JP4200418B2 - シラノール類とその中間体及びその製造方法並びにアルコール類の製造方法 - Google Patents

シラノール類とその中間体及びその製造方法並びにアルコール類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、新規なシラン、シラノール類及びその製造方法に関し、当該シラノール類から光学活性アルコール類を製造する製造方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、不斉合成化学は長足の進歩を遂げており、膨大な研究がなされてきたが、その研究対象は不斉炭素を有する化合物に関するものが大半であった。一方で、ケイ素もまた炭素と同様に、通常、四配位四面体構造をとり、立体化学的に安定であることから、置換様式によっては不斉中心になることが古くから知られている。
【0003】
実際、ケイ素不斉中心を有する光学活性有機ケイ素化合物(光学活性ケイ素化合物)に関する研究も広く行われてきたが、その研究例は炭素のそれに比べて圧倒的に少ないのが現状である。これはその光学活性体調製の困難さが主たる原因であると考えられ、その具体的な利用はもとより、物理的な性質すら詳しくわかっていなかった。さらに、汎用性のある光学活性シラノール類合成法はなく、有効な合成手法が確立されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光学活性有機ケイ素化合物の利用は様々な分野において期待されている。まず、医薬、農薬の分野においてはそのもの自体が新規な生物活性物質になることが期待され、これまでに無いアプローチで開発研究を行うことができると考えられる。また、これまでに開発されている生物活性物質の不斉炭素を不斉ケイ素に置き換えることにより、さらに効果のある化合物に変換することも可能であると考えられる。加えて、機能材料などの開発においては、これまで広く利用されているシリコンなどの含ケイ素高分子素材の原料として光学活性有機ケイ素を用いることにより、規則的な三次元構造を有する高分子素材を合成することも可能になる。例えば、光学活性シラノール由来の担体用いることで光学活性体の分離カラムを形成することが可能である。
【0005】
このように、新規で汎用性の高い光学活性なシラノールは、医薬、農薬、各種機能性物質の開発等、種々の貢献をし得る。
【0006】
本発明は、上述のような事情によりなされたものであり、官能基化された新規で汎用性の高いシラノール類を合成すること、およびそれらシラノール類の誘導体であるアルコール類を合成すること、さらにシラノール類を合成するためのシラン類を合成し、当該シラン類からシラノール類を立体選択的に合成するための合成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高度に官能基化された光学活性有機ケイ素化合物の立体選択的な合成に成功するとともにそれから光学活性ホモアリルアルコールを合成することにも成功した。
【0008】
本発明は物の発明にあっては、シラノールの発明においては、一般式(5)
【化5】
Figure 0004200418
(式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水素又はメチル基から選ばれる)で示されるシラノールであって、又は一般式(6)
【化6】
Figure 0004200418
(式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシクロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、2−メチレン−シクロへキシル又は2−メチレン−シクロペンチルの官能基から選ばれる)で示されるシラノールである。
【0009】
さらにジアルコキシシランの発明にあっては、一般式(7)
【化7】
Figure 0004200418
(式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水素又はメチル基である)で示されるジアルコキシシラン、又は一般式(8)
【化8】
Figure 0004200418
(式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシクロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、シクロペント−1−エニルメチル、又はシクロヘキシ−1‐エニルメチルの官能基から選ばれる)で示されるジアルコキシシランである。
【0010】
