JP3965723B2 - アイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置 - Google Patents

アイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジン回転数を制御するアイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平7−77093号公報に示されるように、アイドルスピードコントロールシステムの状態を診断する診断方法および同装置において、エンジン回転数が本来制御されるべき回転範囲内に一旦入った後も、即座にシステムが正常であると判定することなく、所定時間の経過後にシステムが異常になることを考慮した故障診断を行うように構成し、オンボードでシステム故障診断情報を収集するような場合でも、信頼性の高い情報が得られるようにしたものが知られている。
【0003】
すなわち、アイドルスピードコントロールシステムのフィードバック制御モードに入った時点からの経過時間を計測する第1のタイマ手段と、エンジン回転数が所要の回転数範囲内に入ったか否かを検出する回転数検出手段と、エンジン回転数が上記回転数範囲内に入った時点からの経過時間を計測する第2のタイマ手段とを設け、上記第1のタイマ手段での計測時間が所定時間以内であり、エンジン回転数が回転数範囲内に入った状態が他の設定時間に達するまで継続されたことが正常判定手段において確認された場合に、上記アイドルスピードコントロールシステムが正常であると判定することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の故障診断方法によれば、アイドルスピードコントロール系(アイドルスピードコントロールシステム)に異常があるにも拘らず、エンジン回転数が本来制御されるべき回転数範囲内に一時的に入った場合に、即座に正常であると判別される誤判別を防止できるが、アイドルスピードコントロール系の異常を判別するための回転数範囲が一定に設定されているため、アイドルスピードコントロール系が正常であるにも拘らず、何らかの原因で一時的にエンジン回転数が変動して上記回転数範囲内を逸脱した場合に、アイドルスピードコントロール系に異常があると誤判定されることが避けられないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、アイドルスピードコントロール系の異常判別を常に適正に行うことができるアイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定し、ベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、エンジン始動時に上記故障の判定を禁止する判定禁止手段による判別禁止時間を通常時よりも長くした後、上記アイドルスピードコントロール系の異常判別を行うものである。
【0009】
上記構成によれば、エンジンの始動時に、燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かが判別され、発生し易い状態にあることが確認された場合には、エンジン始動時に上記故障の判定を禁止する判定禁止手段による判別禁止時間が通常時よりも長くなるように補正された後、上記アイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが判別されることになる。
【0010】
請求項に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上であるか否かを判定し、上記走行距離が所定値以上であることが確認された場合に、走行距離が所定値未満である場合よりも上記判別基準領域を拡大する補正を行うことにより、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に判別条件を変更した後、上記アイドルスピードコントロール系の異常判別を行うものである。
【0011】
上記構成によれば、エンジンのアイドル運転時に、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上であるか否かが判定され、上記走行距離が所定値以上であることが確認された場合には、所定値未満の場合に比べてアイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に判別条件が変更された後、この判別条件下においてアイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが判別されることになる。
【0012】
請求項に係る発明は、エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、エンジンのアイドル運転時に、外部負荷が作用しているか否かを判定し、外部負荷が作用していることが確認された場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止するようにしたものである。
【0013】
上記構成によれば、エンジンのアイドル運転時に、外部負荷が作用することによってエンジン回転数が低下する可能性が高いことが確認された場合には、アイドルスピードコントロール系の異常判別が禁止され、外部負荷が作用していない状態でアイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが判別されることになる。
【0014】
請求項に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、エンジンのアイドル運転時に、大気圧が予め設定された基準値よりも低いか否かを判定し、この基準値よりも大気圧が低いことが確認され場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止するようにしたものである。
