状の鏡板6aを有し、鏡板6a上に渦巻き状のラップ6bが形成されている。f点及びg点がラップ巻き終り部の点である。角度にして、例えば、インボリュート伸開角λl=19.3radとなる。なお、Vr=2.1仕様のラップ巻き始め角度はλs=2.53radであり、一方、Vr=2.7の場合は図1において、b点の位置のλs=1radとなる。Vr=2.7の場合のラップ中央部先端の外側曲線と内側曲線をなめらかに結んだ円弧曲線69の半径はr2=0.3mm〜0.5mm位となる。
【0023】
また、旋回スクロール6の鏡板6aには細穴6e,6fが設けられている。これらの細穴6e,6fは、圧縮途中のガスの一部を圧縮室から、旋回スクロール背面の背圧室に導くためのものである。すなわち、圧縮機全体構造として図12に示すように、固定スクロール5はフレーム11に固定され、さらに固定スクロール5には旋回スクロール6が噛み合わされている。そして、圧縮途中のガスの一部が、固定スクロール5と旋回スクロール6で形成された圧縮室8から細穴6e,6fを介して、旋回スクロール6の鏡板6aとフレーム11で形成された背圧室77に導入される。図中、6cは鏡板6aの反ラップ面側に設けられたボス部で、このボス部6cには旋回軸受32(図12参照)が嵌合される。
【0024】
このような細穴6e,6fを設けておけば、背圧室77の圧力が低くなるので、スクロールラップ部の軸方向押付け力が低減されて、摺動損失が軽減でき、低い圧力比条件における圧縮機の性能を向上させることができる。
【0025】
なお、図4において、スクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.3となるよう、ラップ6bのスクロール歯形形状を設定しておけば、細穴6e,6fが無くても本発明の目的は達成できる。
【0026】
図6は、旋回スクロール6の鏡板6aに、細穴6e,6fに加えて、放射状横穴6yと、これにつながる細穴6nを設けた例である。図7は、その放射状横穴6yと細穴6nが設けられた部分の詳細構造を示している。
【0027】
このような放射状横穴6y及び細穴6nを設けておけば、鏡板6aの外周部に溜まった油を放射状横穴6y及び細穴6nを介して積極的に圧縮室8側に排除することができ、鏡板6aの外周部での油攪拌損失を低減することができる。図中、破線の矢印は油の流れを示している。
【0028】
また、本実施の形態は、細穴6e,6f,6nの3個により、背圧室77の圧力(Pb)を圧力比にしてPb/Ps=約1.5前後に設定しており、前述と同様の効果を達成できる。例えば、下限の運転圧力比1.7を確保するため、背圧室77の圧力を圧力比にして約1.5前後に設定するのは、旋回軸受32及び主軸受26(図12参照)への給油量を確保するための差圧(=Pd−Pb)をある一定値以上にするためである。すなわち、次の関係をほぼ満たす圧縮機構造としている。
(Pd/Ps)min≒(Pb/Ps)m+0.2 ………………(4)
ここで(Pd/Ps)min:下限運転圧力比
(Pb/Ps)m :設定中間圧力比
【0029】
設定中間圧力比は、細穴6e,6f及び6nの位置(インボリュート角度)の関数として与えられる。上記3つの具体的な穴位置は、スクロールラップ角度(インボリュート伸開角)にして、λb1=10.8rad(細穴6e,6fの位置)、λb2=11.5rad(細穴6nの位置)となり、これら3つの平均がラップ角度λbm=11.03radとなる。この値が、前記巻終わり角度λl=19.3radとの関係から、ヘリウム用途では、(Pb/Ps)m =1.5を設定することとなる。上記(4)式中の0.2の値は、実用的には、0.15〜0.25の範囲まで適用可能である。従来機の設定中間圧力比は、(Pb/Ps)m=2.2から2.5前後であった。すなわち、λbm/λl=0.55〜0.60の関係となるように、中間圧穴手段の平均のラップ角度λbmを設定する。従来機の場合は、λbm/λl=0.45前後となり、穴位置が吐出圧力側に近くなるため、設定中間圧力比が高くなる。このため、従来機では中間圧(背圧室の)圧力が高くなり、旋回スクロール6から固定スクロール5への軸方向押し付け力が顕著に増大する。上記のVr2.1のスクロールラップ構造とすることにより、圧縮室内部ガス圧力の増大(過圧縮圧力の増大)が解消され、旋回スクロール6の軸方向変位量が小さくなり、安定した旋回運動となる。その結果、ラップ同士の接触によるかじり現象を防止でき、ヘリウム圧縮機の信頼性が向上する。
