JP4036731B2 - トンネル耐火構造及びその構築方法 - Google Patents

トンネル耐火構造及びその構築方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル内壁の覆工面上に形成されるトンネル耐火構造及びその構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トンネルの内部で火災が発生すると、トンネル内が非常な高温となり、トンネルの内壁面を形成するコンクリートが剥離して落下する等の現象が発生する。そのため、トンネルの内壁面を形成するコンクリートの表面に、耐火被覆材料からなる耐火構造を形成させることが行なわれている。
例えば、特許文献1には、トンネル構造材1の表面にパネル状の耐火材層2d、内装仕上げ材3等を一体的に形成するとともに、これら耐火材層2d、内装仕上げ材3等を、ボルト6及びアンカー5によって固定してなる耐火トンネル構造体が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された耐火トンネル構造体は、耐火材層2dがロックウール等の耐火充填材からなるため、当該耐火トンネル構造体全体の強度が比較的小さく、また、耐火材の充填量が不十分であると、十分な耐火性能が得られなかったりして全体的に均一で耐火性能の高い構造体が得られ難いといった問題が生ずる。
また、特許文献1の耐火トンネル構造体は、ボルト6の頭部がトンネル内の空間に露出しているため、美観が損なわれることに加えて、火災の発生時にトンネル内の空間で生じる高温の熱がボルト6を介してトンネル構造材1に伝わり易い等の問題がある。
【0004】
一方、トンネル内壁面等に対して内装板を取り付けるために使用される内装取付金具として、種々の形態のものが知られている。例えば、特許文献2には、内装パネルの支持用部材を固定するための基台となるスライド調整支持台等を備えた内装パネル取付金具が記載されている。
しかし、特許文献2に記載された内装パネル取付金具1は、施工の効率化等の点で優れているものの、壁面Wと内装パネルPの間には単なる空間が形成されているだけであり、耐火被覆材層の形成等による耐火性の向上が図られているわけではない。
【0005】
また、特許文献2の内装パネル取付金具1を用いた場合には、内装パネルPが、壁面Wから所定の距離を隔てて配設されているため、この距離の分だけ、トンネル内の空間に対して張り出す寸法が大きくなり、トンネル内の利用可能な空間が狭められてしまう。このような欠点を相殺するために、内装パネルPと壁面Wの間に耐火被覆材層を形成させ、耐火性を向上させることが考えられるが、この場合、内装パネル取付金具1の存在が邪魔になり、耐火性能の高い耐火構造体を均一かつ円滑に形成し難い。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−294098号公報(第2頁第1欄第19〜22行、第4頁第6欄第8〜17行、第7頁の図5)
【特許文献2】
特開平9−195686号公報(第2頁第1欄の請求項1、第2頁第2欄第10〜17行、第6頁の図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術の問題点に鑑みて、耐火性、美観性及び内装板の装着性に優れるとともに、火災時にトンネル内の空間で生じる高温の熱が覆工コンクリート等の一次覆工体に伝わり難く、しかも、トンネル耐火構造全体の厚さが比較的小さいためにトンネル内の空間を過度に狭めることのないように構成されたトンネル耐火構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、耐火被覆材層と内装板とを積層させて耐火トンネル構造体を構築するに際し、耐火被覆材層を、吹き付け施工によって形成された湿式耐火被覆材層と、耐火充填材層(ただし、該耐火充填材層は、下記の固定具の設置箇所及びその近傍領域における覆工面上において、湿式耐火被覆材層によって部分的に形成された耐火被覆材層の空間部内に形成されている。)とを含むものに限定して内装板に直接積層するとともに、内装板を固定するために使用されるボルト等の固定具の頭部が、前記の耐火充填材層中に埋もれて、トンネル内の空間に露出しないように構成することによって、高い耐火性能を確実に得ることができ、しかも、上述の美観上の問題や火災の発生時の熱伝導に伴うトンネル構造材への悪影響の問題等も解消できると考え、本発明を完成した。
