JP4320188B2 - 一塩基置換検出方法及び一塩基置換検出用キット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオインフォマティクス(生命情報科学)分野において特に有用な一塩基置換検出方法及びその方法を用いた一塩基置換検出用キットに関し、特に遺伝子配列における一塩基置換(point mutation)を簡便且つ迅速に検出する一塩基置換検出方法及び一塩基置換検出用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトゲノム配列が解読された今日の研究目標の1つは、遺伝子の同定、機能の解析、さらに遺伝子発現や機能に影響して個体差を決める遺伝子の多様性である。ここで、核酸塩基配列中の一塩基の違いから生じる遺伝子の個体差のことを一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP) と呼び、遺伝子中に点在するSNPが各種疾患と強く関連することが明らかとなっている。
【0003】
現在、この一塩基置換を検出する方法としては、制限酵素で切断したDNA断片をゲルにより分離した後、色素でDNA断片を染色・検出するという電気泳動法が挙げられる。この方法は汎用されているものの、分離や染色に必要な時間が長く、迅速性に欠けるという欠点がある。
【0004】
また、マイクロアレイ技術によって所定のDNAが微細配列された、いわゆるDNAチップと呼ばれるバイオアッセイ用の集積基板も、一塩基置換の検出に利用され始めている。このDNAチップは、ガラス基板やシリコン基板上に多種多数のDNAオリゴヌクレオチド鎖やcDNA等が集積されていることから、一度に多数の遺伝子検査が可能であり、臨床検査現場等への適用が期待されている。しかしながら、核酸塩基のミスマッチ形成に由来するDNA二本鎖の安定性を原理とする手法であるため、塩基配列によってはその温度制御が困難であり、さらに放射性物質や蛍光色素を被検体自体に修飾する前処理が必要である等の問題がある。
【0005】
さらに、被検体の増幅と検出を同時に行うリアルタイムPCR法が、核酸増幅法による一段階の迅速な定量測定の技術として、近年普及しつつある。しかしながら、増幅反応における複雑な温度制御、プローブの導入も含めた各遺伝子配列に適用するプライマーの設計が複雑である上に、増幅装置や条件によって結果が異なる場合も少なくなく、再現性の面においても課題を残している。
【0006】
このように、従来の遺伝子変異を検出する技術は、精密な温度制御、煩雑な被検体の前処理、測定までの時間が長い等の問題があり、簡便且つ迅速に遺伝子検査を行うことが不可能であった。
【0007】
一方、下記非特許文献1には、ミスマッチ塩基対に結合する分子リガンドを固定化した表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)センサーを利用した新規な一塩基置換検出方法が提案されている。この文献記載の方法によれば、SNPを持つ2種類のDNAからミスマッチ塩基対を含むヘテロDNAを作成し、このDNA溶液をナフチリジン二量体が固定化されたSPRセンサーチップ上に流してSPR信号強度を検出することにより、一塩基置換を迅速に検出することができる。
【0008】
【非特許文献1】
中谷和彦,山東信介,齋藤烈 著,「表面プラズモン共鳴を利用した合成リガンドによるDNA中グアニン−グアニンミスマッチの検出法(Scannnig of guanine-guanine mismatches in DNA by synthetic ligands using surface plasmon resonance)」,ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology),2001年1月,第19号,p.51−55
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この非特許文献1に記載の技術では、一塩基置換を検出するために予めミスマッチ塩基対を含むヘテロDNAを作成する必要があり、SPRセンサーを用いる必要もあるため、より簡便且つ迅速に遺伝子検査を行う方法が望まれている。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、工程数を極力減らし、簡便且つ迅速に遺伝子の一塩基置換を検出する一塩基置換検出方法及び一塩基置換検出用キットを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明に係る一塩基置換検出方法は、一塩基置換部位を有する一本鎖の標的核酸と相補的であり、且つ該一塩基置換部位に対応する対応塩基が除かれた一本鎖の検出用核酸を調製する工程と、上記標的核酸と上記検出用核酸とで二本鎖核酸を形成する工程と、上記二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を有するレセプターを添加し、上記一塩基置換部位と水素結合を形成させる工程と、上記レセプターの蛍光強度を測定する工程とを有する。
