JP4006680B2 - マルチバンドアンテナスイッチ回路およびマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品並びにそれを用いた通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルチバンドアンテナスイッチ回路およびマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品及びこれらを用いた通信装置に関し、特に2つ以上の異なる周波数の信号を1つのアンテナを共用して送受信する無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯無線通信システムには、例えば主に欧州で盛んなEGSM(Extended Global System for Mobile Communications)方式およびDCS(Digital Cellular System)方式、米国で盛んなPCS(Personal Communication Service)方式、日本で採用されているPDC(Personal Digital Cellular)方式などの様々なシステムがあるが、昨今の携帯電話の急激な普及に伴い、特に先進国の主要な大都市部においては各システムに割り当てられた周波数帯域ではシステム利用者を賄いきれず、接続が困難であったり、通話途中で接続が切断するなどの問題が生じている。そこで、利用者が複数のシステムを利用できるようにして、実質的に利用可能な周波数の増加を図り、さらにサービス区域の拡充や各システムの通信インフラを有効活用することが提唱されている。
【0003】
前記利用者が複数のシステムを利用したい場合には、各システムに対応した携帯通信機を必要な分だけ持つか、あるいは複数のシステムで通信できる小型軽量の携帯通信機を持つ必要がある。後者の場合、1台の携帯通信機で複数のシステムを利用可能とするには、システム毎の部品を用いて携帯通信機を構成すればよいが、信号の送信系においては、例えば希望の送信周波数の送信信号を通過させるフィルタ、送受信回路を切り換える高周波スイッチや送受信信号を入放射するアンテナ、また信号の受信系では、前記高周波スイッチを通過した受信信号の希望の周波数を通過させるフィルタ等の高周波回路部品が各システム毎に必要となる。このため、携帯通信機が高価になるとともに、体積および重量ともに増加してしまい携帯用としては不適であった。そこで複数のシステムに対応した小型軽量の高周波回路部品が必要になってきた。例えば、EGSMとDCSの2つのシステムに対応した携帯通信機に用いられるデュアルバンド対応の高周波スイッチモジュールが特開平11−225088号公報および特開2001−185902号公報、米国特許公報第5815804号に開示されている。
【0004】
図19に示した前者の特開平11−225088号公報での従来技術のスイッチ回路では、EGSM送信端子(Tx)とEGSM受信端子(Rx)とを切り換えるスイッチ回路SW1とDCS送信端子(Tx)とDCS受信端子(Rx)とを切り換えるスイッチ回路SW2およびSW1とSW2に接続されるダイプレクサDip(分波器)を有する。SW1とSW2には図20に示したPINダイオードスイッチを利用したスイッチ回路が各々に利用される。したがって、EGSM、DCS対応の高周波スイッチモジュールではPINダイオードが合計4つ必要であり小型化の妨げになっていた。
【0005】
これに対し後者のうち特開2001−185902号では図21に示すように、EGSM送信端子とDCS送信端子とを分波する送信側のダイプレクサDip1と、EGSM受信端子とDCS受信端子とを分波する受信側のダイプレクサDip2およびDip1とDip2に接続されるスイッチ回路SWを有する。SWにはEGSM帯域〜DCS帯域の広い帯域をカバーするためにGaAsスイッチなどのFETスイッチ1個が使用される。したがってPINダイオードスイッチを利用したスイッチ回路と比較すると小型化が可能であり、さらに消費電力の低減も可能となった。
【0006】
他方、米国特許公報第5815804号では、EGSM受信端子とDCS送信端子とを分波するダイプレクサDip1と、EGSM送信端子とDCS受信端子とを分波するダイプレクサDip2と、Dip1とDip2に接続されるスイッチ回路SWとを有し、このSWには上記例と同様にGaAsスイッチなどのFETスイッチ1個が使用されている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】
図21の特開2001−185902号の従来技術ではEGSM送信モードにおいてスイッチ回路SWが送信側のダイプレクサDip1に接続されているため、DCS送信端子から入力されるDCS帯域の信号も通過させるという問題があった。EGSM送信モードの場合はDCS側のパワーアンプは動作しないように設定されているが、EGSM送信信号の2倍高調波による発振およびEGSM側のアンプとのクロストークのためにDCS側のパワーアンプからも僅かに信号を発生する。この現象は特にEGSMとDCSの2つのパワーアンプを1つのパッケージにまとめたデュアルパワーアンプの場合に顕著であり、-15dBm程度の信号がDCS側のパワーアンプから出力される場合がある。
【0008】
つまり、EGSM送信モードにおいてEGSM送信帯域の2倍の周波数に相当する1.8GHz帯の信号がDCS送信端子に入力され、さらにダイプレクサDip1およびスイッチSWは1.8GHz帯域の信号をそのまま通過させてしまうため、EGSM送信の2倍高調波歪みがアンテナから放射され問題となる。このアンテナから放射される2倍高調波発生量は-36dBm以下が望ましく、図21の従来技術では回避できない問題点であった。
【0009】
また、特開2001−185902号と米国特許第5815804号と共にスイッチ回路にGaAsスイッチを用いている。GaAsスイッチはPINダイオードを使用した回路と比較すると高調波歪みが発生しやすいという問題もある。特にEGSM送信では最大+36dBmの電力がGaAsスイッチに投入される場合があり、2倍高調波発生量を-36dBm以下に抑制するにはGaAsスイッチ自体で発生するEGSM送信信号の2倍高調波発生量を-72dBc以下にする必要がある。しかしながら、このような高調波発生量の少ないGaAsスイッチを入手することは現状困難である。なぜならGaAsスイッチの高調波発生量を低減するには電源電圧を増加することにより容易に実現可能であるが、携帯電話に用いる部品として電源電圧の増加はバッテリーの電源電圧の増加に相当するため採用できないためである。
【0010】
