JP4536697B2 - デコンプ装置付きカム機構 - Google Patents

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Description

この発明は、エンジン始動時の燃焼室内の圧縮圧力を逃がすデコンプ装置(デコンプレッション装置)付きカム機構に関する。
従来、上記カム機構において、少なくとも排気バルブを駆動するカムシャフトと、回動軸にデコンプカム部及び遠心ウェイト部を有するデコンプシャフトとを備え、前記カムシャフトの外周に一体回転可能に設けたデコンプ支持部に、カム軸方向に沿う支持孔が形成され、該支持孔には前記デコンプシャフトの回動軸が回動可能に軸支され、前記カムシャフトの回転に伴い前記遠心ウェイト部に作用する遠心力に応じて、前記デコンプシャフトが回動して前記デコンプカム部を前記カムシャフトの排気カムのカム面上に出没させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。前記デコンプ支持部は、カムシャフトの外周に一体形成されている。
特開2004−278410号公報
ところで、近年のエンジンにおいては、その軽量化及び低重心化を図るべく、シリンダヘッド内のカムシャフトのチタン化が検討されている。この場合、チタンの摺動特性の都合上、各摺動部分には線爆溶射による溶射膜を形成することが望ましいが、デコンプ支持部のように比較的細かな部位においては、その摺動特性を簡易に向上させるような構成が要望されている。
そこでこの発明は、エンジン始動時の燃焼室内の圧縮圧力を逃がすデコンプ装置付きカム機構において、カムシャフトの軽量化を図った上でデコンプ支持部の摺動特性を簡易に向上させることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、エンジン始動時の燃焼室内の圧縮圧力を逃がすデコンプ装置付きカム機構であって、少なくとも排気バルブ(6)を駆動するカムシャフト(13)と、回動軸(34)にデコンプカム部(36)及び遠心ウェイト部(35)を有するデコンプシャフト(33)とを備え、前記カムシャフト(13)の外周に一体回転可能に設けたデコンプ支持部(31)に、カム軸方向に沿う支持孔(32)が形成され、該支持孔(32)には前記デコンプシャフト(33)の回動軸(34)が回動可能に軸支され、前記カムシャフト(13)の回転に伴い前記遠心ウェイト部(35)に作用する遠心力に応じて、前記デコンプシャフト(33)が回動して前記デコンプカム部(36)を前記カムシャフト(13)の排気カム(22)のカム面上に出没させるデコンプ装置付きカム機構において、前記カムシャフト(13)の外周にその軸方向一端側から一体回転可能に取り付けられるカラー部材(45)を備え、該カラー部材(45)に前記デコンプ支持部(31)が形成されると共に、前記カムシャフト(13)外周に前記軸方向一端側から前記カラー部材(45)に続き一体回転可能に取り付けられるカムスプロケット(14)を備え、前記カラー部材(45)の前記カムシャフト(13)に対する取り付け方向への移動が、前記カムシャフト(13)に設けた第一位置決め部(13c)により規制され、前記カムスプロケット(14)の前記カムシャフト(13)に対する取り付け方向への移動が、前記カラー部材(45)を介して前記第一位置決め部(13c)により規制され、前記カムスプロケット(14)の前記カムシャフト(13)に対する取り外し方向への移動が、前記カムスプロケット(14)に設けた第二位置決め部(15b)がエンジン構造体(2)のカム支持部(16)に当接することにより規制され、
さらに前記カムシャフト(13)がチタン製とされ、前記カラー部材(45)及び前記カムスプロケット(14)における前記カムシャフト(13)を挿通させる中央カラー部(15)が鉄製とされることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記排気カム(22)に、その外周のカム面の一部を切り欠く凹部(41)が形成され、該凹部(41)内には、前記デコンプカム部(36)が回動可能に配置されると共に、少なくとも非デコンプ作動時に前記デコンプカム部(36)を支持するデコンプカム支持部(49)が設けられ、該デコンプカム支持部(49)が、前記排気カム(22)に取り付けられる支持部材