JP3959143B2 - 新規フタロシアニン化合物、その製造方法および近赤外吸収材料 - Google Patents

新規フタロシアニン化合物、その製造方法および近赤外吸収材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフタロシアニン化合物およびその製造方法、ならびに近赤外線域の吸収能が高くかつ可視域に吸収の少ない、樹脂との相溶性の高い近赤外線(熱線)吸収材料および遮蔽材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンパクトディスク、レーザーディスク、光メモリーディスク、光カード等の光記録媒体、液晶表示装置・光学文字読み取り機等における書き込みあるいは読み取りのために、半導体レーザーが光源として用いられることにより、また近赤外線を感知するセンサー、近赤外線光増感剤、感熱転写、感熱紙・感熱孔版等光熱変換剤、近赤外線吸収カットフィルター、改ざん偽造防止用バーコード用インク等の近赤外線吸収インク、近赤外線をカットする眼精疲労防止剤、自動車あるいは建材の熱線遮蔽材、あるいは繊維などの蓄熱保温剤など近赤外線吸収色素への開発要求が高まっている。
【0003】
特に、近赤外線を吸収する効果を利用した近赤外線(熱線)遮蔽材の各種用途への応用が活発であり、種々の材料が提案されている。しかしながら、いまだあらゆる特性を満足したものがないのが現状であり、より性能の良いものが強く要望されている。近赤外線を吸収する近赤外線(熱線)遮蔽材の主要な用途としてつぎのものが挙げられる。
【0004】
従来メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの材料は、優れた透明性および耐候性を有しているために建物あるいは乗り物の窓、天井窓、扉、電話ボックス、アーケード、カーポート、工場の屋根あるいは天井ドーム等のいわゆるグレージング用途にもちいられてきているが、太陽光中の熱線透過率も高いために、例えば直射日光にさらされた場合等には、内部の温度上昇が著しくなるという欠点を有している。それらの理由から可視光を十分に取り入れながら、室内の温度の上昇を抑制できるものが望まれている。
【0005】
現在、植物の栽培において、温室、ビニールハウスが農作物の収穫内容の改善あるいは収穫時期を変える目的などのために盛んに用いられている。これらにおける課題としてひとつには特に夏期における室内の温度が上昇することを防止することがある。また、植物の生育の調節に近赤外線域の光が影響していることはよく知られているが、その調節の目的にフィルムへの近赤外線域の吸収剤の添加がある。これらの理由から植物の生育に必要な可視光線の透過を実質的に阻止することなく効果的な、熱線遮蔽フィルムが望まれている。
【0006】
以上は、主に熱的作用に由来するものであるが、光学的作用に由来する用途もある。現在、テレビ、ビデオあるいは磁気テープなどの電気製品の駆動、停止、遠隔操作あるいは遠隔制御に近赤外線を用いている場合が多い。しかしながら、外部の近赤外線の遮断あるいは電気製品そのものから出る近赤外線をカットしてお互いの電気製品の駆動、停止、遠隔操作あるいは遠隔制御の誤動作を防止することを必要としており、それらの用途への利用が要請されている。特に壁掛けテレビとして注目されている、プラズマディスプレイからは画素発光に使用される封入ガスから大量の赤外線が出るために各種の家電機器リモコンの誤作動を誘発するという問題点があり、そのために効能の高い近赤外線吸収カットフィルターが要求されている。
【0007】
太陽光中に含まれる赤外線またはコンピューター端末機ディスプレイもしくは溶接の際に放射される光線中に含まれる赤外線は、人間の目に対して有害である。よって、人間の目を保護する目的での近赤外線遮断効果のあるサングラス、一般メガネ、コンタクトレンズ、保護メガネなどが要請されている。
【0008】
他方、近赤外線を吸収して、熱に変える効果を利用した蓄熱材、保温材としてのフィルム、シートあるいは繊維等も望まれている。
【0009】
かくして、従来、近赤外線(熱線)吸収・遮蔽材としていくつかの提案がなされてきた。その場合に用いる樹脂としては、透明性のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられ、樹脂板、シート、フィルム、塗料あるいは繊維等が目的に応じて使用されている。一方、近赤外線を吸収する添加剤として、例えば近赤外線を吸収する染料・顔料は多数知られており、それらを用いたものも多数提案されている。例えば、特公昭62−5190号には染料を添加し、熱線遮蔽材として使用する方法が提案されているが、近赤外線の吸収能に乏しいために熱線遮蔽効果を得るためには、大量に添加せねばならず、そのために可視光線の透過率が低下し透明性が損なわれるという問題点を有している。また、特開昭51−135886号、特開昭61−80106号、特開昭62−903号などには近赤外線域に吸収のある顔料を添加する方法が提案されているが、溶解性に乏しく樹脂との相溶性が悪いために均一性に問題があり、そのため用途が限定されるという問題点を有している。
【0010】
また、特開昭63−106735号などには無機顔料を配合して熱線遮蔽材として使用する方法が提案されているが、熱線遮蔽効果は有しているが、全く可視光を透過しないため用途が限定される。さらに、特開平1−161036号、特開平3−227366号などには、六塩化タングステンなどを含有させる方法も提案されている。しかしながら、これらの方法は近赤外線吸収効果は良好であるものの光安定性が悪いという欠点を有している。
【0011】
さらに、特公昭43−25335号公報等に見られるように、有機色素からなる赤外線吸収剤の使用が考えられ、この赤外線吸収剤を使用した赤外線吸収板は、透明感があり、加工性も良好なものである。しかしながら、特公昭43−25533号公報に記載があるように、一般に有機系の赤外線吸収剤は200℃を超える温度では分解が生じ、実質的にはキャスト重合でしか使用できない、あるいは繊維の紡糸温度で使用できない等の取り扱い上の制約がある。
【0012】
赤外線吸収剤の耐熱性の問題を解決するために、例として、特開平3−161644号に見られるように、成形温度の低い透明樹脂に耐熱温度の低い赤外線吸収剤を添加したものでフィルムを作成し、成形温度の高い透明樹脂板に熱ラミネート成形した積層品を作成する等の方法が考えられる。しかしながら、この方法では実質的に赤外線吸収剤の耐熱性の問題の解決にはなっていない。また、この赤外線吸収剤を含有したフィルムはキャスト重合で作成するものであり、かなり高価なものである。
