JP4090108B2 - 固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子型燃料電池に関し、特には膜・電極接合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、電池内で水素やメタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すものであり、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子型燃料電池は他と比較し低温で作動することから、自動車用の代替動力源として期待されている。
かかる固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に一対のガス拡散電極が接合されたものである。すなはち、固体高分子電解質膜の一方の面にアノード触媒層、他方の面にはカソード触媒層が設けられ、さらに両面のその外側には一対のガス拡散層が隣接してなる構造を有する。アノード及びカソード触媒層は従来、電極触媒を担持させたカーボンブラックの粉末と、プロトン伝導性を有するポリマー、撥水性を有するポリマーとからなる混合物をシート化したものであり、固体高分子電解質膜にはホットプレスにより接合される。
【0003】
アノードとしてのガス拡散電極側には燃料(例えば水素)、カソードとしてのガス拡散電極側には酸化剤(例えば酸素や空気ガス)をそれぞれ供給し、両電極間を外部回路で接続することにより燃料電池として作動する。すなはち、アノードにおいては、燃料の酸化によりプロトンと電子が生じ、このプロトンは固体電解質内を通過してカソード側に移動する。一方、電子は外部回路を通ってカソードに到達する。カソードでは、かかるプロトン及び電子と酸化剤中の酸素で水が生成され、この時電気エネルギーを取り出すことが出来る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
プロトンが固体高分子電解質膜内を円滑に移動するためには、水を必要とするため、燃料は、加湿して水とともにアノードへ供給される。カソードで生成された水や膜内を移動してきた過剰な水は、酸化剤とともに電極外部に放出される。触媒層内は、高い触媒利用率を得るため、特開平6−333574号公報に記載されているように、例えば市販されている米国アルドリッチ社製の「ナフィオン(5重量%溶液)」のような高い含水率を有するプロトン伝導性ポリマーが均一に分散されている。そのため、撥水性ポリマーを含んだ場合においても触媒層内から水が円滑に層外・ガス拡散層外へ排出されにくい。燃料電池の運転を継続している間触媒層内やガス拡散層内には水が徐々に滞留してゆき、また高電流密度で行なうほど、水の蓄積は進み、触媒層への酸化剤供給が大きく阻害されてしまう。その結果、電気化学反応の抵抗が極めて大きくなり、取り出しうる電池電圧の大幅な低下、スタックにおいてはセル間での電圧バラツキの拡大化という問題を引き起こしている。
【0005】
燃料、酸化剤を加圧し、燃料電池作動圧力を高くして運転することにより、電極の反応効率は上昇するものの、ガス流速低下により生成水等の排出能では逆に低下してしまうため、電池特性の改善は期待出来ない。
触媒層内に分散させる撥水性ポリマーの量を多くすることは、逆に触媒利用率の大幅な低下、出力電圧の低下を引き起こすために限界があり、大幅な撥水性向上は望めない。また、プロトン伝導性ポリマーが含まれているため、PTFEのような撥水性ポリマーを触媒層内に分散させた後に、例えば特公平5−20868号公報に記載されているような高温処理を行うことは不可能であるため、撥水性ポリマーの有効なマトリックスを形成することは出来ない。
【0006】
また、酸化剤を加湿することなく、あるいはセル温度に対しより低温で加湿する方法によって、高電流密度での電池特性は改善される。しかしながら、逆に低電流密度領域においては膜等の乾燥が生じ、電池電圧が大幅に低下してしまうという問題になっている。
本発明は、このような従来技術の課題に着目してなされたものであり、膜の乾燥を防止しつつ触媒層内の水の排出能を向上させ、反応ガスの触媒層内拡散への水の影響を排除し、低電流密度から高電流密度領域まで、安定した高い電池電圧を示す固体高分子型燃料電池用の膜・電極接合体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、固体高分子膜と少なくとも一方の触媒層が接する界面に、固体高分子膜とは異なるEWのプロトン伝導性ポリマーの層を有することを特徴とする膜・電極接合体を提供する。かかる膜・電極接合体を作製することにより、低電流密度から高電流密度領域まで安定した電池電圧が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、カソード触媒層と固体高分子膜が接する界面にのみ、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有することを特徴とする膜・電極接合体、
