JP4364954B2 - テアフラビンを豊富に含む茶抽出物の製造方法 - Google Patents

テアフラビンを豊富に含む茶抽出物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、緑茶葉(グリーン・ティー・リーフ)の酸化醗酵の間に生成される着色ポリフェノール類の一種中の一つである、テアフラビン(Theaflavin)の製造に関する。本発明は、テアフラビンを製造する方法、より具体的には、スラリー醗酵によるテアフラビンの製造方法と、テアフラビンを精製する方法、及び、テアフラビンを多量に含む冷水可溶性茶粉末とその製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
緑茶葉(摘み取られたもの)は、カテキン類として知られている無色のポリフェノール類を含む。緑茶葉中の四大カテキン類は、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、及びこれらのカテキン類の没食子酸エステルの形態のもの[没食子酸(GA)残基を有するもの]、即ち、エピカテキン−3−ガレート(ECG)及びエピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)である。これらの化合物の化学構造は、次の通りである。
【0003】
【化1】
Figure 0004364954
【0004】
紅茶を製造するための茶の緑葉の酸化醗酵[紅茶葉(ブラック・リーフ)を製造するための固体状態での醗酵、又は、紅茶抽出物を製造するためのスラリー醗酵]の間、カテキン類は、それらのキノン骨格部分に酸化的生物変換を受け、テアフラビン類(TFs)として知られている二量化化合物及びテアルビジン類(TRs)として知られている高分子量化合物となる。テアフラビン類及びテアルビジン類は、紅茶煎じ液のオレンジ色及び褐色の元であり、且つ、生成された紅茶の渋味及びこくにはっきりと寄与する生成物でもある。テアルビジン類は、テアフラビン類よりも、大きさが大きく且つより暗色である。酸化重合は、葉の中に存在するポリフェノール・オキシダーゼ及び/又はペルオキシダーゼによって媒介される生化学的酸化と、反応性種(スピーシーズ)の化学反応との組み合わせである。テアフラビン類は、テアフラビン(TF又はTF1)と、ある範囲内の関連する没食子酸エステル誘導体とを包含する。それらの中の4種の化学構造式は、次の通りである。
【0005】
【化2】
Figure 0004364954
【0006】
テアフラビン及びテアフラビン類は、紅茶の「透明性(Brightness)」と「すがすがしさ(Briskness)」の品質に寄与することが認識されている。それらはまた、紅茶の色にも影響を与える。大部分のテアフラビン類は、抗酸化性を有し、それゆえ、食品及び健康産業に大きな利益をもたらす。
【0007】
米国特許第5,532,012号[バレンタイン(Ballentine)等]は、紅茶クリーム(紅茶を熱水で煎じることによって得られる冷水不溶性物質)からのテアフラビン類の混合物であって、紅茶クリーム中に見出されるテアフラビン類の生来の混合物にまったく近似しているものの抽出について記載している。抽出されたテアフラビン類の混合物は、テアフラビン、テアフラビン一没食子酸エステル及びテアフラビン二没食子酸エステルを含む。
【0008】
本発明者等は、茶の醗酵の間に生じる酸化的生物変換、特に、茶製品における色の発生について、研究した。
【0009】
当該研究においては、スラリーの醗酵前における、緑茶葉(グリーン・ティー・リーフ)のタンナーゼ[フラバノール・ガレート・エステラーゼ(flavanol gallate esterase)]での前処理を利用した。これは、スラリー醗酵生成物に改良された赤みを与えることが公知である。タンナーゼの触媒作用を受ける一般的な反応は、緑茶葉中の没食子酸エステル化されたカテキン類及び他の没食子酸エステル化された化合物類の、没食子酸エステル結合の解裂である。ガロイル基が、クリーム醗酵に重要であり、且つ、タンナーゼは、紅茶クリームの脱没食子酸エステル化及び可溶化に広範に使用されているので、タンナーゼは、茶製品の透明性を改良することがよく知られている。スラリー醗酵の前の、緑茶の前処理のためのタンナーゼの使用もまた、例えば米国特許第3,812,266号[サンダーソン(Sanderson)等]において開示されている。当該特許では、タンナーゼは、液体(リカー)中の茶クリームの量の低減を第一の目的として使用されている。当該特許は、当該プロセスによって生ずる改良された色についても言及していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)及びエピカテキン−3−ガレート(ECG)は、新鮮な茶葉中において、最も豊富なカテキン類であり、且つ、それらの没食子酸エステル結合は、タンナーゼ処理によって解裂され、EGC、EC及び没食子酸を生じる。スラリー醗酵前のタンナーゼ前処理の全体としての影響は、それゆえ、醗酵の開始時に存在するカテキン類の混合物を単純にすることである。従来は、一般的に、その後の酸化の間に、量が増えた没食子酸が単純な(ジヒドロキシ−B環)カテキン類(例えばEC)と結合し、テアフラビン酸類の量を増やすと思われていた。つまり、テアフラビン酸類の合成の間、没食子酸は、これらのテアフラビン類縁体(アナログ)類の合成において、ガロカテキン(トリヒドロキシ−B環)として作用する。没食子酸は、ベンゾトロポロン(benzotropolone)環構造を形成するように、他のガロカテキン類(即ち、EGCG及びEGC)と反応しはしないであろう。テアフラビン酸類は、その色が特徴的な明赤色であり、そのため、それらの蓄積の結果として、著しくよりよい色調の液体(リカー)が製造されるであろう。米国特許第3,812,266号では、タンナーゼ前処理によって生ずる改良された色の説明として、エピテアフラビン酸(これは、明赤色の紅茶様の色を有する)の生成が高められたことが提案されている。
【0011】
この提案が事実であるか否かについての確認を含めて、本発明者等は、茶の醗酵の間に生じる酸化的生物変換、特に、茶製品における色の発生について、更に研究し、その反応機構を解明した。本発明は、その研究結果を応用して、優れた色調の液体を生じる茶製品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
