JP4107532B2 - レーザ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ装置に係り、特にレーザ励起手段にランプを使用し、パルスレーザ光を繰り返し発振出力する固体レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の固体レーザ装置では、レーザ発振時における励起ランプの点灯開始をよくするため、待機(レーザ未発振)中の励起ランプに微弱な予備放電電流いわゆるシマー電流を流すようにしている。シマー電流により待機中も励起ランプ内に放電路が形成されることで、主レーザ電源からのランプ点灯(レーザ発振)用の本来のランプ電流が流れやすくなり、高速の繰り返しパルス発振も可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の究明したところによれば、パルスレーザ光を繰り返し発振出力する際には、シマー電流が励起ランプの寿命およびレーザ出力の安定性に影響することが判明した。すなわち、シマー電流を大きくするほど励起ランプの寿命が短くなり、シマー電流を小さくするほど高速繰り返し時にレーザ出力が安定しなくなることが判明した。
【0004】
しかるに、従来のこの種固体レーザ装置は、シマー電流の電流値を固定しており、パルス発振の繰り返し速度と関係無く一定の電流値に維持していた。このため、常時低いパルス繰り返し速度で稼動している場合や日頃の稼動率が低い場合でも励起ランプが比較的早く消耗するという問題が生じたり、あるいはパルス繰り返し速度を上げたときにレーザ出力が不安定になることがあった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、シマー電流の電流値を適切に制御して励起ランプの寿命を可及的に延ばすとともに、レーザ出力の安定性を向上させるようにしたレーザ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の第1のレーザ装置は、待機時に励起ランプにシマー電流を流しておいて、レーザ発振時に前記励起ランプにパルス波形のランプ電流を供給して前記励起ランプをパルス点灯させ、その光エネルギーによって固体レーザ媒体を励起して、パルスレーザ光を発振出力するようにしたレーザ装置において、前記パルスレーザ光の繰り返し速度またはパルス間隔に応じて前記シマー電流の電流値を可変制御する手段を具備する構成とした。
【0007】
また、本発明の第2のレーザ装置は、待機時に励起ランプにシマー電流を流しておいて、レーザ発振時に前記励起ランプにパルス波形のランプ電流を供給して前記励起ランプをパルス点灯させ、その光エネルギーによって固体レーザ媒体を励起して、パルスレーザ光を発振出力するようにしたレーザ装置において、前記パルスレーザ光の繰り返し速度またはパルス間隔について複数の区域を設定する区域設定手段と、各々の前記区域について前記シマー電流の電流値を個別に設定するシマー電流設定手段と、発振出力される前記パルスレーザ光について該当する区域を判別する区域判別手段と、前記区域判別手段によって判別された該当区域に対応する電流値に前記シマー電流を制御するシマー電流制御手段とを具備する構成とした。
【0008】
本発明の一態様として、前記区域判別手段が、前記パルスレーザ光の発振出力について予め設定されたシーケンスに基づいて前記該当区域を判別する手段を含む構成であってよい。
【0009】
あるいは、前記区域判別手段が、任意のタイミングで与えられる外部からの所定の信号に応動して発振出力される前記パルスレーザ光の繰り返し速度またはパルス間隔を測定する測定手段と、この測定手段で得られた測定値に基づいて前記該当区域を判別する手段とを含む構成であってよい。
【0010】
また、前記シマー電流制御手段が、前記励起ランプに前記シマー電流を供給するためのスイッチング素子を含むシマー電源回路と、前記シマー電流を検出し、その電流値を表す電圧信号を出力するシマー電流検出手段と、前記複数の区域にそれぞれ対応して設定された複数の増幅率の中のいずれかに択一的に選択可能に構成され、選択された増幅率で前記電流検出手段からの前記電圧信号を増幅する増幅器と、前記区域判別手段によって判別された該当区域に対応する増幅率に前記増幅器を切り替える増幅率切替手段と、前記増幅器の出力信号を予め設定されている基準電圧と比較し、その比較誤差を零に近づけるようなパルス幅を有する一定周波数のスイッチングパルスで前記スイッチング素子をスイッチング制御するパルス幅制御手段とを有する構成であってよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図を参照して本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1に、本発明の一実施例によるYAGレーザ加工装置の全体の主要な構成を示す。このYAGレーザ加工装置は、主としてレーザ発振部10、レーザ電源部12、制御部14、入出力インタフェース部16およびシマー回路18から構成されている。
