JP4332003B2 - オイル密閉式チェーンテンショナ - Google Patents

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Description

本発明は、オイル密閉式チェーンテンショナに関するものである。
内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間の回転伝達をチェーンによって行う場合、そのチェーンに一定の張力を作用させるべく同チェーンを押圧するテンショナが設けられる。テンショナにおいて、チェーンの押圧は当該テンショナのハウジング内に設けられたロッドをスプリングの付勢力によってハウジングから突出させることによって実現される。また、ロッドによるチェーンの押圧時には、同チェーンの振動等に伴いロッドがハウジングに没入する方向に押されることもあるが、このときのロッドの没入がハウジング内のオイルで規制されてゆっくりと行われるようにすることで上記チェーンの振動は抑制される。
こうしたテンショナとして、従来は、内燃機関によって駆動されるオイルポンプからのオイルをハウジング内に流入させるとともに同ハウジング内からオイルを漏出させ、ロッドに常に上記オイルに基づく一定の圧力を作用させるという給油式のものが採用されていた。給油式のテンショナでは、チェーンの振動に伴いロッドがハウジング内に没入しようとしても、その没入がハウジング内のオイルによって行われにくくされ、これにより上記チェーンの振動が抑制されるようになる。
しかし、給油式のテンショナを用いる場合、内燃機関のシリンダヘッド等に同テンショナへのオイル供給用の複雑な通路を形成しなければならず、この通路の加工に手間がかかることは避けられない。また、給油式のテンショナにオイルを供給する分だけオイルポンプからのオイル吐出量を多くする必要があり、オイルポンプを駆動する内燃機関に負荷がかかることから、同機関の燃費を改善することが困難にもなる。
このため、近年はチェーン押圧用のテンショナとして、上記オイルをハウジング内に封入するとともに、ロッドの外周面とハウジングの内周面との間にオイルシールを設けたものが提案されている。この場合、給油式のテンショナを採用した際に生じる上記不具合を抑制することはできるが、チェーンの押圧という目的で使用することに伴い、以下のような新たな問題が生じる。
即ち、内燃機関において上記チェーンは、チェーンケース内に存在するとともに、同チェーンの潤滑用オイルとして内燃機関で用いられるオイルの供給を受けるものであることから、高温のオイルが飛散した状態となるチェーンケース内で動作する。このため、同チェーンを押圧するテンショナも、上記チェーンケース内という高温のオイルが飛散した状況のもとで使用されることになる。こうした状況のもとでオイル密閉式のテンショナを使用すると、ハウジング内のオイルがチェーンケース内の熱を受けることで温度上昇して体積膨張を起こし、これにより当該ハウジング内の圧力が高くなると、同圧力に応じてオイルシールをロッドの外周面に押しつける力(緊迫力)が大となる。
ロッドがハウジングに対し出没するときにはオイルシールがロッドと摺り合わされるが、上記緊迫力が大きくなると、オイルシールとロッドとの間に働く摩擦力が大となり、オイルシールの摩耗が進むようになる。上記緊迫力については、もともとロッドの周方向全体に亘って均等に働くものではなく、ロッドの傾きや軸ずれによる同ロッドの径方向への変位に伴い不均等になるものである。このため、上述したように緊迫力が大きくなってオイルシールの摩耗が進むとき、その摩耗量が周方向全体で均等になることはなく不均等なものとなる。このことから、オイルシールの一部だけが過度に摩耗するという問題が生じるようになる。
この問題については、特許文献1に示されるように、ハウジング内の上記オイルに対しダイヤフラムによって区画された空気室をテンショナに設けることで、対処することは可能である。この場合、ハウジング内のオイルが温度上昇に伴い体積膨張するとき、そのオイルの圧力を受けるダイヤフラムが変形して上記空気室内の容積が縮小するよう同空気室内の空気を圧縮する。このように空気室の容積が縮小することでハウジング内のオイルの体積膨張が許容されるため、同ハウジング内の圧力が過度に高くなることはなくなり、上述したオイルシールの摩耗に関する問題が生じるのを抑制することが可能になる。
特開2001−193806公報
