JP4164936B2 - ビフェニルテトラカルボン酸の製造方法およびポリイミド樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビフェニルテトラカルボン酸の製造方法およびポリイミド樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリイミド樹脂の原料となるビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸等を、高い収率で製造することができるビフェニルテトラカルボン酸の製造方法、およびその製造方法から得られるビフェニルテトラカルボン酸を用いたポリイミド樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸の製造方法に関して、文献1「Journal of Chemical Society,1914, vol.105, p.2471」に、基本的に6段階の反応工程からなり、その反応工程の一つに、銅粉存在下に、260℃程度の高温に加熱してカップリング反応を行う、いわゆるウルマン反応を用いる製造方法が開示されている。具体的には、ニトロフタル酸を出発原料とし、下記反応工程を順次に実施するビフェニルテトラカルボン酸の製造方法が開示されている。
1)アミノ化工程(アミノフタル酸合成)
2)ジアゾ化工程(フタル酸ジアゾニウム塩合成)
3)ヨウ素化工程(ヨウ素化フタル酸合成)
4)アルキルエステル化工程(ヨウ素化フタル酸ジメチルエステル合成)
5)ウルマン反応工程(ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル合成)
6)加水分解工程(ビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸合成)
【0003】
また、文献2「米国特許第5,081,281号公報」には、文献1の中間体に該当する4−ハロゲン化フタル酸ジアルキルエステル等を出発原料として、下記反応工程を順次に実施するビフェニルテトラカルボン酸の製造方法が開示されている。
1)脱ハロゲン化工程(ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル合成)
2)加水分解工程(ビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸合成)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、文献1に開示されたウルマン反応を用いる製造方法では、以下のような問題が見られた。
1)ビフェニルテトラカルボン酸の収率が低く、生産性が低い。
2)工程数が多いため、工程時間が長くなったり、工程管理が容易でない。
3)ウルマン反応を実施する上で、ヨウ素化反応(ハロゲン化反応)が前もって必要であり、そのため急性毒性(許容濃度:1ppm以下)の恐れがあるヨウ素を多量に使用しなければならない。
4)ウルマン反応を実施する上で、ヨウ素化フタル酸ジメチルエステル2モルあたり、ヨウ化銅が1モルの割合で脱離するため、多量のヨウ素含有副生物が生じる。
【0005】
また、米国特許第5,081,281号公報に記載された製造方法についても、出発原料として、4−ハロゲン化フタル酸ジアルキルエステルを用いた場合には反応が進行するが、3−ハロゲン化フタル酸ジアルキルエステルを用いた場合には、反応速度および反応収率に問題があることに加え、使用原料の制約が大きいという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明者らは、上記問題を解決し、反応工程数が少なく、汎用的な原料からビフェニルテトラカルボン酸を高収率で製造する方法について研究を進めた結果、入手が容易で、安価なジアルキルベンゼンモノニトロ化合物からベンジジン転位反応を利用することにより、高い収率でビフェニルテトラカルボン酸を製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、ビフェニルテトラカルボン酸を効率的に製造することができる実用的な製造方法、およびこの製造方法から得られるビフェニルテトラカルボン酸を用いたポリイミド樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明は、下記一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸の製造方法であり、下記一般式(2)で表されるジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を出発原料として、還元反応と、ベンジジン転位反応と、脱アミノ化反応と、酸化反応とを順次に実施することを特徴とする。
【0008】
【化7】
[一般式(1)中のカルボキシル基は、それぞれベンゼン環の隣り合う炭素原子に置換している。]