【0013】
レーザ発振部10は、チャンバ20内に互いに近接して並置された励起ランプ22およびYAGロッド24と、チャンバ20の外でYAGロッド24の光軸上に配置された一対の光共振器ミラー26,28とを有している。
【0014】
励起ランプ22は、レーザ電源部12よりパルス波形のランプ電流IR の供給を受けてパルス点灯する。励起ランプ22がパルス点灯すると、その光エネルギーでYAGロッド24が励起され、YAGロッド24の両端面より光軸上に出た光が光共振器ミラー26,28の間で反射を繰り返して増幅されたのちパルスレーザ光LBとして出力ミラー26を抜け出る。出力ミラー26より抜け出たパルスレーザ光LBは、適当なレーザ伝送系(図示せず)を介してレーザ加工部(図示せず)へ送られ、そこで被加工物(図示せず)に照射される。
【0015】
レーザ電源部12は、レーザ発振部10に供給すべきレーザ発振用の電力を蓄積するコンデンサ30と、商用交流たとえば三相交流電源電圧(U,V,W)を直流に変換してコンデンサ30を所定の直流電圧に充電するための充電回路32と、コンデンサ30とレーザ発振部10の励起ランプ22との間に接続されたスイッチング素子たとえばトランジスタ34と、このトランジスタ34を高周波数(たとえば20kHz)でスイッチング駆動する駆動回路36とを含んでいる。
【0016】
制御部14は、装置全体ないし各部の動作を制御するためのCPU(マイクロプロセッサ)38と、このCPU38に所定の処理を行わせるための各種プログラムおよび各種設定値または演算データを保持するためのメモリ40と、パルスレーザ光LBのレーザ出力またはこれに対応するレーザ電源部12内の電気的パラメータを計測するための各種計測手段42〜46等を含んでいる。
【0017】
CPU38は、電源部12に対しては、コンデンサ30を設定電圧に充電させるための充電制御信号CFを充電回路32に与えるとともに、波形制御用のスイッチング制御信号SWを駆動回路36に与える。
【0018】
波形制御のために、CPU38は、レーザ出力測定部42からのレーザ出力測定値SL 、電圧測定回路44からのランプ電圧測定値SV または電流測定回路46からのランプ電流測定値SI 、あるいはランプ電圧測定値SV およびランプ電流測定値SI から求めたランプ電力測定値SP (SV ・SI )を予め設定されている波形制御用の基準波形と比較して比較誤差を求め、この比較誤差を零に近づけるようなパルス幅を有するパルス幅制御信号をスイッチング制御信号SWとして生成する。
【0019】
このようなフィードバック制御方式により、レーザ発振部40より発振出力されるパルスレーザ光LBのレーザ出力またはこれに対応するレーザ電源部42内の電気的パラメータ(ランプ電流、ランプ電力、ランプ電圧)が各波形制御用の基準波形に倣うように制御される。
【0020】
なお、上記のようなCPU38におけるパルス幅制御機能を別個のCPUまたは専用の制御回路にもたせることも可能である。
【0021】
入出力インタフェース部16は、入力部48、表示部50および通信インタフェース回路(I/F)52等を含んでいる。入力部48は、たとえばキーボードやマウス等を有し、所与のレーザ加工に応じた各種条件またはパラメータの設定値を入力する。本実施例では、シマー回路18に関係する各種設定値も入力部48より入力されてよい。表示部50は、LCDまたはLED等で構成され、設定値、測定値、判定値等を表示する。I/F52は、レーザ加工用の搬送ロボットあるいはコントローラ等の図示しない外部の装置(以下,外部装置という)との信号またはデータの授受に用いられる
【0022】
シマー回路18は、本装置に電源が入っていて、レーザが発振されていない間の待機中に励起ランプ22に予備放電用のシマー電流Isを供給する。本実施例において、シマー回路18は、CPU38の制御の下でシマー電流Isの電流値をレーザ発振部10ないしレーザ電源部12の状態に応じて適宜変更(切替)できるように構成されている。
【0023】
