JP4398637B2 - 液晶表示素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カイラルネマチック液晶層を備え、メモリ性の動作を有する液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、TN、STN、TFTなどの液晶表示素子が実用化されている。他に、高速応答性・メモリ性に特徴がある強誘電性・反強誘電性液晶表示素子や、カラー化で注目されるゲスト・ホスト表示素子などの実用化も検討されている。
【0003】
同様に、コレステリック液晶またはカイラルネマティック液晶による液晶表示素子(また、CL−LCDともいう。)が知られている。CL−LCDはメモリ性を有し、明るい反射型表示が可能であることから、次世代の液晶表示素子として注目され、その実用化が検討されている。
【0004】
CL−LCDの基本的な動作原理は以下の通りである。CL−LCDの液晶層は少なくとも安定な2状態の間を遷移可能であり、入射光の一部を反射する液晶配列状態(プレナー状態とも呼ばれる。以下、PLという。)または反射を示さず微散乱状態を呈する液晶配列状態(フォーカルコニック状態、以下、FCという。)を示す。電圧印加を停止した後の無電界状態であっても、CL−LCDの液晶層の配列状態が保持される。
【0005】
PLは以下のようにして形成される。カイラルネマティック液晶をホメオロピック液晶配列(HOと呼ぶ)にする高い電圧Vを印加した後(図4(A)参照)、その電圧を遮断する。すると、ほぼ一定のピッチを持つねじれ構造のねじれ方向と垂直方向の配向軸(ヘリカル軸と呼ぶ)がほぼ電極基板と垂直方向にそろう。その配列状態が理想的に整列した状態が完全PLである(図4(B)参照)。通常は、液晶ドメインの各ヘリカル軸の向きは液晶層全体で一定のばらつきを有している(図4(C)参照)。
【0006】
このとき、カイラルネマチック液晶層は、液晶ドメインのねじれ方向と同一方向の円偏光を選択反射せしめる状態を呈する。その際、選択反射された選択反射光は一定の波長域を有しており、その特性は使用するカイラルネマチック液晶層の物性によってほぼ決定される。
【0007】
液晶ドメインのピッチ(P)と、基板面に平行な方向の断面における液晶の平均屈折率(nAVG)によって、選択反射光の帯域の中心波長(λCEN)が決定され、λCEN=nAVG・Pの関係を満足する。カイラルネマティック液晶のピッチPは、ネマティック液晶とカイラル材の種類と混合比によって主に決定される。用いる材料によってカイラルネマチック液晶層の物性が決まり、それに応じて選択反射光の諸特性も決まる。通常、選択反射光は波長に対してほぼ単峰性の特性を示す(図5参照)。
【0008】
その際に、選択反射光の中心波長を実質的に可視外の領域に設定すると、観察者はカイラルネマチック液晶層による選択反射光を視認しない。よって、液晶表示素子として求められる光学的な動作をさせる上で、カイラルネマチック液晶層をほぼ透明な層として使用できる。
【0009】
一方、FCは以下のようにして形成する。上述したPLの状態において、駆動電圧として電圧Vよりも低い電圧をカイラルネマチック液晶層に印加する。または、電圧Vを印加した後に、所定の空白期間を設けて、さらにそれよりも低い電圧をカイラルネマチック液晶層に印加する。このことにより、ヘリカル軸の向きが電極基板に対してばらばらの方向を向いた液晶配列の態様を示すようになる。FCでは、入射光はカイラルネマチック液晶層によって散乱されることより、観察者には白濁状態を呈する層として視認される。
【0010】
また、特公昭57−49914号公報には、赤外光を選択反射せしめるカイラルネマチック液晶層を準備し、可視域の帯域で「透過・散乱」の動作モードを呈する液晶表示素子が示されている。基板面と液晶層との界面に、ジメチルジクロロシランのようなシランカップリング剤を使用し、界面の疎水化処理を行っている。そして、液晶分子を垂直配向をさせる構成を採用する。この従来例では、応答時間を低減せしめるために、界面の配向制御を行っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、CL−LCDの光学性能を決定する上で、カイラルネマチック液晶層内部における液晶の配向状態を制御することが重要である。従来から、TN−LCDやSTN−LCD等のツイスト配向型の液晶表示素子では、低プレチルト角を有する樹脂膜を、透明電極と液晶層との間に形成し、その樹脂膜に対してラビング配向処理を施すことが行われている。この構成によって、液晶分子の配向を安定化し、良好な光学特性を得るようにしている。