【0009】
【化8】
【0010】
[一般式(2)中のR1およびR2は、それぞれ互いに独立の関係にあるアルキル基であり、かつ、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に置換している。]
【0011】
このようにジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を還元して、ヒドラゾベンゼン誘導体を合成し、次いでベンジジン転位反応を実施することにより、ジアルキルビフェニル構造を含むジアミノビフェニル誘導体を効率的に合成することができる。そして、得られたジアミノビフェニル誘導体から脱アミノ化反応によりアミノ基を脱離するとともに、ジアルキルビフェニル構造におけるアルキル基を酸化させることにより、ビフェニルテトラカルボン酸を高い収率で得ることができる。
【0012】
また、本発明の別の態様は、ポリイミド樹脂の製造方法であり、下記一般式(2)で表されるジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を出発原料として、還元反応と、ベンジジン転位反応と、脱アミノ化反応と、酸化反応とを順次に実施して下記一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸を製造する工程と、得られた下記一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸を二酸無水物にして、この二酸無水物と下記一般式(3)で表される芳香族ジアミン化合物とを反応させることを特徴とする。
【0013】
【化9】
[一般式(2)中のR1およびR2は、それぞれ互いに独立の関係にあるアルキル基であり、かつ、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に置換している。]
【0014】
【化10】
【0015】
[一般式(1)中のカルボキシル基は、それぞれベンゼン環の隣り合う炭素原子に置換している。]
【0016】
【化11】
【0017】
[一般式(3)中、Ar 1 は2価の芳香族基である。]
【0018】
このようにポリイミド樹脂を製造することにより、分子内にねじれ構造を導入することができ、得られたポリイミド樹脂における可溶性や耐熱性を容易に調節することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明におけるビフェニルテトラカルボン酸の製造方法およびポリイミド樹脂の製造方法に関する実施形態をそれぞれ具体的に説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
第1の実施形態におけるビフェニルテトラカルボン酸の製造方法は、ジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を出発原料として、
1)還元反応と、
2)ベンジジン転位反応と、
3)脱アミノ化反応と、
4)酸化反応と
を順次に実施することを特徴としている。以下、それぞれの工程につき、具体的に説明する。
【0021】
(1)出発原料
出発原料として使用可能なジアルキルベンゼンモノニトロ化合物としては、上述した一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0022】
ここで一般式(2)中のR1およびR2で表されるアルキル基は、ベンジジン転位反応を阻害せず、かつ、容易に酸化されるように炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。このようなアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシル基等の一種または二種以上を挙げることができる。また、特に好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基およびプロピル基である。
【0023】
また、一般式(2)におけるR1およびR2で表されるアルキル基は、それぞれ独立であるため、同一種でも、異なる種類のアルキル基であっても良い。さらに、一般式(2)において、R1およびR2で表されるアルキル基の置換位置は、ベンゼン環における1位および2位としてあるが、それぞれn位および(n+1)位というように、ベンゼン環の連続した置換位置であれば良い(nは1〜5の自然数)。
【0024】
ただし、これらのジアルキルベンゼンにおいて、ニトロ基の置換位置は、通常、ベンゼン環の3位または4位である。また、ニトロ基がベンゼン環の3位の場合、ビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸を得る際の出発原料となり、ニトロ基がベンゼン環の4位の場合、ビフェニル−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸を得る際の出発原料となる。