研究の結果、本発明者等は、少なくともサンダーソン等の系においては、タンナーゼ前処理によって生ずる改良された色は、エピテアフラビン酸の生成が高められたことによるという説明は誤りであること、及び、実際、タンナーゼ前処理の後に生じた改良された色は、テアフラビンの量が増えたためにもたらされていること(実施例3を参照されたい)を知見した。タンナーゼ処理により、没食子酸エステル化されたカテキン類であるECG及びEGCGの脱没食子酸エステル化が行われ、脱没食子酸エステル化されたカテキン類、即ちEC及びEGCが生ずる。その後の醗酵の間の酸化において、カテキン類であるEC及びEGCは、もしそうでなければ製造されるかもしれない、先にその化学構造式を示したテアフラビン類の混合物というよりはむしろ、テアフラビンを生ずるように反応する。モデルとなる酸化研究の結果、ECとEGCがより高い効率で反応し、それら各々の没食子酸エステル化された対応化合物よりも、テアフラビンが形成されることが示された。そして、タンナーゼ処理は、テアフラビンを最大量で生成するために、好ましくはスラリー状態で醗酵された茶葉中の没食子酸エステル化されたカテキン類の、実質的に完全な脱没食子酸エステル化を引き起こすのである。この反応機構の説明により、高い収率で実質的に純粋なテアフラビンを製造するための新規な方法への道が開かれ、更に、テアフラビンが豊富な抽出物(エキストラクト)及び粉末を作るための鍵も提供された。
【0013】
即ち、本発明は、その第一の態様として、広くは、テアフラビンを豊富に含む茶抽出物の製造方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、且つ、当該スラリーを醗酵させてテアフラビンを豊富に含む茶抽出物を生ぜしめることを含む。
【0014】
本発明は、第二の態様として、テアフラビンを豊富に含む、冷水可溶性茶粉末の製造方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)を得、且つ、当該茶液を乾燥してテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめることを含む。
【0015】
本発明は、第三の態様として、テアフラビンを豊富に含む、冷水可溶性茶製品の他の製造方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)と使用後の葉(ドール)とを得、即ち、茶液と使用後のドールとに分け、当該茶液を乾燥して茶液に由来するテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該ドールの溶剤抽出を一回以上行い、当該抽出物を乾燥して使用後のドールに由来するテアフラビンを豊富に含む粉末を生ぜしめ、且つ、茶液に由来するテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を、使用後のドールに由来するテアフラビンを豊富に含む粉末と混合して、テアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめることを含む。
【0016】
本発明は、第四の態様として、テアフラビンを豊富に含む、冷水可溶性茶製品の更に他の製造方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)と使用後の葉(ドール)とを得、即ち、茶液と使用後のドールとに分け、当該ドールにつき溶剤抽出を一回以上行って抽出物を得、当該茶液と当該抽出物とを混合し、且つ、得られた混合物を乾燥してテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめることを含む。
【0017】
本発明は、第五の態様として、テアフラビンの製造方法を提供する。当該方法は、スラリー醗酵の前に、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、スラリー醗酵を行い、且つ、スラリー醗酵の生成物からテアフラビンを分離することを含む。
【0018】
本発明は、第六の態様として、テアフラビンの精製方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)を得、当該茶液を乾燥してテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該粉末を水に再懸濁させ、当該再懸濁された粉末を有機溶剤で抽出し、即ち、当該粉末中の成分を有機溶剤で抽出し、且つ、抽出された粉末中の成分を、テアフラビンを溶出するクロマトグラフィー・カラムに通すことを含む。
【0019】
本発明は、第七の態様として、テアフラビンの他の精製方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)と使用後の葉(ドール)とを得、即ち、茶液と使用後のドールとに分け、当該茶液を乾燥して茶液に由来するテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該ドールにつき溶剤抽出を一回以上行い、当該抽出物を乾燥して使用後のドールに由来するテアフラビンを豊富に含む粉末を生ぜしめ、茶液に由来するテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を、使用後のドールに由来するテアフラビンを豊富に含む粉末と混合して、テアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶生成物、即ち粉末を生ぜしめ、当該生成物(粉末)を水に再懸濁させ、当該再懸濁された生成物(粉末)からの有機溶剤抽出を行い、即ち、当該再懸濁された粉末中の成分を有機溶剤で抽出し、且つ、抽出された成分を、テアフラビンを溶出するクロマトグラフィー・カラムに通すことを含む。
【0020】
本発明は、第八の態様として、テアフラビンの更に他の精製方法を提供する。当該方法は、緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)と使用後の葉(ドール)とに分け、当該ドールにつき溶剤抽出を一回以上行って抽出物を得、茶液と抽出物とを混合し、得られた混合物を乾燥してテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該粉末を水に再懸濁させ、当該再懸濁された粉末中の成分を有機溶剤で抽出し、且つ、抽出された成分を、テアフラビンを溶出するクロマトグラフィー・カラムに通すことを含む。
【0021】
本発明は、第九の態様として、上記のテアフラビンの製造方法又は精製方法によって製造されたテアフラビンを提供する。
【0022】
本発明は、第十の態様として、このようにして製造されたテアフラビンを含む、茶を基本とする飲み物又は他の食品を提供する。
【0023】
上記の発明において、タンナーゼでの処理は、不活性雰囲気中(特に、窒素の存在下)等の、醗酵が進行しない条件下に行うのが好ましい。
