JP3965246B2 - 窒化珪素質焼結体及びその製造方法並びにセラミックヒータ用絶縁体材料 - Google Patents

窒化珪素質焼結体及びその製造方法並びにセラミックヒータ用絶縁体材料 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化珪素質焼結体及びその製造方法並びにセラミックヒータ用絶縁体材料に関する。更に詳しくは、本発明は、熱膨張係数が大きく、且つ優れた耐熱衝撃性を有する窒素珪素質焼結体及びその製造方法並びにセラミックヒータ用絶縁体材料に関する。本発明の窒化珪素質焼結体は、セラミックヒータ用の絶縁体材料、或いは窒化珪素よりも熱膨張率の大きい金属と組み合わせて何らかの構造部材等を構成するための窒化珪素質焼結体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
窒化珪素焼結体は、機械的特性、耐熱性及び耐食性等に優れているため、抵抗発熱体を埋設したセラミックヒータの絶縁体材料等として使用されている。この絶縁体材料に必要とされる特性は、高温における強度が大きいこと及び耐熱衝撃性が高いこと等である。また、抵抗発熱体として一般に用いられているタングステン、炭化タングステン及び珪化モリブデン等は、窒化珪素よりも熱膨張係数が大きく、加熱時或いは発熱時に絶縁体に亀裂を生ずる等の問題がある。そのため、絶縁体材料の熱膨張係数を抵抗発熱体のそれと同程度にまで大きくして、亀裂の発生等を抑える必要がある。
【0003】
絶縁体材料の熱膨張係数を大きくするために、窒化珪素より熱膨張係数が大きい金属の炭化物、窒化物及び珪化物等の粒子をマトリックスに分散させる技術が知られている(特開昭64−61356号公報等)。更に、窒化珪素と珪化モリブデンによって抵抗発熱体と絶縁体との双方を作製し、それらの粒径を制御することによって、抵抗発熱体には導電性を、絶縁体には絶縁性を付与する技術が知られている(特公平5−46674号公報等)。また、これらの従来の技術では、焼結性の低下を抑え、強度の大きい焼結体を得るため、マトリックスに分散させる熱膨張係数の大きい化合物は、粒径が1μm以下の微細な粒子の状態で用いられており、体積比で数%〜30%程度が配合されている。
【0004】
更に、窒化珪素焼結体はヤング率が低く、熱伝導性が小さく、耐熱衝撃性に優れているが、熱膨張係数の大きい化合物は、通常、窒化珪素よりヤング率が高いため、これらを配合することにより焼結体の耐熱衝撃性が低下する。この耐熱衝撃性の低下を抑えるため、従来より、特に、高温における焼結体の強度を大きくすることを目的として、窒化珪素原料或いは焼結助剤の組成及び粒径等の検討がなされている。しかし、優れた耐熱衝撃性を維持しつつ、熱膨張係数の大きい窒化珪素焼結体を得ることは未だ容易ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、焼結体の熱膨張係数を大きくする化合物として炭化珪素を使用し、特に、この炭化珪素の平均粒径を特定することにより、熱膨張係数が大きく、且つ優れた耐熱衝撃性がそのまま維持される窒化珪素質焼結体を提供することを目的とする。また、本発明は、特定の平均粒径を有する炭化珪素粉末等の原料粉末を、特定の温度及び圧力において、特定の時間焼成することにより、上記の優れた性能の窒化珪素質焼結体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
熱膨張係数を大きくする化合物として、従来、焼結性及び強度の低下を抑えるため、微細な粒子からなるものを多量に配合し、分散させていた。しかし、この微粒子は焼結体の粒界に連続して存在することが多く、加熱或いは発熱の後、急冷させた場合に、焼結体の粒界において大きな収縮を生じ、これが起点となってマクロクラックが発生する傾向にあった。一方、本発明では、熱膨張係数を大きくする化合物として、従来に比べて粒径の大きい炭化珪素を使用している。このように粒径の大きい炭化珪素は、粒界において点在し、不連続であるため、加熱、発熱後の急冷による収縮は局所的であり、これがクラック発生の起点になることが抑えられる。尚、熱膨張係数を大きくする化合物として配合する炭化珪素は、高温で安定であり、その粒径等が焼成によってほとんど変化しないため、この目的において好適である。
【0007】