【0030】
なお、図6において、スクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.3となるよう、ラップ6bのスクロール歯形形状を設定しておけば、細穴6e,6fが無くても本発明の目的は達成できる。
【0031】
図8は固定スクロール5の平面図、図9はその縦断面図である。固定スクロール5は、旋回スクロール6の場合と同様、その先端部が図1〜図3に示したようなスクロール歯形形状に形成されている。固定スクロール5は円板状の鏡板5aを有し、鏡板5a上に渦巻き状のラップ5bが形成されている。また、鏡板5aには油インジェクション用ポート22が設けられている。この油インジェクション用ポート22は、1個にて両方の圧縮室8へ冷却油を注入できるもので、ラップ溝中心位置に設けられている。その穴径d0は、ラップ厚さtより大きい値に設定され、油インジェクション時の油撃現象を防止している。また、鏡板5aのほぼ中央部には吐出口10が、外周部には吸入口15a,15bがそれぞれ設けられている。
【0032】
図6〜図9に示したスクロールラップ形状は、圧縮機の行程容積(最大密閉空間の大きさ)として、Vth=160cm3の例である。また、ラップ高さのみを変えて、Vth=180cm3に設定できる。なお、これらの大形のスクロール歯形形状の固定スクロール5及び旋回スクロール6を備え、冷却用油インジェクション機構手段、及び該油インジェクション機構手段に油を供給するための油出口配管部を容器底部に備えた圧縮機構造については、図12にて説明する。
【0033】
図10及び図11は、本発明の作用効果を示した説明図である。図10において、本発明の運転範囲はA−B−C−D−E−F−Aの内側領域となる。従来機の運転範囲はG−H−I−D−E−F−Gの内側領域と狭い圧力範囲である。本発明では、運転範囲A−B−J−K−E−F−Aの内側領域と設定してもよい。ラインC−Dは、圧力比7位の条件であり、一方、ラインJ−Kは、圧力比5位の条件となる。図10では吐出圧力Pdに上限値を設定している。吐出圧力Pdの上限値は、主にモータ出力の制限による。モータの出力の最大値として定格出力の190%前後の値を限界値としている。この限界値から吐出圧力に上限値(例えば、Pd=2.5〜2.8MPaG)を設定している。
【0034】
図11に示すように、ヘリウム成績係数は、本発明の構成とすることにより、吸入圧力Psが高いほどまた、運転圧力比が低いほど向上する特質を備える。すなわち、低圧力比条件でかつ高吸入圧力条件の運転を実現できるヘリウム冷凍装置用のスクロール圧縮機の運転範囲及び運転方法としている。図11により、本発明では、上記運転範囲とすることにより、ヘリウム成績係数が従来機に対して約200%近くと大幅に向上していることを示す。これは、Vr2.1による内部圧縮動力の低減効果の他に、従来機の設定中間圧力比に対して本発明では低い(Pb/Ps)m 値を設定しているので、旋回スクロール6側から固定スクロール5側への相対的なスラスト方向の押しつけ力が軽減され、機械損失の低下効果と相まって、さらに、性能向上を図ることができる作用効果が得られるためである。その効率改善効果は、図17に示すように、低圧力比運転時での全断熱効率ηadoの改善効果は、Vr=2.1用のヘリウム用スクロール圧縮機の場合、Vr=2.7に比べて、ηadoの差(Δηado)が数%から10%改善できることが実験的に確認できているためである。なお、ヘリウム成績係数とは、次式で定義した値である。
E=QN/Wi ………………………(5)
ここで、 E:ヘリウム成績係数(Nm3/h/kW)
QN:0℃、1気圧に換算したヘリウムガス流量(Nm3/h)
Wi:モータ入力(kW)
