JP4515570B2 - プリズム破損防止機構を備える全反射吸収スペクトル測定装置 - Google Patents

プリズム破損防止機構を備える全反射吸収スペクトル測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は全反射吸収スペクトル測定装置、特に全反射吸収スペクトル測定装置のプリズム保護機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
被測定物の光学的データを得るためには、該被測定物からの反射光、あるいは該被測定物の透過光を採取する必要がある。
しかしながら、被測定物の反射光あるいは透過光を採取する手法を、高分子膜や半導体などの表面分析、あるいは著しく光の吸収の強い物質、例えば赤外域でのスペクトル測定が困難であった水溶液中の溶質の分析などに適用することは、極めて困難である。
このような一般的手法による反射光測定あるいは透過光測定が困難な被測定物に対して全反射測定法が適用される。
【0003】
この全反射測定の原理を図10を参照して説明する。
同図に於いて被測定物116上に、該被測定物116の屈折率n2よりも大きい屈折率n1を有するATR半球状プリズム118又はATR三角柱プリズム118を搭載し、外部からプリズム118に波長λの光束を入射させる。
そして、プリズム118から被測定物116に対する入射角θを臨界角θCより大きくすると、入射光は被測定物116とプリズム118の臨界面で全反射されるが、この反射点では被測定物116内に光束がわずかに進入する。この進入深さdpを光強度が1/eになる深さで定義すると、波長λの場合、進入深さdpは次の数1で示される。
【数1】
p=λ/〔2πn1{(sin2θ−(n2/n121/2
したがって、被測定物116が光を吸収すると、臨界面上で全反射される光はその分減少する。このような被測定物116とプリズム118の臨界面における全反射光の特性を解析することにより、高分子膜や半導体などの表面分析、あるいは被測定物116が著しく強い光の吸収を示す場合であっても、該被測定物116から光学的情報を得ることが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが前述のように全反射測定では被測定物の光学的データを得るためにプリズムと被測定物とを接触させて使用しており、このような接触状態のまま装置の誤った操作を行うとプリズムが破損してしまうことがあった。
また被測定物の観察条件に合わせて異なる倍率の対物鏡に切り替えることができたが、プリズムと被測定物との距離が十分でないと、切り替え作業中に被測定物とプリズムとが接触し、プリズムを破損することもあった。
このような装置の操作や対物鏡の切り替えは観察者の責任のもと、手動で行われていたが、うっかりミスや、操作ミスによってプリズムを破損してしまうこともあり、プリズムの破損防止機構を備える装置は存在しなかった。
【0005】
本発明は前記課題に鑑み為されたものであり、プリズムと被測定物間の距離を装置が検知し、その検知状態によってプリズムの破損を招くような動作を禁止するプリズム破損防止機構を備えた全反射吸収スペクトル測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明における全反射吸収スペクトル測定装置は、全反射プリズムと、被測定物を載置するステージと、前記全反射プリズムに対して前記ステージをX−Y軸方向またはZ軸方向に相対的に駆動させ得る駆動機構と、前記ステージと前記全反射プリズムの相対的駆動を操作するための操作手段と、前記ステージ上に載置された被測定物と全反射プリズムとの間の近接状態を検知する検知手段とを有する全反射吸収スペクトル測定装置において、前記検知手段によって被測定物と全反射プリズムが密接状態にあると検知された場合には、前記全反射プリズムに対して前記ステージがステージの水平方向、あるいは、被測定物と全反射プリズムとの距離を縮めようとする方向に駆動しようとすると、駆動機構を止めることによって前記動作を禁止するプリズム破損防止機構を備えたことを特徴とする。
【0007】
また本発明の全反射吸収スペクトル測定装置は、全反射プリズムを備えた複数の対物鏡と、前記複数の対物鏡を切り替え可能に保持するレボルバーと、前記レボルバーの動作を停止させる対物鏡切り替え停止機構と、被測定物を載置するステージと、前記全反射プリズムに対して前記ステージを少なくともZ軸方向に相対的に駆動させ得る駆動機構と、前記ステージと前記全反射プリズムの相対的駆動を操作するための操作手段と、前記ステージ上に載置された被測定物と全反射プリズムとの間の近接状態を検知する検知手段とを有する全反射吸収スペクトル測定装置において、前記検知手段によって全反射プリズムと被測定物の距離が対物鏡の切り替えを行った際に被測定物と全反射プリズムとが接触する可能性のある範囲にあると検知された場合には、前記対物鏡切り替え停止機構が作動し、前記レボルバーの動作を止めることによって対物鏡を切り替える動作を禁止するプリズム破損防止機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