【0013】
本発明者らは、これらの問題点を解決するために種々検討し、それらに有効な色素として特開平5−345686号、特開平6−264050号等に各種のフタロシアニン色素を提案した。
【0014】
これらのすでに提案したフタロシアニン化合物において、中心金属がバナジルで、フタロシアニン骨格におけるベンゼン核にアニリノ基が約8個置換されているフタロシアニン化合物、中心金属が塩化錫でフタロシアニン骨格におけるベンゼン核にアニリノ基が4個置換されているフタロシアニン化合物等は近赤外線域に吸収を持ち、耐光性、耐熱性または溶解性に優れているために、蒸着あるいは樹脂への煩雑な工程を用いないで色素を薄膜化、塗料化、あるいは樹脂への練り込みが容易であり、種々の近赤外線吸収色素として有用である。
【0015】
しかしながら、近赤外線吸収カットフィルター材、改ざん偽造防止用バーコード用インク等の近赤外線吸収インク、近赤外線をカットする眼精疲労防止材、自動車あるいは建材の熱線遮蔽材等は、透明樹脂に近赤外線吸収色素を含有させて用いられ、近赤外線を吸収する効果とともに、できるだけ透明性の高いものが望まれているが、上記における前者のフタロシアニン色素は近赤外線吸収能は高いが、透明性の点で不十分であり、用途が限定されるという問題点を有しており、また後者のフタロシアニン色素は透明性は比較的良好であるが近赤外線吸収能に劣り、用途が限定されるという問題点を有していることが判明した。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の有する前記事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、本発明者らが特開平5−345861号、特開平6−264050号等に提案した近赤外線吸収色素の特徴である溶解性、耐光性、耐熱性においては同等以上の性能を持ち、その上に近赤外線域の吸収能が高くかつ可視域の透過率をさらに向上させた近赤外線(熱線)吸収・遮蔽材を提供しようとするものである。
【0017】
また、本発明のフタロシアニン色素は、各種の樹脂との相溶性が良好であり、樹脂に含有させて利用する近赤外線遮蔽材、熱線遮蔽材あるいは蓄熱・保温材として優れた効果を発揮するものを提供しようとするものである。
【0018】
また、本発明のフタロシアニン化合物は、耐熱性が良好であるので、種々の熱可塑性樹脂を用いて、射出成形、押出成形等の生産性の良い成形方法で近赤外線(熱線)吸収・遮蔽材を作成することが可能である。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記諸目的は、下記(1)〜(8)により達成される。
【0020】
(1) 下記一般式(1)
【0021】
【化5】
Figure 0003959143
【0022】
(ただし、式中、MはSnCl、Aは炭素原子数1〜8個の範囲の直鎖または分鎖状のアルコキシ基がオルソ位あるいはパラ位に少なくとも1個置換されているアニリノ基を表わす。)で示されフタロシアニン化合物。
【0023】
(2) 前記一般式(1)において、Aは下記一般式(2)
【0024】
【化6】
Figure 0003959143
【0025】
(ただし、式中、R1 およびR2 は炭素原子数1〜8個の範囲のアルキル基を表わし、nは0〜2の整数を表わし、R1 とR2 の炭素数の総和は2以上である。)である前記(1)に記載のフタロシアニン化合物。
【0026】
(3) 下記一般式(3)
【0027】
【化7】
Figure 0003959143
【0028】
(ただし、式中、Aは置換可能な炭素原子数1〜8個の範囲の直鎖および分岐状のアルコキシ基がオルソ位あるいはパラ位に少なくとも1個置換されているアニリノ基を表わす。)で示されるフタロニトリル化合物と、ハロゲン化錫とを反応せしめることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【0029】
(4) 前記一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物を樹脂100重量部に対して0.0005〜20重量部含有する樹脂からなる800nm〜1000nmの近赤外線を吸収する近赤外線(熱線)吸収材および遮蔽材。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、特開平5−345861号および特開平6−264050号に近赤外線を吸収する近赤外線(熱線)吸収および遮蔽材に適合するフタロシアニン化合物を提供した。本発明では、それらのフタロシアニン化合物を更に改良したものである。
【0034】
すなわち、フタロシアニン化合物において、中心金属がハロゲン化錫でフタロシアニン骨格におけるベンゼン核にアニリノ基が4個置換されているフタロシアニン化合物は、比較的可視域の吸収が少なく透明性に優れているが、λmaxが比較的短波長側にあり、近赤外線吸収能が低い事が判明した。本発明者らは、この化合物に着目し透明性を保持して近赤外線吸収能を高めることができないか、鋭意検討を行った。その結果、アニリノ基のオルソ位あるいはパラ位に、炭素数1〜8の範囲の直鎖および分岐状のアルコキシ基を少なくとも1個置換させることによって、中心金属がハロゲン化錫でフタロシアニン骨格におけるベンゼン核にアニリノ基が4個置換されているフタロシアニン化合物の近赤外線吸収能を高めることができることを見出し本発明を完成させた。
【0035】
本発明では、フタロシアニン骨格のベンゼン核のβ位にアニリノ基が置換された上記一般式(4)のフタロシアニン化合物が好ましい。β位にアニリノ基を置換させることによって耐光性を向上することができる。一般式(4)における炭素原子数1〜8個のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分鎖のペンチル基、直鎖または分鎖のヘキシル基、直鎖または分鎖のヘプチル基、直鎖または分鎖のオクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0036】
