JP3879268B2 - 成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電、建材、及び自動車等に好適な成形性とスポット溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家電、建材、及び自動車の産業分野においては亜鉛系めっき鋼板が大量に使用されている。とくに自動車用途には、防錆機能、塗装後の耐食性などの性能が優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が広く用いられている。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板を500〜600℃に加熱してZnめっき層をFe−Zn合金めっき層にしたもので、そのFe含有量は一般的に8〜12重量%の範囲にある。
【0003】
亜鉛系めっき鋼板は、プレス成形された後、溶接組み立てられ、塗装されて使用される。亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性(以下、単に「成形性」とも記す)は、めっき層を有さない鋼板に比較して劣るとされている。それは表面のめっき層が成形時の鋼板の変形を妨げるのが原因とされている。また、プレス加工時に、パウダリング(めっき層が粉末状に剥離する不良現象)やフレーキング(めっき層が薄片状になって剥離する不良現象)が発生するとめっき表面での摺動性が悪くなり鋼板のダイス孔への流入抵抗が増すことも成形性を損なう原因となる。
【0004】
成形品の組み立てはスポット溶接方法による場合が多い。スポット溶接では、生産性をよくするために、連続して多数回のスポット溶接が可能なこと(連続打点性がよいこと)が重要とされている。亜鉛系めっき鋼板をスポット溶接する際には、溶融しためっき層が銅製の電極と反応して金属間化合物を形成し、電極が損耗して寿命が短くなり溶接工程での生産性が損なわれるという問題がある。合金化溶融亜鉛めっき鋼板はめっき層をFe−Zn合金化しているのでスポット溶接性は向上しているものの、その改善程度は十分ではなく、溶接性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が望まれている。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、特開平2−190483号公報には、亜鉛めっき鋼板の表面に酸化物皮膜、特にZnOを主体とする酸化膜を形成させてプレス成形性を改善した亜鉛めっき鋼板が示されている。しかしながらここに開示されている方法では表面酸化物が軟質であるため成形性の改善効果が不十分であるうえ、スポット溶接性が必ずしも良好でなく、その溶接性を向上させる方法についても何ら開示されていない。
【0006】
特開平4−202787号公報には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層表面に複数のFe系合金電気めっきを設け、2層目の電気めっき層に陽極処理を施してその表面を凹凸にすることにより、成形時に生じ易いめっき層の亀裂発生を防止し、電着塗装性と成形性を向上させる技術が開示されている。しかしながらここに開示されている技術では、溶融めっき層の上に多層の電気めっき層を設ける必要があるため、製造コストが高くなり経済性が損なわれるという問題がある。
【0007】
特開平8−158066号公報には、プレス成形性、溶接性、接着性および化成処理性に優れた亜鉛系めっき鋼板が開示されている。これは、めっき層表面に、Fe−Ni−O系皮膜を形成したものである。しかしながらこの鋼板においては、めっき面に均一な皮膜を形成していないため、3元素の構成比が変化した部分では性能が異なっており、局所的にプレス性あるいは溶接性が劣化する部分が存在するという問題がある。
【0008】
以上述べたように、プレス成形性とスポット溶接性が共に改善された亜鉛系めっき鋼板およびその経済性に優れた製造方法は未だ確立されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、成形性とスポット溶接性が優れた亜鉛系めっき鋼板低コストな製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した問題点を解決すべく種々研究を重ねた結果、亜鉛系めっき鋼板の成形性および溶接性に関し、以下に述べるような新たな知見を得た。
【0011】
▲1▼ めっき層表面にZn系酸化物を主体とする酸化皮膜を形成させるとプレス成形性が改善されるがこれだけではその改善効果が不十分である。しかしながら、Zn系酸化物に加えて適量のAl系酸化物を共存させ、そのAl系酸化物の量を、酸化皮膜のZn含有量(重量%)とAl含有量(重量%)の和に対するAl含有量(重量%)の比率:Al/(Al+Zn)が特定の範囲内になるようにした場合に優れたプレス成形性が得られる(以下、上記の比率を単に「Al比率」と記す)。
【0012】
成形性には、プレス成形時に金型と接触するめっき表面の硬さと、その保油性が影響する。Zn系酸化物は、多孔性の構造を有していることから、保油性に富むと考えられる。しかしながらZn系酸化物は金型との摺動時に変形して摺動界面にめっき層金属が露出しやすい。このためフレーキングが発生して成形性が損なわれる場合があり、成形性改善効果としては十分ではない。
【0013】
Zn系酸化物中に適量のAl系酸化物を混在させると、酸化皮膜が硬化して金型との摺動時に酸化皮膜が損傷されにくくなり、フレーキングなどの発生が抑制され、成形性が飛躍的に改善されるものと推測される。
【0014】
