JP4253254B2 - オーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン法による板ガラスの製造装置および方法 - Google Patents

オーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン法による板ガラスの製造装置および方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2002年12月14日付けで出願された米国仮特許出願第60/341,199号の優先権を主張するものである。
本発明は、フュージョン法による板ガラスの製造に関し、特に、この方法で製造されるガラスの失透欠陥の発生を制御する技術に関するものである。この技術は、例えばAMLCDのような液晶ディスプレーの製作において基板として使用するように構成されたハイシリカガラスシート(例えば少なくとも60重量%のシリカを含むガラスシート)の製造にフュージョン法が採用される場合に特に有用である。
A.フュージョン法
フュージョン法は、板ガラスを製造するためのガラス製造法に用いられる基本的技術の一つである。例えば非特許文献1を参照されたい。例えば、フロート法およびスロットドロー法のような従来公知の他の方法に比較して、フュージョン法は、優れた平坦性と平滑性とを表面が備えているガラスシートを生成させる。その結果、フュージョン法は、液晶ディスプレー(LCD)の製作に用いられるガラス基板の製造に特に重要になってきた。
フュージョン法、特にオーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン法は、その内容がここに引例としてここに組み入れられる、スチュアート・エム・ドカーティ(Stuart M. Dockerty)に付与された特許に関する特許文献1および2の主題である。これら特許の方法の概略図が図1に示されている。図示のように、この装置は、「アイソパイプ」(isopipe)として知られている耐火物13内に形成された収集樋11に溶融ガラスを提供するための供給パイプ9を備えている。
一旦安定な動作状態に達すると、溶融ガラスが供給パイプから樋に流れ、次いで樋の両上縁をオーバーフローして、アイソパイプの両外表面に沿って下方へ流動し、次いで内方へ流動する2枚のガラスシートを形成する。2枚のシートはアイソパイプの底端15で出会い、その位置で1枚のシートに合体する。この1枚のシートは、アイソパイプの底端からシートを引き下げる速度によってシートの厚さを制御する引っ張り装置(全体として矢印17で示されている)にフィードされる。引っ張り装置は、シートがこの装置に達する以前に冷却され硬化されるように、アイソパイプの底端から下流側に離れて配置されている。
図1から明らかなように、最終的なガラスシートの外表面は、工程中のいずれの時点においても、アイソパイプの両外表面のどの部分にも接触しない。むしろ、ガラスシートの外表面は周囲の雰囲気に接するだけである。最終的なシートを形成する2枚のシート半体の内表面は、アイソパイプには接触するが、これら内表面はアイソパイプの底端で融合して、最終的なシート体内に埋め込まれる。このようにして、最終的なシートの優れた外表面が得られる。
工業生産設備では、ガラスシートがそれから作成される原料成分の溶融および精製に用いられる装置に対するアイソパイプ13の位置および傾斜を調整する必要がある。溶融・精製装置とフュージョン装置との間の連結部が完全に閉塞された(すなわち、アイソパイプまでの送出装置全体が溶融ガラスで満たされた)装置においては、このような調整は理論的には可能であるが、実際には、溶融ガラスの自由表面を形成することにより、溶融・精製装置をフュージョン装置に連結することによって調整が可能になる。
図2および図3はこのような連結状態を示し、9は上述と同様にアイソパイプ13に対する供給パイプ、19は溶融・精製装置からの出口(実質的に(下方に向かって)垂直方向を向いているから、ここでは「降下管」と呼ぶ)であり、矢印22は溶融ガラス31の流動方向を示し、21は溶融ガラスの自由表面であり、アイソパイプの樋11内の溶融ガラスの高さに対する自由表面21の高さは、(1)降下管を出る溶融ガラスの流速と、(2)供給パイプ/アイソパイプ連結体の流体の流れに対する抵抗とによって決定される。これらの図から明らかなように、降下管19の特徴的な断面寸法(例えば降下管の直径)が、供給パイプ9の特徴的な断面寸法(例えば供給パイプの入口18の直径)よりも小さいので、降下管と供給パイプとは容易に相対的に移動することができる。これによって、溶融・精製装置とフュージョン装置との間の所望の調整機能が得られる。