【0025】
(2)還元反応
次工程のベンジジン転位反応においてジフェニル構造を得るために、ジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を還元して、ヒドラゾベンゼン誘導体を合成する必要がある。
以下に、出発原料である一般式(2)で表されるジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を還元して得られる一般式(5)で表されるヒドラゾベンゼン誘導体を示す。
【0026】
【化12】
【0027】
[一般式(5)中のR1およびR2は、それぞれ一般式(2)と同一の内容である。]
【0028】
▲1▼還元条件(還元剤の種類、還元温度、pH値)
還元反応を実施するにあたり、亜鉛/アルカリからなる還元剤を用いるとともに、還元温度を30〜150℃の範囲内の値とし、かつ、pHを7以上の値とすることが好ましい。この理由は、このような還元剤を使用するとともに、還元温度やpHの値を制御することにより、ヒドラゾベンゼン誘導体を高い収率で得ることがきるためである。また、このような還元条件であれば、制御することも容易である。
したがって、還元剤として、亜鉛粉末を使用するとともに、還元温度を30〜150℃の範囲内の値とし、かつ、pHを7.5〜14の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、pH値の調整には、アルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等を添加することが好ましい。
【0029】
▲2▼還元剤の添加量
また、還元剤の添加量についても特に制限されるものではないが、ジアルキルベンゼンモノニトロ化合物1モルあたり、1〜10モルの範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、還元剤の添加量が1モル未満となると、還元反応が著しく遅くなり、未反応の出発原料が残る場合があるためであり、一方、還元剤の添加量が10モルを超えると、反応制御が困難となる場合があるためである。したがって、還元剤の添加量を、ジアルキルベンゼンモノニトロ化合物1モルあたり、1.25〜9モルの範囲内の値とするのがより好ましく、1.5〜8モルの範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0030】
▲3▼反応時間
また、還元反応を実施するにあたり、反応時間は、還元剤の種類、還元剤の添加量、還元温度、pH値等により適宜変わるが、具体的に、0.1〜10時間の範囲で反応させることができる。
【0031】
▲4▼アルコール使用
また、還元反応を実施するにあたり、アルコール中で行うことが好ましく、アルコールの種類は特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の一種または二種以上が挙げられる。特に、エタノールは、反応温度を溶媒の還流温度で制御するのに適した沸点を有することから好ましい。なお、アルコールの使用量についても特に制限されるものではないが、通常の合成反応の溶媒量に準じて使用することができる。
【0032】
(2)ベンジジン転位反応
得られたヒドラゾベンゼン誘導体は酸化されやすいので、次工程のベンジジン転位反応を引き続き行い、テトラアルキルベンジジン誘導体を合成するのが好ましい。なお、好ましいテトラアルキルベンジジン誘導体としては、最終的にビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸が得られることから、4,4´−ジアミノ−テトラアルキルビフェニルやテトラアルキルビフェニル−4,4´−ビス(ジアゾニウムクロリド)等が挙げられる。
以下に、一般式(5)で表されるヒドラゾベンゼン誘導体を、ベンジジン転位反応して得られる一般式(6)で表されるテトラアルキルベンジジン誘導体を示す。
【0033】
【化13】
【0034】
[一般式(6)中のR1およびR2は、それぞれ一般式(2)と同一の内容である。]
【0035】
ベンジジン転位反応を行うにあたり、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸からなる群から選択される少なくとも一つの無機酸を用いるとともに、反応温度を−10〜100℃の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、このような無機酸を使用するとともに、反応温度の値を制御することにより、ベンジジン誘導体を高い収率で得ることができるためである。また、このようなベンジジン転位反応条件であれば、制御することも容易である。なお、無機酸の使用量についても特に制限されるものではないが、通常の合成反応において、酸性状態となる条件に準じて使用することができる。また、ベンジジン転位反応を実施するにあたり、必要に応じて塩化スズ等の触媒を添加しても良い。
