JP4448785B2 - 燃料噴射システム - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの回転数を指示するスロットルと、このスロットルとは別の予備用(非常用)のスロットルとを備える燃料噴射システムに関する。
通常、舶用のエンジン等においては、燃料噴射ポンプにおけるガバナのラック位置や、スロットルバルブにおける吸入空気量が制御されることにより、エンジンの回転速度(回転数)が制御される。こうしたエンジンの回転数は、操縦席などに設けられるレバー式などの操作具であるスロットルにより遠隔操作される。近年、こうしたエンジンの制御については、電子制御ガバナや電子制御スロットルバルブをエンジンコントロールユニット等の制御手段で制御する構成とし、この制御手段に対して、前記スロットルからの指示信号がCAN(Controller Area Network)等の通信方式により伝達される構成のものが実現されている。
こうしたCAN等の通信方式によるエンジン回転数の制御について、スロットルバルブに摩擦抵抗の増加や固着などの異常が発生し、スロットルバルブの正規のスロットル開度制御が行えない状態となったときに、必要なエンジン回転速度を得るための技術が特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1に開示されている技術は、スロットルバルブを備える船外機用エンジンについてのものであり、本文献にも示されているように、船外機の場合、海上で使用されるため、スロットルバルブに異常が発生した場合でも自力で帰港できることが必要とされる一方、船舶が帰港して接岸する際にはシフト動作を行う必要があり、このシフト動作を行うためにはエンジンの回転速度を低下させる必要がある。こうしたことから、エンジン回転数の制御は常に確保される必要がある。
特開2004−92640号公報
ところで、エンジン回転数の制御が確保されない状態としては、CAN等の通信方式における通信異常や操作具としてのスロットル自体に異常が発生する場合が考えられる。このような場合に対処するため、通常使用されるスロットル(主スロットル)とは別の通信経路を介して、エンジンコントロールユニット等の制御手段に接続される予備用(非常用)のスロットル(副スロットル)を具備する構成のものがある。つまり、CAN等の通信方式により通常使用される主スロットルの操作によるエンジン回転数の制御に異常が発生した場合に、予備用のスロットルである副スロットルによりエンジン回転数の制御を行うことを可能とするものである。
こうした構成を採用する場合、エンジン回転数の指示が有効なスロットルが、異常が発生した主スロットルから予備用の副スロットルに切り換わる際、エンジン回転数が急激に変化するという問題が発生することが考えられる。すなわち、それぞれのスロットルが指示するエンジン回転数が異なるため、各スロットルが指示するエンジン回転数が大きく異なる状態でスロットルが切り換わると、エンジン回転数が急激に変化して急激な減速や増速が発生することとなる。
そこで、本発明は、エンジンの回転数を指示する主スロットルと、該主スロットルについて異常が発生した場合にエンジンの回転数を指示する副スロットルとを備える構成であって、指示が有効なスロットルが主スロットルから副スロットルへ切り換わる際、エンジン回転数の急激な変化を防止して安全性を確保するとともに、操縦者の意図に即したスロットルの切換えを可能とする燃料噴射システムを提供することを目的とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、制御手段を介してエンジンの回転数を指示する主スロットルと、該主スロットルに代えて前記制御手段を介してエンジンの回転数を指示する副スロットルとを備える燃料噴射システムであって、前記主スロットルによるエンジン回転数指示に異常が発生した場合、該主スロットルからの指示値に基づき算出されていた目標回転数を、予め設定される最低設定回転数まで徐々に低下する目標回転数低下手段を具備し、前記目標回転数の低下中に、前記副スロットルの操作により、前記副スロットルからの指示値に基づき算出される目標回転数が、前記最低設定回転数から上昇された場合、該副スロットルからの指示値に基づき算出される目標回転数と、前記目標回転数低下手段により低下される目標回転数とが一致した時に、有効スロットルを前記主スロットルから前記副スロットルに切り換えるスロットル切換手段を具備するものである。
請求項2においては、前記目標回転数低下手段は、前記目標回転数を、予め設定される単位時間の経過ごとに増加する減速度で低下するものである。
