JP4206152B2 - 免震装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールベアリングを用いた免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
免震装置の機能には、鉛直方向には建物を支え、水平方向に動きやすくする機能と、水平方向の復元力を与える機能と、水平方向に減衰力を与える機能との3つの機能が必要である。
【0003】
免震装置として一般的に知られている積層ゴムは、鉛直方向に建物を支え、水平方向に動きやすくする機能と、水平方向に復元力を与える機能とを有するものである。かかる積層ゴムのうち、鉛入り積層ゴムは、さらに水平方向に減衰力を与える機能をも有するものである。
【0004】
また、鉛直方向に建物を支え、水平方向に動きやすくする機能を有する免震装置としては、転がり支承、滑り支承などがよく知られている。
【0005】
さらに、水平方向に減衰力を与える機能を有するものとしては、鋼材ダンパ、鉛ダンパ、オイルダンパ、粘性体ダンパなどが知られている。
【0006】
厳密には、冒頭に掲げた3つの機能を全て有するものを免震装置と言うのが妥当であろうが、かかる機能のうち鉛直方向には建物を支え、水平方向に動きやすくする機能をのみ有するものを免震装置と呼ぶことも多い。本願明細書では、以下、免震装置とは、鉛直方向には建物を支え、水平方向に動きやすくする機能をのみ有するものを指すこととする。
【0007】
かかる意味での免震装置としては、上記のように、ゴムシートと鉄板を相互に重ねあわせて接着した構造で、水平方向に動きやすく、上下方向には高い剛性を有した積層ゴムからなる免震装置がよく知られている。
【0008】
また、ボールベアリングを用いたリニアガイドを有する構造の免震装置も知られている。かかる免震装置では、リニアガイドは循環できるボールベアリングを多数組み込んだ移動ブロックに直線のレールを組み合わせて構成され、ボールベアリングを用いることにより非常に小さい摩擦係数でレール上を動けるようになっている。このリニアガイドを直行するように2段に重ねあわせることにより平面状を自由に、かつ、低い摩擦係数で動けるように構成されている。
【0009】
ボールベアリングを平面状に自由に動けるようにする構成の免震装置も知られている。建物と建物の基礎の間にボールベアリングを挟むことにより建物を平面状に自由に動けるようにした免震装置である。かかる装置では、建物及び基礎には大きな平面を形成することが必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来構成の免震装置では、以下のような問題点が指摘され、かかる問題点の改善が求められている。
【0011】
免震建物では地震時に免震装置の部分で大きな変位を生じ、その変位に耐えうる大きな変位能力が求められる。しかし、軽い建物を免震化しようとすると積層ゴムの支える荷重が小さくなるため免震装置の直径は小さく、細長い形状となり、その場合大きな変位を生じると地震時に座屈を生じて、鉛直方向に荷重を支持できなくなるという問題点が指摘されている。
【0012】
また、ボールベアリングを用いたリニアガイドを有する構成の免震装置では、レール上をボールベアリングを円滑に動かすためには、レールおよびボールベアリングの双方に高い精度が求められ、その分高価な免震装置となり、施工経済性の面から採用し難いという問題点が指摘されている。
【0013】
また、ボールベアリングを平面状に自由に動けるように構成した前記従来型の免震装置では、平板と点接触しているボールベアリングで重量を支えようとするため、点接触部分にどうしても大きな応力が発生し、その分平板をへこますか、あるいはボールベアリングが壊れ易くなる可能性があることが危惧されている。
【0014】
従来のボールベアリングには、高炭素クロム軸受鋼(SUJ1、SUJ2、SUJ3、SUJ4,SUJ5)、あるいは浸炭軸受鋼(クロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼など)、あるいは高温軸受高速度鋼(AISM50)、あるいはステンレス(SUS440C、SUS420J2)などが用いられている。
【0015】
これらの材料は硬度、強度ともに高い材料であるが、免震装置として用いる場合に要求される耐蝕性、靭性を兼ね備えた材料ではなく、また装置自体が大きなものとなっている。
【0016】