また本発明において、前記装置には該検知手段で検知される被測定物と全反射プリズムの近接情報を受け取り、前記情報に基づいて駆動機構の動作を制御する制御機構を有し、前記制御機構は、該駆動機構が全反射プリズムとステージの間の距離を縮める駆動を行うときに、該検知手段が検知する被測定物と全反射プリズムとの近接状態に基づいて、該駆動機構の駆動速度を、ステージと全反射プリズムとの間の距離が大きいときには大きく、ステージと全反射プリズムとの間の距離が小さいときには小さくすることが好適である。
また本発明において、前記装置には仮測定において被測定物と全反射プリズムが接触するまでの全反射スペクトルに対するステージのZ軸方向相対移動量の大きさを記憶する記憶手段を有しており、該検知手段が、被測定物と全反射プリズムとの圧力を検知する圧力センサーと、前記記憶手段に記憶されたステージのZ軸方向相対移動量を読み出し、現在の全反射プリズムに対するステージのZ軸方向相対移動量と比較して残りの駆動可能Z軸方向相対移動量を演算する演算手段により構成されていることが好適である。
また本発明において、被測定物の複数点において全反射吸収スペクトルを測定する場合は、該制御機構が各測定点で該圧力センサーによって検出される被測定物と全反射プリズムとの接触圧を監視しながら、該駆動機構によって該全反射プリズムに対して該ステージをZ軸方向へ相対的に駆動させ、被測定物と全反射プリズムの接触圧が特定の圧力となったときに該駆動機構を停止させることで、各測定点で一定の接触圧で全反射スペクトルの測定を行い得ることが好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは全反射吸収スペクトル測定装置に用いられるプリズムを保護するため、プリズムが破損されるケースを分類し、そのときにどのような動作が行われるかを分析した。そして、被測定物を観察中にプリズムが破損されるケースは次の二通りであることを突き止めた。一つはプリズムと被測定物が接触中であるにもかかわらず、プリズムに対して被測定物が載置されたステージを駆動させてしまった場合、もう一つが、対物鏡を切り替える際、対物鏡の先に備えられたプリズムと被測定物が接触してしまう場合である。
【0010】
このようなケースを調べてみると、プリズムを破損する危険はプリズムと被測定物の間隔が十分とられていれば回避する事ができるものであることがわかった。そこで本発明者らは被測定物とプリズムとの距離を検知する検知手段を設け、検知手段によって検知された距離から、プリズムに対するステージの駆動または対物鏡の切り替えによってプリズムの破損の危険がある場合にはその動作を行えないように禁止するプリズム破損防止機構を装置に搭載することとしたのである。
【0011】
図1に本発明の全反射吸収スペクトル測定装置の一実施形態の概要図を示す。同図に示す全反射吸収スペクトル測定装置2は、全反射プリズムを有する対物鏡4と、被測定物を載置するステージ6と、前記全反射プリズムに対して前記ステージをX−Y軸方向またはZ軸方向に相対的に駆動させ得る駆動機構8と、前記ステージと前記全反射プリズムの相対的駆動を操作するための操作手段10と、前記ステージ上に載置された被測定物と全反射プリズムとの間の近接状態を検知する検知手段12とを有している。
【0012】
なお図2に対物鏡4の拡大構成図を示す。
同図に示すように対物鏡4は中心部に穴14が形成された凹面鏡よりなるカセグレン主鏡16と、前記カセグレン主鏡16より径の小さい凸面鏡よりなるカセグレン副鏡18が中心軸Cを一致させて対向配置されている。
また全反射プリズム20はコーン状保持枠22の先端部のカセグレン鏡の集光位置に配置されている。
【0013】
本実施形態において、図1に記載した全反射吸収スペクトル測定装置は、全反射吸収スペクトル測定を行いうる対物鏡4、ステージ6を備える顕微鏡24と、被測定物のスペクトルを測定するための光を照射し、被測定物の情報を含んだ光を検出する分光光度計26がそれぞれパーソナルコンピュータに接続されており、CPU28によって統括的に制御されて構成されている。
【0014】