請求項3においては、前記主スロットルによるエンジン回転数指示に異常が発生した時から、予め設定される所定時間の間、前記主スロットルからの指示値に基づき算出されていた目標回転数を保持する目標回転数保持手段を具備するものである。
請求項4においては、前記主スロットルによるエンジン回転数指示に異常が発生した時、その旨を報知する警報と、前記目標回転数低下手段による目標回転数の低下の開始を報知する警報とを発する警報発生手段を具備するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、主スロットルについて異常が発生した際に該主スロットルにより指示されていた目標回転数に関わらず実際の目標回転数が徐々に低下されることとなるので、船舶などの急激な減速や高速状態が維持されることが回避できるので、操縦者などにとって不快なショックを防止することができるとともに、安全性を確保することができる。
また、操縦者の意思により、かつ意図するタイミング及び意図するエンジン回転数にて有効スロットルの切換えを行うことができる。これにより、主スロットルについて異常が発生した際に、該主スロットルが指示していた目標回転数と副スロットルが指示する目標回転数とが大きく異なる場合にも、有効スロットルの切換えの際におけるエンジン回転数の変化を小さくすること可能となり、エンジン回転数の挙動を安定させることができるので、安全性を確保することができる。
また、有効スロットルを切り換えるための装置(例えば、切換えスイッチなど)を別途設ける必要もなく、既存のスロットルを用いて有効スロットルの切換えを行うことが可能となる。
請求項2においては、主スロットルについて異常が発生した場合の目標回転数の低下に際し、不快なショックを防止することができ、安定した運転フィーリングを得ることができる。
請求項3においては、主スロットルについて異常が発生してから目標回転数を低下させるまで、異常が発生した時の目標回転数が一定時間保持されることとなるので、異常が発生したことが操作部における警告等により操縦者に報知されてから、急にエンジン回転数の低下が開始されることがなくなる。これにより、主スロットルについて異常が発生してから所定の時間内は、異常が発生した際の操縦状態を維持することができるとともに、エンジン回転数の低下に事前に対処することが可能となるので、安全性を確保することができる。
請求項4においては、主スロットルについて異常が場合、主スロットルについて異常が発生した時及び目標回転数の低下が開始した時の二段階にそれぞれ警報が発せられることとなり、操縦者はそれぞれの事態に応じた対処を行うことができるので、主スロットルについて異常が発生した場合の操縦について安全性を確保することができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の本発明を実施するための最良の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は燃料噴射システムの概略構成を示したブロック図、図2は燃料噴射ポンプ40とそれに関連する装置等の概略構成図、図3は目標回転数の時間変化を示すグラフ、図4は有効スロットルが切り換わる際の一連の処理を示すフローチャート、図5は同じくタイムチャートである。
<概略構成>
先ず、図1を用いて本発明の燃料噴射システム1の概略構成について説明する。なお、ここで説明する燃料噴射システム1は、例えば船舶が具備するエンジンの燃料噴射ポンプの制御システムとして採用する場合について説明するが、本システムを利用することで同様の効果が得られるものであれば如何なるものに採用しても良い。燃料噴射システム1は、図1に示すように、操作部10とエンジン20とに大別される。操作部10は、船舶の運転室に設けられるものであって、例えば表示部11、主スロットル12、副スロットル13等が設けられるものである。表示部11は、本システムを採用する船舶の状態や警告等を表示するものであり、スピーカ等を内蔵することによって音声による警告を発することも可能なものである。主スロットル12は、例えばエンジン20のスロットルバルブ29を操作するものであって船舶が正常運転状態である場合に操作されるものであり、例えばレバー式のものである。副スロットル13は、主スロットル12と同様にスロットルバルブ29を操作するものであるが、船舶が正常運転状態でない場合に操作されるものである点で、主スロットル12とは使用態様が異なる。