【0036】
また、ベンジジン転位反応に使用できる溶媒は、反応物を溶解させるとともに、反応に関与しないものであれば特に制限はない。ただし、反応物の溶解性、取り扱いやすさから、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。なお、溶媒の使用量についても特に制限されるものではなく、通常の合成反応において用いられる溶媒濃度の範囲が好ましい。
【0037】
(3)脱アミノ化反応
得られたテトラアルキルベンジジン誘導体は、アミノ基を有しているので、このアミノ基をジアゾ化した後、ジアゾ分解してアンモニアの形で除去して、テトラアルキルビフェニル誘導体を合成する反応である。
以下に、一般式(6)で表されるテトラアルキルベンジジン誘導体を脱アミノ化反応して得られる一般式(7)で表されるテトラアルキルビフェニル誘導体を示す。
【0038】
【化14】
【0039】
[一般式(7)中のR1およびR2は、それぞれ一般式(2)と同一の内容である。]
【0040】
▲1▼ジアゾ化条件
アミノ基をジアゾ化塩とするにあたり、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)や有機酸(例えば、酢酸、蟻酸、プロピオン酸等)中において、亜硝酸塩等のジアゾ化剤を用いるとともに、反応温度を−30〜50℃の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、このようなジアゾ化剤を使用するとともに、反応温度の値を制御することにより、ジアゾニウム塩を効率的に得ることができるためである。また、このようなジアゾ化条件であれば、制御することも容易である。したがって、ジアゾ化剤として、亜硝酸ナトリウムを使用するとともに、反応温度を−30〜25℃の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、ジアゾ化剤の使用量についても特に制限されるものではないが、通常の有機合成で使用される反応量を使用すれば良い。
【0041】
▲2▼ジアゾ分解
また、得られたジアゾニウム塩からのジアゾ分解を行い、アゾ基を脱離するにあたり、次亜リン酸等のジアゾ分解剤を添加することが好ましい。このようなジアゾ分解剤を添加することにより、効率的にジアゾニウム塩からアゾ基を脱離することができる。また、ジアゾ分解剤の添加量についても特に制限されるものではないが、ジアゾ基濃度1モルに対して、1〜10モルの範囲内の値とするのが好ましい。
【0042】
(4)酸化反応
得られたテトラアルキルビフェニル誘導体は、アルキル基を有しているので、このアルキル基を酸化して、目的化合物であるテトラビフェニル誘導体を合成する反応である。すなわち、一般式(7)で表されるテトラアルキルビフェニル誘導体を酸化して得られる一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸をを合成するものである。
【0043】
▲1▼酸化条件(酸化剤の種類、反応温度)
ここで、テトラアルキルビフェニル誘導体を酸化するにあたり、過マンガン酸塩、硝酸、酸素、空気からなる群から選択される少なくとも一つの酸化剤を用いるとともに、反応温度を50〜250℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような酸化剤を使用するとともに、反応温度の値を制御することにより、ビフェニルテトラカルボン酸を効率的に得ることができるためである。また、このような酸化条件であれば、制御することも容易である。
したがって、酸化剤として、過マンガン酸カリウムや硝酸を使用するとともに、反応温度を50〜200℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0044】
▲2▼酸化剤の添加量
また、酸化剤の添加量についても特に制限されるものではないが、テトラアルキルビフェニル誘導体のアルキル基1当量に対し、1〜100当量の範囲内の値とすることができる。
【0045】
▲3▼溶媒使用
また、酸化反応を行うにあたり、かかる反応を容易に制御できることから有機溶媒や水中で行うことが好ましい。ここで、有機溶媒の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ピリジン、ピリジン/水等の一種または二種以上が挙げられる。なお、使用量は、通常の有機合成における溶媒の使用範囲である。
【0046】
▲4▼精製
得られたビフェニルテトラカルボン酸を精製することが好ましい。このような精製方法については特に制限されるものではないが、例えば、再結晶法を採ることができる。
