JP3999916B2 - トランジスタのバイアス回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトランジスタのバイアス回路に係り、特に高周波電力増幅用バイポートランジスタのベースバイアス回路に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のバイポーラトランジスタのベースバイアス回路の構成について、図を用いて説明する。図10に示す従来のベースバイアス回路5は、直列に接続された温度補償ダイオードDiと温度補償抵抗Rからなり、温度補償ダイオードDiのカソードは接地され、そのアノードと温度補償抵抗Rの一方の端子とは互いに接続され、温度補償抵抗Rの他方の端子には基準電圧Vrefが印加される。
【0003】
温度補償ダイオードDiと温度補償抵抗Rとの接続点からベースバイアス回路5の出力電圧Voutが取り出され、図10の右側に示す高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電圧Vbとベース電流Ibとを供給する。
【0004】
このバイポーラトランジスタQのエミッタは接地され、コレクタにはコレクタ電圧Vcが印加される。ベースには結合容量Cを介して高周波信号RFinが入力され、この高周波信号RFinによりバイポーラトランジスタQのベース電流Ibを変調する。
【0005】
高周波変調されたベース電流Ibは、前記高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQで電流増幅され、コレクタ電流Icを大振幅で変調する。この高周波変調されたコレクタ電流Icを介して高周波信号が出力される。高周波信号を出力するための具体的な出力回路の構成は本発明に直接関連しないので、図10では省略されている。
【0006】
次に、図10に示すバイアス回路5の動作について説明する。ここで、従来から問題になっていた高周波電力増幅用バイポーラトランジスタの熱暴走と、その対策について述べる。バイポーラトランジスタを用いて高出力の高周波信号を得るためには、コレクタ電流を大としなければならないが、コレクタ電流が大であればコレクタ損失によりバイポーラトランジスタの温度が上昇する。一方バイポーラトランジスタのコレクタ電流は、温度が上昇すれば増加するので、温度によるコレクタ電流の増加は、バイポーラトランジスタの温度をさらに上昇させ、コレクタ電流が異常に上昇して熱暴走に至ることがある。
【0007】
図10に示す従来のバイアス回路は、温度補償抵抗Rと温度補償ダイオード
Diを用いて、温度上昇による高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのコレクタ電流Icの増加を抑制しようとするものである。温度補償ダイオードDiの電流電圧特性における順方向の立上がりは、温度上昇と共に低電圧側にシフトするので、その等価抵抗Rdiは温度の上昇と共に低下する。
【0008】
一方、バイアス回路5の出力電圧Voutは、基準電圧Vrefを温度補償抵抗Rと温度補償ダイオードDiの等価抵抗Rdiとを用いて分圧することにより得られるので、前記出力電圧Voutは温度上昇と共に低下する。この出力電圧Voutの低下により、バイポーラトランジスタQのベース電圧Vbが低下し、ベース電流Ibの減少を通じて温度上昇によるコレクタ電流Icの増加が抑制される。
【0009】
このように、熱暴走の防止を目的として、バイポーラトランジスタのバイアス回路に温度補償ダイオードDiを挿入し、温度上昇によるコレクタ電流Icの増加を抑制する方法が従来から用いられてきた。しかしこの方法は、熱暴走の防止に対しては有効であるが、温度補償抵抗Rを挿入したため、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの性能としてもっとも重要な、高周波信号RFinの入力電力Pinに対する高周波信号の出力電力Poutの伸びが低下するという重大な問題を生じていた。
【0010】
高周波信号RFinを入力し、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQを非線形領域で動作させれば、バイポーラトランジスタQの内部を流れる高周波電流が一種の整流作用を受け、結果としてベース電流Ibを増加させる。このベース電流Ibの増加はコレクタ電流Icを増加させ、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの非線形性による出力飽和を軽減し、高周波信号の出力電力Poutが増加するという、高周波電力増幅器として極めて望ましい効果が得られる。
【0011】