すなわち、本発明者は、トンネル内壁の施工場所の覆工面上に、吹き付け施工によって形成された湿式耐火被覆材層と、耐火充填材層(ただし、該耐火充填材層は、下記の固定具の設置箇所及びその近傍領域における覆工面上において、湿式耐火被覆材層によって部分的に形成された耐火被覆材層の空間部内に形成されている。)とを含む耐火被覆材層を介して内装板を積層させ固定することとし、そのための具体的手段として、(i)覆工面に打ち込んで固定するためのアンカーと、該アンカーに対して位置調整が可能に連結され、かつ内装板の支持手段を有する位置決め部材とからなる固定具を採用すること、(ii)耐火被覆材層の上に直接、内装板を積層させること、(iii)アンカーの頭部が、耐火充填材層の中に埋もれるようにすること等によって、耐火性、美観性、火災発生時の一次覆工体(コンクリート等)への熱伝導の抑制、及びトンネル耐火構造全体の厚さの低減等の点で優れたトンネル耐火構造を得ることができること、及び、上記湿式耐火被覆材層を形成させるために吹き付け施工法を採用することによって、上記トンネル耐火構造を簡易な方法で効率的に構築することができることなどを見出した。
【0009】
本発明(請求項1)のトンネル耐火構造は、トンネル内壁の覆工面上に、吹き付け施工によって形成された湿式耐火被覆材層と耐火充填材層とを含む耐火被覆材層と内装板とが積層されてなるトンネル耐火構造であって、該内装板は該耐火被覆材層上に直接積層されているとともに、該内装板はアンカーと位置決め部材とからなる固定具によって該アンカーの頭部が上記耐火充填材層中に埋もれるようにして該覆工面上に固定されており、上記耐火充填材層は、上記固定具の設置箇所及びその近傍領域における覆工面上において、上記湿式耐火被覆材層によって部分的に形成された耐火被覆材層の空間部内に形成されていることを特徴とする。
このように構成したトンネル耐火構造は、湿式耐火被覆材を含む耐火被覆材層を有するため、優れた耐火性を発揮することができる。また、内装板が耐火被覆材層上に直接積層されているため、当該トンネル耐火構造の厚さを最小限の寸法に抑えることができ、トンネル内の空間を大きく狭めることがない。さらに、アンカーの頭部が耐火充填材層中に埋もれているため、美観を損なうことがないうえ、内装板の装着に支障を来したり、あるいは、火災の発生時にトンネル内の空間で生じた高温の熱を、アンカーを介して覆工コンクリートに伝わり易くするような不都合を生じることもない。
また、湿式耐火被覆材層を吹き付け施工で形成させることによって、本発明のトンネル耐火構造を効率的に短時間で構築することができるとともに、耐火被覆材層と内装板との積層状態が良好なものとなるように耐火被覆材層の厚さ寸法を調整し易くなる。
なお、湿式耐火被覆材層は、内装板を取り付けるための固定具の設置箇所及びその近傍領域(周囲3cm程度以内)を除く広い範囲で形成されることが望ましい。
【0010】
上記トンネル耐火構造において、上記耐火充填材層は、無機質繊維からなるものとすることができる(請求項2)。
上記トンネル耐火構造の実施形態例として、上記アンカーが、上記覆工面に打ち込んで固定するためのものであり、上記位置決め部材が、上記アンカーに対して位置調整が可能に連結され、かつ上記内装板の支持手段を有するものであるものが挙げられる(請求項3)。
ここで、上記位置決め部材の実施形態例として、上記覆工面に当接させるための覆工面取付部材と、上記内装板を固定するための内装板取付部材と、上記覆工面取付部材に対する上記内装板取付部材の位置を調整し固定するための金具とによって構成されているものが挙げられる(請求項4)。