上記のように、ダイヤフラムによってオイルと区画された空気室をテンショナに設けることで、オイルシールの一部だけが過度に摩耗するという問題を解消することはできる。しかし、上記テンショナはチェーンケース内という高温のオイルが飛散した状況のもとにあることから、空気室を形成するためのダイヤフラムの熱劣化が懸念される。そして、ダイヤフラムが熱劣化により破損した場合には、ハウジング内のオイルが空気室に流れ込み、チェーンの押圧や振動抑制のためのテンショナの動作に支障を来すおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ダイヤフラムの熱劣化という問題を生じさせることなく、オイルシールに一部だけの過度な摩耗が生じるのを抑制することのできるオイル密閉式チェーンテンショナを提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、オイルが封入されたハウジングの内部での往復移動により同ハウジングに対し出没するロッドと、このロッドの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられて両者の間を介しての前記ハウジング内からのオイルの流出を規制するオイルシールと、オイルが溜められるとともに前記ハウジングに連通するリザーブタンクとを備え、チェーン押圧時の前記ロッドの出没に応じて前記ハウジングの内部とリザーブタンクとの間でオイルを流通させるオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記リザーブタンクの内部から外部への空気の流通を可能としつつ、前記外部から前記内部へのオイルの流入を規制するエア抜き構造を有することを要旨としている。
オイル密閉式テンショナを内燃機関のチェーンケース内といった高温箇所で使用したとき、同テンショナにおけるハウジング内のオイルが温度上昇によって体積膨張する。このときのオイルの体積膨張は、ハウジング内のオイルがリザーブタンクに流出して同タンク内の空気が圧縮されること、及び当該圧縮された空気がエア抜き構造によって同タンク外に排出されることによって許容されるため、ハウジング内の圧力が上記オイルの体積膨張によって過度に高くなることはない。従って、従来のようなダイヤフラムの熱劣化という問題を生じさせることなく、ハウジング内の圧力が高くなることによるオイルシールの一部だけの過度な摩耗を抑制することができる。また、チェーンケース内の汚れたオイルが上記エア抜き構造を通じてリザーブタンク内に入ることは規制されるため、その汚れたオイルがハウジング内に入り込んでオイル密閉式チェーンテンショナの動作に悪影響を与えるのを抑制することができる。
(2)請求項2に記載の発明は、オイルが封入されたハウジングと、このハウジング内部での往復移動により同ハウジングに対して出没するロッドと、このロッドの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられてこれら外周面及び内周面の間をシールするオイルシールと、前記ハウジングに連通してオイルを貯留するリザーブタンクとを備え、前記ロッドが前記ハウジングに対して出没するときにこのロッドの動作に応じて前記ハウジングと前記リザーブタンクとの間でのオイルの移動が生じるオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記リザーブタンクは、エア抜き構造を有するものであり、このエア抜き構造は、前記リザーブタンクの側面に同タンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及びこの穴が前記リザーブタンクの側壁に設けられること、及び前記リザーブタンクの高さ方向において前記穴の外側の開口部が内側の開口部と同じところまたはこれよりも低いところに設けられることを要件として構成されるものであることを要旨としている。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの側面に同タンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及びこの穴の外側の開口部が水平向きあるいは水平よりも下向きに開口することを要件として構成されるものであることを要旨としている。
チェーンケース内はチェーン潤滑用の高温のオイルが飛散した状態となり、同オイルが上方から下方に流れ落ちるようになる。こうした状況下でオイル密閉式チェーンテンショナを使用したとしても、リザーブタンクの内外を連通する穴の開口部の開口方向が上記のように設定されることで、チェーンケース内の汚れたオイルが当該開口部に入りにくくなる。こうして上記穴を通じてのリザーブタンクの外部から内部への汚れたオイルの流入が規制されるため、その汚れたオイルがハウジング内に入り込んでオイル密閉式チェーンテンショナの動作に悪影響を与えるのを抑制することができる。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの内部と外部とを連通する穴の少なくとも一部が同タンクの外側から内側に向かうにつれて上方に延びることを要件として構成されるものであることを要旨としている。