本発明では、更にフタロシアニン骨格のベンゼン核の残りの置換基が、ハロゲン原子であるのが、簡便な方法でフタロシアニン化合物を製造できるので好ましい。ハロゲン原子としては塩素原子、ブロム原子およびフッ素原子が挙げられる。ハロゲン原子の中でもフッ素原子が好ましい。フッ素原子を用いることによって樹脂との相溶性向上の効果をもたせられる。また、フッ素原子を用いることによって最も効率よくフタロシアニン化合物を製造できる。
【0037】
本発明では、更に上記一般式(1)のフタロシアニン化合物が好ましく、また更に一般式(1)のフタロシアニン化合物におけるAが、上記一般式(2)であるアニリノ基であることが特に好ましい。アニリノ基のオルソ位あるいはパラ位に、置換されているアルコキシ基の数が多い程近赤外線吸収能が高いので好ましい。また長鎖のアルコキシ基程透明性に寄与するので好ましい。長鎖になるとフタロシアニン化合物を製造する際に生産性が悪くなるので、アルコキシ中の炭素原子数としては、8個以下が好ましい。特に、アルコキシ中の炭素原子数としては、全てのアルコキシの総計として2〜4個が好ましい。
【0038】
以下に本発明で使用するフタロシアニン化合物をより具体的に例示する。
【0039】
4−テトラキス(O−メトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2mPhNH)4 12
4−テトラキス(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(24dmPhNH)4 12
4−テトラキス(2,6−ジメトキシアニリノ)−3,5,6,−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(26dmPhNH)4 12
4−テトラキス(2,4,6−トリメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(246tmPhNH)4 12
4−テトラキス(2,4−ジメトキシ−6−メチルアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(24m6mPhNH)4 12
4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2ePhNH)4 12
4−テトラキス(2,4−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(24ePhNH)4 12
4−テトラキス(p−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(4cPhNH)4 12
4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロブロム化錫フタロシアニン、
略称:SnBr2 Pc(2mPhNH)4 12
4−テトラキス(2−エトキシ−テトラフルオロアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2etfPhNH)4 12
4−テトラキス(2−エトキシ−4−メトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2e4mPhNH)4 12
4−テトラキス(o−プロポキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2pPhNH)4 12
4−テトラキス(o−イソプロポキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2ipPhNH)4 12
4−テトラキス(o−ブトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2bPhNH)4 12
4−テトラキス(o−tertブトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2tbPhNH)4 12
4−テトラキス(o−オクチルオキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(2oPhNH)4 12
4−テトラキス(4−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカクロロ塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(4ePhNH)4 Cl12
4−テトラキス(4−エトキシアニリノ)塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pc(4ePhNH)4
3−テトラキス(2−エトキシアニリノ)塩化錫フタロシアニン、
略称:SnCl2 Pcα(2ePhNH)4
本発明では、上記のフタロシアニン化合物の中で、特に
4−テトラキス(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(2,6−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(2,4,6−トリメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(2,4−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(o−プロポキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(o−イソプロポキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(o−ブトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(o−tertブトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
が樹脂への相溶性が向上し、耐光性が向上するので好ましい。
【0040】
特に原料のアニリンが入手し易く、安価という点で
4−テトラキス(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン、
が好ましい。本発明のフタロシアニン化合物の中心金属は、好ましくは塩化錫であるが、これらに中心金属が酸化錫、水酸化錫等の中心金属の塩化錫の一部が変化したフタロシアニン化合物が混在していてもかまわない。