さらに、ダイプレクサを用いずに複数の周波数の送受信信号をGaAsスイッチにより直接切り換える回路の場合には、静電気破壊に対して弱いという問題がある。よって、アンテナとGaAsスイッチの間に静電サージ対策用の回路を取り入れる必要がある。例えば従来の静電サージ対策としては、特開2001−44883号公報および特開2001−186047号公報などで開示されている。しかしながら、これらはPINダイオードを用いた回路用のものであり、これらの静電サージ対策回路はアンテナトップに使用するには相応しくなかった。
【0011】
本発明では以上のような問題に鑑み、小型、低消費電力および高調波発生量を抑制した、また静電気破壊に対して強いマルチバンドアンテナスイッチ回路およびマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品並びにこれらを用いた通信装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は従来のPINダイオードを使用したスイッチ回路の問題点であった小型化、低消費電力化などを解決するために、GaAsスイッチなどのFETスイッチ1つとダイプレクサ2つを用いた基本構成を有するマルチバンドアンテナスイッチ回路であり、GaAsスイッチなどのFETスイッチを使用した場合に懸念される高調波発生量を抑制するために、スイッチ回路とアンテナとの間に送信信号の2倍又は3倍の周波数を減衰させるフィルタを、例えばノッチフィルタを挿入したことを要旨とするものである。また、本発明はGaAsスイッチなどのFETスイッチ1つとダイプレクサ2つを用いた基本構成を有するマルチバンドアンテナスイッチ回路であり、GaAsスイッチなどのFETスイッチを使用した場合に問題となる静電気破壊を防止するために、スイッチ回路とアンテナとの間に静電気放電によるサージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタを、例えばハイパスフィルタを挿入したことを要旨とするものである。
【0013】
即ち、本発明は、第1の送信端子と第2の受信端子と第1の共通端子を有する第1のダイプレクサと、第2の送信端子と第1の受信端子と第2の共通端子を有する第2のダイプレクサと、第1の送受信端子と第2の送受信端子とアンテナ端子を有し、前記第1の送受信端子と前記第2の送受信端子とのいずれか一方が、前記アンテナ端子に切り替え接続されるスイッチ回路とを有し、前記第1の共通端子が前記第1の送受信端子に接続され、前記第2の共通端子が前記第2の送受信端子に接続されたマルチバンドアンテナスイッチ回路であって、前記スイッチ回路とアンテナとの間に、前記第1の送信端子又は前記第2の送信端子に入力される送信信号の2倍又は3倍の周波数を減衰させるとともに、静電気放電によるサージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタとを有し、前記フィルタは、入力端子とグランドとの間に接続されたチョークコイルと、出力端子とグランドとの間にインダクタとダイオードスイッチと容量で構成された直列共振回路を備え、ダイオードスイッチをON状態又はOFF状態とすることで前記直列共振回路の振周波数が変化することを特徴とするマルチバンドアンテナスイッチ回路である。
【0014】
また本発明は、アンテナに接続するスイッチ回路と、前記スイッチ回路に接続する複数のダイプレクサを備え、前記スイッチ回路とアンテナとの間に、静電気放電によるサージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタを有し、前記フィルタは、入力端子とグランドとの間に接続されたインダクタと、前記入力端子と出力端子との間に接続された容量と、出力端子とグランドとの間にインダクタと容量で構成された直列共振回路が接続されたハイパスフィルタを備え、前記直列共振回路の共振周波数を100MHzから500MHzの間としたことを特徴とするマルチバンドアンテナスイッチ回路である。
さらに前記入力端子と前記出力端子との間に、第3のインダクタおよび第3の容量からなる並列共振回路を挿入するのが好ましい。
本発明においては、第1の送信端子と第2の受信端子と第1の共通端子を有する第1のダイプレクサと、第2の送信端子と第1の受信端子と第2の共通端子を有する第2のダイプレクサと、第1の送受信端子と第2の送受信端子とアンテナ端子を有し、前記第1の送受信端子と前記第2の送受信端子とのいずれか一方が、前記アンテナ端子に切り替え接続されるスイッチ回路とを有し、前記第1の共通端子が前記第1の送受信端子に接続され、前記第2の共通端子が前記第2の送受信端子に接続されるのが好ましい。
【0015】
上記発明において、以下の構成を採ることは望ましいことである。
前記ノッチフィルタがインダクタ、ダイオード、容量、抵抗、および電源端子を有し、前記電源端子に印加する電圧により共振周波数を可変とすること。
前記ノッチフィルタに前記ダイオードに逆電圧を印加するための逆電圧端子を設けること。
前記第1の送信端子に第1のローパスフィルタを、第2の送信端子に第2のローパスフィルタとを有すること。
前記スイッチ回路はGaAs半導体から構成すること。
入力端子および出力端子を有し、前記入力端子とグランドとの間に接続された第1のインダクタ、前記入力端子と前記出力端子との間に接続された第1の容量、前記出力端子に接続された第2のインダクタ、およびこの第2のインダクタとグランドに接続された第2の容量とからなるハイパスフィルタを、少なくとも前記ノッチフィルタとアンテナとの間に設けること。
前記ハイパスフィルタの第2のインダクタと前記出力端子との間に第3のインダクタおよび第3の容量からなる並列共振回路を挿入すること。
【0018】
本発明は、上記したマルチバンドアンテナスイッチ回路を構成する伝送線路および容量の一部を積層基板に内蔵し、前記マルチバンドアンテナスイッチ回路の一部を構成するスイッチ素子、抵抗、容量およびインダクタなどのチップ部品を積層基板上に搭載したマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品である。
【0019】
さらに本発明は、上記したマルチバンドアンテナスイッチ回路、又はマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品を用いた通信装置である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のマルチバンドアンテナスイッチ回路は以上のような構成としたので、第1のダイプレクサは周波数帯域の異なる信号を第1の送信端子および第2の受信端子へ分波し、第2のダイプレクサは周波数の異なる帯域の信号を第2の送信端子および第1の受信端子へ分波する。さらにスイッチ回路はアンテナ端子と前記第1のダイプレクサとの間、あるいはアンテナ端子と前記第2のダイプレクサとの間の接続を切り換える。従って、第1の送信端子とアンテナ端子が接続されている場合は、第2の送信端子は前記スイッチ回路により遮断されているため、従来技術で問題であったOFF状態でのパワーアンプから出力される高調波歪みをアンテナ端子へ通過させることがない。同様に第2の送信端子とアンテナ端子が接続されている場合は、第1の送信端子は前記スイッチ回路により遮断されているため、従来技術で問題であったOFF状態のパワーアンプから出力される高調波歪みをアンテナ端子へ通過させることがない。
