有機EL(Electro Luminescence)素子は、有機発光性化合物を含む有機EL層を陽極配線と陰極配線との間に挟んだ積層体構造を備えている。陽極配線と陰極配線の間に電圧を印加すると、陽極配線からは正孔が、陰極配線からは電子がそれぞれ有機EL層に注入されて再結合し、その際に生ずるエネルギーにより有機EL層に含まれる有機発光性化合物の分子が励起される。このようにして励起された分子が基底状態に戻る際のエネルギーが光として放出されて発光現象が生じる。有機EL素子はこの発光現象を利用した自発光素子である。
有機EL層は、正孔と電子が再結合して発光する発光層と呼ばれる有機層を少なくとも含み、必要に応じて、正孔が注入されやすくかつ電子を移動させにくい正孔輸送層と呼ばれる有機層、電子が注入されやすくかつ正孔を移動させにくい電子輸送層と呼ばれる有機層などを含む単層構造または多層積層構造を有している。
近年、有機EL素子を使用した有機EL表示装置の開発が盛んに行われている。有機EL表示装置は、液晶表示装置と比較して視野角が広く、また、応答速度も速く、有機物が有する発光性の多様性から、次世代の表示装置として期待されている。有機EL表示装置に用いられる有機EL素子は、基板上に陽極配線が形成され、陽極配線の上に有機EL層が形成される。そして、その有機EL層の上に、基板上に形成された陽極配線と対向するように陰極配線が形成されている。陽極配線、有機EL層及び陰極配線を重ねて配置した個所が表示画素となる。
基板に設けられた電極上に有機EL層を積層する場合、有機材料を真空蒸着させて有機EL層を形成する場合がある。しかし、有機材料を蒸着させる場合、有機EL層の下地となる電極の表面に異物の付着や突起、窪みがあると、その影響により、有機EL層を所望の状態にできないことがある。
この問題を解決する方法として、有機EL層となる有機EL材料溶液を液体中に分散または溶解させ、溶液として塗布することで異物、突起、窪みなどを被覆し、所望の有機EL層を形成する技術(湿式塗布法、以下、単に塗布法と記す。)が知られている。例えば、特許文献1には、有機EL層のうち少なくとも一層を塗布法により形成することが記載されている。
塗布法としては、例えば、オフセット印刷法、凸版印刷法、スプレー法などがある。オフセット印刷法や凸版印刷法では、有機EL材料溶液を溶媒中に分散または溶解させた溶液の層を所定の領域のみに形成する。また、スプレー法では、所望の領域に合致するような開口部を有するガラス・マスクや金属マスクなどを配置し、有機EL材料溶液を分散または溶解させた溶液を吐出する。この場合、溶液を窒素などの気体媒体中に分散させ、または二流体ノズルなどを用いて溶液を霧状にする。
また、有機EL表示装置では、有機EL層の上に設けられる陰極配線が隔離配置されるように隔離構造体(以下、隔壁と記す。)が設けられる。このような構成は、例えば、特許文献1に記載されている。図10は、特許文献1に記載された隔壁の例を示す断面図である。基板111上には、陽極配線101が設けられ、その後、隔壁100が設けられる。隔壁100は、例えば、基板111から離れるにつれて断面が広がるように形成される。このような隔壁100の構造は、逆テーパ構造あるいはオーバハング構造と称されている。
隔壁100を逆テーパ構造とすることで、陰極配線の分離をより確実なものとすることができる。隔壁100が設けられた状態で有機EL層(ホール注入輸送層102、発光層103、電子注入輸送層104)を塗布法などにより形成すると、隔壁100により有機EL層が分離され、この結果、各隔壁100の間に各有機薄膜層から構成される有機発光層が形成される。その後、陰極配線105が、蒸着法などによって形成される。陰極配線105も隔壁100により分離され、パターニングされた陰極配線105が形成される。
また、開口部を有する絶縁層を陽極配線上に形成し、表示画素となる位置を開口部の位置によって定める場合もある。図11は、特許文献1に記載された構成に、開口部を有する絶縁層を設けた場合の構成例を示す説明図である。図11(a)は、電極が配置される側から基板を観察した状況を示す模式図であり、図11(b)は、図11(a)のA−A'断面図である。図11(a)では、上層に設けられた陰極配線などによって隠れてしまう構成部も示している。
