JP4433452B2 - 水性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性樹脂組成物に関し、より詳しくは、揮発性有機化合物(以下、VOCという。)を殆ど含有せず、低い最低造膜温度(以下、MFTという。)を有しながら優れた凍結−融解安定性をもち、低温成膜性に優れ、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能であり、高沸点の有機溶剤を殆ど含有しないので速乾性、作業性にも優れていて屋内外の塗装に用いることができる水性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、VOCの配合量や毒性等の低減に関する環境規制が厳しくなってきた観点や、省資源の観点から、塗料業界では溶媒として有機溶剤を使用した溶剤形塗料から水を使用した水性塗料への転換が急速になされつつある。その代表的な塗料として水性エマルション塗料を挙げることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水性エマルション塗料には固有のMFTがあり、それで、被塗装面の温度がMFTよりも低い場合には、造膜助剤としてVOCを添加しなければ、連続した塗膜を得ることは出来ない。また、水を分散媒として使用しているので、冬季等には凍結防止剤としてVOCを添加する必要がある。それで、水性エマルション塗料と雖も相当量のVOCを配合する必要があり、塗料業界では水性エマルション塗料中に必要とされるVOCの配合量を更に減量,削減するために鋭意検討が行われている。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を背景になされたものであり、環境汚染や、臭気の発生源となる造膜助剤等のVOCを全く含まず、或いは極少量含有するだけであり、それでシックハウス症候群を起こさせないので室内にも使用することができ、また低いMFTを有しながら優れた凍結−融解安定性をもち、低温成膜性に優れ、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能であり、高沸点の有機溶剤を殆ど含有しないので速乾性、作業性にも優れていて屋内の塗装だけでなく、屋外にも長期にわたり用いることができる水性樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、多段乳化重合法によって得られる特定の異相構造粒子含有エマルションを用いることにより、上記の目的が確実に達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明の水性樹脂組成物は、
多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルション(a)を含む水性樹脂組成物であって、
(1)該異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が、一般式(イ)、
R1 nSi(OR2)4-n (イ)
〔式中、R1は、炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はビニル基であり、R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜2である。〕で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を該異相構造粒子の全質量の10〜60質量%となる量で含有する乳化共重合体で形成されており、
(2)該異相構造粒子の最外相が、エチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体単位が該最外相の全質量の1〜20質量%を占めている乳化共重合体で形成されており、該最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が−50〜15℃であり、
(3)該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相がエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体で形成されており、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が30〜150℃であり、
(4)該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度と、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度との差が30〜150℃であり、
(5)該水性樹脂組成物のMFTが10℃以下である
ことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について具体的に説明する。
本発明の水性樹脂組成物は、水中でのエチレン性不飽和単量体の多段乳化重合法によって製造した特定の異相構造粒子含有エマルション(a)を含むものである。
【0008】
異相構造粒子含有エマルションの製造に採用される多段乳化重合法は、エチレン性不飽和単量体を含有する水性乳濁液を形成し、従来から公知の乳化重合法を2段階以上、通常は2〜5段階繰り返し実施して、形成されるエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体が異相構造、即ち、特性の異なる最外相と一相以上の内部相からなる粒子を形成させる多段乳化重合法である。
【0009】
多段乳化重合法の代表例として、エチレン性不飽和単量体を含有する水性乳濁液中に乳化剤及び重合開始剤、更に必要に応じて連鎖移動剤や、乳化安定剤等を存在させ、通常60〜90℃の加温下で乳化重合し、この工程を複数回繰り返して実施する多段乳化重合法を挙げることができる。
【0010】
上記の乳化剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、更には、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又はこれらの化合物の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0011】
上記の重合開始剤としては、従来からラジカル重合に一般的に使用されているものが使用可能であり、中でも水溶性のものが好適である。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド、4,4’−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0012】
上記の連鎖移動剤として、例えば、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2−メチル−t−ブチルチオフェノール、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。これらを適宜使用することによって、塗膜の光沢、成膜性、不粘着性を制御することができる。
【0013】
上記の乳化安定剤として、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
また、上記の多段乳化重合法として、単量体を一括で仕込む単量体一括仕込み法、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体を水及び乳化剤と予め混合して乳化させておき、この乳濁液を滴下するプレエマルション法、或いは、これらを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0014】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、異相構造粒子を構成する各相はエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であり、その少なくとも一相が、一般式(イ)、