チェーンケース内はチェーン潤滑用の高温のオイルが飛散した状態となる。こうした状況下でオイル密閉式チェーンテンショナを使用したとしても、リザーブタンクの内外を連通する穴が上記のように形成されるため、チェーンケース内の汚れたオイルが上記穴を通じてリザーブタンク内に入り込むことは規制される。即ち、穴に汚れたオイルが入ったとしても、同オイルがリザーブタンクに入るためには穴に沿って重力に逆らいつつ上方に移動しなければならないことから、同穴を通じてのリザーブタンク内へのオイルの侵入は困難になる。このように上記穴を通じてのリザーブタンクの外部から内部への汚れたオイルの流入が規制されるため、その汚れたオイルがハウジング内に入り込んでオイル密閉式チェーンテンショナの動作に悪影響を与えるのを抑制することができる。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及び前記リザーブタンクの高さ方向において前記穴の外側の開口部が内側の開口部よりも低いところに設けられること、及び前記穴が複数の箇所にて屈曲することを要件として構成されるものであることを要旨としている。
チェーンケース内はチェーン潤滑用の高温のオイルが飛散した状態となる。こうした状況下でオイル密閉式チェーンテンショナを使用したとしても、リザーブタンクの内外を連通する穴が上記のように形成されるため、チェーンケース内の汚れたオイルが上記穴を通じてリザーブタンク内に入り込むことは規制される。即ち、穴に汚れたオイルが入ったとしても、同オイルがリザーブタンクに入るためには穴に沿って複数箇所を屈曲して移動しなければならないことから、同穴を通じてのリザーブタンク内へのオイルの侵入は困難になる。このように上記穴を通じてのリザーブタンクの外部から内部への汚れたオイルの流入が規制されるため、その汚れたオイルがハウジング内に入り込んでオイル密閉式チェーンテンショナの動作に悪影響を与えるのを抑制することができる。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記ロッドは、その先端部が前記ハウジングの一方に設けられた開口部から突出するものであり、前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの側面に同タンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及びこの穴が前記リザーブタンクの側壁のうち前記ロッドが前記ハウジングから突出する側とは反対側に設けられることを要件として構成されるものであることを要旨としている。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、前記ロッドは水平方向に往復移動するものであることを要旨としている。
ロッドが水平方向に往復移動するオイル密閉式チェーンテンショナにおいては、ハウジング内のオイルがオイルシールの近傍に存在するようになる。また、オイルシールにおけるロッドの下側に位置する部分にはロッドの重力が作用し易いことから、ロッドの出没時にオイルシールとロッドとの間に働く摩擦力が周方向について不均等になり易く、オイルシールの摩耗も周方向について不均等になり易い。このため、オイルシールの一部だけが過度に摩耗するという現象が顕著になるとともに、ハウジング内のオイルシールの近傍に存在するオイルがハウジングの内周面とロッドの外周面との間を通じて漏れ易くなるが、こうした不具合を抑制することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1は、この実施形態のオイル密閉式チェーンテンショナ1の内部構造を示す断面図である。このテンショナ1は、内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間での回転伝達を行うチェーンに対し用いられ、同チェーンが収容されるチェーンカバー内に設けられるものである。このチェーンカバー内については、上記チェーンに潤滑用のオイルとしてエンジンオイルが供給されるとともに、同オイルがチェーンの周回中に飛散することから、高温のオイルが飛散した状態となる。