【0024】
また、スラリーのタンナーゼでの処理は、茶の固体1kg当たり少なくとも約3200タンナーゼ活性単位の量でタンナーゼを用い、約25℃にて約60分間行うのが好ましい。
【0025】
スラリーの醗酵は、4.0〜5.5の範囲内のpHにて、15〜30℃の範囲内の温度にて、30〜75分間の範囲内の時間行うのがよい。
【0026】
緑茶として、EGC(G):EC(G)比が約3:1であるものを使用するのがよい。
【0027】
溶剤抽出に用いる溶剤は、水及び有機溶剤類の中から選択されるのが好ましい。
【0028】
その水は、15℃と25℃との間の温度を有するか、90℃と100℃との間の温度を有するのがよい。
【0029】
最も好ましい溶剤抽出は、冷水(15℃〜25℃)、熱水(90℃〜100℃)、及び有機溶剤(特にメタノール)での連続的な抽出である。
【0030】
テアフラビンの精製方法においては、冷水可溶性茶粉末を水に再懸濁させた後に水に溶解させ、その水溶液について有機溶剤抽出を行うのがよく、また、その抽出の結果得られる有機溶剤抽出物を、乾燥して粉末とし、その粉末を適切な溶剤に溶かし、得られた溶液をクロマトグラフィー・カラムにのせる(アプライする)のがよい。
【0031】
この明細書において、「茶」とは、カメリア・シンセンシス(Camellia sinsensis)又はカメリア・アサミカ(Camellia assamica)に由来する葉物を意味する。「茶」は、また、これらの植物の葉物のブレンド物を含むことも意図されている。
【0032】
「リーフ・ティー」は、煎じる前の形態の、一種以上の茶の原体を含む茶製品を意味する。
【0033】
「テアフラビン」とは、(−)−エピカテキン及び(−)−エピガロカテキンの酸化及び縮合生成物である、化合物である。「テアフラビン」は、TF1又は単にTFとしても知られている。「テアフラビン類」とは、茶カテキン類の、ジ−及びトリ−ヒドロキシ化B環での酵素的酸化及び縮合によって形成される化合物類(テアフラビンを含む)を、集合的に述べている。これらの化合物の中の幾つかの化学構造式は、先に記載した通りである。本発明は、テアフラビン類というよりはむしろテアフラビンが豊富な、抽出物、粉末及び製品の製造に関する。
【0034】
「ドール(dhool)」とは、液体に浸して柔らかくされ、しおれさせられた緑茶葉(グリーン・ティー・リーフ)をいう。
【0035】
「含む」という語は、必ずではないが、「のみからなる」又は「から構成される」を含む意味を有することが意図されている。換言すれば、一覧で挙げられた工程又は任意の工程は、必ずしも網羅的である必要はない。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明では、スラリー醗酵に先立ち、ドールがタンナーゼで処理される。これは、適切な時間、適切な温度にて、窒素雰囲気中(醗酵が生じるのを防ぐため)で、懸濁液状態で、ドールとタンナーゼとを混合することによって行うのが都合がよい。適切な条件は、実験によって容易に決定され得る。キッコーマン(KIKKOMAN、KIKKOMANは商標である)のタンナーゼを、茶固体の重量の少なくとも約0.0064重量%の量[即ち、3200タンナーゼ活性単位(T.A.U.)/kg−茶固体(ここで、茶葉固体含有量は、葉の水分量を測定した後に決定される)、キッコーマンのタンナーゼは、50,000T.A.U./gである。]で用い、25℃にて60分間処理したときに、良好な結果が得られた。即ち、没食子酸エステル化されたカテキン類の定量的な脱没食子酸エステル化がもたらされた。
【0037】
スラリー醗酵生成物(テアフラビン及び任意にその他の物質を含む)は、一般的には、当業者にはよく知られている従来の技術によって、例えば、一般的には、米国特許第3,812,266号に開示されているような方法で調製され得る。スラリー醗酵は、一般的には、制御された時間、制御された温度(例えば25℃)で、ドールのスラリーに空気又は酸素をバブリングさせて、カテキン類を酸化的生物変換させることを含む。固体がスラリーから除去され(脱葉され)、得られた液体(リカー)が任意に濃縮され、その後乾燥(例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥)されて、粉末又は微粒が生じる。
【0038】
スラリー醗酵条件は、好ましくは、可能な限りテアフラビンの生成が最大化されるように調整される。
【0039】
醗酵は、好ましくは、4.0〜5.5の範囲内のpHにて行われる。醗酵温度は、好ましくは15〜35℃の範囲内である。醗酵は、好ましくは30〜120分の、より好ましくは30〜75分の範囲内の時間行われる。テアフラビンの生成を最大化するために、醗酵は、EGCが用い尽くされたときに、止められるべきである。この後では、残留ECによる酸化のために、テアフラビン量は減少するからである。醗酵は、米国特許第3,812,266号で使用されているような過酸化水素を添加せずに行われるべきでもある。過酸化水素の添加は、(全体として色を濃くしつつ)テアフラビンを分解するからである。同様に、外来的なペルオキシダーゼ類、ラッカーゼ(laccase)類及びポリフェノール・オキシダーゼ類等の酵素類は、これらはテアフラビン量を低減させるかもしれないので、存在すべきではない。
【0040】
緑葉(グリーン・リーフ)原料物質は、テアフラビン生成量を最適化するために、選択されることもできる。好ましい原料物質は、約3:1のEGC(G):EC(G)比を有する(実施例3を参照されたい)。1モルのEGCは、1モルのECと反応する(脱没食子酸エステル化された後)けれども、酸化速度が異なるため、3:1が好ましいモル比である。適切なモル比を有する茶のクローンが、この要求のために選択され得る。
【0041】
本発明は、実質的に純粋なテアフラビンを、高収量で製造することを可能にする。タンナーゼ処理なしに得られるものの少なくとも11倍のテアフラビン収量が、本発明の方法に従って、その最も単純な形態において達成される。少なくとも11g−テアフラビン/kg−ドールというテアフラビン収量が、その方法によって達成される。
【0042】
水相の組成分析に基づく、スラリー醗酵の時間の経過に沿った初期の研究から、テアフラビン量は、所定時間の醗酵後にピークに達し、その後醗酵時間の経過に伴って減少することが示された。これは、テアフラビン酸化が生じている又はテアフラビンが細胞性物質に結合していることを暗示している。モデル的な系での研究において、テアフラビンは、急速に蓄積し、その後その量は一定となった(実施例3を参照されたい)。これは、スラリー醗酵の間、テアフラビンが、酸化されるよりはむしろ葉物質に結合していることを示唆した。
【0043】