【0047】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、ビフェニルテトラカルボン酸からなるポリイミド樹脂の製造方法であり、第1の実施形態で得られたビフェニルテトラカルボン酸のポリイミド樹脂原料としての使用方法の一つである。
【0048】
(1)ビフェニルテトラカルボン酸
第1の実施形態で得られた一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸は、二無水物としてポリイミド樹脂の原料となり、ビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸二無水物や、ビフェニル−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物が該当する。
このうち、ビフェニル−2,2´,3,3´−テトラカルボン酸二無水物を用いた場合には、ポリイミド樹脂を幅広い有機溶剤に対して可溶性とすることができ、また、誘電率の値を低下させることができる。
一方、ビフェニル−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物を用いた場合には、ポリイミド樹脂の耐熱性や透明性を向上させることができる。
【0049】
さらに、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物と、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物とを混合使用することにより、可溶性に優れ、しかも着色もせず、優れた光透過率や耐熱性を有するポリイミド樹脂が得られることができる。
なお、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物と、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物とを混合使用する場合に、その混合比率は特に制限されるものではないが、例えば、5:95〜95:5モル%の範囲内の値とするのが好ましく、10:90〜90:10モル%の範囲内の値とするのがより好ましく、20:80〜80:20モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
(2)芳香族ジアミン化合物
ビフェニルテトラカルボン酸と反応させる芳香族ジアミン化合物は、一般式(3)で表される化合物である。具体的には、m−フェニレンジアミン、4,4´−オキシジアニリン、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、9,9´−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、
4,4´−ジアミノー3,3´−ジフェニルメタン、
4,4´−ジアミノー3,3´−ジフェニルエタン、
4,4´−ジアミノー3,3´−ジフェニルスルフィド、
4,4´−ジアミノー3,3´−ジフェニルスルホン、
3,3´−ジメチルー4,4´−ジアミノ−3,3´−ビフェニル、
4,4´−ジアミノー3,3´−ジフェニルエーテル、
3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、
3,3´−ジアミノベンゾフェノン、
4,4´−ジアミノー3,3´−ベンゾフェノン、
2,2´−ビス(4−アミノ−3−カルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
2,7−ジアミノー2,4−ジカルボキシフルオレン、
2,4−ジアミノー2,7−ジカルボキシフルオレン、
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の一種単独または二種以上の組み合わせが好ましい。
【0051】
(3)芳香族テトラカルボン酸
また、ポリイミド樹脂を縮重合するにあたり、一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸以外の一般式(8)で表される芳香族テトラカルボン酸を、全テトラカルボン酸に対して、0〜95モル%の範囲内の値(ただし、0モル%を除く。)となるようにさらに含んで反応させることが好ましい。
このように一般式(8)で表される芳香族テトラカルボン酸(無水芳香族テトラカルボン酸)をさらに含んで反応させることにより、ポリイミド樹脂の可溶性や耐熱性をより極め細かく調節することができる。
【0052】
【化14】
【0053】
[一般式(8)中のAr2は、4価の芳香族基である。]
【0054】
(4)ポリイミド樹脂
また、ポリイミド樹脂において、互いにねじれ構造となる複数の芳香族環からなり、これらの隣接する芳香族環同士が、共役系を形成していないように、上述した一般式(4)で表される構造を含んでいるのが好ましい。
また、優れた耐熱性等の特性を得るために、ポリイミド樹脂の対数粘度を0.1〜4dl/g(測定溶媒:N−メチルピロリドン、測定温度:30℃、測定濃度:0.5g/dl)の範囲内の値とするのが好ましい。
