JP4450132B2 - 表面処理装置および表面処理方法 - Google Patents

表面処理装置および表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクなどの絶縁材料により形成された物に対してイオンを注入することにより、改質等の表面処理を行う表面処理装置および表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、光ディスク、磁気ディスク、または光磁気ディスクのような板状の記録媒体の構成材料として、プラスチックのような絶縁材料が用いられている。近年、このような記録媒体を用いた記録装置は益々小型化され、これに伴って、記録媒体も小型化,薄膜化している。このように記録媒体が薄くなると、その自重によってたわみが生じる。この状態で、記録再生を行うために記録媒体を回転させると、その回転にぶれが生じて記録再生ヘッドが記録媒体に接触し、記録媒体の表面に傷がつきやすくなる。そのため、記録媒体の表面を保護する必要がある。
【0003】
この記録媒体などの絶縁物の表面を保護する手段としては、その表面に保護膜を形成する方法や、その表面にイオンを注入することにより硬度などの特性を改良して表面改質(表面処理)を行う方法がある。後者のイオンを注入する方法では、注入しようとするイオンを含むプラズマを発生させると共に、記録媒体などの絶縁物(以下,処理物という)を載せた導電性のホルダ(電極)にバイアス電圧を印加する。これにより、発生したプラズマに含まれるイオンは加速され、処理物に引き込まれるようにして注入される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では、処理物が例えば板(ディスク)状であって、その表裏両面ともに改質しようとする場合には、上述のようにして処理物の表面に対してイオン注入を行った後、この処理物を裏返しにした状態で、その裏面に対して再度イオン注入を行う必要がある。そのため、従来の方法では、処理工程が増え、処理物の表面処理に時間がかかるという問題があった。処理時間を短縮するためには、板状の処理物の表裏両面(全面)を同時に処理できる方法が望まれる。
【0005】
なお、入り組んだ表面を有する三次元的な不規則形状の処理物の表面を均一に処理する方法として、電極上に設置された処理物の周囲に、かつその表面に沿って導電性のグリッドを配置し、この状態で、注入イオンを含むプラズマを発生させると共に導電性グリッドに高電圧パルスを印加する技術がある(特許第2501770号公報)。この方法では、プラズマに含まれるイオンが導電性グリッドにより加速されて処理物に引き込まれるように注入され、これにより表面の改質が行われる。しかし、この方法によっても、上記方法と同様に、処理物の全面に対して一括処理を施すことはできない。
【0006】
また、上述したようなプラズマイオン注入法において、処理物が絶縁材料、特に、ガラス転移点が低い、ポリマーなどのプラスチック材料によって構成されている場合には、イオン注入時におけるイオン電流密度が大きいと、このイオン注入により発生する熱によって処理物が変形してしまうことがあった。このような処理物の熱による変形を生じさせることなく、所望のイオンを十分な量だけ処理物に注入して表面処理を行うためには、処理時間(イオン注入時間)を長くすると共に、発生させるプラズマの密度を小さくしてイオン電流密度が十分に小さくなるようにしなければならない。しかし、このような方法では、処理物の表面処理を高速に行うことができないため、その処理に時間がかかると共に、処理コストが増加するという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、絶縁材料からなる処理物の被処理面の全面の一括処理が可能であり、それにより処理時間を大幅に短縮できると共に処理コストを削減することが可能な表面処理装置および表面処理方法を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、特にプラスチックなどのガラス転移点の低い絶縁材料からなる処理物の熱による変形を効果的に防止することができ、それにより処理時間を大幅に短縮できると共に処理コストを削減することが可能な表面処理装置および表面処理方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の表面処理装置は、電界により加速されたイオンを注入することにより絶縁材料からなる処理物の表面処理を行うものにおいて、イオンを発生するイオン発生手段と、処理物の被処理面の実質的に全面に対向して配置された、イオン発生手段によって発生したイオンが通過可能な電極体と、電極体に対してパルス電圧を印加して電界を発生させるパルス電圧印加手段とを備えた構成を有している。
