JP4331614B2 - 振動エア流れを使用する診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒトの上部気道の検査に関し、特には副鼻腔の機能と症状を特定するために使用され、さらにヒトの上部気道の各種疾病診断を補助するために使用される装置と方法に関する。
発明の背景
副鼻腔(paranasal sinus)は鼻を囲む顔の骨の内側にある空洞で、複数の細い小孔(ostia、以下「副鼻腔孔」という。)を介して鼻腔とつながっている。副鼻腔(sinus)の粘膜は鼻腔の粘膜とつながっている。上顎洞はこれら空洞の最大のものである。上顎洞の中間壁は、鼻の中間道につながっている。副鼻腔孔の障害は、副鼻腔炎の病因の主要部を占めている。
気体酸化窒素(NO)は、ヒトの呼吸気道系内に放出される。呼気内に見られるNOの主要部分は鼻の気道内で発生し、このNOは各種の採取技術によって非観血的に測定することができる。NOの多量発生は副鼻腔内で起こり、ここには誘導性NOシンターゼ(inducible NO synthase)が上皮細胞内に常時送り出されることが知られている。NOはまた、例えば鼻粘膜などの鼻の他の発生源からも放出されている。しかしながら、上部気道内の異なるNO発生源による鼻腔内に見出されるNOへの相対的寄与度を判断することは困難である。副鼻腔孔を介して鼻腔とつながる前記副鼻腔と、これら両空洞間でのガス変換率は、例えば前記副鼻腔孔の大きさなどによって異なる。開放された副鼻腔孔は、副鼻腔の信頼性を維持するために重要である。例えばウィルスに起因した粘膜膨張などによる副鼻腔孔の詰まりは、酸素圧力の低下、粘膜浮腫、粘膜繊毛搬送の低下、更にはバクテリア増殖をもたらす。これまでの調査では、鼻からのNOレベルは、例えば一次繊毛ジスキネジ(PCD)及び嚢胞性繊維症(CF)などの前記副鼻腔へ影響を与える気道障害により顕著に減少することが知られている。
副鼻腔炎は、ヒトに苦痛を与え、社会に多大の出費を引き起こす通常に見られる病気である。自主報告による米国内の慢性副鼻腔炎の罹患率は人口の約12%である。この障害の診断と治療には幾つかの問題が含まれている。例えば、頭痛、鼻漏、鼻の充血は非常によく見られ、しかしこれらの症状は必ずしも副鼻腔炎であることを示していない。したがって副鼻腔炎の真の罹患率はより低い。
副鼻腔の適切な換気は、副鼻腔を健全に保つために重要である。実際、前記副鼻腔孔の詰まりは副鼻腔炎の病因の主要要素であると考えられる。この詰まりは、隔膜偏在、鼻ポリープ、アレルギ鼻炎、又は最もよく見られるウィルス感染など、物理的又は粘膜原因によるものとみられる。治療の基本原則は存在している感染の治療であり、再発防止のための治療前後における副鼻腔の開放である。激しい感染性副鼻腔炎の医療措置では抗生物質が今でも基本となる治療方法となっている。加えて、副鼻腔の開放の改善目的で、鼻充血抑制剤及び外科的措置による抑制が慢性副鼻腔炎の阻止及び治療にしばしば用いられる。
従来の技術
米国特許第6,142,952号は、気道障害の検出と診断のための方法と装置について述べている。この'952号特許は、患者の気道に供給される振動成分又は強制探索信号を含んだ加圧呼吸可能ガスの圧力と流れのデータ測定に関する。前記ガスはマスクと柔軟ホースを含むインターフェース、及び振動発生器に結合された拡声器による振動成分又は強制探索信号により供給される。前記インターフェース内の呼吸可能ガスの圧力と流れが、患者の気道の特性を把握するために測定され、又は抽出される。
上顎洞の副鼻腔孔を介するガス変換の調査のための実験モデルが開発されている(Aust,R.氏、及びDrettner,B.氏著、Uppsala J Med. Sci, 79; 177-186, 1974)。この文献においてAust氏とDrettner氏はまず、pO2測定を行うための小型電極を上顎洞内に導入し、前記副鼻腔内の酸素濃度を連続して測定することからなる従来から知られた方法に言及している。Aust氏とDrettner氏はこれに代えて死体からモールド成形したゴム製の鼻と、上顎洞を代理する窒素を満たしたシリンジとを使用する実験モデルを開発した。前記鼻のモデルを通過するエアの流れが人工呼吸器により発生し、前記シリンジ内の圧力変化が測定された。ガス変換の測定が行われ、前記シリンジ内の酸素濃度が測定された。全てのモデル実験において呼吸数は一定とされたが、シリンジの容積、鼻のモデルとシリンジ間の接続部の直径は変化させることができた。シリンジの容積は上顎洞の容量を表し、前記接続部の直径は前記副鼻腔孔の直径を現している。この結果は、前記副鼻腔孔の直径によってガス変換が変化することを示している。
他の文献(Aust,R.氏、及びDrettner,B.氏著、Acta Otolaryng 78:432-435, 1974)には、生きた患者の上顎孔の機能サイズを測定する方法が述べられている。この方法は、下方気道を介して副鼻腔へ挿入されたカニューレを通して前記副鼻腔内に導かれたエア流れにより、開放された孔を持つ上顎洞内の圧力上昇の測定を基礎にしている。
上顎洞の開放を調査する更に他の従来方法は、呼吸、息吹き、臭いをかぐ間に鼻の導管と上顎洞の双方の圧力を測定することを基礎にしている。
非観血的テストには133キセノン洗浄があり、ここではエアと133キセノンの混合物が鼻腔内に吹き込まれる(Paulsson氏ほか、Ann Otol. Rhinol. Laryngol., 2001; 110:667-74)。副鼻腔内への通過はバルーンを膨らませることで対象者によって得られる増加圧力により促進される。133キセノンの洗浄は、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)が可能な閃光カメラにより監視される。前記洗浄ハーフタイムが、前記副鼻腔の換気の測定の尺度として使用される。
