JP3884246B2 - Cvtベルト用フープの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のCVT(Continuously Variable Transmission)ベルト用のフープに係り、特に、異物の影響を極力軽減して疲労強度を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
CVTベルトは、複数の押しブロックを金属製のフープで環状に連設したものであり、フープには繰り返し曲げが加わるため、高い疲労強度が要求される。フープの疲労強度を向上させる技術として、従来より多くの提案がなされている。たとえば、▲1▼特開平11−293407号公報には、フープ用材料としてTi系介在物の粒径を8μm以下としたマルエージング鋼が開示され、▲2▼特開2001−64755公報には、非金属介在物の粒径を30μm以下としたマルエージング鋼が開示されている。また、上記のような材料の改良以外でフープ自体に改良を加える手段として、▲3▼特開昭62−80322号公報には、フープにバレル研磨を施し、フープの側縁部のエッジを除去する技術が開示され、▲4▼特開平1−142022号公報には、フープにガス窒化を施して疲労強度を向上させる技術が開示されている。さらに、▲5▼特開昭63−96258号公報には、フープにショットピーニングを施して疲労強度を向上させる技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
フープの疲労強度を飛躍的に向上させるために、上記従来技術における材料を改良する手段とフープ自体に改良を加える手段を組み合わることが考えられるが、実際にはそのような効果が得られない場合が多い。たとえば、▲1▼特開平11−293407号公報に記載の材料でフープを製作し、これに▲5▼特開昭63−96258号公報に記載のショットピーニングを施すか、ショットピーニングに代えて(またはそれに加えて)▲3▼特開昭62−80322号公報に記載のバレル研磨を施してエッジを除去しても、疲労強度の飛躍的な向上は得られていないのが実情である。その理由は、ショットピーニング等の処理により、ショット等がフープの表面に打ち込まれたり噛み込んでしまうためであることが判明している。したがって、▲1▼特開平11−293407号公報や▲2▼特開2001−64755公報に開示された介在物の小さい材料を用いたとしても、フープの製品とする過程で異物が表面に侵入し、その異物が疲労破壊の起点となって疲労強度を低下させてしまうのである。
【0004】
上記のような現象を改善する手段として、バレル研磨やショットピーニングの後に電解研磨を行ってフープの表層部を取り除くことにより、外来性の異物を除去することが一般的に知られている。しかしながら、そのような手段では製造のための時間と労力が増えるとともに、ショットピーニングで圧縮残留応力を付与した部分が除去されてしまうと疲労強度が低下するという問題があった。
したがって、本発明は、残留応力が存在する表面層を取り除くことなく上記のような異物の影響を極力軽減し、疲労強度を向上させることができるCVTベルト用フープの製造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
窒化には、塩浴窒化、ガス窒化、イオン窒化などがあるが、そのうちの塩浴窒化は、窒化物層や多孔質層を生成するため疲労強度を重視する用途には適さず、また、イオン窒化では生産性に難点がある。その点、ガス窒化にはそのような難点がなく、特に、アンモニアガスを用いるガス窒化は、自動車用CVTに用いられる金属製フープのように、屈曲率が大きく疲労強度が要求される用途での工業的生産に適している。しかしながら、ガス窒化の過程では、アンモニアの解離平衡によりN2とH2とを生じ、窒化の進行に伴って鋼中に水素が侵入する。また、水素ガスによる還元性雰囲気で行われる焼鈍や酸洗においても鋼中に水素が侵入する。
【0006】
鋼中に侵入した水素は、鋼中や鋼表面に異物が存在する場合には、異物と鋼の基地との界面で捕捉される。このように製造過程で異物の表面に捕捉された水素は、製品の使用過程で水素脆化を引き起こし、異物によるノッチ効果と相俟って疲労破壊の基点となる。特に、窒化などの表面硬化処理を施した製品の表面およびその近傍に異物が存在すると脆化が著しく、返って疲労強度が低下するという結果を招来する。
【0007】