【0010】
本発明による第2の表面処理装置は、イオンを発生するイオン発生手段と、赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料によって構成されると共に、処理物の被処理面の少なくとも一部に対向して配置された、イオン発生手段によって発生したイオンが通過可能な電極体と、電極体に対してパルス電圧を印加して電界を発生させるパルス電圧印加手段とを備えた構成を有している。
【0011】
本発明による第1の表面処理方法は、処理物の被処理面の実質的に全面に対向する位置に、イオンが通過可能な電極体を配置し、かつ、電極体に対してパルス電圧を印加する工程を有するものである。
【0012】
本発明の第2の表面処理方法は、処理物の被処理面の少なくとも一部に対向する位置に、赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料により形成されると共にイオンが通過可能な電極体を配置し、かつ、電極体に対してパルス電圧を印加する工程を有するものである。
【0013】
本発明の第1の表面処理装置または表面処理方法では、電極体にパルス電圧(特に正負のパルスを含むパルス電圧)が印加されると、イオンが、網状若しくは格子状等の形状を有する電極体を通過して、処理物の被処理面全面に同時に注入され、表面改質の一括処理が行われる。
【0014】
本発明の第2の表面処理装置または表面処理方法では、上記と同様に、電極体にパルス電圧(特に正負のパルスを含むパルス電圧)が印加されると、イオンが、電極体を通過して処理物の被処理面に注入され表面が改質されると共に、赤外領域のエネルギーを吸収する材料により形成された電極体によって、イオン注入に伴う処理物の温度上昇が抑制される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態に係る表面処理装置20の概略構成を表すものである。この表面処理装置20は、処理物に対してプラズマイオン注入による表面処理、すなわち処理物の表面の改質(硬化)処理を行うためのものである。
【0017】
処理物としては、本実施の形態では、例えば板状の絶縁体、例えばポリカーボネート(PC;Polycarbonate ),アクリル樹脂,アモルファスポリオレフィン(APO;Amorphous Polyolefin)などからなる光ディスク(以下,ディスクという)9を用いるものとする。なお、本発明に係る表面処理方法は、本実施の形態に係る表面処理装置によって具現化されるので、以下、併せて説明する。
【0018】
表面処理装置20は真空槽1を備えており、この真空槽1には排気系2およびイオン源3が付設されている。イオン源3には、電源供給用のイオン源制御電源4が接続されると共に、イオン発生用ソースガスを導入するためのガスライン5が連結されている。ディスク9は、例えば真空槽1の天井面において絶縁性の支持部材(図示せず)により支持されるようになっており、このディスク9を囲むように電極体10が対向配置されている。電極体10は、導電性の支持部材11、例えば銅またはステンレス鋼により、天井面において支持されている。電極体10には、支持部材11および高圧線7を介して外部に付設されたパルス電源6からパルス電圧が供給されるようになっている。支持部材11と高圧線7との接続部には高圧碍子8が配設され、真空槽1を保護している。なお、ディスク9および電極体10は、それぞれ真空槽1に設けられた出入口1aを通して挿入または取り出しができるようになっている。
【0019】
真空槽1の内部は排気系2によって排気されることにより、例えば約1×10-4Pa(約10-6Torr)程度の高真空状態となる。この排気系2は、例えば、ターボ分子ポンプ、拡散ポンプ、またはイオンポンプによって構成される。
【0020】
イオン源3は、イオン源制御電源4から供給された電力に基づいて、ガスライン5を通して導入されたソースガスをイオン化し、ディスク9に注入すべきイオンを含むプラズマを発生させるためのものである。このイオン源3は、例えば、カウフマン型のイオン発生装置である。イオン源3としては、その他、カソーディックアークイオン発生装置またはRF(Radio Frequency )イオン発生装置などを用いるようにしてもよい。ガスライン5を通してイオン源3に導入されるソースガスとしては、例えば、メタン、窒素、または酸素が含まれる。なお、イオン源3およびイオン源制御電源4により本発明の「イオン発生手段」が構成されている。