また、この副スロットル13の形状は、例えばつまみ式(ボリューム式)のスイッチである。また、表示部11及び主スロットル12は各々独自の制御部を具備しており、エンジン20側の制御部であるECM21(Engine Control Module)と通信することによって、操作部10とエンジン20との全体制御を行っている。なお、操作部10とエンジン20とでプロトコル等の通信方式が異なる場合には、図1に示すように通信方式の整合を図るための通信中継器15を設ける。また、副スロットル13は、エンジン20側のECM21に直接接続される構成となっており、通信方式はエンジン20側と同じである。エンジン20は、例えばディーゼルエンジンであり、ECM21、クランク軸回転数センサ22、カム軸回転数センサ23、遅角用電磁弁24、進角用電磁弁25、ラック28等が設けられるものである。ECM21は、エンジン20に関するセンサや上述した操作部10等の操作系の状態に基づいて、エンジン20に関するアクチュエータ等を制御するものである。クランク軸回転数センサ22は、エンジン20のクランク軸の回転数を検出するものであって、その検出結果をクランク軸パルスとしてECM21に出力している。カム軸回転数センサ23は、エンジン20のカム軸の回転数を検出するものであって、その検出結果をカム軸パルスとしてECM21に出力している。また、クランク軸回転数センサ22及びカム軸回転数センサ23は光学センサで構成することが可能であり、例えばクランク軸やカム軸の軸自体又はギヤ等に予め製造時に所定間隔で所定数のマークを記しておくことで、このマークを上記光学センサ検出することによって、ECM21はクランク軸とカム軸41の回転数を算出することができる。遅角用電磁弁24及び進角用電磁弁25は、図2に示すような燃料噴射ポンプ40のカム軸の位相を変化させるための油圧式タイマユニットのタイマピストンを、進角側又は遅角側に摺動させる油圧を制御するための油圧制御弁である。ラック28は、燃料噴射ポンプ40から噴射する燃料の量を調節するものである。
<燃料噴射ポンプ>
次に、図2を用いて燃料噴射ポンプ40とそれに関連する装置等の概略構成について説明する。なお、この図2における油圧式タイマユニット50に関しては断面を示している。特に、タイマピストン52に関しては便宜的に一点鎖線で上下に2分割した状態で示しており、遅角側位置に移動した状態をタイマピストン52aで示し、他方、進角側位置に移動した状態をタイマピストン52bで示している。勿論、実際のタイマピストン52は、上述のように一点鎖線で2分割されるものではなく一体的に形成されるものであって、図2においてはあくまでもタイマピストン52の移動状態を説明するために一点鎖線で2分割しているのである。燃料噴射ポンプ40は、燃料タンクに貯蔵される燃料をエンジン20のシリンダに設けた噴射ノズルへ圧送するためのものであり、カム軸41により駆動され、該カム軸41の先端部分にはカム軸カップリング51をカム軸41に固定するためのカップリング固定部材42が固設されている。また、燃料噴射ポンプ40には、エンジン20のシリンダへ燃料を供給するための供給口43が気筒分設けられており、図2に示す例においては6気筒ある場合を示している。 更に、燃料噴射ポンプ40には、ガバナ30及び油圧式タイマユニット50が一体的に設けられている。ガバナ30は、上記ラック28を具備し、該ラック28はECM21によって駆動制御される比例ソレノイドによって駆動される構造となっている。油圧式タイマユニット50は、カム軸カップリング51の外周面にストレートでスプライン嵌合するタイマピストン52が設けられており、更に該タイマピストン52の外周面にヘリカルでスプライン嵌合するポンプ駆動歯車53が設けられている。このポンプ駆動歯車53は、エンジン20のクランク軸からの回転力を受ける受歯車55とボルト56によって固設されている。このように構成されているので、クランク軸の回転によってカム軸41を回転させることが可能となると共に、タイマピストン52をカム軸カップリング51のスプライン方向(図2に向って左右方向)に摺動させることによって、カム軸カップリング51とポンプ駆動歯車53との位相差を変化させることが可能となる。なお、ここでは既に上述したとおり、タイマピストン52を52a側へ摺動させることでカム軸は遅角し、52b側へ摺動させることで進角するようにスプライン嵌合のヘリカル形状を構成している。また、ポンプ駆動歯車53と嵌合するタイマピストン52の外周側にできる空間を遅角室57a、他方、カム軸カップリング51と嵌合するタイマピストン52の内周側の空間を進角室57bと各々称する。