又、上記のシラン及びシラノールについては、R≠Rである場合には、ケイ素が不斉中心となるシラン及びシラノールであり、本発明では立体選択的にこれらの化合物を合成することが可能である。
【0011】
一方、本発明の方法の発明にあっては、シラノールの製造方法については、上述のジアルコキシシランからシラノールを製造する方法であって、上述のジアルコキシシランに対して、THF−HMPA溶媒中、−78℃下、強塩基を作用させることを特徴とするシラノールの製造方法である。この強塩基にはアルキルリチウムを用いることができる。又、アルコールの製造方法については、上述のシラノールからアルコールを製造する方法であって、50℃下、THF中で、前記シラノールに対してテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドを作用させることを特徴とするアルコールの製造方法である。
【0012】
尚、本発明においては、R〜Rは上記の官能基のグループから選択されるものとし、反応の前におけるRnは、反応後におけるRnと同じ官能基を表わしている。例えば、反応前にRとしてRのグループ(t−ブチル基又はi−プロピル基)からt−ブチル基が選択された場合には、反応後におけるRはt−ブチル基を表わすものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、(一)ジアルコキシシランの合成、(二)ジアルコキシシランからシラノール類を合成する新規反応の開発(三)シラノール類からアルコール類の合成といった三つの工程から成り立っている。
【0014】
(一)「ジアルコキシシランの合成」の段階では、ジクロロシラン若しくはモノアルコキシシラノールからジアルコキシシランへの誘導を行う。(二)「ジアルコキシシランからシラノール類を合成する新規反応の開発」の段階では合成するシラノール類とアルコール類の立体化学を制御する。具体的には、ケイ素原子上にアリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を原料として用い、この分子上にカルボアニオンを発生させることにより図1に示されるようなアリルオキシ基の分子内SN2’反応を進行させ、対応するシラノールを合成する。この反応は高収率かつ高立体選択的に進行し、ケイ素原子上の立体化学と、反応によって生じた炭素原子上の立体化学を制御することができる。このとき、原料としてケイ素原子上に不斉を有する光学活性シランを用いるとケイ素原子上の光学純度を損なうことなく反応が進行し、光学活性シラノールが得られる。(三)「シラノール類からアルコール類の合成」段階では、ジアルコキシシランの分子内SN2’反応によって得られたシラノールから多官能基化されたアルコール類の合成を行う。
【0015】
(一)〜(三)のそれぞれの段階についてさらに説明する。(一)「ジアルコキシシランの合成」の段階に関しては、ジクロロシランから合成する方法と、モノアルコキシシラノールから合成する方法の二通りの方法がある。ジクロロシランから合成する方法(第一の方法)の場合は、RSiClClを40℃下、DMF(ジメチルホルムアミド)中で、イミダゾールとRCHOHを作用させ、
【化9】
Figure 0004200418
(9)で示される化合物に誘導した後、0℃下、DMF中で(9)で示されるアルコキシシラノールに水素化カリウムと、臭化アリル、臭化クロチル又はBrRから選択される臭化物とを作用させることで、
【化10】
Figure 0004200418
(10)で示されるジアルコキシシランを得ることができる。尚、(10)の(a)においてRが水素の場合が臭化アリルを作用させた場合であって、Rがメチル基の場合が臭化クロチルを作用させた場合である。(b)はBrRを作用させた場合である。
【0016】
第一の方法(ジクロロシランから合成する場合)の例としては、40℃下、DMF中でジ−t−ブチルジクロロシランに対し、イミダゾールとベンジルアルコールを作用させ、ベンジルオキシジ−t−ブチルシラノール((9)においてR=t−ブチル基、R=t−ブチル基、R=フェニル基とした場合)へと誘導した後、0℃下、DMF中で当該ベンジルオキシジ−t−ブチルシラノールに水素化カリウムと、臭化アリルを作用させることでアリルオキシベンジルオキシジ−t−ブチルシラン(ジアルコキシシラン1)を得ることができる。上記臭化アリルのかわりに臭化クロチルを作用させることによりベンジルオキシクロチルオキシジ−t−ブチルシラン(ジアルコキシシラン2)を得ることができる。
【0017】
モノアルコキシシラノールから合成する方法(第二の方法)は、
【化11】
Figure 0004200418
(11)に示されるシラノールに対し、室温下、THF中で水素化カリウムと、臭化アリル、臭化クロチル又はBrRから選択される臭化物を作用させることで、
