JP4497725B2 - 消化管用薬物送達経口製剤 - Google Patents

消化管用薬物送達経口製剤 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、消化管用薬物送達経口製剤に関する。より詳細には、本発明は、消化管における低吸収性のためにバイオアベイラビリティが低い薬物のバイオアベイラビリティを改善するための消化管用薬物送達経口製剤に関する。
【0002】
【背景技術】
経口投与後の薬物のバイオアベイラビリティが低い理由としては次の要因が考えられている。(1)通常の錠剤やカプセル剤などの経口製剤の経口投与の場合、消化管管腔側の薬物濃度と血流との間の濃度勾配は、経口製剤から薬物が放出された直後は増加するが、製剤が消化管の下部に移動していくと急速に低下し、薬物吸収条件にとって不利となる。(2)フロセミドなどの薬物は、小腸上部の限定された部位から吸収され(いわゆる、window-effect)、このような薬物の通常の製剤では吸収部位を通過した後には十分なバイオアベイラビリティを発揮することができない。(3)消化管に分泌された消化酵素などにより蛋白やペプチド薬物は著しい加水分解を受けるため、バイオアベイラビリティはわずか数%まで低下してしまう。(4)リトナビル、サキナビル、インジナビル、ネルフィナビルなどのHIVプロテアーゼ阻害剤は、消化管から吸収された後、腸管の上皮細胞膜上に発現するP−gpなどの排出蛋白により能動的に排出される。
【0003】
window-effectによる薬物の低バイオアベイラビリティを改善するために、秋山らは、粘膜付着性顆粒製剤(Pharmaceutical Research, vol.12, pp.397-405, 1995)を開発した。
【0004】
蛋白およびペプチドの経口投与後のバイオアベイラビリティを改善するための従来技術としては、胃および小腸における加水分解を防止することを主目的として、Saffran博士らによる大腸溶解性アゾポリマーコートインスリン錠剤、Cortex社によるエマルジョン化製剤、高田の経口製剤の調製技術、高田の大腸デリバリー化技術、リポゾーム化製剤(高田、Pharm. Tech. Japan, 1988, pp.1299-1307;高田、Pharm. Tech. Japan, 1991, pp.512-52;高田、Pharm. Tech. Japan, 1995, pp.1335-1344;胡ら、日本臨床、1998, pp.595-600)などが開発されている。
【0005】
【発明の開示】
粘膜付着性顆粒製剤では、消化管管腔内に存在する消化酵素の攻撃から薬物分子を守ることはできない。また、上記のペプチド・蛋白経口製剤においても、小腸管腔内に存在する消化酵素の攻撃から蛋白やペプチドを完全に防御することは困難である。
本発明の目的は、ゲル形成ポリマー、並びに経口投与後、消化管粘膜に付着し、消化管管腔内に存在する消化酵素の透過を阻止する水不溶性のポリマーを用いて貼付剤を調製することにより、小腸管腔内の消化酵素の攻撃から貼付剤中の薬物分子を守り、粘膜に付着することにより長時間にわたり濃度勾配を維持することによりバイオアベイラビリティの改善を可能とする薬物送達用経口製剤(薬物送達システム(DDS)製剤とも称する)を提供することである。
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、それぞれ特定の役割を担う3つの層を含む消化管用薬物送達経口製剤を開発することに成功した。本発明はこの知見に基づいて完成したものである。
【0007】
本発明によれば、消化管の選択した部位に製剤を付着させるための付着部位制御層、薬物と粘着剤とを収容するための薬物担持層、および薬物担持層の薬物を保護するための保護層を有し、薬物担持層が保護層と付着部位制御層との間に存在する、消化管用薬物送達経口製剤が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、付着部位制御層、薬物担持層および保護層がそれぞれフィルム状であり、上記3層が積層して構成されている消化管用薬物送達経口製剤が提供される。この態様において、付着部位制御層、薬物担持層および保護層の厚さはそれぞれ好ましくは20〜100μmである。
【0009】
本発明の別の態様によれば、保護層が半球形態を形成し、当該半球形態の保護層の内部空間に薬物担持層が存在し、当該半球形態の保護層の開口部分を付着部位制御層が被覆してなる、消化管用薬物送達経口製剤が提供される。この態様において、半球内部の深さは好ましくは50〜500μmであり、半球の開口部の内径は好ましくは20〜800μmであり、保護層および付着部位制御層の厚さは好ましくは20〜100μmである。
【0010】
好ましくは、薬物担持層は、薬物で含浸した多孔質シート状基材、または薬物を含有するゲルもしくはワックスのシートもしくはフィルムである。
好ましくは、薬物担持層は、吸収促進剤、プロテアーゼ阻害剤またはトランスポーター阻害剤から成る群から選択される1種以上の成分をさらに含む。
好ましくは、保護層は水不溶性ポリマーまたはワックス類から成るフィルムまたはカプセルである。
好ましくは、付着部位制御層は腸溶性ポリマーのフィルムである。
好ましくは、薬物は生理活性蛋白質またはペプチドである。
好ましくは、薬物はG−CSF、インターフェロンまたはインジナビルである。
【0011】
本発明の別の側面によれば、上記製剤をカプセルに充填することにより調製される経口カプセル製剤が提供される。経口カプセル製剤は、好ましくは、腸溶性カプセルである。
【0012】
【発明を実施するための好ましい形態】
本発明の消化管用薬物送達経口製剤は、消化管の選択された特定の部位に製剤を付着させるための付着部位制御層、薬物と粘着剤とを含む薬物担持層、および薬物担持層の薬物を保護するための保護層を有し、薬物担持層が保護層と付着部位制御層との間に存在し、付着部位制御層が保護層に付着してもよいことを特徴とする。
【0013】