出口端20が溶融ガラス中に没しているので、樋11内の溶融ガラスの高さに対する自由表面21の高さは、出口端の没入深さの変化に対して比較的鈍感であることに注目すべきである。本発明を説明するための空間的基準を提供するために、出口端20が丁度溶融ガラス中に没入するときの自由表面21の位置を示すのに、ここでは「公称自由表面」なる用語が用いられている。この公称自由表面を規定するために符号21Nが用いられている。
降下管の出口端が現実的には溶融ガラス中に没入していても、公称自由表面と実際の自由表面とは本質的に同じ位置にある。したがって、図2および図3における符号21と21Nとは、両方とも、溶融ガラス31と周囲の雰囲気33(典型的には空気)との間の界面を規定するのに用いられている。
供給パイプ9(降下管19も同様)は不透明な耐火材料(例えば白金または白金合金)で作成されているので、溶融ガラスの実際の自由表面も公称自由表面も肉眼では観察不能であることにも注目すべきである。しかしながら、それらの位置は、物理的モデル(例えばオイルモデル)を用いて正確に評価することができる。この点について、図面に示されている、特に図8、図9および図11、図12に示されている自由表面21は、説明のために単純化されていることに注目すべきであり、自由表面において小径の導管から、より大径の導管に溶融ガラスが移る結果、実際の自由表面はもっと複雑な形状を有することが分かる。さらに、後述するように、完成したガラス内の欠陥、特に失透欠陥および気泡欠陥を検査することによって、降下管と溶融ガラスとの間の空間的関係が、本発明によって規定された動作範囲内にあることを規定することができさえすれば、実際の自由表面および公称自由表面の正確な位置/形状を知ることは本発明の実施には不必要である。
B.LCDガラス
本願の譲受人であるコーニング社は、1737およびEAGLE 2000 の商標名で液晶ディスプレー用のガラスシートを販売してきた。関連部分が引例としてここに組み入れられるダンボー・ジュニア等(Dumbaugh,Jr. et al.)の特許文献3およびチェイコン等(Chacon et al.)の特許文献4を参照されたい。
EAGLE 2000 ガラスのシリカ含有量は約63.3重量%であり、1737ガラスのシリカ含有量は約57.8重量%である。EAGLE 2000 は、その高いシリカ含有量により、1737よりも、例えばシリカの高温度結晶形であるクリストバライトを形成する失透の傾向が大である。
EAGLE 2000 の大なる失透傾向に対処するために、その化学式には高いパーセンテージの酸化ホウ素(B)が含まれており、詳しく言えば、EAGLE 2000 は約10.3重量%のBを含み、これに対して、1737は約8.4重量%のBを含む。
先に1737ガラスが、高いレベルの失透を伴うことなく成功裡に生成された装置を用いて、EAGLE 2000 ガラスを試験的に製造したところ、より高いレベルのBを含むにも拘わらず、クリストバライトによるかなりの失透が観察された。EAGLE 2000 ガラスの失透は、最初にガラスシートのエッジにおける圧縮ビード(すなわち引っ張り装置により生じさせられたビード)に観察され、ついには、最終的にLCD基板を形成することを意図したシートの品質部分を含むガラスシート全体に亘って観察された。
米国特許第3,338,696号明細書 米国特許第3,682,609号明細書 米国特許第5,374,595号明細書 米国特許第6,319,867号明細書 ヴァルシュネヤ、アールン・ケー(Varshneya,Arun K.)著「無機ガラスの基礎」(Fundamentals of Inorganic Glasses)、1994年、ボストン、アカデミー・プレス社発行、第24章、第4.2項、534-540頁
本発明は、この失透の原因を確認し、かつ完成したガラスシートに他の欠陥(詳しく言えば気泡欠陥)を誘発させることなしに失透欠陥を排除するための方法および装置を提供することに関するものである。
第1の態様によれば、本発明は、フュージョン法によって板ガラスを製造するのに用いるための溶融ガラス送出装置を提供し、この装置は、
(a)第1の特徴的断面寸法(例えば約8.5インチ(216mm)の断面直径)を有する第1の導管(9)と、