▲2▼ スポット溶接時の電極の連続打点性が劣化する原因は、電極の銅がめっき層のZnと反応して金属間化合物を形成し、その融点が低下して高温時の変形抵抗が低下して電極の損耗が著しくなることによるとされている。この現象に関して本発明者らは、電極の損耗はめっき層に含有されるAlの量と関係があり、めっき層に含有されるAlの総量が増すにつれて連続打点性が損なわれることを知見した。つまり、連続打点性の向上には、めっき付着量との関係においてめっき層のAl含有量を制限するのが有効であることを知見した。
【0015】
亜鉛系溶融めっきでは、目付量を制御するためにめっき浴中に、通常0.08〜0.20重量%程度のAlが添加される。母材がめっき浴に浸漬されると、母材表面にFe−Al合金相が形成される。また、めっき層にはめっき浴中のAl濃度に対応した量のAlが含有される。
【0016】
めっき層のAl含有量の絶対値は、母材がめっき浴に浸漬された直後に形成される上述のFe−Al合金相に含有されているAlと、めっき層に含有されるAl量とにより決定される。前者のAl含有量はめっき浴中のAl濃度の影響を受ける。後者のめっき層に含有されるAl濃度は、めっき浴のAl濃度とほぼ同一の濃度であるので、その絶対量はめっき浴のAl濃度とめっき層の厚さにより決定される。
【0017】
本発明者らは、連続打点性に対するめっき層のAl含有量と目付量との関係を検討した結果、連続打点性を損なわないためには、下記の経験式(1)により計算されるAl含有量を上限とするのがよいことを知った。
【0018】
Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
【0019】
式(1)は、めっき目付量が大きい場合には、めっき層のAl含有量を低く制限するのが溶接性の改善に有効であり、めっき目付量が少ない場合にはめっき層のAl含有量が高くても溶接性が良好に確保できることを意味している。
【0020】
めっき層のAl含有量がめっき付着量との関係で連続打点性に影響する理由の詳細は不明であるが、Alが含有されることによってめっき層と電極との反応が促進され、電極の損耗を加速するのではないかと推定される。
【0021】
▲3▼ 通常、めっき層を酸化させて得られる酸化皮膜の化学組成は、めっき層のそれにほぼ比例したものが得られる。このため、このような方法で得られる酸化皮膜のAl含有量は0.2〜0.6重量%となることが多い。前述したように、成形性を向上させるために、酸化皮膜のAl比率を高めるために、めっき層のAl含有量を高くすると、プレス成形性は改善されるが溶接性は改善されない。従って、このような方法では成形性と溶接性を両立させるのは困難である。
【0022】
めっき層のAl含有量を溶接性が良好な領域に限定し、且つ、その表面に、成形性が良好となる酸化皮膜を付着させるには、めっき層に含有される量以上のAlを何らかの方法で含有させる必要がある。
【0023】
本発明者らは、亜鉛系めっき層表面に酸性の水溶液を付着させ(以下、単に「酸液」、「酸液処理」とも記す)、その後、Zn源とAl源を溶解させたアルカリ性の水溶液を反応させる処理(以下、単に「アルカリ液」、「 アルカリ液処理」 とも記す)を施すことで、目標とする化学組成を有する酸化皮膜が効率よく得ら れることを知見した。
【0024】
Al酸化物やZn酸化物は、酸液やアルカリ液に容易に溶解する。しかしながら中性の水溶液中では、これらの溶解度が減少するために酸化物は析出する。析出する酸化物の構成比率は、溶液中での構成比率によりほぼ決定される。
【0025】
酸液を付着させた亜鉛系めっき層と、Zn源およびAl源を溶解させたアルカリ液とを反応させると、めっき層表面の酸液とアルカリ液との間で中和反応が生じ、めっき層界面に中性の領域が生じる。この中性領域では、上記酸化物の溶解度が低下し、めっき層表面に混合酸化物としてこれらの金属が析出するもの考えられる。
【0026】
アルカリ液中のZn源としてのZn濃度(g/リットル)とAl源としてのAl濃度(g/リットル)との和に対するAl濃度(g/リットル)の比率:Al/(Al+ Zn)を、酸化皮膜の所望のAl比率に応じて調製すると、析出する酸化皮膜の構成 内容を所望の範囲に調製できる。
【0027】
酸液処理とアルカリ液処理の順序を逆にして、前処理としてアルカリ液処理を施し、その後に、所定量のZn源とAl源とを含有させた酸液による処理を施す方法でも、界面での中和反応が同様に生じるため、目標の酸化皮膜を生成する事が可能である。
【0028】
また、電気的に、界面でのpHを変化させる方法で金属元素の酸化物を析出させることも可能である。上述のような金属源を適量含有するアルカリ性の水溶液中で、めっき層を陽極処理すれば、めっき層界面で酸素が発生し、水酸化物イオンが酸化されて酸素となり、界面で、水酸イオンが減少して、pHが低下するため、酸化皮膜が成長する。めっき層のZn、Alも酸化されると考えられるが、主として、前者のpH変化によるAl、Zn系酸化物の析出が主体となる。従って、この方法でも溶液内のAl、Zn濃度を調製することによって、目的のAl比の酸化皮膜を形成させることが可能である。
【0029】
本発明は上述のような新たに得られた知見を基にして完成されたものであり、その趣旨は下記(1)または(2)に記載の成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板(3)〜(5)のいずれかに記載製造方法にある。
【0030】
(1)めっき層表面に酸化皮膜を備える亜鉛系めっき鋼板であって、めっき層のAl含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足し、酸化皮膜の付着量が、酸化皮膜中のZnとして100〜1000mg/m2 、Alとして3〜20mg/m2 であり、かつ、上記酸化皮膜中のZn含有量(重量%)とAl含有量(重量%)の和に対する前記Al含有量の比率が0.01〜0.15の範囲内にあることを特徴とする成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