それゆえ、徹底的な抽出のプロトコルが、スラリー混合物からのテアフラビンのより完全な回収を可能にするために開発された。この抽出手法の使用により、醗酵の間であってテアフラビン量がピークに達した後、テアフラビンは酸化されていたのではなく、実際には、ドールと結合していたことが示された。実際、液体(リカー)中のEC量とテアフラビンのピーク量との比較の結果、テアフラビン生成量は、およそ理論最大値であり、且つ、テアフラビンを酸化できる「残留」ECは、殆どないことが明らかにされた。
【0044】
改良された抽出手法では、液体(リカー)を除去した後に、ドールの冷水及び熱水洗浄を採用することにより、かなりの量の追加のテアフラビンが、タンナーゼ処理スラリーから得られ得ることが示された。「冷水」とは、15℃と25℃との間の温度を有する水を意味し、これは、好ましくは、室温であるかもしれない。「熱水」とは、90℃と100℃との間の温度を有する水、好ましくは新たに沸騰された水を意味する。液体(リカー)単独からは、テアフラビンのわずかに30%しか回収されないのに比べて、液体(リカー)と、冷水及び熱水洗浄液とを一緒にすることにより、全体として、テアフラビンの約90%が回収されるかもしれない。
【0045】
改良された抽出法は、タンナーゼ処理スラリーの醗酵物からのテアフラビン収量を最大化するために、醗酵条件(温度−実施例5参照、pH−実施例6参照)を最適化するために採用された。総テアフラビン量を考慮すると、pH4.0及び15℃が、これらの条件下で得られる利益は、「自然」の醗酵条件と比べて少ないほうではあったけれども、最適操業条件であることが見出された。しかしながら、スラリーの液相中に存在するテアフラビンの量に、温度は影響を与えず、一方、その割合は、醗酵温度の上昇と共に増加した。
【0046】
テアフラビンがドールに結合されているそのメカニズムは不明である。理論によって拘束されることを望んではいないが、タンナーゼで処理された醗酵物から得られた結果からは、様々な異なる条件下で、熱水及び溶剤画分中に見出されるテアフラビン(即ち、最も強く結合されたテアフラビン)の量は、殆ど一定であり、且つ、総テアフラビンにおける違いは、液体(リカー)及び冷水画分中に存在するテアフラビン(緩く結合されたテアフラビン)の相対量に反映されていることが示唆されている。これは、テアフラビンが、ドール上の一部の「高親和」部位に優先的に結合し、且つ、それらが「飽和された状態」となるとき、残りのテアフラビンは、緩く結合した状態となる(冷水画分)か、又は、液体中で溶液状態にあることを暗示するかもしれない。これら後者の二種類の画分間のテアフラビンの均衡は、醗酵温度の影響を受ける。即ち、より高温では、テアフラビンのより多くの部分が液体(リカー)中に存在する。テアフラビンの製造のための最適温度(15℃)において醗酵させ、その後、スラリーを35℃まで加熱してより多くのテアフラビンを液体中に「解き放つ」試みを行ったところ、15℃の一定温度での醗酵からみて、不十分な改良しか生じなかった。これは、一旦「結合される」と、テアフラビンは容易には移動されないことを暗示するであろう。
【0047】
使用後のドールから、冷水及び熱水で解き放たれ得る追加の物質は、激しく着色されており、且つ、それに比例して、液体(リカー)よりもテアフラビン含有量はずっと高い。この物質は、粉末製品にブレンドするために使用され得、より濃い/異なる色を加えるか、あるいは、スラリーから分離した液体(リカー)と一緒にされて、当該液体単独から作られたものに比べて、かなり暗赤色が強い冷水可溶性粉末を生ずる。このように、スラリー醗酵は、コスト的に有効で、天然の冷水及び熱水に可溶性の茶粉末を製造する手段を提供する。
【0048】
テアフラビンの製造のための一つの方法としての、タンナーゼ・スラリーの使用に関して、最大の抽出データでは、8g(FW)のドールからの200マイクロモルのテアフラビンの生成が可能であることが明らかにされた。この数値は、テアフラビン14.1g/kg(FW)−ドールに相当する。最適化されたプロセスを用いて、テアフラビンを11.7質量(マス)%の量で含む冷水可溶性茶粉末が生成された(表8の実施例8を参照されたい)。これは、テアフラビン11g/kg(FW)−ドールという最終収量に相当する。
【0049】
本発明のテアフラビンの精製方法の実施にあたり、テアフラビンは、冷水可溶性粉末からの溶剤(適切には酢酸エチル)抽出、当該抽出物のクロマトグラフィー・カラムへのアプライ、及びエタノールによるカラムからの溶出により、スラリー醗酵生成物から分離されるのが都合がよい。テアフラビンが豊富な画分は、色で同定され得る。
【0050】
スラリー醗酵生成物は、一般的には粉末の形態である。当該粉末は、好都合なことには、水と混合され、溶剤抽出を受けることができる水溶液/水懸濁液を形成する。最初の抽出は、カフェイン類及び脂質類を除去するために、好ましくはクロロホルムを用いて行われ、その後に、テアフラビンを取り出すために、酢酸エチルが使用される。一般的には、酢酸エチル抽出物は、その後、水で洗浄され且つ乾燥される。乾燥後に残った物質は、その後、エタノールに溶解され、エタノールで予め平衡化された適切な樹脂ビーズ[例えばセファデックス(SEPHADEX)、SEPHADEXは、商標である]のクロマトグラフィー・カラムにのせられ、画分がエタノールで溶出され得る。テアフラビンが豊富な画分(色で同定され、HPLC分析で確認される)が、集められ且つまとめられ得る。
【0051】
スラリー醗酵生成物からのテアフラビンの分離のために、所望により、他の適切な技術が使用され得る。
【0052】
前記したように、テアフラビンは、茶の色、「透明性」及び「すがすがしさ」に影響を与えることが知られている。その抗酸化性のために、テアフラビン(及び恐らく他のテアフラビン類)は、加工食品類及び油類等の食品における抗酸化成分として、健康増進用の製品における成分として、及び茶製品における色特性及び抗酸化性のための成分としてといった用途を含む、潜在的な用途を有する。例えば、本発明の方法で製造されたテアフラビンを、抗酸化成分として含むことが有利であるかもしれない食品材料としては、揚げ物用油脂類、ポテト・フレーク類、ベーカリー製品類、肉乳化物類、調理済穀物加工食品(シリアル)類、即席麺類、豆乳、鶏製品類、ソーセージ、マヨネーズ及びマーガリン等の乳化製品類、冷凍魚、冷凍ピザ、チーズ及び動物用食品類が挙げられる。
【0053】
【実施例】
実施例1
タンナーゼで処理されたスラリーの醗酵におけるテアフラビンの製造及びこれに続く高純度での分離
原料
新鮮なケニア茶(クローン(Clone) BBK 35)を摘み取り、一晩しおれさせ、次にドライアイス中で冷凍して英国へ輸送した。
【0054】
醗酵