本発明の製剤を経口投与した場合、付着部位制御層は消化管の選択された特定の部位において溶解する。このように付着部位制御層が消化管の選択された特定の部位において溶解することによって、薬物担持層が付着する消化管粘膜の部位は制御される。製剤を経口投与した後、保護層は、消化液が薬物担持層へ浸透し、薬物担持層が薬物を放出するのを防止すると同時に、製剤が消化管粘膜に付着した後も消化液および消化酵素が薬物担持層へ透過するのを防止する。経口投与された薬物のバイオアベイラビリティは、薬物分子を消化酵素の攻撃から保護し、かつ長時間にわたり濃度勾配を維持することにより改善される。
【0014】
付着部位制御層は、薬物の早期のバースト放出を抑制するとともに、消化管の選択された特定の貼付(付着)部位において溶解する物質から成る。典型的には、付着部位制御層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP−55R)、メタアクリル酸コポリマー(EudragitR L)、メタアクリル酸コポリマー−LD(EudragitR LD)、メタアクリル酸コポリマー−S(EudragitR S)などのpH依存性腸溶性ポリマーから成るものである。付着部位制御層の厚さは一般的には20〜100μmであり、好ましくは30〜70μmであり、より好ましくは40〜50μmである。
【0015】
薬物担持層は保護層と付着部位制御層の間に存在する中間層である。薬物担持層は薬物と粘着剤を含む。粘着剤は、付着部位制御層が消化管内の選択した部位で溶解した際に、薬物担持層を消化管粘膜に貼り付けるために使用される。
【0016】
薬物担持層に収容される薬物の種類は特に限定されないが、経口投与した場合に低バイオアベイラビリティを有するものが好ましい。消化管、特に腸で吸収されるものが好ましい。具体例としては、生理活性蛋白質又はペプチド(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−α、β及びγを含むインターフェロン、エリスロポエチン、インターロイキン類、成長ホルモン類、カルシトニン及びインスリン)、並びにオリゴ−又はポリ−ヌクレオチドを含むDNA又はRNA(DNAはプラスミドの形態でもよい)、芳香剤、抗原又は抗体(例えば、ボツリン毒素)及び細胞(例えば、膵臓ランゲルハンス島細胞)などを挙げることができる。より具体的には、例えば、G−CSF、インジナビル及びインターフェロンを挙げることができる。
【0017】
薬物担持層を消化管粘膜に貼り付けるための粘着剤は、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸シルクブロイン共重合樹脂、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合樹脂、アラビヤゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリイソプレン、ポリアクリレート、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリマーやゴム類に可塑剤を配合して、混合物を水で混練することにより調製することができる。例えば、HiviswakoR 103を0.8g、PEG 400を250μlおよび精製水2mlを混練することにより粘着剤を調製することができる。
【0018】
薬物担持層として支持体を用いる場合、支持体の具体例としては、薬物で含浸した多孔質基材、例えばポリエステル繊維、薄布、ティッシュペーパーあるいは合成セルロース系ポリマーや腸溶性ポリマーで作成した合成紙またはフィルムなどを挙げることができる。
【0019】
薬物担持層としてゲル層を用いる場合には、カルボキシビニルポリマーなどのゲル形成ポリマーの濃厚液に、薬物水溶液、薬物粉末、薬物の固体分散体、又はマイクロもしくはナノカプセル化薬物を混合することにより調製する。ゲル層の代わりに、親水性ワックス、例えばポリエチレングリコール400(PEG 400)に薬物と粘着剤、例えばHIVISWAKO 300を加えることにより調製した親水性ワックスの層を用いてもよい。薬物にナノ−又はマイクロ−カプセル化を施す場合には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP−55R)をナノ、マイクロカプセル壁材として用いることにより、消化管壁付着後、速やかな薬物放出性が得られる。
【0020】
また、薬物担持層にポリオキシエチレン硬化ひまし油誘導体、カプリン酸、ウルソデオキシコール酸などの吸収促進剤を配合することにより、薬物のバイオアベイラビリティをより高めることができる。あるいは、薬物担持層にアプロチニンなどの加水分解阻害剤を配合することにより、ペプチド・蛋白性薬物の加水分解をより効率良く抑制し、バイオアベイラビリティをより高めることができる。あるいは、薬物担持層にP−gpなどの排出に関与するトランスポーターの阻害剤であるベラパミル、シクロスポリンなどを配合することにより、薬物のバイオアベイラビリティをより高めることができる。
【0021】
なお、以下に説明する通り、本発明で用いる薬物担持層はフィルム状である場合と、保護層が形成する半球形態の内部空間に存在する場合とがある。薬物担持層がフィルム状である場合、フィルムの厚さは一般的には20〜100μmであり、30〜70μmであり、より好ましくは40〜50μmである。
【0022】
保護層(基底層)は薬物担持層の薬物を保護するために機能し、薬物担持層や消化酵素への薬物の透過を阻止するための水不溶性ポリマー、ワックス類又はこれらの混和物から成るフィルムもしくは壁(例えば、半球形態など)である。保護層は例えば、エチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(Eudragit RS)、酢酸セルロース、キチン、キトサンなどの水不溶性製剤用ポリマー、もしくはステアリン酸、ステアリルアルコール、サラシミツロウ、カカオ脂、ハードファット、精製セラック、ステアリン酸ポリオキシル40、セタノール、ポリオキシエチルラウリルエーテルなどのワックス類を用いて調製することができる。保護層の厚さは一般的には20〜100μmであり、30〜70μmであり、より好ましくは40〜50μmである。また、保護層が半球形態を形成する場合、半球の大きさは特に限定されない。例えば、半球内部の深さは50〜500μmであり、半球の直径(口径)は20〜800μmであり、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは100〜300μmである。