観血的テストは患者に苦痛を与え、実施が煩雑である。したがってこれらは日常の臨床業務への使用は適さない。副鼻腔口の開放を測定するために使用可能である簡便な非観血的検査が最も有用である。このテストは、副鼻腔炎発症のリスクがある対象者を特定する助けとなり得る。また、副鼻腔炎を抑制する目的の外科的又は薬事的抑制の効果を監視するために使用することもできる。
発明の概要
上述した問題は、ヒトの上部気道の症状、特にはヒトの単数又は複数の鼻腔の症状を分析するために使用される本発明に係る装置により解決することができる。ここで前記装置は、上部気道又はその一部に作用する振動エア流れを発生させ及び/又は維持し、そしてヒトの呼気中に含まれるガスの濃度及び/又は流れを測定して記録するための手段との接続に適した手段から構成されている。本発明の他の態様は、ヒトの上部気道、特にはヒトの単数又は複数の副鼻腔の症状を分析する助けとして使用するための方法に関する。ここでは鼻から排出されるエア中の少なくとも1つのガス成分の濃度及び/又は流れが、振動エア流れの存在下、非存在下で測定され、記録される。本発明の更なる特性と関連する利点とは、以下に参考として含まれる記述、例示、及び請求の範囲から明らかになろう。
本発明につき、添付図面を参照して以下により詳細に説明する。
発明の詳細説明
本願発明者らは、驚くことに振動エア流れの存在によって健常者の鼻からのNOの放出が大幅に増加するということを見出した。この増加は、副鼻腔からのNOによる大きな貢献が反映されたものと見られる。振動エア流れが存在する中での鼻からのNOの測定は非観血的な簡便なテストであり、例えば副鼻腔内でのNOの発生や、副鼻腔孔の機能(sinus ostial function)などといった上部気道の症状に関する有益な情報を提供し得る。
振動エア流れの外部供給源やヒトの発声によるハミング音は、エアを振動させ、これは副鼻腔と鼻腔間のエアの変換を増加させていると見られる。この現象は、ハミングによって得られる振動エア流れをシミュレートする2室モデルシステムにおいてNOレベルの大幅増加が見られたことからも確認されている。シリンジ内容積、NO濃度、及びシリンジ先端の直径(副鼻腔孔を代表する)が、これらのパラメータに対する物理的な類似値に選択された。副鼻腔孔の通常のサイズは2.4mmである。面白いことにNOレベルは、シリンジ先端の直径に強く依存することが見出された。これは、ヒトのハミングの間、又は振動エア流れが存在している間の鼻からのNOの増加は副鼻腔孔のサイズによって変わることを示している。加えて、副鼻腔のNO濃度とハミング振動数は、副鼻腔の換気に影響することが示された。その他の幾つかの要素が、前記2つの空洞間の変換率に影響している可能性はあり得る。
驚くことに、鼻へのNOS抑制剤の局所投与は、無発声呼吸の間では50%以上の鼻からのNO排出量を減少させるが、ハミングの間には鼻からのNOへの増加には何らの影響をも与えなかった。ここにおいても、この増加は副鼻腔内の強化された換気によるものであって、局所的な鼻のスプレイによって得られるものではないとの見方を支持するものである。本願発明者らは、ハミングが鼻内の他の発生源から放出されるNOをも増加させることを除外するものではない。例えば、振動エア流れは一般に、上皮細胞や液体層に溶解したNOの放出を増加させることもあり得る。しかしながら、以下の実験にも示すように、提示される方法では、まず副鼻腔を空にするための繰り返しのハミング動作と、それに続くNO測定を伴った無発声の鼻からの呼気動作から始めることであった。この方法により鼻から排出されるNOへの副鼻腔の貢献は最小化され、これは鼻粘膜のNO排出量の変化を明らかにする助けとなるだろう。
以上のような、ヒトと実験設備による調査によって確認された発見を基に、本願発明者らは上部気道の分析、特にはヒトの1つ又は複数の副鼻腔の症状を特定するために使用される装置を入手可能にしたもので、ここにおいて前記装置は、副鼻腔の換気を強化するに十分な振動数、持続時間、及び流れを有する振動エア流れを発生し、及び/又は維持するための手段を備えたもので、前記装置は、ヒトの呼気内に存在するガスの濃度及び/又は流れを測定して記録するための手段と接続するのに適している。1つの実施の形態では、前記ガスは体内発生のNOである。
本明細書において、「上部気道」の用語は、声帯から上に位置する気道を意味し、副鼻腔、鼻腔、鼻咽腔、上咽頭、中咽頭、口腔、下咽頭を含んでいる。
本明細書において、「鼻気道」の用語は、鼻孔から鼻咽腔まで延びる気道を意味している。
本明細書において、「体内発生ガス」の用語は、ヒトの体内で生み出されるガスを意味している。
本明細書において、前記上部気道の症状は、以下の内のいずれかが存在しないか又は存在していることを含めることを意味している。これらは:炎症性症状、気道感染症、感冒、腫瘍、薬物障害、解剖学的異常、副鼻腔孔の開放、副鼻腔のサイズ、副鼻腔の生物化学的状態、1つ又はそれ以上の副鼻腔に影響を与える副鼻腔炎、前記副鼻腔炎の位置、副鼻腔炎発症のリスク、副鼻腔の細菌学的状況、もしくはこれらの組み合わせであり、特に前記装置は、例えば副鼻腔に影響する一次繊毛ジスキネジ(PCD)、嚢胞性繊維症(CF)、鼻ポリープ、アレルギ性鼻炎、上部気道の炎症性症状、感冒、これらの組み合わせなどの病理学的な症状の有無、及びその位置などの副鼻腔の症状を診断するのに有用である。
本発明の1つの実施の形態によれば、副鼻腔の換気を強化するに十分な振動エア流れを発生、及び/又は維持するための手段は、前記エア流れを電子的又は機械的に発生する手段である。