しかし、図10に示すバイアス回路5が接続されれば、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が温度補償抵抗Rを流れる電流Irを増加させ、バイアス回路5の出力電圧Voutと高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電圧Vbを下降させることになり、非線形領域の動作による高周波信号の出力電力Poutの増加の作用が打ち消されるという問題点を生じていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来の高周波電力増幅用バイポーラトランジスタのバイアス回路は、温度上昇による熱暴走の防止に対しては有効であるが、一方、非線形領域での動作において、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタが示す一種の整流作用に基づく高周波信号の出力電力の伸びが打ち消されるという、高周波電力増幅器として見過ごすことのできない重大な問題点が含まれていた。
【0013】
本発明は上記の問題点を解決すべくなされたもので、温度上昇による熱暴走を防止すると同時に、非線形動作領域での高周波信号の出力電力の伸びが打ち消されることのない、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタのバイアス回路を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のトランジスタのバイアス回路は、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタを非線形領域で動作させる際、高周波信号入力時におけるベース電流の増加を打ち消すことなく温度補償を行うことが可能な回路を具備することを特徴とする。
【0015】
具体的には本発明のトランジスタのバイアス回路は、バイポーラトランジスタと、電界効果トランジスタと、第1、第2の抵抗とを備え、前記バイポーラトランジスタのエミッタは接地され、前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースは互いに接続され、前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースとの接続点は前記第1の抵抗の一方の端子に接続され、前記第1の抵抗の他方の端子には制御電圧が印加され、前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースとの接続点は前記電界効果トランジスタのゲートに接続され、前記電界効果トランジスタのソースは前記第2の抵抗の一方の端子に接続され、前記第2の抵抗の他方の端子は接地され、前記電界効果トランジスタのドレインには基準電圧が印加され、前記電界効果トランジスタのソースと前記第2の抵抗の一方の端子との接続点から高周波電力用バイポーラトランジスタのベースにバイアス電圧が出力されることを特徴とする。
【0018】
また本発明のトランジスタのバイアス回路は、第1及び第2のバイポーラトランジスタと、高周波電力用バイポーラトランジスタと、第1及び第2の抵抗とを備え、前記第1のバイポーラトランジスタのエミッタは接地され、前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタとベースは互いに接続され、前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタとベースとの接続点は、前記第1の抵抗の一方の端子に接続され、前記第1の抵抗の他方の端子には制御電圧が印加され、前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタとベースの接続点は、前記第2のバイポーラトランジスタのベースに接続され、前記第2のバイポーラトランジスタのエミッタは前記第2の抵抗の一方の端子に接続され、前記第2の抵抗の他方の端子は接地され、前記第2のバイポーラトランジスタのコレクタには基準電圧が印加され、前記第2のバイポーラトランジスタのエミッタと前記第2の抵抗の一方の端子との接続点から前記高周波電力用バイポーラトランジスタのベースにバイアス電圧が出力され、前記高周波電力用バイポーラトランジスタの温度特性は前記第1のバイポーラトランジスタの温度特性と等しく、前記第2のバイポーラトランジスタのビルトイン電圧は前記第1のバイポーラトランジスタ及び高周波電力用バイポーラトランジスタのビルトイン電圧よりも小さいことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る高周波電力増幅用バイポーラトランジスタのバイアス回路の構成を示す図である。図1に示す本発明のバイアス回路1は、温度補償バイポーラトランジスタQ1と、温度補償抵抗R1と、電界効果トランジスタQ2と、電界効果トランジスタQ2のソースバイアス抵抗R2から構成される。
【0022】
温度補償バイポーラトランジスタQ1のエミッタは接地され、ベースとコレクタは温度補償抵抗R1の一方の端子に接続され、温度補償抵抗R1の他方の端子には制御電圧Vref1が印加される。温度補償バイポーラトランジスタQ1のベース及びコレクタと温度補償抵抗R1の一方の端子との接続点は、電界効果トランジスタQ2のゲートに接続され、電界効果トランジスタQ2のソースはソースバイアス抵抗R2を介して接地される。
【0023】