【0012】
ここで、上記レセプターは、複素環式芳香族基を有し、上記一塩基置換部位との水素結合形成及び上記対応塩基の周囲の塩基とのスタッキング相互作用により安定化されることで、上記一塩基置換部位と対を形成するものが望ましい。具体的には、ナフチリジン誘導体、キノリン誘導体、プテリジン誘導体、クマリン誘導体及びインダゾール誘導体からなる群の少なくとも1つであり、例えば2−アミノ−7−メチルナフチリジン又は2−アミノ−4−オキソプテリジンである。
【0013】
また、本発明に係る一塩基置換検出用キットは、一塩基置換部位を有する一本鎖の標的核酸と相補的であり、且つ上記一塩基置換部位に対応する対応塩基が除かれた、上記一本鎖の標的核酸とで二本鎖核酸を形成する一本鎖の検出用核酸と、上記二本鎖核酸に添加して、上記一塩基置換部位と水素結合を形成する水素結合性及び発蛍光性を有するレセプターとを備え、上記レセプターは、プテリジン誘導体、クマリン誘導体及びインダゾール誘導体からなる群の少なくとも1つであり、該レセプターを上記一塩基置換部位との水素結合形成及び上記対応塩基の周囲の塩基とのスタッキング相互作用により安定化させることで、上記一塩基置換部位と対を形成させて、該レセプターの蛍光強度を測定する。
【0014】
【発明の実施の形態】
一般に、水素結合を利用する核酸塩基認識では、レセプター分子の水素結合様式や数を変化させることで、比較的容易に高い塩基選択性を獲得できる特徴を持つ。この際、完全水溶液中では水素結合形成に基づく認識機能の発現は期待できないため、従来の研究の多くは、クロロホルム中のような無極性溶媒環境下に限定されていたが、溶媒中の核酸が変性、沈殿する要因ともなっていた。
【0015】
そこで、本実施の形態では、図1に概念的に示すように、SNPに関連する標的塩基11を含む一本鎖の標的核酸10とハイブリダイゼーションさせる一本鎖の検出用核酸20のうち、標的塩基11に対応する位置の塩基を予め除き、脱塩基部位21としておく。そして、これらの標的核酸10及び検出用核酸20をハイブリダイゼーションさせることで標的塩基11の周辺に意図的に疎水場空間を構築した後、この疎水場空間に水素結合型のレセプター分子30を挿入する。
【0016】
このように、核酸塩基を除いて構築された疎水場空間内に水素結合性のレセプター分子30を挿入し、標的塩基11と水素結合を形成させることで、完全水溶液中においても効果的に核酸塩基認識を行い、標的塩基11の変異を検出することができる。
【0017】
ここで、本実施の形態で分析可能な標的核酸10としては、例えばヒトや植物由来のDNA、cDNA等が挙げられるが、特に限定されず、必要に応じて希釈、濃縮、増幅を行う。
【0018】
また、水素結合性を有するレセプター分子30としては、水素結合部位を有し、発蛍光性であるような試薬が望ましい。具体的には、水素結合部位を少なくとも一段、好ましくは複数段有し、脱塩基部位に隣接する核酸塩基とスタッキングできるような複素環式芳香族基を有する試薬が望ましい。特に水溶性を有する試薬が好ましいが、非水溶性の場合には有機溶媒を微量用いることにより、対応が可能である。このようなレセプター分子としては、例えばナフチリジン誘導体、キノリン誘導体、プテリジン誘導体、クマリン誘導体、インダゾール誘導体等が挙げられる。
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0020】
【実施例】
以下の実施例では、レセプター分子として、以下の化学式に示すようなナフチリジン誘導体である(a)2−アミノ−7−メチルナフチリジン(AMND)と、プテリジン誘導体である(b)2−アミノ−4−オキソプテリジン(プテリン)とを準備した。このうち、プテリンは和光純薬株式会社から購入し(Cat.No.539-32611)、AMNDは、文献「E.V.Brown, J. Org. Chem., Vol.30, p1607, 1965」を参考にして、1,1−ジメトキシブタノンから合成した。