好ましくは前記装置は片側測定に適したものであり、すなわち一時に1つの鼻孔から排出されるガスに対する振動エア流れの影響度を測定するものである。これは一方の鼻孔の測定を行う間に他方の鼻孔を塞ぐ鼻オリーブ(nasal olives)の使用により、又はマスクを使用するときには一時に1つの鼻孔を塞ぐことによって行うことができる。
他の実施の形態によれば、振動エア流れを発生及び/又は維持するための手段は、患者により、例えばハミングによって発生する振動エア流れの持続時間、振動数及び又は量を登録する手段であり、予め定められた持続時間、振動数、流れ及び/又は量が達成されたかを前記患者に表示するようなフィードバック機構を備えている。
本発明の1つの実施の形態によれば、前記振動エア流れは、1から1000Hzの間、好ましくは10から1000Hzの間、より好ましくは100から1000Hzの間、そして最も好ましくは100から500Hzの間の振動数で振動する。
本発明の他の実施の形態によれば、前記振動エア流れは、副鼻腔の共鳴振動数に近い振動数で振動する。
本発明の他の実施の形態によれば、前記エア流れ上部気道、及びエアに振動を発生させる音声発生装置に接続された発声器により音を発する。
本発明の好ましい実施の形態によれば、前記装置は、ヒトの呼気中に存在する第1のガスの濃度及び/又は流れを測定し、記録するための装置、及び前記第1のガスを含まない、あるいは僅かな量及び/又は既知の量の前記第1のガスを含む第2の呼吸ガスをヒトに供給するための装置への結合に適している。最も好ましくは前記第1のガスは酸化窒素であり、前記第2のガスは酸化窒素を含まない吸気に適したガスである。以上のような装置の1つの例は、NIOX(登録商標)NO分析機(スウェーデン、Solna、Aerocrine AB社)である。
体内発生、又は外因性の他のガスの濃度及び/又は流れを測定することも可能である。このようなガスの例には、酸化窒素(NO)、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、その他アルゴンやキセノンなどの適切な不活性ガスが含まれる。
更なる実施の形態は、NOの時間分布、すなわち時間及び/又は流れに対して濃度をプロットした時の曲線を分析する手段に関する。この分析は副鼻腔の動的作用の情報を提供し、これは充血、副鼻腔容積、副鼻腔孔の直径の程度と形状の間の差異を見出し、また検査中の各特定の患者の副鼻腔障害に内在する可能性のある病因の解明を可能にすることが想定される。例えばNOなどの呼気ガスの絶対量と、増加、減少、ピーク、勾配、安定値などの時間に対する変化などの解剖学的及び物理的な差異が明らかにされる。多数の患者から回収される患者データ、又は同一の患者の異なる状況又は異なる振動エア流れの振動数、流れ、持続時間を使用して行った測定からの回収データを使用し、追加の又はより正確な情報を得ることができる。このアプローチを利用すれば、以下の解剖学的及び物理的差異が明らかになろう。
−最適なサイズ/開放
−副鼻腔容積
−副鼻腔NO発生
−NO吸収
本発明は又、ヒトの上部気道、特にはヒトの1つ又は複数の副鼻腔の症状を分析するための方法を入手可能としており、ここでは振動エア流れの存在下または非存在下で鼻から排出されるエア中の少なくとも1つのガス成分の濃度及び/又は流れが測定され、記録される。
本発明の1つの実施の形態によれば、前記分析方法における振動エア流れは、1から1000Hzの間、好ましくは10から1000Hzの間、より好ましくは100から1000Hzの間、そして最も好ましくは100から500Hzの間の振動数で振動する。
本発明の他の実施の形態によれば、前記分析方法の振動エア流れは、副鼻腔の共鳴振動数に近い振動数で振動する。
本発明の他の実施の形態によれば、前記分析方法のエア流れは、上部気道、及びエアに振動を発生させる音声発生装置に接続された発声器により音を発する。
この方法の1つの実施の形態によれば、上部気道の症状には以下の1つが存在するか又は存在していない。これらは:炎症性症状、気道感染症、感冒、腫瘍、薬物障害、解剖学的異常、副鼻腔孔の開放、副鼻腔のサイズ、副鼻腔の生物化学的状態、1つ又はそれ以上の副鼻腔に影響を与える副鼻腔炎、前記副鼻腔炎の位置、副鼻腔炎発症のリスク、副鼻腔の細菌学的状況、もしくはこれらの組み合わせである。本方法の発明は特に、例えば副鼻腔に影響する一次繊毛ジスキネジ(PCD)、嚢胞性繊維症(CF)、鼻ポリープ、アレルギ性鼻炎、上部気道の炎症性症状、これらの組み合わせなどの病理学的な症状の有無などの副鼻腔の症状を特定するのに有用である。このように本発明は、これらの又は関連する症状/疾病のいずれかの診断に使用するための方法を提供することができる。
この方法による他の実施の形態によれば、上部気道の症状が、薬剤の投与又は治療的抑制の前後の少なくとも2つの機会で測定され、その結果は前記薬剤又は抑制の効果を評価するために使用される。
測定のために必要な前記振動エア流れは、テスト又は検査される患者にハミングによって達成される状態を模した振動エア流れを発生するよう促すことによって達成される。この場合、フィードバック機能、すなわち患者によって発生する振動エア流れの持続時間、振動数、流れ及び/又は容量を登録し、当該患者に対して予め定められた必要な持続時間、振動数、流れ及び/又は容量がいつ達成されたかを表示するなどの機能を含むことが必要とされ得る。
前記振動エア流れは又、人工的に発生させることができ、例えば1つ又は複数の副鼻腔などの上部気道又はその一部にこれを供給することもできる。