【0021】
電極体10は、パルス電圧の印加によりイオン源3により発生したイオンを通過させてディスク9に引き込み注入させるものであり、所定の太さのワイヤを例えば網目若しくは格子構造に構成したものである。具体的には、例えば図2(A)または図2(B)に示した構造を有している。
【0022】
図2(A)に示した電極体10は2枚の板状電極10a,10bにより構成したものであり、これら板状電極10a,10bはディスク9の表面および裏面に所定の距離だけ隔てて対向配置されている。一方、図2(B)に示した電極体10はディスク9が挿入可能な籠状構造とし、ディスク9の周囲全体を囲むようにしたものである。
【0023】
電極体10は、イオン注入によって生じるディスク9からの赤外領域の放射エネルギー(熱エネルギー)を吸収できる材料、例えばグラファイトのような黒色の導電性材料により形成される。電極体10としては、また、銅などの金属材料の表面を黒色に着色したものを用いるようにしてもよい。着色は、電極体10の全面でもよいが、ディスク9との対向面のみにしてもよい。
【0024】
電極体10には、パルス電源6から高圧線7および支持部材11を通してパルス電圧が印加されるようになっている。図3はこのパルス電源6によって発生されるパルス電圧の波形の一例を示すものである。このパルス波形は、正のパルスおよび負のパルスを含むバイポーラパルスからなっている。このパルス波形において、パルス幅Wは5μsから100μsの範囲内、また、パルス周期Pは10μsから500μsの範囲内である。負のパルス電圧値Vmは−5kVから−100kVの範囲内、また、正のパルス電圧値Vpは1kVから20kVの範囲内である。なお、パルス電源6が本発明の「パルス電圧印加手段」に相当する。
【0025】
ここで、電極体10に対して負のパルス電圧を印加するのは、電界によりイオン源3によって発生した正イオンを加速し、電極体10を通過させてディスク9に引き込ませて注入するためである。一方、負のパルス電圧印加によって絶縁性のディスク9の表面には正イオンが蓄積されチャージアップ状態になり、次第に正イオンの注入ができなくなる。正のパルス電圧を印加する理由は、その蓄積された正イオンを取り除いてチャージアップ状態から中和状態に戻すためである。
【0026】
次に、以上のように構成された表面処理装置の作用について説明する。
【0027】
まず、排気系2により真空槽1の内部が例えば約1×10-4Pa以下の真空圧力に達するまで排気される。真空槽1の内部において十分な真空度が得られたら、ガスライン5を通して例えば約1.7×10-83 /sから約85×10-83 /s(1sccm(Standard Cubic Centimeters per Minute )から50sccm)の範囲内の流量でソースガスがイオン源3に導入されると共に、イオン源制御電源4からイオン源3に電力が供給される。これによりソースガスがイオン化され、正イオンを含むプラズマが発生する。
【0028】
因みに、イオン源3としてカウフマン型のイオン発生装置を用いた場合には、ソースガスのイオン化は、次のようにして行われる。まず、イオン源3の内部に設けられたフィラメントに電流が流れてこのフィラメントが加熱される。この加熱によってフィラメントから熱電子が射出され、この熱電子が予め発生させておいた磁場および電場の作用によりらせん状に運動する。これにより、この熱電子とソースガスとが効率よく衝突し、ソースガスがイオン化される。また、イオン源3の内部に設けられたグリッド電極に加速電圧(例えば、500V)が印加されることにより、イオン源3において発生した正イオンがディスク9に向けて加速されてイオンビームとなる。これにより、イオンが、ディスク9および電極体10の周囲に均質に存在する状態となる。このとき、イオンビームの電流量は、例えば1mAから100mAの範囲内の値となる。なお、この電流量は、イオン源3に導入するソースガスの量、加熱用フィラメントに流す電流の量、およびグリッド電極に印加する加速電圧の値に応じて変化する。
【0029】
このような状態で、電極体10に対してパルス電源6から図3に示した波形のパルス電圧が印加される。電極体10にパルス電圧(ここでは、負のパルス電圧)が印加されているときには、電気力線が電極体10およびディスク9の表面および裏面に対してほぼ垂直になるような電界分布が得られる。従って、イオン源3によって発生し、電極体10の周囲に存在するイオンは、電極体10を通過して加速され、ディスク9に引き込まれるように注入される。