本発明(請求項)のトンネル耐火構造の構築方法は、トンネル内壁の覆工面上に湿式耐火被覆材を含む耐火被覆材層と内装板とが積層されてなるトンネル耐火構造の構築方法であって、(1)上記トンネル内壁の施工場所の覆工面上において、上記内装板を取り付けるためのアンカーと位置決め部材とからなる固定具の複数設置箇所の各々に、吹き付け施工により該各設置箇所に上記湿式耐火被覆材層が形成されるのを防ぐための保護治具を設置し、(2)その後、上記トンネル内壁の覆工面上に湿式耐火被覆材を吹き付けて、上記保護治具が設置してある箇所以外に耐火被覆材層を形成し、(3)その後、上記保護治具を取り外した後、取り外して形成された空間部の覆工面上に上記固定具を取り付け、該固定具を用いて上記耐火被覆材層の上に上記内装板を直接固定するとともに、耐火被覆材層が未形成となっている上記空間部に、耐火充填材を充填して、耐火被覆材層を完成させ、(4)以降、必要に応じて、上記(1)〜(3)の工程のうちの1つ以上の工程を順次繰り返して行なうことを特徴とする。
このような工程(1)〜(4)を含むトンネル耐火構造の構築方法によれば、耐火性等に優れた上述のトンネル耐火構造を容易かつ迅速に構築することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトンネル耐火構造の構築対象となるトンネルの具体例としては、例えば、沈埋トンネル、シールドトンネル等が挙げられる。
ここで、沈埋トンネルとは、トンネルの構成単位である筒状の鉄筋コンクリートブロックを、海底に沈め、この鉄筋コンクリートブロックを多数連結することによって構築される海底トンネルをいう。
また、シールドトンネルとは、地盤を掘削してトンネル空間を形成すると同時に、トンネル空間の内面をコンクリートセグメント等の一次覆工体によって補強して構築されるトンネルをいう。
【0012】
これら沈埋トンネル、シールドトンネル等のトンネルにおいては、RC構造、鋼構造、S−RC構造、鋳物構造等からなる一次覆工体がトンネル内の空間に露出していると、火災の発生時に、一次覆工体が高温の熱に直接曝されることになり、一時覆工体の崩壊や劣化によって、甚大な直接的被害が発生するだけでなく、トンネルの修復工事に多大の労力、時間及び費用を要したり、長期間の交通規制を余儀なくされる等の間接的被害を受けることになる。
この点、本発明のトンネル耐火構造においては、このような火災発生時の被害を著しく抑制することが可能である。
【0013】
次に、本発明のトンネル耐火構造及びその構築方法の一例を、図面に基いて詳しく説明する
図1は、本発明のトンネル耐火構造の一例を示す断面図、図2は、図1に示すトンネル耐火構造で用いられるアンカー及び位置決め部材の一例を示す斜視図、図3は、本発明のトンネル耐火構造の他の例を示す断面図、図4は、図3に示すトンネル耐火構造で用いられるアンカー及び位置決め部材の一例を示す斜視図、図5は、本発明のトンネル耐火構造の構築方法の一例を示すフロー図である。
【0014】
本発明のトンネル耐火構造1は、例えば、図1及び図2に示すように、トンネル内壁の覆工面2上に、耐火被覆材層3と内装板4とが積層されてなるものである。
ここで、覆工面2とは、トンネル内の空間に面するコンクリート覆工等の一次覆工体の表面をいう。覆工面2は、平面状に形成されていてもよいし、曲面状に形成されていてもよい。
耐火被覆材層3は、湿式耐火被覆材層3aと耐火充填材層3bとを含むものであり、覆工面2の上に直接積層して形成される。
【0015】
耐火被覆材層3の厚さは、好ましくは10〜80mm、より好ましくは20〜70mm、特に好ましくは20〜50mmである。該厚さを10mm以上に定めれば、優れた耐火性を得ることができるとともに、本発明で用いられる固定具(具体的には、アンカー5と、覆工面取付部材7と内装板取付部材8とで構成される位置決め部材6とからなるもの)を取り付けるために必要な厚さ寸法を十分に確保することができる。また、該厚さを80mm以下に定めれば、湿式耐火被覆材の使用量が過大になることを回避できるとともに、本発明で用いられる固定具(アンカー5及び位置決め部材6)の大きさを所定の寸法以下に抑えることができ、施工費用の増大等を抑制することができる。
なお、本明細書中において、「アンカー」とは、トンネル覆工面に固定されるものであればよく、例えば、狭義のアンカーの他、インサート等を広く含む意で用いられる。
【0016】
湿式耐火被覆材層3aは、内装板4を固定するための固定具(アンカー5及び位置決め部材6)の設置箇所及びその近傍領域を除く覆工面2全体に、所定の厚さ寸法を有する耐火被覆材層3を形成するべく、吹き付けられることが好ましい。