本発明の方法の1つの実施の形態によれば、ヒトの呼気内に存在する第1のガスの濃度及び/又は流れが測定され、この間に当該第1のガスを含まない、あるいは微量及び/又は既知の量の前記第1のガスを含んだ第2の呼吸ガスを患者に供給される。好ましくは前記第1のガスは酸化窒素であり、前記第2のガスは酸化窒素を含まない吸引に適したガスである。これらの機能を実施するに適した装置の一例は、NIOX(登録商標)NO分析器(スウェーデン、Solna、Aerocrine AB社)である。
前記方法はさらに、体内発生又は外因性の他のガスの濃度及び/又は流れの測定を含むことができる。このようなガスの例は、酸化窒素(NO)、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、アルゴンなどの適切な不活性ガスを含む。
更なる実施の形態では、NOの時間分布、すなわち時間及び/又は流れに対して濃度をプロットしたときの曲線の形状を分析するステップを含む。この分析は副鼻腔の動的作用の情報を提供し、これは充血、副鼻腔容積、副鼻腔孔の直径の程度と形状の間の差異を見出し、また検査中の各特定の患者の副鼻腔障害に内在する可能性のある病因の解明を可能にすることが想定される。例えばNOなどの呼気ガスの絶対量と、増加、減少、ピーク、勾配、安定値などの時間に対する変化などの解剖学的及び物理的な差異が明らかにされる。多数の患者から回収された患者データ、又は同一の患者の異なる状況又は異なる振動エア流れの振動数、流れ、持続時間を使用して行った測定からの回収データを使用し、追加の、又はより正確な情報を得ることができる。このアプローチを利用すれば、以下の解剖学的及び物理的差異が明らかにされ得る。
−最適なサイズ(開放)
−副鼻腔容積
−副鼻腔NO発生
−NO吸収
2室モデルの使用時、振動エア流れの存在下での人体での測定時、及び無発声の鼻からの呼気動作の間の測定時においてそれぞれ得られた曲線の比較を行った。前記2室モデルでは、副鼻腔を模したシリンジ内で新たなNOが発生しないためにNOの濃度は減少する。人体によるテストでは、前記曲線は同様な増加とピークを示すが(図1)、これらの値はテストされた測定者間でばらつく。しかしながらこの減少は、副鼻腔内でのNOの補充によって僅かであり、前記曲線の勾配、及び到達したプラトーのレベルはテストされた測定者間でばらついている。
このテストは、非観血的、迅速、客観的であることから明らかな利点を有している。さらにハミングの間の測定が、上部気道へ影響を与える条件に関するより多くの情報を得るため、そして例えば鼻の障害を有する患者と健常者からの変化するNO放出とをより明確に区別するために使用できるか否かを調査することは有益であろう。これらの障害には、例えばCF、PCD、鼻ポリープ、アレルギ性鼻炎が含まれる。
1.人体での測定
1.1.健常者
ハミングの間の鼻からのNOの特徴付け
アレルギ、鼻の疾病、喘息、又はその他の慢性肺症状を過去に経験していない10人の喫煙しないボランティア(年齢25〜47歳、男性6人)が集められた。呼気NOに対するATSガイドライン(American Thoraic Society, Am J Respir Crit Care Med 1999; 160:2104-17)を満たすよう設計された化学発光システム(chemiluninescence system、NIOX(登録商標)、スウェーデン、ストックホルム、Aerocrine AB社)により気道NO排出量(NO output)が測定された。分析装置は、標準のNOガス混合(10億に対して987部分(987ppb)、スウェーデン、AGA AB社)により較正された。口及び鼻による単一呼吸の呼気動作の間にNOレベルが測定された。鼻の測定には鼻を被う隙間のないマスクが使用され、口での呼気動作にはマウスピースが使用された。測定者は、鼻を通してNO非含有エアを吸気し、その後に無発声、鼻のハミング、口の発声のいずれかにより一定流量(0.20L/s)で10秒間の呼気動作を行った。前記一定流量は、コンピュータ化された流れ視認フィードバック・ディスプレイと組み合わされた前記分析システムの動的流れ抑制器により得られた。前記動的流れ抑制器は、機械的に流量を調整する弾性膜バルブを使用し、広範な呼気圧力幅の中でも僅かな誤差で0.20L/秒の呼気を維持する。
ハミング中の鼻からのNO排出量が、上述したように無発声の鼻による呼気動作の間に得られた値を差し引くことによって計算された(Lundberg氏ほか、Thorax 1999; 54:947-952; Palm氏ほか、Eur Resp J 2000; 16:236-41)。NO放出は、呼気動作の最後の80%の間での平均出力(nl/分)として計算された。
ハミングがNOの発生源を枯渇させるか否かを調査するため、測定者は各ハミング毎に異なる時間間隔(5秒、1分、3分)で5回連続してハミング動作をした。更に、無発声での鼻からの呼気動作を5秒間隔で繰り返した。この連続したハミング動作により得られた結果(下記参照)を基に、この調査における他の全てのハミングでは3分間の無発声期間を先行させた。
NOシンターゼ抑制の影響
測定者6人において、基礎となる鼻及び口からのNO測定が、ハミング及び無発声による両呼気動作の間に行われた。その後、食塩水2.5ml中にNG-L-アルギニン・メチルエステル(L−NAME)(英国、Poole、Sigma)15mgの溶液(2.2mM)、又は食塩水のみのいずれかがジェット噴霧器(米国、ペンシルバニア州、Somerset、 Devilbiss)により両方の鼻からランダム順で投与され、前記溶液投与後の20分にNO測定が繰り返された。
ハミングの間の流れ、圧力、振動数の影響