図2に、本実施例におけるシマー回路18の回路構成を示す。このシマー回路18は、励起ランプ22にシマー電流Isを供給するための電源部54と、シマー電流Isの電流値を制御するための制御部56とから構成される。
【0024】
電源部54において、入力端子57に入力された、たとえば200ボルトの商用交流電圧Eは整流回路58で所定電圧の直流に変換される。整流回路58の出力端子は、たとえばFET(電界効果トランジスタ)からなるスイッチング素子60を介して昇圧トランス62の1次側コイルに接続されている。スイッチング素子60は、後述する制御部56のスイッチング制御によりたとえば50kHzの周波数でオン・オフする。これにより、昇圧トランス62の1次側回路で同周波数のパルス電流が流れ、電磁誘導によって2次側コイルに相似のパルス波形を有する交流の二次電圧が生成される。この交流二次電圧は整流回路64で所定電圧の直流に変換され、この整流回路64からの直流電圧がチョーク・コイル66および逆流防止用のダイオード68を介して励起ランプ22に印加され、この閉回路内で直流のシマー電流Isが流れるようになっている。
【0025】
制御部56において、電源部54に取付されている電流センサたとえばホールCT70は、励起ランプ22を流れるシマー電流Isを検出し、その電流値を表す電圧信号(電流検出信号)Vsを出力する。
【0026】
ホールCT70からの電流検出信号Vsは、演算増幅器72およびその周辺(入力・帰還)抵抗74〜80からなるインピーダンス変換用のバッファ・アンプを介して信号増幅用の演算増幅器82の非反転入力端子に供給される。
【0027】
演算増幅器82の反転入力端子は、並列的に設けられた複数個(この例では3個)のアナログスイッチ84,86,88を介して直列抵抗回路90の各接続点に電気的に接続される。より詳細には、直列抵抗回路90は演算増幅器82の出力端子とグランド端子との間に4個の抵抗92,94,96,98を直列接続してなり、抵抗92,94間の接続点にスイッチ84が、抵抗94,96間の接続点にスイッチ86が、抵抗96,98間の接続点にスイッチ88がそれぞれ接続されている。
【0028】
これら3個のスイッチ84,86,88は、CPU38の制御によりその中の1つだけが選択されてオン状態になり、他は全部オフ状態に保持される。
【0029】
スイッチ84が選択されたときは、演算増幅器82に対して抵抗92が入力抵抗を、抵抗94,96,98が帰還抵抗をそれぞれ構成する。各抵抗92,94,96,98の抵抗値をそれぞれR92,R94,R96,R98とすると、この場合の演算増幅器82の増幅率μ1は(R92+R94+R96+R98)/R92である。
【0030】
スイッチ86が選択されたときは、抵抗92,94が入力抵抗を、抵抗96,98が帰還抵抗をそれぞれ構成し、この場合の演算増幅器82の増幅率μ2は(R92+R94+R96+R98)/(R92+R94)である。
【0031】
スイッチ88が選択されたときは、抵抗92,94,96が入力抵抗を、抵抗98が帰還抵抗をそれぞれ構成し、この場合の演算増幅器82の増幅率μ1は(R92+R94+R96+R98)/(R92+R94+R96)である。
【0032】
このように、3個のスイッチ84,86,88のいずれが選択されるかによって演算増幅器82の増幅率μが異なり、スイッチ84が選択されたときの増幅率μ1が最も大きく、次に大きいのがスイッチ86が選択されたときの増幅率μ2で、スイッチ88が選択されたときの増幅率μ3が最も小さい。
【0033】
本実施例において、演算増幅器82の増幅率μを多段階(この例では3段階)に切替可能に構成しているのは、シマー電流Isの電流値を多段階(この例では3段階)に切替可能とするためである。
【0034】
表1に示すように、本実施例では、パルスレーザ光LBを繰り返し発振出力する速度(パルス発振繰り返し速度)fを「低速域」(f<2pps)、「中速域」(2pps≦f≦200pps),「高速域」(200pps<f)の3区域に分け、「低速域」には0.3A、「中速域」には2A、「高速域」には5Aのシマー電流設定値を選定している。これらの設定値は、データとして入力部48よりCPU38に入力され、メモリ40内の所定の記憶領域に格納される。
【0035】
【表1】
Figure 0004107532
【0036】
CPU38は、シマー電流Isを「低速域」用の0.3Aに切り替えるときはスイッチ84を選択し、「中速域」の2Aに切り替えるときはスイッチ86を選択し、「高速域」の5Aに切り替えるときはスイッチ88を選択するようになっている。