本発明の目的は、上記問題点を解消することのできるボールベアリングを用いた新規な免震装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、建物と建物の基礎との間に設ける免震装置であって、前記免震装置を前記建物に固定する建物取付部材と、前記免震装置を前記基礎に固定する基礎取付部材と、前記建物取付部材、前記基礎取付部材との間に介在させる複数のボールベアリングと、前記基礎取付部材側に設けた前記ボールベアリングの退避部とを有し、前記建物取付部材と前記基礎取付部材とが前記ボールベアリングを介して相対変位する際に、前記複数のボールベアリングの一部が、前記建物取付部材と前記基礎取付部材間と、前記退避部との間を循環するように構成したことを特徴とする。
【0018】
前記退避部は、前記基礎取付部材上の前記ボールベアリングを建物取付部材との間に介在させる部分の周囲に、前記ボールベアリングの落ち込み可能な溝に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の上記構成の免震装置は、建物取付部材を建物、すなわち建物本体側に取り付けて固定し、基礎取付部材を建物の基礎に取り付けて固定する。かかる要領で免震装置を取り付けた建物では、地震が発生すると、建物本体側と建物の基礎との間に水平方向に相対変位を生じようとする力が働く。
【0020】
本発明の免震装置では、ボールベアリングが基礎取付部材の平板面上を上を転がりながらこの相対変位を強要することとなる。多数のボールベアリングの一部、すなわち幾つかは、ある程度上記変位が進むと基礎取付部材に設けたボールベアリング用の退避部に逃げる。逃げるに際しては、退避部に溜まった複数のボールベアリング間の隙間に逃げ込むこととなる。
【0021】
退避部にも予めボールベアリングが入れられており、逃げ込んできたボールベアリングで一杯になると、その後逃げ込んできたボールベアリングの分、他のボールベアリングが退避部から、基礎取付部材のボールベアリングを建物取付部材側との間に介在させる部分へ戻されることとなる。
【0022】
すなわち、本発明の免震装置では、このように複数のボールベアリングが、建物取付部材と基礎取付部材間と、退避部との間を行き来、すなわち循環することとなる。
【0023】
かかる退避部としては、例えば、基礎取付部材のボールベアリングを建物取付部材側との間に介在させる部分の周囲に設けた溝に構成すればよい。かかる溝の外周には適当な高さの土手を設けておき、退避したボールベアリングが外に外れて落ちないようにする必要がある。
【0024】
かかる溝に構成しておけば、地震時の揺れに応じて建物取付部材と基礎取付部材との間に水平方向に沿った相対変位が生じ、その相対変位がある程度進むと、上記構成の免震装置の溝に近い側にあるボールベアリングが、溝の中に退避しているボールベアリング間の隙間のある箇所に落ちる。
【0025】
一方、溝の中にあったボールベアリングは、上記溝の中に落ち込んできたボールベアリングにより、基礎取付部材と建物取付部材側との間に押し出され、常に鉛直荷重を支持するのに十分なボールベアリングが基礎取付部材上に存在することとなる。
【0026】
本発明の免震装置では、溝および建物取付部材と基礎取付部材間とに設けるボールベアリングの個数を、細密充填にして全くボールベアリングの上記循環ができない程に詰め込んではいけない。
【0027】
また、建物取付部材と基礎取付部材との間に存在するボールベアリングの数は、上方からの鉛直荷重を支えることができる数存在するようにして、溝部からの循環によりこの数が維持できるようにすることが必要である。
【0028】
鉛直荷重を支持するボールベアリングには大きな応力が発生するため、高硬度と高強度を有するように析出硬化型高珪素ステンレス鋼(例えば、シリコロイ鋼(登録商標)として市販されている)を使用すればよい。
【0029】
なお、上記析出硬化型高珪素ステンレス鋼とは、0.5%以下の炭素と、3.0%以上5.0%以下の珪素と、2%以下のマンガンと、5%以上10%以下のニッケルと、6%以上14%以下のクロムと、0.2%以上1%以下のモリブデンと、0.5%以上3%以下の銅と、2.0%以下のニオブと残部の鉄とからなるステンレス鋼である。
【0030】
より詳しくは、上記ステンレス鋼を900℃から1000℃の温度で所定時間維持して急冷し、次いで600℃から700℃の温度で所定時間維持して冷却し、さらに1000〜1100℃の溶体化温度に加熱して急冷にした状態で加工形成し、その部品をその厚さ1cmあたり少なくとも10分間以上420℃から520℃の温度で維持して時効硬化させたステンレス鋼である。
【0031】
さらに、その表層部にイオン窒化、またはTiC、もしくはTiWをコーティングする表面硬化処理またはショットピーニングなどの表面改質を施してもよい。
【0032】
また、建物取付部材、基礎取付部材、特に重量のかかる部材のボールベアリングに接触する部分に上記析出硬化型高珪素ステンレス鋼を使用すれば、免震装置自体を上記同様高硬度、高強度とすることができるとともに、靱性、耐蝕性を有した装置とすることができる。そのため、海岸地域、多湿地域にも有効で、腐蝕性ガスが発生し易い立地環境でも、免震機能を維持することができる。
