JP3960144B2 - ラジカル重合性組成物およびイオン伝導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一次電池、二次電池や化学センサーなどの電気化学デバイスの固体電解質として利用できるイオン伝導体、およびイオン伝導体の前駆体であるラジカル重合性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、リチウム電池などのリチウムイオン伝導性を有する固体電解質としては、例えばエチレンオキサイド鎖を有するアクリロイル基含有化合物と電解質塩であるリチウム塩を混合し、加熱や紫外線(UV)または電子線(EB)などによって架橋して得られるいわゆる高分子固体電解質(特開平5−178948号公報、特開平5−109311号公報など)などが提案されているが、実用的な伝導度は得られていない。また電解質としてのもう一つの機能である負極と正極の短絡を防止するセパレーターとしての膜強度においても(伝導性が溶液系の電解質に比較して低いためよりいっそう内部抵抗を低く抑えるために薄膜化が必要であるにもかかわらず)十分なものではない。この点を改善するために、これらの高分子電解質にアルミナ微粒子を複合させて強度改善する提案(特開平10−334731号公報など)がなされているが、依然イオン伝導性などの点で十分ではない。
【0003】
さらに近年より高密度エネルギー化が模索され、起電力が5V超級電池となる新規な正極・負極の組み合わせも検討されており、このような過酷な酸化還元雰囲気に耐えうる固体電解質が求められている。現状の高分子電解質では4V付近で分解するものが多く、高温下での長期間の耐久性や二次電池として用いた場合の充放電のサイクル耐性が低いといった欠点を有する。
特に、これらのリチウム塩を電解質塩とするイオン伝導体において、伝導種となるイオンはリチウムイオンであるカチオンのみならず、対イオンであるアニオンを移動するいわゆるバイイオン伝導体である。高分子固体電解質中ではリチウムイオンの輸率は0.5以下であり、さらに前記のようなバイイオン伝導体である場合では0.2以下であるため、急速な充放電や大電流を流す場合には分極してしまう。このため電流が流れず、実質的なバイイオン伝導体の伝導度は伝導度に輸率を乗じた値となり、1桁程度低いと見なすことができる。
【0004】
これらの問題を解決するために、シングルイオン伝導体となる材料系やアニオンをトラップして輸率を向上できる材料系などの提案(特開平10−231366号公報、特開平11−54151号公報など)があるが、十分な伝導度は得られていない。
【0005】
一方、強度や耐酸化還元性などに耐え、シングルイオン伝導体である電解質として、様々な無機固体電解質が検討され、Li2S−SiS2系ガラスをベースとする硫化物ガラス(特開平5−306117号公報)やリチウムを含有する酸化物ガラスやセラミックなど(特開平10−97811号公報)が提案されているが、材料が大気中で不安定で取り扱いが困難である、絶対的イオン伝導性が不十分である、固体電池を形成した場合に電極とのコンタクト形成方法が難しいなど課題が多く、また可とう性が高分子に比べ著しく劣るため、薄膜化して正極/負極積層体を巻き取り加工して電池缶に封入するなどの充填密度(エネルギー密度)を高める電池設計が出来ないなど用途が限定され応用が難しい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、高いイオン伝導性と高いアルカリイオン輸率、特に高いリチウムイオン輸率を有し、電気化学的にも安定で、物理的強度に優れ、硬質で強靱、薄膜状とすることができる、取り扱いが容易で生産性に優れたイオン伝導体およびその前駆体であるラジカル重合性組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題の解決のためになされたものであり、請求項1に係る第1の発明は、少なくとも下記一般式(1)
M1OR1 … (1)
(M1:アルカリ金属 R1:アルキル基)
で表されるアルカリ金属アルコキシド(A)と、
下記一般式(2)
R2xSi(OR3) 4−x … (2)
(R2:ラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基 R3:アルキル基 x:0<x<4の整数)
で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物(B)とを含むラジカル重合性組成物である。
【0008】
さらには、請求項1記載のアルカリ金属M1がリチウムであることを特徴とするラジカル重合性組成物である。
【0009】
請求項2に係る第2の発明は、請求項1に記載のラジカル重合性組成物に、下記一般式(3)
R4―O―(CH2CH2O)m―(CH2)n―Si(OR5)3 … (3)
(R4:アルキル基 R5:アルキル基 m:1<m<20の整数 n:1<n<5の整数)
で表されるエチレンオキサイドユニット含有有機ケイ素化合物(C)が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物である。