上記テンショナ1においては、そのハウジング2内の円筒状のシリンダ3にロッド4が往復移動可能に挿入され、当該ロッド4の往復移動がハウジング2の内周面とロッド4の外周面との間のリング状のロッドガイド5によって案内される。上記ロッドガイド5の内径はロッド4の外径とほぼ同じ値に形成され、ロッドガイド5の内周面によって上記ロッド4の外周面が摺動可能に支持される。また、ハウジング2内には、ロッド4を同ハウジング2から突出する方向に付勢するコイルスプリング6が設けられている。そして、コイルスプリング6の付勢力でロッド4をハウジング2から突出させることにより、チェーンカバー内で周回するチェーンの押圧が行われ、同チェーンに一定の張力が作用するようになる。なお、テンショナ1は、チェーンカバー内において上記ロッド4が水平方向に往復移動するように設けられている。
ロッド4によるチェーンの押圧時には、同チェーンの振動等に伴いロッドがハウジング2内に没入する方向に押されることもある。こうしたロッド4のハウジング2内への没入が行われにくくなるようにすることで、上記チェーンの振動を抑制することが可能になる。このため、テンショナ1においては、ハウジング2内に封入されたオイルの流れを利用して上記ロッド4の没入が行われにくくなるようにしている。ここで、上記のようにロッド4の没入を規制する構造について説明する。
ハウジング2内はシリンダ3及びロッド4によって高圧室7と低圧室8とに区画され、それら高圧室7及び低圧室8はハウジング2内に封入されたオイルによって満たされている。このオイルがハウジング2の内周面とロッド4の外周面との間から外部に漏れないよう、ハウジング2の内周面とロッド4の外周面との間において上記ロッドガイド5よりもロッド没入側の位置には円環状のオイルシール15が設けられている。オイルシール15においては、その外周がハウジング2の内周面に固定されるとともに、内周部にロッド4の外周面に当接するリップ部15aが設けられている。そして、オイルシール15のリップ部15aは、弾性を有するリング状の保持スプリング15bによってロッド4の外周面に押し付けられている。従って、ハウジング2に対しロッド4が出没するときには、ロッド4の外周面がオイルシール15のリップ部15aと摺り合わされることとなる。
ロッド4がハウジング2に対し出没するとき、シリンダ3の内側にある高圧室7の容積が変化することから、ハウジング2内に満たされるオイルの量はロッド4のハウジング2に対する没入量に応じて変化することとなる。こうしたオイル量の変化に関わりなくハウジング2内を常にオイルで満たされた状態とするため、テンショナ1には上記オイル量の変化に応じてハウジング2内との間でオイルを流通させるリザーブタンク9が設けられている。リザーブタンク9は、流入通路10を介してハウジング2内の高圧室7に連通している。そして、高圧室7には、流入通路10から高圧室7へのオイルの流入を許可しつつ、高圧室7から流入通路10へのオイルの逆流を禁止するチェック弁11が設けられている。チェック弁11は、スプリング12の付勢力によって高圧室7と流入通路10とを遮断する位置に保持されたチェックボール13を備えている。このチェックボール13は、ロッド4が突出して高圧室7の容積が拡大するとき、高圧室7と流入通路10との圧力差によって高圧室7と流入通路10とを連通する位置に変位する。
従って、チェーンを押圧するためのロッド4の突出時に高圧室7の容積が拡大すると、リザーブタンク9内のオイルが流入通路10を介して高圧室7に流入されることから、上記ロッド4の突出が速やかに行われるようになる。このため、チェーンの伸び等に対しては、ロッド4を追従性よく突出させてチェーンを押圧することができ、これにより同チェーンの張力が確実に一定に保持されるようになる。
一方、チェーンの振動等によるロッド4の没入時であって高圧室7の容積が縮小するときには、チェック弁11によって高圧室7と流入通路10とが遮断されるため、高圧室7内のオイルはロッド4の外周面とシリンダ3の内周面とのわずかな隙間を通って低圧室8に流れ込もうとする。この低圧室8は、流出通路14を介してリザーブタンク9(正確には流入通路10)に連通している。このため、上記のように高圧室7から低圧室8にオイルが流れ込むことに伴い、低圧室8内のオイルが流出通路14を介してリザーブタンク9に流出させられる。ただし、ロッド4の外周面とシリンダ3の内周面との隙間はわずかなものであるため、その隙間を通じての高圧室7から低圧室8へのオイルの流出は徐々にしか行われず、ロッド4のハウジング2内への没入が行われにくくなる。このため、チェーンの振動等によりロッド4が没入方向に押されたとしても同没入が行われにくくされ、これによりチェーンの振動が抑制されるようになる。