しおれさせた葉をCTC(粉砕/引き裂き/カール)機を3回通過させることによって柔らかくし、10mgのキッコーマン(KIKKOMAN)のタンナーゼ(キッコーマンは商標である)の存在の下で、25℃において60分間、(醗酵を避けるための)窒素散布の下、5lのスラリー醗酵槽中で、得られたドール(dhool )を水に懸濁した(388gの葉/2.5lの水)。これらの条件は、没食子酸エステル化されたカテキン類の定量的な脱没食子酸エステル化をもたらす。醗酵は、60分間、1l/分の空気流速で、625rpmで懸濁液を撹拌しながら進行される。
【0055】
テアフラビンの抽出/精製
醗酵液を4層のモスリンを通過させることによって葉を除去した。残渣のドールを500mlの蒸留水で洗浄し、洗浄液とモスリンを通過した液(リカー)とを混合し、その混合物を4℃へ冷却し、遠心し、そして上清をパイロット・スケールの凍結乾燥機を使用して凍結乾燥させた。これは約25gの粉末を生じた。
【0056】
実験室規模のテアフラビンの精製は、以下の通りである。5gの粉末を100mlの水に再度懸濁し、完全に溶解するまで撹拌した。次にその水性画分(水溶液)から、100mlのヘキサン、100mlのクロロホルムで2回、及び100mlの酢酸エチルで4回、連続して抽出した。ヘキサンは脂質を除去する。クロロホルムはカフェイン及び残余の脂質を除去する。酢酸エチル画分を一緒にし、同体積の水で再抽出した。次に、酢酸エチル画分を、約2gの無水MgSO4で乾燥させ、次に完全に乾燥させ、50mlの水に再懸濁させ、凍結乾燥させた。このバッチ工程は、スラリー液に由来する全体で25gの凍結乾燥された粉末に対して繰り返され得る。
【0057】
5gのスラリーに由来する粉末が約628mgの酢酸エチル可溶性物質を生じた。酢酸エチル画分は、質量で、34%の没食子酸と、64%のテアフラビンとを含んでいた。
【0058】
テアフラビンは、さらに以下の方法で精製された。セファデックス(SEPHADEX、これは商標である)LH20のカラムを1lの水性アセトンで洗浄し、その後1lの無水アルコールで洗浄した。約1gの酢酸エチル可溶性物質を100%エタノールに溶解し、カラムにのせ、次に100%エタノールで溶出した。50の100mlの画分を集めた。テアフラビン含有画分(画分33乃至50)を色で同定し、HPLCによって分析した。
【0059】
画分を一緒にし、乾燥させ、水に再懸濁し、凍結乾燥した。一緒にした画分の詳細、テアフラビン収量、及びテアフラビン純度(%)(HPLCにより測定)を、以下の表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0004364954
【0061】
図1は、mAU*s単位で測定された画分33乃至50中のテアフラビンの量を示すグラフである。この単位は、HPLC分析で測定された各画分中のテアフラビンのピーク面積を表わす。ピーク高さは、ミリ吸光度単位(mAU)で記録され、ピーク幅は秒で記録され、これらがmAU*s単位における面積を与える。
【0062】
この実施例において、醗酵プロセスは、テアフラビン製造のために十分に最適化されてはいなかった。タンナーゼ処理のみが最適化され、カテキン類の定量的な脱没食子酸エステル化がなされた。醗酵時間、温度、pH、原料(最初のカテキン組成物)などのような他の工程要素は、テアフラビン製造を最大化するのに最適化され得た。従って、得られたテアフラビンの収率は、実例としてのみ扱われるべきである。テアフラビン抽出法は、非常に効率的である。
【0063】
実施例2
タンナーゼ前処理されたドールを用いる小規模醗酵
原料
BBKクローン35の冷凍された、しおれさせられた葉を、CTC機を4回通過させてドールを製造し、−80℃において冷凍保存した。
【0064】
醗酵
振蘯フラスコ・スラリー醗酵を以下のように実施した。ドール(8g)を、振蘯フラスコ中の42mlの水に添加し、窒素の流れの下で10分間、磁気スターラーで撹拌しながら解凍させた。キッコーマン(登録商標)のタンナーゼを添加し(1mg/フラスコ)、スラリーをさらに60分間窒素の下でインキュベーションした。その後、フラスコを振蘯インキュベーター・テーブルに移し、200rpmにて75分間醗酵させた。標準的な醗酵を同様に実施したが、タンナーゼの添加をせず、窒素の下でのインキュベーションも行わなかった。
【0065】
タンナーゼ処理の始めと終り、及び醗酵の間15分おきにサンプル(1ml)をスラリーから採取した。これらをすぐに遠心分離し、HPLC分析の前に、上清200μlを、800μlの酸化防止溶剤(15%(v/v)アセトニトリル、1.7%(v/v)酢酸、1mM EDTA、21.2mMアスコルビン酸)へ添加した。
【0066】
メタノール抽出
ドール(1g)を40mlの70%(v/v)メタノール水溶液中で30分間還流させた。一旦冷却し、抽出物の最終的な体積を測定し、HPLC分析の前に、200μlを800μlの酸化防止溶剤へ添加した。
【0067】
HPLC分析
サンプルを、二極管配列検出器(diode array detection)を有するHP1100 HPLCを使用して分析した。
【0068】
タンナーゼ処理によって生じる化学的変化を研究するために、小規模(50ml)での醗酵を、タンナーゼ処理をして、及びタンナーゼ処理をしないで実施し、非処理ドール(t=0)、窒素散布下で60分間懸濁した後(t=60)、及び75分間の醗酵後(t=135)において、HPLC分析を行った。得られたHPLCの軌跡を図2乃至図6に示す。
【0069】
図2において(t=0)、種々のピークは以下の化合物を表わしている。
GA=没食子酸
EGC=エピガロカテキン
CAF=カフェイン
EC=エピカテキン
EGCG=エピガロカテキン−3−ガレート
ECG=エピカテキン−3−ガレート
【0070】
図3及び4は、タンナーゼ処理を行わなかった場合と行った場合についての、窒素散布下で60分間懸濁した後の代表的な軌跡である。タンナーゼ処理なし(図3)では、図2に同定されるピークに変化は殆どない。これに対し、タンナーゼ処理した後では、ECG及びEGCGについては明白ではないが、EC、EGC、及びGAについては、そのピークが増大した。これらの結果は、没食子酸エステル化されたカテキン類の完全な脱没食子酸エステル化(ECGからECへ、EGCGからEGCへ)が、使用したタンナーゼ処理によって達成されることを示している。
【0071】
図5及び図6は、最初の60分間の懸濁に続いて、75分間醗酵を行った後のHPLCの軌跡である。図5は、タンナーゼ処理なしの場合の結果を示し、図6は醗酵前にタンナーゼ処理をした場合の結果を示す。図5(t=135、タンナーゼ処理なし)は、「標準の」テアフラビン類全てについてのピークを示している。
