JP4024633B2 - 電磁式アクチュエータ及びこれを用いたデファレンシャル装置と動力断続装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、クラッチなどの被操作装置を操作する電磁式アクチュエータと、このクラッチによって差動を制限する、あるいは、駆動力を断続するデファレンシャル装置と、このクラッチによって駆動力を断続する動力断続装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、特許文献1に記載された車両用デフロック装置501を示している。この車両用デフロック装置501は、ベベルギア式差動機構503、その差動回転をロックするためのドッグクラッチ505、ドッグクラッチ505を噛み合わせ操作する電磁式アクチュエータ507、ドッグクラッチ505の噛み合いを解除するリターンスプリング509などから構成されている。
【0003】
デフケース511を回転させるエンジンの駆動力は、差動機構503のサイドギア513,515からそれぞれの車軸517,519を介して左右の車輪側に配分される。ドッグクラッチ505は、デフケース511と磁性材料製のプランジャ521との間に設けられており、このプランジャ521は左サイドギア513側の車軸517に軸方向移動自在にスプライン連結されている。また、プランジャ521はリターンスプリング509によってドッグクラッチ505の噛み合い解除方向(図6の左方)に付勢されている。
【0004】
電磁式アクチュエータ507は、プランジャ521の外周に配置された磁性材料製のベアリングハウジング523上に巻線された電磁コイル525と、上記のプランジャ521などから構成されており、ベアリングハウジング523とプランジャ521とによって電磁コイル525の磁路が構成されている。
【0005】
電磁コイル525が励磁されていない間、プランジャ521はリターンスプリング509の付勢力によって、図6の位置に移動しており、この状態ではドッグクラッチ505の噛み合いと、差動機構503の差動ロックが解除されている。
【0006】
また、電磁コイル525が励磁されると、上記の磁路に磁束ループが形成され、その磁力によって生じた移動操作力によりプランジャ521は右方に移動し、ドッグクラッチ505を噛み合わせて差動機構503の差動をロックする。
【0007】
悪路走行中のように、駆動輪が空転し易い状況で差動をロックさせると、空転車輪からの駆動力の逃げが防止されて、悪路などの脱出性、走破性が向上し、車両のスタックが防止される。
【0008】
電磁式アクチュエータ507は、電磁コイル525とプランジャ521とを同軸配置したことにより、コンパクトに構成されると共に、ユニット性が高く、従って、車載性に勝れている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭64−22633号(明細書2頁右上欄1行〜右下欄17行、図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような電磁式アクチュエータ507では、プランジャ521の周囲の部品が磁性材料で製造されていると、本来の磁束ループに対して分岐したループ(磁気漏れ)が形成されてしまう。このような場合、磁気漏れによって、電磁コイル525に磁力のロスが生じるので、プランジャ521及びドッグクラッチ505の操作力が低下し、ドッグクラッチ505を噛み合わせてデファレンシャル装置507の差動をロックさせるときの動作に不具合が生じ、あるいは、操作レスポンスが遅くなるから、悪路などでの脱出性や走破性の向上効果、スタックの防止効果などが損なわれ、あるいは、失われる恐れがある。
【0011】
また、プランジャ521に僅かな倒れが生じても、プランジャ521とベアリングハウジング523との間で移動抵抗が増加し、囓りが発生することがあるが、このような場合、上記のようにプランジャ521の移動操作力が低下すると、電磁式アクチュエータ507の動作とデフロック装置501の差動ロック動作が円滑を欠き、不安定になる恐れがある。
【0012】
しかし、電磁コイル525の磁気漏れやプランジャ521の倒れに備えて、電磁コイル525の操作移動力(磁力)を強化するには、電磁コイル525の大型化や励磁電流の増加が必要になるから、これに伴って、バッテリーの負担が増加し、エンジンの燃費が低下し、電磁式アクチュエータ507とデフロック装置501の車載性が低下する。