ところで、テンショナ1は、チェーンカバー内という高温のオイルが飛散する状況のもとで使用される。このため、ハウジング2内のオイルは、チェーンケース内の熱を受けて温度上昇し、体積膨張を起こす。そして、ハウジング2内のオイルの体積膨張により、ハウジング2内の圧力(低圧室8内の圧力)が高くなると、それに応じてオイルシール15のリップ部15aをロッド4の外周面に押しつける力(緊迫力)が大となる。この緊迫力が大きくなると、ロッド4の出没時にオイルシール15のリップ部15aとロッド4の外周面との間に働く摩擦力が大となり、リップ部15aの摩耗が進むようになる。
上記緊迫力については、ロッド4の周方向全体に亘って均等に働くものではなく、ロッド4の傾きや軸ずれに伴う同ロッド4の径方向への変位に伴い不均等になるものである。特に、ロッド4が水平方向に往復移動するようテンショナ1が設けられている場合には、リップ部15aにおけるロッド4の下側に位置する部分にロッド4の重力が作用し易いことから、上記周方向についての緊迫力の不均等が生じ易い。従って、緊迫力の増大によってリップ部15aの摩耗が進むとき、周方向についての緊迫力の不均等に起因してリップ部15aの摩耗量も周方向について不均等になり、当該リップ部15aの周方向一部だけが過度に摩耗するおそれがある。
このことに対する対策として、本実施形態では、[1]ハウジング内の圧力上昇の抑制、[2]ロッドとオイルシールとの間に働く摩擦力の低減、[3]ロッドの径方向への変位の抑制といった三つの対策が講じられている。以下、上記[1]〜[3]の各対策について個別に説明する。
[1]ハウジング内の圧力上昇の抑制
ハウジング2内のオイルが温度上昇して熱膨張を起こしたとき、同オイルの一部が流出通路14を介してリザーブタンク9に流出して同タンク9内の空気が圧縮される。リザーブタンク9の外壁9aには、リザーブタンク9の内外を連通する穴16が形成され、同タンク9内の空気が上記のように圧縮されたとき、その圧縮空気が穴16を介して外部に排出されるようになる。このように、リザーブタンク9内の空気が圧縮されること、及び当該圧縮された空気が穴16を介して同タンク9外に排出されることによって、ハウジング2内のオイルの体積膨張が許容されるため、ハウジング2内の圧力が上記オイルの体積膨張によって過度に高くなることはない。従って、ハウジング2内の圧力(低圧室8内の圧力)が過度に高くなることによるオイルシール15のリップ部15aの周方向一部だけの過度な摩耗を抑制することができる。
ただし、穴16をリザーブタンク9の外壁9aに設けることで、チェーンケース内に飛散する潤滑に用いられた汚れたオイル(エンジンオイル)が穴16を介してリザーブタンク9内に入り込むと、ロッド4の出没に基づきリザーブタンク9とハウジング2との間でオイルの流通が行われたときに汚れたオイルがハウジング2内に入り込む。そして、ハウジング2内のオイルに汚れたオイル(エンジンオイル)が混ざることで、テンショナ1の動作に悪影響が生じるおそれがある。
このため、本実施形態では、チェーンケース内で飛散するオイルについては、その大部分が図2に示されるように上方から下方に向かって流れるものであることに着目し、穴16における外部側の開口部16aを上記のように流れる汚れたオイルが入り込みにくい方向、例えば水平方向(図中左方向)に向けて開口させる。このように穴16の開口部16aを開口させることで、リザーブタンク9の内部から外部への空気の流通を可能としつつ、外部から内部への汚れたオイルの入り込みにくいリザーブタンク9のエア抜き構造を実現することができる。こうしたエア抜き構造を有するテンショナ1では、汚れたオイルがハウジング2内のオイルに混ざって動作に悪影響が及ぶのを抑制することができる。
[2]ロッドとオイルシールとの間に働く摩擦力の低減
ハウジング2内の圧力が高くなることに伴い上記緊迫力が大になると、オイルシール15のリップ部15aとロッド4の外周面との間に働く摩擦力が大となり、これがリップ部15aの周方向一部だけの過度な摩耗の原因となる。このため、上記摩擦力を低減すべくロッド4の外周面における少なくともリップ部15aに対応する部分、即ちロッド4の出没に伴いリップ部15aが摺り合わされる部分の面粗度を低下させ、これにより上記摩擦力の増大を抑制する。具体的には、ロッド4の外周面における少なくともリップ部15aに対応する部分に対し、硬質クロムメッキを行って図3に示されるようにメッキ膜17を形成した後、砥石18による仕上げ研磨を行ってメッキ膜17の表面を滑らかにすることが行われる。これにより、上記部分の面粗度が硬質クロムメッキ及び仕上げ研磨の行われていない他の部分よりも低下し、上記摩擦力の増大が抑制されるようになる。このように上記摩擦力の増大を抑制することで、リップ部15aの周方向一部だけの過度な摩耗を抑制することができる。
[3]ロッドの径方向への変位の抑制