【0031】
Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
【0032】
(2)めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする上記(1)に記載の亜鉛系めっき鋼板。
【0033】
(3)Al含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する亜鉛系めっき層に、pHが4.0以下の酸性の水溶液による処理を施した後、Zn源とAl源とを含有させたpHが8以上のアルカリ性の水溶液による処理を施すことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0034】
Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
【0035】
(4)Al含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する亜鉛系めっき層に、pH8以上のアルカリ性の水溶液による処理を施した後、Zn源とAl源とを含有させたpHが4.0以下の酸性の水溶液による処理を施すことを特徴とする上記(1)または(2)亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0036】
Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
【0037】
(5)Al含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する亜鉛系めっき層に、Zn源とAl源とを含有させたpHが8以上のアルカリ性の水溶液中で電解する陽極処理を施すことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0038】
Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を詳細に述べる。なお以下の化学組成を表す%表示は重量%を意味する。
【0040】
(a)めっき層
めっき層の化学組成は、Znと所定の範囲内のAlを含有する以外は公知の亜鉛系めっき層を構成する化学組成であればよく、合金元素としては、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Siなどが考えられる。化学組成が異なるめっき層を複数層備えた複層めっきでもよい。その場合のめっき層のAl含有量は、{各めっき層の(Al含有量×Zn目付量)の総和}÷(各めっき層のZn目付量の合計)で求められる複数のめっき層全体のAl含有量であり、式(1)で用いる目付量Zは上式の目付量の合計を用いる。
【0041】
Al含有量:めっき層のAl含有量が少ないほどスポット溶接時の電極損傷が少なく連続打点性が向上する。所望の連続打点性を得るために、めっき層のAl含有量は、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する範囲とする。
【0042】
Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
【0043】
式(1)は、本発明者らの研究結果を整理して得られた経験式であり、Zn目付量が大きい場合にはAl含有量を低くし、Zn目付量が少ない場合には、Al含有が高くなっても良いことを表す。好ましくは0.40%以下とするのがよい。なお、ここでのAl含有量または目付量は、めっき層が複層である場合には、上述したように、めっき層全体でのAl含有量または目付量を意味する。
【0044】
Al含有量の下限は特に限定するものではないが、0.15%とするのがよい。好ましくは0.20%である。合金化溶融めっきの場合、目付量の制御を容易にし、Fe−Zn系化合物であるドロスの生成を抑制するために、通常、0.08〜0.20%のAlを含有さためっき浴が使用される。めっき層に含有されるAl量は、めっき浴のAl濃度と目付量および界面に生成するFe−Al合金の量に比例してするため、めっき層には経験的に0.15〜0.40%程度のAlが含有される。
【0045】
めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層である場合のFe含有量は特に限定するものではないが、7〜15%とするのがよい。Fe含有量が15%を超えると、パウダリングが発生しやすく、7%に満たない場合には、めっき層の特に表層部にη相のZn(Feを殆ど含有しないZn)が残存することが多くなり、塗装性および溶接性が好ましくない。
【0046】
目付量:めっき層の目付量は特に限定するものではなく任意であるが、耐パウダリング性と耐食性を確保するために20〜70g/m2 程度とするのがよい。自動車用途に用いる合金化溶融亜鉛めっきの場合には20〜70g/m2 とするのがよい。目付量が20g/m2 に満たない場合には自動車用鋼板に要求される耐食性能を満たさない場合があり、70g/m2 を超えるとプレス成形時にパウダリングが発生することがあるので好ましくない。
【0047】
(b)酸化皮膜;
めっき層表面にはZn系酸化物およびAl系酸化物を含有する酸化皮膜が備えられている。
【0048】
Zn系酸化物の組成は特に限定するものではないが、ZnOを主体とし、その他にZn(OH)2 などの水酸化物を含むこともある(本発明では、これらを総称して「Zn系酸化物」という)。
【0049】