【0013】
そこで、この発明は、電磁コイルによってプランジャを移動操作し、クラッチなどの被操作装置を断続操作する電磁式アクチュエータであって、電磁コイルのコイルハウジングとプランジャの間で磁気漏れを防止することにより、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加を伴わずに、円滑で安定した動作が得られると共に、プランジャと被操作装置の操作力と操作レスポンスを向上させた電磁式アクチュエータと、この電磁式アクチュエータを用いて構成したデファレンシャル装置及び動力断続装置の提供を目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電磁式アクチュエータは、一対のトルク伝達部材間に配置されたクラッチによってトルク伝達部材の間で駆動力を断続する断続装置に用いられ、環状に形成された電磁コイルと、前記電磁コイルを一体に包み込んで保持するコイルハウジングと、前記コイルハウジングと共に前記電磁コイルの磁路を構成し、前記電磁コイルが励磁されると軸方向に移動し、前記クラッチを移動操作するプランジャと、前記コイルハウジングに設けられ、前記プランジャを軸方向移動自在に支承するガイド部材とを備えた電磁式アクチュエータであって、前記プランジャを前記コイルハウジングと対向し前記電磁コイルの励磁により磁束ループを形成する第1環状部材と、前記第1環状部材と一体に形成されて前記第1環状部材より軸方向に長く配置され前記ガイド部材に支承されて軸方向移動により前記クラッチを押圧して移動操作する非磁性材料製の第2環状部材とで構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項1の電磁式アクチュエータでは、ガイド部材に支承されるプランジャの第2環状部材を非磁性材料製にした。
【0016】
このように、プランジャの第2環状部を非磁性材料製にしたことにより、電磁コイルを励磁したとき、これら対向部の間で磁束の分岐ループが生じることが防止される。
【0017】
こうして、磁気漏れによる電磁コイルの磁力ロスが防止されるから、プランジャと被操作装置の操作力及び操作レスポンスが高く保たれる。
【0018】
また、デファレンシャル装置の差動制限用クラッチ(被操作装置)を操作する場合は、車両が悪路などを走行する際の脱出性や走破性の向上効果、スタックの防止効果などが高く保たれる。
【0019】
また、プランジャの倒れによって、プランジャとコイルハウジングとの間で移動抵抗が増加し、囓りが発生した場合でも、上記のようにプランジャと被操作装置の操作力と操作レスポンスが高く保たれるから、電磁式アクチュエータと被操作装置の動作も円滑で安定に保たれる。
【0020】
また、磁気漏れやプランジャの倒れに備えて、電磁コイルの磁力を強化する必要がなくなり、電磁コイルを大型化し、励磁電流を増やす必要がなくなるから、これに伴うバッテリーの負担増加、エンジンの燃費低下、電磁式アクチュエータと被操作装置の車載性低下などが避けられる。
【0022】
請求項2のデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転するデフケースと、前記デフケースの回転を一対の出力側サイドギアから車輪側に配分する差動機構と、前記デフケースと前記出力側サイドギアのいずれか2者との間に配置され、前記差動機構の差動を制限するクラッチと、請求項1に記載された電磁式アクチュエータとを備え、前記電磁式アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記差動機構の差動を制限することを特徴とする。
【0023】
また、請求項2のデファレンシャル装置は、本発明の電磁式アクチュエータによってクラッチを連結すれば差動機構の差動が制限され、クラッチの連結を解除すれば差動が自由になる。
【0024】
また、請求項2のデファレンシャル装置は、請求項1の電磁式アクチュエータを用いたことにより、プランジャとクラッチの操作力とレスポンスが向上し、円滑で安定した差動制限機能が得られると共に、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加、バッテリーの負担増加、エンジンの燃費低下、大型化と重量増加による車載性の低下などが防止される。