【0010】
請求項3に係る第3の発明は、請求項1または2に記載のラジカル重合性組成物に、
分子中にラジカル重合可能なエチレン結合を少なくとも1個以上を有し、さらに下記一般式(4)
―(CH2―CHR6―O)― … (4)
(R6:HまたはCH3)
で表されるエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドユニットを少なくとも1個以上含むアクリル系化合物(D)が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物である。
【0011】
請求項4に係る第4の発明は、請求項3記載のアクリル系化合物(D)の一部又は全部が、下記一般式(5)
R7―O―(CH2―CHR8―O)h―COCHR9=CH2 … (5)
(R7:アルキル基 R8:HまたはCH3 R9:HまたはCH3 h:整数)で表され、平均分子量が200以上2,000以下である単官能アクリル化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラジカル重合性組成物である。
【0012】
請求項5に係る第5の発明は、請求項1記載のラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基R2が、下記一般式(6)
CH2=CHCOO―(CH)k― … (6)
(k:1<k<5の整数)
であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のラジカル重合性組成物である。
【0013】
請求項6に係る第6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のラジカル重合性組成物に、下記一般式(7)
M2(OR10)y … (7)
(M2:Ti、Ta、Zr、V、In、Zn、Snの群から選ばれるいずれか1種の金属 R10:アルキル基 y:金属の酸化数)
で表わせる金属アルコキシド(E)が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物である。
【0014】
請求項7に係る第7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載のラジカル重合性組成物に、リチウム塩が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物である。
【0015】
請求項8に係る第8の発明は、熱または活性放射線の照射により、請求項1から7のいずれかに記載のラジカル重合性組成物を硬化させたことを特徴とするイオン伝導体である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明のイオン伝導体の前駆体となる組成物は、少なくとも下記一般式(1)
M1OR1 … (1)
(M1:アルカリ金属 R1:アルキル基)
で表されるアルカリ金属アルコキシド(A)と、
下記一般式(2)
R2xSi(OR3) 4−x … (2)
(R2:ラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基 R3:アルキル基 x:0<x<4の整数)
で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物(B)とを含むラジカル重合性組成物である。
【0018】
このラジカル重合性組成物にはさらに、下記一般式(3)
R4―O―(CH2CH2O)m―(CH2)n―Si(OR5)3 … (3)
(R4:アルキル基 R5:アルキル基 m:1<m<20の整数 n:1<n<5の整数)
で表されるエチレンオキサイドユニット含有有機ケイ素化合物(C)や、分子中にラジカル重合可能なエチレン結合を少なくとも1個以上を有し、さらに下記一般式(4)
―(CH2―CHR6―O)― … (4)
(R6:HまたはCH3)
で表されるエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドユニットを少なくとも1個以上含むアクリル系化合物(D)を含むものであってもよい。
これらの化合物を主成分としたラジカル重合性組成物を任意の形状に成形し、加熱あるいはUVなどの光照射を施すことで重合、架橋させ、アルカリ金属イオンがシロキサン骨格中に配位した有機無機ハイブリッド架橋体であるイオン伝導体を得るものである。
【0019】
本発明のイオン伝導体は、伝導種となるアルカリ金属がシロキサン骨格に配位した不飽和エチレン結合含有シロキサン骨格と該エチレン結合基が架橋重合した有機骨格が、分子レベルで複合化したアルカリ金属イオン伝導体であり、このイオン伝導体の最適な材料設計条件を見出すに至ったものである。
【0020】
本発明のラジカル重合性組成物中に含まれる各成分について以下に詳述する。本発明において用いられる、アルカリ金属アルコキシド(A)とは一般式(1)
M1OR1 … (1)
(M1:アルカリ金属 R1:アルキル基)