上述したモデルからの結果と人体テストの状態とを比較するため、前記測定者内の5人に対して追加の実験を行った。彼らは2つの一定流量(0.20及び0.25L/秒)で、抵抗なし、又は50cmH2OL−1s−1の抵抗下で、10秒間、無発声、鼻のハミング、口の発声のいずれかにより呼気動作をするよう依頼された。その後、3つの異なる振動数での鼻のハミング動作が要求された。振動数は、測定者の首にテープで固定したマイクロホンにより記録された。全ての呼吸動作の間の平均濃度からNO排出量が計算された。
結果
全てのハミングによる実験では、最初のNOピークと、これに続く段階的な減少とが観測された(図1)。鼻からのNO排出量の合計は、無発声での呼気動作に比較してハミング時の間では増加している(無発声(b)の呼気動作の間での471±73nL/分からハミング(a)の間では2233467±nL/分;p<0.001)(図1)。口からの排出NOは無発声呼気で144±20nL/分、発声時には152±20nL/分(p=0.22)だった。
各ハミング毎に3分の間隔を設けた5回の単一呼吸のハミング動作間で測定されたNO排出量は、個人間の変化が15%以下を示すほどの近似したものであった。一分の間隔では個人間の変化が70%近くとなった。5秒間隔では、NOは571±88nL/分のレベルの安定したプラトーに達するまで各動作ごとに段階的に減少し、これは最初のハミングの間の2233±467nL/分、p=0.002(図2)と対比される。全ての測定者において、4回の鼻のハミング動作の間にこの低いプラトーに達した。これに対し、5秒間隔の5回連続の無発声の鼻による呼気動作ではNO排出量に影響はなかった(図3)。しかしながら、繰り返しハミング動作直後に測定された無発声の鼻からのNO排出量は、全ての測定者において基礎の無発声のNOよりも低かった(384±39nL/分に対して261±35nL/分;p=0.021)。連続したハミング後の無発声NOの減少には、5〜50%の幅でのかなりの変動があった。L−NAMEの局所投与は、無発声の鼻の呼気NOレベルを392±33nL/分から194±24nL/分;p=0.002(図4)へと50%以上の低減となった。これに対し、ハミングによるNOの増加には影響がなかった(L−NAME前の2417±894nL/分に対し、L−NAME後は2368±811nL/分、p=0.77)。
ハミングの間の0.20から0.25L/秒への呼気流量の増加は、より高い鼻のNO排出量となった(807±172から1074±197nL/分へ、p<0.05)。
ハミングの振動数の変化も鼻からのNO排出量に影響した。130HzでのNOレベルは940±77nL/分、150Hzでは807±77nL/分、450Hzでは719±58nL/分(p<0.05)であった。ハミング中でのより高い鼻の圧力はNO排出量を増加させた(1cmH2Oでの807±77nL/分から、10cmH2Oでの932±26nL/分、p>0.05)。
1.2.副鼻腔容積
副鼻腔容積が予め記録されている健康な2人の測定者について予備調査が行われた。鼻からの呼気NOが、上述した標準の化学発光システム(NIOX(登録商標)、ストックホルム、Solna, Aerocrine AB社)を使用して、無発声呼吸の間、及びハミングの間に測定された。無発声呼吸の間に記録されたNO値はほぼ不変であった。しかしながら、より大きな副鼻腔容積を有する測定者のピークNO値(約1500ppb)は、小さい副鼻腔容積を有する測定者のもの(300ppb)よりもかなり大きかった。大きな副鼻腔を有する測定者では、前記NO値の減少がより緩やかであった。ピーク、勾配、プラトーの分析結果は、上部気道、特には副鼻腔の解剖学的、物理的特性に関する情報を提供できることを示している(結果表示せず)。
1.3.副鼻腔問題との関連
アレルギ又は慢性気道障害の罹患経験を持たない10人の健康な喫煙しない測定者(年齢25〜52、男性5人)と、慢性副鼻腔炎及び鼻ポリープの症状を有する10人の患者(年齢30〜56、男性5人)を対象として調査を行った。この調査の間、いずれの健常者も呼吸器系感染に罹患しなかった。前記患者は副鼻腔の手術待ち状態にあった。事前のCTスキャンによれば、全ての患者は左右両側のポリープを有し、副鼻腔は完全に閉鎖されていた。全ての患者は局所鼻コルチコステロイド(nasal corticosteroids)の治療を受け、3人は付随した喘息を持ち、4人はアスピリン不耐性であった。呼気NO測定に対するATSガイドライン基準を満たすよう開発された化学発光システム(スウェーデン、ストックホルム、Aerocrine AB社)を使用し、鼻による単一呼吸の呼気動作中のNOが測定された。鼻を被う密着マスクが使用され、測定者は無発声又はハミングのいずれかで一定の流量(0.10 l/秒)で口を閉じて鼻から呼気動作を行った。NOレベルが、呼気動作の最後の80%の間の平均排出量(nl/分)で計算された。呼気の流量が監視され、その変動は僅かであった(<0.02 l/秒)。
結果
無発声の呼気動作の間、鼻からのNOは健常者と患者とは同等であった(189±27 nl/分に対して162±22 nl/分)。健常者ではハミングの間に鼻からのNOが7倍となった(1285±189 nl/分)のに対し、患者では全く変化がなかった(169±21 nl/分、図5)。
鼻ポリープの患者では、ハミング時の鼻からのNO増加は全く認められないことを示している。考えうる最も妥当な解釈は、副鼻腔と鼻腔の間でエアの通過がないことによるものである。興味深いのは、この調査の間に1人の患者が手術を受け、この患者のハミングの間の鼻からのNOは手術後2週間でほとんど通常レベルにまで増加したことである(データ表示なし)。
2.2室モデル調査−副鼻腔/鼻腔モデル
モデルの詳細