2.少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、カソード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有し、且つアノード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有することを特徴とする膜・電極接合体、
3.少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、カソード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有し、且つアノード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが低く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有することを特徴とする膜・電極接合体、である。
【0008】
触媒層内にプロトン伝導性ポリマーを分散させる操作は、触媒の利用率を大きく向上することのためのものであるが、その効果をより発揮させるためには、プロトン伝導性の高いポリマー、すなはちEWのより低いポリマーが使用されることが望ましい。プロトン伝導性ポリマーとしては、上記のナフィオンに代表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーが広く用いられている。例えば、このパーフルオロスルホン酸ポリマーにおいては、より低EWの、高いプロトン伝導性を有するポリマーは、相対的に高い親水性を示し、高い含水率からなる。電池反応において、アノード触媒上で酸化されたプロトンは、高いプロトン伝導性を有するポリマー内を通って膜に到達し、同じく伝導性を有する膜内を通過してカソード側に移動した後、再び、触媒層内に分散された高いプロトン伝導性ポリマー内を通ってカソード触媒上に達する。ここを三相界面として、酸化剤反応ガスとしての酸素ガス、外部回路を通ってきた電子と再び反応して水を生成する。さらに、ガス加湿によるプロトンの同伴水が、カソードへ移動し、運転電流密度とともにより多くの水がカソード触媒層内に生起する。
【0009】
また、本発明に言う、固体高分子膜と少なくとも一方の触媒層が接する界面に形成させる、固体高分子膜とは異なるEWのプロトン伝導性ポリマー層の好ましい態様としては、固体高分子膜とカソード触媒層が接する界面にのみ、或いはその界面及び固体高分子膜とアノード触媒層が接する界面とに、固体高分子膜とは異なるより高EWのプロトン伝導性ポリマー層が形成される。このプロトン伝導性ポリマー層は、好ましくは後述するキャスト法により形成される触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した実質的に三次元の層である。この層を形成することにより、プロトン同伴水のカソードへの移動を効果的に防止し、カソード触媒層内の水蓄積を抑制させる効果を有する。また、低電流密度での運転時には、膜の乾燥を防止するバリヤーとして機能し、膜の保水性を維持する役割を有する。かくして、カソードにおいて生成された水は、触媒活性点上から、触媒層内の通路となる空孔を通って速やかにガス拡散層、電極外へと排出される。このように、電池反応触媒活性点においては、高い反応率を保持しつつ、かつ高い生成水排出能を有した電極とすることが出来るものである。
【0010】
ここで、上記に言うEWとは、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥重量であり、「g/ew」の単位で表される。
更に上記プロトン伝導性ポリマー層のより好ましい態様としては、カソード側には固体高分子膜よりも高EWのプロトン伝導性ポリマー層が形成され、且つアノード側には固体高分子膜よりも低EWのプロトン伝導性ポリマー層が形成される。このことにより、親水性あるいは疎水性の差を利用し、燃料や酸化剤の加湿が不充分な場合や電池の運転電流密度が低い場合、あるいは運転停止時においても、膜内の水を保持し、高いプロトン伝導性を維持させることが可能である。このように、カソード、アノード両側のプロトン伝導性ポリマー層のEWを固体高分子膜よりも高く、あるいは低くすることにより、膜内のプロトン同伴水やカソード生成水等の物質移動を運転条件に応じて、幅広く設計することが出来るものである。さらには、触媒層のプロトン伝導性ポリマーのEWとの組み合わせも可能である。
【0011】
プロトン伝導性ポリマー層の厚みは、0.05〜20μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。0.05μm以下では、上記の充分な機能の効果を得ることが出来ない。一方、20μm以上では、抵抗が大きくなってしまい適さない。プロトン伝導性ポリマー層のEWは、少なくとも700以上であれば良く、より好ましくは800以上である。そして、1500以下であることが好ましく、1300以下であることがより好ましい。700以下では親水性が高すぎて、水の円滑な移動が出来なくなり、1500以上ではプロトン伝導性が低すぎるため、本発明の効果を示し得なくなる。かかる界面のプロトン伝導性ポリマー層と固体高分子膜とのEWの差は、好ましくは20以上あれば本発明の効果を示しうるものであり、50以上あればより好ましく、100以上あれば特に好ましい。また、3種以上のプロトン伝導性ポリマーを含む場合の最も近い数値同士のEWの差としては、20以上あれば本発明の効果を享受することができる。EWの差の上限は、800以下であれば好ましいが、600以下であればより好ましく、400以下であれば特に好ましい。