【0021】
【化1】
【0022】
この2つのレセプター分子は発蛍光性を有し、後述するように、検出用DNAの脱塩基部位に挿入されたときに標的塩基と相互作用し、標的塩基の違いに基づき蛍光強度が変化するため、蛍光強度を測定することで一塩基置換を検出することができる。
【0023】
ここで、DNAとレセプター分子とを混合する際、レセプター分子は、該レセプター分子を含有する溶液の形態で混合してもよく、粉末や固形状の形態で混合してもよい。また、蛍光測定は、UVランプを用いて目視で行ってもよく、蛍光分光器、蛍光顕微鏡、デンシトメーター等の機器を用いてもよい。
【0024】
また、レセプター分子による一塩基置換検出の効果を検証するために、以下のような検出用DNA(配列A)と標的DNA(配列B)とをモデル配列として、株式会社日本遺伝子研究所に受注して合成した。
(配列A)5'−TCCAGXGCAAC−3'(配列番号1)
(配列B)3'−AGGTCNCGTTG−5'(配列番号2〜5)
ここで、上記配列中、Xは脱塩基部位(AP site)であり、具体的には以下の化学式に示すようなテトラヒドロフラニル残基(dSpacer)を示す。また、NはG(配列番号2),C(配列番号3),A(配列番号4),T(配列番号5)の何れかを示す。
【0025】
【化2】
【0026】
実施例1
DNA融解温度(Tm)の測定
実施例1では、二本鎖が一本鎖に解離する融解温度(melting temprature;Tm)を測定し、レセプター分子の添加前後におけるTm値の変化から、DNAとの相互作用を検討した。具体的には、脱塩基部位を含む一本鎖の検出用DNA(上記配列A)と被検体となる一本鎖の標的DNA溶液(上記配列B)とがアニーリングした二本鎖DNA溶液が30μM、イオン強度調節剤としてNaClが100mM、緩衝剤として1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含むカコジル酸ナトリウム(pH7.0)が10mM、レセプター分子としてAMND又はプテリンがそれぞれ580μM、290μMとなるようにMilliQ水を加えて調製したDNA溶液を毎秒1.5℃の割合で加熱してTm値を測定した。
【0027】
ここで、一本鎖DNAの濃度は、文献「Puglisi J.D. et al., Methods in enzymology, Vol.180, p304-p325, 1989」を参考にして、モル吸光係数算出法を用いて吸光度で調整した。この際、脱塩基部位を含む一本鎖DNA(上記配列A)のモル吸光係数は、TCGGAの吸光係数とGCAACの吸光係数との和とした。また、アニーリングは、サーマルサイクラーを用いて75℃で10分間加熱した後、毎秒3℃の割合で5℃まで冷却し、毎秒1℃の割合で20℃まで再度加熱することにより行った。
【0028】
脱塩基部位Xに対応する標的塩基NがG,C,A,Tである場合のそれぞれについて、レセプター分子の添加前のTm値(Tm(−))、添加後のTm値(Tm(+))及びその変化量(ΔTm)の測定結果を以下の表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、AMNDを添加した場合には、標的塩基NがA<G<T<Cの順でTm値が上昇しており、AMNDのピリミジン塩基選択性が確認できる。一方、プテリンを添加した場合には、標的塩基NがGである場合にTm値が有意に上昇しており、プテリンのグアニン選択性が確認できる。
【0031】
また、N=Cである二本鎖DNAを30μM含むDNA溶液にAMNDを添加した場合のTm値のAMND濃度依存性について検討した。結果を図2に示す。図2に示すように、AMND添加によるTm値の上昇は比較的低濃度から生じ、500μMの濃度以上でほぼ完全に上昇が飽和に達している。
【0032】
実施例2
CDスペクトルの測定
実施例2では、二本鎖のCDスペクトルを測定し、レセプター分子の添加前後におけるCDスペクトルの変化から、DNAとの相互作用を検討した。具体的には、脱塩基部位を含む一本鎖DNA(上記配列A)と被検体となる一本鎖DNA溶液(上記配列B)とがアニーリングした二本鎖DNA溶液が30μM、NaClが100mM、EDTAが1mM、カコジル酸ナトリウム(pH7.0)が10mM、レセプター分子としてAMNDが72.5μMとなるようにMilliQ水を加えて調製したDNA溶液について、CDスペクトルを測定した。