鼻腔と1つの副鼻腔に模した2室モデル(図6)でのNO排出量が測定された。シリンジ(副鼻腔の代り)には、2から10ppmの幅で各種濃度のNOガスが満たされ(スウェーデン、AGA AB社)、ルアー固定具(Luer fitting)を介してプラスチック・シリンダ(鼻腔の代り)に水平に接続された。シリンジ先端(副鼻腔孔の代り)の直径は0.8から4.0mmの間で変化させた。シリンジの容量は5から20mlの間で変化させた。前記シリンダ(鼻腔)の遠隔端末は開放されたままか、あるいは50cm H2OL−1s−1のHans Rudolph抵抗器に接続されて1又は10cmH2Oのいずれかのシリンダ圧力を発生させた。流れと圧力が線形ニューモタキメータ(linear pneumotachymeter Hans Rudolph Inc.)により測定された。その結果のNOレベルは、迅速応答化学発光システム(スウェーデン、ストックホルム、Aerocrine AB社)によりシリンダの遠隔端末で測定された。これら装置からの信号出力はコンピュータを備えたシステム(Aerocrine NO System、スウェーデン、ストックホルム、Aerocrine AB社)に接続され、流れ、圧力、NO濃度、NO排出量を即時にスクリーン上に表示した。
モデルを使用したハミング人工発生
3つの異なる流量(0.20、0.25、0.30L/秒)を発生するNO非含有の加圧エアが用意された。このエアは、脈動エア流れを生み出すゴム製鴨笛(rubber duck call、英国、Hudson & Co.)を介し、又は音を発生する膜を除いたゴム製鴨笛(無発声制御)を介して前記プラスチック・シリンダ(鼻腔)に導かれた。3つの異なる基礎振動数(120、200、400Hz)の鴨笛が使用された。10秒の間にNOが測定され、全ての実験は5回繰り返された。追加の実験では、NO非含有の加圧エアを前記シリンダに接続されたプラスチック・メッシュに導くことで乱流を発生させ、上述の方法でNOが測定された。この実験は発声装置なしで行われた。
異なる実験において本願発明者らは、異なる共鳴振動数(120、200Hz)を有する副鼻腔からのNO排出量に対する異なる3つのハミング振動数(120、200、450Hz)による影響を調査した。
モデルでのヒトのハミング
同じモデルを使用し、測定者がシリンダを介した口呼吸により、無発声、又は2つの一定流量(0.20又は0.25L/秒)と3つの異なる振動数(130、150、450Hz)の発声によって脈動エア流れを発生させた。全ての呼気(10秒)を基に口からのNO排出量を差し引いてNO排出量が算出された。全ての実験は5回繰り返された。2つの洞腔間でのエアの変換率を見積るため、本願発明者らは各実験終了時にシリンジ内の残余のNO濃度を測定した。
人工及びヒトの発声振動数の測定
ハミングの発声信号が前記モデル(図6)のプラスチック・シリンダ上に配置されたTCM110タイピン式集音マイクロホンにより捕捉され、Soundswell Signal WorkstationによりPCに直接記録された。基礎振動数は、2つの隣接する時間ウィンドウのオーディオ信号の自動相関を演算する前記装置の補正モジュール(Corr module)により抽出された。平均基礎振動数と標準偏差が、そのヒストグラムモジュールを用いて特定された。
前記モデルシステムの共鳴振動数は、Durrant及びLovrinic(Base of Hearing Science, 3rd Ed., バルチモア、Williams and Wilkins, 1885: 60)にしたがって計算された。
結果
本願発明者らは、前記モデルの標準セッティングにおいて、一定流量は0.2L/秒、NO濃度は8ppm、圧力は1cmH2O、シリンジ容量は15ml、副鼻腔孔サイズは1.9mm、ハミング振動数は200Hzを使用した。このシステムの共鳴振動数は200Hzであると計算された。実験中での1つのパラメータを変更する際には他の全ての値は一定に保たれた。
前記モデルを使用した全ての実験において、人工又はヒトのハミングは無発声の呼気と比較してNOの増加を得た。前記モデルを用いて人工ハミングを使用したとき、NO排出量は無発声の間の23.7±0.1nL/分からハミングの間の295±4.5nL/分(p<0.05)へと約10倍に増加した。測定者がモデル内にハミングしたとき、無発声の間の27.7±0.1nL/分から175±8nL/分(p<0.05)へと増加した。モデル内で乱流を使用したNO排出量は、非乱流の流れと比較して差異は見られなかった(それぞれ25.2±0.2nL/分と23.7±0.1nL/分)。
副鼻腔孔サイズの影響
副鼻腔孔直径として0.8、1.29、1.9、2.1、4.0mmが使用された。NO排出量がより大きな副鼻腔孔ではハミングの間で増加した(図7)。副鼻腔孔サイズの比1:1.6:2.4:2.6:5に対し、人及び人工モデルでのNO排出量の比は、それぞれ、1:4.5:6:14:30、及び1:8:13:15:39であった。副鼻腔内でのエア変換率の見積りとして、シリンジ内の残余のNO濃度が呼気動作の直後に測定された(図7)。本願発明者らは、無発声呼気の後においては副鼻腔孔のサイズとは関係なくシリンジ内のNO濃度には大きな変化は見出せなかった。これに対し、ハミングの間ではエア変換は副鼻腔孔サイズに大きく依存し、最も大きな副鼻腔孔ではほぼ100%に達した(図7)。
ハミング振動数の影響
本願発明者らは、全ての実験においてハミング振動数の変化はNO排出量に大きな変化を与えることを見出した。モデルで人工ハミングを使用したときは、NO排出量は120Hzの振動数のとき230±5.7nL/分、200Hzでは295±3.4nL/分、450Hzでは143±2.0nL/分(p<0.005、図8)であった。