【0037】
演算増幅器82における3段階の増幅率μ1、μ2、μ3は、シマー電流の3段階の設定値0.3A、2A、5Aにそれぞれ対応した値に選ばれる。より詳細には、設定値×増幅率(0.3μ1、2μ2、5μ3)が常に一定の値Kになるように選ばれる。
【0038】
これにより、演算増幅器82の出力端子には、シマー電流設定値とは関係なく上記一定値Kに対応する基準電圧KI付近の電圧レベルを有する電流検出信号μVsが得られる。演算増幅器82からの電流検出信号μVsは電流制御回路100に与えられる。
【0039】
電流制御回路100は、CPU38からの制御信号によってシマー電流Isのオン/オフを制御し、オン期間中は演算増幅器82からの電流検出信号μVsを基準電流値設定部102からの上記基準電圧KIと比較し、その比較誤差を零にするようなシマー電流制御を行う。本実施例では、たとえば50kHzの基準パルスを発生するパルス発生回路(図示せず)を備え、比較誤差で基準パルスをパルス幅変調したものをスイッチング制御信号EGとして出力し、このスイッチング制御信号により駆動回路104を介して電源部54のスイッチング素子60をオン・オフ制御するようにしている。
【0040】
次に、図3〜図8につき本実施例におけるシマー電流制御方式の作用を説明する。
【0041】
本実施例のYAGレーザ加工装置では、レーザ加工の要求仕様に応じてパルスレーザ光LBの波形、出力(光強度)、繰り返し速度、パルス数等の条件が選択される。これらの条件のうち、波形や出力等のパルス自体に内在する条件は本装置に予め設定入力される。しかし、繰り返し速度やパルス数等の時間的またはタイミング的な条件は本装置に予め設定入力されることもあれば、外部装置からのコマンド信号(スタート信号、ストップ信号等)によって決まることもある。
【0042】
外部装置よりコマンド信号が与えられる場合には、一連のパルスレーザ光LBを発振出力するために、外部コマンド信号が一連のパルスレーザ光LBを発振出力するスタート時点だけを本装置に指示し、後は本装置に予め閉め設定しているシーケンスに任せるケース(第1のケース)と、外部コマンド信号がスタート時点とストップ時点を本装置に指示し、その間のシーケンスを本装置に任せるケース(第2のケース)と、外部コマンド信号が個々のパルスレーザ光LBについてパルス発振のタイミングを任意に指示するケース(第3のケース)とがある。
【0043】
図3に、上記第1のケースにおいてシマー電流を可変制御するためのCPU38の処理手順を示す。図4に、この第1のケースにおける各部のタイミングまたは波形を模式的に示す。
【0044】
電源投入直後あるいは所定のリセット後で行なう初期化(ステップS1)において、CPU38は、メモリ40より所要のシーケンスおよび条件設定値を検索し、検索したデータの中からシマー電流の初期値を識別する。通常は、電源投入後またはリセット後に外部スタート信号が与えられる時点は不定であり、長時間待機することもあるので、シマー電流初期値は「低速域」用の最も小さい電流設定値(0.3A)に選ばれる。
【0045】
CPU38は、シマー回路18より励起ランプ22に供給されるシマー電流Isの電流値をシマー電流初期値とするよう、増幅器82の増幅率μを選択する。この例では、「低速域」用のスイッチ84を選択的にオンにする(ステップS2)。
【0046】
これにより、シマー回路18内では、電流センサ70、増幅器82、電流制御回路100、基準電流値設定部102、スイッチング素子60等からなるフィードバック式の定電流制御ループが働いて、シマー電流Isはシマー電流初期値(0.3A)に維持される。
【0047】
外部装置からの外部スタート信号STをI/F52を介して受信すると(ステップS3)、CPU38は、用意してあるシーケンスに係るパルス繰り返し速度fの設定値から該当する区域を判別し、その該当する区域に対応する設定値にシマー電流Isの電流値を切り替える(ステップS4)。たとえば、パルス繰り返し速度fの設定値が15ppsであるときは、「中速域」用の設定値(2A)に切り替える。そのためには、増幅器82に対して、該当するスイッチ86を選択的にオンにする。
【0048】
また、パルス繰り返し速度fの設定値がたとえば300ppsであるときは、「高速域」用の設定値(5A)に切り替える。そのためには、増幅器82に対して、該当するスイッチ88を選択的にオンにする。また、パルス繰り返し速度fの設定値がたとえば1ppsであったり、あるいは単一のパルスレーザ光LBを発振出力するアプリケーションもあり得る。この場合は、シマー電流Isの電流値を初期値(0.3A)に維持する。したがって、該当スイッチ84をオン状態に保持する。