【0033】
さらに、かかる析出硬化型高珪素ステンレス鋼を使用すれば、耐摩耗性、耐熱性をも免震装置に付与することができ、地震時に建物火災が発生しても、その免震機能を維持させることができる。
【0034】
また、高強度、靱性、耐衝撃性、耐摩耗性を兼備し、ボールベアリングや受部材の破壊強度が従来品より高いため、免震装置を小型化することができる。
【0035】
本発明は、建物と建物の基礎との間に設ける免震装置であって、前記免震装置を前記建物に固定する建物取付部材と、前記免震装置を前記基礎に固定する基礎取付部材と、3個のボールベアリングを、それぞれ回転可能に独立して保持するボールベアリング保持部材とを有し、前記ボールベアリング保持部材は、前記3個のボールベアリングを前記基礎取付部材上に移動可能に設け、前記ボールベアリング保持部材を前記建物取付部材側に互いに回転可能に連結したことを特徴とする。
【0036】
本発明は、建物と建物の基礎との間に設ける免震装置であって、3個のボールベアリングを、それぞれ回転可能に独立して保持し、前記建物側に固定する建物取付部材側に前記ボールベアリングを移動可能に設けたボールベアリング保持部材と、3個のボールベアリングを、それぞれ回転可能に独立して保持し、前記基礎側に固定する基礎取付部材側に前記ボールベアリングを移動可能に設けたボールベアリング保持部材とを有し、両ボールベアリング保持部材が互いに回転可能に連結されていることを特徴とする。
【0037】
前記3個のボールベアリングは、前記3個のボールベアリングより小径の複数の小径ボールベアリングを介して、前記ボールベアリング保持部材に回転可能に保持されていることを特徴とする。
【0038】
本発明は、建物と建物の基礎との間に設ける免震装置であって、前記免震装置を前記建物に固定する建物取付部材と、前記建物取付部材を支持するボールベアリングを受けるボールベアリング受部材と、前記ボールベアリング受部材に設けた前記ボールベアリング用の退避部と、前記免震装置を前記基礎に固定する基礎取付部材と、前記基礎取付部材上にのせられた3個のボールベアリングを、3個それぞれ回転可能に独立して保持するボールベアリング保持部材とを有し、前記ボールベアリング受部材と前記ボールベアリング保持部材とが、互いに回転可能に連結され、前記建物取付部材と前記基礎取付部材とが相対変位する際に、前記ボールベアリング受部材側のボールベアリングの一部が、前記建物取付部材、前記ボールベアリング受部材間と、前記退避部との間を循環するように構成されていることを特徴とする。
【0039】
前記ボールベアリング、前記建物取付部材の前記ボールベアリングと接触する部分、前記基礎取付部材の前記ボールベアリングと接触する部分の少なくともいずれかが、析出硬化型高珪素ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする。
【0040】
上記構成の本発明の免震装置では、ボールベアリング保持部材は、3個のボールベアリングをそれぞれ回転可能に独立して保持しているので、このボールベアリングが接触する基礎取付部材上に多少のでこぼこがあっても、このでこぼこになじんで、地震時の振動に応じて建物取付部材と基礎取付部材との間の水平方向の相対変位が起きるように転がることができる。
【0041】
また、上記のようにこの免震装置は、鉛直方向からの荷重を3点で支持するため、建物を支持する荷重はそれぞれのボールベアリングでほぼ1/3となり、その分かかる免震装置1台で多くの鉛直荷重を支持することができる。
【0042】
かかる3個のボールベアリングは、大きな鉛直荷重がかかることを考慮して大径のボールベアリングに構成しておけばよい。
【0043】
また、ボールベアリング保持部材とかかる3個のボールベアリングとの間には、小径のボールベアリングを介在させることにより、大径の3個のボールベアリングを非常に小さな摩擦係数で転がるようにして、上記地震時の相対変位が円滑に行えるようにすればよい。
【0044】
また、かかる構成の免震装置2台を上下2段に組んで互いにそれぞれ回転自在に連結したような構成として、一方の免震装置の3個のボールベアリングを上を向かせて建物取付部材面に接触させ、他方の3個のボールベアリングを下を向かせて基礎取付部材面に接触させることにより、建物取付部材と基礎取付部材の水平方向の相対変位量を半分にして、より免震装置の小型化が図れるようにしても構わない。
【0045】
また、前述の退避部を設けた構成の免震装置の機構部を上方に設け、上記3個のボールベアリングを設けた構成の免震装置の機構部を下方に設け、両機構部を互いに回転自在に連結するように構成しても構わない。
【0046】
なお、3個のボールベアリング、小径ボールベアリングや、ボールベアリング保持部材、建物取付部材、基礎取付部材、特に両ボールベアリングが接触する部分を少なくとも析出硬化型高珪素ステンレス鋼に形成しておけば、前述の如く免震装置の高硬度化、高強度化を図るとともに、靱性、耐蝕性、耐摩耗性、耐熱性を付与することができる。