【0072】
TF=テアフラビン
TFMG=テアフラビン−3−ガレート
TF′MG=テアフラビン−3′−ガレート
TFDiG=テアフラビン−3,3′−ジガレート
【0073】
これに対し、図6(t=135、タンナーゼ処理あり)は、テアフラビンのみの形成を示している。テアフラビンは、タンナーゼ処理をしなかったサンプルにおけるよりもずっと多い量で存在しもする。タンナーゼ処理に続く醗酵の後に、大量の没食子酸(GA)も存在する。
【0074】
結果(μmol・g-1(FW)の量で示す)を以下の表2に要約する。表中、t=0における値は、溶剤抽出されたドールについての値であり、他の値は、タンナーゼ処理なし(−タンナーゼ)での5分及び75分後、及びタンナーゼ処理(+タンナーゼ)の60分後、及びタンナーゼ処理(+タンナーゼ)後の75分間の醗酵後のスラリー液の組成である。
【0075】
【表2】
Figure 0004364954
【0076】
実施例3
基質の変化を伴うモデル酸化
所定のカテキンの混合物と茶葉抽出物とを使用して、モデル酸化の研究を実施した。EGC/EC/GAを異なる割合で含むこれらの混合物を、茶葉抽出物と反応させ、種々の時間の後に生じたテアフラビン(TF)とエピテアフラビン酸(eTF acid)の量を測定した。インスタント緑茶から精製したカテキン類を、種々の濃度(総カテキン濃度6mM)において、1mlの総反応体積において、リン酸/クエン酸緩衝液(pH5.5)及び0.05Uのポリフェノール・オキシダーゼ(PPO)活性を含む茶葉酵素抽出物と混合した。酵素抽出物は、約1gの冷凍された、しおれさせられたBBKクローン35リーフを、50mMのMES(2−[N−モノモルホリノ]エタンスルホン酸)緩衝液[pH5.5、0.3%トリトン(Triton)X−100、1M NaCl、750mgPVPP(ポリビニルポリピロリドン)]中にて粉砕し、次に遠心分離を行い、PD−10カラム[ファルマシア(Pharmacia)]を通して脱塩することによって調製した。PPO活性は、総体積3mlのリン酸/クエン酸緩衝液中で脱塩された抽出物100μlの△A400を75μlの0.2Mカテキンを添加して反応を開始させて測定することによって測定した。1ユニット(U)とは、△A400/分が1.0であることを示す。混合物は30℃において軌道混合器(orbital shaker)で、200rpmでインキュベーションした。サンプルを適当な間隔で採取し、400μlの酸化防止溶剤(15%(v/v)アセトニトリル、1.7%(v/v)酢酸、250ppmアスコルビン酸、250ppmEDTA)を添加することによって反応を停止した。次に、テアフラビン及びエピテアフラビン酸の生成を、逆相HPLCによって測定した。
【0077】
実験は、EGC/EC/GAのモル比が、3:1:2及び0.5:1:1のEGC/EC/GA混合物を用いて実施した。結果を図7に示す。
【0078】
これらの結果は、3:1:2のモル比のEGC/EC/GA混合物[タンナーゼ処理されたドールにおいて通常見受けられる比に近付けている(実施例2の表2を参照のこと)]を用いた場合は、得られる主要な反応生成物はテアフラビンであり、実際、エピテアフラビン酸は形成されていない。しかし、ECG量が低減されると、例えば、0.5:1:1のモル比のEGC/EC/GA混合物を使用すると、エピテアフラビン酸が形成され得、それはテアフラビンの量に等しい。
【0079】
従って、この実施例は、米国特許3,812,266号における記載とは反対に、タンナーゼ処理されたドールの醗酵の間に生じた濃い色は、エピテアフラビン酸の形成のためではなくて、むしろテアフラビンの量が高められたことによるということを示している。
【0080】
実施例4
改良された抽出法
タンナーゼ前処理された醗酵
ドール由来の成分の抽出効率を増加させるために、タンナーゼ処理された物質について、種々の替わりの方法が試験された。まず、タンナーゼ処理されたスラリーを、モスリンを通して葉を除去し、残渣のドールを50mlの冷水で4回、50mlの沸騰水で4回洗浄し、最後に沸騰した70%のメタノールで抽出した。この方法では、テアフラビンの大部分(>93%)が冷水/熱水洗浄の組み合わせにより抽出された(図8を参照のこと)。初めの熱水洗浄液中のテアフラビンの量は、最後の冷水洗浄液中での量よりも多く、溶剤抽出物中の量は、最後の熱水抽出物中よりも量が多い。この発見は、全てのテアフラビンを抽出するためには、異なる抽出段階が必要であることを示した。すなわち、抽出に熱水を必要とする物質は、冷水で抽出されず、有機溶剤画分中の物質は、熱水中には抽出されないということを示した。
【0081】
他の試験された方法は以下の通りであった。
#1.200mlの室温の水に懸濁されたスラリーを濾過するのに使用されたモスリンは、「ティー・バック」として使用され、ドールは10分間浸出された。葉を除去した後、残渣のドールは沸騰水中で同様に浸出された。
#2.上記の1のようにするが、各濾過工程の後に、ドールの追加の洗浄を行った。
#3.使用後のドールは、モスリンからかき集められ、50mlの室温の水で4回浸出され、その後50mlの沸騰水で4回浸出された。
#4.使用後のドールは、モスリンからかき集められ、200mlの冷水で10分間浸出された。濾過した後に、これを沸騰水を用いて繰り返した。
#5.上記の4のようにするが、200mlでなく100mlの容量で10分間の浸出を行った。
【0082】
全ての場合において、残渣のドールは、残りの物質を抽出するために、次に沸騰した70%(v/v)のメタノール水溶液にて抽出された。
【0083】
これらの方法全てにおいて、類似の結果が得られ、従って、#5の方法、すなわち、「密でない葉の」ドールの100mlの冷水、100mlの熱水での浸出、及び次にメタノールでの抽出(図9参照)が、受容可能な結果を与え、実施するのに最も簡単なプロトコルであったために、全てのその後の研究のために選択された。この方法では、テアフラビンの91%超(及び没食子酸/カフェインの99%超)が水で抽出された。最適化された抽出プロトコルは、以下の通りである。
【0084】
抽出
醗酵の終りに、スラリーをブフナー漏斗を使用して4層のモスリンを通過させて葉を除去し、液体(リカー)の体積を測定し、上記のようにサンプルをHPLC分析のために採取した。次に、残渣のドールから以下のようにして抽出を行った。ドールをモスリンからかき集め、100mlの室温の水中で10分間浸出させた。次にこのスラリーをモスリンを通して濾過させ、この「冷水」抽出物の体積を測定し、サンプルをHPLC分析のために採取した。ドールを再度モスリンからかき集め、100mlの沸騰水中で10分間浸出させ、次に濾過し、この「熱水」抽出物を冷水抽出物と同様にサンプリングした。残渣のドールは、実施例2に記載したように、最後に沸騰した70%(v/v)のメタノール水溶液中において抽出された。