【化12】
Figure 0004200418
(12)に示されるジアルコキシシランを得ることができる。尚、(12)の(a)においてRが水素の場合が臭化アリルを作用させた場合であって、Rがメチル基の場合が臭化クロチルを作用させた場合である。(b)はBrRを作用させた場合である。又、(11)においてRとRとは立体配置が互いに逆であっても同様の反応が生じ、反応後の生成物も(12)においてRとRとの立体配置が逆のものが生じる。
【0018】
第二の方法(モノアルコキシシラノールから合成する方法)の例としては、入手可能な(S)−ベンジルオキシ−t−ブチルフェニルシラノールに対し、室温下、THF中で水素化カリウムと、臭化クロチルを作用させることで、(S)−ベンジルオキシクロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン(ジアルコキシシラン3)を得ることができる。
【0019】
次に、(二)「ジアルコキシシランからシラノール類を合成する新規反応の開発」について説明する。前記第一又は第二の方法によって得た一般式(10)又は(12)に示されるジアルコキシシランを強塩基処理することでシラノール類を立体選択的に合成することができる。すなわち、(12)に示されるジアルコキシシラン3に対してTHF−HMPA(テトラヒドロフラン−ヘキサメチルリン酸三アミド)溶媒中、−78℃下、過剰量のt−ブチルリチウムを作用させることでベンジルアニオンを発生させ、アリルオキシ基のベンジルアニオンとの分子内SN2'反応を進行させることにより
【化13】
Figure 0004200418
(13)に示されるシラノールを得ることができる。(13)(a)は、(12)(a)から得ることができ、(13)(b)は(12)(b)から得ることができる。尚、(12)(b)におけるRがシクロへキシ−2−エニルの場合は(13)(b)におけるRがシクロへキシ−2−エニルであり、Rがシクロペント−2−エニルの場合にはRがシクロペント−2−エニルであり、Rがシクロペント−1−エニルメチルの場合にはRが2−メチレン−シクロペンチルであり、Rがシクロへキシ−1−エニルメチルの場合にはRが2−メチレンシクロへキシルである。尚、ここでは(12)のジアルコキシシランから得ることができるシラノールについて記載したが、RとRとの立体配置を逆にした場合にも同様の反応が起こるので(10)のジアルコキシシランから得ることができるシラノールについては省略した。
【0020】
ジアルコキシシランからシラノールを合成する例としては、上記のジアルコキシシラン1(アリルオキシベンジルオキシジ−t−ブチルシラン)と、上記のジアルコキシシラン2(ベンジルオキシクロチルオキシジ−t−ブチルシラン)と、上記のジアルコキシルシラン3((S)−ベンジルオキシクロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン)について、THF−HMBA溶液中、−78℃下、アリルオキシ基のベンジルアニオンとの分子内SN2’反応を進行させることにより、ジアルコキシシラン1〜3に対してシラノール6〜8(シラノール6は、1−フェニル−3−ブテン−1−オキシジ−t−ブチルシラノールであり、シラノール7は、1−フェニル−2−メチル−3−ブテン−1−オキシジ−t−ブチルシラノールであり、シラノール8は(13)(a)において、R=t−ブチル基、R=フェニル基、R=フェニル基、R=メチル基である)を得た。尚、この際に得られるホモアリルオキシシラノール7、8の相対的立体化学はクロチル基の幾何異性体に関わらずアンチ体が主生成物となり、光学活性なジアルコキシシラン3を用いて本反応を行った場合、生成物ホモアリルオキシシラノール8はジアルコキシシラン3と同等の光学純度で得られる。
【0021】
さらに、(三)「シラノール類からアルコール類の合成」について説明する。(13)で示されるシラノールの脱シリル化によってアルコールを得ることができる。すなわち、50℃下、THF中でTBAF(テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド)を作用させることによって、
【化14】
Figure 0004200418
(14)に示されるアルコールを得ることができる。尚、(14)(a)は(13)(a)を脱シリル化することで得られるアルコールであって、(14)(b)は(13)(b)を脱シリル化することで得られるアルコールである。又、(13)のRとRの立体的配置は逆であっても同じ反応が起こることから、(10)のジアルコキシシランを本発明の方法によってシラノールとした後、(14)に示されるアルコールを同様にして得ることができる。
【0022】