【0025】
請求項3のデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転するアウターデフケースと、前記アウターデフケースの内部に相対回転可能に配置されたインナーデフケースと、前記インナーデフケースに連結された差動機構と、前記アウターデフケースと前記インナーデフケースとの連結を断続するクラッチと、請求項1に記載された電磁式アクチュエータとを備え、前記電磁式アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記アウターデフケースと前記インナーデフケースとの間でトルクを断続することを特徴とする。
【0026】
請求項3のデファレンシャル装置は、差動機構の入力側で駆動力を断続するデファレンシャル装置であり、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明の電磁式アクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば車両は2輪駆動状態になる。
【0027】
また、請求項3のデファレンシャル装置は、請求項1の電磁式アクチュエータを用いたことにより、プランジャとクラッチの操作力とレスポンスが向上し、円滑で安定した駆動力の断続機能が得られると共に、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加、バッテリーの負担増加、エンジン燃費の低下、大型化と重量増加による車載性の低下などが防止される。
【0028】
請求項4のデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転するデフケースと、前記デフケースの回転を一対の出力側サイドギアから車輪側に配分する差動機構と、前記出力側サイドギアのいずれか一方とその車輪との間に配置されたクラッチと、請求項1に記載された電磁式アクチュエータとを備え、前記電磁式アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記サイドギアと車輪との間でトルクを断続することを特徴とする。
【0029】
また、請求項4のデファレンシャル装置は、差動機構の出力側で駆動力を断続するデファレンシャル装置であり、請求項3のデファレンシャル装置と同様に、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明の電磁式アクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば、差動機構の差動回転によって駆動力が遮断され、車両は2輪駆動状態になる。
【0030】
また、請求項4のデファレンシャル装置は、請求項1の電磁式アクチュエータを用いたことにより、プランジャとクラッチの操作力とレスポンスが向上し、円滑で安定した駆動力の断続機能が得られると共に、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加、バッテリーの負担増加、エンジン燃費の低下、大型化と重量増加による車載性の低下などが防止される。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1〜図5によって本発明の一実施形態である電磁式アクチュエータ1及びこれを用いたデファレンシャル装置3の説明をする。
【0035】
以下の説明の中で、左右の方向はデファレンシャル装置3が用いられた車両での左右の方向である。また、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0036】
デファレンシャル装置3は、電磁式アクチュエータ1、デフケース5、ベベルギア式の差動機構7、ドッグクラッチ9(クラッチ:被操作装置)、リターンスプリング11、ポジションスイッチ13、コントローラなどから構成されている。
【0037】
デフケース5は、ケーシング本体15と左右のカバー17,19から構成されており、ケーシング本体15と左のカバー17はボルト21で固定され、ケーシング本体15と右のカバー19は溶接されている。
【0038】