【0023】
本発明によれば、薬物担持層は保護層と付着部位制御層との間に存在する。薬物担持層が保護層と付着部位制御層との間に存在する場合の例としては、例えば、(1)付着部位制御層、薬物担持層および保護層がそれぞれフィルム状であり、これら3層が順番に積層して構成されている場合(本書中以下、第1の形態の製剤と言う)や、(2)保護層が半球形態を形成し、この半球形態の内部空間に薬物担持層が存在し、半球形態の開口部分を付着部位制御層が被覆してなる場合(本書中以下、第2の形態の製剤と言う)、などが挙げられる。以下、本発明の代表例である上記第1の形態および第2の形態の製剤の調製方法について詳細に説明する。
【0024】
第1の形態の製剤を調製するためには、先ず、保護層のためのフィルムを、上記した水不溶性ポリマーまたはワックス類を使用して形成する。より具体的には、水不溶性ポリマーまたはワックスをエタノールなどの有機溶媒に溶解し、得られた溶液をテフロン製枠にキャストし、溶媒を蒸発する。例えば、エチルセルロース550mg、クエン酸トリエチル150μlを塩化メチレン:メタノール(4:1)の混合物5mlに溶解し、得られた溶液をテフロン板上にキャストする。
【0025】
次に、上記した通り、薬物担持層を保護層の上に形成する。粘着剤は保護層の上に塗布してから、薬物を含有する支持体を貼り付けて薬物担持層を形成してもよいし、あるいは、薬物と粘着剤(ゲル形成ポリマーなど)とを混合し、保護層の上に塗布してもよい。
【0026】
付着部位制御層としては、上記した腸溶性ポリマーにて調製した厚さ20〜100μmのフィルムを用いることができる。例えば、HP−55R(信越化学社製)225mg、クエン酸トリエチル25μlを塩化メチレンとメタノール(4:1)の混合物5mlに溶解し、得られた溶液をテフロン板上にキャストしてフィルムを形成する。別の例としては、EudragitR S100もしくはEudragitR L100 225mgとクエン酸トリエチル150μlとを塩化メチレンとメタノール(4:1)の混合物5mlに溶解し、得られた溶液をテフロン板上にキャストすることにより作成したフィルムも使用可能である。このようなフィルムを薬物担持層の上に粘着剤などを用いて貼り付けた後、3層フィルムを適当なサイズに切断することによって、本発明の第1の形態の製剤を作製することができる。また、保護層と付着部位制御層に挟まれた薬物担持層の端からの薬物などの漏出を防止するために、ステアリン酸微粉末など水不溶性物質をまぶすことにより製剤に封を施すことが好ましい。
【0027】
フィルム貼付製剤のサイズとしては、製剤がゼラチンカプセルや腸溶性ポリマーで作成した腸溶性カプセルに充填できる限り、限定されない。例えば、サイズとしては、3mm×3mmの正方形や、直径5mmの丸型などでもよい。カプセル内に重ねて入れる場合のフィルム同士の癒着や接着を防止するために、ケイ酸マグネシウム粉末をふりかけて滑沢処理を施すことが望ましい。
【0028】
一方、第2の形態の製剤を調製するためには、水不溶性ポリマーもしくはワックス類で調製したミニカプセルもしくはマイクロカプセルを半分に切断することによって、本発明で用いる半球形態の保護層を調製することができる。エチルセルロースやEudragit RS100などの水不溶性ポリマーを用いることによってミニカプセルもしくはマイクロカプセルを常法により調製し、次に、得られたカプセルを中央で2片に切断し、さらに内側を切削して、保護層として機能する“半球(おわん)”状の中空の半ミニカプセルもしくは半マイクロカプセルを調製する。薬物担持層を調製するためには、薬物とゲル形成ポリマーを混和して、半ミニカプセルもしくは半マイクロカプセル内に充填する。付着部位制御層は、腸溶性ポリマーで調製したフィルムを、ゲル形成ポリマー糊を用いて、半ミニカプセルもしくは半マイクロカプセルの上部に蓋をするように接着することによって形成することができる。あるいは、薬物と接着性ポリマーを含有するミニカプセル又はマイクロカプセルは、エチルセルロースやEudragitR RS100などの水不溶性ポリマーを用いて常法により調製し、得られたカプセルを中央で2片に切る。次いで、腸溶性ポリマーで調製したフィルムを、ゲル形成ポリマー糊を用いて、半ミニカプセルもしくは半マイクロカプセルの上部に蓋をするように接着することによって、付着部位制御層を形成することができる。
【0029】
あるいは、第2の形態の製剤を大量に調製するためには、先ず、第1の形態の製剤で用いる保護層を作製する場合と同様に、水不溶性ポリマーまたはワックス類を使用してフィルムを形成する。得られたフィルムを、花道用の剣山などのように規則的に並んだ多数のミクロン単位の突起物の上に載せる。マイクロ機械技術により作製した金型をフィルムを載せるための物体として使用してもよい。フィルムを高温で加熱下で数時間放置し、その後冷却することによって深さ50〜500μm、口径20〜800μmのマイクロ容器状の多数の孔を有するフィルムを作製することができる。
【0030】
フィルム上に形成されたマイクロ容器状の孔に薬物を充填するためには、固相法と液相法の2通りがある。固相法では、薬物と粘着剤とを混和した後、得られた混合物を、マイクロ容器状の孔に固体状態で一定量で入れる。液相法では、粘着剤を固相法により孔に注入し、薬物溶液をマイクロインジェクターにより孔に注入する。
【0031】
次いで、付着部位制御層(腸溶性ポリマーで調製したフィルム)を、マイクロ容器状の孔の上部に被覆するように設置する。粘着剤を予め付着部位制御層に塗布した後、薬物を収容したマイクロ容器状の孔を有するフィルムに適用することによって、付着部位制御層とマイクロ容器状の孔を有するフィルムとを接着することができる。薬物が耐熱性を有する場合には、加温圧着法により、薬物を収容したマイクロ容器状の孔を有するフィルムに付着部位制御層を接着することができる。
【0032】
こうして得られた、薬物を収容した多数の孔を有し、その孔を被覆するように付着部位制御層が設置されているフィルムを、個々の孔ごとに細断することによって本発明の第2の形態の製剤を作製することができる。細断は、顕微鏡下、機械的またはレーザーを用いて行うことができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は実施例によって限定されることはない。