【0030】
このイオン注入により、ディスク9の表面および裏面に対して同時にイオン注入が行われ、表裏全面の改質が行われる。
【0031】
上述のようなイオン注入がなされたディスク9に対してその硬さを調べるために、押し込み硬度試験(ナノインデンテーションテスト)を行った。図4はこの押し込み硬度試験の結果を示すものである。縦軸はディスク9の表面に接する先端の半径が0.5μmであるダイヤモンド製のバーコビッチ型三角圧子を用いた場合のその押し込み荷重(μN)、横軸はその押し込み深さ(nm)をそれぞれ表している。
【0032】
この押し込み試験の結果、イオン注入がなされていない未処理のディスク9に対してバーコビッチ型三角圧子を1000μNの荷重まで押し込んだ後にこの荷重を取り去った場合(△)には、処理物の表面は完全には元の状態に戻らず、変形分が残ってしまった。これに対して、上述のようなイオン注入がなされた処理後のディスク9に対してバーコビッチ型三角圧子を1000μmの荷重まで押し込んだ後にこの荷重を取り去った場合(○)には、ディスク9の表面はほぼ完全に元の状態に戻り、変形分は残らなかった。これは、上述のようなイオン注入によって、ディスク9の表面の降伏点強度が増加したことを意味している。
【0033】
また、上述のイオン注入がなされたディスク9に対してその耐衝撃度を調べるために、臨界衝撃荷重試験を行った。これは、例えば、処理物としてのディスクおよびスライダ(光学ヘッド)を通常使用するような配置状態で一体化した後、ディスクの中心部(穴があいている)をシリンダに通した状態でこれらを落下させ、ディスクとスライダとの間でどの程度の衝突荷重が加われば、ディスクの表面に傷が生じるのかを調べるためのものである。この臨界衝撃荷重試験によれば、上述のイオン注入がなされていないディスクにおいては、約686m/s2 (約70G)の衝突荷重が加わった時に、その表面に傷が生じていた。これに対して、上述のイオン注入がなされたディスクにおいては、約2254m/s2 (約230G)の衝撃荷重が加わっても、その表面に傷が生じていなかった。この結果から、上述したイオン注入によってディスクの臨界衝撃荷重の値が大幅に改善されたことが分かる。
【0034】
以上の結果より、本実施の形態では、表面および裏面を同時にイオン注入処理することより、硬くて衝撃に強いディスク9を得ることができることが分かる。
【0035】
ところで、上述したようなディスク9に対するイオン注入の際、パルス電圧が印加された電極体10によって加速されたイオンの運動エネルギーがディスク9においてかなりの割合で熱エネルギーに変換される。そのため、ディスク9が耐熱性が低いプラスチック材料で構成されているような場合には、この熱エネルギーによりディスク9の温度が上昇し、ディスク9が溶けて変形してしまうことがある。しかし、本実施の形態では、電極体10が赤外領域の放射エネルギー(熱エネルギー)を吸収する材料(グラファイト)で構成されているので、ディスク9からの放射エネルギーは電極体10自体に吸収され、ディスク9の温度上昇が抑制される。
【0036】
電極体10として、銅により構成したものを用いた場合と、グラファイトにより構成したものを用いた場合とにおいて、同一の条件の下で、熱エネルギーによるディスク9の変形の有無に関する比較実験を行った。ここで、パルス電圧に関しては、パルス幅Wは5μs、パルス周期Tは100μs、負のパルス電圧値Vmは−20kV、正のパルス電圧値Vpは10kVとした。イオン注入時間は3分とした。ディスク9はAPOにより形成されたものを用いた。
【0037】
この比較実験の結果、銅製の電極体を用いてイオン注入を行った場合には、ディスク9は溶けて変形した。これに対して、グラファイト製の電極体を用いてイオン注入を行った場合には、ディスク9が変形することはなかった。すなわち、グラファイト製の電極体を用いることにより、熱エネルギーによるディスク9の温度上昇を抑制してディスク9が変形することを防止することができた。従って、ディスク9を冷却してその温度を一定の範囲内に維持するための冷却装置を別途設けるようなことは必要でなくなる。
【0038】
なお、銅製の電極体を用いた場合にディスク9が変形するのを避けるためには、イオン源3からのイオンビームの電流量を少なくするとともに、パルス電源6によって発生するパルス電圧の周期を長くすればよい。しかし、このような方法では、前述のように、イオン注入に時間がかかり、表面処理のコストの増加を招いてしまう。これに対して、本実施の形態では、黒色の電極体10によりディスク9の温度上昇が抑制されるため、イオンビームの電流量を増加させることできると共にパルス電圧の周期を短くすることができるので、表面処理時間を大幅に短縮することができる。