図11に示す例において、基板111上には、まず陽極配線101と、陰極配線105に接続される陰極配線接続配線121とが形成される。続いて、開口部123を有する絶縁層122が形成される。開口部123は、陽極配線と陰極配線とが交差することになる位置に設けられる。そして、陽極配線101と直交するように隔壁100が形成される。続いて、有機EL材料溶液が塗布または蒸着され、有機EL層124が形成される。
なお、有機EL層として複数の層が形成されるが、図11(b)では、複数の層をまとめて有機EL層124として示している。有機EL層124形成後、陰極配線105が有機EL層上に蒸着される。隔壁100が有機EL層124や陰極配線105を分離することにより、隔壁間に有機EL層124が形成され、また、パターニングされた陰極配線105が形成される。
陰極配線105を形成した後、有機EL素子を保護するために、ポリマーなどで構成される有機層を陰極配線105上に形成する場合もある。この有機層(不図示)も、塗布法などによって形成される。また、基板111の電極などが配置された面には、もう一枚の基板(不図示)が対向するように配置される。この基板において、基板111の有機EL素子に対向する領域の外周に接着材(不図示)が塗布される。この接着材によって、基板111ともう一枚の基板は接着される。有機EL素子は、基板および接着材によって封止されることで、水分や酸素にさらされないように保たれる。
特開2001−351779号公報
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態の一例を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。
図1に本発明にかかるマスクの構造を示す。図1(a)は、マスクの一構成例の模式的部分平面図である。図1(b)は、図1(a)における切断線A−A’での模式的側面図である。図1(c)は切断線B−B’での模式的側面図である。
マスク13は、概ね平板上である。マスク13を素子基板に重ねるように配置し、吐出手段から有機EL材料溶液を吐出し、マスク開口部31から素子基板の上の所定の位置に付着させることによって、有機EL材料溶液の膜を形成する。マスク開口部31の周縁には、吐出手段の走査方向、本図ではY方向に沿って、壁32が備えられている。この壁32によって、走査方向と直交する方向に飛散する有機EL材料溶液を遮ることができ、素子基板上に均一な厚みの膜を略同時に形成することができる。
図2は、図1とは異なる形状のマスクであって、マスクの一部を示している。本図は、X方向及びY方向の両方向、つまり4方向に壁32を設けたマスクの一例の斜視図である。図2に示すように、開口部31がマトリクス状に設けられており、矩形状の開口部31の四辺に沿って上方向に垂直な壁32が設けられている。
次に、本発明によって製造することができる有機EL表示装置について説明する。図13は有機EL素子が形成されている基板の構成を示す平面図である。1は陽極配線、5は陰極配線、10は隔壁、11は基板、21は陰極補助配線、22は絶縁層、23は画素開口部、24は表示領域、25はコンタクトホールである。
基板11上には、基板11の表面に接するように複数の陽極配線1が形成されている。複数の陽極配線1はそれぞれ平行に形成されている。陽極配線1の端部にはそれぞれの陽極配線1に対応する陽極補助配線(不図示)が基板11の端部まで形成されている。この陽極補助配線は、陽極配線1と一列になるようにそれぞれ配置される。この陽極配線1の上には接続部(不図示)が形成され、陽極補助配線と接続される。陽極補助配線には外部配線などと接続するための端子部(不図示)が設けられている。また、基板11上には、基板11と接するように陰極接続配線21が形成されている。陰極接続配線21は後述する陰極配線5の本数に対応して形成され、それぞれの陽極配線1と垂直に形成されている。
陽極配線1は例えば、ITOなどの透明導電膜により形成される。陽極補助配線は、多層構造の金属膜により形成される。例えば、下からMo層、Al層、Mo層の順番で陽極補助配線となる積層金属膜が構成される。なお、陰極補助配線21は陽極補助配線と同様に多層構造の金属膜により形成されてもよい。あるいは陰極補助配線21は陽極配線1と同じ工程により形成されても良い。さらには透明導電膜と積層金属膜とを積層して陰極補助配線21を形成しても良い。これらの配線が形成された基板上には、絶縁層22が形成される。絶縁層22には、陽極配線1と陰極配線5とが交差する位置(すなわち表示画素となる位置)に画素開口部23が設けられている。表示領域24は、この複数の表示画素から構成される。