【0015】
上記構成によれば、高地等の走行時において大気圧が低いためにエンジン回転数が変化し易い状態にあることが確認された場合には、アイドルスピードコントロール系の異常判別が禁止され、大気圧が通常の範囲内にある場合に上記アイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが判別されることになる。
【0018】
請求項に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、エンジン始動時に異常判別手段によるアイドルスピードコントロール系の異常判別を所定時間に亘って禁止する判別禁止手段と、燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、この状態判別手段によって燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、上記判別禁止手段によって設定された判別禁止時間を通常時よりも長くするように判別条件を変更する判別条件変更手段とを備えものである。
【0019】
上記構成によれば、エンジンの始動時に、状態判定手段において燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合には、上記異常判別手段によるアイドルスピードコントロール系の異常判別が、通常時に比べて長時間に亘って禁止され、上記ベーパに起因した回転数変動が収まった後に、上記異常判別の禁止状態が解除されてアイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが異常判別手段により判別されることになる。
【0020】
請求項に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上であるか否かを判定する状態判定手段と、この状態判定手段によって上記走行距離が所定値以上であることが確認された場合に、自動車の走行距離が所定値未満である場合よりも上記判別基準領域を拡大する補正を行うことにより、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に補正する判別基準補正手段からなる判別条件変更手段とを設けたものである。
【0021】
上記構成によれば、エンジンのアイドル運転時に、状態判定手段において自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上であることが確認された場合には、上記アイドルスピードコントロール系に異常があるか否かを判別するための判別基準が、上記走行距離が所定値未満の場合に比べてアイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に補正された後、この補正後の判別基準に基づいてアイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが判別されることになる。
【0022】
請求項に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、エンジンのアイドル運転時に、外部負荷が作用しているか否かを判定する外部負荷判定手段と、この外部負荷判定手段によって外部負荷が作用していることが確認された場合に、異常判別手段によるアイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止する判別禁止手段とを設けたものである。
【0023】
上記構成によれば、エンジンのアイドル運転時に、外部負荷判定手段において外部負荷が作用しているか否かが判定され、外部負荷が作用することによってエンジン回転数が変動する可能性が高いことが確認された場合には、異常判別手段によるアイドルスピードコントロール系の異常判別が判別禁止手段によって禁止され、外部負荷が作用していない状態で上記アイドルスピードコントロール系の異常判別が行われることになる。
また、請求項8に係る発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、エンジンのアイドル運転時に、大気圧が予め設定された基準値よりも低いか否かを判定し、この基準値よりも大気圧が低いことが確認され場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止する判定禁止手段を設けたものである。
上記構成によれば、エンジンのアイドル運転時に、高地等の走行時において大気圧が低いためにエンジン回転数が変化し易い状態にあることが確認された場合には、アイドルスピードコントロール系の異常判別が禁止され、大気圧が通常の範囲内にある場合に上記アイドルスピードコントロール系に異常があるか否かが判別されることになる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係るアイドルスピードコントロール系の異常判別装置を備えたエンジンの概略構成を示している。このエンジンは、エンジン本体1と、吸気通路2と、排気通路3とを有している。上記吸気通路2には、その上流側から順に、エアクリーナ4と、エアフローメータ5と、スロットル弁6と、サージタンク7と、燃料噴射弁8とが設けられている。
【0025】
また、上記吸気通路2には、スロットル弁6の設置部をバイパスするバイパス通路9が設けられるとともに、このバイパス通路9にはアイドル制御弁10が設置されている。そして、上記スロットル弁6が閉止状態となったエンジンのアイドル運転時に、エンジンコントロールユニット(ECU)11から出力される制御信号に応じて上記アイドル制御弁10が開閉駆動されることにより、上記バイパス通路9を介してエンジン本体1の燃焼室12に導入される吸気量が調節され、エンジン回転数を所定のアイドル目標回転数に一致させるアイドル制御が実行されるようになっている。