【0012】
同様に、CL−LCDにおいても、低プレチルト角の樹脂膜を形成した後、これをラビング配向処理して用いることができる。CL−LCDにおいては、液晶分子の配向が安定化し、配向欠陥が著しく低下する。配向欠陥の減少は、カイラルネマチック液晶層のPLでの反射特性を高めることができる。
【0013】
特に、カイラルネマチック液晶層に接する両側の樹脂膜をラビング配向処理した場合には、鏡面的な反射態様を呈するようになる。この場合、正規反射時の反射率はきわめて高い。また、赤外域の光を反射するCL−LCDでは、配向欠陥の減少させることで高い透明性を発現させることができる。
【0014】
一方、メモリ性の観点から評価すると、CL−LCDにおいて、上記のラビング配向処理を施した樹脂膜を備えることは好ましくない。低プレチルト角の樹脂膜にラビング配向面を設けると、FCの安定性を弱めることがあるからである。特に、カイラルネマチック液晶層に接する両側の樹脂膜に、それぞれラビング配向面を設けた場合にはFCの安定性が著しく低下する。そして、CL−LCDの重要な特性であるメモリ性そのものが発現しないことがある。
【0015】
カイラルネマチック液晶層に接する両側の樹脂膜のうち、一方の樹脂膜のみにラビング配向面を設け、他方にラビング配向面を有しない樹脂膜を設けることで、液晶表示素子全体としてのメモリ性の喪失を避けることができる。しかし、ラビング配向面を有する樹脂膜を一方の基板に設けると、カイラルネマチック液晶層内におけるFCの液晶の一部がPLに戻る。そのため、PLとFCの2状態を利用して光学的な表示動作をさせる際に、得られるコントラスト比が大きく低下する。
【0016】
ラビング配向面を有しない樹脂膜で液晶に接するように配置したCL−LCDにおいては、PL、FC間の安定したメモリ性の動作を発現させることができる。しかし、その反面、液晶セル内部での配向欠陥は非常に多くなり、液晶表示素子全体としての反射率は低下する。赤外域の光を選択反射するCL−LCDでは、この配向欠陥によりPLでの透明性が損なわれ、やや散乱した濁った透明状態を呈することが多い。
【0017】
すなわち、赤外域の光を選択反射せしめるCL−LCDにおいて、PLでの高い透明性とFCでの散乱状態の安定性を両立することが困難であった。つまり、カイラルネマチック液晶層が呈する、基本的な「透過−散乱」の動作モードを用いて、高コントラスト比の表示と、安定したメモリ動作を呈するCL−LCDは得られていなかった。
【0018】
本発明の目的は、メモリ性を有するCL−LCDにおいて、カイラルネマチック液晶層で赤外域を含む光を選択反射させるようにする。さらに、PLとFCのメモリ性を維持しながら、PLでの配向欠陥を著しく低減させる。そして、カイラルネマチック液晶層の高い透明性と、可視域における「透過−散乱」の動作モードを利用し、高コントラスト比の表示を発現できる液晶表示素子を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の態様1は、一対の透明電極付き基板間にカイラルネマチック液晶層が挟持されてなる液晶表示素子において、少なくとも一方の透明電極の上にプレチルト角が60°以上の樹脂膜が設けられ、樹脂膜にはラビング配向面が設けられ、カイラルネマチック液晶層とラビング配向面とが接するよう配置され、カイラルネマチック液晶層は、入射光が選択反射されて選択反射光が生じせしめられる第1の状態と、入射光が散乱せしめられる第2の状態とを有し、選択反射光に赤外域の波長が含まれ、カイラルネマチック液晶層が可視域で透明状態であることを特徴とする液晶表示素子を提供する。
【0020】
また、態様2は、表側偏光板、透明電極付き表側基板、カイラルネマチック液晶層、透明電極付き裏側基板、裏側偏光板の順に配置されてなる液晶表示素子であって、少なくとも一方の透明電極の上にプレチルト角が60°以上の樹脂膜が設けられ、樹脂膜にはラビング配向面が設けられ、カイラルネマチック液晶層とラビング配向面とが接するよう配置され、カイラルネマチック液晶層は、入射光が選択反射されて選択反射光が生じせしめられる第1の状態と、入射光が散乱せしめられる第2の状態とを有し、選択反射光に赤外域の波長が含まれ、カイラルネマチック液晶層が可視域で透明状態であり、第1の状態の場合に、裏側から入射した光のうちカイラルネマチック液晶層を透過せしめられた波長域の光が側偏光板によって吸収されてなる液晶表示素子を提供する。