【0033】
実施例
実施例A
材料
G−CSF溶液(500μgmL-1)はキリンビール社(東京、日本)から得た。ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55)は、信越化学(東京、日本)から得た。Eudragit S100 及びL100 (Rohm Pharm, Darmstadt, ドイツ)は、(株)樋口商会(東京、日本)から得た。カルボキシビニルポリマー(Hiviswako 103)、エチルセルロース(EC, 10cp)及びクエン酸トリエチルは、和光純薬(大阪、日本)から得た。ポリオキシエチレン硬化(60μmol)ヒマシ油誘導体(HCO-60)は、日光ケミカル(東京、日本)から得た。ポリエチレングリコール(PEG)400, スダンブラック、サッカロース及びクエン酸は、ナカライテスク社(京都、日本)から得た。フルオレセイン(FL)、メタノール及びジクロロメタンは、関東化学(東京、日本)から得た。ケイ酸マグネシウムは協和化学(高松、日本)から得た。ゼラチンカプセル(#0)は、吉田商店(姫路、日本)から得た。雄ビーグル犬(10.0〜12.5kg)を本実験では使用し、市販飼料(Labo D stock)の標準固形食は日本農産(横浜、日本)から得た。ラットはSLC(浜松、日本)から得た。他の材料は全て試薬等級のものであり、入手したものをそのまま使用した。
【0034】
消化管粘膜付着送達システムの調製
基底層(保護層)は、可塑剤含有EC溶液からキャスティング/溶媒蒸発技術により調製した。550mgのECを塩化メチレンとメタノール(4:1)の混合物5mlに溶解し、150mgのクエン酸トリエチルを可塑化ECに添加することによって、可塑化したポリマー溶液(11%, W/V)を調製した。ラットの消化管における保持/通過のための試験フィルムを調製するために、3.5mgのスダンブラックを混合物に添加した。可塑化したEC溶液をテフロン板(10×10cm)上にキャストし、溶媒を6℃で12時間蒸発させた。板から除去した後、同じサイズの薬物担持層(セルロース膜)を、80℃で熱結合することにより付着させた。その後、薬物担持層を有する基底層を1.0×10.0cmに切断した。ECフィルム自体の厚さは48.3±2.7μmであり、全体の厚さは115.3±0.9μmであった。
【0035】
pH感受性表面層(付着部位制御層)も、腸溶性ポリマーHP-55、Eudragit L100 及びS100を各々用いて同様の方法で調製した。即ち、550mgのHP-55及び50μlのクエン酸トリエチルを塩化メチレンとメタノール(4:1)の混合物10mlに溶解した。同様に、550mgのEudragit L100 又はEudragit S100 を、100μlのクエン酸トリエチルを添加した塩化メチレンとメタノール(1:1)の混合物10mlに溶解した。各溶液をテフロンプレート(10×10cm)にキャストし、pH感受性フィルムを6℃で12時間調製した。プレートから除去した後、pH感受性フィルムを1.0×10.0cmに切断した。腸溶性フィルムの厚さは、HP−55については39.0±2.5μmであり、Eudragit L100については36.3±2.2μmであり、Eudragit S100については37.7±2.2μmであった。粘膜付着接着剤は、0.8gのHiviswako 103、250μlのPEG 400及び2mlの水を混合することによって調製した。十分に混練した後、接着剤をpH感受性表面層の上に均一に塗布した。
【0036】
薬物の充填は以下の通り行った。先ず、薬物担持層を、クエン酸(100、150又は200mg)及びHCO-60 (50又は100mg)を含有する400μlの溶液で湿らし、50℃で2時間乾燥した。その後、薬物溶液を薬物担持層に充填した。FL試験用に200μlのFL溶液(150mg/ml)を充填した。G−CSF試験用に180μl又は250μlのG−CSF溶液(濃度は500μg/ml)を充填した。シートを冷蔵庫で12時間十分に乾燥した後、pH感受性表面層をHiviswako 接着剤を用いて薬物担持層に付着させた。3層のフィルムを小片(3.0×3.0mm)に切断し、小フィルムを微粉砕したステアリン酸及びケイ酸マグネシウムで処理し、フィルムの端を覆い、フィルムが互いに張り付くのを防いだ。最後に、フィルムを#0 HP-55 カプセルに充填し、賦形剤として粉末化シュークロースを添加した。HP-55カプセルは以下の通り作製した。HP-55を塩化メチレン及びメタノール(4:1)混合物に溶解した。得られた4.0w/v%の溶液を#0 ゼラチンカプセル本体とフタの各々に充填した。蒸発後、HP-55のフタと本体をゼラチン層を溶解することによって得た。
【0037】
ビーグル犬での薬物動態試験
3頭の雄ビーグル成犬を各実験において一晩12時間絶食させたが、水の摂取は自由とした。実験の途中、試験調製物の投与後4時間までは水は付与しなかった。各ビーグル犬には、全試験において1個の試験カプセルを経口投与した。投与の4時間後に、市販飼料の固形食(450g)と水を与えた。試験期間中、他に飼料は与えなかった。実験は全て一日の同じ時間に行い、日周性による影響を排除した。投与は、20mlの水を用いて、午前10時30分に行った。薬物投与の30分前に、対照血液試料(0.5ml)を頸静脈から採取した。各犬には、30mgのFL又は125μgのG−CSFを含む1個のカプセルを投与した。試験調製物の経口投与後に、0.5mlの血液試料を、FL試験用に0、1、2、3、4、5及び6時間後に、G−CSF試験用に0、1、1.5、2、3、4、6及び8時間後に頸静脈から採取した。G−CSFのELISAアッセイについての血液試料は、EDTA中に回収した。FLアッセイ用の血漿画分又はG−CSFアッセイ用の血清画分は、血液試料を12,000rpmで5分間遠心することによって得た。これらの血漿及び血清試料は直ぐに冷凍庫で−80℃で分析するまで凍結した。1週間後、FL又はG−CSFのiv溶液を同じ犬に静脈注射した。試験溶液の濃度は、FLについては1.0mg/mlであり、G−CSFについては500μg/mlであった。iv投与量は、各々FLは10mg、G−CSFは125μg/kgとした。投与後、血液試料を0、5、10、20、30、40分、1及び2時間後に回収した。血漿試料も分析するまで−80℃で保存した。