リップ部15aの周方向についての不均等な摩耗は、チェーンの振動等に伴うロッド4の傾きや軸ずれによる同ロッド4の上記リップ部15aに対応する部分の径方向への変位によって生じる。このため、上記部分の径方向への変位を抑制すべく、ロッド4の往復移動を案内するために同ロッド4の外周面を摺動可能に支持するロッドガイド5を、図1に示されるようにロッド4の軸線方向に複数(本実施形態では二つ)並べて設けるとともに互いに隣接させる。これにより、上記部分の径方向への変位が抑制されると、リップ部15aの周方向についての不均等な摩耗が抑制されるため、当該リップ部15aの周方向一部だけの過度な摩耗を抑制することができるようになる。
なお、ロッド4においては、その突出側の端部に向かうほどチェーンの押圧部分に近くなることから径方向への外力が作用し易くなり、傾きや軸ずれによる径方向への変位が大となるが、このことを考慮して上記複数のロッドガイド5はオイルシール15よりもロッド突出側に設けられている。同構成によれば、ロッドガイド5によるロッド4の径方向への拘束が、ロッド4におけるオイルシール15に対応する部分よりも当該ロッド4の突出側の端部に近い位置で行われるようになる。従って、ロッド4の傾きや軸ずれに起因する上記ロッド4のオイルシール15に対応する部分の径方向への変位を一層生じにくくすることができ、オイルシール15のリップ部15aの周方向一部だけの過度な摩耗を一層的確に抑制することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)テンショナ1についての上記[1]〜[3]の対策により、従来のようなダイヤフラムの熱劣化という問題を生じさせることなく、オイルシール15のリップ部15aに周方向一部だけの過度な摩耗が生じるのを抑制することができる。
(2)上記[1]の対策において、リザーブタンク9の内外を連通する穴16の外部側の開口部16aを、チェーンカバー内で上方から下方に流れる汚れたオイル(エンジンオイル)が入り込みにくい方向、即ち水平方向に開口させた。こうした開口部16aの開口方向の設定により、リザーブタンク9の内部から外部への穴16を通じての空気の流出を許可しつつ、外部から内部への穴16を通じてのリザーブタンク内への汚れたオイルの流入を規制するためのエア抜き構造が実現される。従って、汚れたオイルがリザーブタンク9内に侵入した後、更にロッド4の出没に伴いハウジング2内に侵入し、同ハウジング2内のオイルに混ざることにより、テンショナ1の動作に悪影響が生じるのを抑制することができる。
(3)上記[3]の対策において、ロッド4における傾きや軸ずれに起因する径方向への変位を規制する複数のロッドガイド5は、オイルシール15よりもロッド突出側に設けられる。ロッド4は突出側の端部に向かうほど傾きや軸ずれによる径方向への変位が起こり易いことから、上記のようにロッドガイド5を設けることでロッド4におけるオイルシール15のリップ部15aに対応する部分の径方向への変位を一層生じにくくすることができる。従って、上記変位に起因するオイルシール15のリップ部15aの周方向一部だけの過度な摩耗を一層的確に抑制することができる。
(4)テンショナ1は、ロッド4を水平方向に往復移動させるよう設けられるものである。こうしたテンショナ1においては、ハウジング2内のオイルがオイルシール15の近傍に存在するようになる。また、オイルシール15のリップ部15aにおけるロッド4の下側に位置する部分にロッド4の重力が作用し易いことから、ロッド4の出没時にリップ部15aとロッド4との間に働く摩擦力が周方向について不均等になり易く、リップ部15aの摩耗も周方向について不均等になり易い。このため、リップ部15aの一部だけが過度に摩耗するという現象が顕著になるとともに、ハウジング2内のオイルシール15の近傍に存在するオイルがハウジング2の内周面とロッド4の外周面との間を通じて漏れ易くなるが、こうした不具合を抑制することができる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・ロッド4が水平方向に往復移動するよう設けられるテンショナ1に本発明を適用したが、ロッドが上下方向に往復移動するよう設けられるテンショナに本発明を適用してもよい。
・上記[1]〜[3]の三ついの対策のうちいずれか一つ、或いは任意の二つのみを実施するようにしてもよい。
・上記[1]の対策について、穴16の開口部16aの水平方向に向けて開口させたが、例えば図4や図5に示されるように水平方向よりも下向きに開口させてもよい。なお、チェーンケース内の汚れたオイルを開口部16aに侵入させにくくする上では、図5に示されるように開口部16aを真下に向けて開口させることが好ましい。