【0021】
また、態様3は、偏光板、透明電極付き表側基板、カイラルネマチック液晶層、透明電極付き裏側基板、位相差板および反射面の順に配置されてなる液晶表示素子であって、少なくとも一方の透明電極の上にプレチルト角が60°以上の樹脂膜が設けられ、樹脂膜にはラビング配向面が設けられ、カイラルネマチック液晶層とラビング配向面とが接するよう配置され、カイラルネマチック液晶層は、入射光が選択反射されて選択反射光が生じせしめられる第1の状態と、入射光が散乱せしめられる第2の状態とを有し、選択反射光に赤外域の波長が含まれ、カイラルネマチック液晶層が可視域で透明状態であり、第1の状態の場合に、表側から入射され反射面によって表側に反射される反射光が偏光板によって吸収されてなる液晶表示素子を提供する。
【0022】
また、態様4は位相差板が4分の1波長板である態様3に記載の液晶表示素子を提供する。
【0023】
また、態様5は、透明電極間に印加される駆動電圧によって第1の状態と第2の状態との間の状態転移が制御せしめられ、駆動電圧が実質的に0Vである場合に、第1の状態または第2の状態が保持されてなる態様1、2、3または4に記載の液晶表示素子を提供する。
【0024】
また、態様6は、液晶表示素子の裏面側に照明装置が配置され、第1の状態の場合に、カイラルネマチック液晶層に入射せしめられ、カイラルネマチック液晶層を実質的に透過せしめられる透過光量をIa、第2の状態の場合に、カイラルネマチック液晶層を実質的に透過せしめられる透過光量をIbとすると、Ib/Ia≧2を満足する態様1、2、3、4または5に記載の液晶表示素子を提供する。
【0025】
また、態様7は、それぞれの透明電極の上にラビング配向面を有する樹脂膜が配置され、それぞれのラビング配向面がカイラルネマチック液晶層に接するように配置されてなる態様1〜6のいずれかに記載の液晶表示素子を提供する。
【0026】
また、態様8は、選択反射光の中心波長が0.7〜1.2μmである態様1〜7のいずれかに記載の液晶表示素子を提供する。
【0027】
また、態様9は、カイラルネマチック液晶層の状態を変化させるのに必要な駆動電圧の最大電圧値をV(V)、カイラルネマチック液晶層の厚みをd(μm)とすると、V/d≦10である態様1〜8のいずれかに記載の液晶表示素子を提供する。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明によって、CL−LCDにおけるPLの液晶配向欠陥を著しく低減させることができる。そして、PLでの高い透明性を発現できる。本発明においては、少なくとも一方の基板側にラビング配向処理を施した樹脂膜を設ける。本発明においては、ラビング配向処理を施した樹脂膜を用いるが、カイラルネマチック液晶層のFCの安定性を実質的に損ねることがない。
【0029】
また、カイラルネマチック液晶層のPLとFCの各状態のメモリ性を充分に発現できる。さらに、PLでの透明性とFCでの散乱性とを組み合わせてCL−LCDの「透過・散乱」の動作モードをさせる場合に、高コントラスト比の表示動作が可能となる。
【0030】
また、上記の態様2においては、PLで透明状態を呈しているカイラルネマチック液晶層を2枚の偏光板間に配置する。その際に、液晶表示素子のカイラルネマチック液晶層で散乱され基板を通過して外部に透過しようとする可視光を偏光板で吸収するように構成する。
【0031】
すなわち、外部に透過しようとする可視光が最も吸収されるように、一対の偏光板の偏光軸を調節する。すると、第1の状態の場合に、カイラルネマチック液晶層および基板面を透過する透過光は偏光板によって吸収される。しかし、第2の状態の場合には、入射光がカイラルネマチック液晶層で散乱されるために、その偏光方向が変化し、カイラルネマチック液晶層の外側に配置された偏光板を通過できる。
【0032】
このようにして、入射光のうちの一部の光が液晶表示素子を透過できる。このことを利用して、液晶表示素子として、「透過−吸収」の動作モードをさせることが可能となり、高コントラスト比の表示を行うことができる。