デフケース5はデフキャリヤ23の内部に配置されており、カバー17,19に形成された各ボス部25,27はテーパーローラーベアリング29を介してそれぞれデフキャリヤ23に支承されている。
【0039】
デフキャリヤ23の内部にはオイル溜りが形成されている。
【0040】
デフケース5にはリングギアがボルトで固定されており、このリングギアは動力伝達系のギヤと噛み合っている。この動力伝達系はトランスミッション側に連結されており、デフケース5はトランスミッションとこの動力伝達系とを介して伝達されるエンジンの駆動力により回転駆動される。
【0041】
差動機構7は、複数本のピニオンシャフト31、各ピニオンシャフト31上に支承されたピニオンギア33、出力側のサイドギア35,37から構成されている。
【0042】
各ピニオンシャフト31は、デフケース5(ケーシング本体15)に設けられた貫通孔39に端部を係合し、スプリングピン41によって抜け止めされている。また、サイドギア35,37は左右からそれぞれ各ピニオンギア33と噛み合っている。
【0043】
デフケース5と各ピニオンギア33との間には球面ワッシャ43が配置されており、ピニオンギア33の遠心力と、サイドギア35,37との噛み合いによってピニオンギア33に生じる噛み合い反力とを受けている。
【0044】
各サイドギア35,37のボス部45,47は、カバー17,19に形成された支承部49,51によって回転自在に支承されており、各ボス部45,47はスプライン連結された車軸を介して左右の車輪側に連結されている。
【0045】
左サイドギア35とデフケース5との間にはスラストワッシャ53が配置され、サイドギア35の噛み合い反力を受けており、右サイドギア37とデフケース5との間にはスラストワッシャ55,55が配置され、サイドギア37の噛み合い反力を受けている。
【0046】
ドッグクラッチ9は、右サイドギア37に形成された噛み合い歯57と、クラッチリング59に形成された噛み合い歯61によって構成されている。
【0047】
このクラッチリング59には脚部63が周方向等間隔に形成されている。クラッチリング59は各脚部63をカバー19に形成された周方向等間隔の開口65にそれぞれ貫通させてデフケース5に回り止めされ、軸方向移動自在に配置されている。
【0048】
クラッチリング59が左に移動するとドッグクラッチ9が噛み合って差動機構7の差動がロックされ、図1のように、クラッチリング59が右に移動するとドッグクラッチ9の噛み合いが解除され、差動ロックが解除される。
【0049】
リターンスプリング11は右サイドギア37とクラッチリング59との間に配置され、クラッチリング59をドッグクラッチ9の噛み合い解除側(右方)に付勢している。
【0050】
電磁式アクチュエータ1は、電磁コイル67、一対のコイルハウジング69,71、ガイド部材73、プランジャ75などから構成されている。
【0051】
コイルハウジング69,71は磁性材料(S10C)で作られており、電磁コイル67を左右から挟み込んで一体に形成されている。右のコイルハウジング71は連結部材を介してデフキャリヤ23に固定されており、電磁コイル67のリード線77はデフキャリヤ23の外部に引き出され、コネクター79によりコントローラ側のコネクターを介して車載のバッテリに接続されている。
【0052】
また、コイルハウジング69,71は、左右のスラストワッシャ81,83によりデフケース5の右ボス部27と、テーパーローラーベアリング29のインナーレース85との間で軸方向に位置決めされている。
【0053】
ガイド部材73は非磁性材料(例えば、ステンレス鋼)で作られており、コイルハウジング71の内周部に溶接されている。
【0054】
プランジャ75はコイルハウジング69,71の内周側とガイド部材73の外周側に配置されている。
【0055】
また、プランジャ75は磁性材料(S10C)で作られたリング87(第1環状部材)と、非磁性材料(例えば、ステンレス鋼)で作られた押圧リング89(第2環状部材)からなり、押圧リング89はリング87の内周側に配置され、リングと一体に形成されている。押圧リング89の内周はガイド部材73の外周で軸方向移動自在に支承されており、押圧リング89の内周にはテフロン(登録商標)のコーティングが施され、摺動抵抗を低減させている。
【0056】
なお、このテフロン(登録商標)コーティングは、ガイド部材73の外周に施してもよい。
【0057】