【0039】
因みに、銅製の電極体を用いた場合と、グラファイト製の電極体を用いた場合とにおいて、同一の条件の下で、ディスク9が変形することなく、所定の硬さと所定の臨界衝撃荷重値とを有するのに必要な表面処理時間に関する比較実験を行った。その結果、銅製の電極体を用いた場合の処理時間は約10分であった。これに対して、グラファイト製の電極体を用いた場合の処理時間は約3分であり、銅製の電極体を用いた場合に比べて大幅に短縮することができた。
【0040】
以上のように、本実施の形態では、電極体10を、処理物(ディスク9)の表面および裏面に対向配置した状態で、正のパルスおよび負のパルスを含むパルス電圧を印加するようにしたので、処理物の表面および裏面に対して同時にイオン注入を行うことができ、硬くて衝撃に強い処理物を得ることができる。これにより処理時間を大幅に短縮できると共に処理コストを削減することが可能になる。
【0041】
また、本実施の形態では、電極体10を黒色としたので、イオン注入による処理物の温度上昇を抑制して処理物の変形を防止することができる。従って、イオンビームの電流量を増加させることできると共にパルス電圧の周期を短くすることができ、これによっても処理時間を大幅に短縮することが可能になる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、電極体10を黒色とし、イオン注入による処理物の温度上昇を抑制するようにした場合には、電極体10を処理物の片面のみに配置して、表面と裏面とを別工程により処理するようにしてもよい。これによっても従来方法に比べて、処理時間を短縮することができる。また、電極体10の構造は、網目若しくは格子状のものに限られず、要はイオンが通過し処理物に注入できる形状であればよい。
【0043】
更に、上記実施の形態では、電極体10を少なくとも1cm程度処理物(ディスク9)から離間した位置に配設するようにした。これは、電極体10の形状が処理物に転写されるのを防ぐためである。
【0044】
また、上記実施の形態では、処理物を板状のもの(ディスク)として説明したが、その形状は任意であり、円柱や角柱の立体形状のものでも適用可能である。例えば、図5は処理物を円柱体30とし、電極体10を円柱体30の外周全体を覆う筒状形状としたものである。更に、処理物としては、表面が複雑な形状のものであってもよく、そのような場合には、電極体をその表面に沿った形状を有するものとすればよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表面処理装置、または請求項9乃至12のいずれか1項に記載の表面処理方法によれば、処理物の被処理面の実質的に全面に対向する位置にイオンが通過可能な電極体を配置し、かつ、電極体に対してパルス電圧を印加するようにしたので、処理物の全面を同時に一括処理することができ、それにより処理時間を大幅に短縮できると共に処理コストを削減することが可能になる。
【0046】
また、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の表面処理装置、または請求項13乃至15のいずれか1項に記載の表面処理方法によれば、処理物の被処理面の少なくとも一部に対向する位置に、赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料により形成されると共にイオンが通過可能な電極体を配置し、かつ、電極体に対してパルス電圧を印加するようにしたので、プラスチックなどのガラス転移点の低い絶縁材料からなる処理物の熱による変形を効果的に防止することができ、それにより処理時間を大幅に短縮できると共に処理コストを削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表面処理装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した表面処理装置に用いる電極体の構成例を説明するための外観図である。
【図3】図1に示したパルス電源によって発生するパルス電圧波形の一例を表す図である。
【図4】図1に示した表面処理装置によって表面処理がなされた処理物の押し込み硬度試験の結果を表す特性図である。