【0038】
ビーグル犬におけるG−CSFの薬物動態研究
125μg又は90μgのG−CSFを含有する試験用の消化管粘膜付着送達システムを2週間後に同じビーグル犬に経口投与し、0.5mlの血液試料を0、1、2、3、4、5、6、8、10及び12時間後に頸静脈から採取した。最後の血液採取の直後に、全部の血液試料を用いて全白血球細胞(WBC)数の分析を行った。さらに、血液試料を投与後24時間の翌朝にも回収しWBC数を測定した。
【0039】
ラット消化管におけるフィルムの保持及び通過の測定
体重300〜350gの雄Wistarラットを実験前の12時間絶食させた。水は自由に摂取させた。軽いエーテル麻酔下で、腹部を切開し、大きさ1.0×2.0mmの10片の試験フィルムを、幽門付近の胃上の切り込みを通じて十二指腸に投与した。消化管における小フィルムを検出するために、フィルムの基底層を黒色色素であるスダンブラックで染色した。腹部縫合後、各ラットをケージで飼育した。投与の1、2、3、4、5及び6時間後に、ラットを殺した。胃及び小腸全長を単離し、胃及び小腸を共にシート上で広げた。幽門括約筋から回盲接合部までの全小腸を5つの部分に分割し、消化管中に残存したフィルムを目視により検出し、記録した。その後、デジタルカメラDC-3Z (リコー、東京、日本)で写真をとり、画像を捕捉し、CapViewソフトウエア(ロジテック、東京、日本)を用いてデジタル化し、 PhotoDeluxeソフトウエア(Adobe)を用いて分析した。写真は、デジタルカラープリンター(ソニー、東京、日本)を用いて印刷した。
【0040】
アッセイ方法
血漿FL濃度
血漿中のFL濃度を分光蛍光測定法で測定した。200μlの犬血漿試料に、0.5mlのメタノールを添加した。十分混合した後、得られた混合物を12,000rpmで5分間遠心した。上清に、1mlの0.1NのNaOH溶液及び2mlの蒸留水を添加し、蛍光強度を島津RF-500 分光蛍光光度計を用いて励起波長468nm及び螢光波長512nmにて測定した。
【0041】
G−CSFの酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)
血清G−CSF濃度を酵素結合免疫吸収アッセイ法で以下の通り測定した。100μlのタンパク質溶液を平底96穴プレートの各ウエルに添加した後、100μlの血清試料、又は、既知の量のG−CSFを対照犬血清に添加して調製したG−CSF標準溶液を各ウエルに添加した。96穴プレートを室温で3時間インキュベートした。インキュベーション後、96穴プレートを緩衝液で洗浄した。アルカリホスファターゼに結合したG−CSFに対するポリクローナル抗体200μlを各ウエルに添加し、2時間インキュベートした。洗浄後、50μlのNADPHを添加し、1時間インキュベートした。エタノール及びINT−バイオレットを含む50μlの緩衝溶液を添加し、0.5時間インキュベートした。2Nの硫酸を添加した後、各ウエルの光学濃度をマイクロプレートリーダーを用いて490nmで測定した。本アッセイでは、3次元log-logit 変換を組み合わせた加重最小平方回帰法を使用した。
【0042】
全白血球細胞(WBC)数
循環血液中WBC数を測定することによってG−CSFの薬理学的作用を評価した。20μlのEDTAで処理した血液試料を希釈し、ストロマ化剤を用いて溶血した後、WBCの測定に使用した。ストロマ化した血液細胞を、自動マイクロセルカウンター(Sysmex F-500)を用いて計数した。1つの血液試料について3回の測定を行った。WBC数は、薬物投与後の各時点におけるWBC数を各々の値、即ち、投与前のWBC数で割ることによって決定した相対値として表す。
【0043】
データ分析
以下の薬物動態パラメーターを血漿薬物濃度−時間データから求めた。Cmaxは最大薬物濃度であり、TmaxはCmax に到達するのに要した時間であり、これらの値は測定値として得た。静脈及び経口投与後の血漿又は血清中薬物濃度−時間曲線(AUC)下の面積、及び一次モーメント(first-moment)曲線下の面積を、直線台形公式を用いて最終測定時点まで計算した。経口投与後の平均残留時間(MRT)は、AUMC/AUCにより計算した。バイオアベイラビリティ(BA)は以下の数式によりDosei.v., AUCi.v., 及びAUCoral から計算した:BA=AUCoral・Dosei.v./AUCi.v.・Doseoral.

【0044】
G−CSFの経口投与後の薬理学的アベイラビリティー(PA)は以下の数式から計算した。
F=(AUC0-48,oral × Dosei.v.)/(AUC0-48,i.v. × Doseoral)
式中、AUC0-48,oral は、G−CSF消化管粘膜付着送達システムの投与を受けた各犬の薬理学的作用−時間曲線の0時間から48時間までの個々の面積である。AUC0-48,iv は、G−CSF溶液を静脈内投与した全ての犬の薬理学的作用−時間曲線の0時間から48時間までの平均面積である。G−CSF溶液の静脈内投与の場合、薬理学的作用は0時間から作用が投与前の水準に戻った48時間まで測定した。
【0045】
統計処理
値は全て、平均±S.E.としてそのまま表示する。統計学的有意差は、p<0.05の場合に再現可能であるとみなした(片側T−検定)。
【0046】
結果
FLで製剤化した消化管粘膜付着送達システムの薬物動態試験
消化管粘膜付着送達システムにおける経口投与後のFLの薬物動態を調べるために、30mgのFLを含む消化管粘膜付着送達システムを調製し、3頭のビーグル犬に投与した。
【0047】