【0026】
上記エンジンコントロールユニット11には、図2に示すように、スロットル弁6の設置部に設けられたアイドルスイッチ13の検出信号と、車速を検出する車速センサ14の検出信号と、エンジン回転数を検出する回転数センサ15の検出信号とに基づいてエンジンがアイドル運転状態にあるか否かを判定するアイドル判定手段16が設けられている。このアイドル判定手段16は、アイドルスイッチ13がON状態にあることが確認されるとともに、車速が0であることが確認され、かつエンジンが作動状態にあることが確認された場合に、下記のアイドル制御を実行するように構成されている。
【0027】
すなわち、図3に示すように、上記各センサから出力される検出信号等に基づいてエンジンの運転状態を検出するとともに(ステップS21)、エンジンがアイドル運転状態にあるか否かを判定し(ステップS22)、YESと判定された時点で、アイドル制御弁10の基本制御量Vを読出す(ステップS23)。
【0028】
次に、図4に示すように、アイドル制御時におけるエンジンの実回転数の検出値と目標回転数との偏差Dと、アイドル制御弁10のフィードバック制御量Fnとの対応関係を示すグラフに基づき、エンジンの実回転数を目標回転数に一致させるためのフィードバック制御量Fnを算出するとともに(ステップS24)、このフィードバック制御量Fnと、それ以前の制御時におけるフィードバック制御量Fn-1〜F1とを、重み付けして移動平均化することにより、上記アイドル制御弁10の制御量の学習値Nを算出する(ステップS25)。
【0029】
例えば、今回のフィードバック制御量Fnに所定の重み付け係数a1を掛けた値と、前回のフィードバック制御量Fn-1に所定の重み付け係数a2を掛けた値と、所定回数前のフィードバック制御量F1に所定の重み付け係数anを掛けた値とを加算した後、この加算値を上記重み付け係数の総和(a1+a2+…+an)で割算して平均化することにより、上記学習値Nを算出する。
【0030】
次いで、上記ステップS23〜S25で求めた基本制御量Vとフィードバック制御量Fnと学習値Nとを加算することにより、アイドル制御弁10の最終制御量FVを求めてこの最終制御量FVに対応した制御信号をアイドルスピードコントロール系に出力する(ステップS26)。その後、上記ステップS24で求めたフィードバック制御量Fnを前回のフィードバック制御量Fn-1とする書替えを行い(ステップS27)、リターンする。
【0031】
また、上記エンジンコントロールユニット11には、エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差Dに基づいて、アイドル制御弁10およびその制御部等からなるアイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段17と、エンジンの作動状態等を判定する状態判定手段18と、上記異常判別手段17によって異常判別を行うための判別基準を補正する判別基準補正手段19と、上記異常判別手段17によるアイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止する判別禁止手段20と、パワーステアリング装置等の外部負荷が作用しているか否かを判定する外部負荷判定手段21とが設けられている。
【0032】
上記異常判別手段17は、アイドル判定手段16によってエンジンがアイドル運転状態にあることが確認された場合に、上記回転数センサ15によって検出されたエンジンの実回転数と、エンジンの冷却水温度等に応じて700rpm程度の値に設定されたアイドル目標回転数との偏差Dを算出するとともに、この偏差Dが所定の判別基準領域内にあるか否かを判定し、上記偏差Dが判別基準領域外となった状態が所定時間に亘って継続した場合に、上記アイドルスピードコントロール系に異常が発生したと判断し、この異常が発生したことを表示させる指令信号を表示手段24に出力するように構成されている。
【0033】
上記状態判定手段18は、エンジンの冷却水の温度を検出する水温センサ22の検出信号および吸気通路2内の吸気温度を検出する吸気温センサ23の検出信号に応じ、燃料噴射弁8および燃料供給通路(図示せず)内の燃料に気泡が生成されるベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定するように構成されている。また、上記状態判定手段18は、自動車の製造直後からの走行距離が所定値未満のいわゆるグリーン状態にあるか、または上記走行距離が所定値以上のいわゆるラップ状態にあるかを、上記アイドル制御の実行時に算出された上記学習値Nに基づいて判定するように構成されている。
【0034】
すなわち、アイドルスピードコントロール系によるエンジンのアイドル制御は、上記のようにアイドル制御弁10の開度を制御するための基本制御量Vに、エンジンの実回転数の検出値と目標回転数との偏差Dに対応したフィードバック制御量Fnと、このフィードバック制御量Fnを重み付けして移動平均化することにより算出した学習値Nとを加算することにより求めた最終制御量FVに基づいて実行される。そして、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上となってグリーン状態からラップに移行すると、エンジンの出力軸の軸受抵抗が減少する等の諸条件が変化することにより、エンジン回転数が上昇し易い傾向があるので、このエンジン回転数を一定に維持するため、上記アイドル制御弁10の制御量の学習値Nがマイナス方向、つまり上記バイパス通路9を通過する吸気量を減少させる方向に設定される傾向がある。
【0035】