【0012】
このプロトン伝導性ポリマーの層は、いかなる成形手段により成形されてもよいが、好ましくはキャスト法により作製される。ここでいうキャスト法とは、一般的に知られている各種方法−噴霧法、スクリーン印刷法、バーコーターやドクターブレードによる塗布法、筆塗り法等のポリマー含有液状組成物を塗布してその硬化皮膜を形成させる手段をいう。
プロトン伝導性ポリマーは、プロトンを伝導するポリマーであれば良く、好ましくは、含フッ素高分子を骨格として少なくともスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基のうちから1種を有するものである。また、ポリオレフィンの様な炭化水素を骨格とするものも使用可能である。
【0013】
含フッ素高分子としては、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロモノクロロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、1,1−ジフルオロ−2,2−ジクロロエチレン、1,1−ジフルオロ−2−クロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロピレン、オクタフルオロイソブチレン、エチレン、塩化ビニル、及びアルキルビニルエステル等の第一群のモノマーと、下記一般式(1)、
Y−(CF2 )a −(CFRf )b −(CFR’f )c −O−
−〔CF(CF2 X)−CF2 −O〕n −CF=CF2 ・・・ (1)
(式中、Yは−SO2 F、−SO3 NH、−COOH、−CN、−COF、−COOR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)、−PO3 H2 、−PO3 Hであり、aは0〜6、bは0〜6の整数、cは0または1であり、但しa+b+cは0に等しくはならない。Xはn>1の時、Cl、Br、Fまたはそれらの混合物であり、nは0〜6である。Rf 及びR’f は独立にF、Cl、約1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基及び1〜10個の炭素原子を有するフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される。)で表される第二群のモノマーから選ばれた、第二群モノマーを必須とする2種あるいは3種以上のモノマーの共重合体、上記第二群の1種以上の重合体などである。特には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体であることが好ましい。
【0014】
重合体は、モノマー2分子以上結合しておれば良いが、耐久性の観点からその分子量は5000以上が好ましい。さらに、重合体と低分子量化合物を混合して用いることにより、EWを適宜調節することも可能である。
上記に述べられたようなプロトン伝導性ポリマーは、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N’−ジメチルアセドアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の極性溶媒、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、及び上記溶媒群から選ばれた2種類以上の混合物、さらには上記溶媒群と水との混合物などに溶解させて用いることができる。特には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコールの単独もしくは2種以上の溶媒と水との混合物が好ましい。さらには、上記溶媒群の少なくとも1種と、フルオロカーボンや含フッ素アルコール等の含フッ素化合物との混合溶媒も使用可能である。
【0015】
溶解されたプロトン伝導性ポリマー溶液の濃度は、ガス拡散電極の触媒層内及び表面に分散された時に、触媒表面に適切なプロトン伝導性ポリマーの被覆が形成されやすい、3〜20重量%の範囲が好ましい。この濃度が高すぎるとポリマーの触媒層内・表面における分散性が悪くなるとともに、上記被覆の厚みが大きくなりすぎて、三相界面が不均一化・触媒利用率の低下を来たし、本発明の効果を発揮できなくなる場合がある。また、濃度が低すぎると、触媒表面へのプロトン伝導性ポリマー被覆が、均一かつ充分な厚みを得られなくなったり、多孔質の触媒層シート表面にプロトン伝導性ポリマー溶液を塗布して触媒層内に分散させる場合、液の粘度が低すぎるために該ポリマーが局部的に集中してしまうため好ましくない。
アノード、カソード触媒層に用いられる電極触媒材料としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば良く、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属またはそれらの合金から選択することができる。