【0085】
実施例5
テアフラビン収量に対する醗酵温度の影響
次に、最適化された抽出プロトコルを、タンナーゼ処理されたスラリー中でのテアフラビン生成に対する醗酵温度の影響に関する研究に使用した。スラリー液(リカー)のサンプルは、75分間の醗酵の間、15分間隔で採取し、その液中のテアフラビン量を監視した(図10を参照のこと)。醗酵の終りに、上記のようにスラリーからの抽出を行い、種々の画分中のテアフラビンの総量を測定した(図11を参照のこと)。
【0086】
a)液中のテアフラビン量
全ての温度において、液(リカー)中のテアフラビン量は、醗酵の最初の30分間において迅速に増加し、より高い温度においてより高いレベルに到達した。30分を越えると、15乃至25℃において実施された醗酵と30乃至40℃において実施された醗酵との間には顕著な違いがあることが明らかとなった。より低い温度においては、特に25℃においては、液中のテアフラビン量はこのピークから迅速に低下し始めた。これに対し、より高い温度、30℃及び35℃では、テアフラビン量は、その量が低下し始める60分までは一定のままであった。40℃においては、45分からテアフラビン量は低下し始め、液の最終的なテアフラビン量は、30℃及び35℃において見られた量と同様であった。これらの結果は、より高い温度においては、テアフラビン合成は最も多く、代謝(ターンオーバー)は最も低いということを示すと考えられるが、これらのいずれもが予期されなかった。
【0087】
b)スラリーから抽出された総テアフラビン
醗酵の終り(75分)でのスラリーの徹底的な抽出の結果を図11に示す。テアフラビンの合計量は、比較的温度に影響されなかったように思われる(実際、より低温において僅かにより高いレベルである)ため、醗酵の間のスラリー液のテアフラビン測定は、総テアフラビン生成量が誤解される事態を引き起こすことが理解され得る。形成されたテアフラビンの総量、及び溶剤及び熱水画分における量は、異なる温度においても広範に同様である。醗酵温度を変化させることの主たる影響は、実際に、液(リカー)画分と冷水画分(おそらく緩くドールに結合している)の間のテアフラビン分布を変化させることである。つまり、15℃においては液(リカー)中のテアフラビンの量は32%であったが、これは40℃において63%へと増加し、これに対応して、冷水画分中のテアフラビンの量の、15℃における42%から40℃における10%の減少があった。これは、30分間の醗酵の際のピークに続く、液(リカー)中のテアフラビンの減少は、テアフラビンがドールに結合するようになるためであり、更なる酸化のためではないことを示す。
【0088】
実施例6
テアフラビン収量に対する醗酵pHの影響
本発明者らは、タンナーゼ処理されたスラリーの醗酵でのテアフラビン収量に対する、pH4.0とpH5.6との間での醗酵pHの変動の影響を研究した。タンナーゼ前処理の後、スラリーのpHは4.7付近であり、このpHを、塩酸又は水酸化ナトリウムの添加によって調整した。醗酵pHを4.0から5.4へ変化させても、液(リカー)中に存在するテアフラビン量にはほとんど影響はしなかったが(図12を参照のこと)、pH5.6においてはその量は幾分低かった(pH4.0においてテアフラビン量のピークは30分よりも45分において生じた)。抽出可能なテアフラビンの合計量を考慮すると(図13を参照のこと)、pH4.7とpH5.4との間にはほとんど差はなかったが、pH5.6では幾分その量が減少した。しかし、pHを4.0へ下げると、「標準」のpH4.7の場合と比べて総テアフラビン収量は高められ、その追加のテアフラビンは冷水/熱水洗浄液中に存在した。
【0089】
実施例7
冷水洗浄及び熱水洗浄画分の説明
タンナーゼ処理された15℃及び35℃醗酵物からの、液(リカー)、冷水抽出物及び熱水抽出物のサンプルを、冷蔵し、脱クリーム(decream)し、凍結乾燥させて、得られた粉末を同濃度(0.32%(w/v))で再懸濁させた。色の測定を行い、かつ、脱クリーム前に、各画分の質量による組成について測定した。二つの醗酵物からの各画分の組成をHPLC分析によって決定した。これらを表3及び表4にそれぞれ示し、色のデータを表5に示す。
【0090】
【表3】
Figure 0004364954
【0091】
【表4】
Figure 0004364954
【0092】
【表5】
Figure 0004364954
【0093】
各ケースにおいて、冷水及び熱水抽出物中の物質は、液(リカー)よりも高い割合でテアフラビンを含み、例えば、熱水抽出物は、液(リカー)に比べて、百分率ベースで約2.5倍の多量のテアフラビンを含んだ。冷水及び熱水抽出物中における固体の絶対量は、液(リカー)中よりも低いが、15℃におけるタンナーゼ醗酵では35%追加され、35℃におけるタンナーゼ醗酵では25%追加されることを示しており、これらはなお非常に重要である。表5は、固体量が同じである場合において、対応する液(リカー)画分と比較して、冷水及び熱水画分が顕著により暗色であり(L*値がより低い)、より赤く(a*値がより高い)、かつより黄色い(b*値がより高い)ことを示している。
【0094】
追加で抽出された物質が最終的なスラリー粉末の色に違いを生じるかどうかを決定するために、個々の画分から調製された粉末と、使用後のドールから二度熱水で抽出し、脱クリーム及び凍結乾燥前に、液(リカー)と一緒にすることによって調製した粉末について、色の特徴を比較した。個々の画分及び粉末の組成を以下の表6に示す。個々の粉末及び混合物の色は、以下の表7に示す。
【0095】
【表6】
Figure 0004364954
【0096】
【表7】
Figure 0004364954
【0097】
色の値は、追加の着色された物質の回収が、スラリー醗酵物から製造され得る冷水可溶性粉末の色との実質的な違い(Lは10単位分より暗く、a*は14単位分より赤く、かつb*は19単位分よりも黄色い)を生じることを示す。組成のデータは、茶の粉末を製造する間(4℃における一晩の冷蔵、4℃における遠心分離、及び凍結乾燥)の物質のかなりの量の損失、例えば、混合物についてテアフラビンでは40%の損失が存在することを示す。しかし、混合された画分から調製された粉末は、液(リカー)のみに由来する粉末中に存在するテアフラビン量、4%に比べて、依然として9%のテアフラビンを含む。従って、スラリー液(リカー)へ冷水及び熱水洗浄液を加えることそれ自体が、スラリー醗酵を経て調製された粉末の、最終的な特性に実質的な違いを生じ得、かつほとんど確実な経費の有効化をなし得る。
【0098】
実施例8
テアフラビン収量における脱クリーム条件の影響