(b)出口端(20)と第2の特徴的断面寸法(例えば約3.5インチ(89mm)の断面直径)とを有する第2の導管(19)とを備えており、
(イ)第1の導管(9)が、第2の導管(19)から溶融ガラスを受け取り、
(ロ)第1の導管(9)の一部が、第2の導管(19)の一部を取り囲み、
(ハ)溶融ガラス(31)の自由表面(21)が第1および第2の導管との間に形成されるように、第1の特徴的断面寸法が第2の特徴的断面寸法よりも大きく、
(ニ)失透を生じやすい板ガラス(例えば、少なくとも60重量%のSiOおよび/または少なくとも9重量%のB)に関しては、第1の導管(9)および第2の導管(19)は、第2の導管(19)の出口端(20)と溶融ガラス(31)の自由表面(21)との間の空間的関係が、完成した板ガラス内に相当数の失透欠陥(27,29)(例えば商品として許容されない数の失透欠陥)をも相当数の気泡欠陥(35)(例えば商品として許容されない数の気泡欠陥)をも生じさせることがないような相互関係をもって配置されていることを含む。
第2の態様によれば、本発明は、フュージョン法によって板ガラスを製造する装置(11,13,15)に溶融ガラスを提供する方法であって、この方法は、
(a)第1の特徴的断面寸法を有する第1の導管(9)を提供し、
(b)出口端(20)と、上記第1の特徴的断面寸法よりも小さい第2の特徴的断面寸法とを有する第2の導管(19)を提供し、
(c)第2の導管(19)の一部を第1の導管(9)の一部内に入れ子にし、
(d)溶融ガラスを第2の導管(19)外に流出させかつ第1の導管(9)内に流入させ、これにより溶融ガラスが第1の導管と第2の導管との間に自由表面を形成し、
(e)失透を生じやすい板ガラスに関しては、第2の導管(19)の出口端(20)と溶融ガラス(31)の自由表面(21)との間の空間的関係が、完成した板ガラス内に相当数の失透欠陥をも相当数の気泡欠陥をも生じさせることがないように、第1の導管(9)および第2の導管(19)の相互位置を選択することを含む。
この本発明の第2の態様のステップ(e)は、
(イ)第2の導管(19)の出口端(20)が公称自由表面(21N)の十分に上方にくるように第1の導管(9)および第2の導管(19)を離れる方向に移動させて、完成した板ガラス内に相当数の気泡欠陥を出現させ、
(ロ) 完成した板ガラス内に相当数の気泡欠陥がもはや現れなくなるまで、第1の導管(9)および第2の導管(19)を近づく方向に移動させることを含むことが好ましい。
さらに、上記ステップ(e)が、失透を生じやすい板ガラスに関しては、完成した板ガラス内に相当数の失透欠陥を生じさせない限り、完成した板ガラス内にもはや相当数の気泡欠陥が現れなくなった点を超えて、第1の導管(9)および第2の導管(19)を近づく方向に移動させるステップをも含むことがより好ましい。失透欠陥は通常、成長するのに時間がかかるので、もし第1および第2の導管が近付き過ぎた場合には、完成したガラスを時間をかけて観察しなければならない。一方、気泡欠陥は、第1および第2の導管が離れ過ぎると急速に成長する。
ステップ(e)を実行するための好ましい処理において、第1および第2の導管の「移動」は、第1の導管のみの移動、または第2の導管のみの移動、または第1および第2の導管双方の移動によって行なって差支えない。
上述した本発明の第1および第2の態様において用いられた符号は、読者の便宜のためのものであって、本発明の範囲を制限することを意図したものでも、本発明の範囲を制限すると解釈されるものでもない。より一般的に言えば、上述した発明の概要および後述する詳細な説明は、単に本発明の例示に過ぎず、請求項に記載された本発明の性質および性格を理解するための概観および骨組みを提供することを意図したものである。
本明細書に添付され、かつ本明細書の一部を構成する図面は、本発明の種々の実施の形態を示し、かつ明細書の記述内容とともに本発明の原理の説明に資するものである。勿論、図面および記述内容の双方は、本発明を説明するものであって、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
図4は、先に1737ガラスが、重大な失透問題を生じることなく成功裡に生成された装置を用いて、EAGLE 2000 ガラスをガラスシート(厚さ0.63mm)にしたときに観察された種類のクリストバライト結晶の顕微鏡写真である。図4で用いられている符号は下記の通りである。すなわち、23はEAGLE 2000 ガラス、25は顕微鏡写真撮影に用いられた支持体、27はクリストバライト結晶、29はクリストバライト結晶を取り囲む嚢体である。本図から明らかなように、クリストバライト結晶は内部欠陥を構成することに加えて、ガラスシートの外表面の平滑性にも悪影響を与えている。