なお、吹き付け施工の方法は、従来の方法を用いればよい。また、湿式耐火被覆材層3aの表面に大きな不陸(面が平坦でないこと)が生じた場合には、適宜、へらでならすなどして、該表面(内装板との積層面)をできるだけ平坦にしておくことが好ましい。
湿式耐火被覆材層3aの材料の種類としては、例えば、セメント系湿式吹き付け材料が挙げられる。
セメント系湿式吹き付け材料としては、例えば、セメントと、必要に応じて配合されるセメント以外の各種混和材料と、水と、必要に応じて配合される化学混和剤とを含むものが挙げられる。
ここで、セメントの種類は、特に限定されないが、好適な例として耐火セメント、アルミナセメント等が挙げられる。
セメント系湿式吹き付け材料(ただし、水を除く。)中のセメントの配合割合は、好ましくは50質量%以上である。
セメント以外の混和材料の好適な具体例としては、例えば、高炉スラグ、タルク、バーミキュライト、パーライト、マイカ、石灰石粉末等が挙げられる。
水の量は、水以外の材料100質量部に対して、通常、75〜110質量部である。
化学混和剤の具体例としては、例えば、有機系収縮低減剤や各種減水剤等が挙げられる。
【0017】
セメント系湿式吹き付け材料の好適な組成の一例としては、例えば、セメント50〜60質量部、バーミキュライト及び/または硬質パーライト15〜20質量部、マイカ10〜15質量部、石灰石粉末15〜20質量部(ただし、これらの成分の合計量は、100質量部である。)の各材料からなる固体分100質量部に対し、水75〜110質量部を混練してなるものが挙げられる。
なお、必要に応じて、湿式耐火被覆材層3a中に補強用のメッシュ板等を配設してもよい。
【0018】
耐火充填材層3bは、図1に示すように、内装板4を固定するための固定具(アンカー5及び位置決め部材6)の設置箇所及びその近傍領域における覆工面2上において、湿式耐火被覆材層3aによって部分的に形成された耐火被覆材層3の空間部内に形成される。これによって、所定の厚さ寸法を有する耐火被覆材層3は完成される。
なお、耐火充填材層3bが形成される空間部の覆工面部分の面積は、好ましくは25〜400cmであり、より好ましくは50〜300cmである。該面積を上記数値範囲内に定めることによって、固定具(アンカー5及び位置決め部材6)の取付作業が容易になり、かつ、耐火充填材層3bを形成させるための耐火充填材の充填作業を短時間で完了させることができる。
耐火充填材層3bを形成させるための耐火充填材の種類としては、耐火性を有するものであればよく、特に限定されないが、好ましくは、ロックウール、セラミックファイバー、グラスファイバー等の無機質繊維が挙げられる。
耐火充填材層3bの材料としてロックウール等の無機質繊維を用いることによって、トンネル耐火構造1の施工後に内装板4を補修または交換する際に、耐火充填材を手作業で容易に除去または再充填することができ、当該内装板4の補修等の作業を迅速に行なうことができる。
【0019】
本発明において、内装板4は、耐火被覆材層3の上に直接積層して配設される。
ここで、「直接積層して」とは、内装板4と耐火被覆材層3とが互いに全面的に完全密着していることを必要とせず、数mm程度の隙間を生じていてもよい。つまり、耐火被覆材層3は、吹き付け材料である湿式耐火被覆材等で構成されているのであるから、表面には多少の凹凸が形成されている。そのため、耐火被覆材層3と内装板4の間には、平均して、20mm以下、好ましくは15mm以下、特に好ましくは8mm以下の隙間が形成されていてもよい。
なお、前述のとおり、耐火被覆材層3の表面に大きな不陸が生じている場合には、適宜、該表面をならす作業を行なう必要がある。
内装板4の一例としては、例えば、図1及び図5に示すように、基材部4aと表層材部4bとを積層させてなるものが挙げられる。
基材部4aは、例えば、モルタル板、硬質珪酸カルシウム板、鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板等からなるものである。
表層材部4bは、自動車の排気ガスや湿気等によって基材部4aが腐食したり劣化するのを防ぐためのものであり、例えば、セラミック製のタイル等によって構成されている。表層材部4bは、接着剤やビス等の固着具を用いて基材部4aに積層され固定されている。