Zn系酸化物の付着量は、酸化皮膜中のZnとして100〜1000mg/m2 である。上記のZnが100mg/m2 に満たない場合には、めっき層表面での潤滑油などの保油性が十分ではないために所望の成形性が得られない。好ましくは200mg/m2 以上である。上記のZnが1000mg/m2 を超えると成形性改善に対する効果が飽和するうえ、1000mg/m2 を超えて付着させるとコストが高くなるのでこれを上限とする。好ましくは600mg/m2 以下である。
【0050】
Al系酸化物の組成は特に限定するものではないが、Al2 3 を主体とし、その他にAl(OH)3 などの組成の水酸化物を含むこともある(本発明では、これらを総称して「Al系酸化物」という)。また、上記Al系酸化物が上述のZn系酸化物と複合してZn−Al複合酸化物を形成する場合もある。
【0051】
Al系酸化物の付着量は、酸化皮膜中のAlとして3〜20mg/m2 である。上記のAlが3mg/m2 に満たない場合には、酸化皮膜が十分に硬くならないために所望のプレス成形性が得られない。好ましくは5mg/m2 以上である。Al系酸化物の付着量が、Alとして20mg/m2 を超えるとスポット溶接時の電極のCuとめっき皮膜との反応が活発になり、電極の損耗が激しくなって連続打点性が損なわれる。これを避けるためにその上限は20mg/m2 以下とする。好ましくは10mg/m2 以下である。
【0052】
さらに、上記酸化皮膜中のZn系酸化物とAl系酸化物の含有割合が、酸化皮膜中のZn含有量(重量%)とAl含有量(重量%)の和に対する酸化皮膜中の前記Al含有量(重量%)の比[Al/(Al+Zn)、「Al比率」]が、0.01〜0.15の範囲内になるように含有させる。上記Al比率が0.01に満たない場合には酸化皮膜を硬化する作用が弱く成形性の改善効果が不十分である。
【0053】
Al比率が0.15を超えると、保油性が損なわれてプレス成形性の改善効果が低下する。このため、Al比率の上限は0.15とする。好ましくは0.10以下である。
【0054】
酸化皮膜の分析は、試験片をメタノールにヨウ素を溶解した溶液に浸漬してめっき層の金属元素のみを溶解し、抽出残さとしての酸化皮膜を塩酸溶液に溶解し、これを化学分析して酸化皮膜に含有されているZnおよびAlの量を測定する。
【0055】
(c)製造方法;
Zn系めっき鋼板の母材は特に限定するものではなく任意であるが、冷間圧延鋼板または表面の酸化皮膜を除去した熱間圧延鋼板が好適である。めっきの種類は、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっきその他の公知のめっき方法が適用できる。
【0056】
めっき層のAl含有量の調整方法は任意である。電気亜鉛めっきなどAl含有量が少ないめっき浴を使用できる場合には、めっき層にAlが含有されないようにめっき浴を調整してめっきすればよい。
【0057】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合のように、めっき浴にある程度のAlを含有させてめっきすることが必要な場合には、例えば、めっき浴中の有効Al濃度(ドロスを含有しない部分での溶液分析によるAl濃度)を0.11〜0.13%に調製し、めっき浴温を455〜460℃の範囲とし、母材の温度をめっき浴温より3℃以上低めてめっき浴に浸漬し、浸漬時間を短くして(例えば4秒以下)めっきすれば所望のAl含有量のめっき層が得られる。
【0058】
上記の方法は一例であり、めっき浴のAl濃度を単純に低くしても、所望のAl含有量の亜鉛系めっき層を得ることができるが、ドロスなどの問題を考慮すると、めっき浴のAl濃度を0.10%以上にして上述のような条件でめっきするのが好適である。
【0059】
酸化皮膜をめっき層表面に生成させる方法は、▲1▼酸液処理→Zn源およびAl源の濃度を調整したアルカリ液での処理(酸−アルカリ処理法)、▲2▼アルカリ液処理→Zn源およびAl源の濃度を調整した酸液での処理(アルカリ−酸処理法)、▲3▼Zn源およびAl源の濃度を調整したアルカリ液中で陽極処理する(陽極処理法)、等の方法がある。これらの方法によれば、酸化皮膜中のZn系酸化物およびAl系酸化物の比率を容易に制御できる。
【0060】
ここで、「処理」とは、めっき層に酸液またはアルカリ液を付着させることを意味する。その方法は任意であり、めっき層表面に溶液を均一に付着させることが可能な方法であればよいので、特に限定する必要はなく、浸漬法、塗布法、ロールコーターなど公知の方法を用いればよい。なかでも、浸漬法が簡易である。
【0061】
酸−アルカリ処理法:亜鉛系めっき層の表面に、pHが4.0以下の酸性の水溶液(酸液)による処理を施した後、Zn源とAl源とを含有させたpHが8以上のアルカリ性の水溶液(アルカリ液)による処理を施す。
【0062】
pH4.0以下の酸液での処理は、めっき層表面を酸性にするためであり、pHが4.0を超えると、次に施すアルカリ性の水溶液での処理時に、めっき層表面での中和反応を十分起こすことができない。従って、pHは4.0以下とする。酸液のpHの下限は特に限定するものではないが、pH2に満たない場合には酸性の水溶液の反応性が高く、処理中にめっき層が溶解してしまうおそれがあるため、pH2以上でおこなうのが好ましい。
【0063】
酸液の種類は、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、蟻酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸、または、これらの酸を混合した混酸など、いずれの酸を用いても構わない。工業的に、安価で取り扱いなどが簡易であることから、硫酸または塩酸を使用するのが好ましい。めっき層との反応性を遅くさせ、表面を酸性に保つために、酸にインヒビターを添加することも有効である。
