JP4507328B2 - 操作性に優れたベンジルアルコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はベンジルアルコールの製造方法に関するものである。更に詳しくは、酢酸ベンジルをメタノールでエステル交換させて得られるベンジルアルコールの製造方法に関するものである。
【0002】
ベンジルアルコールは、溶解性に優れた溶剤であり、塗料、樹脂の剥離剤、光沢付与剤、香料の揮発保留剤、写真の発色現像助剤等の用途のほかに、無毒性のため医薬用添加物、農薬や医薬等の中間体としても極めて重要な化合物である。
【0003】
【従来の技術】
ベンジルアルコールを製造する方法としては、次の方法が知られている。
【0004】
1)ベンジルクロライドを苛性ソーダで加水分解する方法。
【0005】
2)ベンズアルデヒドを触媒存在下で水素還元する方法。
【0006】
3)酢酸ベンジルを触媒存在下で加水分解する方法。
【0007】
4)酢酸ベンジルとアルコールとのエステル交換反応法。
【0008】
上記1)の方法は、ベンジルクロライドと当量以上のNaOHを使用するため有機物を含む多量の食塩水が副生し、その廃水処理が大変である。2)の方法は、原料のベンズアルデヒドが比較的高価であり、経済的でない。3)の方法は、平衡転化率が低く、また多量の水を使用するため分離精製工程が複雑で多量のエネルギーを消費するなど工業的に問題点が多い。
【0009】
これらに対して4)の方法は、平衡転化率が高く、かつ反応も速いため反応蒸留方式を用いれば容易に高転化率が得られる有効な方法である。その例として、酢酸ベンジルをメタノールでエステル交換させてベンジルアルコールを製造する方法が、特開平10−168007号公報に記載されている。この方法は、酢酸ベンジルを反応蒸留塔の上部から供給し、メタノールを反応蒸留塔の下部から供給して、塩基性触媒の存在下、酢酸ベンジルとメタノールを向流的に接触反応させ、酢酸メチルとメタノールを主成分とする塔頂留分と、メタノールとベンジルアルコールを主成分とする塔底液を得、反応蒸留塔の塔底液をメタノール分離塔に供給し蒸留して、メタノールを主成分とする塔頂留分とベンジルアルコールを主成分とする塔底液に分離し、メタノール分離塔の塔頂液を反応蒸留塔へ循環させ、メタノール分離塔の塔底液をアルコール精製塔に供給し蒸留してベンジルアルコールを得る方法である。この方法は、酢酸ベンジルの転化率が高く、ベンジルアルコールが高収率で得られる点で工業的に優れた方法である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−168007号公報に記載の方法は、原料の酢酸ベンジルやメタノール中に不純物として酢酸や安息香酸等の酸性物質又は水を多く含む場合には、触媒が失活したり、塔内で固形物が析出して閉塞トラブルを招くことがあり、反応蒸留塔の操作安定性において十分ではなかった。このため、これらの不純物を多く含む場合は、前もってトラブルが起きないように、これらの不純物を分離除去する必要がありプロセスの経済性に問題があった。
【0011】
また、酢酸ベンジルからの分離除去が極めて困難で、かつ反応中に触媒と塩を形成するような化合物が混入した場合、同公報に記載の技術では対応できない場合があった。例えば、不純物として、オルソ体、メタ体、パラ体のクレシルアセテート類を含む場合がそれに該当する。クレシルアセテート類を含む場合は、原料の酢酸ベンジルとの沸点差が2〜7℃と小さいため(標準沸点差で2〜7℃)、前もって蒸留分離することが困難である。原料の酢酸ベンジル中にクレシルアセテート類を含んだまま使用すると、エステル交換や鹸化反応によってこれらクレシルアセテート類が弱酸性のクレゾール類へ転化され、その結果、酢酸や安息香酸を含む場合と同様なトラブルを招くことが避けられなかった。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、原料中に含まれる不純物の許容濃度が高く、操作安定性に優れた高純度ベンジルアルコールの経済的製造法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、反応蒸留塔において、酢酸ベンジルとメタノールをエステル交換反応させる方法を改良することによって、原料中の水や不純物に対して閉塞トラブルの心配がない操作安定性に優れたエステル交換反応法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、酢酸ベンジル、メタノール、水及び塩基性触媒を反応蒸留塔に供給し、塩基性触媒の存在下で酢酸ベンジルとメタノールを接触反応させベンジルアルコールを製造する方法において、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より上部に酢酸メチルとメタノールの精留部を設け、塔頂混合物の一部を還流すること、かつその際の還流比Xと酢酸ベンジルの供給量に対するメタノールの供給量をモル比で表す値Yとの関係が次式