この場合に、遅角室57aに圧油を圧送することでタイマピストン52を遅角側(52a側)へ摺動させることができ、他方、進角室57bに圧油を圧送することでタイマピストン52を進角側(52b側)へ摺動させることができる。また、遅角室57aへ通じる遅角用圧油経路58aと、進角室57bへ通じる進角用圧油経路58bにはそれぞれ上述した遅角用電磁弁24及び進角用電磁弁25が配設されて、該遅角用電磁弁24と進角用電磁弁25をECM21で制御して作動し、圧油を送油してタイマピストン52を摺動させるのである。このように構成されているので、ECM21は、エンジン20の状況に応じてタイマピストン52を油圧で制御する制御手段として機能し、エンジン20のクランク軸とカム軸41との位相差を自在に遅角又は進角させることが可能となる。
以上のように構成される燃料噴射システム1は、前述の如く、船舶が正常運転状態である場合は、操作部10に設けられる主スロットル12が有効スロットルとなり、該主スロットルが操作されることにより、ラック28のラック位置の制御による燃料噴射量などが制御されてエンジン20の回転数(前記クランク軸の回転数、以下「エンジン回転数」ともいう。)が制御される。一方、該主スロットル12の操作によって船舶の正常運転が行えない状態の場合は、有効スロットルが主スロットル12から副スロットル13に切り換わり、該副スロットル13が操作されることにより、エンジン20の回転数が制御される。
また、主スロットル12は、前記通信中継器15を介する等してECM21と接続され、副スロットル13は、ECM21に直接接続される構成となっており、各スロットル12・13のECM21に対する通信方式としては、例えば、主スロットル12にはCAN(Controller Area Network)を介する通信が用いられ、副スロットル13にはアナログ通信が用いられる。この場合、主スロットル12から出力される操作信号はCANを介してECM21に入力され、副スロットル13から出力される操作信号は、ECM21にアナログ入力されることとなる。
そして、ECM21は、各スロットル12・13からの指示値に基づいて、目標回転数を算出する目標回転数算出手段としての機能を有しており、各スロットル12・13からの入力される操作信号(指示値)に基づいて算出した目標回転数のうち、いずれか一方のスロットルからの指示値に基づいて算出した目標回転数に基づき、エンジン回転数を制御する。つまり、ここで選択される目標回転数が、エンジン20の回転数制御に用いられる実際の目標回転数となり、この実際の目標回転数の算出に用いられた操作信号を出力したスロットルが、その時点での有効スロットルということとなる。
すなわち、本発明に係る燃料噴射システム1は、制御手段としてのECM21を介してエンジン20の回転数を指示する主スロットル12と、該主スロットル12について異常が発生した場合などに、主スロットル12に代えてECM21を介して、エンジン20の回転数を指示する副スロットル13とを備えており、正常運転状態において有効スロットルとして機能する主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生した場合、有効スロットルが主スロットル12から副スロットル13に切り換わる構成となっている。
そして、ECM21は、主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生した場合、該主スロットル12からの指示値に基づき算出していた目標回転数を、予め設定される最低設定回転数まで徐々に低下する。ここで、主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生した場合とは、次のような場合が考えられる。すなわち、主スロットル12とECM21との間の通信に何らかの異常が発生し、CAN等の通信方式における通信エラーが発生した場合である。この場合、主スロットル12から出力される操作信号がECM21に正常に入力されずECM21が認識できない状態となる。また、主スロットル12自体にエラーが発生した場合である。この場合、主スロットル12からエラー信号が出力されECM21に入力される。