(48)で形成されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記排気カム(22)における前記軸方向一端側に、その外周のカム面の一部を切り欠く凹部(41)が形成されると共に、該凹部(41)の内周側底面(41a)の少なくとも一部を切り欠く溝部(47)が形成され、該溝部(47)内には、これに整合する環状の支持部材(48)が前記軸方向一端側から取り付けられ、前記凹部(41)内には、前記デコンプカム部(36)が回動可能に配置され、少なくとも非デコンプ作動時には、前記デコンプカム部(36)が前記内周側底面(41a)における前記支持部材(48)が形成する部位に支持されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記カムシャフト(13)がチタン製とされ、前記カラー部材(45)及び前記支持部材(48)が鉄製とされることを特徴とする。
この発明によれば、カムシャフトと別体のカラー部材でデコンプ支持部を形成することで、カムシャフトをチタン製として軽量化を図った上で、カラー部材を鉄製としてデコンプ支持部の摺動特性を簡易に向上でき、デコンプ支持部の耐摩耗性を確保すると共に、デコンプ支持部に摩耗等が生じたとしても適宜交換することが可能となる。
この発明によれば、カムシャフトにカラー部材及びカムスプロケットを順次組み付けることのみで、これらの軸方向での相対的な位置決めがなされると共に、エンジン構造体への組み付け後には、カラー部材及びカムスプロケットを介してカムシャフトのスラスト受けが可能となり、動弁機構の組み付け作業を容易にできる。
この発明によれば、カムシャフトと別体の支持部材でデコンプカム支持部を形成することで、カムシャフトをチタン製として軽量化を図った上で、デコンプカム支持部を鉄製として摺動特性を簡易に向上でき、デコンプカム支持部の耐摩耗性を確保すると共に、デコンプカム支持部に摩耗等が生じたとしても適宜交換することが可能となる。また、凹部周辺の極一部のみを摺動特性の異なる別部材とすればよく、カムシャフトの軽量化を十分に図ることができる。
この発明によれば、カムシャフトと別体の支持部材でデコンプカム支持部である内周側底面を形成することで、カムシャフトをチタン製として軽量化を図った上で、デコンプカム支持部を鉄製として摺動特性を簡易に向上でき、デコンプカム支持部の耐摩耗性を確保すると共に、デコンプカム支持部に摩耗等が生じたとしても適宜交換することが可能となる。また、環状の支持部材が前記カラー部材及びカムスプロケットと共に軸方向一端側からカムシャフトに取り付けられることで、動弁機構の組み付け作業が容易になる。
この発明によれば、カムシャフトをチタン製として動弁機構の軽量化を図ると共に、耐摩耗性を要するカラー部材、中央カラー部、及び支持部材を鉄製として動弁機構の耐久性の向上を図ることができる。なお、上記チタン製とはチタン及びチタン合金製を含み、鉄製とは各種鋼鉄及び合金鉄製を含む。
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、例えば自動二輪車等の車両の原動機に用いられる四ストロークOHC単気筒エンジン(内燃機関)1のシリンダヘッド2周辺の側面図であり、本図に示すように、シリンダヘッド2上にはヘッドカバー3と共に動弁室4が形成され、該動弁室4内に吸排気バルブ5,6作動用の動弁機構7が収容される。
シリンダヘッド2には吸排気ポート8,9が形成され、該吸排気ポート8,9の燃焼室側開口がそれぞれ前記吸排気バルブ5,6により開閉される。吸排気バルブ5,6は、傘状の弁体から棒状のステム5a,6aをヘッドカバー3側に延出してなり、該各バルブ5,6のステム先端部には、リテーナ11を介してバルブスプリング12のバネ力が付与され、該バネ力により各バルブ5,6が各ポート8,9の燃焼室側開口を閉塞する側に付勢される。吸排気バルブ5,6のステム5a,6aは側面視V字状に配置され、該各ステム5a,6a間に吸排気バルブ駆動用のカムシャフト13が左右方向に沿って配置される。なお、図中符号Cはカムシャフト13の回転中心(軸線)を示す。