したがって、上記アイドル制御弁10の制御量の学習値Nが、予め設定された基準値を越えてマイナス状態となったか否かを上記状態判定手段18において判定することにより、自動車が製造直後のいわゆるグリーン状態から、走行距離が所定値以上となったラップ状態に移行したか否かを判別することができる。なお、自動車の走行距離を記憶する記憶手段の出力信号に応じて自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上である否かを判定するように構成してもよい。
【0036】
上記判別基準補正手段19は、状態判定手段18において自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上となったラップ状態に移行したことが確認された場合に、上記走行距離が所定値未満であるグリーン状態よりも、アイドルスピードコントロール系の異常が判別されにくい方向に判別基準を補正して、判別条件を変更する条件変更手段を構成している。すなわち、自動車がラップ状態となったことが確認された場合には、上記判別基準領域の上限値を増大させるように異常判別用の判別基準領域を補正して判別条件を変更することにより、上記エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が多少大きくなっても、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくいようにしている。
【0037】
上記判別禁止手段20は、エンジンのスタータモータを作動させるイグニッションスイッチ25から出力されスタート信号の出力時点、つまりエンジンの始動時点から所定時間に亘り、上記異常判別手段17による異常判別を禁止する機能に加え、上記外部負荷判定手段21において外部負荷が作動状態にあることが確認された場合に、上記異常判別手段17による異常判別を禁止するように判別条件を変更する機能を有している。
【0038】
また、上記判別禁止手段20は、状態判定手段18において燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、エンジンの始動時に異常判別を禁止する判別禁止時間を通常時よりも長くすることにより、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に判別条件を変更する判別条件変更手段としての機能も有している。すなわち、上記水温センサ22および吸気温センサ23の検出信号に応じ、エンジンの冷却水温度および吸気温度が高く、燃料噴射弁8内および図示を省略した燃料供給通路内の燃料に気泡が生成されるベーパが発生し易い状態にあることが上記状態判定手段18において確認された場合には、上記判別禁止手段20により、通常時に始動時点から5秒程度に設定された上記判別禁止時間が、120秒程度に変更されるようになっている。
【0039】
上記外部負荷判定手段21は、例えば図外のパワーステアリング装置を制御するパワーステアリング制御部26から出力される制御信号に応じて外部負荷が作用しているか否かを判定し、外部負荷が作用していることが確認された場合に、上記異常判別手段17によるアイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止する禁止信号を上記判別禁止手段20を介して異常判別手段17に出力することにより、判別条件を変更するように構成されている。
【0040】
上記構成の異常判別装置によって実行される制御動作を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、アイドル判定手段16においてエンジンがアイドル運転状態にあるか否かを判定し(ステップS1)、YESと判定された場合には、上記外部負荷判定手段21においてパワーステアリング装置等の外部負荷が作動状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。
【0041】
上記ステップS1でNOと判定されてエンジンがアイドル運転状態にないことが確認され、あるいは上記ステップS2でYESと判定されて外部負荷が作動状態にあることが確認された場合には、アイドルスピードコントロール系の異常判別を行うべき状態にないため、異常判別用カウンタciscfに初期値をセットした後(ステップS3)、上記異常判別を実行することなくリターンする。
【0042】
また、上記ステップS2でNOと判定され、外部負荷が作用していないことが確認された場合には、上記状態判定手段18において、エンジンの冷却水温度が所定値以上で、かつ吸気温度が所定値以上であるか否かを判定することにより、燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4でNOと判定された場合には、上記判別禁止手段20において設定される判別禁止時間、つまりエンジンの始動時点から制御状態が安定するまで上記異常判別手段17による異常判別を禁止する時間Tを、通常の時間、例えば5秒に設定する(ステップS5)。
【0043】
上記ステップS4でYESと判定され、燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合には、上記判別禁止時間Tを通常時よりも長い時間、例えば120秒に設定した後(ステップS6)、この判別禁止時間Tが経過したか否かを判定する(ステップS7)。そして、このステップS7でYESと判定されて上記判別禁止時間Tが経過したことが確認されるまで、上記制御動作を繰り返し、上記ステップS7でYESと判定されて判別禁止時間Tが経過したことが確認された時点で、上記状態判定手段18において、アイドル制御弁10の制御量の学習値Nが予めマイナス方向に設定された基準値を越えてマイナス状態となったか否かを判別することにより、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上となったラップ状態に移行したか否かを判定する(ステップS8)。