このように、主スロットル12について異常が発生した場合、ECM21は、スロットル切換要求が発生したと判断して、主スロットル12からの指示値に基づき算出していた目標回転数を、予め設定される最低設定回転数まで徐々に低下する。つまり、ECM21は、主スロットル12について異常が発生してスロットル切換要求が発生したと判断した時点で、それまで有効スロットルとしての主スロットル12からの指示値に基づき算出していた実際の目標回転数を徐々に低下する。ここで、最低設定回転数とは、主スロットル12及び副スロットル13により指示される目標回転数のうち最低の回転数、即ちエンジン20のアイドリング時の回転数であり、ECM21にて予め設定される。つまり、ECM21が、本発明に係る燃料噴射システム1に具備される目標回転数低下手段の一例である。
このように、主スロットル12について異常が発生した場合、該主スロットル12からの指示値に基づき算出されていた目標回転数が、予め設定される最低設定回転数まで徐々に低下されることにより、主スロットル12に異常が発生した際に該主スロットル12により指示されていた目標回転数に関わらず実際の目標回転数が徐々に低下されることとなるので、船舶などの急激な減速を回避することができ、操縦者などにとって不快なショックを防止することができる。また、例えば、主スロットル12により指示される目標回転数が高速域にある状態で異常が発生した場合にも、その高速状態が維持されるようなことがなくなり、安全性を確保することができる。
また、主スロットル12について異常が発生した場合、目標回転数低下手段としてのECM21による目標回転数の低下は、具体的には次のような態様によるのが好ましい。すなわち、ECM21は、目標回転数を、予め設定される単位時間の経過ごとに増加する減速度で低下する。図3に示すように、主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生する前において該主スロットル12が指示していた目標回転数をNaとし、時刻t1から目標回転数の低下を開始するとすると、目標回転数Naを、予め設定される単位時間Δtの経過ごとに増加する減速度で前記最低設定回転数まで低下する。つまり、横軸は時間、縦軸は目標回転数をそれぞれ示す図3に示すグラフにおいては、傾きが加速度を表すことから、負の傾きが減速度(負の加速度)を表すこととなり、目標回転数の低下を開始する時刻t1から単位時間Δt経過ごとに、減速度が増加するように目標回転数を低下する。具体的には、時刻t1から単位時間Δtの間は、ある減速度α1で目標回転数を低下し、さらに次の単位時間Δtの間は、前記減速度α1よりも増加した減速度α2で目標回転数を低下する。同様にして、減速度をα3・α4・・・と増加しながら目標回転数を徐々に低下する。ここで、単位時間Δtの経過ごとの減速度の増加率は、例えば略一定とされる。
このように、主スロットル12からの指示値に基づき算出されていた目標回転数を、単位時間Δtの経過ごとに増加する減速度で徐々に低下させることにより、主スロットル12について異常が発生した場合の目標回転数の低下に際し、不快なショックを防止することができ、安定した運転フィーリングを得ることができる。なお、ここで示した目標回転数の低下の態様は一例であり、これに限定されるものではなく、例えば、略一定または一定の減速度で低下させてもよい。
また、主スロットル12について異常が発生した場合、ECM21は、主スロットル12からの指示値に基づき算出していた目標回転数を、予め設定される所定時間保持する。つまり、ECM21は、主スロットル12について異常が発生した時から、予め設定される所定時間の間、主スロットル12からの指示値に基づき算出していた目標回転数を保持する目標回転数保持手段の一例であり、該所定時間はECM21にて予め設定される。
具体的に図3に示すグラフを用いて説明すると、例えば、主スロットル12が指示する目標回転数がNaの状態で船舶が運転されており、時刻t0に主スロットル12について異常が発生したとする。この場合、ECM21は、スロットル切換要求が発生したと判断してから、予め設定される所定時間Taの間、主スロットル12について異常が発生した時に該主スロットル12が指示していた目標回転数Naを保持する。そして、時刻t0から所定時間Ta経過後の時刻t1から、前述の如く目標回転数をNaから徐々に低下していく。
このように、主スロットル12について異常が発生してから目標回転数を低下させるまで、異常が発生した時の目標回転数を一定時間保持することにより、異常が発生したことが操作部10の表示部11における警告等により操縦者に報知されてから、急にエンジン回転数の低下が開始されることがなくなる。これにより、主スロットル12について異常が発生してから所定の時間内は、異常が発生した際の操縦状態を維持することができるとともに、エンジン回転数の低下に事前に対処することが可能となるので、安全性を確保することができる。つまり、主スロットル12について異常が発生した際の操縦状態(例えば、操舵時など)のままエンジン回転数が低下されることがなく、その状態からエンジン回転数の低下に対応できる状態に事前に操作することが可能となるので、安全な運転操作が可能となる。