なお、表層材部4bは、トンネル内の照明効率の向上や、車両の安全な通行のための視線誘導や、トンネル覆工面の凹凸の調整や、配線や配管等の露出の防止による美観の向上等の目的を併せ持つことがある。
内装板の寸法は、特に限定されず、例えば、従来のトンネル内壁面用の内装板と同等でよい。
【0020】
内装板4は、施工後の状態における鉛直方向の上側及び下側の端部(縁辺)の各々に、2つの溝部12を有している。溝部12は、内装板取付部材8の取り付け位置に対応する位置(図5の(d)を参照)にて、内装板取付部材8の断面が略H字状の部分(上側溝部8a及び下側溝部8bを含む部分)を嵌合させることができるように形成されている(図1及び図2を参照)。つまり、内装板取付部材8の断面が略H字状の部分(図2を参照)のうち、内側の垂直壁8eは、内装板4の内側の面に当接し、外側の垂直壁8fは、内装板の溝部12の中に挿入され、上側溝部8a(または下側溝部8b)は、内装板4の内側の面と溝部12の間の内装板の本体部分に嵌合されるように、構成されている。
なお、内装板4が、内装板取付部材8を嵌合するための溝部12を備えていることによって、内装板取付部材8は、トンネル内の空間に対して露出部分を有さず、内装板4の表層材部4bによって保護されることになる。そのため、内装板取付部材8は、トンネル内の排気ガス等による腐食等が生じ難く、また、火災の発生時に、トンネル内の高温の熱にも直接曝されず、覆工コンクリートに高温の熱を伝えて悪影響を与える可能性を小さくしている。
【0021】
内装板4は、アンカー5と位置決め部材6とからなる固定具によって、覆工面2上に固定される。
アンカー5は、筒状部材5aと、筒状部材5aの一端に嵌入するための芯部材5bと、筒状部材5aの他端に螺入するためのボルト5cと、位置決め部材6の構成部品である覆工面取付部材7を固定するためのナット5d及びワッシャー5eとによって構成されている。
このうち、筒状部材5aは、一端に、複数の細長い切欠部を有し、他端に、内側の周面が螺刻されたねじ部を有する。芯部材5bは、筒状部材5aの側に向かって断面が次第に小さくなるような略円錐台形状に形成されており、筒状部材5aの中に深く嵌入されると、当該筒状部材5aを拡開するようになっている。すなわち、覆工面2に穿設された孔の中に、芯部材5bを緩く嵌めた筒状部材5aを挿入し、筒状部材5aを外側から叩打すると、芯部材5bが筒状部材5aの中に深く嵌入し、それに伴って、筒状部材5aの端部(複数の細長い切欠部が形成されている部分)が拡開し、覆工コンクリート11中に固定されるようになっている。
【0022】
位置決め部材6は、覆工面2に当接させるための覆工面取付部材7と、内装板4を固定するための内装板取付部材8と、覆工面取付部材7に対する内装板取付部材8の位置を調整し固定するための金具(ボルト9及びワッシャー10)とによって構成されている。
このうち、覆工面取付部材7は、覆工面2に当接させるための平板状の部分であり、かつボルト5cを挿通させるための孔7aを有する垂直壁部と、該垂直壁部の下端で略垂直に折曲して延びる平板状の部分であり、かつボルト9を挿通させるための長孔7bを有する水平壁部とを有している。
【0023】
一方、内装板取付部材8は、覆工面取付部材7の水平壁部の下面に当接させるための部分であって、覆工面取付部材7の水平壁部の長孔7bに対応させて穿設された孔8aと当該孔8aの裏側に溶接等によって固着されたナット8bとを有する水平壁部と、上側溝部8cと下側溝部8dとを有するように断面が略H字状に形成された内装板取付部(水平壁部の端部で略垂直に下方に折曲して延びる垂直壁8eと、外側の垂直壁8fと、垂直壁8eと垂直壁8fとの連結部分である水平壁8gとからなる部分)とを備えている。そして、内装板取付部材8は、覆工面取付部材7の長孔7bの長さ寸法の範囲内において孔8aの位置を自由に調整して定めることができ、それによって、施工時において、覆工面2から内装板取付部材8までの距離を自由に調整することができるようになっている。つまり、耐火被覆材層3の厚さ寸法に応じて、覆工面2から内装板取付部材8までの距離を調整し、それによって、耐火被覆材層3の表面から数mm程度の距離を隔てた位置に、内装板4を配設することを可能にしている。