ホモアリルアルコール合成の例としては、上記のホモアリルオキシシラノール7、8を50℃下、THF中でテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドを作用させて脱シリル化することによってホモアリルアルコール9((14)(a)についてR=メチル基である)を得ることができる。
【0023】
【実施例】
さらに具体的な実施例について試験結果を含めて説明する。
【0024】
(試験1)ベンジルオキシジ−t−ブチルシラノールの合成
上記(一)「ジアルコキシシランの合成」の段階での上記第一の方法におけるジクロロシランRSiClClとしてジ−t−ブチルジクロロシランを用いた。アルゴン雰囲気下、ベンジルアルコール260mg(2.40mmol)とイミダゾール408mg(6.00mmol)を10mlのDMFに溶解させ、0℃に冷却した。その溶液にジ−t−ブチルジクロロシラン426mg(2.00mmol)を加え湯浴で40℃に加熱し、12時間攪拌した後、0℃に冷却し10mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロシランを加水分解した。得られた反応混合物をエーテルで抽出後、油層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:へキサン−エーテル 30:1)で精製し、ベンジルオキシジ−t−ブチルシラノールを374mg(収率70%)を得た。
【0025】
(試験2)ジアルコキシシランの合成
アルゴン雰囲気下、DMF5mlに水素化カリウム97.6mg(2.43mmol)を縣濁させ、0℃に冷却した。そこに上述のベンジルオキシジ−t−ブチルシラノール153mgと臭化アリル439mg(3.64mmmol)を加え、1時間攪拌した。反応を2mlの飽和塩化アンモニウム水溶液で停止した後、エーテルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン)で精製し、アリルオキシベンジルオキシジ−t−ブチルシラン171mg(97%)を得た。アリルオキシベンジルオキシジ−t−ブチルシラン(ジアルコキシシラン1)の物性データは、
HNMR(300MHz,CDCl)δ7.41−7.20(m,5H),5.94(ddt,J=17.1,10.45,4.2Hz,1H),5.37(ddt.J=17.1,2.1,2.1Hz,1H),5.06(ddt,J=10.5,2.1,2.1Hz,1H),4.97(s,2H),4.38(ddd,J=4.2,2.1,2.1,2H),1.09(s,18H). 13CNMR(75MHz,CDC1)δ141.39,137.31,128.28,126.93,125.84,113.68,65.50,64.60,28.07,28.07,21.45. IR(neat,cm−1)3030,2935,2860,1647,1607,1473,1097,827.であった。
【0026】
同様にして上述の臭化アリルを臭化クロチルとすることによって、ベンジルオキシクロチルオキシジ−t−ブチルシランを収率96%(E/Z 72/28)で得た。(E)−ベンジルオキシクロチルオキシジ−t−ブチルシラン((E)−ジアルコキシシラン2)の物性データは、
HNMR(300MHz,CDCl)δ7.41−7.19(m,5H),5.71−5.50(m,2H),4.97(s,2H),4.31(ddq,J=3.0,1.5,1.5,1.5Hz,2H),1.69(ddt,J=6.0,1.5,1.5,2H),1.08(s,18H). 13CNMR(75MHz,CDCl)δ141.17,130.32,128.27,126.87,125.83,125.55,65.50,64.48,28.05,21.40,17.73.
であった。
【0027】
又、(Z)−ベンジルオキシクロチルオキシジ−t−ブチルシラン((Z)−ジアルコキシシラン2)については、
HNMR(300MHz,CDCl)δ7.40−7.23(m,5H),5.64−5.45(m,2H),4.98(s,2H),4.44(ddq,J=5.4,1.2,1.2Hz,2H),1.57(ddt,J=6.6,1.2,1.2,2H),1.08(s,18H). 13CNMR(75MHz,CDCl)δ141.47,130.53,128.27,126.88,125.83,124.79,65.50,59.99,28.02,21.32,13.25.
であった。
【0028】
さらに、ベンジルオキシクロチルオキシジ−t−ブチルシラン(ジアルコキシシラン2(E,Z混合物))については、
IR(neat,cm−1)3028,2968,2934,2859,1675,1608,1473,1454,1097,827.