以下、有効スロットルが主スロットル12から副スロットル13に切り換わる際の一連の処理について、図3に加え、図4に示すフローチャート及び図5に示すタイムチャートに沿って説明する。船舶の正常運転状態においては、主スロットル12により、ECM21を介してエンジン回転数が指示される。すなわち、この状態においては主スロットル12が有効スロットルであり、操縦者により主スロットル12が操作されることにより、ECM21は主スロットル12からの操作信号を検出し、該主スロットル12からの指示値に基づき目標回転数を算出する(S100)。この状態では、主スロットル12からの指示値に基づき算出される目標回転数がエンジン20の回転数制御に用いられる実際の目標回転数となる。
そして、ECM21は、主スロットル12よるエンジン回転数指示に異常が発生したか否かを判断する(S110)。ここで、主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生したと判断された場合、処理はステップS120へと移行する。一方、主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生したと判断されない場合は、前記ステップS100へと移行する。つまり、主スロットル12について異常が発生しない限り、ECM21は正常運転状態を継続する。
前記ステップS110において、時刻t0に主スロットル12について異常が発生したと判断されると、ECM21は、操作部10の表示部11などに主スロットル12について異常が発生した旨を報知する警報を発する(S120)。そして、主スロットル12ついて異常が発生した時刻t0からは、前述の如く、異常が発生した時に主スロットル12により指示されていた目標回転数Naが所定時間Taの間保持された後、時刻t1に目標回転数の低下が開始する(S130)。すなわち、ECM21は、時刻t0から時刻t1までの所定時間Taの間、主スロットル12について異常が発生した時の目標回転数Naを保持した後、時刻t1から、目標回転数を予め設定される最低設定回転数Noまで徐々に低下する。この際、ECM21は、目標回転数低下手段として目標回転数の低下を開始するとともに、目標回転数の低下の開始を報知する警報を発する(同S130)。つまり、ECM21は、主スロットル12によるエンジン回転数指示に異常が発生した時、その旨を報知する警報と、目標回転数の低下の開始を報知する警報とを発する警報発生手段の一例である。これらの警報を行う方法としては、その旨を表示することに限らず、ブザーや音声による警告、ランプ点灯による警告、またはこれらの組合せなどが考えられるが、例えば、主スロットル12に異常が発生した時は、ランプを点灯したり点滅したりすることにより警報を発し、その後、目標回転数の低下を開始する時は、点灯しているランプを点滅させたり点滅しているランプの周期を変化させたりすることにより報知する構成とすることが考えられる。
このように、主スロットル12について異常が場合、主スロットル12について異常が発生した時及び目標回転数の低下が開始した時の二段階にそれぞれ警報が発せられることにより、操縦者はそれぞれの事態に応じた対処を行うことができるので、主スロットル12について異常が発生した場合の操縦について安全性を確保することができる。
そして、前記ステップS130において、主スロットル12が指示していた目標回転数の低下が開始してから、ECM21は、副スロットル13からの指示値に基づき算出される目標回転数が、前記最低設定回転数Noであるか否かを判断する(S140)。ここで、副スロットル13により指示される目標回転数が最低設定回転数Noであると判断される場合としては、主スロットル12について異常が発生した際に、既に副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noである場合と、主スロットル12について異常が発生した後の操縦者による副スロットル13の操作により、副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noにされた場合とがある。