ドッグクラッチ9のクラッチリング59は、リターンスプリング11の付勢力により、プレッシャープレート91を介して押圧リング89(プランジャ75)を右方に押圧している。このプレッシャープレート91は腕部93によって回転側のクラッチリング59に連結されており、静止側のプランジャ75(押圧リング89)との間で摺動を吸収している。
【0058】
コイルハウジング69,71とプランジャ75のリング87によって電磁コイル67の磁路が構成されており、プランジャ75(リング87)はアーマチャになっている。
【0059】
コントローラは、電磁コイル67の励磁、励磁停止を行う。
【0060】
電磁コイル67が励磁されると、磁路に磁束ループ95が発生し、その磁力によってリング87(プランジャ75)が左方に移動し、押圧リング89(プランジャ75)がプレッシャープレート91を介し、リターンスプリング11を撓ませながら、クラッチリング59を押圧してドッグクラッチ9を噛み合わせ、上記のように、差動機構7の差動をロックさせる。
【0061】
また、上記のようにガイド部材73とプランジャ75の押圧リング89の両方が非磁性材料で作られているから、図2のように、電磁コイル67が励磁されたとき、磁性材料のガイド部材521とプランジャ523との間に磁束の分岐ループ529が生じる図7の従来例と異なって、磁束ループ95から分岐ループが発生することはなく、磁気漏れ(電磁コイル67の磁力ロス)が避けられる。
【0062】
悪路走行中のように、左右の駆動輪が空転し易い状況で差動をロックさせると、空転車輪からの駆動力の逃げが防止されて、悪路などの脱出性、走破性が向上し、車両のスタックが防止される。
【0063】
なお、コイルハウジング69には、電磁コイル67の磁力によってプランジャ75が左方へ移動したときに、プランジャ75(リング87)と突き当たって停止させるストッパ部97(図2)が設けられている。
【0064】
また、電磁コイル67の励磁を停止すると、リターンスプリング11によってクラッチリング59とプレッシャープレート91とプランジャ75が右方へ戻り、ドッグクラッチ9の噛み合いが解除され、差動機構7の差動が自由になる。
【0065】
ポジションスイッチ13の取り付け軸99(中心線:SL1)はデフキャリヤ23を回転自在に貫通しており、取り付け軸99には所定の軸間距離Lを介して位置検出軸101(中心線:SL2)が平行に一体形成されている。この位置検出軸101の先端には円形断面のプローブ103が同軸に形成されており、このプローブ103はプレッシャープレート91の左側面に係合している。また、位置検出軸101とプローブ103は適度な強さのリターンスプリングによって右方に付勢されている。
【0066】
ポジションスイッチ13のプローブ103(位置検出軸101)は、ドッグクラッチ9が噛み合うと、プレッシャープレート91の移動に伴って図1の破線の位置まで移動し、ドッグクラッチ9の噛み合いが解除されると、上記のリターンスプリングによって実線の位置へ戻る。
【0067】
ポジションスイッチ13は位置検出軸101のこのような軸方向往復移動に伴ってON−OFFし、その信号をコントローラに送る。コントローラは受け取ったON−OFF信号に基づいて、デファレンシャル装置3(差動機構7)の差動回転がロックされているか否かを判断する。
【0068】
ポジションスイッチ13の取り付けは次のように行われる。
【0069】
先ず、図4のように、プローブ103(位置検出軸101)がプレッシャープレート91に対して径方向外側になる角度で取り付け軸99をデフキャリヤ23に取り付け、さらに、プローブ103がプレッシャープレート91の左側に来るまで取り付け軸99を差し込む。
【0070】
次に、この状態から図5の矢印105のいずれかの方向に、取り付け軸99を180°回転させると、プローブ103がプレッシャープレート91の左側面に係合する。
【0071】
さらに、図1と図3のように、取り付け軸99と一体に形成されたブラケット107をボルト109でデフキャリヤ23に固定して回り止めすれば、ポジションスイッチ13の取り付けが終了する。
【0072】
また、ボルト109を外し、取り付け軸99を図5の状態から図4の状態まで回転させれば、プローブ103とプレッシャープレート91が外れるから、ポジションスイッチ13の全体をデフキャリヤ23から抜き取って取り外すことができる。
【0073】