第1発明は、窒化珪素粉末、希土類元素化合物粉末、クロム化合物粉末及び平均粒径3〜10μmの炭化珪素粉末を混合し、1700〜1800℃の温度、20MPa以上の圧力で、15〜60分間加熱し、加圧する窒化珪素質焼結体の製造方法において、上記希土類元素化合物及び上記クロム化合物の組み合わせは、Er とCrSi との組み合わせ、Y とCr との組み合わせ、又はYb とCr との組み合わせであり、上記希土類元素化合物粉末の配合量は、上記窒化珪素粉末、上記希土類元素化合物粉末及び上記クロム化合物粉末の合計量を100重量部とした場合に、8〜9重量部であり、上記クロム化合物粉末の配合量は、上記窒化珪素粉末、上記希土類元素化合物粉末及び上記クロム化合物粉末の合計量を100重量部とした場合に、1〜4重量部であり、上記炭化珪素粉末の配合量は、上記窒化珪素粉末、上記希土類元素化合物粉末及び上記クロム化合物粉末の合計100重量部に対して、5〜8重量部であることを特徴とする。
【0008】
また、焼結体の「熱膨張係数」を「3.5×10−6/K以上」とすることにより、セラミックヒータの絶縁体材料として用いた場合に、タングステン等の抵抗発熱体との熱膨張の差による亀裂等の発生が抑えられる。抵抗発熱体の熱膨張係数が、通常、(4.0〜4.5)×10−6/K程度であることを考慮すると、この熱膨張係数は、特に(3.5〜4.0)×10−6/K、更には(3.8〜4.0)×10−6/Kとすることが好ましい。この範囲の熱膨張係数とすることによって、亀裂等の発生をより確実に抑えることができる。この熱膨張係数は、熱膨張の大きい希土類元素化合物、クロム化合物及び炭化珪素の配合量等によって容易に調整することができる。
【0009】
第1発明において、上記希土類元素化合物及び上記クロム化合物の組み合わせは、上述のように、ErとCrSiとの組み合わせ、YとCrとの組み合わせ、又はYbとCr との組み合わせである。
【0010】
上記「炭化珪素」は、その結晶構造がα型であっても、β型であってもよいが、安価であるためα型のものがより好ましい。炭化珪素の平均粒径が3μm未満では、この炭化珪素が、窒化珪素粒子の粒界に連続的に存在し易く、これがクラック発生の起点となり、耐熱衝撃性が低下する。更に、焼成過程における窒化珪素粒子の針状化が抑制され、破壊靭性も低下する。一方、炭化珪素の平均粒径が10μmを越える場合は、耐熱衝撃性が低下するとともに、焼結性が低下し、緻密化が損なわれる。この炭化珪素の平均粒径は画像処理装置によって測定することができる。
【0011】
炭化珪素を除いた窒化珪素質焼結体を100重量部とした場合に、炭化珪素の含有量は、5〜20重量部とすることが好ましい。この炭化珪素の含有量が5重量部未満では、焼結体の熱膨張係数を十分に大きくすることができず好ましくない。一方、炭化珪素の含有量が20重量部を越える場合は、炭化珪素の粒子をクラックの起点にならない程度に粒界に点在させることは容易ではなく、その平均粒径を10μmを越えて大きくする必要があり、その場合は焼結性の低下を招くため好ましくない。また、炭化珪素の含有量を10重量部未満とした場合は、より破壊靭性に優れた焼結体が得られ、10重量部を越える場合はより熱膨張係数の大きい焼結体を得ることができる。このように、炭化珪素の含有量によって焼結体の熱膨張係数と破壊靭性とを所望のレベルに調整することもできる。
【0012】
第2発明は、第1発明記載の窒化珪素質焼結体の製造方法により得られることを特徴とする窒化珪素質焼結体である。
第3発明は、第1発明記載の窒化珪素質焼結体の製造方法により得られる窒化珪素質焼結体からなることを特徴とするセラミックヒータ用絶縁体材料である。
【0013】
焼成温度が1700℃未満では、焼結性が低下し、十分に緻密化することができない。この温度が1800℃を越える場合は、焼成過程においてCr化合物が凝集し、強度が小さくなり、耐熱衝撃性が低下する。また、圧力が20MPa未満では、焼結性が低下し、緻密な焼結体を得ることができず、耐熱衝撃性も低下する。この圧力を50MPa及び通常は20〜40MPaにすれば十分に緻密化することができる。更に、焼成時間が15分未満では、十分に緻密化することができず、60分を越えて長時間である場合は、Cr化合物が凝集し、強度が小さくなり、耐熱衝撃性が低下する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。
[1]原料粉末組成と物性との相関
実験例1〜14