で表されるアルカリ金属アルコキシド(A)(以下、(A)成分とする)である。M1としてはアルカリ金属が好ましいが、中でもイオン伝導体を電池の固体電解質として用いた際にエネルギー密度の高いリチウムが好ましい。(1)式中R1で示されるアルキル基としては特にメチル基やエチル基が好ましく、(A)成分として具体的にはリチウムメトキシド、リチウムエトキシドなどが例示される。
(A)成分は固体であるため、ラジカル重合性組成物の調製の際にはメタノール等(A)成分を溶解可能な溶媒に溶解させて用いると良い。このとき、溶媒は共溶媒となるものであれば適宜選択可能である。
【0021】
有機ケイ素化合物またはその加水分解物(B)とは、下記一般式(2)
R2xSi(OR3) 4−x … (2)
(R2:ラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基 R3:アルキル基 x:0<x<4の整数)
で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物(B)(以下、(B)成分とする)である。(B)成分として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが例示される。
【0022】
なかでも(2)式中R2で表されるラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基が一般式(6)
CH2=CHCOO―(CH)k― … (6)
(k:1<k<5の整数)
で表せるアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどに代表されるアクリロイル基含ケイ素化合物であると、適当な反応性と強度を有し好適である。これらの(B)成分は1種類でも2種類以上でもラジカル重合性組成物に含ませることができる。
【0023】
本発明のラジカル重合性組成物には、下記一般式(3)
R4―O―(CH2CH2O)m―(CH2)n―Si(OR5)3 … (3)
(R4:アルキル基 R5:アルキル基 m:1<m<20の整数 n:1<n<5の整数)
で表されるエチレンオキサイドユニット含有有機ケイ素化合物(C)(以下、(C)成分とする)を含ませることができる。ラジカル重合性組成物に加える(C)成分は1種類でも2種類以上でもよい。(C)成分に含まれるエチレンオキサイド鎖がリチウムイオンの伝導性セグメントとして作用し、伝導度をよりいっそう向上させる効果がある。
【0024】
有機金属ケイ素化合物である(B)成分および(C)成分を加水分解させる方法としては、ラジカル重合性組成物中にp−トルエンスルホン酸などの有機酸触媒を含有せしめ、塗工後に大気中の水分でもって加水分解反応させるというものがある。また、前記(B)成分や(C)成分をあらかじめ水(塩酸などの触媒を含む)を添加し加水分解を行ってから用いることもできる。
【0025】
本発明のラジカル重合性組成物では、アルカリ金属アルコキシド((A)成分)と、有機ケイ素化合物((B)成分及び/又は(C)成分)が共存しているため、アルカリ金属アルコキシドの高い反応性により、溶媒や大気中に含まれる微量の水分により加水分解・重縮合による架橋反応が進行する。このため水や触媒の添加などのプロセスを簡略化することができる利点を有する。
【0026】
(B)成分および(C)成分のアルコキシ基は、加水分解脱水重縮合してSi−O−Siの3次元シロキサン架橋ポリマーを形成する。これらの架橋体は塗膜化されたのちも溶媒などの蒸発に伴いさらに重合が進行し、硬化被膜を形成し、さらに加熱することでより強固な架橋体となるものである。その際にアルカリ金属アルコキシドは、M1−O−Siとして、シロキサン結合を切断するように、ガラス骨格中にイオン結合的に配位して取り込まれていると予想される。
上述のように、本発明における加水分解反応とは、ラジカル重合性組成物の混合溶液系に水や塩酸などを添加する方法はもちろんであるが、特に水を添加しなくとも、任意の形状に成形したのちに、大気中あるいは調整された雰囲気中に含まれる水分により起こる反応も含まれる。これは加水分解反応と同時に、ある程度の重縮合反応が進行されることを意味するものである
【0027】
本発明のラジカル重合性組成物には、分子中にラジカル重合可能なエチレン結合を少なくとも1個以上を有し、さらに下記一般式(4)
―(CH2―CHR6―O)― … (4)
(R6:HまたはCH3)
で表されるエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドユニットを少なくとも1個以上含むアクリル系化合物(D)(以下、(D)成分とする)をさらに添加、あるいは(C)成分に変えて混合することもできる。(D)成分としては、例えばエチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(EO−TMPTA)、ポチエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)やメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGmA)などのモノマーあるいはプレポリマーと、これらのモノマーの変成体、および誘導体などが使用できる。