デフケース5には、右カバー19の開口65の他に、左カバー17とケーシング本体15にも開口111,113がそれぞれ形成されており、ボス部25,27の内周には螺旋状のオイル溝が形成されている。さらに、スラストワッシャ53,55と対向する部分には、前記の各螺旋状オイル溝にそれぞれ連通した径方向のオイル溝115,117が形成されている。
【0074】
開口65,111,113はいずれもデフケース5の径方向外側部分に形成されているから、デフキャリヤ23に形成されたオイル溜りのオイルに常時浸されており、デフケース5の回転に伴って開口65,111,113からオイルが流出入する。
【0075】
また、オイル溜りのオイルはデフケース5とリングギアの回転によって掻き上げられ、掻き上げられたオイルは、開口65,111から流出入すると共に、ボス部25,27の各螺旋状オイル溝から流入し、それぞれのネジポンプ作用によって移動を促進され、オイル溝115,117と、スラストワッシャ53,55の隙間などを通ってデフケース5の内部に流入する。
【0076】
デフケース5に流入したオイルは、差動機構7を構成する各ギア33,35,37の噛み合い部、ピニオンシャフト31とピニオンギア33の摺動部、デフケース5とクラッチリング59の摺動部、ドッグクラッチ9(噛み合い歯57,61)などに供給されてこれらを潤滑・冷却する。
【0077】
また、電磁式アクチュエータ1の下部もオイル溜りに浸されており、プランジャ75の押圧リング89とガイド部材73との摺動部(テフロン(登録商標)コーティング部)、プランジャ75の押圧リング89とプレッシャープレート91との摺動部、コイルハウジング69,71とスラストワッシャ81,83との摺動部、ポジションスイッチ13のプローブ103とプレッシャープレート91の摺動部なども潤滑・冷却される。
【0078】
上記の各潤滑・冷却部では、供給されたオイルによって磨耗が軽減され、耐久性が向上すると共に、各摺動部での摩擦抵抗の低減によってエンジンの燃費が向上する。
【0079】
また、押圧リング89(プランジャ75)とプレッシャープレート91との摺動部が潤滑されることにより、プランジャ75の倒れが防止されるから、電磁式アクチュエータ1によるドッグクラッチ9の断続機能(デファレンシャル装置3の差動ロック機能)が円滑で正常に保たれる。
【0080】
こうして、電磁式アクチュエータ1とデファレンシャル装置3が構成されている。
【0081】
電磁式アクチュエータ1は、コイルハウジング69,71のガイド部材73と、このガイド部材73によって支承されるプランジャ75の押圧リング89の両方を非磁性材料製にしたことにより、電磁コイル67を励磁したときに、これらの間で磁束の分岐ループが生じることがなくなり、磁気漏れによる電磁コイル67の磁力ロスが防止される。
【0082】
従って、電磁コイル67によるプランジャ75とドッグクラッチ9の操作力と操作レスポンスが高く保たれるから、悪路などを走行する際の脱出性や走破性の向上効果、車両のスタック防止効果なども高く保たれる。
【0083】
また、プランジャ75の倒れによってプランジャ75とコイルハウジング69,71との間で移動抵抗が増加し、あるいは、囓りが発生した場合であっても、上記のように電磁コイル67によるプランジャ75とドッグクラッチ9の操作力と操作レスポンスが高く保たれるから、電磁式アクチュエータ1によるドッグクラッチ9の断続機能及びデファレンシャル装置3の差動ロック機能は円滑で正常に保たれる。
【0084】
従って、電磁コイル67の磁力を特に強化する必要がなくなり、電磁コイル67を大型化し、あるいは、励磁電流を増やす必要がなくなるから、これに伴うバッテリーの負担増加、エンジンの燃費低下、電磁式アクチュエータ1とデファレンシャル装置3の車載性低下などが避けられる。
【0085】
また、ポジションスイッチ13の取り付け軸99と位置検出軸101とに軸間距離Lを与えたことによって、デフキャリヤ23からデファレンシャル装置3を取り外さずに、デフキャリヤ23とデファレンシャル装置3に対してポジションスイッチ13を取り付け、また、取り外すことが可能になった。
【0086】
このようにポジションスイッチ13の取り付けと取り外しの各作業が極めて容易になったから、デフキャリヤ23とデファレンシャル装置3の各分解コストの低減分を含めて、ポジションスイッチ13の取り付けと取り外しの各コストが大幅に低減される。