電界効果トランジスタQ2のドレインには基準電圧Vref2が印加され、電界効果トランジスタのソースとソースバイアス抵抗R2との接続点から、バイアス回路1の出力電圧Voutが取り出される。出力電圧Voutは図1の右側に示す高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベースに接続され、ベース電圧Vbとベース電流Ibとを供給する。高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの回路構成は、先に述べた図10と同様であるから説明を省略する。次に、図1に示す本発明のバイアス回路1の動作を説明する。
【0024】
バイアス回路1の温度補償抵抗R1を流れる電流をI1、温度補償バイポーラトランジスタQ1のベース電流をI2、コレクタ電流をI3、電界効果トランジスタのドレイン電流をI4、ソースバイアス抵抗R2の電流をI5とする。
【0025】
高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの電流増幅率をβとすれば、そのベース電流Ibとコレクタ電流Icとの間には、Ib=Ic/βの関係がある。また、ベース電圧Vbはベース電流Ibを流すためベースに加える電圧であり、これらは、いづれも外部回路構成によらず高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの特性のみに依存する量として定められる。
【0026】
また、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース・エミッタ間抵抗をRbeとし、電界効果トランジスタQ2のドレイン・ソース間抵抗をRdsとすれば、バイアス回路1の出力電圧Voutを高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電圧Vbと等しくするためには、ソースバイアス抵抗R2及びベース・エミッタ間抵抗Rbeからなる並列抵抗と、ドレイン・ソース間抵抗Rdsからなる抵抗分圧回路とを用いて、基準電圧Vref2を分圧すればよい。
【0027】
バイアス回路1の出力電圧Voutは、制御電圧Vref1である程度制御することが可能であるから、Rbe>>R2なるようにすれば、ドレイン・ソース間抵抗Rdsとソース抵抗R2のみでVoutとVbとを等しくするための抵抗分圧比を決定することができる。
【0028】
高周波信号RFinを入力し、バイアス回路1を用いて高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQを非線形領域で動作させれば、電界効果トランジスタQ2のゲート・ソース間電圧Vgs、及び、ドレイン・ソース間電圧Vdsも入力信号レベルに応じて変化するので、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQにベース電流を供給する電界効果トランジスタQ2の作用を一定にするためには、電界効果トランジスタQ2の動作点を電流飽和領域の深いところ(動作点が多少変化してもドレイン・ソース間抵抗Rdsが変化しない位置)に設定しなければならない。また、電界効果トランジスタQ2の電流供給能力は、非線形領域において高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQに流れるベース電流を供給するに十分なゲート幅が必要であることはいうまでもない。
【0029】
温度補償バイポーラトランジスタQ1の温度特性は、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの温度特性と等しくし、電界効果トランジスタQ2のゲート電圧Vg=Vgs+Vbを電流飽和領域の深い位置に設定する。このゲート電圧Vgの設定は、温度補償抵抗R1と温度補償バイポーラトランジスタQ1のコレクタ・エミッタ間抵抗Rce1とを用いて、制御電圧Vref1を抵抗分割することにより行う。このとき、電界効果トランジスタQ2としてデプレッション型電界効果トランジスタを用いれば、制御電圧Vref1を0VからVbまでの低い電圧範囲に設定することができる利点がある。第1の実施の形態におけるバイアス回路1の動作は次のとおりである。
【0030】
先に図10において、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が、温度補償抵抗Rを流れる電流Irを増加させ、このためベース電圧Vbが低下し、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が打ち消されることを説明した。
【0031】
しかし、図1に示す本発明のバイアス回路1を用いれば、前記ベース電流Ibの増加が電界効果トランジスタQ2のドレイン・ソース間抵抗Rdsを流れる電流I4を増加させ、このためベース電圧Vbが下降し、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が打ち消されようとすれば、このベース電圧Vb(=Vout)の下降により電界効果トランジスタQ2のゲート・ソース間電圧Vgsが大となり、ドレイン電流I4が増加し、このドレイン電流I4の増加が、打ち消されようとしたベース電流Ibを補うように作用するので、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加がドレイン・ソース間抵抗Rdsにより打ち消される現象を回避することができる。