【0041】
本発明の新規フタロシアニンの製造方法において、それらの出発原料である含フッ素フタロニトリルは、好ましくは下記のスキーム1のルートに従って合成できる。なお下記の各々のスキームにおいて合成する際の溶媒としては、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の不活性溶媒、あるいはピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒などを用いることができる。特にアセトニトリルおよびベンゾニトリルが好ましい。
【0042】
また縮合剤としてトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどの有機塩基類やフッ化カリウムを用いるのが好ましい。本発明では、原料として用いる各種のアニリン自身が縮合剤として働くので、特に新たな縮合剤を用いる必要がない。新たな縮合剤を用いない場合には、各種のアニリンは原料のフタロニトリル1モルに対して15モル倍以上、好ましくは2.0〜3.0モル倍が良い。この合成方法については、本発明者らは既に特願昭63−65806号、特願平1−103554号、特願平1−103555号および特願平1−209599号、特願平4−274125、特願平8−215828号等に開示している。
【0043】
【化9】
Figure 0003959143
【0044】
(式中、A1 は一般式(3)の場合と同じ意味を有する。)
本発明の新規フタロシアニンを製造する方法において使用する有機溶剤は、出発原料と反応性のない不活性な溶媒であればいずれでも良く、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル等の不活性溶媒、あるいはピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒などを用いることができ、好ましくは、クロロナフタレン、トリクロロベンゼン、ベンゾニトリル、N−メチル−2−ピロリジノンである。
【0045】
本発明の一般式(1)で表わされる新規フタロシアニン化合物の製造方法においては、有機溶媒100重量部に対して一般式(3)で示されるフタロニトリルは2〜30重量部の範囲で仕込むことが好ましい。一般式(3)で示されるフタロニトリル1モルに対してハロゲン化錫は0.20〜0.45モルの範囲で仕込むことが好ましく、特に好ましくは0.30〜0.40の範囲である。ハロゲン化錫としては、塩化第2錫および臭化第2錫を用いるのがよく、特に塩化第2錫が好ましい。
【0046】
好ましい反応温度としては、100〜300℃の範囲が好ましく、特に150〜250℃の範囲が好ましい。
【0047】
なお、中心金属がハロゲン化錫であり、フタロシアニン骨格における4個のベンゼン核の各々が、炭素数1〜8の範囲の直鎖および分岐状のアルコキシ基がオルソ位あるいはパラ位に少なくとも1個置換されているアニリノ基で置換されているフタロシアニン化合物の製法は、一般式(1)の化合物と同様にして、つぎのスキーム2で得られたフタロニトリルから合成できる。
【0048】
【化10】
Figure 0003959143
【0049】
(ただし、式中、Xはフッ素原子、臭素原子、または塩素原子を表わし、R1 は同一または異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子またはR2 基を表わし、R2 は置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を表わし、nは1〜4の整数を表わし、A1 は一般式(3)の場合と同じ意味を有する。)
スキーム1およびスキーム2の方法で合成したフタロニトリル化合物としては、以下のものが具体的に挙げられる。
【0050】
4−(o−メトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2,6−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2,4,6−トリメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2,4−ジメトキシ−6−メチルアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2,4−ジエトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(p−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2−エトキシテトラフルオロアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(2−エトキシ−4−メトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(o−プロポキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(o−イソプロポキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(o−ブトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(o−tertブトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(o−オクチルオキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、
4−(p−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリクロロフタロニトリル、
4−(p−エトキシアニリノ)フタロニトリル、
3−(o−エトキシアニリノ)フタロニトリル、