内装板取付部材8の内装板取付部(断面が略H字状の部分)は、下側溝部8dによって、下方に位置する内装板4を嵌合させて固定し、上側溝部8cによって、上方に位置する他の内装板4を嵌合させて固定するように構成されている。
【0024】
アンカー5の構成部品であるボルト5cの端部(すなわち、アンカー5の頭部)は、施工後において、耐火被覆材層3を貫通して外部に突出することがなく、耐火被覆材層3中に埋もれるように位置している。
このように、筒状部材5aからのボルト5cの露出部分の長さ寸法が、耐火被覆材層3の厚さ寸法よりも小さくなるように、当該ボルト5cの長さ寸法または耐火被覆材層3の厚さ寸法を定めることによって、耐火被覆材層3の外表面が略平坦になり、内装板4を耐火被覆材層の上に直接積層して装着することができる。また、ボルト5cの頭部が耐火被覆材層3中に埋もれていることから、火災の発生時にトンネル内の空間で生じた高温の熱がボルト5cを介して覆工コンクリート11に伝わるのを抑制することができる。さらに、ボルト5cは、耐火被覆材層3の外部に露出していないことから、トンネル内の排気ガス等による腐食等が生じ難い。
【0025】
次に、本発明のトンネル耐火構造の他の例を説明する。
本発明のトンネル耐火構造の他の例は、図3及び図4に示すように、アンカー及び位置決め部材のみが図1及び図2に示すものと異なっている。
図3及び図4に示すトンネル耐火構造20において、アンカー21は、筒状部材21aと、筒状部材21aの一端に嵌入するための芯部材21bと、筒状部材21aの他端に螺入するためのボルト21cと、位置決め部材22の位置を調整するための位置決め用ナット21dと、位置決め部材22を固定するための固定用ナット21e及びワッシャー21fとによって構成されている。
【0026】
位置決め部材22は、ボルト21cを挿通させるための孔22aを有し、かつボルト21c上で位置を調整された位置決め用ナット21dに当接させるための垂直壁部と、該垂直壁部の下端から略垂直に折曲して水平に延びる水平壁部と、該水平壁部の端部で略垂直に下方に折曲して延び、上側溝部22bと下側溝部22cとを有するように断面が略H字状に形成された内装板取付部とを有している。
【0027】
本例の取付方法を説明すると、まず、筒状部材21aを覆工コンクリート11中に打ち込んだ後、図4に示すように、筒状部材21a、位置決め用ナット21d、位置決め部材22(孔22a)、ワッシャー21f及び固定用ナット21eの順にボルト21cを挿通した後、耐火被覆材層3の厚さ寸法に応じて、位置決め用ナット21dの位置を調整して定める。次いで、固定用ナット21eを締めれば、位置決め用ナット21dと、ワッシャー21f及び固定用ナット21eの間に位置決め部材22を挟持し固定することができる。
アンカー21の構成部品であるボルト21cの端部(すなわち、アンカー21の頭部)が、施工後において耐火被覆材層3中に埋もれるように位置すべきことは、図1及び図2に示す例と同様である。
【0028】
次に、本発明のトンネル耐火構造の構築方法の一例を説明する。
まず、図5中の(a)に示すように、トンネル覆工面2上の所定の位置に複数の保護治具30を設置する。保護治具30は、例えば、合成樹脂や金属等の材質からなる円筒状に形成されたものであり、トンネル覆工面2に対して接着剤等によって一時的に固定される。
なお、保護治具30の周面には、湿式耐火被覆材の吹き付け厚さに対応した位置に線(目盛り)が付けてあり、この線に達するまで湿式耐火被覆材を吹き付ければよいようになっている。また、保護治具30は、トンネル覆工面2との当接面及びその反対側の面(外側の面)が開口しているものを用いてもよいし、あるいは、トンネル覆工面2に対する接着性を高める等のために、平坦な壁部として閉じているものを用いてもよい。
保護治具30の別の形態として、線(目盛り)を付けずに耐火被覆材の吹き付け厚さと同一の長さ寸法を有し、かつ、トンネル覆工面2との当接面とは反対側の面(外側の面)を平坦な壁部として形成させた保護治具が挙げられる。この場合、湿式耐火被覆材は、保護治具の外側の面に達するまで吹き付けられる。