【0033】
脱塩基部位Xに対応する標的塩基NがA,C,G,Tである場合のそれぞれについて、AMNDの添加前(破線)及び添加後(実線)のCDスペクトルの結果を図3(a)〜(d)に示す。図3に示すように、標的塩基NがC,Tのときに選択的にCDスペクトルが変化していることが確認される。これは実施例1におけるAMNDのピリミジン塩基選択性の結果を支持するものであった。
【0034】
また、N=Cである二本鎖DNAを30μM含むDNA溶液にAMNDを添加した場合のCDスペクトルのAMND濃度依存性について検討した。結果を図4に示す。なお、図4には、二本鎖DNA溶液に72.5μMのAMNDを添加する前(破線)と添加した後(実線)の吸光度と、580μMのAMNDの吸光度とを併せて示している。図4に示すように、AMND濃度の上昇に応じて、特に245nm付近及び280nm付近でモル楕円率θが上昇しており、30μMの濃度以上でほぼ完全に上昇が飽和に達している。
【0035】
波長が278.5nmのときのAMND濃度とモル楕円率θとの関係を図5に示す。図5に示すように、AMND添加によるモル楕円率θの上昇は30μMの濃度以上でほぼ完全に飽和に達している。この結果、AMNDの標的塩基Nへの結合定数K11は106M−1以上と求められ、AMNDが脱塩基部位Xに安定に取り込まれていることが分かる。
【0036】
実施例3
立体構造の検討
実施例3では、標的塩基NがC,T,A,Gである場合のそれぞれについて、AMND添加後のAmber力場(Macro Model)による最安定化構造を検討した。シミュレーション結果を図6(a)〜(d)に示す。図6に示すように、標的塩基NがCの場合にはAMND分子が隣接するグアニン残基と重なっているのに対し、それ以外の場合には隣接するグアニン残基からずれていることが確認できる。この結果から、AMNDの塩基選択性が標的塩基Nとの水素結合形成、及び隣接する核酸塩基とのスタッキング相互作用に由来するものであることが推察される。
【0037】
実施例4
蛍光スペクトルの測定
実施例4では、レセプター分子添加後の蛍光強度の減少値(−ΔF.I.)を測定した。具体的には、脱塩基部位を含む一本鎖DNA(上記配列A)と被検体となる一本鎖DNA溶液(上記配列B)とがアニーリングした二本鎖DNA溶液が60μM、NaClが100mM、EDTAが1mM、カコジル酸ナトリウム(pH7.0)が10mM、レセプター分子としてAMND又はプテリンがそれぞれ60μM、15μMとなるようにMilliQ水を加えて調製したDNA溶液について、蛍光強度を測定した。蛍光測定は、光路長1mmの蛍光測定用セルを用い、反射蛍光測定により行った。
【0038】
脱塩基部位Xに対応する標的塩基NがG,C,A,Tである場合のそれぞれについて、AMND、プテリンの添加後における蛍光強度の減少値をそれぞれ図7、図8に示す。ここで、図7は励起波長355nm、蛍光波長402nmであり、図8は励起波長360nm、蛍光波長445nmである。図7、8に示すように、AMNDを添加した場合には、標的塩基NがC,Tといったピリミジン塩基のときに選択的に消光しており、プテリンを添加した場合には、標的塩基NがGのときに選択的に消光している。
【0039】
実施例5
実際の配列での検討1
実施例5では、実際のp53関連遺伝子の177番アミノ酸における一塩基置換を検出する効果を検証するために、以下のような配列を株式会社日本遺伝子研究所に受注して合成した。ここで、下記配列中、Xは脱塩基部位(AP site)であり、SはG(グアニン)又はC(シトシン)を示す。
(配列C)5'−CTGCCSCCACC−3'(配列番号6,7)
(配列D)3'−GACGGXGGTGG−5'(配列番号8)
上記配列Cにおいて、脱塩基部位Xに対応する標的塩基Sは、正常型ではC(配列番号6)であり、変異型ではG(配列番号7)である。これにより、177番アミノ酸はプロリンからアルギニンに変異する。本実施例では、このCからGへの変異を検出するために脱塩基部位Xを設け、構築された疎水場空間にレセプター分子を導入した。なお、レセプター分子としては、標的塩基SがCであるときに選択的に消光するAMNDを用いた。
【0040】
具体的には、被検体となる1Mの一本鎖DNA溶液(上記配列C)と脱塩基部位を含む1Mの一本鎖DNA溶液(上記配列D)とをそれぞれ25μl、500mM NaClを50μl、5mM EDTAを含む50mM カコジル酸ナトリウム(pH7.0)を50μl、125μM AMNDを50μl混合し、MilliQ水を加えて全量を250μlとした。得られたDNA溶液について、サーマルサイクラーでアニーリング処理を行ったものと行わなかったものとを準備し、蛍光強度を測定した。蛍光測定は、光路長1mmの蛍光測定用セルを用い、反射蛍光測定により行った。