平均粒径0.7μm、α率97%のSi粉末と、平均粒径1.0〜3.0μmのY、Er又はYb粉末と、平均粒径1.0〜3.0μmのCr、CrN、Cr又はCrSi粉末と、平均粒径0.1〜16.0μmで結晶構造がα型又はβ型の炭化珪素粉末とを、表1に示す量比で混合した。但し、炭化珪素粉末の量比は、窒化珪素粉末、希土類元素化合物粉末及びCr化合物粉末の合計量を100重量部とした場合の数値である。
【0015】
この混合粉末を、窒化珪素製のボールミルに投入し、エタノールを加えて16時間湿式混合した。その後、湯煎乾燥し、得られた粉末を温度1800℃、圧力25MPaで、30分間ホットプレスして焼成し、35×35×5mmの形状の焼結体を得た。
【0016】
【表1】
Figure 0003965246
【0017】
上記のようにして得られた焼結体の相対密度、熱膨張係数、熱衝撃抵抗温度及び破壊靭性値(KIC)を測定した。結果を表2に示す。尚、これらの物性値の測定方法は以下のとおりである。また、必要に応じて上記の焼結体を切削加工して試験片とした。
(1)相対密度;アルキメデス法により密度を測定し、混合則により算出した理論密度によって除して算出した。
(2)熱衝撃抵抗温度(耐熱衝撃性);φ3.5×30mmの試験片を水中急冷法によって処理し、蛍光探傷試験によりクラックが発生する温度を測定した。尚、表2において「クラック発生せず」とは、用いた装置の測定可能な最高温度である900℃においてもクラックが発生せず、900℃を越える高い熱衝撃抵抗温度を有する耐熱衝撃性に優れた焼結体であることを意味する。
【0018】
(3)熱膨張係数;窒素雰囲気下、15(長さ)×4(幅)×3(厚さ)mmの試験片を30℃から1350℃にまで昇温させ、前記の式によって求められる熱膨張係数を算出した。
(4)破壊靭性値;JIS R 1607に従って測定した。
【0019】
【表2】
Figure 0003965246
【0020】
表2の結果によれば、実験例1〜9では、相対密度は98%以上であり、十分に緻密化されている。また、優れた耐熱衝撃性と大きな熱膨張係数とを併せ有する焼結体が得られていることが分かる。一方、炭化珪素の平均粒径が第1発明の下限値未満である実験例10及び下限値を大きく下回る実験例14では、耐熱衝撃性が大きく低下し、実験例14では、破壊靭性も相当に劣っている。また、この平均粒径が第1発明の上限値を越える実験例11でも、耐熱衝撃性が低下するとともに緻密化も十分ではないことが分かる。更に、炭化珪素の含有量が第1発明の下限値未満である実験例12では、熱膨張係数が十分に向上せず、この含有量が第1発明の上限値を越える実験例13では、緻密化が十分ではなく、耐熱衝撃性も低下する傾向にある。
【0021】
[2]炭化珪素の平均粒径と焼結体の微細構造との相関
実験例5(炭化珪素の平均粒径;4.7μm)と、従来のように炭化珪素の微粒子を含有する実験例14(炭化珪素の平均粒径;0.1μm)の焼結体について、組織の微細構造を走査型電子顕微鏡によって観察し、写真撮影をした。図1は実験例5の焼結体の写真であり、図2は実験例14の焼結体の写真である。
【0022】
図1では、従来に比べて粒径の大きい炭化珪素が含有されているため、この炭化珪素の粒子が窒化珪素粒子の粒界に点在し、また、窒化珪素粒子は針状の粗大粒子となっていることが分かる。このような構造であるため、加熱、発熱後に急冷された場合に、炭化珪素粒子の収縮が局所的となり、マクロクラックの発生が抑えられ、耐熱衝撃性が向上する。一方、図2では、炭化珪素粒子が微細であるため、この炭化珪素粒子が窒化珪素粒子の粒界に連続して存在しており、窒化珪素粒子の針状化が抑制されている。このような構造であるため、加熱、発熱後に急冷された場合に、炭化珪素粒子により構成される部分の収縮が大きくなり、これが破壊の起点となってマクロクラックが発生し、耐熱衝撃性が低下する。
【0023】
[3]焼成の温度、圧力及び時間と、得られる焼結体の物性との相関
実験例15〜2
平均粒径0.7μm、α率97%のSi粉末、平均粒径1.2μmのYb粉末、及び平均粒径1.5μmのCr粉末を使用し、これらの粉末の全量を100重量部とした場合に、Siが85重量部、Ybが14重量部、Crが1重量部となるように配合し、これにさらに平均粒径4.7μmのSiC粉末を10重量部配合した。
【0024】