R1 nSi(OR2)4-n (イ)
〔式中、R1 は、炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はビニル基であり、R2 は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜2である。〕で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を該異相構造粒子の全質量の10〜60質量%、好ましくは10〜40質量%となる量で含有する乳化共重合体で形成されている。
【0015】
異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相の組成について、一般式(イ)で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物の量が10質量%未満、特に5質量%未満である場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の耐候性、耐汚染性が低下する傾向があり、逆に60質量%を超える場合には、異相構造粒子の相を形成する乳化重合時の安定性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
【0016】
上記の一般式(イ)において、R1 は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はビニル基である。このアルキル基は、直鎖でも分岐したものでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜4個のものである。
【0017】
上記のシクロアルキル基として、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を好適なものとして挙げることができる。上記のアリール基として、例えばフェニル基等を挙げることができる。
上記の各官能基は任意に置換基を有していてもよい。このような置換基として、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等を挙げることができる。
【0018】
上記の一般式(イ)において、R2 は直鎖のアルキル基でも分岐したアルキル基でもよい。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等を挙げることができ、好ましいアルキル基は炭素数が1〜3個のものである。
【0019】
上記の一般式(イ)で示されるシラン化合物の具体例として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、トリエトキシメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン等を挙げることができ、特に好ましいシラン化合物としてテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランを挙げることができる。これらのシラン化合物は、一種単独で使用することも、二種以上を併用することもできる。
【0020】
また、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が、上記の一般式(イ)で示されるシラン化合物の部分加水分解縮合物を含有する乳化共重合体で形成されていてもよい。該縮合物を形成するのに用いる縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量は、例えば、300〜5000、好ましくは500〜3000であり、このような分子量の縮合物を使用することにより、乳化重合時の安定性を悪化させることなしで、耐候性、耐汚染性のよい塗膜を形成し得る塗料組成物を得ることができる。また、シラン化合物の部分加水分解縮合物は、珪素原子に結合した−OH基や−OR2 基を1個以上、好ましくは3〜30個有するものが適当である。
【0021】
このような縮合物の市販品としては、例えば、商品名で「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」(以上三菱化学株式会社製)、「エチルシリケート40」(コルコート株式会社製)、「SH6018」、「DC233」、「SR2402」、「DC3037」、「DC3074」(以上東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、「KR−211」、 「KR−212」、「KR−213」、「KR−214」、「KR−216」、「KR−218」(以上信越化学工業株式会社製)、「TSR−145」、「TSR−160」、「YR−3187」(以上東芝GEシリコーン株式会社製)等を挙げることができる。
【0022】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、一般式(イ)で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相に含有されていればよく、異相構造粒子の最外相のみに含有されていても、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくても一相のみに含有されていても、異相構造粒子の最外相と、最外相より内側にある内部相の一相以上に含有されていても、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の二相以上に含有されていてもよい。
【0023】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、その異相構造粒子の最外相が、エチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体単位が該最外相の全質量の1〜20質量%、好ましくは5〜17質量%を占めている乳化共重合体で形成されていることが必須である。該最外相の乳化共重合体が、更に、一般式(イ)で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を該異相構造粒子の全質量の10〜60質量%、好ましくは10〜40質量%となる量で含有していることが好ましい。このような異相構造粒子含有エマルションは各種の安定性が高いだけでなく、塗膜としたときの表面接触角が低いので、耐汚染性、耐候性において著しい向上を見ることができる。特に、塗膜の水接触角が70度以下になる場合に耐雨筋汚染性の顕著な向上を見ることができる。
【0024】
従って、本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションを上記の多段乳化重合法で製造する際には、異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体混合物は、最外相を形成するのに用いられる全成分の合計質量を基準にして、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%、好ましくは5〜17質量%含有する必要があり、好ましくは更に、一般式(イ)で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を該異相構造粒子の全質量の10〜60質量%、好ましくは10〜40質量%含有する。
【0025】