本装置を用いての測定に際しては、顕微鏡24のステージ上に被測定物を載置し、はじめは可視光で被測定物観察像を観察する。被測定物の観察像は画像取込手段30によって取り込まれ、ビデオインターフェイス32によって画像がCRT34に表示されると共に、画像情報がCPU28に送られ、記憶手段36に必要な情報を記憶しておくこともできる。
【0015】
このように可視光によって観察される被測定物の拡大観察像は観察者が操作手段10を使用して顕微鏡24のステージ6を操作することにより観察部位を変更することができる。本実施形態における操作手段としては各方向別にステージを駆動させるボタンが設けられたコントローラや、ジョイスティック、またCRT上に表示された座標入力画面に座標入力することによって、ステージ上に設定された座標をに相当する被測定物の観察部位を表示する手段において使用されるキーボードやマウスなど、従来周知のステージ操作に用いられた機器や手段を適用することが可能である。
【0016】
本実施形態では観察者が操作手段10によって行ったステージ操作は、CPU28を経由して制御手段38に伝達され、制御手段38はCPU28から送られてきた情報をもとにして、駆動手段8を駆動させることでステージ6が駆動される。
【0017】
このようにしてステージを駆動させながら被測定物を観察して行き、全反射吸収スペクトルを採取すべき観察部位を決定して、その部位の全反射吸収スペクトルを測定する。
【0018】
全反射吸収スペクトルを測定する際は、観察者は全反射吸収スペクトル測定対象部位にステージ操作手段10によってステージ6を操作して全反射プリズム20を接触させる。そしてその状態で分光光度計26を作動させてスペクトルの測定を行う。
【0019】
本実施形態においては、被測定物の情報を含んだ反射光は顕微鏡内に設置された光検出器に導入されて反射光の強度が検出されるように構成されている。そして検出された光信号は、分光光度計の信号処理系に導入される。そして、検出結果はCPU28に伝達され、記憶手段36に記憶されるとともに、その検出結果を整理してスペクトル測定結果をCRT34に表示することができる。
【0020】
本発明において特徴的なことは、前述したような全反射吸収スペクトル測定過程において、常に前記検知手段12によって被測定物と全反射プリズム20の間の距離が監視されており、前記検知手段12によって被測定物と全反射プリズム20が密接状態にあると検知された場合、その情報はCPU28に伝えられ、観察者がステージ操作手段10によって、ステージを水平方向、あるいは、さらに被測定物と全反射プリズムとの距離を縮めようとする方向に駆動しようとすると、ステージを駆動させる駆動機構を止めることによって前記動作を禁止することである。
【0021】
このように本発明の測定装置は検知手段の検知結果に基づいて、全反射プリズムを破損するおそれのあるステージの操作が行われた場合でも、その動作を行えないようにステージの駆動が止められるため、観察者のうっかりミスや操作ミスによる全反射プリズムの破損を防止することが可能である。
【0022】
また図3に本発明の全反射吸収スペクトル測定装置の他の一実施形態の概要図を示す。なお図1と対応する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
同図に示す全反射測定装置40は、全反射プリズムを備えた複数の対物鏡42、44と、前記複数の対物鏡を切り替え可能に保持するレボルバー46と、前記レボルバー46の動作を停止させる対物鏡切り替え停止機構48と、被測定物を載置するステージ6と、前記全反射プリズムに対して前記ステージを少なくともZ軸方向に相対的に駆動させ得る駆動機構8と、前記ステージと前記全反射プリズムの相対的駆動を操作するための操作手段10と、前記ステージ6上に載置された被測定物と全反射プリズムとの間の近接状態を検知する検知手段12とを有している。
【0023】
なお本実施形態においても対物鏡42、44のそれぞれは図2に記載したような構成となっている。また本実施形態においても、図1に記載した全反射吸収スペクトル測定装置同様、顕微鏡50と、分光光度計26がそれぞれパーソナルコンピュータに接続されており、CPU28によって統括的に制御されて構成されており、被測定物の全反射吸収スペクトルを測定する手順は前述した図1に記載した実施形態と同様である。
【0024】
本実施形態において特徴的なことは、常に前記検知手段12によって被測定物と全反射プリズムの間の距離が監視されており、前記検知手段12によって全反射プリズムと被測定物の距離が対物鏡の切り替えを行った際に被測定物と全反射プリズムとが接触する可能性のある範囲にあると検知された場合には、その情報はCPU28に伝えられ、CPU28が前記対物鏡切り替え停止機構48を作動させ、前記レボルバー46の動作を止めることによって対物鏡を切り替える動作を禁止するプリズム破損防止機構を備えたことである。