保護治具30は、湿式耐火被覆材の吹き付け厚さを調整できるように構成することもできる。例えば、保護治具30に複数の線(目盛り)を付けておけば、湿式耐火被覆材の吹き付け厚さを所定の範囲内で自由に調整することができる。
【0029】
その後、トンネル覆工面2上に湿式耐火被覆材を吹き付け、耐火被覆材層3の一部である湿式耐火被覆材層3aを形成させる(図5の(b))。
次いで、保護治具30を取り外して、耐火被覆材層3に円柱状の空間部(すなわち、湿式耐火被覆材が吹き付けられていない覆工面2が露出している空洞部分)を形成させた後、該空間部を通じて、覆工コンクリート11中にアンカー5(図1参照)を打ち込む。そして、アンカー5に位置決め部材6(覆工面取付部材7及び末端用の内装板取付部材31)を固定した後(図5の(c))、必要に応じて蓋等を用いながら、該空間部にロックウール等の耐火充填材を充填して耐火充填材層3bを形成させ、耐火被覆材層3を完成させる。この際、湿式耐火被覆材層3aの厚さ寸法に応じて、覆工面取付部材7に対する内装板取付部材31の位置(図2参照)を調整して、耐火被覆材層3の上に内装板4を直接積層できるようにしておく。次いで、内装板4の下端の縁辺部分を、内装板取付部材31の溝部に嵌合させる。
【0030】
次に、上方に位置する他の空間部(覆工面2が露出している空洞部分)に、アンカー5、位置決め部材6(覆工面取付部材7及び内装板取付部材8)、及び内装板4を取り付ける(図5の(c))。この際、取り付け作業は、次の順序で行なう。まず、覆工面2に、芯部材5bを嵌入した筒状部材5aを打ち込む。次いで、内装板取付部材8の下側溝部8dに内装板4を嵌合させた状態で、ボルト9及びワッシャー10を用いて、内装板取付部材8と覆工面取付部材7とを固定する。そして、内装板取付部材8等と一体化している覆工面取付部材7を、ボルト5c、ナット5d及びワッシャー5eを用いて、筒状部材5aに固定する。その後、内装板4の上方の隙間から、ロックウール等の耐火充填材を空間部内に充填して、充填材層3bを形成させる。なお、耐火充填材の一部は、内装板取付部材8と覆工面取付部材7とを固定する前に充填してもよい。そして、内装板取付部材8の上側溝部8cに、他の内装板4の下端の縁辺部分を嵌合する(図5の(d))。
以後、上方に位置する他の複数の空間部分に対して、保護治具30の取り外しと、アンカー5及び位置決め部材6の取り付けと、充填材層3bの形成と、上下に隣接する2枚の内装板4の取り付けとを含む一連の作業を順次、繰り返して行なえば、トンネル耐火構造1の全体を完成させることができる。
なお、本発明において、湿式耐火被覆材層3aから保護治具30を取り外すに際し、固定具(アンカー5及び位置決め部材6)や内装板4の取り付け作業を行ないながら、個々の保護治具30を順次、取り外すようにしてもよいし、あるいは、固定具等の取り付け前に、複数の保護治具30を一度に取り外すようにしてもよい。また、アンカー5の取り付けに際しても、位置決め部材6及び内装板4の取り付け作業を行ないながら、個々のアンカー5を順次、取り付けるようにしてもよいし、あるいは、複数の保護治具30を取り外した後に、形成された空間部に複数のアンカー5を一度に取り付けるようにしてもよい。
また、トンネル耐火構造1を構築するに際し、施工対象となる覆工面を複数の区画に分けて、各区画毎に順次、施工を行なってもよい。
【0031】
【発明の効果】
本発明のトンネル耐火構造は、トンネル内壁の覆工面と内装板の間に耐火被覆材層を有するため、火災の発生時に、優れた耐火性を発揮することができる。
また、本発明のトンネル耐火構造は、内装板が耐火被覆材層上に直接積層されているため、当該トンネル耐火構造の厚さを最小限の寸法に抑えることができ、トンネル内の利用可能な空間を狭めることがない。
さらに、本発明のトンネル耐火構造は、アンカーの頭部が耐火被覆材層中に埋もれているため、内装板の装着に支障を来したり、アンカーの頭部の露出によって美観を損ねたり、あるいは、火災の発生時に、トンネル内の空間で生じた高温の熱を、アンカーを介して一次覆工体(例えば、コンクリートからなるRC構造や、鋼材からなる鋼構造や、コンクリートと鋼材を複合してなるS−RC複合構造や、鋳物からなる鋳物構造等からなるもの)に伝導させて、一次覆工体の剥落や耐力低下を促進することもない。