異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体混合物について、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体が、最外相を形成するのに用いられる全成分の合計質量を基準にして、1質量%未満である場合には、得られる異相構造粒子含有エマルションの凍結−融解安定性が悪くなる傾向があり、逆に20質量%を超える場合には、得られる異相構造粒子含有エマルションを用いて形成される塗膜の耐水性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
【0026】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、その異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度(以下、Tgという。)が−50〜15℃、好ましくは−30〜0℃であることが必須であり、従って、異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体混合物として、そのような乳化共重合体を形成し得るエチレン性不飽和単量体混合物を使用する必要がある。
【0027】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、その異相構造粒子の最外相より内側にある内部相がエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体で形成されており、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃、好ましくは30〜95℃であることが必須である。従って、異相構造粒子の最外相より内側にある少なくとも一相を形成するために加えるエチレン性不飽和単量体混合物として、そのような乳化共重合体を形成し得るエチレン性不飽和単量体混合物を使用する必要がある。
【0028】
更に、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgと、該内部相の該少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30〜135℃であることが必須である。
【0029】
尚、本発明に於いて、乳化共重合体のTgは、次のFOX式を用いて計算された値である。
1/Tg=W1 /Tg1 +W2 /Tg2 +・・・・+Wn /Tgn
(上記のFOX式は、n種の単量体単位からなる乳化共重合体を構成する各々の単量体についてのホモポリマーのガラス転移温度をそれぞれTg1 、Tg2 、・・・・、Tgn (K)とし、各々の単量体の質量分率をそれぞれW1 、W2 、・・・・、Wn (W1 +W2 +・・・・+Wn =1)としている。)
【0030】
異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgが−50℃未満である場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを用いて形成される塗膜の耐汚染性や耐温水性等が悪くなる傾向があり、逆に15℃を超える場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションの低温時における造膜性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
【0031】
一方、内部相を形成する全ての相のTgが30℃未満である場合(即ち、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃であるという条件を満足しない場合)には、そのような異相構造粒子含有エマルションを用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性や物理的塗膜強度が低下する傾向があり、逆に150℃を超える場合には、異相構造粒子を製造するための乳化重合反応を制御することが困難となる傾向があるので好ましくない。
【0032】
また、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgと、該内部相の該少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30℃未満である場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションの低温成膜性及びそのような異相構造粒子含有エマルションを用いて形成される塗膜の低粘着性を両立させることが困難になる傾向があり、逆に135℃を超える場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションの成膜性及びそのような異相構造粒子含有エマルションを用いて形成される塗膜の透明性が劣る傾向があるので好ましくない。
【0033】
本発明の水性樹脂組成物は、上記の諸条件を満足することにより、造膜助剤や凍結防止剤等のVOCを使用しなくとも、また、使用したとしても水性樹脂組成物中のVOCの含有量が1質量%未満となる量の添加で、優れた凍結−融解安定性、貯蔵安定性をもち、低温成膜性に優れ、塗装作業性に優れ、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能である。
【0034】
次に、異相構造粒子含有エマルションの製造に用いるエチレン性不飽和単量体について説明する。
異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体は、前記したように、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分として含有する。
【0035】
そのようなエチレン性不飽和単量体として、例えば、下記の一般式(ロ)又は(ハ)で示されるものを挙げることができる。
CH2 =C(R1 )−C(=O)−O−(X−O)n −R2 (ロ)
CH2 =C(R1 )−(CH2 )m −O−(X−O)n −R2 (ハ)
(式中、R1 は−H又は−CH3 であり、R2 は−H又は炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは−(CH2 )2 −、−(CH2 )3 −、又は−CH2 CH(CH3 )−であり、mは1〜30の整数であり、nは1〜30の整数である。)
【0036】
これらのエチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸やアリルアルコール等にエチレンオキサド及び/又はプロピレンオキサイドを付加重合反応させた後、必要に応じて、炭素数1〜8個のアルキル基でエーテル化することによって容易に調製することが出来る。この様なエチレン性不飽和単量体の市販品としては、例えば、商品名「MA−30」、「MA−50」、「MA−100」、[MA−150]、「MPG−130MA」(以上、日本乳化剤(株)製)、「ブレンマーPE」、「ブレンマーPP」、「ブレンマーAP−400」、「ブレンマーAE−350」、「ブレンマーPEP」(以上、日本油脂(株)製)等を挙げることができる。
【0037】