表示領域24の外側には陰極補助配線21と陰極配線5とを接続するため、絶縁層22にコンタクトホール25が形成されている。このコンタクトホール25において、陰極配線5と陰極補助配線21とが接続される。陰極補助配線21の端部には端子部(不図示)が設けられており、外部配線、駆動回路と接続される。これにより、画素開口部23において陽極配線1と陰極配線5に挟まれる有機EL層に電流を流すことができ、有機EL層が発光し、所望の画像を表示することができる。
絶縁層22の上層には、有機EL層、陰極配線5が順に積層される。従って、有機EL層は陰極配線5と陽極配線1に挟まれる構成となる。ただし、図13では有機EL層の図示を省略している。この有機EL層については、後に詳述する。また、有機EL層を形成する前に、隣接する陰極配線5同士を区分する分離構造体(以下、隔壁10と記す。)が設けられる。隔壁10は、陰極配線5を蒸着などにより形成する前に、所望のパターンに形成される。例えば、図13に示すように、陽極配線1と直交する複数の陰極配線5を形成するため、陽極配線1と直交する複数の隔壁10が陽極配線1の上に形成される。
隔壁10は、逆テーパ構造を有していることが好ましい。すなわち、基板11から離れるにつれて断面が広がるように形成されることが好ましい。これにより、隔壁10の側壁及び立ち上がり部分が蒸着の陰となり、陰極配線5を区分することができる。隔壁10は例えば、高さが3.4μmで、幅が10μmで形成することができる。
隔壁10が形成された後、有機EL層(不図示)が形成される。さらに有機EL層の上から金属を蒸着する。蒸着された金属膜は逆テーパ構造の隔壁10により分断され、複数の陰極配線5が形成される。陰極配線5となる金属膜は隔壁10の外側には形成されないよう蒸着マスクを用いて蒸着される。有機EL素子が形成された基板は上述のような構成を備えている。この基板が対向基板(不図示)と対向配置されて有機ELパネルが形成される。
図14は、本実施形態にかかる有機EL表示装置に用いる有機ELパネルの一部の構成を示す模式的断面図である。尚、図14は有機ELパネルの一部の構成を模式的に示すものであって、実際の有機ELパネルの詳細構成を反映するものではない。
有機ELパネルは、ガラスなどよりなる基板11と対向基板63とで得られる気密空間内に、有機EL素子が形成されてなる構成を有する。基板11と対向基板63は、接着材64によって固着されている。基板11上に形成される有機EL素子は、陽極配線1、絶縁層22、有機EL層40及び陰極配線5から構成されている。
図14に示すように、基板11上において、最下層には陽極配線1が形成されている。陽極配線1は、ITOなどの透明導電性薄膜で形成される。陽極配線1の上には、ポリイミドなどからなる絶縁層22が形成されている。この絶縁層22には、陽極配線1と陰極配線5が交差する位置(すなわち画素が形成される位置)に開口部が設けられている。そして、この絶縁層の開口部に有機EL層40が形成されている。
絶縁層22は、有機EL層40と陽極配線1とが接触する開口部を画定する役割を果たしている。また、絶縁層22は、陽極配線1と陰極配線5のショートが発生しないように配設される。陽極配線1の反視認側には有機EL層40が形成されている。有機EL層40については、後に詳述する。この有機EL層40の上には、発光輝度を高めるために、光反射率の高い金属からなる陰極配線5が設けられている。ここでは図示していないが、陰極配線5の分離のために、例えば、ノボラック樹脂などを主成分とする隔壁が設けられている。
基板11上には、複数の有機EL素子が設けられ、有機EL素子が形成されている領域が表示領域となる。基板11上には、さらに、各有機EL素子に信号を供給する陽極補助配線(不図示)と陰極補助配線21が設けられている。ここでは、陰極補助配線21が設けられている部分を図示している。これら補助配線は接着材64の外側に延設されており、有機EL素子の陽極配線1及び陰極配線5はそれぞれの補助配線に接続されている。