嚢体29の分析により、残りのガラス中のシリカ濃縮とホウ素減損が明らかになった。本発明によれば、この観察は、ガラスを液化温度よりも低い温度に冷却した結果生じる正常な失透以外に、EAGLE 2000 ガラスの何らかの失透原因を示すものとして解釈された。特に、この観察は、失透の原因としてシリカ濃縮が著しいガラスを示していると解釈された。
上記嚢体の分析に加えて、降下管19に対してアイソパイプ13および供給パイプ9を移動させた後の試験操業において、EAGLE 2000 ガラスの高いレベルの失透が観察された。この観察により、失透の原因が、降下管と供給パイプとの連結部における自由表面21にあるとの仮説が導き出された。
この仮説を試験するために、停滞するEAGLE 2000 ガラスが停滞する1737ガラスとは異なる振舞いを示すかどうかを測定する研究室実験を行なった。この実験は下記のように行なった。1737ガラスとEAGLE 2000 ガラスとのサンプルを切断し、洗浄し、45mm×40mm×深さ10mmの寸法を有する四角の白金坩堝内で約5mmの厚さに積み上げた。上記坩堝の寸法は、ガラスが坩堝の壁に接触することによって生じるエッジ効果を避けるのに十分な表面積を提供し、かつ密度勾配または温度勾配による垂直混合の影響を避けるために十分に狭いものである。
坩堝を誘導加熱炉内に配置し、1200℃、1250℃および1300℃で2日、4日および8日加熱した。熱処理後、サンプルを各坩堝の中心部から切り出し、エポキシ内に注封し、電子マイクロプローブ装置を用いた化学的分析用に研磨した。この分析は、表面下40μmの点から2.49mmの深さまで50μmの間隔で行なった。装置の較正は特性の良い1737ガラスを用いてを行なった。
分析の結果は図5A(1737SiO)、図5B(EAGLE 2000 SiO)、図6A(1737B)、図6B(EAGLE 2000B)に示されている。これらの図におけるデータは、公称SiO濃度および公称B濃度(上述参照)に標準化されている。1737SiOとEAGLE 2000 SiOとでは、異なる縦軸目盛が用いられていることに注目されたい。表示されたすべてのデータは、上述の温度において96時間(4日)熱処理したものである。
EAGLE 2000 ガラスについては、1737ガラスと比較すると、SiOがより濃縮され、Bがより減損していることがこれらのグラフから明らかである。さらに、EAGLE 2000 ガラスについては、表面からのバルク組成の変化が1737ガラスよりも遠くまで及んでいる。この後者の現象は、1250℃で96時間熱処理した1737ガラス(白丸)およびEAGLE 2000 ガラス(黒丸)のSiO濃縮とB減損をそれぞれ示す図7Aおよび図7Bにおいて最も明瞭に見ることができる。
図5Aおよび図5Bを考察すると、シリカ濃縮とホウ素減損は温度によって左右され、かつ濃縮と減損のレベルが1300℃において特に大きいことが示されている。
図7Cは、上述のように用意され、かつ1300℃で96時間誘導加熱炉内に保持されたEAGLE 2000 ガラスのサンプルの表面の顕微鏡写真である。表面上に結晶が存在することが明白である。図7Dは、同様の態様で処理された1737ガラスの結晶が存在しない表面を比較のために示す。このような結晶化は、1200℃および1250℃で96時間熱処理されたEAGLE 2000 ガラスにも観察されるが、1737ガラスについては観測されない。
図7Cおよび図7Dの表面結晶化試験は、失透が生じやすいガラスを特定するのに便利な方法を提供する。したがって、一般論として、失透が生じやすいガラスは、1300℃で8日間熱処理したときに表面結晶を生じるガラスである。この試験を用いると、EAGLE 2000 ガラスは失透が生じやすいガラスであり、1737ガラスは失透が生じにくいガラスであることが判る。
図5〜図7の実験は、特にEAGLE 2000 ガラスおよび1737ガラスに関するものであるが、観察された結果は、一般に他のガラス組成にも適用可能であり、特に、液晶基板の作成に用いられる、失透が生じやすいアルミノ硼珪酸ガラスに適用可能である。アルカリ性アルミノ硼珪酸ガラスからのホウ素の不安定さは、工業的溶融用途において良く記録されてきた。高温で停滞するガラスは、特に炉の雰囲気中にホウ素およびアルカリを失いやすく、残りのガラス組成の安定部分において濃縮が生じる。ホウ素およびアルカリが失われると、シリカが著しく濃縮された表面層が形成される。濃縮が進むにつれて、この表面層の組成がその液相線の下方に移り、クリストバライトになる。