鋼の基地と異物との間に捕捉される水素の量は、異物の表面積に依存し、異物の表面積が大きければ大きい程捕捉される水素量が多く、疲労破壊に基点になり易い。また、フープには、繰り返し曲げによる負荷が主として作用するため、表面およびその近傍に最も大きな応力が作用する。したがって、フープは、内部での水素捕捉に対して鈍感であるが、表面近傍での水素捕捉には極めて敏感である。したがって、窒化を行ったフープでは、窒化による硬化層における疲労強度が極めて重要であり、表面や硬化層において水素が捕捉されると疲労強度に大きく影響する。本発明者等は、そのような観点から表面および窒化による硬化層に存在する異物の疲労強度に与える影響を定量的に解析した。
【0008】
本発明のCVTベルト用フープ(以下、「フープ」という)は、上記知見に基づいてなされたもので、窒化による硬化層内および表面に存在する異物の粒径が25μm以下であることを特徴としている。ここで、異物の粒径dは、図4に示すように、異物の差渡し最大径をdx、最大径の差渡し方向と直交する方向における最大径をdyとしたときに、(dx×dy)の平方根つまり(dx×dy)0.5により表される。また、異物とは、フープの材料の製造工程で析出する介在物の他に、バレル研磨やショットピーニング等の処理でフープに打ち込まれたり噛み込まれたりするものも含まれる。なお、本発明のフープは、バレル研磨および/またはショットピーニング処理を行い、その後に窒化を行ったものであっても良い。
【0009】
上記構成のフープにあっては、異物を電解研磨等で除去しなくても疲労強度を向上させることができる。すなわち、異物の粒径を上記のように制限することにより、水素の捕捉量を抑制し、窒化による疲労強度の向上が損なわれないようにすることができる。ここで、水素の捕捉量は異物の種類によって異なることが知られている。たとえば、TiN等の窒化物およびSiC等の炭化物は水素の捕捉能が大きく、Al2O3、SiO2、ZrO2等の酸化物は、水素の捕捉能が比較的小さい。したがって、窒化物や炭化物の異物は、小さなものでも疲労破壊の起点となり易く、酸化物の異物は比較的大きなものでも疲労破壊の起点になり難いことが想定される。
【0010】
本発明の他のフープは、上記推論を定量的に確認してなされたもので、窒化による硬化層内および表面に存在する異物のうち、酸化物系の異物の粒径が25μm以下であり、窒化物系および/または炭化物系の異物の粒径が17μm以下であることを特徴としている。
【0011】
次に、本発明のフープの製造方法について説明する。本発明者等は、バレル研磨によってフープに打ち込まれたり噛み込まれたりする異物を重視し、バレル研磨で使用する砥粒を検討した。バレル研磨では、たとえば砥粒を結合剤で固めたメディアと砥粒を含むコンパウンド等の研磨材が用いられる。これらの砥粒は、小さければ小さいほどフープに打ち込まれた際の疲労強度に対する影響が少なくなるが、バレル研磨に要する時間が長くなるという欠点がある。
【0012】
そこで、本発明者等は、バレル研磨に要する時間を可能な限り短くするとともに、フープに打ち込まれても疲労強度に影響を与えない研磨材の砥粒の大きさを検討した。すなわち、バレル研磨を行っている間に、研磨材の砥粒
が破砕されてフープに打ち込まれる際には大きさが小さくなっている。したがって、25μmを超える粒径の酸化物系の砥粒や、17μmを超える粒径の窒化物系および/または炭化物系異物の砥粒を用いることができる。
【0013】
本発明のフープの製造方法は、上記検討結果に基づいてなされたもので、砥粒を含む研磨材を少なくとも用いてバレル研磨を行うCVTベルト用フープの製造方法において、上記研磨材の砥粒のうち酸化物系の砥粒の平均粒径が30μm以下であり、窒化物系および炭化物系の砥粒の平均粒径が20μm以下であることを特徴としている。そして、このような砥粒を含む研磨材を用いることにより、フープに打ち込まれる異物の大きさを上記範囲に制限することができる。なお、窒化物系および炭化物系の砥粒は、酸化物系の砥粒に比べて破砕性が低いため、バレル研磨の終了時でも大きな粒径を維持したままフープに打ち込まれることが想定される。したがって、その観点からも窒化物系および炭化物系の砥粒を酸化物系の砥粒よりも小さくする意義がある。
【0014】
また、本発明者等は、メディアに含まれる砥粒の大きさについても検討した。本発明者等の検討によれば、メディアの表面から突出している砥粒は、バレル研磨を行っているときに部分的に欠けてメディアから離脱することが多い。したがって、メディアに含有する砥粒は、研磨材に含有する砥粒よりも大きくすることができる。
【0015】
本発明の他のフープの製造方法は、メディアから離脱する砥粒の粒径を定量的に解析してなされたもので、砥粒を結合剤で固めたメディアを少なくとも用いてバレル研磨を行うCVTベルト用フープの製造方法において、メディアに含まれる砥粒の平均粒径を100μm以下にしたことを特徴としている。そして、そのような砥粒を含むメディアを用いることにより、フープに打ち込まれる異物の大きさを上記範囲に制限することができる。