つまり、主スロットル12について異常が発生した際に、既に副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noである場合は、処理は自動的にステップS140を経てステップS150へと移行し、副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noでない場合は、操縦者による副スロットル13の操作により処理がステップS150へと移行する。後者の場合について図5を用いて説明すると、主スロットル12について異常が発生した際における副スロットル13が指示する目標回転数がNbであったとする。主スロットル12について異常が発生し、時刻t1から主スロットル12が指示していた目標回転数の低下が開始され、この目標回転数の低下中に、操縦者により副スロットル13の操作が行われることにより、副スロットル13が指示していた目標回転数Nbが低下される(点A参照)。ここでの副スロットル13の操作が、副スロットル13が指示する目標回転数を最低設定回転数Noにするものである場合は、副スロットル13が指示していた目標回転数Nbは最低設定回転数Noに達する(点B参照)。
このようにして、いずれかの場合によって副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noに達したと判断した場合、ECM21は、副スロットル13について有効スロットルに切り換わる権利が発生したと認識し、処理はステップS150へと移行する。
前述の如く、副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noにある状態から、ECM21は、該副スロットル13により指示される目標回転数が、最低設定回転数Noから上昇したか否かを判断する(S150)。つまり、ここでは、操縦者により、副スロットル13が指示する目標回転数を最低設定回転数Noから上昇させるための操作が行われたか否かが判断される。これにより、有効スロットルを副スロットル13に切り換えようとする操縦者の意思を関与させる。このステップS150において、操縦者により副スロットル13が操作され、該副スロットル13により指示される目標回転数が最低設定回転数Noから上昇したと判断されると、処理はステップS160へと移行する。
操縦者による副スロットル13の操作により、該副スロットル13が指示する目標回転数が最低設定回転数Noから上昇を開始すると(図5点C参照)、ECM21は、副スロットル13が指示する目標回転数と、前述の如く主スロットル12に異常が発生し徐々に低下する実際の目標回転数とが一致したか否かを判断する(S160)。ここで、副スロットル13が指示する目標回転数と低下中の実際の目標回転数とが一致したと判断した場合、ECM21は、副スロットル13が指示する目標回転数と低下中の実際の目標回転数とが一致した時点(図5交点D参照)で、有効スロットルを副スロットル13に切り換える(S170)。すなわち、この副スロットル13が有効スロットルである状態においては、操縦者により副スロットル13が操作されることにより、ECM21は副スロットル13からの操作信号を検出し、該副スロットル13からの指示値に基づき目標回転数を算出する。この状態では、副スロットル13からの指示値に基づき算出される目標回転数が実際の目標回転数となる。つまり、ECM21は、実際の目標回転数Naの低下中に、副スロットル13からの指示値に基づき算出される目標回転数が、最低設定回転数Noから上昇された場合、副スロットル13からの指示値に基づき算出される目標回転数と、該ECM21が低下する実際の目標回転数とが一致した時に、有効スロットルを主スロットル12から副スロットル13に切り換えるスロットル切換手段の一例である。
このように、有効スロットルを副スロットル13に切り換える際に、該副スロットル13により指示される目標回転数を最低設定回転数Noから上昇させることとするのは、操縦者の意思を関与させるためのほか、確実に有効スロットルが副スロットル13に切り換わるようにするためである。すなわち、副スロットル13により指示される目標回転数を最低設定回転数Noから上昇させることにより、例えば、主スロットル12について異常が発生した際に、該主スロットル12が指示していた目標回転数が最低設定回転数Noである場合であっても、有効スロットルが副スロットル13に切り換わる条件としての、副スロットル13が指示する目標回転数と低下中の実際の目標回転数とが一致する状態(図5交点D)を確実に生じさせることができるので、確実に有効スロットルが副スロットル13に切り換わることとなる。