図2に示すように、カムシャフト13の左側部(図中左方を矢印LHで示す)は、これと同軸をなすカムスプロケット14の中央カラー部15内にスプライン嵌合により相対回転不能に挿通される。中央カラー部15の左側部は、左ボールベアリング16を介してシリンダヘッド2の左側壁2aに回転可能に支持される。換言すれば、カムシャフト13の左端部は、前記中央カラー部15内に保持された状態で、左ボールベアリング16を介してシリンダヘッド2の左側壁2aに回転可能に支持される。なお、シリンダヘッド2の左側壁2aにおける左ボールベアリング16保持用の貫通孔17は、動弁室外側からキャップ17aにより油密に閉塞される。
一方、カムシャフト13の右端部は、右ボールベアリング18を介してシリンダヘッド2の右側壁2bに回転可能に支持される。なお、右ボールベアリング18は、シリンダヘッド2の右側壁2bにおける動弁室内側に開口するカップ状のベアリング支持部19内に保持される。
エンジン1は四バルブ式であり、吸排気バルブ5,6をそれぞれ左右一対に有し、これら各バルブ5,6が、シリンダ左右中心で振り分けられるように配置される。カムシャフト13は、その右端部が左右一対の吸排気バルブ5,6間に位置するように(概ねシリンダ左右中心に位置するように)、全体的に左方にオフセットして配置される。なお、カムシャフト13の右端部の外径と中央カラー部15の左側部の外径とはほぼ同一であり、以下、前記外径の円筒面をカムシャフト13の基準面ということがある。
カムシャフト13の右半部外周には、吸排気バルブ駆動用の吸排気カム21,22がそれぞれ一体形成される。各カム21,22は、それぞれ前記基準面よりも拡径した外周面(カム面)を形成するもので、カムシャフト13と同軸円筒状のカム面を形成する円筒部21a,22a(図4参照)と、該円筒部21a,22aに対して外周側に突出して山形のカム面を形成するカム山部21b,22b(図4参照)とを有してなる。吸気カム21は右半部右側に、排気カム22は右半部左側にそれぞれ位置し、これらがカム軸方向で互いに離間して配置される。
図1を併せて参照し、吸排気カム21,22と吸排気バルブ5,6のステム先端部との間には、それぞれ吸気又は排気ロッカーアーム23,24が揺動自在に設けられる。各ロッカーアーム23,24のカム側端部(入力端部)には、それぞれ吸排気カム21,22外周のカム面に当接するカムローラ23a,24aが回転自在に設けられる。一方、各ロッカーアーム23,24のバルブ側端部(出力端部)には、それぞれ吸排気バルブ5,6のステム先端にシムを介して当接する当接部23b,24bが設けられる。
カムシャフト13は、前記カムスプロケット14に巻き掛けられるカムチェーンを介して、エンジン1のクランクシャフトと同期して回転駆動する。そして、カムシャフト13の回転駆動時には、吸排気カム21,22のカムパターンに応じて各ロッカーアーム23,24を適宜揺動させ、吸排気バルブ5,6を往復動させて吸排気ポート8,9の燃焼室側開口を開閉させる。なお、図2中符号25は前記カムチェーンを収容するカムチェーン室を示す。
各ロッカーアーム23,24のカムローラ23a,24aは、吸排気カム21,22外周のカム面にヘッドカバー3側から当接し、カムシャフト13の回転駆動に伴い前記カム面上を転動する。以下、吸排気カム21,22外周におけるカムローラ23a,24aが当接する位置をローラ当接位置という。
吸排気カム21,22は、前記ローラ当接位置に円筒部21a,22aが位置するときには、吸排気バルブ5,6をリフトさせずに吸排気ポート8,9の燃焼室側開口を閉じたままとし、ローラ当接位置にカム山部21b,22bが位置するときには、吸排気バルブ5,6をリフトさせて吸排気ポート8,9の燃焼室側開口を開放させる。以下、前記円筒部21a,22a外周の円筒状のカム面をゼロリフト面21c,22cという。
ここで、エンジン1は、その始動時に燃焼室内の圧縮圧力を逃がすべく排気バルブ6を開作動させるデコンプ装置(デコンプレッション装置)30を備える。
図3に示すように、デコンプ装置30は、カムシャフト13におけるカムスプロケット14と排気カム22との間に設けられるもので、カムシャフト13の外周側にはこれと一体回転可能にデコンプ支持部31が設けられ、該デコンプ支持部31にはカム軸方向に沿う支持孔32が形成され、該支持孔32内にはデコンプ装置30におけるデコンプシャフト33の回動軸34が回動可能に軸支される。
図4,8を併せて参照し、デコンプ支持部31は、排気カム22の円筒部22aとカムスプロケット14との間において外周側に突出してなり、その先端側には前記支持孔32が貫通形成される。