異相構造粒子の各々の相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体の量的な主要成分としては、従来からアクリル樹脂の製造に使用されている各種エチレン性不飽和単量体を制限無く使用することができる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、α―クロロエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル (メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応によって得られるエポキシ基含有単量体やオリゴマー;(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α, α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート含有単量体;その他N−メチロール基を有したN−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、更にはエチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を代表的なものとして挙げることができる。
【0038】
更に、得られる異相構造粒子含有エマルションを用いて形成される塗膜の耐候性を向上させ、乳化重合時の安定性を向上させるために、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相の乳化共重合段階において、分子中に珪素原子に直結した加水分解性基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合させることが好ましい。分子中に珪素原子に直結した加水分解性基を有するエチレン性不飽和単量体の配合量は、当該相の乳化共重合体を形成するのに用いられるエチレン性不飽和単量体の合計質量を基準にして0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0039】
このような分子中に珪素原子に直結した加水分解性基を有するエチレン性不飽和単量体として、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等を挙げることができる。これらは一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、必要に応じて、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体の一部として、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を含有していてもよい。このようなエチレン性不飽和単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等を挙げることができる。
【0041】
また、必要に応じて、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相、好ましくは最外相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体の一部として、重合性光安定性単量体を含有していてもよい。
【0042】
このような重合性光安定性単量体として、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。これらの単量体は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、必要に応じて、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相、好ましくは最外相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体の一部として、重合性紫外線吸収性単量体を含有してもよい。
【0044】
このような重合性紫外線吸収性単量体として、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。これらは一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記の各々の共単量体は、前記の通り、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgが−50〜15℃となり、異相構造粒子の内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃となり、該最外相を形成する乳化共重合体のTgと、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30〜135℃となるように、適宜組み合わせて使用すればよい。
【0046】
本発明の水性樹脂組成物に用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が内部架橋構造を有する乳化共重合体で形成されていることが好ましい。このような粒子内部架橋構造を有する乳化共重合体は、内部架橋構造を有する相を形成させるための多段乳化重合の所定の段階で加えるエチレン性不飽和単量体の一部としてジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体を使用して乳化重合させる方法;乳化重合反応時の温度で相互に反応する官能基を持つ単量体の組合せ、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組合せの官能基を持つエチレン性不飽和単量体を選択含有させた単量体混合物を使用して乳化重合させる方法;加水分解縮合反応の生じる、前記に記載の珪素原子に直結した加水分解性基を有するエチレン性不飽和単量体を含有させた単量体混合物を使用して乳化重合させる方法;等の方法により製造することができる。
【0047】
本発明の水性樹脂組成物は、塗装時等の乾燥段階で各々の異相構造粒子の間の架橋構造、即ち、粒子間架橋構造を形成し得ることが好ましい。このように粒子間架橋構造を形成し得る代表的な水性樹脂組成物は、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体が、該最外相の全質量を基準にして1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%の、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体単位を含有しており、更に水性樹脂組成物中に、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物(b)が、該カルボニル基数の0.1〜2.0倍、好ましくは0.3〜1.2倍のヒドラジド基数となる量で存在している水性樹脂組成物である。
【0048】
上記のような水性樹脂組成物において、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体単位の含有量が、最外相の全質量を基準にして1質量%未満である場合には、粒子間の架橋が不十分となる傾向があり、一方、25質量%を超える場合にはそのような水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の耐水性等が悪くなる傾向がある。
【0049】
また、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物(b)の配合量が異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体中のカルボニル基数の0.1倍未満のヒドラジド基数となる量で存在している場合には、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体中のカルボニル基との反応が不十分となり、そのような水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の耐ブロッキング性や塗膜硬度が得られにくくなる傾向があり、逆に2.0倍よりも多い場合には、(b)成分が残存し、そのような水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の耐水性等が悪くなる傾向がある。