【0044】
上記ステップS8でNOと判定され、上記走行距離が所定値未満のグリーン状態にあることが確認された場合、つまりアイドルスピードコントロール系の制御状態が製造段階で適正に調節された自動車の出荷後の状態にあり、正確にエンジン回転数を目標回転数に一致させることが可能であることが確認された場合には、上記判別基準補正手段19による判別基準の補正を行うことなく、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差Dが、グリーン時の判別基準領域(200〜−100rpm)内にあるか否かを判定する(ステップS9)。そして、このステップS9でYESと判定されて、上記偏差Dがグリーン時の判別基準領域内にあることが確認された場合には、アイドルスピードコントロール系が正常に作動していると判断して上記ステップS3に移行する。
【0045】
これに対して上記ステップS8でYESと判定され、自動車の製造直後からの走行距離が所定距離以上となってラップ状態に移行し、出力軸の軸受抵抗が減少する等の諸条件が変化することによってエンジン回転数が上昇する可能性が高い状態にあることが確認された場合には、上記判別基準補正手段19において補正された判別基準に基づいてアイドルスピードコントロール系の異常判別を行う(ステップS10)。すなわち、上記ステップS10において、判別基準領域の上限値が大きな値に補正された領域(400〜−100rpm)内に、上記エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差Dがあるか否かを判定し、YESと判定された場合には、アイドルスピードコントロール系が正常に作動していると判断して上記ステップS3に移行する。
【0046】
また、上記ステップS9またはステップS10でNOと判定され、上記偏差Dが判別基準領域外にあることが確認された場合には、上記異常判別用カウンタciscfのカウント値をデクリメントした後(ステップS11)、このカウント値が0となったか否かを判定し(ステップS12)、このステップS12でNOと判定された場合には、そのままリターンする。
【0047】
上記ステップS12でYESと判定され、異常判別用カウンタciscfのカウント値が0となり、上記偏差Dが判別基準領域外となった状態が所定時間に亘って継続したことが確認された場合には、アイドルスピードコントロール系に何らかの異常があるために、上記のような状態が発生したと判断して上記アイドルスピードコントロール系に異常があることを表示する指令信号を表示手段24に出力するとともに、上記異常データを記憶した後に制御動作を終了する(ステップS13,S14)。
【0048】
このように自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差に基づいてアイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法およびその装置において、エンジン回転数が変化し易い状態にあるか否かを判定し、エンジン回転数が変化し易い状態にあることが確認された場合に、エンジン回転数が変化しにくい状態にある場合に比べて、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に判別条件を変更した後、この変更後の判別条件下でアイドルスピードコントロール系の異常判別を実行するように構成したため、このアイドルスピードコントロール系の異常を容易かつ正確に判別することができる。
【0049】
また、上記のようにエンジンの始動時に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を所定時間に亘って禁止するように構成されたアイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置において、上記状態判定手段18において燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定し、燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、上記エンジン始動時の判別禁止時間を通常時よりも長くするように構成した場合には、燃料噴射弁8内等の燃料に気泡が生成されるベーパが発生して燃料噴射量が減少することに起因した誤判別を確実に防止することができる。
【0050】
すなわち、エンジンの冷却水温および吸気温度が高く、燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合には、エンジンの始動時点から所定時間が経過して燃料に気泡が生成されるベーパの発生に起因した回転数変動が収まるまで、上記エンジン始動時の判別禁止時間を通常時に比べて長くするように判別条件を変更することにより、上記ベーパに起因してエンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が大きくなった状態で、アイドルスピードコントロール系の異常判別が行われるのを禁止することができる。しかも、上記判別禁止時間が経過してベーパに起因した回転数変動が収まった時点で、上記判別禁止手段20による判別禁止状態を解除することにより、アイドルスピードコントロール系の異常判別を適正に実行することができる。
【0051】
したがって、上記アイドルスピードコントロール系が正常であるにも拘らず、アイドルスピードコントロール系に異常があると誤判定されるのを効果的に防止することができる。なお、上記状態判定手段18においてベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、アイドルスピードコントロール系に異常があると判定されにくい方向に上記判別基準補正手段19によって判別基準を補正することにより、上記誤判定の発生を防止するようにしてもよいが、誤判定を防止する上では、上記のように所定時間に亘り異常判別を禁止するように構成することが望ましい。