一方、本発明のトンネル耐火構造の構築方法を用いると、上述のトンネル耐火構造を容易かつ迅速に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトンネル耐火構造の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示すトンネル耐火構造で用いられるアンカー及び位置決め部材の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明のトンネル耐火構造の他の例を示す断面図である。
【図4】図3に示すトンネル耐火構造で用いられるアンカー及び位置決め部材の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明のトンネル耐火構造の構築方法の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1,20 トンネル耐火構造
2 覆工面
3 耐火被覆材層
3a 湿式耐火被覆材層
3b 耐火充填材層
4 内装板
4a 基材部
4b 表層材部
5,21 アンカー
5a,21a 筒状部材
5b,21b 芯部材
5c,21c ボルト
5d,21d,21e ナット
5e,21f ワッシャー
6,22 位置決め部材
7 覆工面取付部材
7a 孔
7b 長孔
8 内装板取付部材
8a 孔
8b ナット
8c 上側溝部
8d 下側溝部
8e,8f 垂直壁
8g 水平壁
9 ボルト
10 ワッシャー
11 覆工コンクリート(一次覆工体)
12 溝部
30 保護治具
31 末端用の内装板取付部材

Claims (5)

  1. トンネル内壁の覆工面上に、吹き付け施工によって形成された湿式耐火被覆材層と耐火充填材層とを含む耐火被覆材層と内装板とが積層されてなるトンネル耐火構造であって、
    該内装板は該耐火被覆材層上に直接積層されているとともに、
    該内装板はアンカーと位置決め部材とからなる固定具によって該アンカーの頭部が上記耐火充填材層中に埋もれるようにして該覆工面上に固定されており、
    上記耐火充填材層は、上記固定具の設置箇所及びその近傍領域における覆工面上において、上記湿式耐火被覆材層によって部分的に形成された耐火被覆材層の空間部内に形成されていることを特徴とするトンネル耐火構造。
  2. 上記耐火充填材層が、無機質繊維からなる請求項1に記載のトンネル耐火構造。
  3. 上記アンカーは、上記覆工面に打ち込んで固定するためのものであり、上記位置決め部材は、上記アンカーに対して位置調整が可能に連結され、かつ上記内装板の支持手段を有するものである請求項1又は2に記載のトンネル耐火構造。
  4. 上記位置決め部材は、上記覆工面に当接させるための覆工面取付部材と、上記内装板を固定するための内装板取付部材と、上記覆工面取付部材に対する上記内装板取付部材の位置を調整し固定するための金具とによって構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のトンネル耐火構造。
  5. トンネル内壁の覆工面上に湿式耐火被覆材を含む耐火被覆材層と内装板とが積層されてなるトンネル耐火構造の構築方法であって、
    (1) 上記トンネル内壁の施工場所の覆工面上において、上記内装板を取り付けるためのアンカーと位置決め部材とからなる固定具の複数設置箇所の各々に、吹き付け施工により該各設置箇所に上記湿式耐火被覆材層が形成されるのを防ぐための保護治具を設置し、
    (2) その後、上記トンネル内壁の覆工面上に湿式耐火被覆材を吹き付けて、上記保護治具が設置してある箇所以外に耐火被覆材層を形成し、
    (3) その後、上記保護治具を取り外した後、取り外して形成された空間部の覆工面上に上記固定具を取り付け、該固定具を用いて上記耐火被覆材層の上に上記内装板を直接固定するとともに、耐火被覆材層が未形成となっている上記空間部に、耐火充填材を充填して、耐火被覆材層を完成させ、
    (4) 以降、必要に応じて、上記(1)〜(3)の工程のうちの1つ以上の工程を順次繰り返して行なう
    ことを特徴とするトンネル耐火構造の構築方法。
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