【0047】
また、本発明の構成では、前記要領でボールベアリングが使用されているので、本発明を軽量建物に適用すれば、大きな変位が発生しても座屈を生ずることなく免震機能を発揮させることができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0049】
(実施の形態1)
本実施の形態の免震装置Aでは、図1に示すように、建物取付部材10と、基礎取付部材20との間にボールベアリング30が介在させられた構成となっている。
【0050】
建物取付部材10は、所定層厚の平板状に形成され、建物取付部材10の上面10a側を建物本体底面側にあてがって取付固定されるようになっている。建物取付部材10の下面10b側は、ボールベアリング30が円滑に回転できるように特に平滑面に表面が仕上げられている。
【0051】
基礎取付部材20は、図1に示すように、所定層厚に形成された平板部材21と、その平板部材21上に設けられたボールベアリング受部材22とから構成されている。平板部材21の下面21aを、建物の基礎の上面にあてがって、基礎取付部材20を建物の基礎側に取付固定できるようになっている。
【0052】
平板部材21の上面21b側に設けられるボールベアリング受部材22は、図1に示すように、所定層厚の円板状に形成され、その上面側がボールベアリング30を受けることができるように円形凹部に形成されている。
【0053】
円形凹部内側は、中央に円形台部23を設け、その周囲にボールベアリング30の退避手段として環状に溝24が巡らされている。円形台部23の上面は、ボールベアリング30が円滑に回転できるように特に平滑表面に仕上げされている。
【0054】
円形台部23の周囲に環状に設けられた溝24は、その幅がボールベアリング30の口径幅より少し大きい程度に設定され、円形台部23からボールベアリング30が落ち込めるように形成されている。溝24は、ボールベアリング30が円滑に回転移動できるように平滑に形成されている。
【0055】
溝24の深さは、図1(a)に示すように、溝24内にボールベアリング30が一杯に詰まっている状態で、この溝24内にボールベアリング30が円形台部23から落ち込むことにより、溝24内にあるボールベアリング30同士の競り上がりによりボールベアリング30を円形台部23側に押し上げることができる程度の深さに設定されている。
【0056】
すなわち、必要以上に溝24の深さを深く設定してはいけない。深く設定し過ぎると、溝24内からボールベアリング30が円形台部23側へ上がることができなくなり、円形台部23から溝24内に落ち込もうとするボールベアリング30が完全に落ちきれず、円形台部23の縁部で中途半端にひっかかった状態となり、建物取付部材10の平行移動を妨げることとなり免震機能を発揮できなくなるためである。
【0057】
また、溝24の外周側は、溝24内からボールベアリング30が外側に外れないように堤部25が設けられている。本実施の形態では、図1(a)に示すように、ボールベアリング受部材22の側方をそのまま立ち上げて堤部25が形成されている。
【0058】
上記構成のボールベアリング受部材22には、円形台部23の上面側に常に建物取付部材10側からかかる鉛直荷重を支えることができる程度の数のボールベアリング30が存在させられている。
【0059】
また、ボールベアリング30の数は、上記要領で複数のボールベアリング30の一部が円形台部23から溝24内に落ち込み、溝24内の別のボールベアリング30が円形台部23側へ上がるようにして、ボールベアリング30のかかる循環移動が確保できる隙間が発生する程度の数に設定しておく必要がある。
【0060】
すなわち、ボールベアリング受部材22内に入れるボールベアリング30の数は、上記循環移動ができない程に、ボールベアリング30が最密充填される程に入れてはいけない。
【0061】
上記構成の免震装置Aは、建物取付部材10で建物本体側に、基礎取付部材20で建物の基礎側にそれぞれ取付固定されることとなるが、このようにして建物に固定された本発明の免震装置Aでは、ボールベアリング30で鉛直荷重を支えて、建物本体を支持している。
【0062】
地震発生時には、上記の如くボールベアリング30で鉛直方向の荷重を支えるとともに、地震振動に合わせて、建物本体側と建物の基礎側との相対変位を促し免震機能を発揮することとなる。
【0063】
地震時には、建物取付部材10と基礎取付部材20のボールベアリング受部材22の円形台部23との間に挟まれたボールベアリング30は、相対変位に応じて円形台部23上を転がる。
【0064】