【0064】
酸液処理は短時間でおこなうのが好ましい。処理時間が10秒を超えるとめっき層が溶解することがあるのでよくない。酸液処理後、アルカリ液処理までの間隔5秒以内とするのが好ましい。
【0065】
次に、Zn源とAl源とを含有させたpH8以上のアルカリ液で処理する。本発明の特徴の一つは、溶液中ではイオンまたはコロイド状で溶解しているものと推定されるZn源およびAl源を、鋼板表面に析出させることにある。これらの金属源の溶解前または溶液中での形態は特に限定するものではなく、鋼板表面に不要イオン(Zn、Al以外のイオン)が析出しないものであればよい。
【0066】
例えばZn源としては、ZnO、ZnSO4 、Zn(OH)2 、ZnCl2 等があるが、安価な粉末状のZn系酸化物(ZnO)を用いるのが好適である。Al源としては、Al2 3 、Al(OH)3 、AlCl3 、Al2 (SO4 2 等があるが、異種イオンの混入を防止するためには、Al2 3 、Al(OH)3 等を用いるのが好ましい。
【0067】
アルカリ液はめっき層表面の酸液により中和される。この際に生じるpH変化により、Zn系酸化物およびAl系酸化物の溶解度が低下して、過飽和になった酸化物がめっき表面に析出する。
【0068】
アルカリ液は、金属元素の溶解性を確保し、かつ、酸液と反応した際の溶解度の変化を大きくするために、そのpHを8以上とする。酸化亜鉛の溶解が容易になるので、好ましくはpH10以上がよい。pHの上限は特に規定するものではないが、酸液との中和を容易にするためにpH12以下とするのがよい。
【0069】
アルカリ液の種類は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、オルソ珪酸ソーダなど公知のものでよいが、安価な水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどを用いるのが好ましい。
【0070】
アルカリ液には、Zn源をZnとして50〜500g/リットル、Al源をAlとして1.5〜10g/リットルの範囲で、かつ、上記Zn(g/リットル)とAl(g/リットル)の和に対するAl(g/リットル)の比率、[Al/(Al+Zn)、以下「液のAl比率」とも記す]が、0.01〜0.15の範囲内にあるようにZn源とAl源とを含有させるのがよい。
【0071】
Zn濃度を50g/リットル以上とすれば、めっき層表面の酸化物中に含有されるZn系酸化物をZnとして100mg/m2 以上付着させることができる。Zn濃度が500g/リットルを超えると、めっき層に付着する亜鉛系酸化物の量が飽和するので、これを超えて溶解させても意味が無い。このため、Zn濃度の上限は500g/リットルとするのがよい。
【0072】
アルカリ液中のAl濃度を1.5g/リットル以上とすれば、めっき層表面の酸化皮膜中に含有されるAl系酸化物をAlとして3mg/m2 以上付着させることができる。Al濃度が10g/リットルを超えると、酸化皮膜のAl含有量が20mg/m2 を超えるので、アルカリ液のAl濃度は10g/リットル以下とするのがよい。
【0073】
溶液中のAl比率が0.01〜0.15の範囲内にあるようにZn源とAl源とを含有させるのは、めっき層表面に析出する酸化皮膜中の金属元素の含有比率が、アルカリ液に溶解している金属元素の比率と同様の比率になるからである。
【0074】
処理時間は、析出したZn、Al系酸化物がアルカリ液に再溶解しないように条件を選択するのがよい。例えばアルカリ処理時間は、1〜8秒間程度で十分である。また、アルカリ処理後、直ちに、水洗を行い、表面に残存するアルカリによる酸化物の再溶解を防止し、60℃程度で乾燥して製品とするのがよい。
【0075】
アルカリ−酸処理法:この方法は前述の「酸−アルカリ処理法」とは処理液の種類を逆にした方法であり、めっき層の表面に、pH8以上のアルカリ液による処理を施した後、pHが4.0以下で、Zn源とAl源を、酸−アルカリ処理法のアルカリ液におけるのと同様の割合で含有させた酸液による処理を施す方法である。
【0076】
アルカリ液のpHは8以上とする。pHの上限は特に規定されないが、pH12以下とするのが、以降の酸液との反応で中和されやすく、好ましい。
【0077】
この後、所定量のZn源およびAl源を含有する酸液での処理を施す。酸液への上記金属源の含有量は、Zn源をZnとして50〜500g/リットル、Al源をAlとして1.5〜10g/リットルの範囲内で、かつ、前述の溶液中のAl比率が0.01〜0.15の範囲内になるようにZn源とAl源とを含有させるのがよい。上記の範囲が好適である理由は、前述の「酸−アルカリ処理法」で説明したのと同様の理由によるものであるので、ここでは説明を省略する。
【0078】
上記の酸性の水溶液またはアルカリ性の水溶液は、前述の「酸−アルカリ処理法」の場合と同様に公知の任意種類のものを使用できる。
【0079】
陽極処理法:所定量のAl、Zn量を含有させたpH8以上のアルカリ液中で陽極処理を行うことによって酸化皮膜を形成させる。陽極処理では、めっき層近傍の水酸化物イオンが酸化され、酸素が発生することにより界面での水酸化物イオン濃度が低下しpHが低くなる。そのため、溶液は界面近傍で中性領域となり、溶液中に溶解していたZnとAlが析出する。
【0080】
ここでは酸素発生による水酸化物イオンの反応が主体であるが、この反応では電流密度に応じて反応の律速段階が異なる。電流密度を高めると反応速度が大きくなり、水酸化物イオンの供給速度が律速になるので、界面では水酸化物イオンが欠乏し界面のpHが低下する。このため、界面では金属元素が酸化物または水酸化物などの形態で析出する。この酸化反応が、水酸化物イオンの移動速度に依存して生じるとき、界面での水酸化物イオン濃度が低下し、pHが低下する。この電流密度は、通常0.1A/dm2 以上であれば本発明の効果を発揮することができる。