3官能以上の多官能アクリレートを用いると、架橋密度を向上させることができ、得られる重合硬化体の強度を高めることができるため好適ではあるが、イオン伝導性セグメントであるエチレンオキサイド鎖の含有量を低下させず、エチレンオキサイド鎖の自由度を妨げない程度の比率に抑制される必要があるため、概ね全体の30wt%以下が望ましい。
【0028】
(D)成分のなかでも本発明に好適なものは、前述のPEGDA、PEGmAなどの2官能以下のアクリル化合物であってその平均分子量が200〜2,000程度のものであると、(B)成分や(C)成分である有機ケイ素化合物の加水分解物と相溶性が良く、被膜形成時に相分離することなく、架橋密度の高い、均質で透明なハイブリッド被膜が形成でき好適である。
特に、イオン伝導性の観点からはPEGmAを用いると、架橋重合体であるイオン伝導体に、架橋していない自由な末端を有するエチレンオキサイド側鎖を導入することができ、イオン伝導性をより高めることができ好適である。その場合側鎖が短すぎても長すぎても伝導性が低下するため、適当な長さの側鎖を持った化合物である分子量200〜2,000のアクリル化合物を選択することで最適化たらしめるものである。
【0029】
エチレンオキサイド鎖含有アクリルバインダーと電解質塩であるリチウム塩を用いた架橋型高分子固体電解質や、エチレンオキサイド鎖を含有したポリシロキサンと電解質塩との組み合わせはすでに公知となっている。しかし本発明のイオン伝導体は、伝導するイオンの供給源として電解質塩を用いず、シロキサン骨格に配位したアルカリ金属イオンが伝導種となる、いわゆるシングルイオン伝導性の材料である。またマトリックスとなる組成は有機無機ハイブリッド組成物であり、これらが単なる有機無機の組み合わせとは異なり、マトリックスであるハイブリッド組成物中にシロキサン結合によるSi−O−Siガラス骨格の無機のネットワークとアクリロイル基などのラジカル重合によるポリマー骨格の有機のネットワークとが存在する構造のため、材料の相溶性、親和性が高く、単に有機樹脂中に無機成分が分散している状態よりも高い分散状態のハイブリッド構造が得られ、通常の添加効果よりも高い効果が得られるものである。さらにアクリル系化合物を混合した場合、有機骨格と無機骨格とが複雑に架橋したハイブリッド架橋体を形成することもできるものであり、Li2O―SiO2などのガラス系伝導体や、ポリマー中にリチウム含有イオン伝導性ガラスやセラミックが単純分散されてなるコンポジット型伝導体とは、大きく異なる構造を有するものである。
【0030】
本発明のラジカル重合性組成物には、下記一般式(7)
M2(OR10)y … (7)
(M2:Ti、Ta、Zr、V、In、Zn、Snの群から選ばれるいずれか1種の金属 R10:アルキル基 y:金属の酸化数)
で表わせる金属アルコキシド(E)(以下、(E)成分とする)を加えることができる。(7)式中のM2としては反応生成物が酸化物となり安定する金属が好ましく、特に上記の4もしくは5属であるチタン、ジルコニウム、タンタル、バナジウム等の遷移金属または典型元素としてはインジウム、亜鉛、スズ等が挙げられる。このような金属アルコキシドは、反応性に富み、固体電解質中で有機ケイ素化合物の未反応なOR残基の架橋剤として、さらに加水分解されたが脱水縮重合していない未架橋のSi―OH残基と架橋構造を形成する機能を有する。また、Si−O−M−O―架橋形成に関与しない余剰な金属アルコキシドは、単体の加水分解重合体となり、X線回折的には非結晶、あるいは微結晶ではあるが結晶質に近い安定な構造をもった酸化物超微粒子として、固体電解質中に存在することができ、イオン伝導体において問題となる電解質中に残留する水や、未反応のOH基を削減する効果を有し、サイクル劣化や長時間の使用に耐え得る安定性の高い電解質とすることができ有用である。
(E)成分として具体的にはテトラ−iso−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルジルコネートなどが例示される。
【0031】
本発明のラジカル重合性組成物に補助的に電解質塩を添加して、より高いイオン伝導性を発現させることができる。その理由としては、ガラス骨格に配位したLi(Li−O−Si)が添加したリチウム塩と相互作用があるためと思われるが、詳細は不明である。本発明のラジカル重合性組成物においては、通常の電解質塩添加の場合よりも高いイオン伝導度が得られ、さらにリチウムイオンの輸率も高い材料とすることを可能とするものである。
【0032】
本発明において補助的に添加可能な電解質塩となるリチウム塩とは、例えばLiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2などで、これまでにリチウム電池用に報告されている材料系ならば、特に限定されるものではないが、LiClO4やLiN(CF3SO2)2などが組成物を調整する際に取り扱いが容易で、本発明におけるラジカル重合性組成物の調液組成系では安定性も高く好適である。
【0033】