【0021】
また、本発明において第1の送信端子に接続される第1のローパスフィルタは、前記第1の送信端子に入力されるパワーアンプから出力された送信信号に対して、基本周波数の信号のみを通過させ、高次高調波歪みを低減する。同様に第2の送信端子に接続される第2のローパスフィルタは、前記第2の送信端子に入力されるパワーアンプから出力された送信信号に対して、基本周波数の信号のみを通過させ、高次高調波歪みを低減する。
そして、スイッチ回路とアンテナとの間に接続されたローパスフィルタであるとかノッチフィルタは、送信信号の2倍もしくは3倍の周波数に減衰極をもつように調整されている。したがってこれらのフィルタを接続することにより、前記スイッチ回路で発生する2次あるいは3次高調波歪みをも効果的に低減することができる。
【0022】
また、本発明のノッチフィルタは、インダクタ、ダイオードスイッチ、容量、抵抗、および電源端子により構成され、前記電源端子に印加する電圧によりノッチフィルタの共振周波数を変化させることが可能となる。したがって、ノッチフィルタの減衰極を第1の送信端子がアンテナ端子に接続される場合には、第1の送信信号の2倍あるいは3倍高調波の周波数に設定し、第2の送信端子がアンテナ端子に接続される場合には、第2の送信信号の2倍あるいは3倍高調波の周波数に設定することにより、両方の帯域の高調波発生量を同時に低減可能となる。また、前記ノッチフィルタを構成するダイオードスイッチに電圧が印加されていない状態ではノッチフィルタ自体が高調波歪みを発生する。これを回避するためには前記ダイオードスイッチに逆電圧を印加するための逆電圧端子を設けることが有効である。
【0023】
本発明に使用されるスイッチ回路には前記ダイプレクサに入出力される低周波数および高周波数の信号を低損失で通過させる必要があるため、通過帯域の広いGaAs FETスイッチなどが用いられる。しかし、GaAs FETスイッチはPINダイオードなどと比較すると静電気破壊に対して弱いというデメリットがある。これに対しては、スイッチ回路とアンテナとの間に静電サージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタを設けることにより解消できる。より具体的なハイパスフィルタによれば第1のインダクタと第1の容量により静電気放電によるサージ電圧をグランド側へ逃がし、第2のインダクタとグランドに接続された第2の容量からなる直列共振回路により共振周波数帯での静電サージを効果的にグランドへ吸収すると共に900MHz帯域〜1.8GHz帯域までの広帯域での整合を取ることが出来る。
【0024】
また、マルチバンドアンテナスイッチ回路を構成するダイプレクサとスイッチ回路の伝送線路および容量の一部を積層基板に内蔵し一体化するため、ダイプレクサとスイッチ回路との配線も積層基板の表面又は内部に形成され、配線による損失を低減し、また両者間の整合調整が容易となる。一方、マルチバンドアンテナスイッチ回路の一部を構成するスイッチ素子、抵抗、容量およびインダクタなどのチップ部品は積層基板上に搭載することにより、小型で安価なマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品が得られる。
また、これらのマルチバンドアンテナスイッチ回路、又はマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品を用いた通信装置は装置の小型化と低消費電力仕様となる。
以上のことより、本発明のアンテナスイッチ回路およびマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品並びに通信装置は、パワーアンプでの高調波発生量およびスイッチ回路での高調波発生量の抑制、GaAs FETスイッチの静電破壊の保護、小型化、低コスト化、低消費電力化を図ることができる。
【0025】
以下、本発明に係るマルチバンドアンテナスイッチ回路、およびマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品並びに通信装置の実施形態について図面を参照して説明する。
まず、図2は本発明に係わるマルチバンドアンテナスイッチ回路の一例である、EGSM、DCS対応のアンテナスイッチ回路のブロック図を示す。第1のダイプレクサDip1はEGSM送信信号(880MHz〜915MHz)とDCS受信信号(1805MHz〜1880MHz)を分波合成する。第2のダイプレクサDip2はEGSM受信信号(925MHz〜960MHz)とDCS送信信号(1710MHz〜1785MHz)を分波合成する。スイッチ回路SWはDip1およびDip2に接続され、アンテナ端子ANTとDip1との間、あるいはANT端子とDip2の間の接続を切り換える。この場合、スイッチ回路はEGSMおよびDCS帯域の信号を低損失で通過させる必要があり、通過帯域の広いSPDT(Single Pole Dual Throw)と呼ばれるGaAs FETスイッチなどが用いられる。従って、ANT端子とDip1が接続し、EGSM送信端子とANT端子が接続されている場合は、DCS送信端子はSWにより遮断される。EGSM送信モードの場合はDCS側のパワーアンプは動作しないように設定されているが、EGSM送信信号の2倍高調波による発振およびEGSM側のアンプとのクロストークのためにDCS側のパワーアンプからも僅かに信号を発生する。つまり、EGSM側のパワーアンプで発生したEGSM送信信号の2倍高調波(1760MHz〜1830MHz)が、EGSMとDCSのパワーアンプ間のクロストークによりDCS送信端子から入力され、Dip2を通過する。しかしSWによりANT端子とDip2の間が遮断されるためANT端子側には通過できないことになる。これに対し、図21の従来技術ではEGSM送信モードにおいてDCS送信端子とANT端子間が接続されているため、EGSM送信信号の2倍高調波はANT端子へ通過してしまい問題であった。以上のことより本発明の回路構成により、まずはEGSM送信モードにおけるEGSM送信信号の2倍高調波発生量を低減可能となる。
【0026】
(実施例1)