【0032】
また、温度が上昇すれば、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電流Ib、コレクタ電流Icが増加し、熱暴走の危険性を生じる。しかしこのとき、図1に示す温度補償バイポーラトランジスタQ1のベース電流I2、及びコレクタ電流I3も同様に増加するので、温度補償抵抗R1を流れる電流I1が増加する。したがって、電界効果トランジスタQ2のゲート電圧Vgが低下し、ドレイン電流I4が減少する。このドレイン電流I4の減少が高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電流Ibを減少させ、前記温度上昇によるIbの増加を抑制し、コレクタ電流Icの増加による高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの熱暴走を防止することができる。
【0033】
次に図2を用いて本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態におけるバイアス回路2は、第1の実施の形態におけるバイアス回路1の温度補償バイポーラトランジスタQ1を、温度補償ダイオードDiに置き換えることにより得られる。第2の実施の形態のバイアス回路2の動作は次のとおりである。
【0034】
第1の実施の形態と同様に、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの非線形領域での動作で生じたベース電流Ibの増加が、電界効果トランジスタQ2のドレイン・ソース間抵抗Rdsを流れる電流I4の増加を通じてベース電圧Vbを低下させ、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が打ち消されようとすれば、電界効果トランジスタQ2のゲート・ソース間電圧Vgsが大となってドレイン電流I4が増加し、ベース電流Ibを補うように作用するので、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が打ち消される現象を回避することができる。
【0035】
温度が上昇すれば、温度補償ダイオードDiの等価抵抗Rdiが減少し、電界効果トランジスタQ2のゲート電圧Vg が低下するので、電界効果トランジスタQ2のドレイン電流I4が減少する。このドレイン電流I4の減少が高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電流Ibを減少させ、前記温度上昇によるIbの増加が抑制されるので、温度上昇で生じたコレクタ電流Icの増加による高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの熱暴走を防止することができる。
【0036】
次に、図3を用いて本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態におけるバイアス回路3は、第1の実施の形態におけるバイアス回路1の電界効果トランジスタQ2をバイポーラトランジスタQ2に置き換えることにより得られる。第3の実施の形態のバイアス回路3の動作は次のとおりである。
【0037】
高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの非線形領域における動作でのベース電流Ibの増加が、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間抵抗Rce2を流れるコレクタ電流I4を増加させ、このためベース電圧Vbを低下させ、前記非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加が打ち消されようとすれば、このベース電圧Vbの低下によりバイポーラトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧Vbe2が大となり、コレクタ電流I4が増加し、打ち消されようとしたベース電流Ibを補うように作用するので、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加がコレクタ・エミッタ間抵抗Rce2により打ち消される現象を回避することができる。
【0038】
また、温度が上昇すれば、温度補償バイポーラトランジスタQ1のベース電流I2、コレクタ電流I3が増加するので、温度補償抵抗R1を流れる電流I1が増加する。したがって、バイポーラトランジスタQ2のベース電圧Vb2が低下し、ベース・エミッタ間電圧Vbe2が小となり、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流I4が減少する。このドレイン電流I4の減少が温度上昇による高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電流Ibを減少させ、熱暴走を防止することができる。
【0039】