・上記[1]の対策について、穴16の開口部16aの開口方向を設定して上述したエア抜き構造を実現したが、これに代えて穴16の内径の設定によって同エア抜き構造を実現してもよい。例えば、穴16における延設方向の少なくとも一部の内径を、オイルが通過不能な大きさとすることで、リザーブタンク9の外部から内部への汚れたオイルの侵入を規制する上記エア抜き構造を実現することが可能である。また、穴16の内径を上記のように設定する方法は、リザーブタンク9の外壁9aに穴16を形成する際に設定するという方法だけでなく、例えば穴16に上記内径を有する穴が形成された栓を嵌め込むことにより内径の設定を行うという方法を採用することもできる。なお、上記栓としては、例えば金属繊維をオイルの通過不能な密度で交錯させたものや連続気泡を有するウレタン樹脂の発砲体といった通気性素材からなるものが用いられる。
・上記[1]の対策について、穴16の延びる方向の設定により、上述したエア抜き構造を実現してもよい。例えば、図6〜図8に示されるように、穴16における延設方向の少なくとも一部をリザーブタンク9内から同タンク9外に向かうにつれて上方に延びるように形成することで、リザーブタンク9の外部から内部に汚れたオイルが侵入しにくくなり、上記エア抜き構造を実現することが可能になる。なお、チェーンケース内の汚れたオイルを開口部16aに侵入させにくくする上では、図8に示されるように穴16の一部を真上に向けて延びるように形成することが好ましい。
・上記のような穴16の延びる方向の設定により上記エア抜き構造を実現する代わりに、穴16をその延設方向の複数箇所で屈曲させてリザーブタンク9の外部から内部に汚れたオイルが侵入しにくくなるようにし、上記エア抜き構造を実現してもよい。この場合、例えば図8に示されるように、穴16の一部を上記のように上方に延びるように形成しつつ、その上方に延びる部分の前後二箇所で穴16を約90°屈曲させることで、上記エア抜き構造を実現することが可能である。また、穴16を図8に示されるように垂直面上で屈曲させるのではなく、穴16を水平面上で複数箇所屈曲させることでも、上記エア抜き構造を実現することが可能である。
・上記[1]の対策について、リザーブタンク9の内外を連通する通路を設け、この通路のタンク外部の開口部を別途設けた水タンク内に開口させ、当該通路を通過して外部に排出される空気が水タンク内に溜められた水の層を更に通過して外部に排出されるようにする。この構成により、リザーブタンク9の外部から内部への汚れたオイルの侵入を規制し、上述したエア抜き構造を実現するようにしてもよい。この場合、仮に水タンク内に汚れたオイルが入ったとしても、そのオイルが水タンク内の水の層に位置する上記通路の開口部に達することはないため、汚れたオイルのリザーブタンク9内への侵入を的確に抑制することができる。
・上記[2]の対策について、硬質クロムメッキ及び仕上げ研磨といった面粗度を低下させる加工を施すのは、ロッド4の外周面におけるオイルシール15のリップ部15aに対応する部分だけであってもよいし、ロッド4の外周面全体であってもよい。上記加工をロッド4の外周面におけるオイルシール15のリップ部15aに対応する部分だけに施す場合には、その部分の面粗度がロッド4の外周面の他の部分の面粗度よりも低下させられることになる。また、上記加工をロッド4の外周面全体に施す場合には、ロッド4の外周面がテンショナ1のロッド4以外の部分の面粗度よりも低下させられることになる。
・上記[3]の対策において、複数のロッドガイド5として二つのロッドガイド5を設ける場合を例示したが、ロッドガイド5を三つ以上設けてもよい。
・上記複数のロッドガイド5について、オイルシール15よりもロッド突出側に設けるのではなく、オイルシール15よりもロッド没入側に設けるようにしてもよい。
・上記複数のロッドガイド5をロッド4の軸線方向に並べる際、互いの間に所定のクリアランスを存在させてもよい。
本実施形態のオイル密閉式チェーンテンショナの内部構造を示す断面図。 同テンショナのリザーブタンク外壁に形成された穴を示す拡大断面図。 ロッド外周面の面粗度を低下させる加工の概要を説明するための略図。 上記穴の他の例を示す拡大断面図。 上記穴の他の例を示す拡大断面図。 上記穴の他の例を示す拡大断面図。 上記穴の他の例を示す拡大断面図。 上記穴の他の例を示す拡大断面図。
符号の説明
1…オイル密閉式チェーンテンショナ、2…ハウジング、3…シリンダ、4…ロッド、5…ロッドガイド、6…コイルスプリング、7…高圧室、8…低圧室、9…リザーブタンク、9a…外壁、10…流入通路、11…チェック弁、12…スプリング、13…チェックボール、14…流出通路、15…オイルシール、15a…リップ部、15b…保持スプリング、16…穴、16a…開口部、17…メッキ膜、18…砥石。