転がったボールベアリング30は相対変位のほぼ変位方向に向かった側の円形台部23の周縁側から、漸次円形台部23の周囲に設けた環状の溝24内に落ち込む。溝24内に落ちたボールベアリング30は、溝24内の隙間のある側に押されて進む。
【0065】
このようにして溝24内では、円形台部23から溝24内にボールベアリング30が落ち込んでくるので、それまで溝24内にあったボールベアリング30は漸次押され、ボールベアリング30が落ち込んでこない側から、例えば、相対変位する方向のほぼ背面側からボールベアリング30が溝24内から円形台部23上に上げられる。
【0066】
このようにして円形台部23上には、溝24内に落ち込むボールベアリング30の代わりに、別のボールベアリング30が溝24内から補充され、円形台部23上には鉛直荷重を支えるのに十分な数のボールベアリング30が存在するようになっている。
【0067】
なお、本実施の形態の免震装置Aでは、鉛直荷重を支持する建物取付部材10、基礎取付部材20、ボールベアリング30などには、大きな応力が発生しても建物取付部材10や基礎取付部材20がボールベアリング30で凹んだり、あるいはボールベアリング30自体が破損したりしないように、シリコロイ(登録商標)として市販されている前述の析出硬化型高珪素ステンレス鋼を使用すればよい。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態の免震装置Bは、図2、3に示すように、建物取付部材50と基礎取付部材60との間に、ボールベアリング71を有するボールベアリング保持部材70が介在させられた構成となっている。
【0069】
建物取付部材50は、所定層厚の平板状に形成され、建物取付部材50の上面50a側を建物本体底面側にあてがって取付固定されるようになっている。建物取付部材50の下面50bの中央部には、鉛直下方に軸方向を向けたピン80が設けられている。
【0070】
ピン80の先端側は略半球状に形成され、ボールベアリング保持部材70の上面側に設けた曲率内面に形成されたピン受凹部72内に軸回転可能に軸支されている。ピン80がこのように軸支されているので、建物取付部材50に対してボールベアリング保持部材70は、ピン80を回転軸として自在回転することができ、地震時の相対変位の際には、図3(b)に示すように、建物取付部材50と基礎取付部材60との間に回転が発生しても対処できるようになっている。
【0071】
ボールベアリング保持部材70は、図2、3に示すように、ボールベアリング71を回転可能に支持するベアリングボック73と、ベアリングボックス73を設けたベアリングボックスケース74とから構成されている。
【0072】
平断面円形に構成されたベアリングボックス73は、図2、4に示すように、その底面側中央にベアリング受凹部75が設けられ、このベアリング受凹部75内に、ボールベアリング71が、このボールベアリング71より小さい径の小径ボールベアリング76を介して円滑に回転できるように支持されている。
【0073】
ベアリング受凹部75内は、図4に示すように、ボールベアリング71のほぼ半球部分が入るように構成され、曲率天井部77の内面77aの周縁部は、曲率天井部77に対してほぼ二重天井状になるように捲くれて小ボールベアリング76の退避空間75aが形成されている。
【0074】
退避空間75aは、小径ボールベアリング76が一層入る程度の厚さの空間に構成され、大径のボールベアリング71が嵌め込まれるベアリング受凹部75内に連通させられている。なお、図4には、見やすいように小径ボールベアリング76を破線表示で2個しか示していないが、実際には、図2に示すように、複数の小径ボールベアリング76が介在させられている。
【0075】
このようにして、小径ボールベアリング76が、大径のボールベアリング71とベアリング受凹部75内の曲率天井部77の内面77aとの間に介在させられているので、ボールベアリング71が円滑に回転することができる。
【0076】
また、小径ボールベアリング76は、退避空間75a内の上方に少しの残余空間を残した状態で上方に詰められており、この退避空間75a部分に詰められた小径ボールベアリング76の重みで、小径ボールベアリング76を、ボールベアリング71の上方球面と曲率天井部77の内面77aとの間に介在させることができるようになっている。
【0077】
このようにしてボールベアリング71を回転可能に支持したベアリングボックス73は3個独立に、図2、3に示すように、平断面正六角形に形成された所定層厚のベアリングボックスケース74に設けられている。
【0078】
ベアリングボックス73をベアリングボックスケース74に設けるに際しては、3個のベアリングボックス73に設けたそれぞれのボールベアリング71の重心を結んで正三角形ができるように配置され、さらに、かかる正三角形の重心位置が平面正六角形のベアリングボックスケース74の重心位置の鉛直下にくるように設定されている。