【0055】
(5)反応条件
一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸と、一般式(3)で表される芳香族アミン化合物とを反応させる条件は、特に制限されるものではないが、具体的に、有機溶媒中において、温度120〜300℃、時間0.5〜24時間の範囲内で反応させるのが好ましい。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、言うまでもないが、実施例は本発明の例示であり、本発明はこれらの実施例の記載に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
(1)ニトロキシレンの還元反応によるヒドラゾベンゼン誘導体の調製(還元反応)
還流冷却器および撹拌モーターを取り付けた、容量が2リットルの三口フラスコを油浴内に設置した後、還元剤としての亜鉛末140gと、溶媒としてのエタノール750mlとをそれぞれ収容した。次いで、撹拌モーターにより、三口フラスコ内を撹拌するとともに、三口フラスコ内の温度をエタノールの沸点温度(還流温度)まで上昇させた。
次いで、ジアルキルベンゼンモノニトロ化合物として、3−ニトロ−O−キシレン80gを三口フラスコ内にさらに加えた後、100mlの滴下ロートを取り付け、この滴下ロートから、pH調整(7以下のアルカリ性範囲)のために、予め調製した苛性ソーダ温液(苛性ソーダ60g/水70ml)を滴下した。なお、苛性ソーダ温液の滴下には、三口フラスコ内の反応系における泡立ち具合を見ながら、約20分間要した。また、3−ニトロ−O−キシレンの還元反応を完結させるために、還流温度において、1時間、還元反応を続けた。
還元反応後、油浴から三口フラスコをはずし、上澄み液を窒素置換した2リットルの三角フラスコ内に移した。なお、三口フラスコ内の沈殿物は温アルコールで洗浄し、余熱しておいたブフナーロートで濾過した後、得られた濾液と上澄み液とを合わせた。
【0058】
次いで、これらの濾液および上澄み液を放冷し、さらに冷蔵庫で冷却させて、晶析させた。そして、濾過回収したところ、無色の粗結晶が83g(収率65%)得られた。この得られた粗結晶の赤外吸収スペクトルを測定したところ、図1に示すように、波数3377,1587,1471,775cm-1の位置に特性吸収ピークがそれぞれ観察された。したがって、得られた無色の粗結晶は、1,2−ビス(2,3−ジメチルフェニル)ヒドラジンであることを確認した。
【0059】
(2)2,2´,3,3´−テトラメチルベンジジン塩酸塩の調製(ベンジジン転位反応)
得られた1,2−ビス(2,3−ジメチルフェニル)ヒドラジンを精製せずに、ベンジジン転位反応に供した。すなわち、200ml滴下ロート、温度計と撹拌機とを備えた1リットルビーカーを氷浴に設置し、その中に(1)で調製した1,2−ビス(2,3−ジメチルフェニル)ヒドラジン35gと、0℃に冷却したメタノール400mlとをそれぞれ収容し、撹拌得して懸濁液とした。
次いで、この懸濁液に対して、滴下ロートから、無水塩化第1スズ4gと濃塩酸160mlとからなる混合溶液を反応温度が15℃を越えない条件のもと添加して、反応させた。滴下終了後、室温下で24時間放置し、反応生成物を晶析させた。
【0060】
得られた反応生成物を濾過して、無色の粗結晶35g(収率78%)を回収した。この粗結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を測定したところ、図2に示すように、波数3421,2825、2605、1621、1578,1525、1518、1471,835cm-1の位置に、2,2´,3,3´−テトラメチルベンジジン塩酸塩の特性吸収ピークがそれぞれ観察された。
また、得られた粗結晶につき、1H−NMRスペクトルを測定した。具体的に、CDCl3またはN,N−ジメチルスルホキシド−d6を溶媒として周波数90MHzの条件において測定した。その結果、図3に示すように、10.08(d),7.43(d),7.00(d), 2.32(s),1.94(s)ppmの位置にそれぞれ特性ピ−クが観察された。
したがって、これらの赤外吸収スペクトルチャートおよび1H−NMRスペクトルチャートから、2,2´,3,3´−テトラメチルベンジジン塩酸塩が得られたことを確認した。
【0061】
(3)テトラメチルビフェニルの調製(脱アミノ化反応)
100mLの滴下ロートと、温度計と、撹拌装置とを備えた500mLのフラスコを氷/塩浴内に設置した後、2,2´,3,3´−テトラメチルベンジジン塩酸塩の粗結晶35gを加え、さらに塩酸水溶液(濃塩酸60mLと水70mLから調製)を加えて、フラスコ内の温度を0℃以下に保った。次いで、水75mLに対して、ジアゾ化剤の亜硝酸ナトリウム17.0gを溶解させて作成した水溶液を、反応温度を0〜5℃の範囲内の条件において滴下させた。滴下終了後、さらに氷/塩浴で30分間、ジアゾ反応を行った。このジアゾ反応後、反応液を予め冷却したブフナーロートで濾過し、40〜50gの氷を入れた受器のブンゼンフラスコ内にジアゾニウム塩の濾液を回収した。