本発明において使用する樹脂は、得られる近赤外線(熱線)の吸収材および遮蔽材の用いる用途によって適宜選択することができるが、実質的に透明であって吸収・散乱が大きくない樹脂が好ましい。その具体的なものとしては、ポリカーボネート樹脂;メチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリブチラール樹脂:ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などを挙げることができる。また、実質的に透明であれば、上記1種類の樹脂に限らず、2種以上の樹脂をブレンドしたものも用いることができ、透明性のガラスに上記の樹脂をはさみこんで用いることもできる。ただし、蓄熱・保温材として用いる場合には、必ずしも透明性の樹脂である必要がない。
【0051】
これらの樹脂のうちで、耐候性、透明性に優れるポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂あるいはポリ塩化ビニル樹脂が好ましく、特にポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂あるいはポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。蓄熱保温繊維として使用する場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂あるいはポリアミド樹脂が好ましい。
【0052】
ポリカーボネート樹脂は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法または溶融法で反応させて製造されるものである。2価フェノールの代表的な例として以下のものが挙げられる。
【0053】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等である。好ましい2価のフェノールはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系であり、特にビスフェノールを主成分とするものである。
【0054】
アクリル樹脂としてはメタクリル酸メチル単独またはメタクリル酸メチルを50%以上含む重合性不飽和単量体混合物またはその共重合物が挙げられる。メタクリル酸メチルと共重合可能な重合性不飽和単量体としては例えば以下のものが挙げられる。アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(アクリル酸メチルあるいはメタクリル酸メチルの意味。以下同じ)、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロキシフルフリール、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグルコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどである。
【0055】
塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルの単量体のみの重合体ばかりでなく、塩化ビニルを主成分とする共重合体も使用できる。塩化ビニルと共重合させることのできる単量体としては、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0056】
本発明の実施にあたっては、使用する目的に応じ適宜好ましい添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば着色剤、重合調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、耐衝撃性向上のためのゴム、あるいは剥離剤などを挙げることができる。
【0057】
本発明のフタロシアニン化合物を用いるにあたり、従来公知の近赤外線吸収剤と組合わせて用いることもできる。
【0058】
前記フタロシアニン化合物を透明性樹脂に混合含有させ成形する方法としては、押出成形、射出成形、注型重合、プレス成形、カレンダー成形あるいは注型製膜法等が挙げられる。
【0059】
さらに、フタロシアニン化合物を含有するフィルムを作成し、そのフィルムを透明樹脂板に熱プレスあるいは熱ラミネート成形することにより熱線遮蔽板を作成することも可能である。
【0060】
また、フタロシアニン化合物を含有する樹脂インクまたは塗料等を透明樹脂板、透明硝子板、フィルム、繊維、紙等の基材に印刷またはコーティングすることにより近赤外線(熱線)の吸収板および遮蔽板、シート、フィルム、繊維、紙等を得ることもできる。
【0061】
本発明に使用するフタロシアニン化合物は市販の赤外線吸収剤と比較して、耐熱性に優れているので、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用して射出成形、押出成形のような樹脂温度が220〜350℃という高温まで上昇する成形方法でも成形することが可能であり、透明感が良好で近赤外線の吸収能あるいは熱線遮蔽性能に優れた成形品を得ることができる。また、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等と220〜350℃で紡糸して、蓄熱保温繊維を得ることができる。と
220℃より下の成形温度で使用しても問題はない。
【0062】
近赤外線(熱線)吸収材および熱遮蔽材の形状にも格別の制限はなく、最も一般的な平板状やフィルム状のほか波板状、球面状、ドーム状等様々な形状のものが含有される。
【0063】
本発明において用いられるフタロシアニン化合物は、目的とする熱近赤外線(熱線)遮蔽材のシートあるいはフィルムの可視および近赤外域の透過率の設定および該材の厚みによってその量を変えることができるが、通常透明性樹脂100重量部に対して0.0005〜20重量部、好ましくは0.0015〜10重量部である。
【0064】
この配合量近赤外線(熱線)遮蔽材の形状によって異なり、例えば、厚さ3mmの近赤外線(熱線)遮蔽板を作成する場合には、0.002〜0.06重量部の配合量が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.03重量部である。
【0065】
厚さ10mmの近赤外線(熱線)遮蔽板を作成する場合には、0.0005〜0.02重量部の配合量が好ましく、さらに好ましくは0.0015〜0.01重量部である。厚さ10μmの近赤外線(熱線)遮蔽フィルムを作成する場合には、0.5〜20重量部の配合量が好ましく、さらに好ましくは1.5〜10重量部である。近赤外線(熱線)遮蔽材の厚さに関係なくフタロシアニン化合物の配合量を表示するとすれば、上方からの投影面積中の重量と考えて、0.06〜2.4g/m2 の配合量が好ましく、さらに好ましくは0.18〜1.2g/m2 である。