図1は本発明のマルチバンドアンテナスイッチ回路の一実施例である、EGSM、DCS対応のアンテナスイッチ回路のブロック図を示す。この実施例では上記実施例の回路に加えて、Dip1とEGSM送信端子の間にローパスフィルタLPF1、Dip2とDCS送信端子の間にローパスフィルタLPF2、ANTとSWとの間に可変ノッチフィルタVNFがそれぞれ挿入されている。LPF1はEGSM送信信号に含まれる高次高調波歪みを抑制するため、EGSM送信信号のみを通過し、EGSM送信信号の2倍以上の周波数を減衰するような特性のフィルタが用いられる。同様にLPF2はDCS送信信号に含まれる高次高調波歪みを抑制するため、DCS送信信号のみを通過し、DCS送信信号の2倍以上の周波数を減衰するような特性のフィルタが用いられる。したがってパワーアンプで発生される高調波歪みがLPF1、LPF2により低減されるため、アンテナから放射される高調波発生量を低減可能である。
さらに、可変ノッチフィルタVNFは前記GaAs FETスイッチで発生する高調波発生量を低減するために、EGSM送信モードにおいてはEGSM送信信号の2倍あるいは3倍の周波数に減衰極をもつようなノッチフィルタであり、DCS送信モードにおいてはDCS送信信号の2倍あるいは3倍の周波数に減衰極をもつような特性のノッチフィルタが望ましく、本実施例ではEGSM、DCS各モードにおいて上記のように共振周波数が変化する可変ノッチフィルタを採用した。したがってGaAs FETスイッチで発生する高調波歪みをVNFにより低減可能である。
尚、本発明では実施例のような可変ノッチフィルタVNFに限るものではなく、通常のノッチフィルタNFを用いても良いことは言うまでもない。さらに言えばノッチフィルタに限るものでもなく、要は各種送信信号の2倍又は3倍の周波数を減衰させるフィルタであれば良い。
【0027】
図8に本実施例の具体的な等価回路の一例を示した。ダイプレクサDip1は伝送線路またはインダクタL7〜L9および容量C8〜C11により構成される。L8とC8は直列共振回路を形成し、DCS受信帯域に共振周波数を持つように設計することが望ましい。本実施例では1.8GHzに減衰極をあわせた。L9とC10は直列共振回路を形成し、EGSM送信帯域に共振周波数を持つように設計することが望ましい。本実施例では0.9GHzに減衰極をあわせた。この回路により、EGSM送信信号とDCS受信信号を分波合成することが可能となる。
ダイプレクサDip2は伝送線路またはインダクタL4〜L6および容量C4〜C7により構成される。L5とC4は直列共振回路を形成し、DCS送信帯域に共振周波数を持つように設計することが望ましい。本実施例では1.8GHzに減衰極をあわせた。L6とC6は直列共振回路を形成し、EGSM受信帯域に共振周波数を持つように設計することが望ましい。本実施例では0.9GHzに減衰極をあわせた。この回路により、DCS送信信号とEGSM受信信号を分波合成することが可能となる。
【0028】
ローパスフィルタLPF1は、伝送線路またはインダクタL11および容量C15〜C17により構成される。このときL11とC15は並列共振回路を形成し、その共振周波数はEGSM送信周波数の2倍あるいは3倍に設定するのが望ましい。本実施例では3倍の2.7GHzに設定した。この回路によりパワーアンプで発生するEGSM送信の3倍高調波発生量の低減が可能となる。
ローパスフィルタLPF2は、伝送線路またはインダクタL10および容量C12〜C14により構成される。このときL10とC12は並列共振回路を形成し、その共振周波数はDCS送信周波数の2倍あるいは3倍に設定するのが望ましい。本実施例では2倍の3.6GHzに設定した。この回路によりパワーアンプで発生するDCS送信の2倍高調波発生量の低減が可能となる。
【0029】
可変ノッチフィルタVNFは、伝送線路またはインダクタL1、チョークコイルL2、容量C1〜C3、ダイオードスイッチDおよび抵抗Rにより構成される。L1、DおよびC3は直列共振回路を形成し、その共振周波数はダイオードDのON/OFF状態により変化する。通常ダイオードはON状態ではショートに近く、OFF状態では0.1〜1.0pFの容量値をもつ。このため、ON状態ではL1とC3の直列共振回路、OFF状態ではL1とC3およびダイオードの容量値との直列共振回路を形成する。本実施例で使用したVNFの特性を図6に示す。ダイオードがON状態ではEGSM送信信号の3倍の周波数(約2.7GHz)に減衰極をもち、ダイオードがOFF状態ではDCS送信信号の2倍の周波数(約3.6GHz)に減衰極をもつ特性が得られる。なお、ダイオードがONの場合の共振周波数、およびOFFの場合の共振周波数は、L1およびC3の組み合わせにより任意に調整可能である。ダイオードDがON状態となるためにはダイオードに約0.7V以上の電圧を印加して直流電流を流す必要があり、チョークコイルL2はこの直流電流を流すために必要である。また、L2はEGSMおよびDCS帯域の信号に対し、インピーダンスが大きくなるように20nH〜100nHが望ましい。本実施例では27nHを使用した。また、抵抗RはダイオードDに流れる電流値を制限する。本実施例では1kΩを使用した。
【0030】
尚、チョークコイルL2はアンテナ直下で、かつグランドに接続されているため、外部から静電サージが加わった場合でもL2によりサージがグランドへ逃げやすくなる。このため、SW回路およびそれ以降に接続されるSAWフィルタ、パワーアンプ、ローノイズアンプなどの静電破壊に対して弱い部品の保護という機能も兼ね備えたアンテナスイッチ回路となっている。また、あるいは下記する図18(a)(b)のようなインダクターを挿入した回路を設けることによっても静電気放電によるサージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタの作用をなし、GaAsスイッチを用いたアンテナスイッチ回路においては有効である。しかしながら、(b)ではインダクタおよび容量を多数必要とするため、小型化、低コスト化の妨げになり、挿入損失の劣化の原因にもなっていた。(a)では分波器の一部にインダクタを追加したものであり、GaAsスイッチを静電サージから保護するためにはグランドに落ちるインダクタを5nH以下に設定する必要があるが、アンテナトップに5nH以下のインダクタを接続した場合900MHz帯域〜1.8GHz帯域までの広帯域での整合を取ることが困難になる。これらの不具合を解消するためには後述するハイパスフィルタ回路を用いることがより望ましい。
【0031】
スイッチ回路SWは、Dip1、Dip2、およびVNFに接続され、VC1がHighの場合はVNF〜Dip1間が接続され、VNF〜Dip2間は遮断される。逆にVC2がHighの場合はVNF〜Dip2間が接続され、VNF〜Dip1間は遮断される。
C1、C2、C18、C19はスイッチ回路SWの切り換え、ダイオードDのON/OFFのために必要なDCカットコンデンサである。
【0032】