【0016】
本発明のフープの製造方法では、上記のような研磨材およびメディアを併用すると好適である。また、メディアは、砥粒をレジンで固めたものであることが望ましい。すなわち、バレル研磨では、フープの表面近傍に存在する砥粒がフープとメディアとがぶつかりあう衝撃でフープに打ち込まれる。したがって、結合剤をレジンとすることにより、メディアがフープにぶつかる際の衝撃が緩和され、砥粒が打ち込まれ難くなる。また、結合剤をレジンとすることにより、衝撃に対する砥粒と結合剤との結合力が強く、砥粒が丸ごとレジンから離脱するようなことが起こり難くなる。なお、ここに言う「レジン」とは、合成樹脂あるいは天然または合成ゴム等を主成分とする結合剤を言う。
【0017】
また、一般に、バレル研磨は水を加えて水中でメディアとフープとを接触させて研磨する。したがって、バレル研磨の際の研磨力やフープに打ち込まれる異物の大きさは、メディアの重量そのものではなくて、水に対するメディアの重量比(嵩比重)により影響を受ける。メディアの嵩比重が水に近ければ、メディアは水流と同じような動きをするため、フープとの衝撃が少なくなって打ち込まれる異物は小さくなり、逆に、メディアの嵩比重が水よりも大きければ、メディアは水流と異なる動きをし易くなるため、フープとの衝撃が大きくなって打ち込まれる異物は大きくなると推測される。
【0018】
したがって、メディアの嵩比重は小さい方が望ましいが、本発明者等の検討によれば、メディアの嵩比重とフープに打ち込まれる異物の大きさとの関係は、砥粒が酸化物系の場合と炭化物系の場合とで異なることが判明している。すなわち、酸化物系砥粒は、破砕され易く粒径が小さくなり易いが、炭化物系の砥粒は破砕され難いために、メディアの嵩比重は酸化物系砥粒の場合よりも小さくする必要がある。以上の観点から、メディアの砥粒が酸化物系の場合には、メディアの嵩比重は2.0以下であることが望ましく、メディアの砥粒が炭化物系の場合には、メディアの嵩比重は1.6以下であることが望ましい。
【0019】
また、バレル研磨中にメディアから比較的大きな砥粒が離脱することも考えられ、そのような砥粒を存在させたままバレル研磨を行うと、それがフープに打ち込まれて疲労強度を低下させる。そこで、バレル研磨を行った後に少なくとも研磨材を洗い流す洗浄を行い、このようなバレル研磨および洗浄を複数回行うと好適である。この場合の洗浄では、研磨材だけを洗浄層から分離することができ、あるいは、研磨材およびメディアを洗浄層から分離することもできる。
【0020】
なお、本発明のフープの材料としては、特開昭62−80322号公報に開示されたマルエージング鋼や、特開2000−63998号公報に開示された高強度ステンレス鋼を採用することができる。
【0021】
【実施例】
[実施例1]
次に、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す成分組成(単位は重量%)のマルエージング鋼を素材とした。素材に含まれる介在物を溶解抽出法にて抽出し、得られた介在物のうち最大粒径のものの電子顕微鏡写真を図1に示す。溶解抽出法では、素材を臭化メタノールで溶解し、それをフィルターで濾して残滓から非金属介在物を抽出した。また、非金属介在物の組成は、EDX(Energy Dispective X-ray Analyzer)にて定性分析することにより同定した。なお、溶解抽出法では、臭化メタノールの他に、硝酸と塩酸の混合液を用いることも可能であり、材料に合わせて適宜選択される。
【0022】
【表1】
【0023】
図1に示すように、Al2O3の粒径は最大で8μm、SiO2の粒径は最大で10μm、TiNの粒径は最大で10μmであった。これら非金属介在物の粒径dは、その差渡し最大径をdx、最大径の差渡し方向と直交する方向における最大径をdyとしたときに、d=(dx×dy)0.5により求めた。なお、以下の説明において「粒径」という用語を使用する際は、全て上記の定義によるものとする。
【0024】
次に、上記素材を公知の方法によってフープに加工し、その縁部のエッジを種々の条件のもとにバレル研磨で除去した。表2にバレル研磨の他の条件を示す。また、フープの表面に存在する異物の代表的なものの電子顕微鏡写真を図2に示す。図2に示す異物は、図1の介在物よりもかなり大きいことから、この異物は素材に析出した介在物ではなく、バレル研磨でフープに打ち込まれた砥粒であることが判った。
【0025】
【表2】
【0026】