【0081】
このアルカリ性の水溶液には、前述の「酸−アルカリ処理法」のアルカリ性の水溶液の構成で説明したのと同様の理由で、同様の量のZn源およびAl源が同様の溶液中のAl比となる範囲で溶解される。
【0082】
めっき層表面に酸化皮膜を形成する処理を施した後は、直ちに、水洗し、酸化物の再溶出を防止するのがよい。
【0083】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す鋼種Aに記載の化学組成を有する厚さ0.80mmの極低炭素鋼冷間圧延鋼板に以下の方法で合金化溶融亜鉛めっきを施した。
【0084】
【表1】
Figure 0003879268
【0085】
冷間圧延鋼板を窒素雰囲気中で500℃で予備加熱し、水素10体積%、残部窒素からなる雰囲気中で、850℃で60秒間保持する還元性雰囲気中での焼鈍を施し、480℃〜440℃の範囲まで冷却し、温度450〜470℃、Al濃度0.10〜0.15重量%の範囲で種々の条件の亜鉛めっき浴に浸漬して引き上げ、めっき面に高圧ガスを吹き付けて付着量を20〜70g/m2 の範囲に調整し、誘導加熱方式の合金化処理炉を用いて加熱し合金化させて、めっき層のFe含有量が7〜15重量%、Al含有量が種々の値である合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製作した。
【0086】
これらのめっき鋼板のサンプルを、pH4.0の硫酸溶液に5秒間浸漬した後、ZnOをZnとして90g/リットル、Al2 3 をAlとして10g/リットル含有したpH10のアルカリ性の水溶液に3秒間浸漬した後、水洗し、60℃の空気を吹き付けて乾燥させて酸化皮膜を備えたサンプルを製作した。アルカリ液としては水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
【0087】
比較例として、上記酸化処理用母材のサンプルの一部は、350℃の飽和水蒸気中で30秒間保持して、めっき層表面に酸化皮膜を設ける酸化処理も施したものを製作した(試験番号a23〜a25)。上記の酸化処理時間を長くして、酸化皮膜中のAl含有量を高くしたものも製作した(試験番号a25)。また、酸化処理用母材のままで、その表面に酸化皮膜処理を施さなかったサンプルも評価した(試験番号a26、a27)。
【0088】
酸化処理用母材のめっき層を、インヒビターを含有した塩酸に溶解し、めっき層のAl、Zn、Fe含有量を溶液分析するとともに、式(1)によるAl比率を計算した。
【0089】
酸化皮膜処理したサンプルは、メタノール溶液中にヨウ素を溶解させた溶液に浸漬してめっき層の金属元素のみを溶解し、抽出残さとしての酸化皮膜を塩酸溶液に溶解し、これを化学分析して酸化皮膜に含有されているZnおよびAlの量を測定した。各種のサンプルのスポット溶接性、摺動性および成形性を以下の方法で評価した。
【0090】
スポット溶接性:スポット溶接性は連続打点性で評価した。同じ条件で作成したサンプルを2枚重ね合わせ、両面から1対の電極で挟み、加圧通電してスポット溶接した。電極は直径6mmの先端がドーム型の形状のものを使用した。溶接電流は11.0KA、溶接時間は0.2秒、溶接間隔は毎秒1回とした。スポット溶接部は剥離試験をおこない、スポット溶接部の溶融金属部分(ナゲット)の直径が4×t1/2 (t:試験片1枚の厚さ)未満になるまでに可能であった溶接回数を連続打点数として求め、この回数を下記の基準で評価した。
【0091】
◎:5000回以上(特に良好)、
○:3000回以上5000回未満(良好)、
△:2000回以上3000回未満(不良)、
×:2000回未満(極めて不良)。
【0092】
摺動性:摺動性は、以下の方法で測定した摩擦係数によって評価した。
図1は溝型に鋼板を曲げ成形する際の成形力から鋼板の摺動性を評価するための摺動性評価装置の概念を示す斜視図である。試験片1はしわ押さえビード4からの力を受けてダイス面2に押し付けられている。押し金具5の形状は直方体状である。押し金具5の下降に伴って試験片1はダイス面2としわ押さえビード4との間で摺動しつつ平行な溝状の開口部であるダイス溝3に引き込まれる。試験片の摺動性に応じて押し金具5の圧入力が変化するので、圧入力としわ押さえ荷重との関係から試験片の摩擦係数を測定することができる。ここでは、試験片1の寸法は幅30mm、長さ270mmとし、ビードの断面寸法は半径5mmの半円形とした。ダイス面2、しわ押さえビード4および押し金具5の表面は、600#の研磨紙で研磨したものを用い、試験片1の両面には潤滑剤として防錆油を片面あたり、2.5g/m2 塗布し、押し金具3の圧入速度は60mm/分とした。しわ押さえ荷重は、750、1000、1250、1500kgfの4条件とし、それぞれの場合の押し金具5の圧入力の最大値を求め、しわ押さえ荷重の増分(dP)と押し金具圧入力の最大荷重の増分(dF)とから、摩擦係数(μ)をμ=dF/2dPなる式により計算して求め、μの値にしたがって摺動性を下記の基準で評価した。
【0093】
◎:μが0.24以下(極めて良好)、
○:0.24超0.28以下○(良好)、
△:0.28超0.32以下△(不良)、
×:0.32超(極めて不良)。
【0094】
成形性:サンプルから60φのブランクを打ち抜き、直径が34mmのポンチと、直径が35.5mmのダイス孔を有するダイスを用いてしわ押さえ力を作用させつつ円筒深絞り成形をおこない、しわ押さえ力(BHF)を変化させ、絞り成形が可能なしわ押さえ荷重の最大値をもとめ、この値が大きいほど成形性が良好と判断して成形性を調査した。ポンチ、ダイスおよびしわ押さえ面は研磨紙#600で研磨仕上したものを使用し、成形速度60mm/分とし、潤滑のために防錆油をサンプルの両面に0.5g/m2 塗布して試験した。