Claims (7)

  1. オイルが封入されたハウジングの内部での往復移動により同ハウジングに対し出没するロッドと、このロッドの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられて両者の間を介しての前記ハウジング内からのオイルの流出を規制するオイルシールと、オイルが溜められるとともに前記ハウジングに連通するリザーブタンクとを備え、チェーン押圧時の前記ロッドの出没に応じて前記ハウジングの内部とリザーブタンクとの間でオイルを流通させるオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記リザーブタンクの内部から外部への空気の流通を可能としつつ、前記外部から前記内部へのオイルの流入を規制するエア抜き構造を有する
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
  2. オイルが封入されたハウジングと、このハウジング内部での往復移動により同ハウジングに対して出没するロッドと、このロッドの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられてこれら外周面及び内周面の間をシールするオイルシールと、前記ハウジングに連通してオイルを貯留するリザーブタンクとを備え、前記ロッドが前記ハウジングに対して出没するときにこのロッドの動作に応じて前記ハウジングと前記リザーブタンクとの間でのオイルの移動が生じるオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記リザーブタンクは、エア抜き構造を有するものであり、
    このエア抜き構造は、前記リザーブタンクの側面に同タンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及びこの穴が前記リザーブタンクの側壁に設けられること、及び前記リザーブタンクの高さ方向において前記穴の外側の開口部が内側の開口部と同じところまたはこれよりも低いところに設けられることを要件として構成されるものである
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
  3. 請求項1または2に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの側面に同タンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及びこの穴の外側の開口部が水平向きあるいは水平よりも下向きに開口することを要件として構成されるものである
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
  4. 請求項1または2に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの内部と外部とを連通する穴の少なくとも一部が同タンクの外側から内側に向かうにつれて上方に延びることを要件として構成されるものである
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
  5. 請求項1または2に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及び前記リザーブタンクの高さ方向において前記穴の外側の開口部が内側の開口部よりも低いところに設けられること、及び前記穴が複数の箇所にて屈曲することを要件として構成されるものである
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記ロッドは、その先端部が前記ハウジングの一方に設けられた開口部から突出するものであり、
    前記エア抜き構造は、前記リザーブタンクの側面に同タンクの内部と外部とを連通する穴が設けられること、及びこの穴が前記リザーブタンクの側壁のうち前記ロッドが前記ハウジングから突出する側とは反対側に設けられることを要件として構成されるものである
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のオイル密閉式チェーンテンショナにおいて、
    前記ロッドは水平方向に往復移動するものである
    ことを特徴とするオイル密閉式チェーンテンショナ。
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