図3を参照し、デコンプシャフト33は、前記回動軸34の左端部に遠心ウェイト部35を、右端部にデコンプカム部36をそれぞれ一体形成してなり、その回動軸34をデコンプ支持部31の支持孔32に左方から挿通させた状態で回動可能に支持される。このとき、デコンプシャフト33のデコンプカム部36は、排気カム22左側面に形成された凹部41内に収容される。
回動軸34の左端には、これと同軸の円筒部37が突設され、該円筒部37外周にはデコンプシャフト33に一回動方向への付勢力を付与するトーションコイルスプリング38が取り付けられる。デコンプシャフト33は、デコンプ支持部31の左側面に回動軸34左側の段差部34aにおける直交面を摺動可能に当接させると共に、カムスプロケット14のスプロケット本体14aの右側面に円筒部37の左端面を摺動可能に当接させることで、カム軸方向での移動を規制された状態でデコンプ支持部31に軸支される。
遠心ウェイト部35は、回動軸34の左端部から比較的左右幅の小さいアーム部35を外周側に延出し、該アーム部35の先端側に左方に向けて左右幅を広げたウェイト本体35bを一体形成してなる。遠心ウェイト部35は、デコンプ支持部31よりもカムシャフト13の回転駆動方向(図4中矢印F方向)に位置し、デコンプシャフト33が回動軸34回りに回動すると、その遠心力に応じてウェイト本体35bがカムシャフト13の内周側又は外周側に移動可能である。
デコンプシャフト33は、前記トーションコイルスプリング38のバネ力によりウェイト本体35bを内周側に移動させる側に付勢される。このとき、遠心ウェイト部35の一側が後述のカラー部材45の外周に当接することで、デコンプシャフト33におけるウェイト本体35bを内周側に移動させる側への回動限界位置が規定される。このときの回動限界位置を内周側回動限界位置とする。なお、遠心ウェイト部35は、前記内周側回動限界位置において前記カラー部材45の外周を回り込むように屈曲して形成される。
回動軸34の左端部における遠心ウェイト部35と反対側の部位からは、比較的短いストッパ片39が外周側に延出する。ストッパ片39は、デコンプシャフト33がトーションコイルスプリング38のバネ力に抗してウェイト本体35bを外周側に移動させる側に回動した際の回動限界位置を規定する。このときの回動限界位置を外周側回動限界位置とする。
図5を併せて参照し、デコンプカム部36は、回動軸34先端側の円柱体の外周側の例えば二箇所を平坦状に面取りしてなる。以下、前記面取り部分を第一及び第二平坦部36a,36bとし、これらの間に残る円筒状部分を第一及び第二カム山部36c,36dとする。各平坦部36a,36b及びカム山部36c,36dは、回動軸34の周方向で交互に並んで配置される。
図3,6に示すように、排気カム22の円筒部22aの左側面には、そのカム面(ゼロリフト面22c)の一部を切り欠く前記凹部41が形成される。凹部41は、カム軸方向視で外周側に開放するコ字状(方形状)をなし、前記デコンプ支持部31の支持孔32とカム軸方向で対向配置される。この凹部41内にデコンプシャフト33のデコンプカム部36が回動可能に収容される。これら凹部41及びデコンプカム部36は、エンジン1が圧縮工程の後半にあるときに前記ローラ当接位置に位置する。以下、凹部41による排気カム22のカム面切り欠き部を符号42とする。
図5(a)、図7(a)を参照し、デコンプカム部36の第一カム山部36cは、デコンプシャフト33が前記内周側限界位置にあるときにはカム面切り欠き部42内に位置する。このとき、デコンプカム部36(第一カム山部36c)は排気カム22のカム面(ゼロリフト面22c)上に所定量突出する。
一方、図5(b)、図7(b)を参照し、デコンプカム部36の第一平坦部36aは、デコンプシャフト33が前記外周側限界位置にあるときには前記カム面切り欠き部42内に位置する。このとき、デコンプカム部36(第一平坦部36a)は排気カム22のカム面(ゼロリフト面22c)上に突出しない。
デコンプシャフト33は、カムシャフト13の回転に伴い遠心ウェイト部35(ウェイト本体35b)に作用する遠心力に応じて回動し、デコンプカム部36を前記カム面切り欠き部42から排気カム22のカム面上に出没させる。