表1に本実施例の動作モードと電源電圧の関係を示した。表1の電源電圧レベルのHighは+1V〜+5V、Lowは-0.5V〜+0.5Vが望ましい。EGSM送信モードにおいてはVC1、VC3がHighでVC2がLowになり、SWはANTとDip1との間を接続し、ANTとDip2はオープンになる。また、ノッチフィルタVNFの共振周波数はダイオードDがON状態になるため、EGSM送信信号の3倍の周波数約2.7GHzになる。DCS送信モードにおいてはVC2がHighでVC1、VC3がLowになり、SWはANTとDip2との間を接続し、ANTとDip1はオープンになる。また、ノッチフィルタVNFの共振周波数はダイオードDがOFF状態になるため、DCS送信信号の2倍の周波数約3.6GHzになる。EGSM受信モードにおいてはVC2がONでVC1、VC3がLowになり、SWはANTとDip2との間を接続し、ANTとDip1はオープンになる。また、ノッチフィルタVNFの共振周波数はダイオードDがOFF状態になるため、約3.6GHzになる。DCS受信モードにおいてはVC1がONでVC2、VC3がLowになり、SWはANTとDip1との間を接続し、ANTとDip2はオープンになる。また、ノッチフィルタVNFの共振周波数はダイオードDがOFF状態になるため、約3.6GHzになる。
【0033】
【表1】
【0034】
次に、本実施例による高調波抑制効果について測定した結果を表2に示す。測定は図2のようにノッチフィルタがない場合と図1の実施例のようにノッチフィルタ等を設けた本発明の場合について、2倍、3倍高調波(2f、3f)の減衰量(dB)の特性値を測定した。この結果から明らかなように本発明によって20dB以上の抑制効果が確認できた。
以上の実施例により、本発明のアンテナスイッチ回路によれば、パワーアンプでの高調波発生量の抑制、スイッチ回路での高調波発生量の抑制、および静電破壊の保護などが可能であることが明らかである。
【0035】
【表2】
【0036】
(実施例2)
次に、図10に本発明の他の実施例である、EGSM、DCS対応のアンテナスイッチ回路の等価回路図を示す。この実施例では実施例1の図8に示した可変ノッチフィルタVNFを変更したものである。本実施例のVNFは伝送線路またはインダクタL1、チョークコイルL2、L3、容量C1〜C3、ダイオードスイッチDおよび抵抗Rにより構成される。L1、DおよびC3は直列共振回路を形成し、実施例1と同様にその共振周波数はダイオードDのON/OFF状態により変化する。本実施例に示したVNFはダイオードDに逆電圧が印加可能であることが特徴である。
【0037】
一般的にダイオードなどの非線形デバイスに高電力の高周波信号を投入すると、高調波歪みが発生することが知られている。特にPINダイオードの場合はOFF状態の時が顕著である。この理由は図9に示すダイオードのV-I特性からも明らかであり、ON状態ではコントロール電源の電圧Vcにより比較的線形性の良い動作点でダイオードが駆動しているため、高周波信号による電圧変動に対しても線形的な応答をするため高調波発生量は少ない。これに対し、OFF状態ではV=0付近が動作点となり、高周波信号による電圧変動に対しても非線形的な応答をする。このため高調波発生量が大きくなる。本実施例の動作モードと電源電圧の関係は表1と同様である。実施例1との違いは、DCS送信モードにおいて、VC2がHigh、VC3がLowとなり、ダイオードDに逆電圧が印加できることである。ダイオードに逆電圧を印加した場合、図9に示すように高周波信号による電圧変動に対しても線形的な応答をするためノッチフィルタでの高調波発生量が低減できる。DCS送信モードにおいてはVC2がHighでVC1、VC3がLowになり、SWはANTとDip2との間を接続し、ANTとDip1はオープンになる。また、ノッチフィルタVNFの共振周波数はダイオードDがOFF状態になるが逆電圧がかかっている。チョークコイルL3はEGSMおよびDCS帯域の信号に対し、インピーダンスが大きくなるように20nH〜100nHが望ましい。本実施例では27nHを使用した。また、抵抗RはダイオードDに流れる電流値を制限する。本実施例では1kΩを使用した。さらにインダクタL2をANT直下に接続することにより静電破壊保護機能も実現可能となっている。
以上の実施例により、実施例1の問題点であるダイオードDのOFF状態での高調波発生量を低減可能なマルチバンドアンテナスイッチ回路が得られる。
【0038】
(実施例3)
図3に本発明の他の実施例である、EGSM、DCS、PCS対応のトリプルバンドアンテナスイッチ回路のブロック図を示す。この実施例は実施例1のスイッチ回路にPCS受信端子を加えたものである。尚、本発明はGaAsスイッチ等のFETスイッチ1つとダイプレクサ2つを用いた基本構成を備えたアンテナスイッチ回路に関しており、この基本構成を備えている限り、他に複数の送受信系システムが加わろうとも本発明のマルチバンドアンテナスイッチ回路であると言える。以下の実施例についても同様である。さて、本実施例ではこのスイッチとしてSP3T(Single Pole 3 Throw)とよばれるGaAs FETスイッチを使用した。さらにDCS送信端子とPCS送信端子を共通にすることにより、回路の簡略化が可能となる。この場合、DCS送信(1710MHz〜1785MHz)とPCS送信(1850MHz〜1910MHz)とが比較的近い周波数にあるため、パワーアンプも共通化可能である。他詳細な説明は上記実施例と同様であるので省略するが、本実施例によればEGSM、DCS、PCS対応のトリプルバンドアンテナスイッチ回路が得られる。
【0039】
(実施例4)
図4に本発明の他の実施例である、EGSM、DAMPS、DCS、PCS対応のクワッドバンドアンテナスイッチ回路のブロック図を示す。この実施例では実施例4のスイッチ回路にダイプレクサDip3を接続し、DAMPS受信端子を追加した回路になっている。さらにEGSM送信端子とDAMPS送信端子を共通にすることにより、回路の簡略化が可能となる。この場合、EGSM送信(880MHz〜915MHz)とDAMPS送信(824MHz〜849MHz)とが比較的近い周波数にあるため、パワーアンプも共通化可能である。以上本実施例によればEGSM、DAMPS、DCS、PCS対応のクワッドバンドアンテナスイッチ回路が得られる。
【0040】
(実施例5)
図12に本発明の他の実施例である、EGSM、DCS、PCS、W-CDMA対応のクワッドバンドアンテナスイッチ回路のブロック図を示す。本例のスイッチとしてSP4T(Single Pole 4 Throw)とよばれるGaAs FETスイッチを使用した。さらにW-CDMA送受信端子の後段にデュプレクサDupを接続した回路となっている。この場合、デュプレクサDupはW-CDMA帯域(1920MHz〜2170MHz)の送受信信号を分波合成し、W-CDMAの送信と受信を切り換えることができ、TDMA系とCDMA系の異なるシステムにも対応できる。