【0095】
亜鉛系めっき層のない鋼板(焼鈍済みの冷間圧延鋼板)の場合の破断しない最大しわ押さえ荷重が3500kgfであったので、亜鉛系めっき鋼板の成形性の評価は下記の基準でおこなった。
【0096】
◎:最大荷重3000kgf以上(極めて良好)、
○:2500以上3000kgf未満(良好)、
△:2000以上3000kgf未満(不良)、
×:2000kgf未満(極めて不良)。
めっき層と酸化皮膜の化学組成および性能評価結果を表2に示した。
【0097】
【表2】
Figure 0003879268
【0098】
表2で試験番号a1 〜a11はいずれも本発明の規定する条件を満たすものであり、溶接性、摺動性、成形性共に良好であった。めっき層のAl含有量が式(1)から求められる上限値に比較してAl含有量が大幅に少なかった試験番号a1、a2、a4〜a7は溶接性が特に良好で総合評価も特に優れたものであった。これに対し、めっき層のAl含有量が式1から求められる上限を超えた試験番号12〜21は、溶接性がよくなかった。本発明の規定する範囲を超えた試験番号a12〜a22では溶接性が良くなかった。試験番号a23および24は、めっき層中のAl濃度が低く、溶接性は良好であったが、酸化皮膜中のAl含有量が低いためにプレス性がよくなかった。酸化皮膜のAl比が高すぎた試験番号25は、めっき層のAl含有量が式(1)から求められる上限を超えたうえ、酸化皮膜のAl比率が高すぎたために溶接性が良くなかった。酸化皮膜処理をおこなわなかった試験番号a26およびa27は、溶接性がよくないうえ、潤滑性と成形性も良くなかった。
【0099】
(実施例2)
表1に示す鋼種Bの化学組成を有する厚さ0.75mmの極低炭素鋼冷間圧延鋼板に、めっき条件を、鋼板温度450℃、めっき浴温度455℃、めっき浴のAl濃度を0.115重量%とした以外は、実施例1に記載したのと同様の条件で溶融亜鉛めっきを施し、合金化処理して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製作した。これらの酸化処理用母材を、pH2〜4の硫酸または塩酸あるいは酢酸溶液に1〜10秒間浸漬し、直ちにZnOをZnで10〜500g/リットル、Al2 3 をAlで0〜20g/リットルの範囲内で含有するpH8〜12の水酸化ナトリウムからなるアルカリ性の水溶液に3秒間浸漬した後、水洗し、60℃の熱風を吹き付けて乾燥させ、種々の条件で酸化皮膜処理を施したサンプルを製作した。得られたサンプルは、実施例1に記載したのと同様の方法で、めっき層および酸化皮膜の組成を調査し、スポット溶接性、摺動性および成形性を評価した。これらの結果を表3に示した。
【0100】
【表3】
Figure 0003879268
【0101】
表3で試験番号b1〜b20はいずれも本発明の規定する条件を満たすものであり、スポット溶接性、摺動性、成形性共に良好であった。Al含有量が0.28%以下と低かった試験番号b1〜b4、b6、b10、b13、b16およびb20ではいずれの評価結果とも特に優れたものであった。これに対し、硫酸のpHが4.0を超えた試験番号b21およびb22では酸化皮膜のZn含有量が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。アルカリ性の水溶液へのZnの含有量が少なすぎた試験番号b23およびb24でも同様に、酸化皮膜のZn含有量が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。アルカリ性の水溶液へのAlの含有量が少なすぎた試験番号b25では、酸化皮膜のAl比率が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。
【0102】
(実施例3)
実施例2で製作した酸化処理用母材としての合金化溶融亜鉛めっき鋼板から得たサンプルに、pH8〜12の水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液に1〜10秒間浸漬するアルカリ性の水溶液処理を施した後、実施例2に記載したのと同様の量のZn源およびAl源を含有するpH1〜4の硫酸の酸溶液に3秒間浸漬した後、実施例2と同様に水洗し乾燥して、種々の条件で酸化皮膜処理を施したサンプルを製作した。得られたサンプルは、実施例1に記載したのと同様の方法で、めっき層および酸化皮膜の組成を調査し、溶接性、摺動性および成形性を評価した。これらの結果を表4に示した。
【0103】
【表4】
Figure 0003879268
【0104】
表4で試験番号c1 〜c14はいずれも本発明の規定する条件を満たすものであり、溶接性、摺動性、成形性共に良好であった。めっき層のAl含有量が低かった試験番号c1〜c4、c6、c10およびc13は、特に溶接性が良好で、総合評価も特に優れていた。これに対し、水酸化ナトリウムのpHが8に満たなかった試験番号c15、および、硫酸溶液へのZn源の含有量が少なすぎた試験番号c16は、酸化皮膜のZn含有量が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。硫酸溶液のAl源の含有量が少なすぎた試験番号c17およびc18では、酸化皮膜のAl比が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。
【0105】
(実施例4)