消化管粘膜付着送達システムに対する本試験では、3種類のpH感受性表面層を使用した。それらはHP-55, Eudragit L100及びS100である。これら3種類の消化管粘膜付着送達システムの経口投与後に、血漿FL濃度と時間のプロフィールを図1に示す通り得た。HP-55及びEudragit L100 消化管粘膜付着送達システムの場合には共に、血漿FL濃度は犬への経口投与後1時間及び1.5時間で増加し始め、各々2時間及び3時間でピーク(Cmax)に達した。しかしながら、Eudragit S100 消化管粘膜付着送達システムの場合には、約2時間の吸収の時間の遅れが存在した。その後、血漿FL濃度は増加し始め、5時間でCmaxに達した。ノンコンパートメント薬物動態解析法によりこれらのデータを解析し、その結果を表1に示す。HP-55及びEudragit L100 消化管粘膜付着送達システムの間では、AUC値について有意な差異はない。しかし、Eudragit S100 消化管粘膜付着送達システムからのAUCは他のものよりも有意に小さかったが、これは、小腸下方部への送達のために吸収の時間の大きな遅れが存在し、FLの吸収が経口投与後8時間以内に終わらなかったためである。この試験は予備的なものであったので、血液採取は8時間で行った。3種類の消化管粘膜付着送達システムからのFLのバイオアベイラビリティーを測定するために、FLを同じ犬にiv投与し、その結果を図1に示す。同量のFLのiv注射後に得たAUC値を比較することによって、3種類の製剤からのFLのバイオアベイラビリティーは各々、79.1±7.59%、85.1±7.85%及び56.1±8.16%であると計算された。
【0048】
【表1】
Figure 0004497725
【0049】
G−CSFで製剤化した消化管粘膜付着送達システムの薬物動態試験
FLを用いた試験に基づき、消化管粘膜付着送達システムをタンパク質に適用した。大腸送達システムを含む経口送達システムに製剤化したG−CSFの薬物動態評価について多くの研究を行ってきたので、G−CSFをモデルタンパク質として使用した。125μgの量のG−CSFを3種類の消化管粘膜付着送達システムの中に製剤化し、犬に経口投与した。図2は、G−CSFの薬理学的活性の時間曲線を示す。投与後、WBCは、HP-55消化管粘膜付着送達システムの場合の投与前値と比較して1.4倍に増加した。しかし、WBCは、HP-55消化管粘膜付着送達システムよりもEudragit L100消化管粘膜付着送達システムにおいて、約1.7倍増加した。Eudragit S100消化管粘膜付着送達システムの場合には、WBCは、Eudragit L100 消化管粘膜付着送達システムの場合に見られたほどは増加しなかった。3種類の粘膜付着送達システムからのG−CSFの薬理学的アベイラビリティー(PA)を測定するために、同量のG−CSFを同一の犬に注射し、G−CSFの薬理学的活性をモニターした。挿入図は結果を示す。全WSCの増加倍率の面積を比較することによって、3種類の消化管粘膜付着送達システムのPAは、HP-55 消化管粘膜付着送達システムでは5.5%であり、 Eudragit L100 消化管粘膜付着送達システムでは23%であり、そしてEudragit S100 消化管粘膜付着送達システムでは6.0%であった。
【0050】
G−CSFの薬理学的作用の投与量依存性を調べるために、90μgのG−CSFをEudragit L100消化管粘膜付着送達システム中に製剤化し、同じ犬に経口投与した。結果を図に示す。全WBCの増加は、125μgの投与量の試験から推測されるものよりも低く、最大増加量は投与前水準と比較して1.2倍であった。
【0051】
消化管粘膜付着送達システムでは、界面活性剤(HCO-60)、及び有機酸(クエン酸)等の添加剤を製剤化した。従って、G−CSFの薬理活性に対する添加剤の影響を調べるために、クエン酸の添加量を200mgから150及び100mgに減少し、ここで界面活性剤 (HCO-60)の量は100mgで一定とした。図3に示す通り、クエン酸の製剤化量を200mgから150mgに減少した場合、G−CSFのPAは減少した。しかし、PAは、クエン酸の添加量を150mgから100mgに減少しても有意には変化しなかった。一方、G−CSFのPAに対するHCO−60の増大作用は、HCO−60の添加量を100mgから50mgに減少することにより明白に減少した。
【0052】
犬への経口投与後のG−CSFの薬物動態試験
125μgのG−CSFを含むEudragit L100消化管粘膜付着送達システムはG−CSFの最高のPAを示したので、同じ製剤を犬に投与し、血漿G−CSF 濃度をELISA法で測定した。図4に示す通り、血漿G−CSF濃度は経口投与後に増加し始め、1時間でピーク値である100pg/mlに達した。その後、血漿G−CSF濃度は急速に減少した。これらの結果は、G−CSF が消化管から吸収され、未変化体のまま全身循環に入っていることを強く示唆する。
【0053】
ラットの消化管におけるフィルムの保持と通過の測定
3種類の消化管粘膜付着送達システムの付着性を測定するために, 3種類の小型の着色生体付着性フィルム(1.0×2.0mm)を調製し、試験フィルムをラットの十二指腸に投与した。生体付着性フィルムの保持/通過を図5に示す通り腹腔切開によりモニターした。 HP-55生体付着性フィルムについては、投与したフィルムの大部分が小腸のセクション#1、即ち、十二指腸で投与後1時間及び2時間に検出された。さらに、フィルムは約3時間十二指腸に接着していた。しかし、投与の4時間後、10枚のフィルムのうちの8枚は、ラットの小腸のセクション#2に移動し、その後、小腸の下部に移動した。Eudragit L100生体付着性フィルムの場合、フィルムは投与2時間以内に小腸#1から消失し、約2時間セクション#2に保持された。その後、フィルムは小腸セクション#3及び#4に徐々に移動した。一方、Eudragit S100生体付着性フィルムはセクション#1から#4に徐々に移動した。これには約3時間かかった。その後、フィルムはセクション#5に付着し、約3時間そこに保持された。
【0054】
実施例B
実施例1
保護層(基底層)のECフィルム(16cm×1.6cm)にHIVISWAKO 103糊を塗った。同じサイズのティッシュペーパーに薬液をしみこませた。薬液は、1.25mg/mlのG−CSF溶液100μl、HCO−60(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体)100mgとクエン酸200mgを水200μlに溶解して調製した。ティッシュペーパーを乾燥後、前記ECフィルムに貼り付けて薬物担持層(中間層)とした。同じサイズのHP−55製フィルムにHIVISWAKO 103糊をぬり、中間層に貼り付けて付着部位制御層(表層)とした。得られた3層から成るフィルムを3.0×3.0mmの小片に切断し、ケイ酸マグネシウム粉末で切断面を被覆した後、HP−55製のカプセルに充填した。空隙部分に乳糖を充填することにより経口貼付DDS製剤を得た。