ラジカル重合性組成物に加えるリチウム塩の割合は、これまでに提案、報告されている電解質塩と同様に、イオン伝導体に導入される伝導性セグメントであるエチレンオキサイドユニットの酸素(mol):リチウム塩(mol)=1:40〜1:4の割合が好ましい。
【0034】
本発明のラジカル重合性組成物にはこれらのほか、アクリロイル基などのラジカル重合可能なエチレン結合を持たない有機ケイ素化合物、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)やメチルトリメトキシシランなどのいわゆるシランカプリング剤などを、伝導度や強度を低下させない範囲で適宜添加することができる。
【0035】
アクリロイル基などのラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基の重合、架橋反応には、紫外線、電子線などの活性放射線の照射や不活性雰囲気での加熱など、一般的な方法を選択することができる。硬化の際に、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどのラジカル重合開始剤、光開始剤としての、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系開始剤、アセトフェノン、2,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系開始剤など、加熱や活性放射線の照射などでラジカルを放出する公知のラジカル重合開始剤を適宜選択して添加することが可能である。
【0036】
本発明のラジカル重合性組成物によるイオン伝導体およびそれを固体電解質として用いた二次電池の作製方法は特に限定されるものではなく、上述した各成分をいくつか組み合わせて組成物に加えることができ、さらに、物性を損なわない範囲で、イオン伝導性微粒子や無機微粒子、分散剤、安定化剤、粘度調整剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0037】
ラジカル重合性組成物をイオン伝導体として薄膜に成形する際の方法としては塗布が挙げられ、塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。
固体電解質膜となるイオン伝導体の厚さは目的の設計にあわせて、液の濃度や塗工量によって適宜選択調整することができる。また薄膜以外の任意の形状にも加工することができる。
【0038】
本発明のラジカル重合性組成物を調整後、もしくは任意の形状に成形後、組成物中又は加工雰囲気中の水分により、ラジカル重合性組成物に含まれるアルコキシ基の加水分解重縮合によるシロキサン架橋が進行する。この反応は加熱により促進される。また、UVあるいはEB照射等の活性放射線を照射することにより、やはりラジカル重合性組成物に含まれるアクリロイル基などのラジカル重合可能なエチレン結合基の架橋硬化が進行する。1種類の化合物からこの2種類の架橋反応が進行することで、有機・無機のネットワークが高い分散状態のハイブリッドマトリックス架橋体が形成され、従来よりも架橋密度が高く十分な強度を有しかつイオン伝導性にも優れるイオン伝導体となるものである。
【0039】
本発明のイオン伝導体は、固体電解質として単層での使用や複合化など特に限定されるものではなく、必要に応じて他の電解質と積層することが可能で、また本発明の組成比を変えて積層することも何ら差し支えない。また正極、負極を構成する活物質とのコンポジット正極あるいは負極体を構成し、本発明のイオン伝導体を用いた固体電解質あるいは他の電解質と積層して全固体型二次電池を構成することも可能である。
これらの電解質層は各層の設計条件にあわせて適宜、材料組成を組合せることができるものであり、特に限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について具体的に説明する。
【0041】
<実施例1>
(A)成分であるリチウムメトキシドのメタノール溶液を作製し、これに(B)成分であるアクリロイルプロピルトリメトキキシシラン(CH2=CHCOO−(CH)3−Si(OCH3)3)を最終固形分質量比がLi2O換算:CH2=CHCOO(CH2)3−SiO1.5換算が43:57になるように混合し、30分間撹拌して混合溶液を調製した。得られた混合溶液を、あらかじめ電極間距離が0.5mmである櫛形Pt電極を形成したガラス基材に、ディピング法にて薄膜を作製し、室温で数分放置して大気中の水分で加水分解反応を進行させ、乾燥機で120℃、5分間加熱し、さらに高圧水銀灯により約1,000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて薄膜状のイオン伝導体である試験体を得た。調製したラジカル重合性組成物溶液には、あらかじめUV硬化光開始剤としてアセトフェノン系開始剤を重合成分に対して2%添加した。
【0042】
<実施例2>
実施例1において(B)成分であるアクリロイル基含有ケイ素化合物の約半分28wt%相当分を(C)成分であるエチレンオキサイドユニット含有トリメトキシシラン(CH3O―(CH2CH2O)8―(CH2)3−Si(OCH3)3)に変えて実施例1と同様に薄膜状の試験体を作製した。