基板11の端部には駆動回路(不図示)が搭載されており、陽極配線1及び陰極配線5はそれぞれの補助配線を介して、駆動回路に接続される。この駆動回路から有機EL素子に電流を供給することにより、陽極配線1からは正孔が、陰極配線5からは電子がそれぞれ有機EL層40に注入されて再結合し、その際に生ずるエネルギーにより有機EL層40内の有機発光性化合物の分子が励起される。励起された分子は基底状態に戻る際のエネルギーが光として放出され、有機EL層40が発光して所望の画像を表示することができる。
対向基板63は、パネル中に水分や酸素が入らないように設けられる。対向基板63としては、ステンレス、アルミニウムまたはその合金などの金属類のほか、ガラス、アクリル系樹脂などの1種類または、2種類以上からなるものを使用することができる。対向基板63と基板11は接着材64によって固着され、対向基板63と基板11の間に封止空間(領域)が形成されている。封止空間内には、有機EL素子の他、有機EL素子への水分や酸素の影響を抑制し安定した発光特性を維持するための捕水材62が配設されている。捕水材62は、対向基板63上、有機EL素子と対向する面上に配設されている。
捕水材62は、例えば、所定の粘性を有する粘性吸湿部材を用いることができる。また、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にしたものを用いることができる。また、無機系の乾燥剤を用いてもよい。
捕水材62として粘性吸湿部材を用いる場合は、フッ素系オイルからなる不活性液体中に所定量の吸着剤を混合して構成する。または、フッ素系ゲルなどの不活性のゲル状部材に所定量の吸着剤を混合して構成する。吸着剤としては、活性アルミナ、モレキュラシーブス、酸化カルシウム及び酸化バリウムなどの物理的あるいは化学的に水分を吸着するものを用いる。粘性吸湿部材は、吸着剤が流動しない程度の粘性を有するクリーム状あるいはゲル状の粘着性を有するようにし、所定の位置に塗布し配設する。
基板11の視認側には、円偏光板65が配置される。この円偏光板65は、視認側から入射する光を遮蔽し、有機ELパネルの表示コントラストを改善するために設けられている。円偏光板65は、直線偏光板とλ/4波長板とからなる。また、基板11にλ/4波長板の機能を持たせて、直線偏光板だけを貼着するようにしてもよい。
ここで、本実施形態の有機EL層の構造について、図3を参照して説明する。図3は、有機EL層40の模式的断面図を示す図である。有機EL層40は、図3に示されるように、ポリマーバッファ層41、正孔注入層42、正孔輸送層43、発光層44、電子輸送層45、電子注入層46を順次積層した多層構造になっている。ただし、これとは異なる層構成も可能である。
ポリマーバッファ層41は例えば、シクロヘキサノールと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−メチル−1−プロパノールを所定の割合で混合した溶媒に、1wt%のワニス(アミン系高分子)とドーパントを混合した溶液を用いることができる。また、正孔注入層42としては、例えば、0.5%(質量百分率)のポリビニルカルバゾールを溶解した安息香酸エチル溶液を用いることができる。ポリマーバッファ層41及び正孔注入層42は、それぞれの材料溶液をスプレー法を用いて塗布することによって形成される。
また、正孔輸送層43としてN,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(α―NPD)を用いることができる。そして、発光層44兼電子輸送層45としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)とゲスト化合物の蛍光性色素となるクマリン6を、電子注入層46としてはLiFを用いることができる。なお、発光層44と電子輸送層45は別々に形成することも可能であり、また、発光層にホール輸送材料、電子輸送材料を混合した発光層を形成してもよい。