【0035】
次に、本発明に係るスクリュー圧縮機の全体構成について説明する。
図12は、横形構造における注油式密閉形スクロール圧縮機の縦断面図である。図12に示すように、作動ガスがヘリウムガスであり、該作動ヘリウムガスを冷却するための油インジェクション管31が密閉容器1のSキャップ1aを貫通して設けられている。そして、油インジェクション管31は、固定スクロール5の鏡板部5aに設けられた油インジェクション用ポート22に接続され、この油インジェクション用ポート22の開口部は旋回スクロール6のラップ6bの歯先面に対向して開口している。密閉容器1内の吸入配管17a側にはスクロール圧縮機部250が、反対側には電動機部3が収納されている。そして密閉容器1内は、吐出室2aと、フレーム11を挟んで電動機室2dとに区画されている。スクロール圧縮機部250は、固定スクロール5と旋回スクロール6が互いに噛み合って圧縮室(密閉空間)8を形成している。
【0036】
フレーム11の中央部には円筒コロ軸受からなる主軸受26が設けられ、この主軸受26に回転軸82が支承されている。回転軸82の先端には偏心軸82aが設けられ、この偏心軸82aは旋回スクロール6のボス部6cに嵌合されている。また、フレーム11には固定スクロール5が複数本のボルトによって固定され、旋回スクロール6は、オルダムリングおよびオルダムキーよりなるオルダム機構14によってフレーム11に支承されている。そして、回転軸82が回転すると、旋回スクロール6は、固定スクロール5に対して自転することなく旋回運動を行う。
【0037】
回転軸82には圧縮機部250の反対側に電動機軸82bが一体的に設けられ、回転軸82と電動機部3とが直結されている。固定スクロール5の吸入口15(15a,15b)には密閉容器1を貫通して吸入管17(17a,17b)が接続され、吐出口10が開口している吐出室2aは通路18a,18bを介して電動機室2dと連通している。この電動機室2dは密閉容器中央部のケ−シング部1bを貫通する吐出管19に連通している。また電動機室2dは、電動機ステータ3aとフレーム11の側壁との間の隙間20、及び電動機ステータ3aと電動機ロータ3bとの隙間(図示省略)を介して連通している。なお、吸入管17aと固定スクロール5との間には高圧部と低圧部とをシールするOリング21aが設けられている。また吸入管17内には、逆止弁222が設けられ、この逆止弁222は圧縮機停止時の回転軸82の逆転を防止するためと、密閉容器1内の潤滑油が低圧側に流出するのを防止するためのものである。
【0038】
また、旋回スクロール6の鏡板6aの背面には、スクロール圧縮機部250とフレーム11で囲まれた背圧室77が形成され、この背圧室77には、上述したように鏡板6aに穿設した細穴6e,6fを介して、吸入圧力と吐出圧力の中間の圧力Pbが導入され、旋回スクロール6を固定スクロール5に押付ける軸方向の力を付与している。密閉容器1の底部には潤滑油24が溜められており、この潤滑油24は密閉容器1内の高圧圧力と背圧室77の中間圧力Pbとの差圧により、油吸上管96dへ吸上げられる。油吸上管96dへ吸上げられた潤滑油24は、電動機軸82b内及び回転軸82内を流れ、旋回軸受32、主軸受26及び補助軸受27へ給油される。主軸受26及び旋回軸受32へ給油された油は、背圧室77を経て細穴6e,6f(図6参照)を介して圧縮室8へ注入されて圧縮ガスと混合された後、吐出ガスと共に吐出室2aへ吐出される。
【0039】
上記構成によれば、主軸受26への給油差圧が確保されるため、主軸受26の冷却作用が促進され、ヘリウム圧縮機の性能向上に伴う軸受荷重の低減効果との相乗作用によって、主軸受26の寿命を大幅に延長させることができる。また、主軸受26への給油が確実となり、圧縮機の信頼性が更に大幅に向上させることができる。
【0040】
密閉容器1の底部には、この底部の潤滑油24を器外へ取出す油取り出し管30が設けられている。また密閉容器1のSキャップ部1aには、スクロール圧縮機部250の圧縮途中の圧縮室8へ油を注入する油インジェクション管31が設けられている。