次いで、試料としてのフープを時効処理し、アンモニアガスを含む雰囲気中でガス窒化した。このようにして作製されたフープは、幅9mm、厚さ0.18mm、周長600mmであり、図5に示す深さ方向の硬度分布を持っていた。なお、図5において符号Lで示す領域は、窒化による硬化層である。これらフープの屈曲疲労特性を調査するために、図6に示す試験機で疲労試験を行った。図6に示す試験機は、直径55mmの一対のローラ1,1にフープ2を巻回し、ローラ1,1に互いに離間する方向へ向かう力を加えながら回転させるようになっている。疲労試験では、ローラ1,1へ加えた力は3200Nであった。この疲労試験では、フープ2が1回転する毎にローラ1によって2回の曲げが加わるので、フープ2の回転数の2倍を寿命(サイクル数)と定義した。疲労試験は、フープ2が破断するか寿命が108サイクルとなった時点で終了した。
【0027】
図3にフープの破断面の電子顕微鏡写真を示す。図3に示すように、フープの表面に打ち込まれた異物が破断面に臨んでいることから、その異物が破断の起点になっていることが判る。破断面に臨むフープ表面の異物の粒径を表2に併記した。また、108サイクルでも破断しなかったフープについては、溶解抽出法によって抽出した表面の異物の最大粒径を表2に併記した。また、図7に異物が窒化物または炭化物の場合の粒径と寿命との関係を示し、図8に異物が酸化物の場合の粒径と寿命との関係を示す。図7および図8から、フープの表面に存在する異物の粒径が25μm以下であれば、総じて寿命が108サイクルまたはそれに近いことが判る。特に、図7に示すように、異物が窒化物および炭化物の場合には、その粒径が17μm以下のときに寿命が108サイクルであり、極めて良好な疲労強度を示す。また、図8に示すように、異物が酸化物の場合には、粒径が25μm以下の場合には、その粒径が25μm以下のときに寿命が108サイクルであり、極めて良好な疲労強度を示す。これらの結果から、酸化物の異物と窒化物および炭化物の異物とでは水素の捕捉量に差があり、疲労に対する感受性や異物の許容粒径が異なることが確認された。また、異物の種類による粒径の制限についても、本発明の範囲が適正であることが確認された。
【0028】
次に、バレル研磨の条件について検証する。表2から判るように、メディアとコンパウンドを用いてバレル研磨を行うと、コンパウンドの砥粒がフープに打ち込まれる(試料2,3,8,9)。また、メディアのみでバレル研磨を行うと、メディアの砥粒がフープに打ち込まれる(試料4,5,7,10)。いずれの場合においても、フープに打ち込まれる異物の粒径は、砥粒の粒径よりも小さくなり、試料1〜5では、本発明の上限である25μm以下となっている。これは、バレル研磨の進行に伴って、砥粒が破砕されるためである。
【0029】
コンパウンドに含まれる酸化物系砥粒の粒径が30μm以下である試料1では、フープに打ち込まれる異物の粒径が19μmであり、本発明の好適な範囲である25μmを大幅に下回っている。これに対して、コンパウンドに含まれる酸化物系砥粒の粒径が30μmを超える試料6では、フープに打ち込まれる異物の粒径が37μmとなっている。
【0030】
コンパウンドに含まれる窒化物系または炭化物系の砥粒の粒径が20μm以下である試料2,3では、フープに打ち込まれる異物の粒径が17μm以下であり、本発明の好適な範囲である17μm以下となっている。これに対して、コンパウンドに含まれる窒化物系または炭化物系の砥粒の粒径が20μmを超える試料8,9では、フープに打ち込まれる異物の粒径が22μm以上となっている。
【0031】
メディアの結合剤がレジンである試料5(メディアのみ使用)では、メディアの砥粒の平均粒径が100μmでありながら、フープに打ち込まれた異物の粒径は7.3〜25μmである。すなわち、試料5では、メディアの重量が小さいので衝撃が小さく砥粒の脱落が少ないためと、メディアとフープどうしの間の衝撃も小さいために打ち込まれる砥粒が小さくなる。一方、試料7では、結合剤にビトリファイドを用いているため、メディアの重量がレジンの場合に対して大きく、衝撃が大きくなる。そのため、異物の粒径が33μmと大きく、その結果、寿命も106サイクルであった(図8参照)。
【0032】
なお、試料8,9では、使用したコンパウンドの砥粒の粒径よりも大きな粒径の異物がフープから検出されている。そこで、それら試料8,9の素材の介在物を溶解抽出法で測定したところ、砥粒よりも大きな介在物が認められた。すなわち、砥粒には平均粒径よりも大きい粒度のものがある程度含まれている。また、アルミナなどの酸化物系砥粒の場合は、研磨開始直後に破砕されて平均粒径以下となるが、窒化物系や炭化物系の砥粒は破砕され難いために、平均粒径を上回る砥粒が残存し、結果的にフープ表面に打ち込まれてしまうのである。
【0033】