【0079】
また、建物取付部材50に対してボールベアリング保持部材70を前記要領で自在回転可能に支持するピン80のピン受凹部72も、ベアリングボックスケース74の上面の中央位置、すなわち上記ベアリングボックスケース74の重心位置の鉛直上方位置に設けられ、免震装置Bにおける鉛直荷重を支える重量バランスが崩れないように配慮されている。
【0080】
このようにしてベアリングボックスケース74に設けられた3個のベアリングボックス73の3個のそれぞれのボールベアリング71は、図2、3に示すように、基礎取付部材60の上面60a上に、3点位置で点接触するようにのせられ、基礎取付部材60の上面60a上を水平方向に転がるようになっている。基礎取付部材60の下面60bは、建物の基礎側にあてがって取付固定することができるようになっている。
【0081】
上記構成の免震装置Bは、建物取付部材50で建物本体側に、基礎取付部材60で建物の基礎側にそれぞれ取付固定されることとなるが、鉛直荷重は3個の大径のボールベアリング71で支え、且つ建物取付部材50はピン受凹部72での一点支持に構成されているので、基礎取付部材60の上面60a側に多少の凹凸があって平面度が悪くても、この凹凸になじんで安定して鉛直荷重の支持を行い、かつ上面60aに沿って回転を含んだ水平方向の相対変位に対応することができる。
【0082】
また、本実施の形態の免震装置Bでは、鉛直荷重を支持する建物取付部材50、基礎取付部材60、ボールベアリング71などには、大きな応力が発生しても基礎取付部材60の上面60aがボールベアリング71で凹んだり、あるいはボールベアリング71、小径ボールベアリング76自体が破損したりしないように、シリコロイ(登録商標)として市販されている前述の析出硬化型高珪素ステンレス鋼が使用されている。
【0083】
なお、上記説明ではボールベアリング71が小径ボールベアリング76を介してベアリングボックス73に設けられているが、ボールベアリング71が支障ない程度に円滑に回転できるように構成すれば、例えば図5に示すように、小径ボールベアリング76を介在させない構成でも一向に構わない。この場合も、図5に示すY−Y線から矢視方向に見上げた様子は、図2と同様になる。
【0084】
(実施の形態3)
本実施の形態の免震装置Cは、図6に示すように、上記実施の形態2で説明したボールベアリング保持部材70とほぼ同様の構成のボールベアリング保持部材100、100’が2台互いに合わせられて、基礎取付部材110と建物取付部材120との間に介在させられた構造に構成されている。
【0085】
上記ボールベアリング保持部材100は、上記実施の形態2で説明した構成のボールベアリング71を回転可能に支持したベアリングボックス73と、このベアリングボックス73を前記実施の形態2と同様に設けたベアリングボックスケース101とから構成されている。
【0086】
ボールベアリング保持部材100’は、上記ボールベアリング保持部材100とは、小径ボールベアリング76の受部78が略碗型の曲率凹部に形成されている点が異なっている。
【0087】
ベアリングボックスケース101の上面101a側には、前記実施の形態2のベアリングボックスケース74に設けたと同様の要領で重心位置側に、ピン受凹部130設けられている。ピン受凹部130の凹部形状は、両端が半球状に形成されたピン140のそれぞれの一端側を回転可能に嵌めることができるように形成されている。
【0088】
かかる構成の2台のボールベアリング保持部材100、100’が、図6に示すように、互いのベアリングボックスケース101の上面101a同士を上下に対面させた状態で、それぞれのピン受凹部130にピン140の両端側を上下に軸支させて連結されている。上下のボールベアリング保持部材100、100’は、このピン140を中心にして、それぞれ互いに自由回転することができる。かかる自由回転により、前述のように相対変位時に回転が発生しても対処することができる。
【0089】
このようにして2台のボールベアリング保持部材100、100’が上下に連結された状態で、下方に連結されたボールベアリング保持部材100側のボールベアリング71は、基礎取付部材110の上面110a上にのせられている。
【0090】
上方に連結されたボールベアリング保持部材100’側のボールベアリング71は上方を向けて設けられ、このボールベアリング71の上に建物取付部材120の下面120aがのせられている。
【0091】
このように構成された本実施の形態の免震装置Cでは、地震発生時には、建物本体側に連結された建物取付部材120は、上に連結されたボールベアリング保持部材100’側のボールベアリング71が下面120aに沿って転がることにより水平に移動し、建物の基礎に連結された基礎取付部材110は、下に連結されたボールベアリング保持部材100側のボールベアリング71が上面110aに沿って転がり上記建物取付部材120とは反対方向に水平に移動するため、前記実施の形態2の構成の免震装置Bに比べて、同じ相対変位量を起こさせる外力に対して、水平方向の移動量を1/2に抑えることができるため、より一層の装置の小型化が図れる。