【0043】
<実施例3>
実施例1の混合溶液にさらに(D)成分として平均分子量480のポリエチレングリコールモノアクリレート(市販品、片末端CH3基:PEGmA#480)を最終固形分質量比がLi2O換算:CH2=CH―COO(CH2)3−SiO1.5換算:PEGmAが30:40:30になるように混合した複合溶液を調製した。
φ10mm深さ1mmの凹が形成せれているテフロン(登録商標)製プレートをキャスト型として上記複合溶液を型に流し込み、室温で数分放置した後、乾燥機で120℃−5min乾燥し、高圧水銀灯により約1,000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、イオン伝導体の試験体としてφ9〜10mm、膜厚0.5〜1mmの固体電解質ディスク型ペレットを得た。調製した組成物溶液にはあらかじめUV硬化光開始剤としてアセトフェノン系開始剤を重合成分に対して2%添加した。
【0044】
<実施例4>
(D)成分としてのPEGmAを2官能型のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量700:PEGDA#700)に変更して実施例3と同様にペレット状の試験体を作製した。
【0045】
<実施例5>
実施例4で調整したラジカル重合性組成物に、リチウム塩としてLiClO4を、組成物に含まれるエチレンオキサイド鎖1ユニット(酸素1mol)に対して20mol添加し、実施例1と同様の方法で薄膜状の試験体を作製した。
【0046】
<比較例1>
リチウムメトキシドとテトラエトキシシラン用いて最終固形分質量比がLi2O:SiO2換算で43:57になるように調整し実施例1と同様にして薄膜状の試験体を作製した。
【0047】
<比較例2>
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量700:PEGDA#700)にケイ酸リチウム結晶性微粒子(2Li2O・SiO2(構造式Li4SiO4)、平均粒径5μm)を70wt%配合したラジカル重合性組成物を調製し、実施例1と同様に薄膜状の試験体を作製、無機微粒子が分散した高分子電解質を得た。
【0048】
本発明の実施例としては実施例1〜5に示す配合で得られた試験体を、比較例としては、リチウムアルコキシドとテトラエトキシシランからなるいわゆる無機型のゾルゲルガラス前駆体組成物(比較例1)およびケイ酸リチウムの結晶性微粒子と2官能アクリル化合物との単純分散による2成分系(比較例2)から得られた試験体の計7種類のイオン伝導体について評価した。
【0049】
イオン伝導体の伝導性評価は、薄膜状の試験体はあらかじめ基材に形成された櫛形電極間距離を電極間距離とするセル(電極面積は膜厚×櫛形電極の実効長さ)で、ペレット状の試験体は試験体表面をサンドペーパーで研磨し、スパッタ装置によりペレットの両面にPtスパッタ電極(100nm程度)を形成し、ペレットの厚みが電極間距離となるセルとして、100℃で5時間真空乾燥した後、インピーダンスアナライザーを用い印可電圧0.5V、周波数1Hz〜1MHzで測定を行い、Cole−coleプロットから伝導を算出する一般的な手法であるACインピーダンス法にて伝導度の測定を行った。
【0050】
表1に、実施例および比較例で作成した試験体について、127℃における伝導度σ400K(S/cm)と外観を観察した結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例・比較例中の伝導度σ400Kの算出は以下の式によった。
【0053】
【式1】
【0054】
表1に示すように、本発明のイオン伝導体はいずれも良好な伝導度を示した。エチレンオキサイド鎖を含有する系(実施例2、3)はリチウム塩が添加されていないにもかかわらず、高い伝導性を示した。リチウム塩を添加した系(実施例5)ではより高い伝導性が得られた。一方比較例1のゾルゲルガラス前駆体やLi含有結晶性微粒子分散体系では伝導性が低く実用レベルではないことがわかる。本発明の実施例ではいずれも硬質のイオン伝導体が得られた。硬質とは言ってもガラスやセラミックスのように脆性で全く可とう性がないものでなく、たわめることのできる強靱なものであった。
【0055】
<実施例6>
実施例4で調製したラジカル重合性組成物にさらに(E)成分であるテトラブトキシチタネート(Ti(OC4H9)4)を(B)成分であるアクリロイル基含有ケイ素化合物に対して10mol%置換した組成物溶液を調製して、実施例3と同様の方法でペレット状の試験体を作製した。
この試験体について室温でのイオン伝導度を測定したところ、6.0E−04S/cmであった。