【0066】
フタロシアニン化合物の配合量が0.06g/m2 より少ない場合には近赤外線(熱線)遮蔽効果の少ないものとなり、2.4g/m2 を超える場合は著しく高価となり、また、可視光線の透過が少なくなり過ぎる場合がある。
【0067】
波板等の異形のものは上方からの投影面積中の重量と考えればよい。また、外観上問題がない限りフタロシアニン化合物の濃度の分布にむらがあってもかまわない。また、フタロシアニン化合物は1種類以上のものを混合して使用することも可能であり、吸収波長の異なるものを2種以上使用した場合には近赤外線(熱線)吸収遮蔽効果が向上することがある。
【0068】
また、フタロシアニン化合物とカーボンブラックを特定量使用することにより、フタロシアニン化合物を単独で使用した場合と比較して、近赤外線(熱線)吸収遮蔽効果は同等でフタロシアニン化合物の使用量を半分以下に減少させることができる。また、フタロシアニン化合物と染料を併用した場合と比較して近赤外線(熱線)吸収遮蔽効果が向上する。
【0069】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0070】
実施例1
4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造
100mlの四ツ口フラスコにテトラフルオロフタロニトリル10.00g(50ミリモル)、o−フェネチジン16.45g(120ミリモル)およびアセトニトリル60mlを仕込み、還流下に4時間反応させた。反応終了後、反応混合物を水に投入し、生成した固形分を水、ついでヘキサンで洗浄することにより目的物の黄色ケーキを14.22gを得た(収率93.8%)。
【0071】
4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造
100mlの四ツ口フラスコに、上記で得られた4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル10.00g(32ミリモル)、塩化錫(II)1.79g(9.46ミリモル)およびベンゾニトリル30mlを仕込み、175℃で5時間反応させた。反応終了後、ベンゾニトリルを留去した反応混合物をテトラヒドロフランに溶解させ、ヘキサン中に投入することにより生成した固形分をヘキサンで洗浄することにより目的物の深青色ケーキ10.50gを得た(収率91.3%)。
【0072】
Figure 0003959143
この化合物の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0073】
この化合物の熱分解温度ならびに耐光性のデータを表1に示す。
【0074】
実施例2
4−テトラキス(2,4−ジメトシキアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造
100mlの四ツ口フラスコにテトラフルオロフタロニトリル10.00g(50ミリモル)、2,4−ジメトキシアニリン18.37g(120ミリモル)およびベンゾニトリル60mlを仕込み、80℃で6時間反応させた。反応終了後、反応混合物を水に投入し、分液したベンゾニトリル層を水、塩酸水、ついで水で洗浄後、ベンゾニトリル層を分離して4−(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルのベンゾニトリル溶液50gを得た。
【0075】
ついで、上記で得られた4−(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルのベンゾニトリル溶液を、液体クロマトグラフで分析することにより該フタロニトリルの濃度は30.16重量%と決定した。100mlの四ツ口フラスコにその4−(2,4−ジメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルのベンゾニトリル溶液50gと塩化錫(II)2.57g(14ミリモル)を仕込み、175℃で5時間反応させた。反応終了後、ベンゾニトリルを留去した反応混合物をテトラヒドロフランに溶解させ、ヘキサン中に投入することにより生成した固形分をヘキサンで洗浄することにより目的物の深青色ケーキ10.86gを得た(収率63.03%)。
【0076】
Figure 0003959143
この化合物の赤外吸収スペクトルを図2に示す。
【0077】
この化合物の熱分解温度ならびに耐光性のデータを表1に示す。
【0078】
実施例3
4−(2,4,6−トリメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造
実施例1の4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造において、o−フェネチジンのかわりに、2,4,6−トリメトキシアニリン21.97g(120ミリモル)を用いた以外は、実施例1の4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造と同様に操作して目的物の黄色ケーキ15.56gを得た(収率85.7%)。
【0079】
4−テトラキス(2,4,6−トリメトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造
実施例1の4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造において、4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルのかわりに、4−(2,4,6−トリメトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル10.00g(28ミリモル)を用いた以外は、実施例1の4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造と同様の操作をして目的物の深青色ケーキ7.10gを得た(収率62.8%)。
【0080】
可視吸収スペクトル
Figure 0003959143
この化合物の熱分解温度ならびに耐光性のデータを表1に示す。
【0081】
実施例4