Y≧1.507+0.662/(X+0.444)
(式中、X>0)
の関係にあることを特徴とするベンジルアルコールの製造方法である。
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
【0016】
酢酸ベンジルを塩基性触媒の存在下でメタノールと反応させて、ベンジルアルコールと酢酸メチルを得るエステル交換反応は、平衡反応である。平衡をずらして反応を有利に行うために原料の酢酸ベンジルに対してメタノールを過剰に使用し、蒸留塔を使用してもう一方の生成物の酢酸メチルを除去しながら反応を行わせる。メタノールは、反応によって生成する酢酸メチルと最低共沸混合物を形成する。(オーム社、有機合成化学協会編「溶剤ポケットブック」によれば、メタノールの共沸組成は19.5wt%で、共沸温度は54℃である。)したがって、留出する塔頂混合物中のメタノール濃度はこの共沸組成以上であり、残りのメタノールが塔底から排出されることになる。
【0017】
本発明の特徴の一つは、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より上部に酢酸メチルとメタノールの精留部を設け、塔頂混合物の一部を還流することであり、もう一つの特徴は、反応蒸留塔へ供給する酢酸ベンジルの供給量に対するメタノールの供給量の比(モル比で表し、以下原料モル比と呼ぶ)を、そのときの還流比(一般の定義と同じく、留出量に対する塔内へ還流する還流量の比をいう)に見合った原料モル比にすることである。
【0018】
本発明の方法によれば、触媒やメタノール等と共に反応蒸留塔内に水が持ち込まれその結果生成する塩類や、原料中の不純物と触媒が反応して生成する塩類の析出によって塔内がスケーリングしたり閉塞したりすることがなく安定した運転ができ、経済的に高転化率で酢酸ベンジルをベンジルアルコールに変えることができる。
【0019】
本発明において使用する原料の酢酸ベンジルとしては、その製法は問わないが、不純物としてフェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル又はカルボン酸等を含む酢酸ベンジルからエステル交換によってベンジルアルコールを製造するときに、本発明は特に効果を発揮する。具体例を挙げると、トルエンの酸化アセトキシル化法によって製造される酢酸ベンジルを原料として用いる場合等である。これら酢酸ベンジル中の不純物は、塩基性触媒と反応し触媒を消費するため少ないほど好ましいが、前述したようにクレシルアセテート類のような分離が困難な不純物については、その許容量の大小がプロセス存続の鍵を握る。本発明の方法によれば、酢酸ベンジル中のクレシルアセテート類の許容濃度は十分に高く、1wt%含有していても閉塞トラブルを起こすことなく目的の反応が可能である。また、安息香酸の場合は0.1wt%、酢酸の場合は1wt%含有していても実用上問題がないなど他の不純物の許容濃度も高い。もう一つの原料であるメタノールは、余剰分を蒸留回収する一方、エステル交換して得られる生成物の一つである酢酸メチルを加水分解して、酢酸とメタノールとして回収すれば、供給量の殆どを回収し循環使用でき、メイクアップ量はわずかでよい。
【0020】
本発明の方法によれば、回収メタノールや触媒と共に反応蒸留塔へある程度の水が混入することは問題ない。本発明のように酢酸ベンジルの供給段より上部に濃縮部を設け還流することによって塔内のメタノール濃度が高められる場合には、水はメタノールとの相互作用によって原料中の不純物と触媒との反応によって生成の塩類によるスケーリングや閉塞トラブルを抑制する働きをすることがあるため、積極的に供給することもできる。しかし、多すぎると鹸化反応量が増加し、触媒失活量が増加して本来のエステル交換反応の進行が阻害され酢酸ベンジルの転化率を低下させる。その上限は要求される酢酸ベンジルの転化率によって異なるが、酢酸ベンジルの供給量に対する水の全供給量(触媒や回収メタノールと共に持ち込まれる量を含む)で表すと、通常、重量比で0.025以下、好ましくは0.02以下である。
【0021】