【0052】
また、上記実施形態では、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が、判別基準領域内にあるか否かを状態判定手段18において判定し、この判別基準領域外にあることが確認された場合に、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別するように構成されたアイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置において、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上となったか否かを判定し、上記走行距離が所定値以上となったことが確認された場合に、自動車の走行距離が所定値未満である場合よりも上記判別基準領域の上限値を増大させる補正を行うように構成したため、自動車の走行距離に適合したアイドルスピードコントロール系の異常判別制御を実行することができる。
【0053】
つまり、上記状態判定手段18において、アイドルスピードコントロール系の制御状態が製造段階で適正に調節された出荷後のグリーン状態にあり、正確にエンジン回転数を目標回転数に一致させることが可能であることが確認された場合には、判別基準領域の上限値が小さな値に設定された補正前の判別基準に基づいて異常判別を行うことにより、アイドルスピードコントロール系の異常を迅速かつ正確に判別することかできる。
【0054】
そして、アイドル制御時に、エンジンストップが発生するのを防止するためにエンジン回転数が低下するのを抑制するように構成されたアイドルスピードコントロール系では、エンジンがラップ状態となると、エンジンの出力軸の軸受抵抗が減少する等の諸条件が変化することにより、エンジン回転数が上昇し易い傾向がある。したがって、上記のようにエンジンがラップ状態となったことが確認された場合に、判別基準領域の上限値を増大させるように補正することにより、上記諸条件の変化に基づいてエンジン回転数が上昇することによる誤判定を効果的に防止することができる。
【0055】
さらに上記実施形態では、エンジンのアイドル運転時に、パワーステアリング装置等の外部負荷が作用しているか否かを判定し、外部負荷が作用していることが確認された場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止することにより判別条件を変更するように構成したため、上記外部負荷が作用してエンジン回転数が低下すること等に起因した誤判別を効果的に防止し、エンジン回転数が変化しにくい状態で上記アイドルスピードコントロール系に異常があるか否かを正確に判別することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、アイドル制御弁10の開度をフィードバック制御するとともに、このフィードバック制御に基づいて上記アイドル制御弁10の制御量の学習値Nを求めるように構成されたアイドルスピードコントロール系の異常判別方法およびその装置において、上記学習値Nがマイナス方向に設定された基準値を越えてマイナス状態となった場合に、自動車の走行距離が所定値以上であると判定するように構成したため、特別な検出手段を設けることなく、自動車がラップ状態にあるか否かを簡単かつ適正に判定することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、エンジンの運転状態を判定する上記状態判定手段18においてエンジンがラップ状態となったことが確認された場合に、判別基準補正手段19により上記判別基準領域の上限値のみを補正するようにした例について説明したが、上記上限値の補正に対応させて判別基準領域の下限値も補正するように構成してもよい。
【0058】
また、大気圧を検出する圧力センサの検出信号に応じ、大気圧が予め設定された基準値よりも低いか否かを判定し、この基準値よりも大気圧が低いことが確認され場合に、エンジン回転数が変化し易い状態にあると判断して上記判別禁止手段20によりアイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止するように判別条件を変更してもよい。このように構成した場合には、高地等の走行時において大気圧が低いためにエンジン回転数が変動し易い状態で、上記異常判別手段17によるアイドルスピード系の異常判別が行われることによる誤判定の発生を確実に防止することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差に基づいてアイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法およびその装置において、エンジン回転数が変化し易い状態にあるか否かを判定し、エンジン回転数が変化し易い状態にあることが確認された場合に、エンジン回転数が変化しにくい状態にある場合に比べて、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に判別条件を変更した後、この変更後の判別条件下においてアイドルスピードコントロール系の異常判別を実行するように構成したため、エンジン回転数が変動することに起因する誤判定を防止しつつ、アイドルスピードコントロール系の異常を迅速かつ正確に判別できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るアイドルスピードコントロール系の異常判別装置を有するエンジンの全体構成を示す説明図である。
【図2】上記異常判別装置の具体的構成を示す説明図である。