図5A,図6Aおよび図7に示された1737ガラスのデータのみでなく、このガラスの製造中の振舞いは、1737ガラスがいくらかのBの減損とSiOの濃縮とを示すとしても、このガラスについての変化の量および変化の空間的分布は、降下管119および供給パイプ19の間の表面が停滞しない結果として、深刻な失透問題を起こすほど十分なものではない。一方、図5B,図6Bおよび図7に示されたEAGLE 2000 ガラスに関するデータのみでなく、試行的な製造試験の結果は、このガラスがこの問題の影響を受けやすいことを示している。一般論として、SiO濃度が60重量%以上、および/またはB濃度が9〜10重量%以上の範囲内にあるアルミノ硼珪酸ガラスは、失透が生じやすく、かつ本発明を用いて、完成したガラス内の失透欠陥に対処する必要があるガラスである。
概略的に言うと、高濃度シリカガラスおよび/または高濃度ホウ素ガラスに関する本発明の失透問題に対する解決法は、溶融ガラスの自由表面が、完成したガラス内にクリストバライト結晶の生成を導くレベルのSiOの濃縮および/またはBの減損を避けるのに十分な活性化を受けるように、溶融ガラス31に対する降下管19の位置を選択することを基本とする。
このような表面活性化を達成する一つの方法は、図8および図9に示すように、降下管を公称自由表面21Nの上方に位置させることである。これにより、公称自由表面21Nの上方にある自由表面21を生じさせる。この自由表面21を形成するガラスは、連続的に新鮮なガラスに置換され、かくして、表面に生じる可能性のあるシリカの濃縮および/または酸化硼素の減損が、完成したガラス内に失透欠陥を生じさせるレベルに達する機会が失われる。実際に、降下管を公称自由表面21Nの上方に引き上げると、失透が生じやすいガラスから図4に示された種類の失透欠陥が排除されることが判明した。
しかしながら、本発明によれば、降下管19の出口端20を公称自由表面21Nの上方に位置させると、完成したガラス内にそれ自体欠陥を誘発することが判明している。この場合の欠陥は、図10に示されている種類のガス欠陥(気泡欠陥)である。
いかなる特定の動作理論にも束縛されるつもりはないが、降下管19の出口端20のエッジがガス雰囲気33にさらされているので、このエッジを通過する溶融ガラスがこのエッジを通過することによってこれらの欠陥が発生する可能性がある。このエッジには常に或る粗さがあるので、エッジが溶融ガラスを部分的に変形させる(部分的に切断する)可能性がある。これらの変形が元に戻るときに、溶融ガラスから逃れられない少量のガス雰囲気(小さな気泡)を取り込み、これが完成したガラスにおける気泡欠陥となる。気泡欠陥形成に関し、他の可能性あるメカニズムは、溶融ガラスが降下管を出るときの折込みまたは包み込みである。この現象は通常、降下管の出口端を、溶融ガラスの公称自由表面の上方に持ち上げることを必要とする。
一見したところ、これらの気泡欠陥は明らかに問題ではあるが、動作上の観点からは、これらは本発明の利点でもある。何故ならば、これらは溶融ガラスの公称自由表面に対する降下管の出口端の望ましい位置を特定する手順を提供するからである。
この手順は、例えば、失透が生じやすいガラス内に失透欠陥を生じさせる、降下管の出口端が溶融ガラス中に没入した状態において、上記出口端の適切な位置を探査することから始めることができる。(勿論、ここでの教示に基づく探査手順を、降下管の出口端のより高い位置において開始することもできる。)次に、完成したガラス内に気泡欠陥が現れるまで降下管を上方へ移動させる。この位置では、気泡欠陥は存在するが失透欠陥の問題は排除される。次に、完成したガラス内に気泡欠陥が現れなくなるまで降下管を下方へ移動させる。実際に、この位置では(さらに多少下降させても)、失透を生じやすいガラス内に失透欠陥が再び現れることはない。したがって、この方法によれば、失透を生じやすいガラス内から失透欠陥も気泡欠陥も効果的に排除される。
気泡欠陥を排除するための降下管の下方への移動により、図11および図12に示されているように、降下管の出口端を本質的に自由表面の位置に、または自由表面よりも低い位置、例えば自由表面よりも約5mm下方の位置に持ってくることができる。降下管の出口端が溶融ガラス中に没入した場合には新鮮なガラス自由表面をオーバーフローすることはないが、自由表面はなおも機械的および/または拡散的な力によって十分に活性化されて、失透欠陥の形成を回避する。