【0041】
上記構成のスクロール圧縮機において、電動機ロータ3bが回転して回転軸82bが回転すると、偏心軸82aが偏心回転し、旋回スクロール6は回転することなく旋回運動を行う。この旋回運動により、圧縮室8は次第に中心に移動して容積が減少する。作動ガスは吸入管17から吸入口15(15a,15b:図8参照)を経て吸入室5fへ入るとともに、軸受(旋回軸受32や主軸受26など)を潤滑した油が旋回スクロール鏡板6a外周部のフレーム室11fから、旋回スクロール鏡板6a外周部と固定スクロール鏡板5a面との微少隙間から吸入室5fへ流入して前記作動ガスに混入する。前記軸受を潤滑した油と、油インジェクション用ポート22から注入された油とを含んだ作動ガスは、圧縮室8で圧縮されて吐出口10から吐出室2aへ吐出され、一部の油は、吐出室2aでガス中から分離され、ガスは通路18a,18bを通って電動機室2dへ流入する。図中、実線の矢印は作動ガスの流れを、破線の矢印は油の流れをそれぞれ示している。
【0042】
狭い通路18a,18bから広い空間の電動機室2dに流入した作動ガスと油は、その流速が急激に低下し、かつ流れ方向が変更されるため、ガス中に含まれる油の大部分が分離され、作動ガスは吐出管19内へ流出し、油は下方に落ちて密閉容器1底部に留まる。
【0043】
図13図は図12のX−X矢視図である。吐出室2aでガス中から分離されて下方に溜まった油は、油通路11g,11kを通って電動機室2d側に送り込まれる。
【0044】
図14は、本発明に係る注油式密閉形スクロール圧縮機をヘリウム冷凍装置に用いた例を示している。図12に示したように、密閉容器1の底部に溜められた潤滑油24は、密閉容器1内の圧力(吐出圧力Pd)と圧縮室8の圧力(吐出圧力以下の圧力)との差圧によって油取り出し管30の流入部30aから該油取り出し管30内に流入していく。油取り出し管30内へ流入した油は図14の外部油配管51を通って油ストレーナ56及び油冷却器33へ至り、ここで適宜冷却された後、油インジェクション管53,31および油インジェクション用ポート22(図12参照)を経て圧縮室8へ注入される。253は、油流量調節弁である。
【0045】
このようにして圧縮室8へ注入された油は、圧縮室8内において作動ガスの冷却およびスクロールラップ先端部等の摺動部を潤滑する役目を果す。そして、この油は作動ガスと共に圧縮された後、吐出口10より吐出室2aへ吐出され、前述と同様に電動機室2dで作動ガスから分離して密閉容器1の底部に溜まる。なお、各軸受32,26,27への給油は、密閉容器1内の圧力と背圧室77内の圧力(中間圧力)Pbとの差圧により、油吸上管96d、回転軸82内の油通路を介して行われる。
【0046】
図14において、圧縮機100から吐出されたヘリウムガスは油分離器70で油を分離した後、ガス冷却器50で冷却される。次にヘリウムガスはヘリウム冷凍機80で断熱膨張された後、再び配管340,300から吸入ガスとして圧縮機100に戻る。一方、圧縮機100底部の油は油出口配管51から出て、油冷却器33で冷却される。次に油は油流量調節弁253で減圧された後、油インジェクション管31を介して、圧縮途中の圧縮室8に注入され、ヘリウムガスを冷却する。
【0047】
図15は、図14をY方向から見た矢視図である。また図16は、図14をZ方向から見た矢視図である。図中、101は圧縮機の脚部、45は運転中の油面を管理するために設けた油面計である。また、57は電源端子部である。
【0048】
次に、図17は設定容積比Vrを変化させた場合の全断熱効率の圧力比に対する変化を示した図である。図17において、例えば、圧力比1.6で高性能を実現するため、Vr=1.9の低圧力比対応専用設計とした場合には、圧力比1.5〜5.0または圧力比1.5〜5.5の広い範囲で、性能変化が小さく高性能を維持していることがわかる。このため、スクロールラップ形状として、ラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.0のスクロール歯形形状を有する構造でも良い。これは、低い設定容積比のスクロールラップ形状としても、ヘリウム用スクロール圧縮機としての効率特性が、高圧力比条件においても高性能を維持できるという実験結果から得られたことによる。低圧力比専用のラップ形状となるVr=1.9の場合、圧力比として、例えば、Pd/Ps=7〜8以上となると、設計圧力比(Pd/Ps)des=Vr1 . 66=2.9に対して大きく外れた圧力比となるため、トルク変動が大きくなり、圧縮機自体の振動が増加するという弊害が生じる。このため、運転圧力比に上限値を設けている。