【0025】
このように本発明の測定装置は検知手段の検知結果に基づいて、全反射プリズムを破損するおそれのある対物鏡の切り替え操作が行われた場合でも、その動作を行えないようにレボルバーが固定されるため、前述の実施形態同様、観察者のうっかりミスや操作ミスによる全反射プリズムの破損を防止することが可能である。
【0026】
前述したような2つの実施形態のように操作手段の操作によって駆動機構が駆動し、ステージが作動する装置においては、該検知手段で検知される被測定物と全反射プリズムの近接情報を受け取り、前記情報に基づいて駆動機構の動作を制御する制御機構を有し、前記制御機構は、該駆動機構が全反射プリズムとステージの間の距離を縮める駆動を行うときに、該検知手段が検知する被測定物と全反射プリズムとの近接状態に基づいて、該駆動機構の駆動速度を、ステージと全反射プリズムとの間の距離が大きいときには大きく、ステージと全反射プリズムとの間の距離が小さいときには小さくすることが好適である。
【0027】
前記実施形態において、図1に記載した装置と図3に記載した装置では共にこの制御機構をコンピューターのCPU28および制御手段38によって構成している。
このように被測定物と全反射プリズムとの距離によってステージの駆動スピードを調整する構成であれば、ステージ上に載置された被測定物と全反射プリズムを安全に接触させることができるだけでなく、被測定物と全反射プリズムが近接しているときに操作を誤ってもプリズムを破損させてしまう危険を回避することができるからである。
【0028】
なお本発明に用いられる検知手段としては、被測定物と全反射プリズムとの間の距離を検知することのできるセンサー及びステージの駆動量から計算して被測定物と全反射プリズムの間の距離を算出する演算手段など周知技術の機器あるいは技術を使用することが可能であり、複数のセンサーを組み合わせることやセンサーと演算手段を組み合わせて使用することも可能である。
前述の演算手段とはコンピュータやそれに類する計算機を意味し、駆動機構を制御しながら、ステージの駆動量を算出し得る機器である。
【0029】
なおここでは本実施形態を説明するために駆動機構がステージを駆動させる装置を例に挙げたが、本発明における駆動機構としては前記全反射プリズムに対して前記ステージを相対的に駆動させ得るものであればよく、例えばステージが固定されており、対物鏡を駆動させる構成であってもよい。
【0030】
また全反射スペクトル測定装置には被測定物の観察を行う際に対物鏡が備えるプリズムだけを視野から退避させる機構の装置も存在する。このようにプリズムを駆動させる駆動機構の装置であっても本発明を適用することが可能である。
また本実施形態では対物鏡としてカセグレン鏡を用いたものを例に挙げたが、これのみに限られるものではなく、レンズ等によって構成された対物鏡であってもよい。
【0031】
なお本発明を説明するに当たりZ軸方向、X−Y軸方向と言う語句を用いたが、この座標軸は顕微鏡の光軸と平行にZ軸をとり、そのZ軸に互いに直行するように交差するX、Y軸をとった直行座標系の座標軸とする。
以下本発明の実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
【0032】
【実施例】
実施例1
図4に本発明の実施例1の装置の概要図を示す。
同図に示す全反射吸収スペクトル測定装置52は、カセグレン主鏡及びカセグレン副鏡と、前記カセグレン鏡の集光位置に配置された全反射プリズムとからなる複数の対物鏡54と、前記複数の対物鏡を切り替え可能に保持するレボルバー56と、被測定物を載置するステージ58とを備えた顕微鏡60と、分光光度計62と、前記顕微鏡60のステージ58の駆動を操作するためのステージ操作手段としてジョイスティック64がそれそれコンピュータ66と接続されている。
【0033】
そして顕微鏡60のレボルバー56にはレボルバー56の動作を停止させる対物鏡切り替え停止機構(図示なし)がコンピュータ66と接続されており、またステージ58には前記ステージ操作手段であるジョイスティック64の操作に基づいてステージ58をX−Y軸方向またはZ軸方向に駆動させる駆動機構(図示なし)が制御手段(図示なし)を介してコンピュータ66に接続されている。
このように本発明は本実施例のように前記図1及び図3に記載した実施形態を組み合わせることも可能である。
【0034】
本実施例ではこのような構成によってジョイスティック64の操作がコンピュータ66に伝えられ、コンピュータ66から制御手段に操作情報が伝達され、ステージ駆動機構を駆動させることによってステージ操作を行うことが可能である。