【0092】
なお、本実施の形態の免震装置Cでも、鉛直荷重を支持する基礎取付部材110、建物取付部材120、ボールベアリング71などには、大きな応力が発生しても基礎取付部材110の上面110a、建物取付部材120の下面120aがボールベアリング71で凹んだり、あるいはボールベアリング71、小径ボールベアリング76自体が破損したりしないように、シリコロイ(登録商標)として市販されている前述の析出硬化型高珪素ステンレス鋼が使用されている。
【0093】
(実施の形態4)
本実施の形態の免震装置Dは、図7に示すように、前記実施の形態1で述べた免震装置Aの機構と、前記実施の形態2で述べた免震装置Bの機構とをそれぞれ合わせ持つ構造に構成されている。
【0094】
以下の説明では、前記実施の形態で述べたと同じ構成部分は、一部同一符合を使用して説明してある。
【0095】
前記実施の形態1と同様に、建物取付部材10の下面10b側には、ボールベアリング受部材22との間に、ボールベアリング30が介在させられている。
【0096】
ボールベアリング受部材22のボールベアリング30を受ける側は、前記実施の形態1で述べたと同様の構成を有しており、円形台部23、溝24が設けられ、地震時の相対変位の際には、複数のボールベアリング30の一部が溝24内に落ち、その分溝24内の他のボールベアリング30が、円形台部23に戻るように循環されるように構成されている。
【0097】
かかる構成のボールベアリング受部材22の下面22a側には、本実施の形態では、その中央位置、すなわち重心位置には前記実施の形態3と同様のピン受凹部130が設けられている。
【0098】
一方、基礎取付部材110の上面110a上には、図7に示すように、ボールベアリング保持部材100のベアリングボックスケース101に設けたベアリングボックス73のボールベアリング71が移動可能にのせられている。ベアリングボックスケース101の上面側には、前記実施の形態3と同様にピン受凹部130が設けられている。
【0099】
かかる構成のベアリングボックスケース101と、前記構成のボールベアリング受部材22とが、それぞれのピン受凹部130との間にピン140を介在させて、前記実施の形態3と同様に、互いに自在回転できるように連結されている。そのため、前記実施の形態3と同様に、地震時の相対変位に際して回転が発生しても対処することができる。
【0100】
かかる構成でも前記実施の形態3と同様に、前記実施の形態1、2の免震装置A、Bに比べて、同じ相対変位を発生させる外力に対して、水平方向の移動量を1/2に抑えることができるため、より装置を小型化することができる。
【0101】
なお、本実施の形態の免震装置Dでも、鉛直荷重を支持する建物取付部材10、基礎取付部材110、ボールベアリング30、71、小径ボールベアリング76に大きな応力が発生しても、建物取付部材10の下面10b、基礎取付部材110の上面110aがボールベアリング30、71で凹んだり、あるいはボールベアリング30、71、小径ボールベアリング76自体が破損したりしないように、シリコロイ(登録商標)として市販されている前述の析出硬化型高珪素ステンレス鋼が使用されている。
【0102】
【発明の効果】
本発明では、建物取付部材と基礎取付部材との間に介在させるボールベアリングが退避部と建物取付部材と基礎取付部材との間を、地震時などの相対変位時に循環することができるため、大変形に追随することができる。
【0103】
本発明では、上記退避部を溝に構成することにより、簡単な構成で、ボールベアリングの退避部への移行、退避部からの復帰によるボールベアリングの循環運動を確保することができる。
【0104】
本発明では、析出硬化型高珪素ステンレス鋼をその構成部に使用しているので、装置自体を高硬化、高強度、靱性、耐蝕性、耐摩耗性、耐熱性に優れたものとすることができ、特に耐熱性により地震時に発生しやすい火災などで免震装置の免震機能が失われないようにすることができる。
【0105】
本発明では、免震装置の小型化を図ることができる。
【0106】
本発明では、建物取付部材と基礎取付部材の間に介在させるボールベアリングが、ボールベアリング保持部材に3個それぞれ回転可能に独立して保持されているので、ボールベアリングが基礎取付部材上に3点接触して、接触面に多少の凹凸などがあっても安定接触させて鉛直荷重を支えることができる。
【0107】
本発明では、ボールベアリング保持部材に保持されるボールベアリングが、間に小径ボールベアリングを介在させて保持されているので、基礎取付部材に接触するボールベアリングが非常に小さい摩擦係数で転がることができる。