第3の実施の形態において、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQと温度補償バイポーラトランジスタQ1は、温度特性がほぼ等しいものを用いる必要がある。このため、図3に示す回路を動作させる条件として、バイポーラトランジスタQ2は、Q、Q1に比べてエミッタ・ベース間接合のビルトイン電圧の小さいものを用いなければならない。
【0040】
例えば、Q、Q1としてシリコンバイポーラトランジスタを用いたとすれば、Q2はシリコンとは材料物性の異なるヘテロバイポーラトランジスタとし、エミッタ・ベース間接合のビルトイン電圧が小さくなるように材料を選択すればよい。もしQ、Q1、Q2としていづれもシリコンバイポーラトランジスタを用いるのであれば、図3に示す回路において、Q1のベース、コレクタ、エミッタの少なくともいづれか1つに抵抗を挿入しなければならない。
【0041】
次に、図4を用いて本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態におけるバイアス回路4は、第1の実施の形態におけるバイアス回路1の電界効果トランジスタQ2をバイポーラトランジスタQ2に置き換え、かつ温度補償バイポーラトランジスタQ1を、温度補償ダイオードDiに置き換えることにより得られる。第4の実施の形態のバイアス回路4の動作は、次のとおりである。
【0042】
第3の実施の形態と同様に、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの非線形領域における動作で生じるベース電流Ibの増加が、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間抵抗Rce2を流れるコレクタ電流I4を増加させ、このためベース電圧Vbを低下させ、前記非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加を打ち消そうとすれば、このベース電圧Vbの低下によりバイポーラトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧Vbe2が大となり、コレクタ電流I4が増加し、打ち消されようとしたベース電流Ibを補うように作用するので、非線形領域における動作で生じたベース電流Ibの増加を打ち消す現象を回避することができる。
【0043】
また、温度が上昇すれば温度補償ダイオードDiの等価抵抗Rdiが減少し、バイポーラトランジスタQ2のゲート電圧Vb2が低下し、そのベース・エミッタ間電圧Vbe2が小となるので、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流I4が減少する。このコレクタ電流I4の減少が高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのベース電流Ibを減少させるので、前記温度上昇によるIbの増加が抑制され、したがって、コレクタ電流Icの増加による高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQの熱暴走を防止することができる。
【0044】
第4の実施の形態において、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQと温度補償ダイオードDiは、温度特性がほぼ等しいものを用いる必要がある。このため、図4に示す回路を動作させる条件として、バイポーラトランジスタQ2のエミッタ・ベース間接合のビルトイン電圧は、高周波電力増幅用バイポーラトランジスタQのエミッタ・ベース間接合、および温度補償ダイオードDiの接合のビルトイン電圧に比べて小さくなければならない。
【0045】
例えば、Q、Diとして、それぞれシリコンバイポーラトランジスタ、およびシリコンダイオードを用いたとすれば、Q2はシリコンとは材料物性の異なるヘテロバイポーラトランジスタとし、エミッタ・ベース間接合のビルトイン電圧が小さくなるように材料を選択すればよい。もしQ、Di、Q2としていづれもシリコンを用いたとすれば、図4に示す回路において、Diのアノード、カソードのいづれかに抵抗を挿入しなければならない。
【0046】
次に、図5乃至図9を用いて本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、第1の実施の形態におけるバイアス回路1の出力電圧Voutをベース電圧Vbとして印加した場合の高周波電力増幅用トランジスタQの動作特性と、前記ベース電圧Vbを定電圧にした場合の動作特性と、前記ベース電圧Vbとして従来のバイアス回路5の出力電圧Voutを印加した場合の動作特性とを互いに比較して説明する。第2乃至第4の実施の形態の動作特性については、定性的には第1の実施の形態の動作特性と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0047】