実施例2で製作した酸化処理用母材としての合金化溶融亜鉛めっき鋼板から得たサンプルに、ZnOをZnとして10〜500g/リットル、Al2 3 をAlとして0〜20g/リットルの範囲内で含有するpH12〜13の水酸化ナトリウムからなるアルカリ性の水溶液中で、0.1〜10A/dm2 の電流密度で陽極処理を1〜10秒間施した後、実施例2と同様に水洗し乾燥して、種々の条件で酸化皮膜処理を施したサンプルを製作した。得られたサンプルは、実施例1に記載したのと同様の方法で、めっき層および酸化皮膜の組成を調査し、溶接性、摺動性および成形性を評価した。これらの結果を表5に示した。
【0106】
【表5】
Figure 0003879268
【0107】
表5で試験番号d1〜d8はいずれも本発明の規定する条件を満たすものであり、溶接性、摺動性、成形性共に良好であった。めっき層のAl含有量が少なかった試験番号d1〜d4およびd6は、特に溶接性が優れており、総合評価も極めて良好であった。これに対し、水酸化ナトリウムのpHが8に満たなかった試験番号d9、および、Zn源の含有量が少なすぎた試験番号d10は、酸化皮膜のZn含有量が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。水酸化ナトリウム溶液のAlの含有量が少なすぎた試験番号d11およびd12では、酸化皮膜のAl含有量が本発明の規定する範囲に満たないために摺動性と成形性が良くなかった。
【0108】
【発明の効果】
本発明の、Al含有量が少ないめっき層の表面にZn系酸化物とAl系酸化物を含有する酸化皮膜を備えた亜鉛系めっき鋼板は、スポット溶接における連続打点性にすぐれ、潤滑した場合のめっき層の摺動抵抗が小さくてプレス成形性が良好である。特に自動車車体用の鋼板として使用すればプレス加工と溶接組み立て時の生産性の改善に寄与できる。さらに本発明の鋼板は電気めっきなどに必要な大掛かりな設備を必要とせずに製造することができるので鋼板の生産性も良好であり経済性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摺動性評価装置の概念を示す斜視図である。
【符号の説明】
1・・・試験片、2・・・ダイス面、3・・・ダイス溝、4・・・しわ押さえビード4、5・・・押し金具。

Claims (4)

  1. めっき層表面に酸化皮膜を備え、めっき層のAl含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足し、酸化皮膜の付着量が、酸化皮膜中のZnとして100〜1000mg/m 2 、Alとして3〜20mg/m 2 であり、かつ、上記酸化皮膜中のZn含有量(重量%)とAl含有量(重量%)の和に対する前記Al含有量の比率が0.01〜0.15の範囲内にある亜鉛系めっき鋼板の製造方法であって、
    Al含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する亜鉛系めっき層に、pHが4.0以下の酸性の水溶液による処理を施した後、Zn源とAl源とを含有させたpHが8以上のアルカリ性の水溶液による処理を施すことを特徴とする成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
    ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
  2. めっき層表面に酸化皮膜を備え、めっき層のAl含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足し、酸化皮膜の付着量が、酸化皮膜中のZnとして100〜1000mg/m 2 、Alとして3〜20mg/m 2 であり、かつ、上記酸化皮膜中のZn含有量(重量%)とAl含有量(重量%)の和に対する前記Al含有量の比率が0.01〜0.15の範囲内にある亜鉛系めっき鋼板の製造方法であって、
    Al含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する亜鉛系めっき層に、pH8以上のアルカリ性の水溶液による処理を施した後、Zn源とAl源とを含有させたpHが4.0以下の酸性の水溶液による処理を施すことを特徴とする成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
    ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
  3. めっき層表面に酸化皮膜を備え、めっき層のAl含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足し、酸化皮膜の付着量が、酸化皮膜中のZnとして100〜1000mg/m 2 、Alとして3〜20mg/m 2 であり、かつ、上記酸化皮膜中のZn含有量(重量%)とAl含有量(重量%)の和に対する前記Al含有量の比率が0.01〜0.15の範囲内にある亜鉛系めっき鋼板の製造方法であって
    Al含有量が、0.60重量%以下、かつ、下記式(1)を満足する亜鉛系めっき層に、Zn源とAl源とを含有させたpHが8以上のアルカリ性の水溶液中で電解する陽極処理を施すことを特徴とする成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    Al(重量%)≦10/Z+0.1・・・(1)
    ここで、Zはめっき層の片面当たりの目付量(g/m2 )を表す。
  4. めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の成形性と溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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