次いで、0℃に冷却した3リットルの三角フラスコ内にジアゾニウム塩の濾液を収容した後、磁気撹拌機により撹拌しながら、ジアゾ分解剤である次亜リン酸水溶液350mL(50重量%濃度)を一度に加え、反応溶液とした。この反応溶液を24時間冷蔵庫でさらに冷却し、晶析させた。得られた反応生成物を濾過して、回収した後、1Nの塩酸で洗浄し、さらにエタノールで再結晶を行い、17.5gの黄色結晶が得られた(収率:74%)。
【0062】
得たれた黄色結晶の融点を、ミクロ融点測定装置(柳本製作所(株)製)を用いて測定したところ、114〜116℃の範囲内の値(文献値115〜117℃)であった。
また、この黄色結晶の赤外吸収スペクトルを測定したところ、図4に示すように、波数1583,1456,787cm-1の位置にそれぞれ吸収ピークが観察された。また、図5に示すように、1H−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトルと称する場合がある。)を測定したところ、7.21−6.89(m,6H), 2.24(s,6H), 1.95(s,6H)ppmの位置に、それぞれ吸収ピークが観察された。したがって、これらの図4および図5に示す特性スペクトルから、目的化合物である2,2´,3,3´−テトラメチルビフェニルが得られたことを確認した。
【0063】
(4)ビフェニルテトラカルボン酸の調製(酸化反応)
環流冷却器および撹拌装置を取り付けた容量2リットルの三口フラスコを油浴に設置した。この三口フラスコ内に、2,2´,3,3´−テトラメチルビフェニル16.4gと、ピリジン680mLと、水280mLとをそれぞれ加え、三口フラスコ内の温度を還流温度まで上昇させた。次いで、三口フラスコ内にマンガン酸カリウム64gを、1時間以内において、数回に分けて添加した後、さらに8時間還流を継続し、反応懸濁液を得た。その後、得られた反応懸濁液を予め加熱したブフナーロートで濾過し、副生する二酸化マンガンを濾別した。この二酸化マンガンを含む回収物を、熱ピリジン100mLを用いて2回洗浄し、濾液と洗浄液とを合わせた淡黄色の溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。
得られた濃縮液と、苛性ソーダ55gおよび水1リットルからなる苛性ソーダ水溶液とを、室温で30分間接触させ、未反応原料の2,2´,3,3´−テトラメチルビフェニルを濾集、除去した。この濾過液を再び、油浴に設置した還流冷却器および撹拌装置を取り付けた2リットルの三口フラスコ内に加えた。次いで、三口フラスコ内の温度を還流温度まで上げ、さらに過マンガン酸カリウム64gを添加した後、5時間酸化反応させた。この酸化反応後、未反応の過マンガン酸カリウムをチオ硫酸ナトリウムで失活させるとともに、予め加熱しておいたブフナーロートで濾過し、副生する二酸化マンガンを濾別した。なお、濾集層はさらに熱水200mLで2回洗浄した。回収された濾液と洗浄液とを合わせ、室温まで放冷後、濃塩酸を加えてpH値を1.0に調節した状態で、晶析させた。そのまま24時間放置して、晶析物を濾別した。この晶析物の収量は20g(収率78%)であった。
【0064】
また、得られた晶析物につき赤外吸収スペクトルを測定したところ、図6に示すように、波数3430, 3082, 2638, 2546, 1722, 1697, 1284cm-1の位置にそれぞれ吸収ピークが観察された。また、図7に示すように1H−NMRスペクトルを測定したところ、8.65−8.58(〜1H〜(variable)), 7.88(2H), 7.67−740(m,4H)ppmの位置に、吸収ピークがそれぞれ観察された。したがって、これらの図6および図7に示す特性スペクトルから、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸が得られたことを確認した。
【0065】
[実施例2]
実施例1における3−ニトロ−O−キシレンの代わりに、4−ニトローoーキシレンを用いたほかは、実施例1と同様に、還元反応と、ベンジジン転位反応と、脱アミノ化反応と、酸化反応とを順次に実施し、目的化合物である3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸を、高収率で得た。
【0066】
[実施例3]
(1)ポリイミド樹脂の重合
環流冷却器および撹拌装置を取り付けた容量100mlの三口フラスコを油浴内に設置した。この三口フラスコ内に、実施例1で得られた2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物1.471g(5.0mmol)と、芳香族アミン化合物として4,4´−オキシジアニリン1.001g(5.0mmol)と、m−クレゾール25mlと、イソキノリン2mlとをそれぞれ収容し、均一に撹拌した。次いで、三口フラスコ内の温度を200℃まで昇温させ、5時間、縮合反応を行った。反応終了後、メタノールを用いて重合物を沈殿回収した。