【0055】
実施例2
実施例1と同様に経口貼付DDS製剤を作製したが、薬物担持層(中間層)を作成するときに、薬液中にウルソデオキシコール酸の100mg、アプロチニン(加水分解酵素の阻害剤)の2000単位を添加した。
【0056】
実施例3
ゲル性の薬物担持層(中間層)を先ず作製した。インジナビル(100mg)を水(0.8ml)とポリエチレングリコール400(100μl)で混和した後、HIVISWAKO 103の300mgを加えた。得られた混合物をよく練って糊状とした。実施例1と同じサイズのECフィルム(基底層)にインジナビル含有糊をぬりつけた。表層フィルムとしてHP−55フィルムをはりつけた。その後、実施例1と同様のケイ酸マグネシウム処理を行い、得られたフィルムを適量の乳糖と一緒に、サイズ0号のHP−55製腸溶性カプセルの2カプセルに充填した。
【0057】
実施例4
実施例3と同様にインジナビルの経口貼付DDS製剤を作製したが、薬物担持層(中間層)を作製するときにP−gpトランスポーターの阻害剤であるシクロスポリン200mgを薬液に添加した。
【0058】
実施例5
エチルセルロース(EC)(550mg)及びクエン酸トリエチル50μlを塩化メチレンとメタノール(4:1)の混合物5mlに溶解した。得られた溶液を10×10cmのテフロン板に流し込み、溶媒を蒸発させて、ECフィルムを作成した。ECフィルムを200μmの最大径と80μmの高さの突起を有する175℃に予め加温しておいた金型に載せて、10分間プレスした。フィルムを室温に冷却して、マイクロ容器の形状を有するECフィルムを作成した。薬物としてG−CSF(100μl)、HCO−60(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体)50mg及びクエン酸200mgを水1mlに溶解して薬液を調製した。薬液を凍結乾燥し、粉末状の薬物をマイクロ容器の形状を有するECフィルムに乗せ、ステンレス製ヘラにてマイクロ容器内に均等に入れた。EC板上に残った粉末をステンレスブラシにて掃き取った。腸溶性ポリマーであるHP−55製の表層フィルムを作成するために、HP−55(300mg)、クエン酸トリエチル50μlを塩化メチレンとメタノール(4:1)の混合物10mlに溶解した。得られた溶液を15×15cmのテフロン板に流し込み、溶媒を蒸発させて、HP−55フィルムを作成した。接着用の糊としては、0.8gのHIVISWAKO103、蒸留水2ml、250μlのポリエチレングリコール400を乳鉢内にて乳棒で攪拌した。HP−55フィルムにこの接着用の糊をぬり、マイクロ容器の中に薬物を入れたECフィルムに貼り付けた。顕微鏡下、得られた層状のフィルムを、マイクロ容器の周りで約500×500ミクロンもしくは直径約500ミクロンの円状に切断し、三層構造を有する不均一マイクロカプセル剤を得た。切断は、UVレーザーマーキングマシンLYH-100AA (牛尾電気製)を用いてレーザーにより、YAGレーザー4倍高モジュール波、波長266nm、ビーム幅約30μm及び出力105mV×0.77秒で、記述表示「0」を追跡する方法で行った。
【0059】
実施例6
常法(大山孝雄ら、移植vol.34, No.4, pp.174-185, 1999)により、ラット膵臓ランゲルハンス島を得る。膵臓ランゲルハンス島を分散させた1%カルボキシメチルセルロース液をマイクロインジェクター内に充填する。実施例5と同様に作成したECフィルム上のマイクロ容器内に顕微鏡下で膵臓ランゲルハンス島をマイクロインジェクターで注入する。実施例5で作成したのと同様にして、HP−55フィルムを作成する。HIVISWAKO 103糊をHP−55フィルムに塗布し、マイクロ容器の中に生細胞を入れたECフィルムに貼り付ける。得られた層状のフィルムを、顕微鏡下で、マイクロ容器の周りを約500×500ミクロンもしくは直径500ミクロンの円状に切断し、三層構造を有する不均一マイクロカプセル剤を得る。
【0060】
試験例1:インビボのバイオアベイラビリティの評価
方法
上述の実施例1〜4で調製した経口貼付DDS製剤をビーグル犬に経口投与した。投与後、経時的に循環血液を採取し、G−CSF製剤を用いた場合には薬効の指標として、循環血液中の白血球数を測定した。G−CSF製剤及びインジナビル製剤の投与量は、各々125μg/犬、及び100mg/犬とした。ビーグル犬は体重10〜11kgの雄成犬を絶食条件下にて用いた。
G−CSF製剤の薬効薬理試験の結果を以下の表2に示す。
【0061】
【表2】
Figure 0004497725
【0062】
G−CSF液剤は市販のG−CSF注射剤をHP−55にて調製した腸溶性カプセルに充填した製剤である。
投与前におけるビーグル犬の循環血液中白血球数を基本(100%)として、それ以降の白血球数の推移を相対的な値としてあらわす。
【0063】
インジナビル製剤を投与した際の実験結果を以下の表3に示す。
【0064】
【表3】
Figure 0004497725
【0065】
実施例C
10,000,000IU/mlのインターフェロン−αの溶液をG−CSF溶液の代わりに使用した以外は実施例Aと同様の方法で、インターフェロン−αを含有する消化管粘膜付着送達システムを調製し、ビーグル犬1頭当たり5,000,000IUのインターフェロン−α(0.5mlの溶液)を投与した。血清中インターフェロン−α濃度を実施例Aと同様に評価した。得られたデータを以下の表4に示す。
【0066】
【表4】
Figure 0004497725
【0067】
実施例D