【0033】
この際、カイラルネマチック液晶層の裏面側にバックライトなどの照明装置を設けることができる。そして、視認性がさらに高い液晶表示素子を提供できる。また、CL−LCDがPLの場合の透過光量をIa、FCの場合の透過光量をIbとすると、液晶表示素子としてのコントラスト比を示す指標値である「Ib/Ia」を2以上に設定することが視認性の面から好ましい。
【0034】
また、上記の態様3においては、液晶表示素子の裏面側に、位相差板を介して反射面を配置し、観察者側に偏光板を設ける。言い換えると、反射面を備えた反射型構成をとることができる。CL−LCDがPLである場合に、赤外域の光が選択反射せしめられ、カイラルネマチック液晶層が可視域で透明状態である。このとき、液晶表示素子に入射された入射光が裏面側に置かれた反射面で表側に向かって、その光路が折り返される。
【0035】
そして、折り返された反射光が、表側に置かれた偏光板で吸収されるように偏光板の偏光軸を調整する。この反射構成によって、コントラスト比を高くできるので好ましい。この反射構成をとる場合に、裏面側に置く位相差板を4分の1波長板とすると、さらに高コントラスト比の表示を発現できるので特に好ましい。
【0036】
また、態様7においては、カイラルネマチック液晶層に接する両側の透明電極上に、ラビング配向処理が施されたプレチルト角60°以上(好ましくは80゜以上)の樹脂膜を設ける。
【0037】
この構成によって、PLの配向欠陥を最も低減させることができ、高い透明性を実現できる。樹脂膜として、ポリイミド樹脂を用いることでラビング時の配向均一性を向上でき、液晶表示素子の耐熱性も高くなるので好ましい。
【0038】
よって、上述した3つの態様に応じて利用できる、「透過−散乱」、「透過−吸収」および「透過−反射」のいずれの動作モードにおいても、高コントラスト比の表示を達成できる。なお、本発明において、カイラルネマチック液晶層に接する樹脂膜と透明電極との間にシリカ、チタニアなどの金属酸化物からなる薄い電気絶縁層を形成して電気的な短絡を防止することもできる。
【0039】
また、赤外域の光を含む選択反射光は所定の帯域幅を有している。本発明において、CL−LCDの帯域幅の中心波長を0.7〜1.2μmに設定することが好ましい。0.7μm未満ではPLの選択反射光色が視認できるため、「透過−散乱」の動作モードでは透過光が着色する。また、偏光板を用いた「透過−吸収」の動作モードでは、吸収時に選択反射光が偏光板を通過して、洩れるためにコントラスト比が低下する。
【0040】
また、選択反射光の中心波長が1.2μmを超えると、FCの散乱が弱くなり、「透過−散乱」の動作モードでのコントラスト比が低下する。偏光板を使用した動作モードでも、入射光の偏光解消が不充分となりコントラスト比が低下する。
【0041】
CL−LCDの選択反射光の帯域幅の半値幅Δλは、使用する液晶の屈折率異方性(Δn)と液晶のヘリカルピッチ(P)とによって決定される。Δnの大きい液晶を用いた場合、Δλが0.1μm前後になることがある。完全に透過光の着色を回避するためには、選択反射の中心波長を0.76μm以上とすることが好ましい。さらに、0.80μm以上にすることが特に好ましい。図5に本発明の液晶表示素子の各波長域における選択反射の特性を示す。およそ、選択反射光は波長に対して単峰性をほぼ示し、その帯域の中心波長は0.7〜1.2μmの間にある。反射率の最大値は約40%である。
【0042】
また、CL−LCDのメモリ動作に必要な駆動電圧の最大電圧をV(V)、カイラルネマチック液晶層の厚みをd(μm)とすると、V/d≦10を満足するように設定することが好ましい。駆動電圧を低減できるからである。また、dを3μm以上に設定すると、製造時における両基板間での短絡欠陥を低減できるので特に好ましい。
【0043】
また、本発明において、CL−LCDを構成する透明電極を行電極、列電極よりなる複数本のストライプ電極とし、ドットマトリクス表示によるメモリ性能を有する情報表示装置を提供できる。
【0044】
【実施例】
図1を参照し本発明の説明を行う。液晶パネル10は、第1基板1Fと第2基板1Rとを備え、各基板の内面には、ITO(インジウム・酸化錫)からなる透明電極2F、2Rがそれぞれ形成されている。
【0045】