また試験体の残留水分をカールフィッシャー法で分析したところ100ppm以下でポリマー型電解質と同レベルであった。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のイオン伝導体は、アルカリ金属アルコキシド(A)と無機骨格を形成するラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基を含む有機ケイ素化合物またはその加水分解物(B)を出発組成とし、シロキサン骨格中に伝導種となるアルカリ金属イオンを配位させ、UV硬化などでエチレン結合が付加重合した有機骨格を形成させることでシングルイオン伝導性の新規なハイブリッド体を形成したものである。さらにイオン伝導性セグメントであるエチレンオキサイド鎖を有するアクリル系化合物((D)成分)をイオン伝導体の前駆体であるラジカル重合性組成物に混合配合し、無機と有機ポリマー分子レベルのハイブリッド構造を呈した架橋型固体電解質を形成したものであり、高いイオン伝導性と高いアルカリイオン輸率、電気化学的特性、物理的強度特性とを兼備したイオン伝導体を提供することができる。
さらにラジカル重合性組成物に(E)成分を加えることで、ゾルゲル法を併用しているにも関わらず、得られたイオン伝導体の水分量を減らすことができる。このイオン伝導体を電池の固体電解質として使用し、二次電池を作成すれば、高い信頼性を得ることができる。
【0057】
すなわち、本発明のラジカル重合性組成物は、二次電池などの電気化学デバイスの構成材料に重要な新規な固体電解質となるイオン伝導体の前駆体として有用で、過酷な環境や取り扱いにも充分に耐えることのできる、硬質で強靱な薄膜を形成することができるものである。また本発明のラジカル重合性組成物は、光照射によっても硬化し、イオン伝導体を得ることができるため、低温での塗工が可能で取り扱いが容易である。これにより、フィルムなどへの巻き取り塗工により薄膜状の固体電解質を安価に、大量生産できるといった効果を奏し、可撓性を有し長期間使用時の信頼性に優れた二次電池を提供することができる。
Claims (8)
- 少なくとも下記一般式(1)
M1OR1 … (1)
(M1:アルカリ金属 R1:アルキル基)
で表されるアルカリ金属アルコキシド(A)と、
下記一般式(2)
R2xSi(OR3) 4−x … (2)
(R2:ラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基 R3:アルキル基 x:0<x<4の整数)
で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物(B)とを含み、
アルカリ金属M 1 がリチウムであることを特徴とするラジカル重合性組成物。 - 請求項1に記載のラジカル重合性組成物に、下記一般式(3)
R4―O―(CH2CH2O)m―(CH2)n―Si(OR5)3 … (3)
(R4:アルキル基 R5:アルキル基 m:1<m<20の整数 n:1<n<5の整数)
で表されるエチレンオキサイドユニット含有有機ケイ素化合物(C)が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物。 - 請求項1または2に記載のラジカル重合性組成物に、
分子中にラジカル重合可能なエチレン結合を少なくとも1個以上を有し、さらに下記一般式(4)
―(CH2―CHR6―O)― … (4)
(R6:HまたはCH3)
で表されるエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドユニットを少なくとも1個以上含むアクリル系化合物(D)
が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物。 - 請求項3記載のアクリル系化合物(D)の一部又は全部が、下記一般式(5)
R7―O―(CH2―CHR8―O)h―COCHR9=CH2 … (5)
(R7:アルキル基 R8:HまたはCH3 R9:HまたはCH3 h:整数)で表され、平均分子量が200以上2,000以下である単官能アクリル化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラジカル重合性組成物。 - 請求項1記載のラジカル重合可能なエチレン結合を有する官能基R2が、下記一般式(6)
CH2=CHCOO―(CH)k― … (6)
(k:1<k<5の整数)
であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のラジカル重合性組成物。 - 請求項1から5のいずれかに記載のラジカル重合性組成物に、下記一般式(7)
M2(OR10)y … (7)
(M2:Ti、Ta、Zr、V、In、Zn、Snの群から選ばれるいずれか1種の金属 R10:アルキル基 y:金属の酸化数)
で表わせる金属アルコキシド(E)が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物。 - 請求項1から6のいずれかに記載のラジカル重合性組成物に、リチウム塩が含まれることを特徴とするラジカル重合性組成物。
- 熱または活性放射線の照射により、請求項1から7のいずれかに記載のラジカル重合性組成物を硬化させたことを特徴とするイオン伝導体。
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