【0041】
脱塩基部位Xに対応する標的塩基SがC,Gである場合のそれぞれについて、DNAを加えなかった場合の蛍光強度(F0)と、加えた場合の蛍光強度(F)との比(F/F0)を図9に示す。ここで、図9における励起波長は350nmであり、蛍光波長は400nmである。また、サンプル01はアニーリング処理を行わなかったDNA溶液であり、サンプル02,03はアニーリング処理を行ったDNA溶液である。図9に示すように、標的塩基SがCである場合に著しく消光しているため、消光の有無を検出することで、標的塩基SがC(シトシン)であるかG(グアニン)であるかを知ることができる。
【0042】
アニーリング処理を行わなかったDNA溶液をプラスチック製の透明チューブに入れ、励起波長302nmのUVランプを用いて蛍光を目視検出した結果を図10に示す。図10に示すように、標的塩基SがCである場合に著しく消光しており、目視でも確認可能である。
【0043】
実施例6
実際の配列での検討2
実施例6では、実際のp53関連遺伝子の175番アミノ酸における一塩基置換を検出する効果を検証するために、以下のような配列を株式会社日本遺伝子研究所に受注して合成した。ここで、下記配列中、Xは脱塩基部位(AP site)であり、RはG(グアニン)又はA(アデニン)を示す。
(配列E)5'−GAGGCRCTGCC−3'(配列番号9,10)
(配列F)3'−CTCCGXGACGG−5'(配列番号11)
上記配列Eにおいて、脱塩基部位Xに対応する標的塩基Rは、正常型ではG(配列番号9)であり、変異型ではA(配列番号10)である。これにより、175番アミノ酸はアルギニンからヒスチジンに変異する。本実施例では、このGからAへの変異を検出するために脱塩基部位Xを設け、構築された疎水場空間にレセプター分子を導入した。なお、レセプター分子として標的塩基RがGであるときに選択的に消光するプテリンを用いた以外は、実施例5と同様にして行った。
【0044】
脱塩基部位Xに対応する標的塩基RがG,Aである場合のそれぞれについて、DNAを加えなかった場合の蛍光強度(F0)と、加えた場合の蛍光強度(F)との比(F/F0)を図11に示す。ここで、図11における励起波長は360nmであり、蛍光波長は440nmである。また、サンプル01はアニーリング処理を行わなかったDNA溶液であり、サンプル02はアニーリング処理を行ったDNA溶液である。図11に示すように、標的塩基RがGである場合に消光しているため、消光の有無を検出することで、標的塩基RがG(グアニン)であるかA(アデニン)であるかを知ることができる。
【0045】
アニーリング処理を行わなかったDNA溶液について、励起波長302nmのUVランプを用いることで、蛍光を目視検出した結果を図12に示す。図12に示すように、対応塩基RがGである場合に消光しており、目視でも確認可能である。
【0046】
このように、本実施の形態における一塩基置換検出方法によれば、一塩基置換部位を有する一本鎖の標的DNAと、この標的DNAと相補的であり、且つ一塩基置換部位に対応する対応塩基が除かれた一本鎖の検出用DNAとで二本鎖核酸を形成させ、この二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を有するレセプター分子を添加して一塩基置換部位と水素結合を形成させ、このレセプター分子の蛍光強度変化を測定することにより、一塩基置換を効果的に検出することができる。
【0047】
特に、被検体となる標的DNAのラベル化や熱制御等の煩雑な操作が原則的に不要であるため工程数が非常に少なく、また、原理上二本鎖DNA自体の熱的な安定性に依存しないため、検出までの時間が非常に短時間であり、再現性にも優れている。また、UVランプを用いた目視による確認も可能であるため、特別な設備を持たない状況下においても検出が可能である。
【0048】
さらに、脱塩基部位を含む検出用DNAを基板に多数集積したDNAマイクロアレイを作製し、一塩基置換検出用キットとして用いることで、従来の欠点を克服したハイスループットな診断が可能となる。