得られた重合物につき、図8に示す赤外吸収スペクトルおよび図9に示す1H−NMRスペクトルをそれぞれ測定し、赤外吸収スペクトルにおいて、波数1770〜1780cm-1付近にイミド基のカルボニル対称伸縮振動に起因した吸収ピークおよび波数1720〜1730cm-1付近にイミド基のカルボニル非対称伸縮振動に起因した吸収ピークが観察されたことから、得られた重合物は、一般式(4)で表される構造を含むポリイミド樹脂であることを確認した。また、得られた重合物は、透明性が高く、従来のポリイミド樹脂と較べて著しく着色性が低いことを確認した。
【0067】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明のビフェニルテトラカルボン酸化合物の製造方法によれば、工業的に入手可能であり、しかも安価な出発原料から、少ない工程数で、しかも高い収率でビフェニルテトラカルボン酸化合物を得ることができるようになった。
また、本発明のポリイミド樹脂の製造方法によれば、ビフェニル−2、2‘、3、3'−テトラカルボン酸等を用いているため、幅広い有機溶剤の種類に対して可溶性があり、比誘電率の値が低く、耐熱性(Tg,Td5)に優れ、しかも透明性に優れたポリイミド樹脂を効率的に得られるようになった。したがって、このようなポリイミド樹脂の特性を利用して、半導体装置の前工程、後工程における層間絶縁膜やパッシベーション膜などの用途材料に好適に使用することができる。
さらに、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物と、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物とを混合使用することにより、着色せず、より優れた光透過率や耐熱性を有するポリイミド樹脂が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた1,2−ビス(2,3−ジメチルフェニル)ヒドラジンの赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1で得られた2,2´,3,3´−テトラメチルベンジジン塩酸塩の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られた2,2´,3,3´−テトラメチルベンジジン塩酸塩の核磁気共鳴スペクトルを示す図である。
【図4】実施例1で得られた2,2´,3,3´−テトラメチルビフェニルの赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例1で得られた2,2´,3,3´−テトラメチルビフェニルの核磁気共鳴スペクトルを示す図である。
【図6】実施例1で得られた2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図7】実施例1で得られた2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸の核磁気共鳴スペクトルを示す図である。
Claims (4)
- 前記一般式(2)で表されるジアルキルベンゼンモノニトロ化合物が、3−ニトロキシレンであり、前記一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸がビフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のビフェニルテトラカルボン酸の製造方法。
- 下記一般式(2)で表されるジアルキルベンゼンモノニトロ化合物を出発原料として、還元反応と、ベンジジン転位反応と、脱アミノ化反応と、酸化反応とを順次に実施して下記一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸を製造する工程と、得られた下記一般式(1)で表されるビフェニルテトラカルボン酸を二酸無水物にして、この二酸無水物と下記一般式(3)で表される芳香族ジアミン化合物とを反応させる工程とを有することを特徴とするポリイミド樹脂の製造方法。
[一般式(2)中のR1およびR2は、それぞれ互いに独立の関係にあるアルキル基であり、かつ、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に置換している。]
[一般式(1)中のカルボキシル基は、それぞれベンゼン環の隣り合う炭素原子に置換している。]
[一般式(3)中、Ar1は2価の芳香族基である。]
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