本形態における有機EL表示装置の製造方法について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態にかかる有機ELパネルの製造工程を示すフローチャートである。まず、基板11上に陽極配線1および陰極補助配線21を形成する(ステップS101)。基板11として、例えばガラス基板などの透明基板を用いる。陽極配線1および陰極補助配線21は、基板11上にITOを成膜して、そのITO膜にエッチングを施すことによって形成する。ITOはスパッタや蒸着によって、ガラス基板全面に均一性よく成膜することができる。フォトリソグラフィー及びエッチングによりITOパターンを形成する。このITOパターンが陽極となる。
レジストとしてはフェノールノボラック樹脂を使用し、露光現像を行う。エッチングはウェットエッチングあるいはドライエッチングのいずれでもよいが、例えば、塩酸及び硝酸の混合水溶液を使用してITOをパターニングすることができる。レジスト剥離材としては例えば、モノエタノールアミンを使用することができる。
また、陰極補助配線21にはAlあるいはAl合金などの低抵抗金属材料を用いることも可能である。例えば、陽極配線1となるITOをパターニングした後に、Alなどをスパッタ又は蒸着により成膜する。あるいは陰極補助配線21を形成した後に陽極配線1を形成しても良い。そして、Al膜をフォトリソグラフィー及びエッチングによりパターニングして陰極補助配線21を形成することができる。これにより、陰極補助配線21の配線抵抗を低減することができる。さらには陰極補助配線21の構成をITOと金属材料との多層構成としてもよい。例えば、150nmのITO層の上に400〜500nmのMoやMo合金の金属薄膜を形成してもよい。これにより、配線抵抗及びコンタクト抵抗を低減することができる。
次に、陽極配線1及び陰極補助配線21を設けた基板11の面に絶縁層22を形成する(ステップS102)。例えば、感光性のポリイミドの溶液をスピンコーティングにより塗布する。この絶縁層の厚さは、例えば、0.7μmになるようにすればよい。この絶縁層をフォトリソグラフィー工程でパターニングした後、キュアし、表示画素となる位置の絶縁層を除去し、画素開口部23を設ける。後述するステップS105で形成される陰極配線5と、陽極配線1との交差部分が、表示画素が形成される位置である。同時に陰極配線5と陰極補助配線21とのコンタクトホール25を形成する。例えば、画素開口部23は300μm×300μm程度のサイズで形成することができる
続いて、絶縁層22(ポリイミドの層)の表面において、陰極配線5を分離配置できるように隔壁10を形成する(ステップS103)。隔壁10は、絶縁層22の上層にノボラック樹脂、アクリル樹脂膜などの感光性樹脂を塗布することにより形成する。例えば、感光性樹脂をスピンコートして、フォトリソグラフィー工程でパターニングした後、光反応させて隔壁10を形成する。隔壁10が逆テーパ構造を有するようネガタイプの感光性樹脂を用いることが望ましい。
ネガタイプの感光性樹脂を用いると、上から光を照射した場合、深い場所ほど光反応が不十分となる。その結果、上から見た場合、硬化部分の断面積が上の方より下の方が狭い構造を有する。これが逆テーパ構造を有するという意味である。このような構造にすると、その後、陰極配線5の蒸着時に蒸着源から見て陰になる部分は蒸着が及ばないため、陰極配線5同士を分離することが可能になる。さらに、画素開口部23のITO層の表面改質を行うために、酸素プラズマ又は紫外線を照射してもよい。例えば、隔壁10の高さは3.4μmとすることができる。
そして、有機EL層40を形成する(ステップS104)。まず、最下層にポリマーバッファ層41を形成する。ポリマーバッファ層41の材料としては、上述したシクロヘキサノールと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−メチル−1−プロパノールを所定の割合で混合した溶媒に、1wt%のワニス(アミン系高分子)とドーパントを混合した溶液を用いる。この溶液をスプレー法によって塗布する。この溶液が塗布された基板11を、180℃で5分間仮焼成し、その後、240℃で10分間本焼成する。このようにして、ポリマーバッファ層41を形成する。
ポリマーバッファ層41の上層に、正孔注入層42を形成する。この正孔注入層42もまた、ポリマーバッファ層41と同じようにスプレー法を用いて形成する。正孔注入層42としては、例えば、0.5%(質量百分率)のポリビニルカルバゾールを溶解した安息香酸エチル溶液を用いることができる。次に、溶液を濃縮乾燥することによって硬化処理し、正孔注入層42を形成する。このポリマーバッファ層41及び正孔注入層42の材料溶液のスプレー塗布法については、後述する。