人がハミングするモデルでは、NOレベルは130Hzで204±11nL/分、150Hzで175±8nL/分、そして450Hzで143±2nL/分(p<0.05、n=5)であった。異なる共鳴振動数を有するシリンジからのNO排出量に対する異なるハミング振動数の影響を調査したとき、本願発明者らは、ハミング振動数が特定の副鼻腔の共鳴振動数に近いときにNO排出量が最も大きいことを見出した(表1)。
[表1]
異なる共鳴振動数を有する副鼻腔をモデルに使用した場合のNO排出量(nL/分)に対するハミング振動数の影響。
Figure 0004331614
シリンジ容積の影響
表2と3は、標準セッティングにしたがって副鼻腔孔のサイズ、NO濃度、流れ及び抵抗が一定に維持されたときのハミング後の結果を示している。シリンジ容積は5、10、15、20mlが使用された。副鼻腔容積の比が1:2:3:4に対し、人工ハミングモデルにおけるNOレベルの比は1:2.5:5:7、ヒトのハミングモデルでは1:2:4:5.5であった。
シリンジのNO濃度の影響
表2と3は、ハミングの間におけるシリンジのNO濃度の影響を示している。NO濃度としては2、4、8、10ppmが使用された。シリンジのNO濃度が1:2:4:5に対して、人工及びヒトのハミングモデルでのNOレベルの比は、それぞれ1:2.1:4:5.5、及び1:2:3:7であった。
エア流量の影響
ハミングの間における異なる鼻の流量でのNO排出量濃度の結果は表2と3に示される。流量が1:1.25:1.5の比に対し、人工及びヒトのハミングモデルでのNOレベルの比は、それぞれ1:1.25:1.4、及び1:1.5:2であった。
[表2]
鼻及び副鼻腔モデル内での人工的脈動エア流れによるNOレベルに対する副鼻腔容積、副鼻腔NO濃度、流量の影響(詳細は方法を参照)。*=p<0.05
Figure 0004331614
[表3]
鼻及び副鼻腔モデル内でヒトが発生した脈動エア流れによるNOレベルに対する副鼻腔容積、副鼻腔NO濃度、流量の影響(詳細は方法を参照)。*=p<0.05
Figure 0004331614
圧力の影響
本願発明者らは、人工ハミングモデルにおいて、ハミングの間でより高い圧力でNO排出量が増加することを見出した(175±8nL/分から377±22nL/分へ)。ヒトのハミングモデルでは、本願発明者らは圧力を増加すると減少することを見出した(250±3.4nL/分から140±1.9nL/分へ)。
3.統計
全てのサンプリング様式に対し、NO排出量が、流れ×NO濃度として計算された。2方向p値を有する非パラメータ統計術が使用された。対になったデータの分析には、Friedmanのテスト及びWilcoxonのテストが使用された。0.05以下のp値は重要であると考えた。結果は平均±SEMで与えられている。
4.考察
健康なボランティアのハミングによって得られる大きな、再現性のある鼻からのNOの増加が特徴付けられた。これは鼻と副鼻腔のモデルにおいても同様であった。このハミング方法は、鼻及び副鼻腔、更には副鼻腔孔の開放によるNOの相対貢献度に関する関連情報を提供している。幾つかの要素は、ハミングの間に見られるNOの増加が副鼻腔内に蓄積されたNOの迅速な排出によるものであることを明確に示している。モデルとヒトの調査では、鼻からの呼気曲線(ピーク及び段階的な減少)のプロファイルは非常に類似しており、NOレベルに影響する要因は同じである。鼻からのNO排出量のピークと総量は、繰り返しの連続ハミング動作によって顕著に減少し、3分間の無発声の後に完全に回復することが認められた。このパターンは、ハミングが副鼻腔を空にし、一定期間の無発声がNOを再度蓄積させるとの見方によく適合していることを改めて示している。鼻へ局部的に塗布されたNOS抑制剤(L−NAME)は、無発声時の鼻からのNOレベルを50%減少させるが、ハミングの間の増加には何ら影響しなかった。この投与経路が副鼻腔内へのより少ない浸透で鼻粘膜にもっと影響を与えるものであるとすれば、これもまた副鼻腔がハミングの間の鼻からのNO供給源であることを支持している。
副鼻腔孔のサイズは、ハミングの間の鼻からのNOの増加に影響する最も重要な要素であると見られた。副鼻腔NO濃度とハミング振動数もまた、副鼻腔の換気に影響している。興味あることに、ハミング振動数は、モデルにおいても健康なボランティアにおいても副鼻腔の排出量に影響を与えた。これらの予備的な実験は、モデルでの副鼻腔の換気は、ハミング振動数が当該副鼻腔モデルの共鳴振動数に接近しているときに最大となることを示している。
単一呼吸の呼気動作後におけるシリンジ内の残余NOを見る実験から、ハミングは副鼻腔換気を増加させる非常に影響度の高い手段であることから明らかである。これは又、ヒトでの実験でハミングの間のNOの急激な減少が副鼻腔を空にしたことを示していることによっても支持される。この結果は、もし測定者がハミングをしていれば、一回の呼気の間に副鼻腔容積のほぼ全てが変換されることを示している。小さい副鼻腔孔直径を使用したときであっても、ハミングは使用されたモデルの副鼻腔の換気に最も影響度が大きかった。これは、副鼻腔炎及び部分的に詰まった副鼻腔孔を有する患者において副鼻腔換気の増加をハミングが支援し得ることを示唆している。
本発明の調査では、ハミング直後ではNOレベルは5から50%の幅で低下していた。この動作によって副鼻腔が効果的に空にできると仮定すれば、この減少は、鼻から排出されたエアに見出されるNOに対する副鼻腔からの通常の貢献度をかなり明確に反映させていることとなる。しかしながら、この前提は、この調査におけるものと同一の条件下でのみ言い得るものである点を注記することは重要である。いずれにせよここに記載された方法を使用すれば、副鼻腔NOを鼻粘膜NO放出からよりよく判別することが可能となるであろう。