自由表面に一致させた構成、または自由表面よりも下方にした構成を用いることはできるが、降下管の出口端と溶融ガラスの公称自由表面との間の間隔がさほど大きくなければ、図8および図9に示された非没入構成が好ましい。実際には、10〜30mm、好ましくは15〜25mm、例えば約20mmの間隔によって良好に動作することが判明している。本発明の具体的な用途に対して用いられる特定の間隔を含む代表的な間隔は、使用される装置のみでなく溶融ガラスの粘度の関数であることを理解すべきである。本開示内容に基づけば、特定の装置構成および溶融ガラスの粘度に対する適切な間隔は、当業者であれば直ちに規定することができるであろう。
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明しかつ図示したが、本発明の精神および範囲から離れることなしに種々の変形が可能なことを理解すべきである。例えば、降下管の出口端の望ましい位置を特定するための上述の手順は、フュージョン法の操業を開始する度に適用する必要はないが、それよりも、本発明を適用する以前からの知識を用いた、降下管の位置を特定する手順を反復することなく、直ちに降下管の望ましい位置を設定することができるのである。同様に、本発明の最も価値のある用途は、失透が生じやすいガラスのフュージョン法による製造ではあるが、本発明は、失透が生じにくいガラスについても、悪影響なしに、工程の動作範囲を拡大する効果的な可能性をもって適用することができる。
本発明の範囲および精神から離れることのないその他の種々の変更が可能なことは、当業者であれば上述の記載から明らかであろう。別紙の特許請求の範囲は、ここに記載された具体的な実施の形態のみでなく、このような変形、変更および均等物をも包含することを意図するものである。
平坦なガラスシートを作成するためのオーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン法 に用いる供給パイプおよびアイソパイプに関する構造を表す概略図である。 降下管の出口端が供給パイプ内の溶融ガラスの公称自由表面の下方にある、降下管と供給パイプとの間の連結部を示す概略図である。 図2の降下管と供給パイプとの間の連結部の拡大図である。 本発明が取り組む種類の結晶欠陥(失透欠陥)の顕微鏡写真である。 1737ガラスのSiOの表面濃縮をプロットしたグラフである。 EAGLE 2000 ガラスのSiOの表面濃縮をプロットしたグラフである。 1737ガラスのBの表面減損をプロットしたグラフである。 EAGLE 2000 ガラスのBの表面減損をプロットしたグラフである。 1737ガラス(白丸)とEAGLE 2000 ガラス(黒丸)とのSiOの表面濃縮をプロットしたグラフである。 1737ガラス(白丸)とEAGLE 2000 ガラス(黒丸)とのBの表面減損をプロットしたグラフである。 1300℃で96時間熱処理したあとのEAGLE 2000 ガラスのサンプルの表面の顕微鏡写真である。 1300℃で96時間熱処理したあとの1737ガラスのサンプルの表面の顕微鏡写真である。 降下管の出口端が供給パイプ内の溶融ガラスの公称自由表面の上方にある、降下管と供給パイプとの間の連結部を示す概略図である。 図8の降下管と供給パイプとの間の連結部の拡大図である。 本発明が取り組む種類のガス欠陥(気泡欠陥)の顕微鏡写真である。図示された欠陥は、約0.7mmの厚さに延伸されたガラスに関するフュージョンラインにおいて見られる気泡欠陥の種類の典型である。この欠陥は、239μmの長軸と42μmの短軸とを有する。写真はガラスシートを見下ろした状態で撮られた。 降下管の出口端が本質的に供給パイプ内の溶融ガラスの公称自由表面にある、降下管と供給パイプとの間の連結部を示す概略図である。 図11の降下管と供給パイプとの間の連結部の拡大図である。
符号の説明
9 供給パイプ
11 収集樋
13 アイソパイプ
15 アイソパイプの底端
17 引っ張り装置を概略的に示す矢印
19 降下管
20 降下管の出口端
21 溶融ガラスの実際の自由表面
21N 溶融ガラスの公称自由表面
23 EAGLE 2000 ガラスサンプル
25 EAGLE 2000 ガラスサンプルの支持体
27 クリストバライト結晶
29 クリストバライト結晶を取り囲む嚢体
31 供給パイプ内の溶融ガラス