茶粉末の調製
サンプルを一晩冷蔵(4℃)し、次に15,000gで、15分間遠心分離を行い、ワットマン(WHATMAN、これは商標である)No.54濾紙を通過させた。濾過物を、ドライアイス/アセトン槽を使用して冷凍し、そして凍結乾燥した。粉末を蒸留水中に0.32%(w/v)となるように再懸濁し、ミノルタ(MINOLTA、これは商標である)のCT−210比色計を使用して色を測定した。
【0099】
本発明者らは、延長された一晩の冷蔵が、標準的な脱クリームの間において、テアフラビンの不必要な損失を導いているかどうかを研究するために、遠心分離の前の、4℃における時間の効果を測定した。抽出されたスラリーに由来するアリコートを4℃において直後に遠心分離を行うか、又は、遠心分離の前に1時間又は一晩冷蔵した。これらの処理の間の違いは小さいものの(以下の表8を参照のこと)、直後の遠心分離は、より高いa*、及び最も高いテアフラビン含量(粉末の11.7質量%)を有する冷水可溶性粉末をもたらした。粉末中に存在する、抽出物からのテアフラビンの回収率は、一晩冷蔵した後では77%であったのに比べて、直後に遠心分離をした場合は91%であった。
【0100】
【表8】
Figure 0004364954
【0101】
この結果は、直後の遠心分離が、テアフラビンの損失を最小とし、その上、依然として冷水中に完全に可溶な粉末を生じることを示した。延長された冷蔵の間のテアフラビンの損失が、複合体化によるのでなく酸化によるのであれば、アスコルビン酸の添加又は金属イオン複合体を通じてテアフラビンを保持することが可能であるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、クロマトグラフのカラムから溶出された様々な画分中のテアフラビン(TF)の量を示すグラフである。
【図2】図2は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の軌跡である。
【図3】図3は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の軌跡である。
【図4】図4は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の軌跡である。
【図5】図5は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の軌跡である。
【図6】図6は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の軌跡である。
【図7】図7は、異なるEGC:EC:GA混合物についての、時間に対するテアフラビン(TF)及びエピテアフラビン酸(eTF acid)の生成量を示すグラフである。
【図8】図8は、タンナーゼで前処理されたスラリーの、抽出の間の成分分布を示すグラフである。
【図9】図9は、最適のプロトコル(#5)での、タンナーゼで前処理されたスラリーの、抽出の間の成分分布を示すグラフである。
【図10】図10は、タンナーゼで前処理されたスラリーのpH4.7での醗酵の間のテアフラビン生成に対する、温度の影響を示すグラフである。
【図11】図11は、タンナーゼで前処理されたスラリーの醗酵の間のテアフラビン生成に対する、温度の影響を示すグラフである。
【図12】図12は、タンナーゼで前処理されたスラリーの醗酵の間のテアフラビン生成に対する、pHの影響を示すグラフである。
【図13】図13は、タンナーゼで前処理されたスラリーの醗酵の間のテアフラビン生成に対する、醗酵当初のpHの影響を示すグラフである。

Claims (8)

  1. スラリー醗酵の前に緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、スラリー醗酵を行い、且つ、スラリー醗酵の生成物からテアフラビンを分離することを含む、テアフラビンの製造方法。
  2. 緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)を得、当該茶液を乾燥してテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該粉末を水に再懸濁させ、当該再懸濁された粉末中の成分を有機溶剤で抽出し、且つ、抽出された成分をテアフラビンを溶出するクロマトグラフィー・カラムに通すことを含む、テアフラビンの精製方法。
  3. 冷水可溶性茶粉末を水に再懸濁させた後に水に溶解させ、その水溶液について有機溶剤抽出を行う、請求項2の方法。
  4. 有機溶剤抽出物を乾燥して粉末とし、その粉末を適切な溶剤に溶かし、得られた溶液をクロマトグラフィー・カラムにのせる(アプライする)、請求項2の方法。
  5. 緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)と使用後の葉(ドール)とに分け、当該茶液を乾燥して茶液に由来するテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該ドールにつき溶剤抽出を一回以上行い、当該抽出物を乾燥して使用後のドールに由来するテアフラビンを豊富に含む粉末を生ぜしめ、茶液に由来するテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を、使用後のドールに由来するテアフラビンを豊富に含む粉末と混合して、テアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該粉末を水に再懸濁させ、当該再懸濁された粉末中の成分を有機溶剤で抽出し、且つ、抽出された成分を、テアフラビンを溶出するクロマトグラフィー・カラムに通すことを含む、テアフラビンの精製方法。
  6. 緑茶(グリーン・リーフ・ティー)のスラリーをタンナーゼで処理し、当該スラリーを醗酵させ、当該スラリーから葉を除去してテアフラビンを豊富に含む茶液(ティー・リカー)と使用後の葉(ドール)とに分け、当該ドールにつき溶剤抽出を一回以上行って抽出物を得、茶液と抽出物とを混合し、得られた混合物を乾燥してテアフラビンを豊富に含む冷水可溶性茶粉末を生ぜしめ、当該粉末を水に再懸濁させ、当該再懸濁された粉末中の成分を有機溶剤で抽出し、且つ、抽出された成分を、テアフラビンを溶出するクロマトグラフィー・カラムに通すことを含む、テアフラビンの精製方法。
  7. 請求項1に記載の製造方法、又は請求項2〜6のいずれかに記載の精製方法よって製造されたテアフラビン。
  8. 請求項7のテアフラビンを含む、茶を基本とする飲み物又は他の食品。
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