【0050】
上記のような粒子間架橋構造を形成し得る代表的な水性樹脂組成物は、代表的な方法として、異相構造粒子の最外相を形成する際に、該最外相の全質量を基準にして1〜25質量%の、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合させ、一方、水性樹脂組成物中に、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物(b)を、該カルボニル基数の0.1〜2.0倍のヒドラジド基数となる量で存在させることにより得られる。このようにして得られた水性樹脂組成物は塗装時等の乾燥により粒子間架橋構造を形成する。
【0051】
上記のカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体として、例えば、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等を挙げることができる。特に、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトンが好ましい。
【0052】
上記のカルボニル基の対となる、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物(b)としては、例えば、カルボヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン2酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、チオカルボジヒドラジド等を挙げることができる。これらの中でも、エマルションへの分散性や水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の耐水性のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが好ましい。
【0053】
本発明の水性樹脂組成物が、上記のような“粒子内部架橋構造”を有する水性樹脂組成物であるか、又は/且つ“粒子間架橋構造”を形成し得る水性樹脂組成物である場合には、そのような水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の強靱性、耐ブロッキング性、不粘着性、耐溶剤性等の性能を大幅に向上させうることができる。そのため、これら架橋構造を適宜組み込むことが好ましい。
【0054】
本発明の水性樹脂組成物は、多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルション(a)に加えて、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート基を有する化合物、アジリジン環を有する樹脂、オキサゾリン環を有する樹脂、及びカルボジイミド基を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種(c)を含むことができ、(c)成分の配合量が(a)成分中の異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.1〜95質量%、好ましくは1〜30質量%となる量であることが好ましい。
【0055】
本発明の水性樹脂組成物中に(c)成分が存在することにより、耐候性、耐水性、密着性、光沢、不粘着性、塗膜強度等の諸物性にすぐれた塗膜を得ることができるのであり、(c)成分の配合量が(a)成分中の異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.1質量%未満である場合には、それらの諸物性が不十分となり、逆に95質量%を超える場合には、そのような組成物の低温成膜性、そのような組成物から形成される塗膜のクリア性、耐アルカリ性等が劣る傾向があるので好ましくない。
【0056】
本発明の水性樹脂組成物において(c)成分として用いることのできるエポキシ樹脂として、エポキシ基含有アルコキシシラン、アルキルグリシジルエーテル及びエステル、シクロエポキシ化合物、ビスフェノールA系及びビスフェノールF系の低分子量エポキシ樹脂、あるいはこれらの乳化物等を挙げることができ、市販品としては、例えば、商品名 「EA1」、「EA2」、「EA20」(以上カネボウNSC(株)製)等を挙げることができる。
【0057】
アミノ樹脂として、ブチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化シクロヘキシルベンゾグアナミン樹脂、あるいはこれらの水溶化物等を挙げることができる。
【0058】
イソシアネート基を有する化合物としては、2個以上のイソシアネート基を分子内に有するものであれば特には限定されないが、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、及び、これらジイソシアネートの誘導体であるトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、イソシアヌレート体等のアダクトポリイソシアネート化合物、上記のイソシアネート基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法で単独重合させたもの、あるいは他のエチレン性不飽和単量体と共重合させたもの等、あるいは、これらの乳化物を用いることができ、市販品として、商品名「アクアネートAQシリーズ」(日本ポリウレタン工業(株)製)等を例示することができる。
【0059】
アジリジン環を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸−2−アリジニルエチル等のアジリジニル基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法を用いて単独重合させたもの、あるいは、他の不飽和単量体と共重合させたものを使用することが可能である。
【0060】
オキサゾリン環を有する樹脂としては、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法を用いて単独重合させたもの、あるいは、他のビニル系モノマーと共重合させたものを使用することができ、市販品として、商品名「エポクロスWS500」、「エポクロスK2010E」(以上日本触媒(株)製)等を挙げることができる。
【0061】
カルボジイミド基含有樹脂として種々のものが知られており、例えば、特開平6−56950号公報、特開平9−77839号公報等に記載の製造方法によって得られるものを使用することができ、市販品としては、商品名「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(以上日清紡(株)製)等を挙げることができる。
【0062】
なお、(a)成分中の異相構造粒子の官能基と(c)成分との反応を高める目的で、適宜、触媒を使用することももちろん可能である。
更に、前記の(a)成分を含む水性樹脂組成物に対して、又は前記の(a)成分と(c)成分とを含む水性樹脂組成物に対して、重量平均分子量1000〜50000の水溶性樹脂を配合することもできる。該水溶性樹脂を、異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.5〜40質量%、好ましくは2〜20質量%となる量で配合することによって、そのような水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の光沢、耐水性、付着性を向上させることができる。該水溶性樹脂の配合量が異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.5質量%未満である場合には、上記のような添加効果が得られず、逆に40質量%を超える場合には、そのような水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の耐アルカリ性、耐水性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0063】