であった。
【0029】
(試験3)キラルジアルコキシシランの合成
アルゴン雰囲気下、THF5mlに水素化カリウム51.3mg(1.28mmol)を縣濁させ0℃に冷却した。その溶液に(S)−ベンジルオキシ−t−ブチルフェニルシラノール89.0mg(0.311mmol、94%ee)と臭化クロチル146mg(1.92mmol)を加え、室温で30時間攪拌した。反応を2mlの飽和塩化アンモニウム水溶液で停止した後、エーテルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液;へキサン)で濾過をした後GPCを用いて精製し(S)−ベンジルオキシクロチルオキシ−t−ブチルフェニルシランを35.4mg(収率33%,94%ee)得た。(S)−ベンジルオキシ−(E)−クロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン((S,E)−ジアルコキシシラン3)の物性データは、
HNMR(300MHz、CDCl)δ7.68−7.64(m,2H),7.43−7.25(m,8H),5.76−5.47(m,2H),4.94(s,2H),4.27(ddq,J=5.4,3.9,1.5Hz,2H),1.68(ddq,J=6.0,1.5,1.5,2H),1.03(s,9H).
であった。
【0030】
又、(S)−ベンジルオキシ−(Z)−クロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン((S,Z)−ジアルコキシシラン3)の物性データは、
HNMR(300MHz、CDCl)δ7.68−7.64(m,2H),7.43−7.25(m,8H),5.76−5.47(m,2H),4.95(s,2H),4.39(ddq,J=6.0,1.2,1.2Hz,2H),1.53(ddq,J=6.3,1.2,1.2,2H),1.03(s,9H).
であり、(S)−ベンジルオキシクロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン(ジアルコキシシラン3(E,Z混合物))の物性データは、
13CNMR(75MHz,CDCl)δ141.03,135.40,132.02,129.98,129.87,128.32,127.77,127.01,126.28,125.95,64.98,64.14,59.53,26.31,18.94,18.91,(E)17.72.(Z)13.17.IR(neat,cm−1)3069,3027,2932,2858,1674,1591,1473,1094,830.
であった。
【0031】
(試験4)シランの分子内SN2’反応:ホモアリルアキシシラノールの合成
上述の(二)「ジアルコキシシランからシラノール類を合成する新規反応の開発」の段階における、ジアルコキシシラン1〜3について試験した。
【0032】
アルゴン雰囲気下、アリルオキシベンジルオキシシランのTHF(テトラヒドロフラン)溶液を−78℃に冷却し、共溶媒としてHMPAを3.0当量加え、2.0当量のt−ブチルリチウムをゆっくりと作用させた。−78℃を維持したまま30分攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。反応溶液をエーテルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製するとホモアリルオキシシラノールが得られる。この操作に従い、ジアルコキシシラン1からはシラノール6を収率50%、ジアルコキシシラン2(E/Z 78/28)からはシラノール7を収率86%(アンチ/シン >95/<5)、ジアルコキシシラン3(E/Z 78/22,94%ee)からはシラノール8を収率88%(アンチ/シン 85/15,アンチ体 94%ee)でそれぞれ合成した。
【0033】
1−フェニル−3−ブテン−1−オキシジ−t−ブチルシラノール(シラノ−ル6)の物性データは、
HNMR(300MHz,CDCl)δ7.35−7.22(m,5H),5.78(m,1H),5.06−4.99(m,3H),2.53(ddddd,J=14.1,7.8,6.6,0.9,0.9Hz,1H),2.47(ddddd,J=14.1,6.9,6.0,1.2,1.2,1H),1.73(brs,1H),1.08(s,9H),0.89(s,9H). 13CNMR(75MHz,CDCl)δ144.64,135.21,128.20,127.22,126.17,117.45,75.14,45.60,27.73,27.52,20.58,20.51. IR(neat,cm−1)3621,3030,2933,2859,1641,1473,1088,827.
であり、1−フェニル−2−メチル−3−ブテン−1−オキシジ−t−ブチルシラノール(シラノール7)の物性データは、
HNMR(300MHz,CDCl)δ7.40−7.20(m,5H),5.83(ddd,J=17.1,10.5,7.5,1H),5.02(ddd,J=10.5,1.8,0.9,1H),4.98(ddd,J=17.1,1.8,1.8,1H),4.83(d,J=6.3Hz,1H),2.52(ddddd,J=7.5,6.9,6.3,1.8,0.9,1H),1.68(brs,1H),1.07(s,9H),0.89(s,9H),0.89(d,J=6.9Hz,3H).