また前記したように被測定物の観察画像は三眼ファインダ68の奥に記載された画像取り込み手段であるCCDカメラ70によってとりこまれ、CRT72に表示されるようになっており、その画像情報は必要に応じてコンピュータ66のハードディスクに記憶されるようになっている。
【0035】
そして本発明において特徴的な検知手段は図5に記載するような圧力センサーとコンピュータによって構成されている。
図5は本発明の実施例1に用いられた検知手段の概要図である。
同図に示すように本実施例においてはステージ58上に圧力センサー74が備えつけられており、被測定物76と全反射プリズム78が接触しているのかどうかをステージ58にかかる圧力によって検知することが可能となっている。
【0036】
また本実施例においては、より正確に被測定物76と全反射プリズム78との近接状態を検知できるように、コンピュータを使用して、ステージ58の駆動量から被測定物76と全反射プリズム78との間の距離が算出されるように構成されている。
【0037】
本実施例におけるコンピュータでの被測定物と全反射プリズムの間の距離を算出する算出法は全反射吸収スペクトルを測定する前に仮測定を行い、仮測定において被測定物と全反射プリズムが接触するまでにステージがどれだけ駆動されたかをコンピュータのメモリ80に記憶しておき、実測定においては、仮測定において記憶された全反射プリズム78と被測定物76が接触するまでのステージの駆動量から、被測定物76と全反射プリズム78との間の距離が算出されるように構成されている。
【0038】
そして本実施例では仮測定において、被測定物と全反射プリズムを接触させた際の圧力センサーで検知された圧力、およびステージの高さから、プリズムの破損される可能性のある圧力およびステージの高さが演算により決定され、自動設定されてコンピュータのメモリ80に記憶されるのである。
【0039】
なお本実施例においてはプリズムの破損される可能性のある圧力およびステージの高さが自動で設定されるように構成されているが、観察者が設定する構成であっても良い。
【0040】
このようにステージの駆動量から被測定物と全反射プリズムとの間の距離を算出するために本実施例においてはコンピュータのCPU82と制御手段84は、CPU82からジョイスティックの操作情報を制御手段84に伝達し、制御手段84から駆動機構86の駆動状況を受け取る双方向の情報伝達を行っており、さらに駆動機構86としてはステップモーターを動力として用い、ステップモータに送られた信号の数によってステージの駆動量が算出されるようになっている。
【0041】
このような構成により、本実施例は実測定においてステージが仮測定で設定された位置より高い場合、または圧力センサーによって検知される被測定物―全反射プリズム間の圧力が設定された圧力より高い場合には、ステージの水平方向にステージが駆動しようとするとステージを駆動させる駆動機構を止め、また、圧力センサーによって検知される被測定物―全反射プリズム間の圧力が設定された圧力より高い場合には、さらに被測定物と全反射プリズムとの距離を縮めようとする方向にステージの駆動しようとするとステージを駆動させる駆動機構を止めることによって前記動作を禁止することが可能である。
【0042】
また実測定において、ステージが仮測定で設定された位置より高い場合、または圧力センサーによって検知される被測定物―全反射プリズム間の圧力が設定された圧力より高い場合には、前記対物鏡切り替え停止機構を作動させ、前記レボルバーの動作を止めることによって対物鏡を切り替える動作を禁止することが可能である。
【0043】
このように、圧力センサーと演算手段による検知手段を用いると被測定物と全反射プリズムとの接触状態を圧力と駆動量から割り出すことができ、プリズムの破損防止がより正確に行えるものとなる。
【0044】
さらに本実施例では、制御機構がコンピュータと制御手段によって構成されており、仮測定によって設定されたプリズムの破損される可能性のあるステージの高さに基づいて、ステージの上昇スピードを5段階に分けて調節し、ステージと全反射プリズムとの間の距離が大きいときにはステージの駆動スピードを大きく、ステージと全反射プリズムとの間の距離が小さいときにはステージの駆動スピードを小さくするようにコンピュータによって自動で設定されるよう構成されており、その設定は制御手段に伝達され、制御手段が駆動機構を制御することによって駆動速度を制御することができるようになっている。
【0045】
なお、このようなステージ動作の禁止や対物鏡の切り替えの禁止は、検知手段によって検知された被測定物―全反射プリズム間の距離、および圧力によって行われるため、検知手段の誤作動により前記作業が禁止されたときのために、本実施例では観察者によってこれら駆動機構の動作の停止や対物鏡切り替え停止機構の動作を解除することが可能となっている。