本発明の水性樹脂組成物で用いることのできる水溶性樹脂として、前記のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含む単量体混合物を公知の方法で重合した後、アミン等の中和剤で中和し、その後水溶化して得られたもの、前記のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含む単量体混合物を公知の方法で重合した後、酸等で中和し、その後水溶化したもの、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。
【0064】
なお、本発明の水性樹脂組成物のMFTが30℃を超える場合には造膜助剤をより多く配合する必要があり、それで、本発明の水性樹脂組成物はMFTが30℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。水性樹脂組成物のMFTが造膜助剤や可塑剤の添加なしで30℃以下となるように、エチレン性不飽和単量体を適宜組み合わせて多段乳化重合法によって異相構造粒子含有エマルションを製造するか、又は(c)成分等と適宜組み合わせて使用すればよい。
【0065】
尚、本発明の水性樹脂組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションの製造においてカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分として用いているので、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の中和剤で中和することも可能である。
【0066】
本発明の水性樹脂組成物は塗料として用い得るだけでなく、医療用担持体や、接着剤等としても用いることができる。
塗料として使用する場合には、本発明の水性樹脂組成物を単独でクリアー塗料として用いることができるが、塗料に一般的に使用されているベンガラ、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の着色顔料、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土等の体質顔料、更には、光触媒活性を有する酸化チタン、シミ止め・吸着機能を有するフライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム等の機能性顔料も添加することが可能である。塗料としての各種機能を付与させるためには、増粘剤、分散剤、沈降防止剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜添加してもよい。
【0067】
この様にして得られた水性樹脂組成物は各種の無機質素材、金属素材、木材素材、プラスチック素材等に適用でき、自然乾燥させるか、若しくは、50℃以上の温度で強制乾燥させることにより優れた塗膜を形成することが可能である。
【0068】
また、本発明の水性樹脂組成物は、必要に応じて脱溶剤工程等を行うことにより揮発性有機化合物を全く又は殆ど含有しないので、本発明の水性樹脂組成物を塗料として用いて、建築物、一般家屋、車両等の気密性の高い環境で用いる素材に塗装しても、塗料を起源とする揮発性有機化合物の発生が全くないか、若しくは極少量の発生に止めることができるので、住人や使用者の健康、自然環境に全く負荷がかからない。
【0069】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の記載において「部」及び「%」は質量基準で示す。
【0070】
<異相構造粒子含有エマルション(a1)〜(a5)の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)[ 「ハイテノールN−08」(第一工業製薬(株)製)] 3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、1段目乳化重合として、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表に示す組成(部)で含む乳化物(A)を3時間かけて連続滴下し、滴下終了後、1時間かけて反応槽内の温度を75℃まで下げた。続いて、2段目乳化重合として、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表に示す組成(部)で含む乳化物(B)を4時間かけて連続滴下した。滴下終了後75℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、50℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH8.5に調整し、減圧〔1.33×104 Pa〕下、1%未満の溶剤含有量になるまで脱溶剤を行って、異相構造粒子含有エマルション(a1)〜(a5)を得た。
【0071】
<異相構造粒子含有エマルション(a6)〜(a7)の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)[ 「ハイテノールN−08」(第一工業製薬(株)製)] 3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、1段目乳化重合として、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表に示す組成(部)で含む乳化物(A)を3時間かけて連続滴下し、滴下終了後、1時間かけて反応槽内の温度を75℃まで下げた。続いて、2段目乳化重合として、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表に示す組成(部)で含む乳化物(B)を4時間かけて連続滴下した。滴下終了後75℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、50℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH8.5に調整して、異相構造粒子含有エマルション(a6)〜(a7)を得た。
【0072】
<エマルション(a8)の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)[ 「ハイテノールN−08」(第一工業製薬(株)製)] 3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表に示す組成(部)で含む乳化物(A)を3時間かけて連続滴下した。滴下終了後80℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH8.5に調整して、エマルション(a8)を得た。
【0073】
尚、第1表で示した原料の略号は下記の意味を有し、括弧( )内の数値は、Tgを計算するのに用いた各単量体のホモポリマーのTgを示し、また、乳化剤として上記の「ハイテノールN−08」を用いた。
MMA:メタクリル酸メチル(105℃)、
BA:アクリル酸ブチル(−54℃)、
AA:アクリル酸(106℃)、
DVB:ジビニルベンゼン(116℃)、
DAAM:ジアセトンアクリルアミド(65℃)、
PEG:ポリエチレングリコール鎖含有モノマー(−50℃)