この混合粉末を、窒化珪素製のボールミルに投入し、エタノールを加えて16時間湿式混合した。その後、湯煎乾燥し、得られた混合粉末を内容積35×35×5mmのカーボン型に収容し、表3の条件によってホットプレスし、焼成した。
【0025】
【表3】
Figure 0003965246
【0026】
得られた焼結体の相対密度、曲げ強さ、熱膨張係数及び熱衝撃抵抗温度を測定した。結果を表4に示す。相対密度、熱膨張係数及び熱衝撃抵抗温度の測定方法は前記のとおりである。また、曲げ強さは以下のようにして測定した。
(5)曲げ強さ(室温において測定した3点曲げ強さ);焼結体を切削して試験片を作製し、JlS R 1601に従って3点曲げ強度を測定した。尚、試験片の上下面の粗さをJlS B 0601に規定された0.8S以下としたものを使用して測定した。
【0027】
【表4】
Figure 0003965246
【0028】
表4の結果によれば、実験例15〜17では、相対密度は99%以上であり、十分に緻密化されている。また、優れた耐熱衝撃性と大きい熱膨張係数とを併せ有する焼結体が得られていることが分かる。一方、時間が上限値を大きく越えている実験例18では、緻密化は十分であるものの、耐熱衝撃性及び曲げ強さはより低下していることが分かる。更に、温度が下限値未満である実験例19では、緻密性が低下し、耐熱衝撃性及び曲げ強さも大きく低下する。また、温度が上限値を越えている実験例20では、緻密化は十分であるものの、耐熱衝撃性及び曲げ強さはさらに大きく低下していることが分かる。
【0029】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、希土類元素化合物、Cr化合物の他にも、焼結体の熱膨張係数を大きくする作用を有する化合物を、炭化珪素と組み合わせて、焼結体の緻密化等が損なわれない範囲の量比で配合し、含有させることができる。
【0030】
【発明の効果】
第1発明によれば、熱膨張係数を大きくするための化合物として炭化珪素等を使用し、この炭化珪素の平均粒径を特定することにより、十分に緻密化され、特に、熱膨張係数が大きく、且つ優れた耐熱衝撃性をも有する窒化珪素質焼結体を得ることができる。この窒化珪素質焼結体は、抵抗発熱体を埋設したセラミックヒータ等の絶縁体材料として有用であり、抵抗発熱体との熱膨張係数の差による亀裂の発生等が十分に抑えられる。
【0031】
また、第発明によれば、平均粒径が比較的大きい炭化珪素粉末を用い、焼成の温度、圧力及び時間を特定することにより、優れた特性を有する窒化珪素質焼結体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実験例5の窒化珪素質焼結体の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】 実験例14の窒化珪素質焼結体の表面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (3)

  1. 窒化珪素粉末、希土類元素化合物粉末、クロム化合物粉末及び平均粒径3〜10μmの炭化珪素粉末を混合し、1700〜1800℃の温度、20MPa以上の圧力で、15〜60分間加熱し、加圧する窒化珪素質焼結体の製造方法において、
    上記希土類元素化合物及び上記クロム化合物の組み合わせは、ErとCrSiとの組み合わせ、YとCrとの組み合わせ、又はYbとCr との組み合わせであり、
    上記希土類元素化合物粉末の配合量は、上記窒化珪素粉末、上記希土類元素化合物粉末及び上記クロム化合物粉末の合計量を100重量部とした場合に、8〜重量部であり、
    上記クロム化合物粉末の配合量は、上記窒化珪素粉末、上記希土類元素化合物粉末及び上記クロム化合物粉末の合計量を100重量部とした場合に、1〜4重量部であり、
    上記炭化珪素粉末の配合量は、上記窒化珪素粉末、上記希土類元素化合物粉末及び上記クロム化合物粉末の合計100重量部に対して、5〜8重量部であることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製造方法。
  2. 請求項1記載の窒化珪素質焼結体の製造方法により得られることを特徴とする窒化珪素質焼結体。
  3. 請求項1記載の窒化珪素質焼結体の製造方法により得られる窒化珪素質焼結体からなることを特徴とするセラミックヒータ用絶縁体材料。
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