本発明につき、本願発明者らが現在知り得るベストモードであると思われる好ましい実施の形態に関連して述べてきたが、当該技術分野における通常の知識を有する者に明らかである各種の変更、改造が、本願の請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく可能であることは理解されるべきである。
ハミング(a)又は無発声(b)での鼻からの単一呼気動作の間のNOの当初追跡記録を示す。 鼻からのNO排出量(NO output)に関する繰り返しハミング動作の影響を示す。ハミングによる5回の連続した呼気動作が5秒間隔で行われた。安定状態(プラトー)に達するまで各動作の後に段階的なNOレベルの低下が認められた。 繰り返し無発声呼気動作の直後、及び繰り返しハミング動作の直後(ハミング下での5回の連続する10秒の鼻からの呼気動作)に測定された、基準ラインにおける無発声呼気動作の間の鼻からのNO排出量を示す。*基準に対する=p=0.002、n=6 シンターゼ抑制剤(L-NAME)の鼻への局所投与後の鼻からのNO排出量の変化(%)を示す。対象者は無発声又はハミングのいずれかで呼気動作をした。(*p=0.002、n=6) 健常者及び鼻ポリープの患者による、無発声の鼻からの呼気動作又はハミングによる鼻からのNO排出量への影響を示す。 副鼻腔(G)、副鼻腔孔(シリンジ先端)、鼻腔(C)の実験モデルの概略表示である。Aは流れ/圧力計、Bは流れ抵抗、Dは発声器(ゴム製鴨笛:rubber duck call)、Eはディスプレイ、FはNO分析器を示す。 前記実験モデルにおける副鼻腔ガス変換への副鼻腔孔サイズの影響を示す。対象者は一定の流量(0.2L/秒)で無発声(白丸)又は発声(黒丸)で単一の呼気動作を行う。副鼻腔ガス変換は、各呼気動作前後におけるシリンジ内のNOを測定することによって算出される。 副鼻腔/鼻モデルでのNOレベルに対する3つの異なるハミング振動数の影響を示す。対象者は前記モデル内で0.2L/秒の一定の流量、NO濃度8ppm、1cmH2Oの抵抗、副鼻腔孔サイズ1.9mmで口から呼気動作を行った。
符号の説明
A.流れ/圧力計、 B.流れ抵抗、 C.シリンダ(鼻腔)、 D.発声器(ゴム製鴨笛:rubber duck call)、 E.ディスプレイ、 F.NO分析器、 G.シリンジ(副鼻腔)。

Claims (14)

  1. ヒトの上部気道の症状を診断するために使用する装置であって、
    当該装置は、前記上部気道内、又はその一部内において振動エア流れを発生させ及び/又は維持するための手段を備え;
    前記装置はヒトの排出エア中に存在する体内発生ガスの濃度及び/又は流れを測定し、記録する手段との接続に適しており;
    前記上部気道の症状が、炎症性症状、気道感染症、感冒、腫瘍、薬物障害、解剖学的異常、副鼻腔孔の開放、副鼻腔のサイズ、副鼻腔の生物化学的状態、1つ又はそれ以上の副鼻腔に影響を与える副鼻腔炎、前記副鼻腔炎の位置、副鼻腔炎発症のリスク、副鼻腔の細菌学的状況、もしくはこれらの組み合わせのいずれか1つが存在するかしないかであることを特徴とする装置。
  2. 前記振動エア流れを発生させ及び/又は維持するための手段が、電子的または機械的に前記エア流れを発生させる手段から構成されている、請求項1に記載の装置。
  3. 前記振動エア流れを発生させ及び/又は維持するための手段が、患者によって生み出される振動エア流れの持続時間、振動数、及び/又は容量を登録する手段であって、予め定められた必要な持続時間、振動数、及び/又は容量が達成されたことを前記患者に表示するための手段と結合されているものから構成されている、請求項1に記載の装置。
  4. 前記振動エア流れが1から1000Hzの間の振動数で振動する、請求項1に記載の装置。
  5. 前記振動エア流れが10から1000Hzの間の振動数で振動する、請求項1に記載の装置。
  6. 前記振動エア流れが100から1000Hzの間の振動数で振動する、請求項1に記載の装置。
  7. 前記振動エア流れが100から500Hzの間の振動数で振動する、請求項1に記載の装置。
  8. 前記振動エア流れが副鼻腔の共鳴振動数に近い振動数で振動する、請求項1に記載の装置。
  9. 前記装置が、副鼻腔炎を含む右側または左側の鼻気道のみに影響する片側だけの病的症状を診断するための手段から構成されている、請求項1に記載の装置。
  10. ヒトの上部気道の症状を診断するために使用する装置であって、
    前記装置が、前記上部気道内、又はその一部内において振動エア流れを発生させ及び/又は維持するための手段と、
    ヒトの排出エア中に存在する第1のガスの濃度及び/又は流れを測定して記録するための手段と、
    前記第1のガスを含まない、又は僅かな量及び/又は既知の量の第1のガスを含む第2の呼吸ガスを前記ヒトに供給するための手段とから構成されていることを特徴とする装置。
  11. 前記第1のガスが酸化窒素であり、前記第2のガスが酸化窒素ガスを含まない吸気に適したガスである、請求項10に記載の装置。
  12. 前記装置が、追跡対象ガスの濃度及び/又は流れを測定し、記録するための手段との接続に適している、請求項10に記載の装置。
  13. 前記装置が、追跡対象ガスの濃度及び/又は流れを測定し、記録するための手段との接続に適しており、前記追跡対象ガスが体内発生ガスである、請求項10に記載の装置。
  14. 前記装置が、追跡対象ガスの濃度及び/又は流れを測定し、記録するための手段との接続に適しており、前記追跡対象ガスが外因性ガスである、請求項10に記載の装置。
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