以上本実施例によればEGSM、DCS、PCS、W-CDMA対応のクワッドバンドアンテナスイッチ回路が得られる。
【0041】
(実施例6)
一般的にGaAsスイッチはダイオードスイッチと比較すると高価であり、さらに実施例3、実施例4で使用したSP3T型、実施例5で使用したSP4T型のGaAsスイッチは実施例1、2で使用したSPDT型のGaAsスイッチより更に高価となり携帯電話端末に使用する部品としては不向きである。その点の一つの改良として図5に本発明の他の実施例である、EGSM、DAMPS、DCS、PCS対応のクワッドバンドアンテナスイッチ回路のブロック図を示す。本実施例では実施例1の回路に加えて、Dip1に位相分波器PS2、Dip2に位相分波器PS1を接続した回路になっている。この実施例で使用するGaAsスイッチはSPDTであるため、SP3T、SP4Tを使用した場合と比較すると低コストの部品が実現可能となる。図11に本実施例の具体的な等価回路を示す。Dip1、Dip2、SW、LPF1、LPF2およびVNFは実施例1で説明したものと同じであるのでここでの説明は省略する。
【0042】
位相分波器PS1は伝送線路L12、L13、DAMPS受信用のSAWフィルタSAW1、およびEGSM受信用のSAWフィルタSAW2より構成される。伝送線路L13はDAMPS受信周波数(869MHz〜894MHz)で共振するように伝送線路の長さが調節されたλ/4共振器である。伝送線路L12はEGSM受信周波数(925MHz〜960MHz)で共振するように伝送線路の長さが調節されたλ/4共振器である。λ/4共振器は終端条件によりインピーダンスが大きく変化する特性を持ち、50Ω終端の場合は50Ω、ショート終端の場合はオープン、オープン終端の場合にはショートのインピーダンスを持つ。一方SAWフィルタの特性は、通過帯域では50Ω、通過帯域近傍の周波数ではショートに近いインピーダンスを持つ。したがって、DAMPS受信帯域においては、ダイプレクサDip2から見たEGSM受信端子のインピーダンスはオープン、DAMPS受信端子のインピーダンスは50Ωになり、DAMPS受信信号はDAMPS受信端子側へ分波される。逆にEGSM受信帯域においては、ダイプレクサDip2から見たDAMPS受信端子のインピーダンスはオープン、EGSM受信端子のインピーダンスは50Ωになり、EGSM受信信号はEGSM受信端子側へ分波される。以上の動作でPS1はDAMPS受信信号とEGSM受信信号とを分波できる。
【0043】
位相分波器PS2は伝送線路L14、L15、DCS受信用のSAWフィルタSAW3、およびPCS受信用のSAWフィルタSAW4より構成される。伝送線路L15はDCS受信周波数(1805MHz〜1880MHz)で共振するように伝送線路の長さが調節されたλ/4共振器である。伝送線路L14はPCS受信周波数(1930MHz〜1990MHz)で共振するように伝送線路の長さが調節されたλ/4共振器である。λ/4共振器は終端条件によりインピーダンスが大きく変化する特性を持ち、50Ω終端の場合は50Ω、ショート終端の場合はオープン、オープン終端の場合にはショートのインピーダンスを持つ。一方SAWフィルタの特性は、通過帯域では50Ω、通過帯域近傍の周波数ではショートに近いインピーダンスを持つ。したがって、DCS受信帯域においては、ダイプレクサDip1から見たPCS受信端子のインピーダンスはオープン、DCS受信端子のインピーダンスは50Ωになり、DCS受信信号はDCS受信端子側へ分波される。逆にPCS受信帯域においては、ダイプレクサDip1から見たDCS受信端子のインピーダンスはオープン、PCS受信端子のインピーダンスは50Ωになり、PCS受信信号はPCS受信端子側へ分波される。以上の動作でPS2はDCS受信信号とPCS受信信号とを分波できる。
【0044】
さらに、EGSM送信端子とDAMPS送信端子を共通にすることにより、回路の簡略化が可能となる。この場合、EGSM送信(880MHz〜915MHz)とDAMPS送信(824MHz〜849MHz)とが比較的近い周波数にあるため、パワーアンプも共通化可能である。同様にDCS送信端子とPCS送信端子を共通にすることにより、回路の簡略化が可能となる。この場合、DCS送信(1710MHz〜1785MHz)とPCS送信(1850MHz〜1910MHz)とが比較的近い周波数にあるため、パワーアンプも共通化可能である。
以上の実施例によれば、SPDTのGaAsスイッチ1個を使用するだけでEGSM、DAMPS、DCS、PCS対応のクアッドバンドアンテナスイッチ回路が得られ、小型化、低コスト化が図れる。
【0045】
次に、静電サージ対策用のハイパスフィルタについて説明する。
図13はその一実施例を示す等価回路図である。図13においてインダクタL1は入力端子P1とグランドとの間に接続され、容量C1は入力端子P1と出力端子P2との間に挿入され、インダクタL2と容量C2からなる直列共振回路は出力端子P2とグランドとの間に接続されている。この場合、L1とC1の値を適宜選択することによって静電サージはグランドへ逃がし、高周波信号は低損失で伝達するようなハイパスフィルタが構成される。ここでL1は50nH以下、C1は10pF以下が望ましい。また、L2およびC2からなる直列共振回路は、その共振周波数が100MHz〜500MHzの間に設定されるようにL、Cの値を設定する。この場合C2は10pF以上、L2は50nH以下が望ましい。これにより静電破壊で問題となる前記共振周波数帯での静電サージをグランドへ吸収することができ、静電サージ対策をより効率的に行うことが出来る。
【0046】
図14は静電サージ対策用ハイパスフィルタ回路の他の実施例である。図14においてインダクタL1、L2、容量C1、C2の役割は図13に示したものと同じであるが、容量C1と出力端子P2の間に容量C3およびインダクタL3から構成される並列共振回路が挿入されている点が異なる。この並列共振回路は送信信号のN倍の周波数に減衰極を持つように設定することにより、アンテナから発信する高調波ノイズ信号を除去する働きをする。また、C3、L3の値を調整することにより静電サージ回路全体の整合が調整可能となり、より効果的である。
【0047】
実際の携帯端末で起こりうる静電サージによる破壊は、人体が帯電した状態で携帯端末のアンテナに接触した場合が想定される。この状況を実験的に再現する方法としてHuman Body Modelが一般的に用いられる。このモデルより人体からのサージ波形はDC〜300MHzまでの周波数成分が支配的であることが知られている。そこで、本発明の図13の静電サージ対策回路と図18(a)(b)で示す回路についてDC〜2GHzまでの減衰特性を測定した。図16に減衰特性を、図17に反射特性をそれぞれ示す。特性比較として、通過させる信号は図中△印で示す900MHz帯域、1800MHz帯域を想定し、図17に示すようにそれぞれの帯域での反射特性V.S.W.Rが1.5以下となるように設定した。図16の減衰特性より静電破壊で問題となる300MHz以下の周波数帯での減衰量は、図18(a)(b)の静電サージ対策回路では5dB以下であるのに対し、図13の静電サージ対策回路では30dB以上であり、こちらの静電サージ対策回路の方が25dB強(17倍以上)の減衰量(静電サージ除去効果)が確保できている。