【0049】
図18及び図19は、本発明の他の実施形態を示しており、図18は旋回スクロール86の平面図、図19はその縦断面図である。図18、図19ともに、設定容積比Vrが約2.7前後の空調用スクロールラップ部をヘリウム用スクロールラップ部に流用したもので、スクロールラップ部は鋳物素材で形成されている。そして本実施の形態では、スクロールラップ巻終わり部は一部を残して上部がカットされ、段差部93が設けられている。これによって、スクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8 〜2.3に設定され、ヘリウム用途に適正なスクロールラップ形状としている。
【0050】
スクロールラップ巻始め部の先端部5pにおいては、b点はインボリュート曲線の始点で、このb点の位置のλsは、例えば1.45radとなる。そして、仮想点となるf点及びg点のラップ巻き終り部の点はj点、k点に移行して、角度にして、インボリュート伸開角λlは、例えば16.3radとなる。ラップ巻き終り部の先端部の外側曲線と内側曲線をなめらかな円弧曲線97で結ばれている。また、ラップ巻終わり部の段差部93は、図19に示すように、歯底面からL2だけ高く形成されている。なお、図中、86aは旋回スクロールの鏡板、86bはラップである。
【0051】
本実施の形態においては、スクロール圧縮部のスラストガス圧荷重(スラスト負荷力)が図4の場合に比べて、大きく低減できるという効果がある。
【0052】
なお、上記のような段差部は、スクロールラップ巻始め側とスクロールラップ巻終わり側の双方に設けることもできる。
【0053】
上記各実施の形態によれば、以下の作用効果が期待できる。
(1)下限の運転圧力比を従来の運転範囲より拡大でき、高吸入圧力、低圧力比条件で運転可能となり、大幅な省エネルギーを達成することができる。また、性能向上に伴うモータ入力Wiの低減による軸受荷重の低減により、軸受の寿命も大きく改善できる。
(2)スクロール圧縮機の信頼性が大幅に向上するとともに、運転圧力比範囲が従来機に対して拡大でき、スクロール圧縮機の使い勝手がよくなる。
(3)圧縮機を小型軽量化できる。また、差圧給油構造をとる軸受部には、低圧圧力比条件においても給油が確実となり、その分、軸受部の焼付き事故を防止できる。
【0054】
なお、以上の説明では横形のヘリウム用スクロール圧縮機を例にしてきたが、本発明は、主にスクロールラップ形状に係る内容であり、縦形のヘリウム用スクロール圧縮機に対しても適用が可能であり、本発明の対象範囲内にある。
【0055】
以上説明したように、本発明によれば、極端に低い圧力比域でも、効率低下することなく安定した運転が可能なヘリウム用スクロール圧縮機を実現できる。
【0056】
また、使用運転圧力範囲の拡大、さらに高吸入圧力条件の運転確保により、ヘリウムガス循環量が増加し、ヘリウム用スクロール圧縮機としての容量増加などの要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクロール圧縮機の旋回スクロールのラップ先端部を示した図である。
【図2】旋回スクロールのラップ先端部の変形例を示した図である。
【図3】図3に示したラップ先端部の斜視図である。
【図4】細穴が設けられた旋回スクロールの平面図である。
【図5】図4に示した旋回スクロールの縦断面図である。
【図6】細穴に加えて、放射状横穴が設けられた旋回スクロールの平面図である。
【図7】図6に示した旋回スクロールの部分縦断面図である。