[H2 C=C(CH3 )−C(=O)−O(CH2 CH2 O)8 H]、
γ−MPTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
DMDMS:ジメチルジメトキシシラン、
KBM502(信越化学株式会社製商品名):3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
SR2402(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製):メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物、重量平均分子量約1000、
SH6018(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製):フェニルトリメトキシシランとプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物、重量平均分子量約2000。
【0074】
エマルション(a1)〜(a7)中に含有される異相構造粒子及びエマルション(a8)中に含有される粒子のTg、エマルション(a1)〜(a8)のMFT、凍結−融解安定性、重合安定性をそれぞれ下記の方法で試験し、下記の評価方法で評価した。それらの結果を第1表に示す。
【0075】
<Tg>
第1表で示したTgについて、[ 内部相/最外相(℃)] は、「1段目乳化物を単独で乳化重合した場合に得られる共重合体のTg/2段目乳化物を単独で乳化重合した場合に得られる共重合体のTg」であり、[ トータル(℃)] は「1段目乳化物と2段目乳化物との混合物を1段で乳化重合した場合に得られる共重合体のTg」である。
【0076】
<MFT>
0〜40℃の範囲で温度勾配をつけたアルミ板上に膜厚0.2mmのアプリケーターでエマルションを塗布し、乾燥させた後、塗膜の状態を目視で観察し、連続塗膜を形成している境界位置の温度をMFTとした。但し、境界位置が40℃を超える場合には、40〜80℃の範囲で温度勾配を付けて同様にしてMFTを求めた。
【0077】
<凍結−融解安定性>
エマルション(a1)〜(a8)をそれぞれ別個の1リットル内面コート缶にほぼ満たしてから密閉し、−20℃の冷凍庫に24時間貯蔵し、凍結させた。
次いで冷凍庫から取り出し、20℃で24時間放置した後、撹拌してエマルションの状態を下記の評価基準で目視で判定すると共に、凍結前後の粘度変化を調べ、またガラス板に6ミルアプリケーターで塗装して、その塗膜外観を下記の評価基準で目視で判定した。
(評価基準)
○:凝固物の発生及び粘度変化が無く、塗膜外観も良好である、
△:粘度の変動があったが、凝固物の発生は無く、塗膜外観も良好である、
×:凝固物の発生或いは凝集・ゲル化が見られる。
【0078】
<重合安定性>
エマルション(a1)〜(a8)を製造した後、各々のエマルションを200メッシュの金網でろ過し、金網上に残った物質の乾燥重量(w)を測定し、またろ液中の固形分の乾燥重量(W)を測定し、式[w/(w+W)]×100の値(%)に基づいて下記の評価基準で目視で判定した。
(評価基準)
◎:0.10%未満、
○:0.10%以上0.15%未満、
△:0.15%以上0.30%未満、
×:0.30%以上。
【0079】
<水溶性樹脂の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、メチルエチルケトン150部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら75℃まで昇温させた後、メタクリル酸メチル100部、スチレン180部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、アクリル酸30部、及びt−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート[ 「カヤエステルO」(化薬アクゾ(株)製)] の混合物を3時間かけて連続滴下した。滴下終了後78℃で4時間撹拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、反応器より取り出し、100℃で減圧乾燥させてペレット状の樹脂固形物を得た。更に、この樹脂ペレットを25%アンモニア水及び蒸留水で溶解し、固形分40%、重量平均分子量10000の水溶性樹脂を得た。
【0080】
実施例1〜5及び比較例1〜3
下記の第2表に示す各成分を第2表に示す組成(部)で含む各々の水性樹脂組成物を調製した。それらの水性樹脂組成物について低温成膜性、60°光沢、耐候性、耐雨筋汚染性、耐温水白化性、及び不粘着性を下記の方法で試験し、評価した。それらの結果を第2表に示す。
【0081】
尚、第2表で示した原料の略号は下記の意味を有する。
AQ−200:ポリイソシアネート樹脂;「アクアネートAQ−200」(日本ポリウレタン工業(株)製)、
ADH:アジピン酸ジヒドラジド。
【0082】
<低温成膜性>
各々の水性樹脂組成物を5℃の低温恒温室中で6ミルアプリケーターを用いてガラス板に塗装し、1日放置した。得られた塗膜外観を下記の評価基準で目視で判定した。
尚、比較例2、3においては成膜助剤を添加する以前に試験を実施した。
(評価基準)
○:マッドクラック、マイクロクラック等が全く見受けられず、完全に成膜している、
△:大半は成膜しているが、局所的にクラックが見られる、
×:全面的にクラックや剥離が見られ、全く成膜していない。
【0083】
<初期60°光沢>
水10.0部、ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤0.1部、特殊カルボン酸系界面活性剤(商品名「タモール731」、R&H社製)0.5部、変成シリコーン系消泡剤(商品名「デフォーマー777」、サンノプコ社製)0.2部及びルチル型二酸化チタン25.0部を配合して得た練合ベースに実施例1〜5及び比較例1〜3で得た各々の樹脂組成物70部を加えて白色塗料を調製した。得られた各々の白色塗料を、カチオン性エマルションシーラーを塗装したフレキシブルボード上に、乾燥膜厚60μmとなるように塗布し、20℃で7日間乾燥させて塗装板テストピースを作製した。
【0084】
尚、MFTが20℃以上のものについては造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「CS−12」チッソ(株)製)を撹拌しながら徐々に添加し、MFTを10℃以下にしてから上記のようにして塗装板テストピースを作製した。
上記のようにして得られた各々の塗装板テストピースについてJIS K 5600−4−7に準拠し、測定角度を60°として鏡面光沢度(初期60°光沢)を測定した。
【0085】
<耐候性試験>
上記のようにして作製した塗装板テストピースについてサンシャインウエザロメーターによって促進耐候性試験を行い、2000時間後の塗膜の変化を塗膜外観の変化で評価し、また上記のようにして鏡面光沢度(60°光沢)を測定し、上記の初期60°光沢値と比較して光沢保持率により下記のように評価した。
◎:塗膜外観に変化はなく、光沢保持率95%以上、
○:塗膜外観変化が軽微にあり、光沢保持率90%以上、
△:塗膜外観変化があり、光沢保持率75%以上90%未満、
×:塗膜変化が著しい、光沢保持率75%未満。
【0086】
<耐雨筋汚染性>
上記の60°光沢測定に使用した各々の白色塗料を、300mm×100mm×0.5mmのアルミニウム板の片面にミニローラーで均一に塗装し、23℃の恒温室中で7日間乾燥させた。次いで、これらの塗装板の300mm長さ方向の中間点で、塗装面が外側にくるようにして内角120°となるように折り曲げて試験板を作製した。これらの試験板を、その折り曲げられた一方の部分の150mm方向が地面に対して垂直になり、その上にその折り曲げられた残りの部分がくるようにして(即ち、その残りの部分が塗装面を上にして地面とは120°の角度となるようにして)屋外に設置した。1年後にその外観を下記の評価基準で目視で評価した。