透明電極2F、2Rは、直交配置するストライプ状パターンの行電極と列電極(または、X電極とY電極)に形成し、フルドット表示用の電極構成とすることができる。また、セグメント表示などの非フルドット表示であってもよい。本発明は、液晶表示素子の表示形態に限定されるものではない。また、各基板の材質は、ガラスまたはプラスチックのいずれでもよい。
【0046】
透明電極2F、2Rのそれぞれの上には、平滑化を兼ねた電気絶縁層3F、3Rがそれぞれ形成されている。さらに、その上に樹脂膜4F、4Rがそれぞれ形成されている。本発明において、樹脂膜4F、4Rの少なくともいずれか一方は、60°以上、好ましくは80゜以上のプレチルト角を有し、かつ、ラビング処理が施されたものを採用する。樹脂膜4F、4Rはカイラルネマチック液晶層5に接するように配置される。
【0047】
両方の基板の樹脂膜4F、4Rがともに、「プレチルト角が60°以上」の要件を満たすことがより好ましい。なお、視感性の調整などの目的でいずれか一方の基板内面側もしくは外面側にカラーフィルタが設けられてもよい。
【0048】
両基板1F、1Rは、周辺シール材(図示を省略)によって圧着される。基板間にはスペーサを散布して配置する(図示を省略)。上記の基板間隙を所定の厚みにするためである。このようにして、PLの場合に、赤外光を選択反射するカイラルネマチック液晶層5がセル内に形成される。この構成によって、PLとFCのメモリ性を維持しつつ、PLで液晶配向欠陥の少ない、高い透明度を有する表示モードが得られる。
【0049】
この構成によって、「透過−散乱」の動作モードで、メモリ機能を有する表示素子として充分に使用できる。さらに、以下に説明するように、偏光板または位相差板と組み合わせて、透過型または反射型の動作モードを有するメモリ表示素子として使用できる。
【0050】
すなわち、透過仕様のメモリ性液晶表示素子として使用する場合には、上記と同様にして作成した液晶パネルを2枚の偏光板で挟み、裏面側に照明装置を設置する(図2参照)。また、反射仕様のメモリ性の液晶表示素子として使用する場合には、上記の液晶パネルを表側の1枚の偏光板6と、裏面側の1枚の位相差板7で挟み、さらに裏面側に反射面8を設置する(図3参照)。
【0051】
(例1)
図1を参照しつつ本例の説明を行う。ITOよりなる透明導電膜付き基板1F、1Rを2枚用意した。そして、各基板の電極2F、2Rを形成した面に電気絶縁層3F、3Rをそれぞれ形成した。その後、ポリイミド(JSR社製、品番:JALS−682−R3)の樹脂溶液を塗布し焼成してラビング処理を施した。この樹脂膜4F、4Rの膜厚は500Å、プレチルト角は89°程度であった。
【0052】
このようにして形成した2枚の基板を、それらの電極が対向するように配置し、その対向面間に直径4μmのスペーサを撒布した。その後、液晶注入口となる部分を除いて基板の4辺に、直径4μmの微量のグラスファイバーを含むエポキシ樹脂からなる周辺シール材を塗布し、2枚の基板を貼り合わせて空セルを作製した。
【0053】
次に、ネマチック液晶(メルクジャパン社製:MJ00423、T=97℃,Δn=0.242,Δε=13.8)82.2部、下記化1の光学活性物質8.9部、下記化2の光学活性物質8.9部からなる液晶組成物を調製して、セルに真空注入法にて注入した後、注入口を光硬化樹脂で封止し、液晶パネル10を形成した。基板間隙の厚みdが4μmで、カイラルネマチック液晶層に形成されたピッチPは0.559μmとなった。
【0054】
【化1】
Figure 0004398637
【0055】
【化2】
Figure 0004398637
【0056】
この液晶パネル10の両基板1F、1Rの電極2F、2Rの取り出し部(端子部)に導電性粘着材付きの銅箔テープを貼った。そして、その電極取り出し部に、パルス幅20msec、実効値20Vrmsのバイポーラ矩形波パルスを印加した後、遮断し、3分間静置した。液晶パネル10は透明状態を示し、この状態は5日間放置しておいても変化がなかった。
【0057】
次に、実効値13Vrmsのバイポーラ矩形波パルスを印加した後、遮断し、3分間静置した。液晶パネル10は散乱状態を示し、この状態は5日間放置しておいても変化がなかった。さらに、パルス幅20msec、実効値20Vrmsのバイポーラ矩形波パルスを印加した後、遮断し、3分間静置した。液晶パネル10は再び透明度の高い透明状態を示した。
【0058】