4−(o−イソプロポキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造
実施例1の4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造において、o−フェネチジンのかわりに、o−イソプロポキシアニリン18.14g(120ミリモル)を用いた以外は、実施例1の4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造と同様に操作して目的物の黄色ケーキ20.05gを得た(収率91.5%)。
【0082】
4−テトラキス(o−イソプロポキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造
実施例1の4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造において、4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルのかわりに、4−(o−イソプロポキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル10.00g(30ミリモル)を用いた以外は、実施例1の4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造と同様の操作をして目的物の深青色ケーキ10.22gを得た(収率89.4%)。
【0083】
Figure 0003959143
この化合物の熱分解温度ならびに耐光性のデータを表1に示す。
【0084】
比較例1
4−アニリノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造
実施例1の4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造において、o−フェネチジンのかわりに、アニリン11.17g(120ミリモル)を用いた以外は、実施例1の4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの製造と同様に操作して目的物の黄色ケーキ12.52gを得た(収率91.7%)。
【0085】
4−テトラキスアニリノ−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニン(略称:SnCl2 Pc(PhNH)4 12)の製造
実施例1の4−テトラキス(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造において、4−(o−エトキシアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルのかわりに、4−アニリノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル10.00g(37ミリモル)を用いた以外は、実施例1の4−テトラキス(o−エトシキアニリノ)−3,5,6−ドデカフルオロ塩化錫フタロシアニンの製造と同様の操作をして目的物の深青色ケーキ10.35gを得た(収率88.2%)。
【0086】
Figure 0003959143
この化合物の熱分解温度ならびに耐光性のデータを表1に示す。
【0087】
比較例2
オクタフルオロオクタキスアニリノオキシバナジウムフタロシアニン(略称:VOPc(PhNH)8 8 )の製造
100mlの四ツ口フラスコ中にヘキサデカフルオキシバナジウムフタロシアニン5.19g(6ミリモル)、アニリン26.82g(288ミリモル)を仕込み、還流温度で4時間反応させた。反応終了後、不溶分を濾別した後アニリンを留去し得られた固形分をn−ヘキサン300mlで洗浄することにより目的物の黒色ケーキ6.72gを得た(収率77.1%)。
【0088】
Figure 0003959143
この化合物の熱分解温度ならびに耐光性のデータを表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0003959143
【0090】
熱分解性は、示差熱熱重量分析装置で室温から温度を上昇させ、その重量が5%減少した時の温度でつぎの3段階の評価を行なった。
【0091】
○ 重量が5%減少時の温度 250℃超
△ 重量が5%減少時の温度 200℃超〜250℃
× 重量が5%減少時の温度 200℃以下
耐光性の評価は、以下の方法で行なった。
【0092】
色素1gをエチルセルソルブ20gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコート法により色素薄膜を作成し試料とした。この試料をキセノン耐光性試験機(照射光量120,000Lux)にセットし、経時での吸光度の減少を測定した。そして、100時間経過後の吸光度の残存率によりつぎの3段階の評価を行なった。
【0093】
○ 100時間経過後の吸光度の残存率 80%以上
△ 100時間経過後の吸光度の残存率 30%〜80%未満
× 100時間経過後の吸光度の残存率 30%以下
なお、実施例および比較例における最大吸収波長の測定方法は以下に示す方法を用いて行なったものである。
【0094】
溶液中でのデータは、溶媒としてエチルセルソルブを用い、各サンプル濃度を3.75〜4.00×10-5モル/リットルの範囲に調節し、10mm測定セルで島津制作所 UV−3100紫外可視分光高度計を用いて測定した。
【0095】
薄膜でのデータは、色素1gをエチレンセルソルブ20gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコート法により色素薄膜を作成したものを試料とし、その試料を島津制作所 UV−3100紫外可視分光高度計を用いて測定した。
【0096】
実施例5〜8
溶融したポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製、パンライト1285、商品名)100重量部に表1記載のフタロシアニン化合物を表2記載の量を添加し、Tダイ押出機で厚さ3mmのシートを280℃で成形した。得られた板の可視光透過率および熱光線透過率を測定した。
【0097】
なお、得られた熱線遮蔽板の透過スペクトルおよび透過率は分光光度計(島津製作所製:UV−3100)で測定した。また、熱線遮蔽板の可視光透過率(400〜800nm)および熱光線部透過率(800〜1,000nm)の値はJIS R 3106の規格に準じて求めた。