【図5】処理物および電極体の他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…真空槽、1a…出入口、2…排気系、3…イオン源、4…イオン源制御電源、5…ガスライン、6…パルス電源、7…高圧線、8…高圧碍子、9…ディスク(処理物)、10…電極体、10a,10b…板状電極、11…支持部材、20…表面処理装置。

Claims (15)

  1. 電界により加速されたイオンを注入することにより絶縁材料からなる処理物の表面処理を行う表面処理装置であって、
    イオンを発生するイオン発生手段と、
    前記処理物の被処理面の実質的に全面に対向して配置された、前記イオン発生手段によって発生したイオンが通過可能な電極体と、
    前記電極体に対してパルス電圧を印加して電界を発生させるパルス電圧印加手段と
    を備えたことを特徴とする表面処理装置。
  2. 前記電極体は、赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料によって構成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
  3. 前記電極体の、少なくとも前記処理物に対向する面が黒色である
    ことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
  4. 前記パルス電圧印加手段は、正のパルスおよび負のパルスを含むパルス電圧を前記電極体に印加する
    ことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
  5. 前記電極体は、網目状若しくは格子状の形状を有する
    ことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
  6. 電界により加速されたイオンを注入することにより絶縁材料からなる処理物の表面処理を行う表面処理装置であって、
    イオンを発生するイオン発生手段と、
    赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料によって構成されると共に、前記処理物の被処理面の少なくとも一部に対向して配置された、前記イオン発生手段によって発生したイオンが通過可能な電極体と、
    前記電極体に対してパルス電圧を印加して電界を発生させるパルス電圧印加手段と
    を備えたことを特徴とする表面処理装置。
  7. 前記電極体の、少なくとも前記処理物に対向する面が黒色である
    ことを特徴とする請求項6記載の表面処理装置。
  8. 前記パルス電圧印加手段は、正のパルスおよび負のパルスを含むパルス電圧を前記電極体に印加する
    ことを特徴とする請求項6記載の表面処理装置。
  9. 電界により加速されたイオンを注入することにより絶縁材料からなる処理物の表面処理を行う表面処理方法であって、
    前記処理物の被処理面の実質的に全面に対向する位置に、イオンが通過可能な電極体を配置し、かつ、前記電極体に対してパルス電圧を印加する
    ことを特徴とする表面処理方法。
  10. 前記電極体として、前記処理物からの赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料によって構成されるものを用いる
    ことを特徴とする請求項9記載の表面処理方法。
  11. 前記電極体として、少なくとも前記処理物に対向する面が黒色であるものを用いる
    ことを特徴とする請求項9記載の表面処理方法。
  12. 前記電極体に、正のパルスおよび負のパルスを含むパルス電圧を印加する
    ことを特徴とする請求項9記載の表面処理方法。
  13. 電界により加速されたイオンを注入することにより絶縁材料からなる処理物の表面処理を行う表面処理方法であって、
    前記処理物の被処理面の少なくとも一部に対向する位置に、赤外領域の放射エネルギーを吸収する材料により形成されると共にイオンが通過可能な電極体を配置し、かつ、前記電極体に対してパルス電圧を印加する
    ことを特徴とする表面処理方法。
  14. 前記電極体として、少なくとも前記処理物に対向する面が黒色であるものを用いる
    ことを特徴とする請求項13記載の表面処理方法。
  15. 前記電極体に、正のパルスおよび負のパルスを含むパルス電圧を印加する
    ことを特徴とする請求項13記載の表面処理方法。
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