【0087】
なお、本発明では、従来例と異なって、プランジャをコイルハウジングの外周側に配置し、ガイド部材で支承することも可能である。
【0088】
このように、プランジャをコイルハウジングの外周側に配置し、あるいは、プランジャをコイルハウジングの内周側と外周側の両方に配置すれば、コイルハウジングの内周側と外周側で生じている空気層への磁束漏れを有効に利用することが可能になり、電磁コイルを大型化し、あるいは、励磁電流を増やすことなく、電磁コイルによるプランジャ及び被操作装置の移動操作力と、操作レスポンスを大幅に向上させることができる。
【0089】
また、外周側と内周側の一方で、プランジャとコイルハウジング間の磁束が飽和し、電磁コイルの磁束を充分に使い切っていない場合は、外周側と内周側の両方にプランジャを配置することにより、電磁コイルの磁束を有効に使い切ることができるから、プランジャ及び被操作装置の移動操作力と操作レスポンスがさらに向上する。
【0090】
このように、コイルハウジングの外周側にプランジャを配置すれば、プランジャとガイド部材間での磁気漏れを防止することによる本発明の効果に加えて、プランジャをコイルハウジングの外周側に配置することによる上記の効果が得られる。
【0091】
また、ガイド部材だけを非磁性材料製にする構成も可能であり、この場合、プランジャは第1環状部材と第2環状部材に分ける必要がなくなり、磁性材料の一体形成部材を従来のまま用いることができるから、それだけ低コストに実施できる。
【0092】
また、本発明の電磁式アクチュエータにおいて、被操作装置はクラッチに限らない。また、クラッチも、実施形態のような噛み合いクラッチ(ドッグクラッチ)だけでなく、多板クラッチやコーンクラッチのような摩擦クラッチでもよい。
【0093】
また、本発明のデファレンシャル装置において、差動機構は、ベベルギア式の差動機構に限らず、プラネタリーギア式の差動機構、デフケースの収容孔に回転自在に収容されたピニオンギアで出力側のサイドギアを連結した差動機構、ウォームギアを用いた差動機構などでもよい。
【0094】
また、本発明のデファレンシャル装置は、フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)と、リヤデフ(エンジンの駆動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)と、センターデフ(エンジンの駆動力を前輪と後輪に配分するデファレンシャル装置)のいずれにも用いることができる。
【0095】
【発明の効果】
請求項1の電磁式アクチュエータは、ガイド部材に支承されるプランジャの第2環状部材を非磁性材料製にしたことにより、磁気漏れによる電磁コイルの磁力ロスが防止され、プランジャと被操作装置の操作力及び操作レスポンスが高く保たれる。
【0096】
従って、デファレンシャル装置で差動制限用クラッチを操作する場合、悪路などの脱出性や走破性の向上効果、車両のスタック防止効果などが高く保たれる。
【0097】
また、プランジャの倒れによって移動抵抗の増加や囓りが生じた場合でも、上記のようにプランジャと被操作装置の操作力及び操作レスポンスが高く保たれるから、電磁式アクチュエータと被操作装置の動作も円滑で安定に保たれる。
【0098】
従って、電磁コイルを大型化し、励磁電流を増やして磁力を強化する必要がなくなり、バッテリーの負担増加、エンジン燃費の低下、電磁式アクチュエータと被操作装置の車載性低下などが避けられる。
【0099】
請求項2のデファレンシャル装置は、請求項1の電磁式アクチュエータを用いたことにより、プランジャとクラッチの操作力と操作レスポンスが向上し、円滑で安定した差動制限機能が得られると共に、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加、バッテリーの負担増加、エンジン燃費の低下、大型化と重量増加による車載性の低下などが防止される。
【0100】
請求項3のデファレンシャル装置は、請求項1の電磁式アクチュエータを用いたことにより、プランジャとクラッチの操作力と操作レスポンスが向上し、円滑で安定した断続機能が得られると共に、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加、バッテリーの負担増加、エンジン燃費の低下、大型化と重量増加による車載性の低下などが防止される。