エチルセルロース(EC)(550mg)及び150μlのクエン酸トリエチルを塩化メチレン及びメタノール(4:1)の混合物5mlに溶解した。得られた溶液を9.0cm×9.0cmのテフロンプレート上にキャストし、ECフィルムを形成した。ECフィルムを3.0cm×5.0cmのアクリル性の枠上に置いた。100mgのポリアクリル酸、1gのHCO-60及び2gのクエン酸を水に溶解し、全量10mlの溶液を調製した。得られた溶液1.5mlと、PBS中に750μgのp24抗原及び150μgのコレラ毒素を含有する溶液0.52mlとを添加した。試料を一晩冷蔵庫で保存し、フィルムを形成した。EudragitR Lで調製したフィルムをその上に付着させ、その後、得られた層状のフィルムをより小さいサイズの15片に切断し、各断片をさらに1.0mm×1.0mmに切断した。切断面は、ケイ酸マグネシウム粉末及びステアリン酸微粉末で被覆した。
【0068】
【産業上の利用可能性】
遺伝子組み換え技術により有用な生理活性を有する各種の蛋白質やペプチドの大量生産が可能になったが、それらの投与経路は注射に限られている。患者のQOL(quality of life)を考えると、投与形態は経口剤が好ましい。しかし、蛋白やペプチドは、胃および小腸において胃酸、ペプシン、膵臓由来の蛋白分解酵素により消化管管腔内における加水分解を受けてしまう。
【0069】
本発明によれば、保護層としての水不溶性ポリマーもしくはワックスが、消化管管腔側における消化酵素の攻撃を阻止する。また薬物担持層中に含まれる粘着剤(例えば、ポリアクリル酸系ポリマーなど)は、加水分解酵素に対して阻害作用を有し、消化管粘膜に存在する加水分解酵素による加水分解に対しても抵抗性を発揮することができる。さらに、各種の加水分解酵素阻害剤を配合することにより、薬物の効果をより強くかつ長く維持することができる。
【0070】
また、吸収された後、消化管内へ再び排出される薬物のバイオアベイラビリティを改善することができる。シクロスポリンや、抗エイズ薬のプロアテーゼ阻害剤であるサキナビルは、消化管上皮細胞中に発現しているP−gpにより消化管内へ再び排出されるために、バイオアベイラビリティが低いといわれている。P−gpの阻害剤を通常の製剤で配合しても、製剤が消化管を下って移動していくため、薬物の吸収された部位で効率良く阻害をかけることができない。本発明の経口貼付型DDS製剤にP−gpの阻害剤を配合することにより、付着部位に排出トランスポータ阻害剤が長時間滞留でき、薬物のバイオアベイラビリティの改善が可能となる。
【0071】
また、経口投与した抗原は十分に吸収されないため、十分な感作を達成することができない。本発明によれば、抗原を効率良く吸収させ、感作の効率を改善することができる経口ワクチンを開発することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、消化管(GI)粘膜送達システム中のフルオレセイン(FL)をビーグル犬に対して静脈内(1mg)及び経口(30mg)投与した後の血漿フルオレセイン(FL)濃度曲線を示す。図中、□:HP−55Rシステム、○:EudragitR L100システム、及び◇:EudragitR S100システム。各々の値は3又は4個の被験体の平均±S.E.を示す。
【図2】 図2は、消化管粘膜送達システム中のG−CSFをビーグル犬に対して静脈内及び経口投与した後の全白血球細胞(WBC)動態を示す。図中、□:HP−55Rシステム、○:EudragitR L100システム、及び◇:EudragitR S100システム。各々の値は3個の被験体の平均±S.E.を示す。
【図3】 図3は、EudragitR L100 消化管粘膜送達システム中のG−CSF(125μg)をビーグル犬に対して経口投与した後のWBC動態に及ぼすHCO−60R及びクエン酸の影響を示す。図中、△:HCO−60R/クエン酸(100/100)、□:HCO−60R/クエン酸(100/150)、○:HCO−60R/クエン酸(100/200)、及び◇:HCO−60R/クエン酸(50/200)。各々の値は3個の被験体の平均±S.E.を示す。
【図4】 図4は、EudragitR L100 消化管消化管粘膜送達システム中のG−CSFをビーグル犬に対して経口(125μg)投与した後の血漿G−CSFの濃度/時間曲線を示す。各々の値は3個の被験体の平均±S.E.を示す。
【図5】 図5は、十二指腸内投与後におけるラットの腸管における、(a)HP−55R、(b)EudragitR L100、(c)EudragitR S100−消化管粘膜送達システムの分布を示す。小腸は5つのセクションに分け、各セクションの長さは12〜15cmとした。

Claims (10)

  1. 消化管の選択した部位に製剤を付着させるための腸溶性ポリマーフィルムからなる付着部位制御層、薬物と粘着剤とを収容するための薬物担持層、および薬物担持層の薬物を保護するための水不溶性ポリマーまたはワックス類から成るフィルムまたはカプセルからなる保護層を有し、薬物担持層が保護層と付着部位制御層との間に存在する、消化管用薬物送達経口製剤をカプセルに充填することにより調製される経口カプセル製剤。
  2. 付着部位制御層、薬物担持層および保護層がそれぞれフィルム状であり、上記3層が積層して構成されている、請求項1に記載の経口カプセル製剤。
  3. 付着部位制御層、薬物担持層および保護層の厚さがそれぞれ20〜100μmである、請求項2に記載の経口カプセル製剤。
  4. 保護層が半球形態を形成し、当該半球形態の保護層の内部空間に薬物担持層が存在し、当該半球形態の保護層の開口部分を付着部位制御層が被覆してなる、請求項1に記載の経口カプセル製剤。
  5. 半球内部の深さが50〜500μmであり、半球の開口部の内径が20〜800μmであり、保護層および付着部位制御層の厚さがそれぞれ20〜100μmである、請求項4に記載の経口カプセル製剤。
  6. 薬物担持層が、薬物で含浸した多孔質シート状基材、または薬物を含有するゲルもしくはワックスのシートもしくはフィルムである請求項1に記載の経口カプセル製剤。
  7. 薬物担持層が、吸収促進剤、プロテアーゼ阻害剤またはトランスポーター阻害剤から成る群から選択される1種以上の成分をさらに含む、請求項1に記載の経口カプセル製剤。
  8. 薬物が生理活性蛋白質またはペプチドである、請求項1に記載の経口カプセル製剤。
  9. 薬物がG−CSF、インターフェロンまたはインジナビルである、請求項1に記載の経口カプセル製剤。
  10. 腸溶性カプセルである、請求項1に記載の経口カプセル製剤。
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