[実施例2]
次に、メディアの嵩比重について検証する。実施例1と同じ条件でフープを作製し、その縁部のエッジを種々の条件のもとにバレル研磨で除去した。このバレル研磨では、酸化物系の砥粒を結合剤で結合したレジンを用い、メディアの砥粒率(メディア中の砥粒の含有量)を変えることにより種々の嵩比重を設定した。このバレル研磨では回転バレルの回転数を24rpmとし、4時間連続で行った。表3にバレル研磨の他の条件を示す。また、バレル研磨後のフープの表面から溶解抽出法によって抽出した異物の最大粒径を表3に併記するとともに、メディアの嵩比重とフープに打ち込まれた異物の最大粒径との関係を図9に示す。図9から判るように、砥粒が酸化物系の場合には、メディアの嵩比重が2.0以下のときに異物の最大粒径が20μm以下であり、本発明の好適な範囲である25μm以下となっている。
【0034】
【表3】
【0035】
また、炭化物系の砥粒を結合剤で結合したレジンを用い、メディアの砥粒率を変えることにより種々の嵩比重を設定した。そして、上記と同じ条件でフープに対してバレル研磨を行った。表4にこのバレル研磨の他の条件を示す。また、バレル研磨後のフープの表面から溶解抽出法によって抽出した異物の最大粒径を表4に併記するとともに、メディアの嵩比重とフープに打ち込まれた異物の最大粒径との関係を図10に示す。図10から判るように、砥粒が炭化物系の場合には、メディアの嵩比重が1.7以下のときに異物の最大粒径が17μm以下であり、本発明の好適な範囲である17μm以下となっている。
【0036】
【表4】
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、窒化による硬化層内および表面に存在する異物の粒径を25μm以下としているから、残留応力が存在する表面層を取り除くことなく異物の影響を極力軽減し、疲労強度を向上させることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例におけるフープの素材の介在物を示す図である。
【図2】 本発明の実施例におけるフープの表面に存在する異物を示す図である。
【図3】 本発明の実施例におけるフープの表面で破断面に臨む異物を示す図である。
【図4】 本発明の粒径の定義を説明するための異物を示す図である。
【図5】 本発明の実施例におけるフープの表面からの深さと硬度との関係を示す線図である。
【図6】 本発明の実施例における疲労試験の試験機を示す側面図である。
【図7】 本発明の実施例における窒化物系および炭化物系の異物の粒径と寿命との関係を示す線図である。
【図8】 本発明の実施例における酸化物系の異物の粒径と寿命との関係を示す線図である。
【図9】 本発明の実施例における酸化物系の砥粒を用いたメディアの嵩比重と異物の最大粒径との関係を示す線図である。
【図10】 本発明の実施例における炭化物の砥粒を用いたメディアの嵩比重と異物の最大粒径との関係を示す線図である。
Claims (5)
- 砥粒を結合剤で固めたメディアを少なくとも用いてバレル研磨を行うCVTベルト用フープの製造方法において、
前記メディアに含まれる前記砥粒の平均粒径が100μm以下であり、
前記メディアの砥粒は酸化物系であり、上記メディアの嵩比重が2.0以下であることを特徴とするCVTベルト用フープの製造方法。 - 砥粒を結合剤で固めたメディアを少なくとも用いてバレル研磨を行うCVTベルト用フープの製造方法において、
前記メディアに含まれる前記砥粒の平均粒径が100μm以下であり、
前記メディアの砥粒は炭化物系であり、上記メディアの嵩比重が1.6以下であることを特徴とするCVTベルト用フープの製造方法。 - 前記バレル研磨において砥粒を含む研磨材を前記メディアとともに用い、上記研磨材の砥粒のうち酸化物系の砥粒の平均粒径が30μm以下であり、窒化物系および炭化物系の砥粒の平均粒径が20μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のCVTベルト用フープの製造方法。
- 前記バレル研磨の後に窒化を行い、上記窒化による硬化層内および表面に存在する異物の粒径を25μm以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のCVTベルト用フープの製造方法。
- 前記窒化による硬化層内および表面に存在する異物のうち、酸化物系の異物の粒径を25μm以下とし、窒化物系および/または炭化物系の異物の粒径を17μm以下とすることを特徴とする請求項4に記載のCVTベルト用フープの製造方法。
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