【0098】
すなわち、可視光透過率はJIS R 3106により求めた日射透過率の400〜800nmの値を0.545で除算した値であり、熱光線透過率はJISR 3106により求めた日射透過率の800〜1,000nmの値を0.173で除算した値である。なお、太陽光線のエネルギー分布は400〜800nmの範囲が0.545、800〜1,000nmの範囲が0.173である。なお、340〜400nmの範囲は紫外領域のため除外してある。
【0099】
比較例3〜4
特開平5−345861号および特開平6−264050号に本発明者らが提案したフタロシアニン化合物を実施例5〜8と同様にして配合し、実施例5〜8と同様に操作して表2の結果を得た。
【0100】
比較例5
実施例5〜8にフタロシアニン化合物を添加しない以外は、実施例5〜8と同様に操作して表2の結果を得た。
【0101】
【表2】
Figure 0003959143
【0102】
表2の結果からわかるように、VOPc(PhNH)8 8 は可視光線透過率は良くないが、800〜1,000nmの近赤外線域の熱線はよく吸収する。一方、SnCl2 Pc(PhNH)4 12は可視光線透過率は高く透明性はあるが、800〜1,000nmの近赤外線域の熱線の吸収率が悪い。本発明の実施例1〜4の化合物は、それらのものに比較して800〜1,000nmの近赤外線域も良く吸収し、かつ可視光線の透過率も高い。
【0103】
かくして本発明では近赤外線(熱線)吸収材および遮蔽材として、本発明のフタロシアニン化合物を使う場合、フタロシアニン化合物を溶融したポリカーボネート樹脂に0.01%添加して厚さ3mmのシートを作成した。該シートの400〜800nmの可視光線透過率が45%以上であり(好ましくは50%以上)、800〜1,000nmの熱光線透過率が30%以下(好ましくは25%以下)のものを用いるのが良い。
【0104】
【発明の効果】
本発明にかかる新規なフタロシアニン化合物は、800〜1000nmの近赤外線域に吸収を有し、有機溶媒に対しての溶解性に優れており、またフタロシアニンが元来保有している耐光性にも優れているので、近赤外線(熱線)遮蔽効果を利用するものとしての電子機器用赤外線カットフィルター、写真用赤外線フィルター、自動車あるいは建材向けの熱線遮蔽剤、農業用フィルム、保護メガネ、サングラスあるいは半導体レーザーを使う光記媒体、液晶表示素子、また近赤外線(熱線)の吸収効果を利用するものとしての光学文字読み取り機等における書き込みあるいは読み取りのための近赤外線吸収色素、テレビ・ビデオなどの近赤外線を感知するセンサー、写真用・電子写真用などの近赤外線光増感剤、感熱転写、感熱紙・感熱孔版等光熱変換剤、改ざん偽造防止用バーコード用インク等の近赤外線吸収インク、さらに繊維などの蓄熱保温剤として優れた効果を発揮するものである。
【0105】
また、本発明の近赤外線(熱線)吸収材および遮蔽材は近赤外線吸収に優れ、樹脂との相溶性に優れ、耐光性、耐熱性に優れ、かつ可視域の吸収の少ないフタロシアニン化合物を含有する樹脂からなり、建物あるいは乗り物の窓、天井窓、扉、電話ボックス、アーケード、カーポート、工場の屋根あるいは天井ドーム、園芸用温室、サングラスあるいは保護メガネなどの半透明ないし透明性を有しかつ熱線を遮蔽する目的の樹脂板、シート、フィルム、繊維あるいは塗料として用いることができるし、近赤外線を吸収し熱に変えることができるので蓄熱、保温を目的として樹脂板、シート、フィルム、繊維あるいは塗料として用いることができるし、また半導体受光素子、カラー固体撮像素子、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイなどの半透明ないし透明性を有しかつ近赤外線を遮蔽する目的の樹脂板、シート、フィルム、繊維あるいは塗料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1によるフタロシアニン化合物の赤外線吸収スペクトルである。
【図2】 本発明の実施例2によるフタロシアニン化合物の赤外線吸収スペクトルである。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0003959143
    (ただし、式中、MはSnCl、Aは炭素原子数1〜8個の範囲の直鎖または分鎖状のアルコキシ基がオルソ位あるいはパラ位に少なくとも1個置換されているアニリノ基を表わす。)で示されるフタロシアニン化合物。
  2. 前記一般式(1)において、Aは下記一般式(2)
    Figure 0003959143
    (ただし、式中、RおよびRは炭素原子数1〜8個の範囲のアルキル基を表わし、nは0〜2の整数を表わし、RとRの炭素数の総和は2以上である。)である請求項1に記載のフタロシアニン化合物。
  3. 下記一般式(3)
    Figure 0003959143
    (ただし、式中、Aは置換可能な炭素原子数1〜8個の範囲の直鎖または分岐状のアルコキシ基がオルソ位あるいはパラ位に少なくとも1個置換されているアニリノ基を表わす。)で示されるフタロニトリル化合物と、ハロゲン化錫とを反応せしめることを特徴とする請求項1または2に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
  4. 下記一般式(1)
    Figure 0003959143
    (ただし、式中、MはSnCl 、Aは炭素原子数1〜8個の範囲の直鎖または分鎖状のアルコキシ基がオルソ位あるいはパラ位に少なくとも1個置換されているアニリノ基を表わす。)で示されるフタロシアニン化合物を、樹脂100重量部に対して0.0005〜20重量部含有する樹脂からなる800nm〜1000nmの近赤外線を吸収する近赤外線(熱線)吸収材および遮蔽材。
  5. 前記一般式(1)において、Aは下記一般式(2)
    Figure 0003959143
    (ただし、式中、R およびR は炭素原子数1〜8個の範囲のアルキル基を表わし、nは0〜2の整数を表わし、R とR の炭素数の総和は2以上である。)である請求項4に記載の近赤外線(熱線)吸収材および遮蔽材。
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