【0016】
上記触媒の粒径は10〜300Åが好ましく、さらには15〜100Åがより好ましい。10Å以下では、現実的に製作が困難であり、300Å以上では触媒利用率が低下してしまい、高い電池電圧は得られない。これらの触媒粒子は、カーボンブラック等の電導性材料に担持されても良い。触媒の担持量は、触媒層シートを形成した状態で0.01〜5mg/cm2 であり、より好ましくは0.1〜1mg/cm2 である。0.01mg/cm2 未満では有効的に触媒の性能が発揮できず、5mg/cm2 以上ではコストが非常に大きくなることと、性能的にも量相当分の効果が見られなくなる。
【0017】
本発明に言う触媒層は、前記触媒材料、プロトン伝導性ポリマー、カーボンブラック等の電導性材料から構成されるものであり、必要に応じてPTFE等の撥水性材料や結着剤が含まれていても良い。プロトン伝導性ポリマーを触媒層内に分散させる方法としては、上記触媒層構成材料を混合・成型し触媒層としても良いし、予めプロトン伝導性ポリマー以外の他の構成材料を混合・成型し触媒層とした後に、プロトン伝導性ポリマーを含浸させても良い。
導電性材料としては電子伝導性物質であれば良く、例えば炭素材料として上記に挙げたファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、活性炭、黒鉛、また各種金属も適用できるものである。
パーフルオロスルホン酸等のプロトン伝導性ポリマーは、ポリマー自体に結着剤としての機能も有しており、触媒層内で触媒粒子、電導性粒子との充分な安定性のあるマトリックスを形成させることは可能である。また、結着剤としての機能の他に撥水性を付与させる目的から、例えばフッ素を含んだ各種樹脂を用いることも可能である。フッ素樹脂では、融点が400℃以下のものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが挙げられる。
【0018】
本発明において固体高分子電解質として用いられる膜は、前記のプロトン伝導性ポリマーと同じ材料を使用することができる。すなはち、含フッ素高分子を骨格として少なくともスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基のうちから1種を有するものが好ましい。また、ポリエチレン等のポリオレフィン膜にスルホン酸基やカルボン酸基を有する単量体をグラフト重合反応等で導入した膜も使用可能である。含フッ素膜としては、例えば前記第一群のモノマーと前記第二群のモノマーから選ばれた、第二群モノマーを必須とする2種以上、通常は2乃至3の共重合体である。これらの膜には、より高いEWのフィルムで積層化することにより機械強度を補強する方法の他、フィブリル状、織布状、不織布状、多孔質シートのパーフルオロカーボン重合体で補強することや、膜表面に無機酸化物あるいは金属をコーティングすることにより補強することもできる。
これらの膜のEWは、700以上であれば良く、より好ましくは800以上である。そして、1500以下であることが好ましく、1300以下であることがより好ましい。700未満では、プロトン伝導性はより良くなるものの膜の機械強度が低下するため、実用的ではない。1500以上では、機械強度はより向上するもののプロトン伝導性が高くなり電池電圧の低下が生じるため、やはり好ましくない。
【0019】
触媒層は、一般的に知られている各種方法−噴霧法、転写法、スクリーン印刷法、ローリング法等により作製が可能である。エタノール等の低級アルコールを主成分とする溶媒に溶解させたプロトン伝導性ポリマー、触媒、電導性材料、及び/または撥水性ポリマーからなる触媒分散液を充分攪拌した後、例えば転写法では、PTFEのような円滑なシート上に、ある形状の面積に触媒分散液を塗布・乾燥することにより触媒層を形成させる。この時、少なくとも2種類以上のプロトン伝導性ポリマーを、予めかかる触媒分散液に順次あるいは同時に投入し、均一にプロトン伝導性ポリマーが分散された触媒層とすることも出来る。また、別な形態としては、前記触媒層を繰り返し重ねて形成させることにより、各々異なるプロトン伝導性ポリマーの1種以上を分散させた触媒層の複数を積層した触媒層とすることも出来る。また、膜に直接触媒分散液を塗布させる方法や、あるいは、これらの組み合わせ等様々な形態をとりうるものであり、上記の範囲に制限されるものではない。
触媒層のプロトン伝導性ポリマーのEWは、少なくとも700以上であれば良く、より好ましくは800以上である。そして、1500以下であることが好ましく、1300以下であることがより好ましい。700以下では親水性が高すぎて、水の円滑な移動ができなくなり、1500以上ではプロトン伝導性が低すぎるため、本発明の効果を示し得なくなる。
【0020】
膜の同一面の触媒層のプロトン伝導性ポリマーを少なくとも2種類とすることにより、触媒層の三相界面を形成するプロトン伝導性ポリマーと水排出機能を持たせたプロトン伝導性ポリマーに機能を分担させることも出来る。この時、プロトン伝導性ポリマーの最も近い数値同士のEWの差として、20以上あれば本発明の効果を享受することができ、50以上あればより好ましい。EWの差の上限は、800以下であれば好ましく、600以下であればより好ましく、400以下であれば特に好ましい。