続いて、正孔注入層42の上層に有機EL層40を形成する他の有機層を形成する。例えば、まず、α−NPD(N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン)を蒸着して膜厚40nmの正孔輸送層43を形成する。さらに、その上層に、発光層のホスト化合物となるAlq(トリス(8−ヒドロキシナト)アルミニウム)と、ゲスト化合物の蛍光性色素となるクマリン6とを同時に蒸着して、膜厚60nmの発光層44兼電子輸送層45を形成する。続いて、発光層兼電子輸送層の上層にLiFを蒸着して、膜厚0.5nmの電子注入層を形成する。
その後、アルミニウムなどの金属材料を蒸着して、例えば膜厚100nmの陰極配線5を形成する(ステップS105)。この結果、隔壁10によってアルミニウム膜を分離して、それぞれの隔壁間に陽極配線1と交差する陰極配線5を形成することができる。
これらの工程により基板11上に複数の有機EL素子を形成する。このように、典型的な有機EL表示装置に用いられる有機EL素子の製造工程の一例について説明した。但し、有機EL素子の製造工程は上述したものに限られることはない。
次に上述の工程により形成された有機EL素子を封止するため、封止用の対向基板63を製造する工程について説明する。まず、素子基板とは別のガラス基板を準備する。このガラス基板を加工して吸湿部材を収納するための吸湿部材収納部を形成する。吸湿部材収納部を形成するため、ガラス基板にレジストを塗布し、露光、現像により基板の一部を露出させる。そして、この露出部分をエッチングにより薄くすることにより吸湿部材収納部を形成する。
この吸湿部材収納部に捕水材62を配置した後、2枚の基板を重ね合わせて接着する(ステップS106)。具体的には、対向基板63の吸湿部材収納部が設けられた面に、ディスペンサを用いて接着材64を塗布する。接着材64として、例えば、エポキシ系紫外線硬化性樹脂を用いることができる。また、接着材64は、有機EL素子と対向する領域の外周全体に塗布する。二枚の基板を位置合わせして対向させた後、紫外線を照射して接着材を硬化させ、基板同士を接着する。この後、接着材64の硬化をより促進させるために、例えば、80℃のクリーンオーブン中で1時間熱処理を施す。この結果、接着材64及び一対の基板によって、有機EL素子が置かれた基板間の空間と、外部とが隔離される。捕水材62を配置することにより、封止された空間に残留または外部から侵入してくる水分などによる有機EL素子の劣化を防止することができる。このようにして、有機ELパネルを製造する。
その後、基板の外周付近の不要部分を切断除去し、陽極配線1に信号電極ドライバを接続し、陰極補助配線に走査電極ドライバを接続する。基板端部において各配線に接続される端子部が形成されている。この端子部に異方性導電フィルム(ACF)を貼付け、駆動回路が設けられたTCP(Tape Carrier Package)を接続する。具体的には端子部にACFを仮圧着する。ついで駆動回路が内蔵されたTCPを端子部に本圧着する。これにより駆動回路が実装される。この有機EL表示パネルが筐体に取り付けられ、有機EL表示装置が完成する。
ここで、有機EL層40中のポリマーバッファ層41及び正孔注入層42の形成に際して用いるスプレー塗布装置について説明する。図5は、有機EL材料溶液を吐出し、基板上に塗布を行うスプレー塗布装置17の模式的概略図である。スプレー塗布装置17は、陽極配線1、絶縁層22などが形成された複数の有機ELパネル形成領域を備えたマザー基板12を載置する、Z方向に移動可能なステージ16を備えている。また、有機EL材料溶液18を吐出するノズル14を備えている。また、スプレー塗布装置17には、防塵用にフィルタ15が備えられている。このフィルタ15は、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。さらに、スプレー塗布装置17は、アクチュエータやサーボモータなどからなるX−Y移動手段(不図示)を備えており、ノズル14を任意の位置に移動できる。また、ノズル14の位置及び移動速度、吐出圧力などを制御できる制御装置(不図示)を備えている。