以上説明した、有効スロットルが副スロットル13に切り換わる際の一連の処理において、エンジン20の回転数制御に用いられる実際の目標回転数の指示は、次のように変化する。すなわち、図5に示すように、主スロットル12について異常が発生する時刻t0までは、主スロットル12により指示される目標回転数が実際の目標回転数であり、時刻t0からは、時刻t1を経て徐々に低下される目標回転数が実際の目標回転数となる。そして、この実際の目標回転数の低下中に、有効スロットルが主スロットル12から副スロットル13に切り換わった時点(時刻t2)からは、副スロットル13により指示される目標回転数が実際の目標回転数となる。なお、この主スロットル12に異常が発生した時刻t0から、有効スロットルが副スロットル13に切り換わる時刻t2までの処理中において、例えば、何らかの原因で主スロットル12とECM21との通信が回復する等して、主スロットル12によるエンジン回転数指示が正常状態に復帰した場合、ECM21は、スロットル切換要求が解除されたとして、主スロットル12を有効スロットルとした通常運転を継続する。
以上のような処理を経て、有効スロットルを主スロットル12から副スロットル13に切り換えることにより、操縦者の意思により、かつ意図するタイミング及び意図するエンジン回転数にて有効スロットルの切換えを行うことができる。つまり、操縦者は、主スロットル12について異常が発生して実際の目標回転数の低下が開始してから、副スロットル13の操作(具体的には、副スロットル13が指示する目標回転数を最低設定回転数Noから上昇させるタイミングや、上昇のさせ方)を任意に行うことにより、意図するタイミングで意図する目標回転数で副スロットル13を有効スロットルに切り換えることができる。これにより、主スロットル12について異常が発生した際に、該主スロットル12が指示していた目標回転数と副スロットル13が指示する目標回転数とが大きく異なる場合にも、有効スロットルの切換えの際におけるエンジン回転数の変化を小さくすること可能となり、エンジン回転数の挙動を安定させることができるので、安全性を確保することができる。また、有効スロットルを切り換えるための装置(例えば、切換えスイッチなど)を別途設ける必要もなく、既存のスロットルを用いて有効スロットルの切換えを行うことが可能となる。
燃料噴射システムの概略構成を示したブロック図。 燃料噴射ポンプ40とそれに関連する装置等の概略構成図。 目標回転数の時間変化を示すグラフ。 有効スロットルが切り換わる際の一連の処理を示すフローチャート。 同じくタイムチャート。
1 燃料噴射システム
10 操作部
11 表示部
12 主スロットル
13 副スロットル
20 エンジン
21 ECM

Claims (4)

  1. 制御手段を介してエンジンの回転数を指示する主スロットルと、該主スロットルに代えて前記制御手段を介してエンジンの回転数を指示する副スロットルとを備える燃料噴射システムであって、前記主スロットルによるエンジン回転数指示に異常が発生した場合、該主スロットルからの指示値に基づき算出されていた目標回転数を、予め設定される最低設定回転数まで徐々に低下する目標回転数低下手段を具備し、前記目標回転数の低下中に、前記副スロットルの操作により、前記副スロットルからの指示値に基づき算出される目標回転数が、前記最低設定回転数から上昇された場合、該副スロットルからの指示値に基づき算出される目標回転数と、前記目標回転数低下手段により低下される目標回転数とが一致した時に、有効スロットルを前記主スロットルから前記副スロットルに切り換えるスロットル切換手段を具備することを特徴とする燃料噴射システム。
  2. 前記目標回転数低下手段は、前記目標回転数を、予め設定される単位時間の経過ごとに増加する減速度で低下することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射システム。
  3. 前記主スロットルによるエンジン回転数指示に異常が発生した時から、予め設定される所定時間の間、前記主スロットルからの指示値に基づき算出されていた目標回転数を保持する目標回転数保持手段を具備することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射システム。
  4. 前記主スロットルによるエンジン回転数指示に異常が発生した時、その旨を報知する警報と、前記目標回転数低下手段による目標回転数の低下の開始を報知する警報とを発する警報発生手段を具備することを特徴とする請求項3記載の燃料噴射システム。
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