【0021】
触媒層内に分散させるプロトン伝導性ポリマーの量は、触媒担持量に対し、重量比で0.1〜10の範囲である。対触媒重量比0.1以下では、反応活性点の低下により充分な触媒利用率が得られなくなる。一方、同重量比10以上になると、プロトン伝導性ポリマーによる親水性の影響が大きくなり、本発明の効果が得られなくなる。
次に、固体高分子電解質膜の両面に、触媒層を形成させたシートの触媒層面を膜側にして重ね合わせ、加温・加熱下、触媒層を固体高分子電解質膜に接合させる。かかる接合時の圧力、温度は、固体高分子電解質膜、プロトン伝導性ポリマー、触媒、電導性材料が相互に充分な密着性を付加される条件から選択されるものである。特に、パーフルオロスルホン酸ポリマーを固体高分子電解質膜として用いる場合、ガラス転移点以上であれば良く、好ましい接合温度は120〜200℃である。
プロトン伝導性ポリマーは、最終的にプロトン型でなければ充分な伝導性を得ることが出来ないが、接合時における固体高分子膜やプロトン伝導性ポリマーの耐熱性を向上させるために、ナトリウムやカリウム等の一価の金属イオン、あるいは二価、三価の金属に置換して、熱処理を行ない、最終的にプロトン型にすることも有効な方法である。
【0022】
触媒層を固体高分子膜に接合した後に、さらに触媒層支持体としてカーボンペーパーやカーボンクロス等の電気伝導性多孔質織布・不織布と接合、もしくは重ね合わせることにより、膜・電極接合体として燃料電池セルに組み込むことが出来る。カーボンペーパーやカーボンクロスは、ガス拡散層と同様に、ポリテトラフロロエチレン樹脂を含浸させることにより、必要に応じて撥水性を付与しうる。電気伝導性多孔質織布や不織布の空孔率は、50%以上あれば充分な物質交換の機能を有する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
【実施例】
(実施例1)
40重量%の白金触媒担持カーボン(米国E−TEK社製)に、プロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂の5重量%溶液(旭化成工業(株)製、EW=910、溶媒組成はエタノール/水=50/50)を、白金触媒とポリマーとの重量比が2対1となるように添加し、均一に分散させてペーストを調製した。このペーストを200メッシュのスクリーンを用いて、ポリテトラフロロエチレンシート上に塗布した後、大気雰囲気中100℃で乾燥・固定化し、白金担持量0.2mg/cm2 の触媒シートを得た。
この固定化された触媒シート上に、EW=1030のプロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂の5重量%溶液(同上)のみを、同じスクリーンを用いて塗布し、大気雰囲気中100℃で乾燥後、厚みとして約1μmである0.20mg/cm2 のポリマー層を形成させた。こうしてカソード触媒層を作製した。
【0024】
一方、上記と同じ手順で作製した触媒シート上に、EW=910のプロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂の5重量%溶液(同上)のみを、同じスクリーンを用いて塗布し、大気雰囲気中100℃で乾燥後、厚みとして約1μmである0.20mg/cm2 のポリマー層を形成させた。こうしてアノード触媒層を作製した。
これらカソード、アノード触媒層シートを向かい合わせ、その間に、EW=950、厚みが100μmのパーフルオロスルホン酸膜(旭化成工業(株)製)をはさみ、150℃、圧力50kg/cm2 でホットプレスした後、両面のポリテトラフロロエチレンシートを剥がし、膜・電極接合体を作製した。
【0025】
触媒層支持体として、厚さ約400μmのカーボンクロス(E−TEK社製)を用い、テトラフロロエチレン分散液(60重量%)に浸漬した後、340℃でシンタリングを行い、カーボンクロスに対し40重量%含浸させた。その空隙率は50%であった。
これら膜・電極接合体と触媒層支持体を、燃料電池単セル評価装置に組み込み、燃料に水素ガス、酸化剤に空気ガスを用い、常圧、セル温度70℃で単セル特性試験を行った。水素ガスは80℃で加湿を行ない、また空気ガスは加湿せずそのままセルへ供給した。0.5、1.0A/cm2 の電流密度の時、0.65V、0.50Vがそれぞれ得られた。以下の実施例、比較例も同じ膜・電極接合方法、触媒層支持体、単セル運転条件を用いて試験を実施した。
実施例1のセル構造の模式図を図1に示す。
【0026】
(実施例2)
実施例1における、カソードの触媒中、及び触媒シート上に塗布するパーフルオロスルホン酸ポリマーのEWを1030として、他の条件は実施例1に合わせ膜・電極接合体を作製した。
単セル電池特性として、0.5、1.0A/cm2 の電流密度の時、0.63V、0.48Vがそれぞれ得られた。
(実施例3)
実施例1の触媒層シート上に、EW=1030のプロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂の5重量%溶液(同上)のみを、同じスクリーンを用いて塗布し、大気雰囲気中100℃で乾燥後、厚みが約1μmである0.20mg/cm2 のポリマー層を形成した。これをカソード触媒層、アノード触媒層とした。