【図8】固定スクロールの平面図である。
【図9】固定スクロールの縦断面図である。
【図10】吸入圧力と吐出圧力との関係によって本発明の作用効果を説明した図である。
【図11】圧力比とヘリウム成績係数との関係によって本発明の作用効果を説明した図である。
【図12】注油式密閉形スクロール圧縮機の縦断面図である。
【図13】図12のX−X線に沿った断面図である。
【図14】図12の注油式密閉形スクロール圧縮機を設置したヘリウム冷凍装置の概略構成図である。
【図15】図14をY方向から見た矢視図である。
【図16】図14をZ方向から見た矢視図である。
【図17】設定容積比Vrを変化させた場合の、圧力比と全断熱効率との関係を示した図である。
【図18】他の実施の形態による旋回スクロールの平面図である。
【図19】図18に示した旋回スクロールの縦断面図である。
【符号の説明】
1 密閉容器
2a 吐出室
2d 電動機室
3 電動機部
3a 電動機ステータ
3b 電動機ロータ
5 固定スクロール
5a 固定スクロールの鏡板
5b ラップ
5f 吸入室
6 旋回スクロール
6a 旋回スクロールの鏡板
6b ラップ
6c ボス部
6e,6f,6n 細穴
6p 旋回スクロールの中央先端部
6y 放射状横穴
8 圧縮室
9 バランスウエイト
10 吐出口
11 フレーム
11g フレームの油通路
14 オルダム機構
15 吸入口
17 吸入管
18a,18b 通路
19 吐出管
20 隙間
22 油インジェクション用ポート
24 潤滑油
26 主軸受
27 補助軸受
30 油取り出し管
31 油インジェクション管
32 旋回軸受
33 油冷却器
50 ガス冷却器
51 油配管
56 油ストレーナ
65,68 インボリュート曲線
66,67 円弧曲線
70 油分離器
80 冷凍機
82 回転軸
82a 偏心軸
82b 電動機軸
96d 油吸上管
222 逆止弁
250 スクロール圧縮機部
310 油戻り管
300,340 吸入配管

Claims (2)

  1. 作動ガスとしてのヘリウムガスを圧縮して吐出するスクロール圧縮機部と、該スクロール圧縮機部を駆動する電動機部とを密閉容器に収納し、
    前記スクロール圧縮機部は、鏡板に渦巻状のラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回可能に前記電動機部の回転軸の偏心機構に係合され、前記固定スクロールのラップに噛み合って圧縮室を形成する渦巻状のラップが鏡板に立設された旋回スクロールとを備え、
    前記固定スクロールは、鏡板の外周部に形成され前記圧縮室にヘリウムガスを吸引する吸入口と、鏡板の中央部に形成され前記圧縮室で圧縮されたヘリウムガスを吐出する吐出口とを有し、
    前記旋回スクロールは、鏡板背面側に配設されたフレームとの間に背圧室を形成し、前記圧縮室から圧縮途中のヘリウムガスの一部を前記背圧室に導く細穴からなる複数の第 1 の中間圧穴が鏡板に形成されたものとし、
    前記背圧室の中間圧力と前記密閉容器の圧力との差圧で前記密閉容器内の底部に溜まった油を吸い上げて前記回転軸側に供給するヘリウム用スクロール圧縮機において、
    前記固定スクロール及び前記旋回スクロールは、下式に示すスクロールラップ部の設定容積比Vrが1.8〜2.3になるスクロール歯形形状を有すると共に、
    前記旋回スクロールの鏡板には、前記圧縮室に開口させて鏡板内に形成された細穴と該細穴に連絡させて鏡板内に形成され該鏡板の外周部に開口された放射状横穴とからなる第2の中間圧穴が形成され、前記第1と第2の中間圧穴の細穴の前記圧縮室側の開口位置のスクロールラップ巻き角度を平均した値λbmが下式で定められる条件を満たすことを特徴とするヘリウム用スクロール圧縮機。
    Figure 0003876335
  2. 請求項1に記載のヘリウム用スクロール圧縮機において、運転圧力比が1.5〜5の範囲であることを特徴とするヘリウム用スクロール圧縮機。
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