(評価基準)
○:雨だれによる縦筋は殆どついていない、
△:雨だれによる縦筋が薄くついていたが、軽く擦ると筋が消える、
×:雨だれによる縦筋が幾筋も黒くくっきりとついており、軽く擦っても筋は消えない。
【0087】
<耐温水白化性>
上記と同様に各々の水性樹脂組成物を常温でガラス板上に6ミルアプリケーターで塗装し、20℃で48時間乾燥させた。その後、試験板を50℃の温水中に24時間浸し、塗膜の白化度合いを浸積中、並びに浸積・乾燥後に、下記の評価基準で目視で判定した。常温で成膜しない水性樹脂組成物については前記と同様に成膜助剤を添加し、上記と同様に試験し、評価した。
(評価基準)
◎:塗膜変化なし、
○:浸積中、塗膜やや青みがかった透明であるが、乾燥後は変化見られず、
△:浸積・乾燥後の塗膜が局所的に白化している、
×:浸積・乾燥後の塗膜全面が完全に白化している。
【0088】
<不粘着性>
各水性樹脂組成物をガラス板表面上に6ミルのアプリケーターで塗装し、室温で2日間乾燥させた。その後、塗膜表面に、カーボン部と塗膜が接触するようにしてカーボン紙を載せ、更にその上に分銅を載せた。分銅は0.5Kg/cm2 相当の荷重となるよう調整した。24時間荷重をかけた後、カーボン紙をゆっくりとはがし、塗膜外観を下記の評価基準で目視で評価した。常温で成膜しない水性樹脂組成物については前記と同様に成膜助剤を添加し、上記と同様に試験し、評価した。
(評価基準)
○:全くカーボンが付着していない、
△:加重のかかっていた面積の50%未満にカーボンが付着してる、
×:荷重のかかっていた面積の50%以上にカーボンが付着している。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
第2表に示すデータから明らかなように、実施例1〜5の本発明の樹脂組成物はVOCを含有しなくとも優れた塗膜性能を有していた。
一方、シラン化合物又はその部分加水分解縮合物を含有しない(a6)〜(a8)を用いた比較例1〜3の樹脂組成物では、サンシャインウエザロメーターを用いた耐候性試験結果で光沢低下が著しい結果となっている。また、異相構造粒子含有エマルションではない均一組成構造粒子含有エマルション(a8)を用いた比較例3では、造膜助剤として多くのVOCを必要とし、塗膜中に残存する造膜助剤の影響によって耐温水白化性及び不粘着性が劣る結果となっている。更に、ポリエチレングリコール鎖保有単量体を用いなかったエマルション(a6)、(a7)の比較例1、2では、凍結−融解安定性が劣るだけでなく、塗膜表面の水接触角が低くないため、耐雨筋汚染性で他のテストピースに比較して劣る結果となっている。また、最終段階に加えられた単量体のTgが30℃以上であるエマルション(a7)を用いた比較例2も比較例3と同様に多くの造膜助剤を必要とし、それゆえに耐温水白化性、不粘着性が劣る結果が得られた。
【0092】
【発明の効果】
本発明の水性樹脂組成物は、環境汚染や、臭気の発生源となる造膜助剤等のVOCを全く含まず、或いは極少量含有するだけであり、それでシックハウス症候群を起こさせないので室内にも使用することができ、また低いMFTを有しながら優れた凍結−融解安定性をもち、低温成膜性に優れ、且つ耐候性、耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能であり、高沸点の有機溶剤を殆ど含有しないので速乾性、作業性にも優れていて屋内外の塗装に用いることができる水性樹脂組成物である。
Claims (7)
- 多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルション(a)を含む水性樹脂組成物であって、
(1)該異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が、一般式(イ)、
R1 nSi(OR2)4-n (イ)
〔式中、R1は、炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はビニル基であり、R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜2である。〕で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を該異相構造粒子の全質量の10〜60質量%となる量で含有する乳化共重合体で形成されており、
(2)該異相構造粒子の最外相が、エチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体単位が該最外相の全質量の1〜20質量%を占めている乳化共重合体で形成されており、該最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が−50〜15℃であり、
(3)該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相がエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体で形成されており、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が30〜150℃であり、
(4)該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度と、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度との差が30〜150℃であり、
(5)該水性樹脂組成物の最低造膜温度が10℃以下である
ことを特徴とする水性樹脂組成物。 - 異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン及びγ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシランからなる群から選ばれる分子中に珪素原子に直結した加水分解性基を有するエチレン性不飽和単量体単位が当該相の全質量の0.1〜10質量%を占めている乳化共重合体で形成されている請求項1記載の水性樹脂組成物。
- 異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相の乳化共重合体が内部架橋構造を有している請求項1又は2に記載の水性樹脂組成物。
- 異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体が、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体単位が該最外相の全質量の1〜25質量%を占めている乳化共重合体で形成されて、更に水性樹脂組成物中に、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物(b)が、該カルボニル基数の0.1〜2.0倍のヒドラジド基数となる量で存在している請求項1〜3の何れかに記載の水性樹脂組成物。
- 請求項1〜4の何れかに記載の水性樹脂組成物に、イソシアネート基を有する化合物(c)が配合されており、(c)成分の配合量が異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.1〜95質量%となる量である水性樹脂組成物。
- 水性樹脂組成物中の揮発性有機化合物の含有量が1質量%未満である請求項1〜5の何れかに記載の水性樹脂組成物。
- 水性樹脂組成物が水性塗料用樹脂組成物である請求項1〜6の何れかに記載の水性樹脂組成物。
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