【0108】
本発明では、建物取付側に接触させるボールベアリングを有するボールベアリング保持部材と、基礎取付側に接触させるボールベアリングを有するボールベアリング保持部材とが2段に重ねられた構成になっているので、一段構成の場合に比べて、同じ外力に対して相対変位量を1/2にすることができ、免震装置の小型が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の免震装置の一実施の形態を示す正面図である。(b)は、(a)のX−Xで示す矢視方向に見た場合の平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態の免震装置をボールベアリング側から見上げた状態を示す平面図である。
【図3】(a)は、図2に示す免震装置を、図2に示すY−Yで示す矢視方向に切断した断面図である。(b)は、(a)に示す免震装置の回転時の様子を示す断面図である。
【図4】ベアリングボックスの断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態の免震装置を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態の免震装置を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態の免震装置を示す断面図である。
【符号の説明】
10 建物取付部材
10a 上面
10b 下面
20 基礎取付部材
21 平板部材
21a 上面
21b 下面
22 ボールベアリング受部材
22a 下面
23 円形台部
24 溝
25 堤部
30 ボールベアリング
50 建物取付部材
60 基礎取付部材
70 ボールベアリング保持部材
71 ボールベアリング
72 ピン受凹部
73 ベアリングボックス
74 ベアリングボックスケース
75 ベアリング受凹部
76 小径ボールベアリング
77 曲率天井部
77a 内面
78 受部
80 ピン
100 ボールベアリング保持部材
100’ ボールベアリング保持部材
101 ベアリングボックスケース
110 基礎取付部材
110a 上面
110b 下面
120 建物取付部材
120a 下面
120b 上面
130 ピン受凹部
140 ピン

Claims (3)

  1. 建物と建物の基礎との間に設ける免震装置であって、
    前記免震装置を前記建物に固定する建物取付部材と、
    前記免震装置を前記基礎に固定する基礎取付部材と、
    前記建物取付部材と前記基礎取付部材との間に介在させる複数のボールベアリングと、
    前記基礎取付部材側に設けた前記ボールベアリングの退避部とを有し、
    前記建物取付部材と前記基礎取付部材とが前記ボールベアリングを介して相対変位する際に、前記複数のボールベアリングの一部が、前記建物取付部材、前記基礎取付部材間と、前記退避部との間を循環するように構成され
    前記退避部は、前記基礎取付部材上の前記ボールベアリングを建物取付部材との間に介在させる部分の周囲に、前記ボールベアリングの落ち込み、押し上げが可能な溝に形成されていることを特徴とする免震装置。
  2. 建物と建物の基礎との間に設ける免震装置であって、
    前記免震装置を前記建物に固定する建物取付部材と、
    前記建物取付部材を支持するボールベアリングを受けるボールベアリング受部材と、
    前記ボールベアリング受部材に設けた前記ボールベアリング用の退避部と、
    前記免震装置を前記基礎に固定する基礎取付部材と、
    前記基礎取付部材上にのせられた3個のボールベアリングを、それぞれ回転可能に独立して保持するボールベアリング保持部材とを有し、
    前記ボールベアリング受部材と前記ボールベアリング保持部材とが、互いに回転可能に連結され、
    前記建物取付部材と前記基礎取付部材とが相対変位する際に、前記ボールベアリング受部材側のボールベアリングの一部が、前記建物取付部材、前記ボールベアリング受部材間と、前記退避部との間を循環するように構成され
    前記退避部は、前記基礎取付部材上の前記ボールベアリングを建物取付部材との間に介在させる部分の周囲に、前記ボールベアリングの落ち込み、押し上げが可能な溝に形成されていることを特徴とする免震装置。
  3. 請求項1また2に記の免震装置において、
    前記ボールベアリング、前記建物取付部材の前記ボールベアリングと接触する部分、前記基礎取付部材の前記ボールベアリングと接触する部分の少なくともいずれかが、析出硬化型高珪素ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする免震装置。
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