このスプレー塗布装置17を用いた有機EL材料溶液の塗布方法について説明する。まず、ステージ16にマザー基板12を載置する。マザー基板12には、図13に示す有機EL表示装置を形成する領域が複数形成されている。ステージ16は、マザー基板12とノズル14の先端との距離が所定の距離になるようにZ方向に移動し調整されている。そして、マザー基板12の上にマスク13を位置を調整して載置する。次に、ノズル14の先端から有機EL材料溶液18を吐出させ、マザー基板12上にスプレー塗布する。X−Y移動手段によって、ノズル14をスプレー塗布終点位置まで移動させながらスプレー塗布し、マザー基板12の全面に有機EL材料溶液18を塗布することができる。
ノズル14のマザー基板12上の位置、圧縮窒素の圧力、ノズル14の移動速度などは制御装置によって任意に設定することができ、制御装置から出力される制御信号によって制御される。このスプレー塗布始点位置からスプレー塗布終点位置までの間、溶液は常に吐出され、マザー基板12上に連続的にスプレー塗布される。スプレー塗布終点位置まで移動したところで、有機EL材料溶液18の吐出及びノズル14の移動を停止する。
本実施形態では、マザー基板12とノズル14との距離は80mm、走査速度は300mm/s、N2流量は5.0l/min、溶液流量は0.9ml/minとする。また、ノズル14から吐出される溶液は、コーン状に広がりを持っており、溶液がマザー基板12に着滴したときの塗布される領域は、半径が15mmの円状である。この溶液が塗布される領域の中央付近と端部では、溶液の塗布量に差が出てしまい、膜厚がばらつくことになる。これを抑制し、均一なポリマーバッファ層41及び正孔注入層42を形成するために、それぞれのノズル14の走査間隔を12mmとする。これによって、塗布領域が重なり、均一なポリマーバッファ層41及び正孔注入層42を得ることができる。
ここで、本実施形態にかかる有機EL材料溶液の塗布方法について図6、図7を用いて説明する。図6は、本実施形態の一例にかかる有機EL材料溶液の塗布方法を説明する図である。まず、マザー基板12の上にアライメントしてマスク13が配置される。このとき、マスク13のマスク開口部31と有機EL材料溶液18を塗布すべき領域が重なるように配置する。また、マスク13とマザー基板12との間に所定距離、例えば50μmの空間が空くように取り付ける。
図6において、ノズル14は、+Y方向に1ライン走査を行った後、+X方向に上述した走査間隔分移動をし、その後−Y方向に走査を行い、これを繰り返してマザー基板12の全面に有機EL材料溶液を塗布する。ノズル14は、有機EL材料溶液を吐出しながら、マザー基板12上を走査することで、マスク13のマスク開口部31から、有機EL材料溶液18を塗布する。マスク13を用いることで、マスク開口部31以外の領域には有機EL材料溶液18が塗布されない。
また、マザー基板12上に配置するマスク13のマスク開口部31の対向する2辺には壁32が設けられている。この壁32は、マスクの表面に対して略垂直になるように設けられている。この壁32の高さは、マスク13の上面にあたって飛散する有機EL材料18の液滴の飛び上がる高さによって任意に設定される。この壁32の高さは、例えば3〜5cmである。この壁32が延在する方向とノズル14の走査方向とを略同一にする。すなわち、壁32はY方向に延在するように設ける。
図7は、本実施形態の一例にかかる有機EL材料溶液18の塗布法を説明する断面図である。マスク13の反基板面側には壁32が設けられている。この壁32はマスク13のマスク開口部31の端部に、マスク開口部31の大きさに対応する長さで設けられている。すなわち、壁32はマスク開口部32の一辺の全体にわたって設けられている。そして、マスク開口部32の対向する2辺に、ノズル14を走査する方向(Y方向)に沿って、この壁32が設けられる。
上述したように、スプレー法では、有機EL材料溶液18を吐出するノズル14でマザー基板12上を走査することによって塗布を行う。図7では、ノズル14を紙面に対して垂直方向に走査している。マスク開口部31以外の位置にノズル14があるとき、ノズル14から吐出された有機EL材料溶液18は、マスク13の上面に当たって飛散する。しかし、飛散した液滴は壁32の側面にあたる。よって、飛散した液滴がマスク開口部32を介してマザー基板12に付着するのを防ぐことができる。また、マスク13のマスク開口部31以外の領域及び壁32に付着した有機EL材料溶液18は、塗布中に乾燥する。