【0049】
シマー回路18内では、以後、上記フィードバック式の定電流制御ループにより、シマー電流Isが該選択(切替)された設定値に維持される。
【0050】
かかるシマー電流Isの下で、CPU38は、上記シーケンスにしたがってレーザ電源部12を制御し、レーザ発振部10の励起ランプ22に所定のパルス波形を有するランプ電流IRを供給させる。レーザ発振部10では、励起ランプ22がパルス点灯する度にYAGロッド24が励起され、光共振器の出力ミラー26より所定の波形でパルスレーザ光LBが発振出力される。なお、ランプ電流IRの供給を受けて励起ランプ22がパルス点灯する時、シマー回路18では保護ダイオード68に逆バイアスとしてランプ電圧が印加されるため、シマー電流Isは一時的に遮断される。
【0051】
レーザ加工部では、被加工物が出射ユニットによって集光されたパルスレーザ光LBの照射を受け、パルスレーザ光LBのレーザエネルギーによって溶接、切断、穴あけ等のレーザ加工を施される。
【0052】
本実施例のYAGレーザ加工装置では、繰り返しパルスレーザ発振の各合間にシマー電流Isがパルス繰り返し速度fに応じた適切な電流値で励起ランプ22に予備放電路を形成するため、励起ランプ22の繰り返しパルス点灯ひいてはレーザ発振部10の繰り返しパルスレーザ発振が安定に行なわれ、安定した出力(光強度)のパルスレーザ光LBが得られる。これにより、レーザ加工の加工品質を向上させることができる。
【0053】
CPU38は、各種計測手段42〜46からの測定値信号を基に、レーザ発振部10より発振出力されたパルスレーザ光LBを計数し(ステップS5、S6)、その計数(累積)値が設定値Nsに達したならば(ステップS7)、その時点で当該シーケンスを終了させ、シマー電流Isの電流値を初期値に戻す(ステップS8、S2)。
【0054】
このように、一連の繰り返しパルスレーザ発振の開始前または終了後の待機または休止時間中はシマー電流Isを最小の設定値で流すようにしたので、励起ランプ22における消耗劣化の進行速度を最小限に食い止め、励起ランプ22の寿命を可及的に延ばすことができる。
【0055】
図5に、上記第2のケースにおいてシマー電流を可変制御するためのCPU38の処理手順を示す。この場合も、シーケンスを止める手順を除き、上記第1のケースと同様の処理手順が実行される。
【0056】
シーケンスを止めるときは、外部装置よりI/F52を介してストップ信号が与えられる。このストップ信号を受信すると(ステップS9)、CPU38は、この時点でパルスレーザ光LBが発振出力中であるのか否かを判別する。発振出力中でないときは、直ちにシーケンスを止めて、シマー電流Isの電流値を初期値に戻す(ステップS10、S12)。発振出力中であるときは、図6に示すように、当該パルスレーザ光LBの発振出力が終了した時点で、シーケンスを止めて、シマー電流Isの電流値を初期値に戻す(ステップS11、S12)。
【0057】
図7に、上記第3のケースにおいてシマー電流を可変制御するためのCPU38の処理手順を示す。図8に、このケースにおける各部のタイミングまたは波形を示す。
【0058】
このケースでも、電源投入後またはリセット後の待機中は、上記第1および第2のケースと同様に、シマー電流Isを所定の初期値に保持する(ステップB1〜B2)。しかし、外部スタート信号STが入ると、レーザ電源部12およびレーザ発振部10に予め設定されている波形でパルスレーザLBを1発だけ発振出力させる(ステップB3、B4)。
【0059】
この時点では、パルス繰り返し速度fが未定であるため、次に来る外部スタート信号STを待つ(ステップB6、B9)。そして、次の外部スタート信号STを受信したなら(ステップB9、B10)、CPU38は2発目のパルスレーザLBを発振出力させたうえで(ステップB4)、1回目の外部スタート信号STと2回目の外部スタート信号STとの時間差(時間間隔)t1を測定し、この時間間隔t1からパルス繰り返し速度f(1/t1)を求める(ステップB7)。そして、その求めたパルス繰り返し速度fに該当する区域を判別し、その該当区域用の設定値にシマー電流Isの電流値を切り替える(ステップB8)。
【0060】
これ以降も、上記と同様の処理手順を繰り返し(ステップB9⇒B10⇒B4⇒B5⇒B7⇒B8⇒B9⇒B10⇒‥‥)、外部スタート信号STのタイミングに応じてリアルタイムにシマー電流Isの電流値を可変制御する。