【0046】
また全反射吸収スペクトルの測定結果は被測定物とプリズムの間の圧力に非常に大きな影響を受ける。このため本実施例においては、一度実測定で全反射吸収スペクトルが測定されると、一番はじめに測定された際の被測定物―全反射プリズム間の圧力がコンピュータによって記憶され、同一の被測定物でさらに測定を行う場合には、観察者が他のスペクトル測定部位を定めると前記制御機構によって、記憶された圧力になるようにプリズムと被測定物を接触するように自動でステージ操作を行うように構成されている。これによって同一試料で複数の測定を行う場合であっても、各測定点での全反射プリズムと被測定物との接触状態のばらつきを抑えることが可能となっている。このため直線測定、マッピング測定を行った際にも信頼性の高いデータを得ることが可能である。
【0047】
なお本実施例においてここまで説明してきた構成では、前提条件として被測定物がある程度の硬度を持っており、全反射プリズムと接触させた場合に圧力センサによって圧力が検出できることが必要となる。しかし全反射吸収スペクトルを測定する対象物には液体なども存在する。
本実施例の装置では、このような接触圧力を測定することの出来ない被測定物を測定する際には仮測定においてステージの高さを記憶しておき、実測定においては前記記憶されたステージ高さで一定に保って測定を行うように構成されている。
【0048】
また本実施例においてはプリズムの破損防止機構を用いてプリズムの破損を極力防止することが可能であるが、それでもプリズムを破損してしまったときのために、簡単にプリズムの交換を行うことができるように構成されている。
【0049】
図6に全反射吸収測定に用いられる対物鏡に備えられたプリズムの脱着機構の説明図を記載する。
従来、プリズムはプリズムホルダに接着して固定され、プリズムホルダを対物鏡の先端に固定することによって、対物鏡の集光位置にプリズムが保持されるようになっていた。そしてプリズムホルダと対物鏡は複雑な構成によって固定されており、簡単に脱着することはできないものであった。そしてこのように複雑にな構成によってプリズムホルダが固定されていたため、プリズムホルダを脱着するごとに、プリズムが対物鏡の集光位置に配置されるように光学調整を行わなければならなかったり、遮光用マスクを使用していた場合にはこれらの調整もやり直さなければならないものであった。
【0050】
ところが本実施例の装置においては、図6(a)に示す対物鏡54は先端にプリズムホルダ88が固定されており、さらにプリズムホルダ88の先端に全反射プリズム90が固定されている。このプリズムホルダ88を対物鏡54から取り外すと、図6(b)に示すように対物鏡54には複数本のピン92、94が備えられ、プリズムホルダ88はこのピンをくわえ込む穴96、98が設けられており、プリズムホルダ88と対物鏡54を固定する際には穴96、98にピンを嵌入させなければ固定することができないため、対物鏡にプリズムホルダを取り付ける際にも再現性が非常によく固定されるため、プリズムホルダを脱着させても光学調整を必要としないのである。
【0051】
さらに従来プリズムホルダに接着固定されていたプリズムは、本実施例においては図6(c)に示すように機械的な挟み込みによって簡単に固定されるようになっている。
図7は本実施形態で採用されているプリズムホルダ88のプリズムの機械的挟み込み機構を説明するための説明図である。同図(a)はプリズムホルダ88の断面概要図であり、(b)は分解図である。
【0052】
図7に示すように、プリズムホルダ88は、金属円板100、102、104の3枚の金属円板によって構成されている。そして、プリズム90は2枚の金属円板102、104によって挟み込まれ、ビス106で固定されている。なお、プリズム90を金属円板104と密着させるために、本実施形態では金属円板104とプリズム90の間には鉛製のスペーサ108をはさみ込んでいる。
【0053】
また図6で説明したように、ピン92、94を嵌入させる穴96、98を有する金属円板100とプリズムを挟み込む一方の金属板102は、あらかじめ2枚組み合わされており、プリズム位置微調整ネジ110によって固定されている。プリズム位置微調整ネジ110は円板100に円板102を保持させると共に、同図(a)にあるようにプリズムが固定された際に、プリズム位置微調整ネジ110を締める、あるいは緩めることによってプリズムの位置を微調整可能としている。なお同図ではプリズムホルダ88の断面図を用いて説明しているため、ビス106と、プリズム位置微調整ネジ110は1つずつしか記載されていないが、本実施形態ではそれぞれのビス、及びネジが等間隔に3箇所設けられている。
【0054】