【図3】アイドル制御時の制御動作を示すフローチャートである。
【図4】エンジンの実回転数と目標回転数との偏差に対応したフィードバック制御量を示すグラフである。
【図5】上記異常判別装置による異常判別動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 アイドル制御弁(アイドルスピードコントロール系)
17 異常判別手段
18 状態判定手段
19 判別基準補正手段(判別条件変更手段)
20 判別禁止手段(判別条件変更手段)
21 外部負荷判定手段

Claims (8)

  1. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定し、ベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、エンジン始動時に上記故障の判定を禁止する判定禁止手段による判別禁止時間を通常時よりも長くした後、上記アイドルスピードコントロール系の異常判別を行うことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別方法。
  2. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上であるか否かを判定し、上記走行距離が所定値以上であることが確認された場合に、走行距離が所定値未満である場合よりも上記判別基準領域を拡大する補正を行うことにより、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に判別条件を変更した後、上記アイドルスピードコントロール系の異常判別を行うことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別方法。
  3. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、エンジンのアイドル運転時に、外部負荷が作用しているか否かを判定し、外部負荷が作用していることが確認された場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止するようにしたことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別方法。
  4. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、エンジンのアイドル運転時に、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別方法において、大気圧が予め設定された基準値よりも低いか否かを判定し、この基準値よりも大気圧が低いことが確認され場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止するようにしたことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別方法。
  5. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、エンジン始動時に異常判別手段によるアイドルスピードコントロール系の異常判別を所定時間に亘って禁止する判別禁止手段と、燃料にベーパが発生し易い状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、この状態判別手段によって燃料にベーパが発生し易い状態にあることが確認された場合に、上記判別禁止手段によって設定された判別禁止時間を通常時よりも長くするように判別条件を変更する判別条件変更手段とを備えことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別装置。
  6. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、自動車の製造直後からの走行距離が所定値以上であるか否かを判定する状態判定手段と、この状態判定手段によって上記走行距離が所定値以上であることが確認された場合に、自動車の走行距離が所定値未満である場合よりも上記判別基準領域を拡大する補正を行うことにより、アイドルスピードコントロール系に異常があると判別されにくい方向に補正する判別基準補正手段からなる判別条件変更手段とを設けたことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別装置。
  7. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、エンジンのアイドル運転時に、外部負荷が作用しているか否かを判定する外部負荷判定手段と、この外部負荷判定手段によって外部負荷が作用していることが確認された場合に、異常判別手段によるアイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止する判別禁止手段とを設けたことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別装置。
  8. 自動車用エンジンのアイドル運転時に、エンジンの実回転数とアイドル目標回転数との偏差が判別基準用の上限値と下限値とによって規定された判別基準領域内にあるか否かを判定することにより、アイドルスピードコントロール系の異常を判別する異常判別手段を備えた異常判別装置であって、エンジンのアイドル運転時に、大気圧が予め設定された基準値よりも低いか否かを判定し、この基準値よりも大気圧が低いことが確認され場合に、アイドルスピードコントロール系の異常判別を禁止する判定禁止手段を設けたことを特徴とするアイドルスピードコントロール系の異常判別装置。
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