このPLの透明状態とFCの散乱状態のコントラストを集光角10°のシュリーレン光学系で測定したところ6.4であった。
【0059】
(例2)
例1と同様にして作成した液晶パネルを偏光板2枚で挟み込み、裏面側にバックライトを設置した。偏光板の偏光軸の角度を約67°に設定し、液晶表示素子20を作成した(図2参照)。
【0060】
そして、パルス幅20ms、実効値20Vのバイポーラ矩形波パルスを印加した後、遮断し3分間静置した。液晶表示素子の表示面は配向の欠陥の少ないPLとなり、2枚の偏光板を通過した表示光の透過色は紫がかった黒であった。
【0061】
つづいて、実効値パルス幅20ms、実効値13Vのバイポーラ矩形波パルスを印加した後遮断し、3分間静置した。カイラルネマチック液晶層5はFCとなり散乱を呈し、2枚の偏光板を通した透過色は白であった。このときに、PLの場合の透過光量をIa、FCの場合の透過光量Ibとの比(Ib/Ia)は8.3となった。
【0062】
このように、コントラスト比の高い白黒表示を得ることができた。なお、カイラルネマチック液晶層に接する樹脂膜として、ラビング配向処理を施していないポリイミドを用いた例を同様に試作し、その動作を評価した。すると、低いコントラスト比での白黒表示を行うことができた。
【0063】
(例3)
例1と同様にして作成した液晶パネルを、表側に置いた1枚の偏光板6と裏側に置いた4分の1波長板7とで挟み込んだ。また、液晶パネルの裏面側に反射面8を設置した。この際に、偏光板6の偏光軸(吸収軸)と4分の1波長板7の主軸(遅相軸)とが成す角度を約23゜に設定し、液晶表示素子30を作成した(図3参照)。
【0064】
次に、パルス幅20ms、実効値20Vのバイポーラ矩形波パルスを印加した後、遮断し、3分間静置した。液晶表示素子の表示面は配向の欠陥の少ないPLとなり、表側から入射した入射光は偏光板6により吸収され暗状態となった。
【0065】
つづいて、実効値パルス幅20ms、実効値13Vのバイポーラ矩形波パルスを印加した後、遮断し、3分間静置した。液晶表示素子の表示面はFCとなり散乱を呈し、入射した光の一部が裏面側の反射面によって反射されることで明状態を示した。
【0066】
この液晶表示素子30を、基板に対する方線方向を0°としたときに、20°となる方向に光源を設置した。方線方向に設置した受光器より反射光強度を測定する光学測定装置により反射光強度を測定した。液晶パネルがPLであるときの反射光強度をI、FCの時の反射光強度をIとすると、I/Iは4.8であった。次の表1に、本発明の3つの態様の動作について対比して示す。
【0067】
【表1】
Figure 0004398637
【0068】
(比較例1)
樹脂膜の材料として、日産化学社製のSE−3840を使用した以外は例1と同様にして、液晶パネルを作成した。このSE−3840は低プレチルト角の配向膜材料である。例1と同様に、本例の液晶表示素子の表示面の液晶層をPLとする電圧パルスを印加後、静置し、観察すると透明度の高い透明状態を呈した。
【0069】
次に、例1と同様にFCとなるよう幾つかの電圧値の電圧パルスを印加後、静置した。しかし、本例の液晶表示素子の液晶層はFCとならず、散乱状態を示さず、メモリ性の動作を示さなかった。
【0070】
(比較例2)
樹脂膜の材料として、日産化学社製のSE−3840を使用し、ラビング処理を行わない以外は例1と同様にして液晶パネルを作成した。これに例1と同様に、液晶表示素子の表示面の液晶層をPLとする電圧パルスを印加後、静置した。カイラルネマチック液晶層を観察すると、部分的に白濁状態があり、透明度の低い透明状態を呈した。
【0071】
次に、例1と同様にFCとなる電圧パルスを印加後、静置した。するとカイラルネマチック液晶層は散乱状態を示した。この液晶パネルを例1と同様に、一対の偏光板で狭持し、PLとFCでの透過光量を測定したところ、コントラスト比は2未満であった。
【0072】
(比較例3)
ラビング配向処理を行わない以外は例1と同様にして液晶パネルを作成した。例1と同様にして、液晶表示素子の表示面のカイラルネマチック液晶層をPLとする電圧パルスを印加後、静置した。カイラルネマチック液晶層を観察すると、部分的に白濁状態が存在していた。
【0073】
特に、斜め方向から観察すると、透明度の低い透明状態を呈していることがわかった。45°に傾けた場合の透過率を集光角10°のシュリーレン光学系で測定したところ、例1の透過率が85%であるのに対して、本例の透過率は50%に低下していた。