このような構成によって測定中にプリズムを破損してしまった場合でも対物鏡からプリズムホルダを取り外し、破損したプリズムを新しいプリズムと交換して、再び対物鏡の先端にプリズムホルダを取り付ければよく、簡単にプリズムの交換ができるように構成されている。
【0055】
なお本実施例においては検知手段として圧力センサー及びコンピュータを使用したが本発明はこれのみに限られるものではない。以下、被測定物と全反射プリズムとの間の距離を検知する検知手段の実施例をいくつか説明する。
【0056】
実施例2
実施例1の装置において検知手段を分光光度計とコンピューターによって構成した。
図8は本発明の実施例2に用いられた検知手段の概要図である。図8において図4及び図5と対応する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
同図(a)に示すように本実施例においてステージを駆動させるときに、分光光度計62を作動させておく。
図7(a)に示すように、被測定物76と全反射プリズム78とが接触していない状態においては分光光度計62より照射される光はほぼ100%がプリズムによって反射され、検出される。
【0058】
ところが図7(b)に示すように、被測定物76と全反射プリズム78とが接触すると、被測定物76が示す特性に応じた波長の光が照射されれば、照射した光は被測定物に吸収を受けて検出される。
【0059】
そこで仮測定において、被測定物76のバックグラウンドを表す信号を割り出しておき、その信号を感知するための適当な波長を選択し、実測定においてステージ操作を行う際には、前記選択された波長光を使用して信号変化を読みとるのである。
【0060】
なお、ここで言うところのバックグラウンドを表す信号を割り出すとは、例えば被測定物として紙にインクの汚れがついたものを用いる場合、仮測定において紙が示す特徴的な吸収ピークを示す波長を割り出すことであり、また被測定物が水溶液である場合、仮測定において水が示す特徴的な吸収ピークを示す波長を割り出すというように、被測定物を測定する際に必ず現れる吸収ピークを示す波長を割り出すことである。
【0061】
また実施例2ではこのように分光光度計を使用して被測定物と全反射プリズムの接触を検知すると共に、実施例1同様、より正確に被測定物と全反射プリズムとの近接状態を検知できるように、コンピューターを使用して、ステージの駆動量から被測定物と全反射プリズムとの間の距離が算出されるように構成されている。
【0062】
実施例3
実施例1の装置において検知手段を接触感知センサーよって構成した。
図9は本発明の実施例3に用いられた検知手段の概要図である。なお同図において図5と対応する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
同図に示すように本実施例においてはステージ58の一部に、接触電極112が設けられており、この電極は常にプラスに帯電されている。
またステージ58のZ軸方向に沿って感知電極群114が等間隔に微小な距離を置いて配置されており、この電極群はすべて常にマイナスに帯電されている。そして、ステージ58が駆動されると、ステージ58に設けられた接触電極112と接触する感知電極114が順時変化していくため、どの感知電極114と接触しているのかを割り出すことによって現在のステージの高さを検知することができるのである。
【0064】
よって、仮測定において被測定物と全反射プリズムが接触したステージの高さを記憶しておけば、本実施例の装置では、全反射プリズムの高さは固定されて構成されているから、被測定物と全反射プリズムとの間の距離はステージの高さを検知することによって割り出すことができるのである。
【0065】
なお本発明はここで説明した検知手段、及び装置に限られるものではなく、検知手段としては全反射プリズムと被測定物の間の距離を演算、または検知可能な手段あるいは機器を使用することが可能であり、装置全体においてもコンピューター、分光光度計、顕微鏡などを一体にして製造することもでき、様々な形態をとることが可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる全反射吸収スペクトル測定装置によれば、被測定物と全反射プリズムとの間の距離を検知し、検知された距離に応じて、プリズムを破損する危険のある装置の動作を行わないこととしたので、観察者のうっかりミスや、誤操作によって全反射プリズムを破損することを防止する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の全反射吸収スペクトル測定装置の一実施形態の概要図である。
【図2】図2は対物鏡4の拡大構成図である。
【図3】図3は本発明の全反射吸収スペクトル測定装置の他の一実施形態の概要図である。