本発明において使用する塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルコラート等が使用できる。安価な点で水酸化ナトリウムが好適であり、取り扱いが容易なことから、その水溶液が最適である。このように水溶液の形態で触媒を使用できるのも本発明の特徴の一つである。
【0022】
塩基性触媒の使用量は、酢酸ベンジル中の不純物の種類と濃度によって変わるため一律には言えないが、酢酸ベンジルの供給量に対して塩基性触媒の供給量の比で表すと、重量比で0.00005〜0.05、好ましくは0.0005〜0.01である。
【0023】
反応器として使用する反応蒸留塔の型式は、通常の棚段塔や充填塔が使用できる。酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より上部に設ける酢酸メチルとメタノールの精留部の理論段数は、2〜20段、好ましくは3〜10段である。段数が少なすぎると精留効果がなく、塩類のスケーリングや閉塞トラブルの抑制効果が小さい。しかし段数を多くしすぎても一定の効果以上は期待できない。一方、反応蒸留塔の酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より下部の段数は、酢酸ベンジルの供給量に対する塩基性触媒の供給量及び原料モル比によって異なるが、理論段数として、3〜50段が適当である。
【0024】
本発明において、塩類による閉塞トラブルがなく高転化率で酢酸ベンジルをベンジルアルコールに変えるためには、該反応蒸留塔の塔頂の還流比Xと原料モル比Yの関係が極めて重要である。その関係は次式で表される。
【0025】
Y≧1.507+0.662/(X+0.444) (1)
(式中、X>0)。
【0026】
また、酢酸ベンジルの転化率を向上させるためには次式で表される関係が好ましい。
【0027】
Y≧1.507+0.857/(X+0.538) (2)
(式中、X>0)。
【0028】
更に好ましい関係は、次式で表される。
【0029】
Y≧1.507+0.942/(X+0.485) (3)
(式中、X>0)。
【0030】
図1に、該反応蒸留塔の塔頂の還流比X(横軸)と原料モル比Y(縦軸)の関係を図に示す。
【0031】
図中の○印は、後述の実施例をプロットしたものでいずれも閉塞トラブルがなかったところである。一方×印は、比較例をプロットしたものでいずれも反応蒸留塔内で塩類が析出して閉塞し運転が継続できなくなったところである。また、曲線は、塔内で閉塞トラブルが起きることなく運転できる境界線を示し、上式(1)の関係を表している。
【0032】
原料モル比や還流比を大きくすることは、塔内のスケーリングや閉塞トラブルを抑制し、エステル交換反応を有利に進めるが、大きくしすぎるとエネルギー消費量が増大し経済的でない。通常、実用的な原料モル比は15以下、好ましくは10以下であり、実用的な還流比は10以下好ましくは5以下である。エネルギー消費量に及ぼす該還流比の大小の影響は該反応蒸留塔のみに関係することであるのに対し、原料モル比の大小は後工程におけるメタノール回収のエネルギー消費量にも影響する。したがって、原料モル比と還流比の最適な組み合わせについては、設備費とエネルギーコストを勘案して選択するのが好ましい。
【0033】
本発明において、原料類の供給位置関係は特に限定はしない。触媒は、酢酸ベンジルとメタノールの反応を行わせるところに存在するように供給する。通常は、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)に対して、同じ位置(段)である。メタノールは同じ位置(段)か、両者の沸点を考慮してそれより下部の位置(段)に供給することができる。メタノールが十分に予熱されずに、供給する位置(段)の塔内温度より低い温度で供給される場合は酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より上部から供給することも可能である。しかしメタノールの最も好ましい供給位置(供給段)は、反応がより多く進行し、その分原料中の不純物と触媒の反応により生成する塩類も多く、該塩類の析出・スケーリングの可能性が高い酢酸ベンジルの供給位置(供給段)又はその直下付近である。したがって、好ましい位置関係は、触媒、メタノール及び酢酸ベンジルを同じ位置(段)に供給することである。更に好ましくは、触媒とメタノールの一部又は全部を予め混合した上で、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)へ供給するのが好ましい。
【0034】
反応蒸留塔の操作圧力は特に限定されないが、塔頂の主成分である酢酸メチルとメタノールの蒸気圧を考慮すると常圧で操作するのが最も合理的である。