【0061】
そして、直前の外部スタート信号STを受信してから所定のリミット時間TL経過しても次の外部スタート信号STが入ってこないときは、初期の待機モードに戻り(ステップB11、B12)、シマー電流Isを初期値に戻す(ステップB2)。
【0062】
この例では外部スタート信号STの各時間間隔毎にパルス繰り返し速度f(1/t)を求めたが、複数の時間間隔の平均値または移動平均値としてパルス繰り返し速度fを求めるようにしてもよい。
【0063】
なお、図3、図5および図7には図示していないが、電源が切られた時や異常事態が発生した時等には、CPU38はシマー回路18の電流制御回路100に電流オフを指示する制御信号を与えて、シマー電流Isを止める。
【0064】
上記した第1、第2、第3のケースはいずれも外部装置からのコマンド信号に応動してパルスレーザ光LBを発振出力する動作であった。本装置の入力部48より上記外部コマンド信号に相当するコマンドを入力することももちろん可能であり、通常は上記第1または第2のケースと同様の動作が行なわれる。
【0065】
また、繰り返しレーザ発振または単発レーザ発振の全シーケンスを本装置にプログラミングした場合は、パルス繰り返し速度の時間的推移(変化)を予め割り出すことが可能であり、上記した外部コマンド方式の場合よりもよりフレキシブルかつ適確にシマー電流の可変制御を行うことができる。
【0066】
たとえば、或る一連の繰り返しレーザ発振動作におけるパルス繰り返し速度fが「高速域」のものであれば、レーザ発振出力の安定性を重視して、それに先立つ待機時間中のシマー電流の初期値を「中速域」用の設定値(2A)または「高速域」用の設定値(5A)に選択することもできる。その意味では、シマー電流の初期値を随時変更することができる。このようにシマー電流の初期値を比較的高い電流値にしたり随時変更する方法は上記外部コマンド方式にももちろん適用可能である。
【0067】
図9に、シマー回路18の回路構成の別の実施例を示す。この実施例は、上記した第1の実施例(図2)における制御部56を図示のような構成56´に変形したものである。すなわち、電流センサ70の出力信号(電流検出信号)Vsを電流制御回路100に直接供給し、可変電流値設定部110より可変制御可能な電流設定値KCを電流制御回路100に与える構成としている。電流制御回路100は、両入力(Vs、KC)を比較して比較誤差(差分)を求め、比較誤差を零に近づけるようなPWM制御信号EGによって電源部54のスイッチング素子60をスイッチング制御する。
【0068】
CPU38は、上記第1の実施例において増幅器82の増幅率μを可変制御すべくスイッチ群84,86,88のオン・オフ状態を制御したのに代えて、この実施例では可変電流値設定部110に所望のシマー電流設定値を随時与えるか指示すればよい。したがって、段階的な可変制御はもちろんのこと、連続的な可変制御も可能である。
【0069】
もっとも、電流センサ70からの電流検出信号Vsが増幅器で正規化(レベル較正)されることなく電流制御回路100に与えられるため、電流制御回路100内での信号処理が難しくなり、シマー電流Isの電流値が小さい場合、たとえば「低速域」用の電流値(0.3A)のときは信号処理ないし電流制御の精度が低下することもある。
【0070】
その意味で、上記第1実施例における制御部56は、演算増幅器や抵抗、アナログスイッチ等のハードウェア回路を必要とするものの、電流制御回路100の負担を軽減し、精度の高い電流制御を可能とする。
【0071】
上記した実施例における各種設定値の値(たとえば表1内の数値)は一例であり、任意の設定値を選択することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のレーザ装置によれば、パルスレーザ光のパルス繰り返し速度に応じてシマー電流の電流値を可変制御することにより、励起ランプの寿命を可及的に延ばすとともに、レーザ出力の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるYAGレーザ加工装置の主要部の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施例におけるシマー回路の回路構成を示すブロック図である。
【表1】実施例におけるパルス繰り返し速度の設定区域と各対応するシマー電流設定値との関係を示す表である。
【図3】実施例の第1のケースにおいてシマー電流を可変制御するためのCPUの処理手順を示すフローチャート図である。