【0049】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る一塩基置換検出方法によれば、一塩基置換部位を有する一本鎖の標的核酸と、この標的核酸と相補的であり、且つ一塩基置換部位に対応する対応塩基が除かれた一本鎖の検出用核酸とで二本鎖核酸を形成させ、この二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を有するレセプターを添加して一塩基置換部位と水素結合を形成させ、このレセプターの蛍光強度変化を測定することにより、一塩基置換を簡便且つ迅速に検出することができる。
【0050】
また、本発明に係る一塩基置換検出用キットによれば、従来の欠点を克服したハイスループットな診断が可能となる。
【0051】
【配列表】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:人工的に合成された11-merのオリゴデオキシヌクレオチドからなる配列。6番目のデオキシヌクレオチドが脱塩基部位とされる。
配列番号2:人工的に合成された配列
配列番号3:人工的に合成された配列
配列番号4:人工的に合成された配列
配列番号5:人工的に合成された配列
配列番号6:人工的に合成された配列
配列番号7:人工的に合成された配列
配列番号8:人工的に合成された11-merのオリゴデオキシヌクレオチドからなる配列。6番目のデオキシヌクレオチドが脱塩基部位とされる。
配列番号9:人工的に合成された配列
配列番号10:人工的に合成された配列
配列番号11:人工的に合成された11-merのオリゴデオキシヌクレオチドからなる配列。6番目のデオキシヌクレオチドが脱塩基部位とされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における一塩基検出の原理を説明する図である。
【図2】標的塩基がシトシンである場合のTm値のAMND濃度依存性を示す図である。
【図3】標的塩基がアデニン、シトシン、グアニン、チミンである場合のAMNDの添加前後のCDスペクトルを示す図である。
【図4】標的塩基がシトシンである場合のCDスペクトルのAMND濃度依存性を示す図である。
【図5】標的塩基がシトシンである場合のAMND濃度とモル楕円率との関係を示す図である。
【図6】AMND添加後のAmber力場(Macro Model)による最安定化構造を示す図であり、
【図7】AMND添加後の蛍光強度の減少値を示す図である。
【図8】プテリン添加後の蛍光強度の減少値を示す図である。
【図9】標的塩基がシトシン、グアニンである場合のAMND添加後の蛍光スペクトルを示す図である。
【図10】標的塩基がシトシン、グアニンである場合のAMND添加後の蛍光を示す図である。
【図11】標的塩基がシトシン、グアニンである場合のプテリン添加後の蛍光スペクトルを示す図である。
【図12】標的塩基がシトシン、グアニンである場合のプテリン添加後の蛍光を示す図である。
【符号の説明】
10 標的核酸、11 標的塩基、20 検出用核酸、21 脱塩基部位、30 レセプター分子
Claims (2)
- 一塩基置換部位を有する一本鎖の標的核酸と相補的であり、且つ該一塩基置換部位に対応する対応塩基が除かれた一本鎖の検出用核酸を調製する工程と、
上記標的核酸と上記検出用核酸とで二本鎖核酸を形成する工程と、
上記二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を有するレセプターを添加し、上記一塩基置換部位と水素結合を形成させる工程と、
上記レセプターの蛍光強度を測定する工程とを有し、
上記レセプターは、2−アミノ−4−オキソプテリジンであり、上記一塩基置換部位との水素結合形成及び上記対応塩基の周囲の塩基とのスタッキング相互作用により安定化されることで、上記一塩基置換部位と対を形成する一塩基置換検出方法。 - 一塩基置換部位を有する一本鎖の標的核酸と相補的であり、且つ上記一塩基置換部位に対応する対応塩基が除かれた、上記一本鎖の標的核酸とで二本鎖核酸を形成する一本鎖の検出用核酸と、
上記二本鎖核酸に添加して、上記一塩基置換部位と水素結合を形成する水素結合性及び発蛍光性を有するレセプターとを備え、
上記レセプターは、2−アミノ−4−オキソプテリジンであり、該レセプターを上記一塩基置換部位との水素結合形成及び上記対応塩基の周囲の塩基とのスタッキング相互作用により安定化させることで、上記一塩基置換部位と対を形成させて、該レセプターの蛍光強度を測定する一塩基置換検出用キット。
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