【図4】図4は本発明の実施例1の装置の概要図である。
【図5】図5は本発明の実施例1に用いられた検知手段の概要図である。
【図6】図6は全反射吸収測定に用いられる対物鏡に備えられたプリズムの脱着機構の説明図である。
【図7】図7は本実施形態で採用されているプリズムホルダ88のプリズムの機械的挟み込み機構を説明するための説明図である。
【図8】図8は本発明の実施例2に用いられた検知手段の概要図である。
【図9】図9は本発明の実施例3に用いられた検知手段の概要図である。
【図10】図10は全反射測定の原理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
2 全反射吸収スペクトル測定装置
4 対物鏡
6 ステージ
8 駆動機構
10 ステージ操作手段
12 検知手段
14 穴
16 カセグレン主鏡
18 カセグレン副鏡
20 全反射プリズム
22 コーン状保持枠
24 顕微鏡
26 分光光度計
28 CPU
30 画像取込手段
32 ビデオインターフェイス
34 CRT
36 記憶手段
38 制御手段
40 全反射吸収スペクトル測定装置
42、44 対物鏡
46 レボルバー
48 対物鏡切り替え停止機構
50 顕微鏡

Claims (4)

  1. 全反射プリズムと、
    被測定物を載置するステージと、
    前記全反射プリズムに対して前記ステージをX−Y軸方向またはZ軸方向に相対的に駆動させ得る駆動機構と、
    前記ステージと前記全反射プリズムの相対的駆動を操作するための操作手段と、
    前記ステージ上に載置された被測定物と全反射プリズムとの間の近接状態を検知する検知手段と、
    該検知手段で検知される被測定物と全反射プリズムの近接情報を受け取り、前記情報に基づいて駆動機構の動作を制御する制御機構と、
    を有する全反射吸収スペクトル測定装置において、
    前記制御機構は、該駆動機構が全反射プリズムとステージの間の距離を縮める駆動を行うときに、該検知手段が検知する被測定物と全反射プリズムとの近接状態に基づいて、該駆動機構の駆動速度を、ステージと全反射プリズムとの間の距離が大きいときには大きく、ステージと全反射プリズムとの間の距離が小さいときには小さくすることを特徴とする全反射吸収スペクトル測定装置。
  2. 全反射プリズムを備えた複数の対物鏡と、
    前記複数の対物鏡を切り替え可能に保持するレボルバーと、
    前記レボルバーの動作を停止させる対物鏡切り替え停止機構と、
    被測定物を載置するステージと、
    前記全反射プリズムに対して前記ステージを少なくともZ軸方向に相対的に駆動させ得る駆動機構と、
    前記ステージと前記全反射プリズムの相対的駆動を操作するための操作手段と、
    前記ステージ上に載置された被測定物と全反射プリズムとの間の近接状態を検知する検知手段と、
    を有する全反射吸収スペクトル測定装置において、
    前記検知手段によって全反射プリズムと被測定物の距離が対物鏡の切り替えを行った際に被測定物と全反射プリズムとが接触する可能性のある範囲にあると検知された場合には、前記対物鏡切り替え停止機構が作動し、前記レボルバーの動作を止めることによって対物鏡を切り替える動作を禁止するプリズム破損防止機構を備えたことを特徴とする全反射吸収スペクトル測定装置。
  3. 請求項に記載の全反射吸収スペクトル測定装置において、
    前記装置には仮測定において被測定物と全反射プリズムが接触するまでの全反射スペクトルに対するステージのZ軸方向相対移動量の大きさを記憶する記憶手段を有しており、
    該検知手段が、被測定物と全反射プリズムとの圧力を検知する圧力センサーと、前記記憶手段に記憶されたステージのZ軸方向相対移動量を読み出し、現在の全反射プリズムに対するステージのZ軸方向相対移動量と比較して残りの駆動可能Z軸方向相対移動量を演算する演算手段により構成されていることを特徴とする全反射吸収スペクトル測定装置。
  4. 請求項及びに記載の全反射吸収スペクトル測定装置において、
    被測定物の複数点において全反射吸収スペクトルを測定する場合は、該制御機構が各測定点で該圧力センサーによって検出される被測定物と全反射プリズムとの接触圧を監視しながら、該駆動機構によって該全反射プリズムに対して該ステージをZ軸方向へ相対的に駆動させ、被測定物と全反射プリズムの接触圧が特定の圧力となったときに該駆動機構を停止させることで、各測定点で一定の接触圧で全反射スペクトルの測定を行い得ることを特徴とする全反射吸収スペクトル測定装置。
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