【0035】
本発明において、反応蒸留塔の塔底から得られるベンジルアルコールとメタノールを主成分とする混合物は、ベンジルアルコールの分離精製工程へ送られ蒸留等によって不純物が除去されて製品化される。一方、反応蒸留塔の塔頂から得られる酢酸メチルとメタノールを主成分とする留出混合物は、そのままあるいはメタノールの一部を蒸留分離した後、酢酸メチルの加水分解工程へ送られ、反応後酢酸とメタノールに分離回収され再利用される。
【0036】
【発明の実施の形態】
次に図面を使って、本発明の実施の形態を説明するが、これに限定されるものではない。
【0037】
図2は本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。
【0038】
図2のAは、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より上部に酢酸メチルとメタノールを精留する精留部を設置した通常の蒸留塔からなる反応蒸留塔を示す。
【0039】
導管1より原料の酢酸ベンジルを供給する。導管2より塩基性触媒を水溶液の形態で供給する。導管3、4からメタノールを供給する。導管3からはメイクアップのメタノールを供給する。導管4からは酢酸メチルの加水分解工程B及びメタノール分離工程Cにおいて回収されたメタノールを供給する。反応蒸留塔Aの塔頂から得られる酢酸メチルとメタノールを主成分とする塔頂混合物の一部は、導管6を通じて反応蒸留塔Aに還流して、塔頂混合物の組成を酢酸メチルとメタノールの共沸組成に近くなるように精留することによって塔内のメタノール濃度、とりわけ酢酸ベンジルの供給位置(供給段)近傍のメタノール濃度を高める。導管5を通じて留出の酢酸メチルとメタノールを主成分とする混合物は、酢酸メチル加水分解工程Bへ送って酢酸メチルを加水分解し、酢酸とメタノールとして回収する。酢酸メチルとして取得する場合は酢酸メチルの分離精製工程(省略)へ送って精製することもできる。反応蒸留塔Aの塔底から得られるベンジルアルコールとメタノールを主成分とする缶出混合物は、導管7を通じてメタノール分離工程Cへ供給してメタノール及び水を分離回収し、次いでベンジルアルコールの精製工程Dへ送って不純物を分離除去後ベンジルアルコールとして製品化される。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明の方法によれば、原料中に含まれる不純物や水の濃度が高くても塔内で閉塞することがなく、安定した運転のもとに、酢酸ベンジルからベンジルアルコールを経済的に製造することができる。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、これに限定されるものではない。なお、酢酸ベンジルの転化率はモル%で表わし、その他の%は重量%で表わす。
【0042】
実施例1
酢酸ベンジルの供給部より上部に濃縮部として実段数10段、下部に反応部として実段数20段のガラス製オルダーショウカラムを配し、塔頂に全縮器と還流比調整器、塔底にリボイラーを有す連続式蒸留塔を反応蒸留塔として使用した。
【0043】
不純物としてクレシルアセテート類(重量比でオルソ体:メタ体:パラ体=1:3:2)0.596%、安息香酸0.0990%、酢酸0.024%、ベンズアルデヒド0.030%、ベンジルアルコール0.238%、水分0.022%を含む酢酸ベンジル272.5g/hを反応蒸留塔に供給した。酢酸ベンジルと同じ供給部に、不純物として酢酸メチル1.96%と水分0.124%を含むメタノール118.1g/hと、47.9%のNaOH水溶液2.21g/hを供給した。酢酸ベンジルの供給量に対するメタノールの供給量の比をモル比で表した原料モル比は2.01であった。また、酢酸ベンジルの供給量に対する各原料から持ち込まれる水の合計量の比(重量比で表し、原料持ち込み水量と呼ぶ、以下同じ)は0.00503であった。塔頂の還流比を2.4に設定し、生成した酢酸メチルはできるだけ留出するようにリボイラーの炊き上げ量を調節した。リボイラー内の液温は116℃であった。定常状態に到達後、留出液と缶出液を採取し、ガスクロマトグラフィにより分析したところ、留出液の組成は、酢酸メチル75.0%、メタノール25.0%であった。平均留出量は172.9g/hであった。缶出液の組成は、酢酸メチル0.0069%、メタノール6.45%、酢酸ベンジル0.0055%、ベンジルアルコール91.42%であった。酢酸ベンジルの転化率は99.99%以上の高転化率が得られた。また、酢酸ベンジル中に安息香酸やクレシルアセテート等の不純物を高濃度含み、かつ触媒のNaOHやメタノールから多量の水が持ち込まれたにもかかわらずカラム内でのスケーリングや閉塞トラブルの気配は全くなかった。