【0074】
【発明の効果】
本発明において、赤外域の光を選択反射せしめつつ、高コントラスト比の表示を得ることができる。また、カイラルネマチック液晶層の各状態が安定であり、高い透明性と安定した散乱状態を保持できるので、すぐれた光学特性を有する液晶表示素子を形成できる。
【0075】
また、本発明の液晶パネルのメモリ特性は安定しており、無電源で表示を行う表示装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示素子10の構成構成を示す模式図。
【図2】本発明の透過仕様である液晶表示素子20の配置構成を示す模式図
【図3】本発明の反射仕様である液晶表示素子30の配置構成を示す模式図。
【図4】カイラルネマチック液晶層のHO(A)、完全PL(B)および通常のPL(C)を示す模式図。
【図5】選択反射の波長域を示す説明図。
【符号の説明】
1F、1R:基板
2F、2R:透明電極
3F、3R:電気絶縁膜
4F、4R:樹脂膜
5:カイラルネマチック液晶層

Claims (8)

  1. 表側偏光板、透明電極付き表側基板、カイラルネマチック液晶層、透明電極付き裏側基板、裏側偏光板の順に配置されてなる液晶表示素子であって、
    少なくとも一方の透明電極の上にプレチルト角が60°以上の樹脂膜が設けられ、樹脂膜にはラビング配向面が設けられ、カイラルネマチック液晶層とラビング配向面とが接するよう配置され、
    カイラルネマチック液晶層は、入射光が選択反射されて選択反射光が生じせしめられる第1の状態と、入射光が散乱せしめられる第2の状態とを有し、
    選択反射光に赤外域の波長が含まれ、カイラルネマチック液晶層が可視域で透明状態であり、第1の状態の場合に、裏側から入射した光のうちカイラルネマチック液晶層を透過せしめられた波長域の光が側偏光板によって吸収されてなる液晶表示素子。
  2. 偏光板、透明電極付き表側基板、カイラルネマチック液晶層、透明電極付き裏側基板、位相差板および反射面の順に配置されてなる液晶表示素子であって、
    少なくとも一方の透明電極の上にプレチルト角が60°以上の樹脂膜が設けられ、樹脂膜にはラビング配向面が設けられ、カイラルネマチック液晶層とラビング配向面とが接するよう配置され、
    カイラルネマチック液晶層は、入射光が選択反射されて選択反射光が生じせしめられる第1の状態と、入射光が散乱せしめられる第2の状態とを有し、
    選択反射光に赤外域の波長が含まれ、カイラルネマチック液晶層が可視域で透明状態であり、第1の状態の場合に、表側から入射され反射面によって表側に反射される反射光が偏光板によって吸収されてなる液晶表示素子。
  3. 位相差板が4分の1波長板である請求項2に記載の液晶表示素子。
  4. 透明電極間に印加される駆動電圧によって第1の状態と第2の状態との間の状態転移が制御せしめられ、
    駆動電圧が実質的に0Vである場合に、第1の状態または第2の状態が保持されてなる請求項1、2または3に記載の液晶表示素子。
  5. 液晶表示素子の裏面側に照明装置が配置され、第1の状態の場合に、カイラルネマチック液晶層に入射せしめられ、カイラルネマチック液晶層を実質的に透過せしめられる透過光量をIa
    第2の状態の場合に、カイラルネマチック液晶層を実質的に透過せしめられる透過光量をIbとすると、Ib/Ia≧2を満足する請求項1に記載の液晶表示素子。
  6. それぞれの透明電極の上にラビング配向面を有する樹脂膜が配置され、それぞれのラビング配向面がカイラルネマチック液晶層に接するように配置されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
  7. 選択反射光の中心波長が0.7〜1.2μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
  8. カイラルネマチック液晶層の状態を変化させるのに必要な駆動電圧の最大電圧値をV(V)、カイラルネマチック液晶層の厚みをd(μm)とすると、V/d≦10である請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
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