【0101】
請求項4のデファレンシャル装置は、請求項1の電磁式アクチュエータを用いたことにより、プランジャとクラッチの操作力と操作レスポンスが向上し、円滑で安定した断続機能が得られると共に、電磁コイルの大型化や励磁電流の増加、バッテリーの負担増加、エンジン燃費の低下、大型化と重量増加による車載性の低下などが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の電磁式アクチュエータとこれを用いたデファレンシャル装置を示す断面図である。
【図2】図1の実施形態の要部拡大断面図である。
【図3】図1のA矢視図である。
【図4】図1の実施形態において、ポジションスイッチのプローブがプレッシャープレートと係合していない角度位置を示す図面である。
【図5】図1の実施形態において、ポジションスイッチのプローブをプレッシャープレートに係合させた角度位置を示す図面である。
【図6】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 電磁式アクチュエータ
3 デファレンシャル装置
5 デフケース
7 差動機構
9 ドッグクラッチ(クラッチ:被操作装置)
35,37 差動機構の出力側サイドギア
67 電磁コイル
69,71 コイルハウジング
73 コイルハウジングに固定された非磁性材料製のガイド部材
75 プランジャ
87 磁性材料製のリング(プランジャの第1環状部材)
89 非磁性材料製の押圧リング(プランジャの第2環状部材)
Claims (4)
- 一対のトルク伝達部材間に配置されたクラッチによってトルク伝達部材の間で駆動力を断続する断続装置に用いられ、
環状に形成された電磁コイルと、
前記電磁コイルを一体に包み込んで保持するコイルハウジングと、
前記コイルハウジングと共に前記電磁コイルの磁路を構成し、前記電磁コイルが励磁されると軸方向に移動し、前記クラッチを移動操作するプランジャと、
前記コイルハウジングに設けられ、前記プランジャを軸方向移動自在に支承するガイド部材とを備えた電磁式アクチュエータであって、
前記プランジャを前記コイルハウジングと対向し前記電磁コイルの励磁により磁束ループを形成する第1環状部材と、前記第1環状部材と一体に形成されて前記第1環状部材より軸方向に長く配置され前記ガイド部材に支承されて軸方向移動により前記クラッチを押圧して移動操作する非磁性材料製の第2環状部材とで構成したことを特徴とする電磁式アクチュエータ。 - 原動機の駆動力を受けて回転するデフケースと、
前記デフケースの回転を一対の出力側サイドギアから車輪側に配分する差動機構と、
前記デフケースと前記出力側サイドギアのいずれか2者との間に配置され、前記差動機構の差動を制限するクラッチと、
請求項1に記載された電磁式アクチュエータとを備え、
前記電磁式アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記差動機構の差動を制限することを特徴とするデファレンシャル装置。 - 原動機の駆動力を受けて回転するアウターデフケースと、
前記アウターデフケースの内部に相対回転可能に配置されたインナーデフケースと、
前記インナーデフケースに連結された差動機構と、
前記アウターデフケースと前記インナーデフケースとの連結を断続するクラッチと、
請求項1に記載された電磁式アクチュエータとを備え、
前記電磁式アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記アウターデフケースと前記インナーデフケースとの間でトルクを断続することを特徴とするデファレンシャル装置。 - 原動機の駆動力を受けて回転するデフケースと、
前記デフケースの回転を一対の出力側サイドギアから車輪側に配分する差動機構と、
前記出力側サイドギアのいずれか一方とその車輪との間に配置されたクラッチと、
請求項1に記載された電磁式アクチュエータとを備え、
前記電磁式アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記サイドギアと車輪との間でトルクを断続することを特徴とするデファレンシャル装置。
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