【0044】
実施例2〜実施例9、比較例1〜比較例3
実施例1の還流比と原料モル比を変えるため、還流比とメタノールの供給量を変える以外は実施例1と同様に行った。結果を表1及び表2にあわせて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び表2から明らかなように、還流比と原料モル比を変えると、スケーリングや閉塞トラブルが生じる場合と、全くその気配がない場合があり、また原料の酢酸ベンジルの転化率も変化することがわかる。
【0048】
実施例10
実施例1の反応蒸留塔の酢酸ベンジルの供給部より5段(理論段数2〜3相当)下にメタノールの供給部を設置し、メタノールの供給部より下を15段として全体の段数は実施例1と同じにした。原料の酢酸ベンジルと47.9%のNaOH水溶液及びメタノールの供給量は実施例1と同じものをそれぞれ272.5g/h、2.21g/h、118.1g/hで供給した。塔頂還流比は2.4で行った。
【0049】
缶出液中の酢酸ベンジルの濃度は1.85%で酢酸ベンジルの転化率98.6%であった。カラム内のスケーリングや閉塞トラブルは全く認められなかった。
【0050】
実施例11
実施例1の反応蒸留塔の段数とメタノールの供給位置を変更した。酢酸ベンジルの供給部とそれより下のメタノールの供給部との間を25段とし、メタノールの供給部とリボイラーの間に5段の蒸留塔を設置し合計40段とした。原料の酢酸ベンジルと47.9%のNaOH水溶液は実施例1と同じものを同じ位置にそれぞれ207.1g/hと1.70g/hで供給した。メタノールは実施例1と同じものを125.5g/h(原料モル比2.81)で供給した。塔頂還流比は2.4で行った。
【0051】
缶出液中の酢酸ベンジルの濃度は9.73%で酢酸ベンジルの転化率は92.0%であった。カラム内のスケーリングや閉塞トラブルは全く認められなかった。
【0052】
比較例4
特開平10−168007号公報に記載の方法について比較試験するため、実施例11の反応蒸留塔の濃縮部10段を取り除き、塔頂還流を実質ゼロにした。更に実施例11の触媒を和光純薬工業株式会社の28%のナトリウムメチラートを含むメタノール溶液5.11g/hに変え、原料モル比を該公報の2.81に合わせるためメタノールの供給量を161.8g/hにする以外は実施例11と同様にした。各原料の供給開始後わずか40分で最上段(酢酸ベンジル供給部の直下)のダウンカマーがスケーリングによって閉塞し運転を継続することができなくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特徴である、閉塞トラブルなしに運転するための反応蒸留塔の塔頂還流比Xと原料モル比Yの関係を示したものである。
【図2】本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。
【符号の説明】
1〜8 導管
A 反応蒸留塔
B 酢酸メチル加水分解工程
C メタノール分離工程
D ベンジルアルコール精製工程
Claims (3)
- 酢酸ベンジル、メタノール、水及び塩基性触媒を反応蒸留塔に供給し、塩基性触媒の存在下で酢酸ベンジルとメタノールを接触反応させベンジルアルコールを製造する方法において、供給する酢酸ベンジルが、不純物としてフェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル又はカルボン酸等を含む酢酸ベンジルであり、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)より上部に酢酸メチルとメタノールの精留部を設け、塔頂混合物の一部を還流すること、かつその際の還流比Xと酢酸ベンジルの供給量に対するメタノールの供給量をモル比で表す値Yとの関係が次式
Y≧1.507+0.662/(X+0.444)
(式中、X>0)
の関係にあることを特徴とするベンジルアルコールの製造方法。 - 塩基性触媒がアルカリ金属水酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のベンジルアルコールの製造方法。
- アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載のベンジルアルコールの製造方法。
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