高周波増幅用トランジスタQの入力電力Pinに対するベース電圧Vbの依存性を図5に示す。以下、図5乃至図9において、測定に用いた周波数はいずれも1.8GHzである。横軸の入力電力は対数スケールで表示された入力電力Pinの値である。例えば、横軸の数字10は10mW、20は100mW、30は1Wを示す。0℃、120℃、180℃における測定結果がそれぞれ実線、1点鎖線、及び破線で示されている。角印はベース電圧Vbが定電圧源に接続された場合、丸印はベース電圧Vbが図10に示す従来のバイアス回路5に接続された場合、三角印はベース電圧Vbが図1に示す本発明のバイアス回路1に接続された場合の測定結果を示す。
【0048】
横軸の数値が15までは、いずれの場合もベース電圧Vbは入力電力Pinによらず一定であるが、横軸の数値が15乃至20を越えれば、従来例のベース電圧Vbは、入力電力Pinの増加と共に大幅に低下し、温度補償抵抗RによるVb低下の影響が大きいことが示される。これに対して本発明の場合には、ベース電圧Vbの低下は小さく、ほぼ定電圧源に接続された場合に近い結果が得られる。
【0049】
このことから、第1の実施の形態で述べたように、図1に示すバイアス回路1を用いれば、電界効果トランジスタQ2の作用により、高周波電力増幅用トランジスタQの非線形領域における動作でのベース電圧Vb の低下が回避されることがわかる。
【0050】
次に、高周波電力増幅用トランジスタQのベース電流Ibの、高周波信号の入力電力Pinに対する依存性を図6に示す。0℃、及び180℃における測定結果が実線と破線で示されている。図5において説明したVbの低下に対応して、従来例の場合には、非線形領域における動作で生じるベース電流Ibの増加が打ち消されるが、本発明の場合には、電界効果トランジスタQ2の作用により、高周波電力増幅用トランジスタQの非線形領域における動作で生じるベース電圧Ibの増加は、ほぼ定電圧源に接続した場合に近い値に接近することがわかる。
【0051】
次に、高周波信号の出力電力Poutの入力電力Pinに対する依存性を図7に示す。測定温度は全て室温である。図5及び図6の結果に対応して、従来例では、非線形領域の動作において、入力電力Pinに対する出力電力Poutの伸びが抑制されるが、本発明の場合には、ほぼ定電圧源に接続した場合に近い値まで出力電力Poutの値が接近することがわかる。
【0052】
次に、図8及び図9を用いて本発明のバイアス回路1の高周波電力増幅用トランジスタQに対する熱暴走防止の効果を説明する。図8にベース電流Ibの温度依存性を示す。測定のパラメータは入力電力Pinであり、図6に対応してベース電流Ibが入力電力Pinと共に増加する傾向を読み取ることができる。
【0053】
本発明のバイアス回路1を用いれば、入力電力Pinを大とすれば、ほぼ定電圧の場合に近いベース電流Ibが得られるが、その温度による増加の程度は定電圧の場合に比べて小さく、熱暴走が抑制されることがわかる。従来例では、温度特性は平坦であり熱暴走の抑制効果は大きいが、ベース電流Ibの値が小さく、非線形領域の動作におけるベース電流Ibの増加が打ち消されることがわかる。
【0054】
図9にコレクタ電流Icの温度依存性を示す。先に説明したように、コレクタ電流Icの温度変化はベース電流Ibに比べて、より直接的に高周波電力増幅用トランジスタQの熱暴走に影響を与える。ベース電圧が定電圧源に接続された場合には、コレクタ電流Icが温度と共に顕著に増加するので熱暴走の危険性が高いが、本発明の場合には、従来例に近いコレクタ電流Icのゆるやかな温度依存性が得られるので熱暴走を生じる恐れがない。
【0055】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されることはない。例えば前記第1、第2の実施の形態において、電界効果トランジスタQ2として、デプレッション型電界効果トランジスタを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない、制御電圧Vref1の値を高く設定すれば、エンハンスメント型電界効果トランジスタでも同様に用いることができる。
【0056】
また、図1、図2において、電界効果トランジスタQ2をMESFET(Metal- Semiconductor Field Effect Transistor)として図示したが、必ずしもMESFETに限定されるものではない。デプレッション型又は、エンハンスメント型のMOSFET(Metal-Oxide Field Effect Transistor) であっても同様に用いることができる。
【0057】
また、前記第3、第4の実施の形態のバイポーラトランジスタQ2として、シリコンバイポーラトランジスタを用いたが、必ずしもシリコンバイポーラトランジスタに限定されるものではない。化合物半導体材料からなるHBT(Hetro- Bipolar Transistor) を用いれば、材料の種類を選定することにより動作電圧を下げることができるので、シリコンバイポーラトランジスタに比べて、制御電圧Vref1の値を低くすることができる利点がある。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0058】
【発明の効果】