単セル電池特性として、0.5、1.0A/cm2 の電流密度の時、0.63V、0.49Vがそれぞれ得られた。
(実施例4)
カソード触媒層として、実施例3と同じものを用いた。また実施例1の触媒層シート上に何らプロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂層を設けることなく、これをアノード触媒層とした。
単セル電池特性として、単セル電池特性として、0.5、1.0A/cm2 の電流密度の時、0.64V、0.49Vがそれぞれ得られた。
【0027】
(比較例1)
実施例1において、カソード触媒シート及びアノード触媒シート上に何らプロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂層を形成させず膜と接合し、膜・電極接合体を作製した。実施例1と同じ単セル運転条件で評価を行った。0.5、1.0A/cm2 の電流密度の時、0.53V、0.22Vがそれぞれ得られた。
(比較例2)
40重量%の白金触媒担持カーボン(米国E−TEK社製)に、プロトンタイプパーフルオロスルホン酸ポリマー樹脂の5重量%溶液(旭化成工業(株)製、EW=910、溶媒組成はエタノール/水=50/50)を、白金触媒とポリマーとの重量比が2対1となるように添加し、均一に分散させてペーストを調製した。このペーストを200メッシュのスクリーンを用いて、ポリテトラフロロエチレンシート上に塗布した後、大気雰囲気中100℃で乾燥・固定化し、白金担持量0.2mg/cm2 の触媒シートを得た。アノード触媒シート及びカソード触媒シートに設けられるプロトン伝導性ポリマー層として、EW=1030、フィルム厚み40μm のパーフルオロスルホン酸膜(旭化成工業(株)製)を用いた(アノード、カソード触媒シートとプロトン伝導性ポリマーフィルムとの接合は、次のホットプレスの際同時に行われた。)。これをアノード触媒層、及びカソード触媒層として用いた。
【0028】
これら触媒層を向かい合わせ、その間に、EW=950、厚みが100μmのパーフルオロスルホン酸膜(旭化成工業(株)製)をはさみ、150℃、圧力50kg/cm2 でホットプレスした後、両面のポリテトラフロロエチレンシートを剥がし、膜・電極接合体を作製した。
ガス拡散層として、厚さ約400μmのカーボンクロス(E−TEK社製)を用い、テトラフロロエチレン分散液(60重量%)に浸漬した後、340℃でシンタリングを行い、カーボンクロスに対し40重量%含浸させた。その空隙率は50%であった。
これら膜・電極接合体とガス拡散層を、実施例1と同じ単セル運転条件で評価を行った。0.5、1.0A/cm2 の電流密度の時、0.53V、0.30Vがそれぞれ得られた。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、固体高分子膜と少なくとも1方の触媒層が接する界面に、固体高分子膜とは異なるEWのプロトン伝導性ポリマーの層を形成させることにより、カソード触媒層内の水蓄積を抑制する効果を有するとともに、膜の乾燥を防止するバリヤーとしても機能し、低電流密度から高電流密度まで安定した電池特性を発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膜・電極接合体を適用した固体高分子型燃料電池のセル構造の模式図である。
【符号の説明】
1 固体高分子膜
2 アノード
3 カソード
4 膜・電極接合体
5 触媒層支持体
6 セパレータ
7 触媒層
8 プロトン伝導性ポリマー層
Claims (3)
- 少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、カソード触媒層と固体高分子膜が接する界面にのみ、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有することを特徴とする膜・電極接合体。
- 少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、カソード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有し、且つアノード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有することを特徴とする膜・電極接合体。
- 少なくとも電極触媒粒子及びプロトン伝導性ポリマーを含んだ触媒層が固体高分子膜の両面に存在する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、カソード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが高く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有し、且つアノード触媒層と固体高分子膜が接する界面に、固体高分子膜よりもEWが低く、かつ厚みが0.1〜10μmであり、触媒層表面及びその内部に部分的に浸入した三次元の層であるプロトン伝導性ポリマー層を有することを特徴とする膜・電極接合体。
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