13CNMR(75MHz,CDDl)δ143.18,141.50,128.04,127.46,127.31,115.08,79.05,46.48,27.66,27.37,20.53,20.35,15.32. IR(neat,cm−1)3585,3066,2966,2934,2859,1641,1473,1090,1067,827.
であった。
【0034】
(試験5)ホモアリルアルコールの合成
上記(三)シラノール類からのアルコール類の合成について、上述のシラノール7、8について試験した。
【0035】
ホモアリルアルコールはホモアリルオキシシラノールの脱シリル化によって得られる。すなわち、室温下、ホモアリルオキシシラノール7、8のTHF溶液にシラノールに対して5.0当量のTBAF(テトラ−n−ブチルアンモニウム)(1.0M inTHF)を作用させ、油浴で50℃に加熱した。温度を維持したまま、3時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷やし、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。エーテルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製するとホモアリルアルコールが得られた。この操作に従い、シラノール7(アンチ/シン >95/<5)からホモアリルアルコール9を収率61%で得た。又、シラノール8(アンチ体94%ee)からホモアリルアルコール9を収率96%(アンチ体94%ee)で得た。尚、ホモアリルアルコール9は文献既知化合物であり、そのスペクトルデータは文献値と良い一致を示した(CAS No.25201−44−9)。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、官能基化された新規なジアルコキシシラン、シラノールを立体選択的に容易に合成することができ、このことは本発明が医薬、農薬、各種機能性物質の開発に貢献し得ることを示している。さらに本発明のシラノールからは容易に汎用性の高い光学活性アルコール類を製造することができる。光学活性アルコール類は生物活性を示すものが数多く知られており、本発明はその原料及び中間体の合成手法として用いることができる。
【0037】
又、本発明のジアルコキシシラン、シラノールはそのもの自体が新規な生物活性物質として利用されることが期待され、これまでに無いアプローチで研究開発を行うことができる。さらに、これまでに開発されている生物活性物質の不斉炭素を不斉ケイ素に置き換えることにより、さらに効果のある化合物に変換することが可能であると考えられる。加えて、機能材料などの開発においては、これまで広く利用されているシリコン等の含ケイ素高分子素材の原料として光学活性シラノールを用いることにより、規則的な三次元構造を有する高分子素材を合成することも可能になると考えられる。
【0038】
また本発明は、新規かつ汎用性の高い光学活性シラノールの製造方法でありその工業的な利用も多岐にわたると考えられる。加えて、本発明により、汎用性の高い光学活性アルコールの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるジアルコキシシランからシラノールを合成する時におけるアリルオキシ基の分子内SN2’反応を説明するための説明図。

Claims (8)

  1. 一般式(1)
    Figure 0004200418
    (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水素又はメチル基から選ばれる)で示されるシラノール。
  2. 一般式(2)
    Figure 0004200418
    (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシクロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、2−メチレン−シクロへキシル又は2−メチレン−シクロペンチルの官能基から選ばれる)で示されるシラノール。
  3. 一般式(3)
    Figure 0004200418
    (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水素又はメチル基である)で示されるジアルコキシシラン。
  4. 一般式(4)
    Figure 0004200418
    (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換のフェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシクロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、シクロペント−1−エニルメチル、又はシクロヘキシ−1−エニルメチルの官能基から選ばれる)で示されるジアルコキシシラン。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のシラノールであって、R≠Rであるシラノール。
  6. 請求項3又は請求項4に記載のジアルコキシシランであって、R≠Rであるジアルコキシシラン。
  7. 請求項3又は請求項4に記載のジアルコキシシランからシラノールを製造する方法であって、前記ジアルコキシシランに対して、THF−HMPA(テトラヒドロフラン−ヘキサメチルリン酸アミド)溶媒中、−78℃下、強塩基を作用させることを特徴とするシラノールの製造方法。
  8. 請求項1又は請求項2に記載のシラノールからアルコールを製造する方法であって、50℃下、THF中で、前記シラノールに対してテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドを作用させることを特徴とするアルコールの製造方法。
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