上述したように本発明の高周波電力増幅用トランジスタのバイアス回路を用いれば、高周波信号の入力時における高周波電力増幅用トランジスタの非線形領域での動作におけるベース電流の増加が打ち消されずに、ベース電流及びコレクタ電流の温度補償を行うことができるので、温度上昇による高周波電力増幅用トランジスタの熱暴走を防止すると同時に、非線形領域での動作において、高周波信号の出力電力の伸びが大きい高周波電力増幅用バイポーラトランジスタのベース電圧のバイアス回路を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るバイアス回路の構成を示す図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るバイアス回路の構成を示す図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るバイアス回路の構成を示す図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係るバイアス回路の構成を示す図
【図5】ベース電圧Vb の高周波入力電力Pinに対する依存性を示す図。
【図6】ベース電流Ib の高周波入力電力Pinに対する依存性を示す図。
【図7】高周波出力電力Poutの高周波入力電力Pinに対する依存性を示す図。
【図8】ベース電流Ibの温度依存性を示す図。
【図9】コレクタ電流Icの温度依存性を示す図。
【図10】従来のバイアス回路の構成を示す図。
【符号の説明】
1…第1の実施の形態におけるバイアス回路
2…第2の実施の形態におけるバイアス回路
3…第3の実施の形態におけるバイアス回路
4…第4の実施の形態におけるバイアス回路

Claims (4)

  1. バイポーラトランジスタと、電界効果トランジスタと、第1、第2の抵抗とを備え、
    前記バイポーラトランジスタのエミッタは接地され、
    前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースは互いに接続され、
    前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースとの接続点は前記第1の抵抗の一方の端子に接続され、
    前記第1の抵抗の他方の端子には制御電圧が印加され、
    前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースとの接続点は前記電界効果トランジスタのゲートに接続され、
    前記電界効果トランジスタのソースは前記第2の抵抗の一方の端子に接続され、
    前記第2の抵抗の他方の端子は接地され、
    前記電界効果トランジスタのドレインには基準電圧が印加され、
    前記電界効果トランジスタのソースと前記第2の抵抗の一方の端子との接続点から高周波電力用バイポーラトランジスタのベースにバイアス電圧が出力されることを特徴とするトランジスタのバイアス回路。
  2. 前記電界効果トランジスタは、デプレッション型電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載のトランジスタのバイアス回路。
  3. 第1及び第2のバイポーラトランジスタと、高周波電力用バイポーラトランジスタと、第1及び第2の抵抗とを備え、
    前記第1のバイポーラトランジスタのエミッタは接地され、
    前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタとベースは互いに接続され、
    前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタとベースとの接続点は前記第1の抵抗の一方の端子に接続され、
    前記第1の抵抗の他方の端子には制御電圧が印加され、
    前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタとベースの接続点は前記第2のバイポーラトランジスタのベースに接続され、
    前記第2のバイポーラトランジスタのエミッタは前記第2の抵抗の一方の端子に接続され、
    前記第2の抵抗の他方の端子は接地され、
    前記第2のバイポーラトランジスタのコレクタには基準電圧が印加され、
    前記第2のバイポーラトランジスタのエミッタと前記第2の抵抗の一方の端子との接続点から前記高周波電力用バイポーラトランジスタのベースにバイアス電圧が出力され、
    前記高周波電力用バイポーラトランジスタの温度特性は前記第1のバイポーラトランジスタの温度特性と等しく、
    前記第2のバイポーラトランジスタのビルトイン電圧は前記第1のバイポーラトランジスタ及び高周波電力用バイポーラトランジスタのビルトイン電圧よりも小さいことを特徴とするトランジスタのバイアス回路。
  4. 前記第1、第2のバイポーラトランジスタ及び前記高周波電力用バイポーラトランジスタは、シリコンバイポーラトランジスタであり、前記第1のバイポーラトランジスタのベース、コレクタ及びエミッタのいずれか1つに、さらに、第3の抵抗が接続されることを特徴とする請求項3に記載のトランジスタのバイアス回路。
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