【0048】
(実施例7)
図15は静電サージ対策用のハイパスフィルタを備えたトリプルバンドアンテナスイッチ回路の実施例である。この例の場合SP3Tスイッチはアンテナ端子から入出力された信号のうちEGSM送信信号、DCS受信信号を分波器Dip1へ切り換え、DCS/PCS送信信号、EGSM受信信号を分波器Dip2へ切り換え、PCS受信信号をPCS受信のSAWへそれぞれ切り換えを行う。ローパスフィルタLPF1へはEGSM TX端子から入力される送信信号に含まれるN次高調波歪を減衰する役割を担い、LPF2はDCS/PCS TX端子から入力される送信信号に含まれるN次高調波歪を減衰する役割を担う。SAWフィルタSAW1、SAW2、SAW3はそれぞれEGSM受信信号、DCS受信信号、PCS受信信号に含まれる受信帯域外のノイズを除去する役割を担う。分波器Dip1はLPF1およびSAW2に接続され、分波器Dip2はLPF2およびSAW1に接続される。
【0049】
静電サージ対策回路はアンテナ端子ANTとSP3Tスイッチの間に挿入され、アンテナから入力された静電サージをグランドへ吸収する。点線枠内に示したインダクタL3とコンデンサーC3で構成される並列共振回路はオプションであるが、この並列共振回路を設けた場合は、減衰極をDCS/PCS Txの2倍の周波数(3420MHz〜3820MHz)に調整することにより、EGSM送信の4倍の周波数(3520MHz〜3660MHz)も同時に減衰させることができるため、DCS/PCS送信の2倍減衰量、EGSM送信の4倍減衰量を同時に減衰させることができる。また並列共振回路L3、C3は整合回路としての機能も兼ね備えているため、アンテナスイッチ全体のマッチング調整用として有用である。この静電サージ対策回路はアンテナトップだけではなく必要に応じてDipとLPFの間、またDipとSAWの間などに適宜挿入してもよい。また、本例ではノッチフィルタを省いているが、上述してきたノッチフィルタ等を組み合わせて設けても良いことは無論である。
以上により、SP3Tスイッチ、受信のSAWフィルタ、送信端子に接続されるパワーアンプ、受信端子に接続されるローノイズアンプなどの回路を静電サージから効率的に保護することが出来る。
【0050】
(実施例8)
本発明におけるダイプレクサ、ローパスフィルタおよび可変ノッチフィルタを構成する伝送線路および容量の一部は誘電体積層基板に内蔵可能であり、スイッチ回路として用いたSPDT、SP3T、SP4TなどのGaAs FETスイッチ素子、および抵抗、容量、チョークコイルなどのチップ部品を前記誘電体積層基板上に搭載することにより、小型で安価なマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品が得られる。
図7は図8の等価回路で示されるアンテナスイッチ積層モジュール複合部品の斜視図を示した。積層体の内部にはダイプレクサDip1、Dip2、ローパスフィルタLPF1、LPF2および可変ノッチフィルタVNFを構成する伝送線路および容量が複数の層に分けられて印刷されるため、小型化軽量化が可能となる。
また、本実施例では積層基板は950℃以下の低温焼成が可能なセラミック誘電材料(LTCC)を用いており、焼成前のセラミックグリーンシートは伝送線路、容量を形成しやすいように、シート厚みが40〜200μmのものを使用した。このセラミックグリーンシートを複数積層し、個片にカットし側面電極を印刷した後に、950℃で焼成することにより、アンテナスイッチ積層モジュール複合部品の積層体が得られる。さらに、得られた積層体上にGaAs FETスイッチ、チップ抵抗、チップコンデンサおよびチョークコイルを実装する事により、図8の等価回路で示されるアンテナスイッチ積層モジュール複合部品が得られる。
【0051】
(その他の実施例)
以上の実施例ではEGSM、DCS、DAMPS、PCS、W-CDMAに対応した、マルチバンドアンテナスイッチ回路について述べたが、これ以外にもPDC800帯域(810〜960MHz)、GPS帯域(1575.42MHz)、PHS帯域(1895〜1920MHz)、Bluetooth帯域(2400〜2484MHz)や、米国で普及が見込まれるCDMA2000、中国で普及が見込まれるTD-SCDMAなどの場合も同様の効果が期待できる。したがって、本発明によれば高調波発生量を抑制した、デュアルバンド、3バンド、4バンド、5バンド等のマルチモードマルチバンドのアンテナスイッチ回路が得られ、しかも従来のPINダイオードを用いた回路と比較して、小型化、低消費電力化が可能となる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、GaAsスイッチなどのFETスイッチと2つのダイプレクサを用い、ダイプレクサの送信端子にローパスフィルタを接続し、アンテナ端子とスイッチとの間にノッチフィルタすることによりGaAsスイッチなどのFETスイッチを使用した場合に懸念される高調波発生量を抑制することができる。
また、静電サージ対策回路を用いればアンテナ端子からの静電サージをグランドに逃がし、かつ広範囲の周波数帯に対して静電サージを吸収し、より完全に静電破壊対策ができる。
また、ダイプレクサとスイッチ回路の伝送線路および容量の一部を積層基板に内蔵し一体化するため、ダイプレクサとスイッチ回路との配線も積層基板の表面又は内部に形成され、配線による損失を低減し、また両者間の整合調整が容易となる。さらに、スイッチ素子、抵抗、容量およびインダクタなどのチップ部品は積層基板上に搭載するので、一層小型で安価な積層モジュール複合部品となる。以上によりこれらのマルチバンドアンテナスイッチ回路、又はマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品を用いた通信装置は、従来のPINダイオードを用いた回路と比較して装置の小型化と低消費電力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示すEGSM、DCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図2】 EGSM、DCS対応アンテナスイッチ回路の一例を示すブロック図である。