33 自由表面上方の大気
35 気泡欠陥

Claims (10)

  1. (a)第1の断面寸法を有する第1の導管と、
    (b)出口端と第2の断面寸法とを有する第2の導管とを備えた、
    フュージョン法によって板ガラスを製造するのに用いるための溶融ガラス送出装置であって、
    (イ)前記第1の導管が、前記第2の導管から溶融ガラスを受け取り、
    (ロ)前記第1の導管の一部が、前記第2の導管の一部を取り囲み、
    (ハ)前記第1の導管と前記第2の導管との間に溶融ガラスの自由表面が形成されるように、前記第1の断面寸法が前記第2の断面寸法よりも大きく、
    (ニ)前記第1の導管と前記第2の導管との間の溶融ガラスが公称自由表面を画成し、前記第2の導管の出口端は、前記公称自由表面の上方10mmから30mmの間にあることを特徴とする溶融ガラス送出装置。
  2. (a)前記第2の導管の、前記第1の導管によって取り囲まれている部分が垂直方向を向いており、
    (b)記第2の導管の出口端は、前記公称自由表面の上方15mmから25mmの間にあることを特徴とする請求項1記載の送出装置。
  3. フュージョン法によって板ガラスを製造する装置に溶融ガラスを提供する方法であって、該方法が、
    (a)第1の断面寸法を有する第1の導管を提供し、
    (b)出口端と、前記第1の断面寸法よりも小さい第2の断面寸法とを有する第2の導管を提供し、
    (c)前記第2の導管の一部を前記第1の導管の一部内に入れ子にし、
    (d)溶融ガラスを前記第2の導管外に流出させかつ前記第1の導管内に流入させ、これにより前記溶融ガラスが前記第1の導管および第2の導管との間に自由表面を形成し、
    (e)前記第1の導管と前記第2の導管との間の溶融ガラスが公称自由表面を画成し、前記第2の導管の出口端が、前記公称自由表面の上方10mmから30mmの間にあるようにすることを特徴とする方法。
  4. (a)前記第2の導管の、前記第1の導管によって取り囲まれている部分が垂直方向を向いており、
    (b)前記第1の導管と前記第2の導管との間の溶融ガラスが公称自由表面を画成し、前記出口端が前記公称自由表面の上方15mmから25mmの間にあることを特徴とする請求項記載の方法。
  5. (a)前記第2の導管の入れ子にされた部分が垂直方向を向いており、
    (b)前記第1の導管と前記第2の導管との間の溶融ガラスが公称自由表面を成し、前記ステップ(e)が、
    (イ)前記第2の導管の出口端が前記公称自由表面の上方の所定の地点にくるように前記第1および第2の導管を離れる方向に移動させて、完成した板ガラス内に気泡欠陥を出現させ、
    (ロ)完成した板ガラス内に気泡欠陥が出現しなくなるまで、前記第1および第2の導管を近づく方向に移動させることを含むことを特徴とする請求項記載の方法。
  6. 前記ステップ(e)が、完成した板ガラス内に失透欠陥を生じさせない限り、完成した板ガラス内にもはや気泡欠陥が出現しなくなった点を超えて、前記第1および第2の導管を近づく方向に移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項記載の方法。
  7. 第1の断面寸法を有する第1の導管と、
    出口端と第2の断面寸法とを有する第2の導管とを備えた、
    フュージョン法によって板ガラスを製造するのに用いるための溶融ガラス送出装置であって、
    前記第1の導管が、前記第2の導管から溶融ガラスを受け取り、
    前記第1の導管の一部が、前記第2の導管の一部を取り囲み、
    前記第1の導管と前記第2の導管との間に溶融ガラスの自由表面が形成されるように、前記第1の断面寸法が前記第2の断面寸法よりも大きく、
    前記第1の導管と前記第2の導管との間の溶融ガラスが公称自由表面を画成し、前記第2の導管の出口端は、前記公称自由表面の位置または上方にあることを特徴とする溶融ガラス送出装置。
  8. 前記第2の導管の出口端は、前記公称自由表面の位置にあることを特徴とする請求項7記載の送出装置。
  9. 前記第2の導管の出口端は、前記公称自由表面の上方にあることを特徴とする請求項7記載の送出装置。
  10. 前記第2の導管の出口端が前記公称自由表面の上方10mmから30mmの間にあることを特徴とする請求項9記載の送出装置。
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