【図4】第1のケースにおける各部のタイミングまたは波形を模式的に示すタイミング図である。
【図5】実施例の第2のケースにおいてシマー電流を可変制御するためのCPUの処理手順を示すフローチャート図である。
【図6】第2のケースにおける各部のタイミングまたは波形を模式的に示すタイミング図である。
【図7】実施例の第3のケースにおいてシマー電流を可変制御するためのCPUの処理手順を示すフローチャート図である。
【図8】第3のケースにおける各部のタイミングまたは波形を模式的に示すタイミング図である。
【図9】本発明におけるシマー回路の別の実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 レーザ発振部
12 レーザ電源部
14 制御部
16 入出力インタフェース部
18 シマー回路
22 励起ランプ
24 YAGロッド
38 CPU
40 メモリ
48 入力部
52 インタフェース回路
54 電源部
56 制御部
70 電流センサ
82 演算増幅器
84,86,88 アナログスイッチ
90(92,94,96,98) 直列抵抗回路
100 電流制御回路
102 基準電流値設定部
56´ 制御部
110 可変電流値設定部

Claims (6)

  1. 待機時に励起ランプにシマー電流を流しておいて、レーザ発振時に前記励起ランプにパルス波形のランプ電流を供給して前記励起ランプをパルス点灯させ、その光エネルギーによって固体レーザ媒体を励起して、パルスレーザ光を発振出力するようにしたレーザ装置において、
    前記パルスレーザ光の繰り返し速度またはパルス間隔に応じて前記シマー電流の電流値を可変制御する手段を具備することを特徴とするレーザ装置。
  2. 待機時に励起ランプにシマー電流を流しておいて、レーザ発振時に前記励起ランプにパルス波形のランプ電流を供給して前記励起ランプをパルス点灯させ、その光エネルギーによって固体レーザ媒体を励起して、パルスレーザ光を発振出力するようにしたレーザ装置において、
    前記パルスレーザ光の繰り返し速度またはパルス間隔について複数の区域を設定する区域設定手段と、
    各々の前記区域について前記シマー電流の電流値を個別に設定するシマー電流設定手段と、
    発振出力される前記パルスレーザ光について該当する区域を判別する区域判別手段と、
    前記区域判別手段によって判別された該当区域に対応する電流値に前記シマー電流を制御するシマー電流制御手段と
    を具備することを特徴とするレーザ装置。
  3. 前記区域判別手段が、前記パルスレーザ光の発振出力について予め設定されたシーケンスに基づいて前記該当区域を判別する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載のレーザ装置。
  4. 前記区域判別手段が、任意のタイミングで与えられる外部からの所定の信号に応動して発振出力される前記パルスレーザ光の繰り返し速度またはパルス間隔を測定する測定手段と、この測定手段で得られた測定値に基づいて前記該当区域を判別する手段とを含むことを特徴とする請求項2に記載のレーザ装置。
  5. 前記シマー電流制御手段が、
    前記励起ランプに前記シマー電流を供給するためのスイッチング素子を含むシマー電源回路と、
    前記シマー電流を検出し、その電流値を表す電圧信号を出力するシマー電流検出手段と、
    前記複数の区域にそれぞれ対応して設定された複数の増幅率の中のいずれかに択一的に選択可能に構成され、選択された増幅率で前記電流検出手段からの前記電圧信号を増幅する増幅器と、
    前記区域判別手段によって判別された該当区域に対応する増幅率に前記増幅器を切り替える増幅率切替手段と、
    前記増幅器の出力信号を予め設定されている基準電圧と比較し、その比較誤差を零に近づけるようなパルス幅を有する一定周波数のスイッチングパルスで前記スイッチング素子をスイッチング制御するパルス幅制御手段と
    を有することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のレーザ装置。
  6. 一連の前記パルスレーザ光の発振出力が行なわれない期間中は前記シマー電流を所望の設定値に維持しておく手段を具備することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のレーザ装置。
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