【図3】 本発明に係る他の実施例で、EGSM、DCS、PCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図4】 本発明に係る他の実施例で、EGSM、DAMPS、DCS、PCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図5】 本発明に係る他の実施例で、EGSM、DAMPS、DCS、PCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図6】 本発明に用いる可変ノッチフィルタの特性を示す図である。
【図7】 本発明であるEGSM、DCS対応アンテナスイッチ積層モジュール複合部品の斜視図である。
【図8】 本発明に係る図1に示したEGSM、DCS対応アンテナスイッチ回路の等価回路図である。
【図9】 PINダイオードの動作点を示す図である。
【図10】 本発明に係る他の実施例で、逆電圧印加型の可変ノッチフィルタを使用したEGSM、DCS対応アンテナスイッチ回路の等価回路図である。
【図11】 本発明に係る図5に示したEGSM、DAMPS、DCS、PCS対応アンテナスイッチ回路の等価回路図である。
【図12】 本発明に係る他の実施例で、EGSM、W-CDMA、DCS、PCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図13】 本発明に係る静電サージ対策用ハイパスフィルタの実施例の等価回路図である。
【図14】 本発明に係る他の静電サージ対策用ハイパスフィルタの等価回路図である。
【図15】 本発明に係る他の実施例で、静電サージ対策用ハイパスフィルタを用いたアンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図16】 本発明の静電サージ対策回路の減衰特性を示す図である。
【図17】 本発明の静電サージ対策回路の反射特性を示す図である。
【図18】 静電サージ対策回路の例を示す等価回路図である。
【図19】 従来技術によるPINダイオードスイッチを使用したEGSM、DCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【図20】 従来技術によるPINダイオードスイッチを使用したスイッチ回路の等価回路を示す図である。
【図21】 従来技術によるGaAsスイッチを使用したEGSM、DCS対応アンテナスイッチ回路のブロック図である。
【符号の説明】
ANT:アンテナ端子
TX:送信端子
RX:受信端子
Dip、Dip1、Dip2:ダイプレクサ
Dup:デュプレクサ
LPF1、LPF2:ローパスフィルタ
SW、SW1、SW2:スイッチ回路
VNF:可変ノッチフィルタ
L1〜L17:伝送線路、インダクタまたはチョークコイル
C、C1〜C19:容量
D:PINダイオード
R:抵抗
VC、VC1、VC2、VC3:コントロール電源
1:積層誘電体
2:SPDT GaAs FETスイッチ
3:ダイオードスイッチ
4:チップコンデンサ
5:チョークコイル
6:チップ抵抗
7:側面電極端子
Claims (8)
- 第1の送信端子と第2の受信端子と第1の共通端子を有する第1のダイプレクサと、第2の送信端子と第1の受信端子と第2の共通端子を有する第2のダイプレクサと、第1の送受信端子と第2の送受信端子とアンテナ端子を有し、前記第1の送受信端子と前記第2の送受信端子とのいずれか一方が、前記アンテナ端子に切り替え接続されるスイッチ回路とを有し、前記第1の共通端子が前記第1の送受信端子に接続され、前記第2の共通端子が前記第2の送受信端子に接続されたマルチバンドアンテナスイッチ回路であって、
前記スイッチ回路とアンテナとの間に、前記第1の送信端子又は前記第2の送信端子に入力される送信信号の2倍又は3倍の周波数を減衰させるとともに、静電気放電によるサージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタとを有し、
前記フィルタは、入力端子とグランドとの間に接続されたチョークコイルと、出力端子とグランドとの間にインダクタとダイオードスイッチと容量で構成された直列共振回路を備え、ダイオードスイッチをON状態又はOFF状態とすることで前記直列共振回路の振周波数が変化することを特徴とするマルチバンドアンテナスイッチ回路。 - アンテナに接続するスイッチ回路と、前記スイッチ回路に接続する複数のダイプレクサを備え、前記スイッチ回路とアンテナとの間に、静電気放電によるサージ電圧をグランドへ吸収させるフィルタを有し、
前記フィルタは、入力端子とグランドとの間に接続されたインダクタと、前記入力端子と出力端子との間に接続された容量と、出力端子とグランドとの間にインダクタと容量で構成された直列共振回路が接続されたハイパスフィルタを備え、
前記直列共振回路の共振周波数を100MHzから500MHzの間としたことを特徴とするマルチバンドアンテナスイッチ回路。 - 前記入力端子と前記出力端子との間に、第3のインダクタおよび第3の容量からなる並列共振回路を挿入したことを特徴とする請求項2に記載のマルチバンドアンテナスイッチ回路。
- 第1の送信端子と第2の受信端子と第1の共通端子を有する第1のダイプレクサと、第2の送信端子と第1の受信端子と第2の共通端子を有する第2のダイプレクサと、第1の送受信端子と第2の送受信端子とアンテナ端子を有し、前記第1の送受信端子と前記第2の送受信端子とのいずれか一方が、前記アンテナ端子に切り替え接続されるスイッチ回路とを有し、前記第1の共通端子が前記第1の送受信端子に接続され、前記第2の共通端子が前記第2の送受信端子に接続されたことを特徴とする請求項2又は3に記載のマルチバンドアンテナスイッチ回路。
- 前記第1の送信端子に接続された第1のローパスフィルタと、前記第2の送信端子に接続された第2のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1又は4に記載のマルチバンドアンテナスイッチ回路。
- 前記スイッチ回路が、GaAs半導体からなることを特徴とする請求項1〜53のいずれかに記載のマルチバンドアンテナスイッチ回路。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のマルチバンドアンテナスイッチ回路を構成する伝送線路および容量の一部を積層基板に内蔵し、前記マルチバンドアンテナスイッチ回路の一部を構成するスイッチ素子、抵抗、容量およびインダクタなどのチップ部品を積層基板上に搭載したことを特徴とするマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品。
- 前記請求項1〜6のいずれかに記載のマルチバンドアンテナスイッチ回路、又は請求項 7記載のマルチバンドアンテナスイッチ積層モジュール複合部品を用いたことを特徴とする通信装置。
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