壁32は図に示すよう走査方向(Y方向)に沿って設けることが好ましい。走査方向と垂直方向(X方向)に飛散した有機EL材料溶液18の液滴は、塗布された溶液が既に乾燥していた領域に付着してしまい膜厚ムラとなるおそれがある。あるいは、まだ、塗布されていない領域に付着してしまい膜厚ムラとなるおそれがある。走査方向と平行な方向に壁32を設けることによって、垂直方向に飛散した液滴がマザー基板12に付着するのを防ぐことができる。すなわち、隣のラインを走査しているとき、有機EL材料溶液18の液滴が飛散して、マザー基板12に付着するのを防ぐことができる。
一方、走査方向と平行な方向(Y方向)に飛散して、有機EL材料溶液18の液滴がマザー基板12に付着した場合、そのマザー基板12に付着した直後又は直前にノズル14がその付着した位置のマスク開口部32に移動する。したがって、飛散から塗布までの時間間隔が短いため、有機EL材料溶液18が乾燥することがない。したがって、飛散した液滴が塗布された溶液と自己レベリングする。よって、走査方向と垂直方向には壁32を設けなくてもよい。ただし、飛散する距離が長く、ノズル14が移動する時間に比べて乾燥する時間が短いときは、垂直方向に壁32を設けてもよい。
壁32は開口部の一辺よりも長く設けてもよい。すなわち、開口部からY方向にはみ出すように設けてもよい。これにより、走査方向に対して斜めに飛散した液滴が基板に付着するのを防ぐことができる。また、この壁32は、マスク開口部31の周囲を囲むように形成されていてもよい。このようにすることで確実に有機EL層の膜厚ムラを抑制することができる。
マスク開口部31がマトリクス状に複数配置されている場合について、図8を参照して説明する。マスク13には、マトリクス状に複数のマスク開口部31が設けられている。そして、ノズル14は図6に示す走査方向と同じ方向に走査する。この場合、マスク開口部31の列の、ノズル14の走査方向と同じ方向に平行な2辺に連続して壁32を設けることが好ましい。これによって、塗布している位置から斜め方向に飛散した液滴が基板に付着するのを抑制することができ、より確実に均一な膜厚で形成することができる。そして、膜厚ムラに起因する発光ムラを抑制することができる。
上述したように、壁32はマスク開口部31のノズルの走査方向に平行な2辺に設けられていることが好ましいが、隣り合うマスク開口部31の間のどこか一部分に一つだけ設けられていてもよい。
この壁32は、アルミニウムやSUSなど、マスク13と同じ材料からなることが好ましい。マスク13と壁32は一体成型または、溶接などで一体に製造される。この場合、マスク13の配置が容易となる。
また、マスク13と壁32とを別部材で構成してもよい。別部材として構成した場合は、壁32の高さあるいは位置を調整、変更することが容易になる。マスク13と壁32を別部材により構成した場合、壁32をマスク13に固定しても、固定しなくてもよい。壁32とマスク13を固定した場合は配置が容易になる。壁32とマスク13を別部材で構成し固定しない場合、壁32はマスク13に接触していなくてもよい。マスク13の反基板面側に飛散防止用の壁32があればよい。マスク13と壁32とを固定しない場合、マザー基板12の上にマスク13と壁32をこの順番に配置する。
図9を参照して、スプレー法を用いて有機EL層40の形成に用いるマスク13の他の好ましい形態について説明する。図9において、マスク13のマスク開口部31の対向する2辺には壁32が設けられている。この壁32はマスク開口部31から若干離れた位置に設けられている。すなわち、マスク開口部31の端部から若干の距離を開けて壁32が設けられている。スプレー塗布を行うと、壁32には、吐出された有機EL材料溶液18の液滴が付着する。その液滴が凝集するとマスク開口部31内のマザー基板12の塗布領域内に有機EL材料溶液が壁32の表面に沿って落下する。これを防止するために、壁32のマスク開口部31側の側面にコットンなどの吸水性を有する吸水部材33を配置する。これによって、有機EL材料溶液の液ダレを防止し、マザー基板12に付着するのを防ぐことができる。