具体的には、デコンプシャフト33は、カムシャフト13が停止又は所定速度未満で回転するときには、トーションコイルスプリング38のバネ力により前記内周側回動限界位置に付勢され、デコンプカム部36を排気カム22のカム面上に突出させる。一方、カムシャフト13が所定速度(エンジン始動時の回転速度)以上で回転するときには、トーションコイルスプリング38のバネ力に抗してデコンプシャフト33が前記外周側回動限界位置に向けて回動し、デコンプカム部36を排気カム22のカム面上に突出させない。
排気ロッカーアーム24のカムローラは、カム面切り欠き部42上を転動する際、その左側がカム面切り欠き部42上を通過し、右側がカム面切り欠き部42の右側に残るカム面(ゼロリフト面22c)上を通過する。したがって、カム面上にデコンプカム部36が突出する状態でカム面切り欠き部42上をカムローラが転動すると、該カムローラがデコンプカム部36に乗り上げて排気ロッカーアーム24を揺動させ、排気バルブ6が作動して排気ポート9の燃焼室側開口を所定量開いて燃焼室内の圧縮圧力を逃がす。
これにより、圧縮上死点手前の圧力上昇によるクランクシャフトの回転抑制力が抑えられ、クランクシャフトの回転が充分に加速される。
この後、クランクシャフトと共にカムシャフト13の回転が加速すると、その遠心力によりデコンプシャフト33がトーションコイルスプリング38の付勢力に抗して前記外周側回動限界位置に向けて回動し、デコンプカム部36のカム面上の突出を無くす。
この状態でカム面切り欠き部42上をカムローラが転動すると、該カムローラがカム部に乗り上げることなくゼロリフト面22c上を転動し、排気バルブ6が作動することなく排気ポート9の燃焼室側開口を閉じたままとして通常の圧縮工程を可能とする。すなわち、スタータモータ等のエンジン始動手段の初期入力を軽減させた上で、エンジン1を容易かつ確実に始動させることが可能となる。
図3に示すように、カムシャフト13の左半部は、前記基準面よりも縮径して設けられる。この左半部外周には、前記カムスプロケット14の中央カラー部15及びカラー部材45が一体回転可能に取り付けられる。
カラー部材45は、カムシャフト13左半部の右側外周にその左端側から圧入又はスプライン嵌合等により相対回転不能に取り付けられる。カラー部材45の右側部はやや拡径して形成され、該右側部の外周の一部が外周側に膨出することで、前記デコンプ支持部31が一体形成される。すなわち、デコンプ支持部31は、カムシャフト13本体とは別体に設けられる。
カムシャフト13の左右中間外周には、その左半部の縮径に伴う段差部13cが形成され、該段差部13cにおける軸方向との直交面にカラー部材45の右端面が当接することで、カラー部材45の右方への移動すなわちカムシャフト13への取り付け方向への移動が規制される。
中央カラー部15は、カムシャフト13左半部の左側外周にその左端側からカラー部材45に続き圧入又はスプライン嵌合等により相対回転不能に取り付けられる。中央カラー部15の左側部外周には、前記左ボールベアリング16のインナレース内に嵌合する左支持面15aが形成されると共に、該左支持面15aの右側に隣接して左環状突部15bが形成される。左環状突部15bは、カムシャフト13をシリンダヘッド2に組み付けた際に左ボールベアリング16のインナレース右側面に当接し、カムスプロケット14の左方への移動すなわちカムシャフト13からの抜け方向への移動を規制する。このとき、カムスプロケット14を介してカラー部材45の左方(抜け方向)への移動が規制される。中央カラー部15の右側部外周には、円盤状のスプロケット本体14aが一体形成される。
中央カラー部15の右端面はカラー部材45の左端面に当接し、これによりカムスプロケット14全体の右方への移動すなわちカムシャフト13への取り付け方向への移動が規制される。カムスプロケット14は、シリンダヘッド2への組み付け時には前記左環状突部15bにより左方への移動が規制されることから、該カムスプロケット14及びカラー部材45を介してカムシャフト13全体の左方への移動が規制される。
カムシャフト13の右端部外周には、前記右ボールベアリング18のインナレース内に嵌合する右支持面13aが形成されると共に、該右支持面13aの左側に隣接して右環状突部13bが形成される。右環状突部13bは、カムシャフト13をシリンダヘッド2に組み付けた際に右ボールベアリング18のインナレース左側面に当接し、カムシャフト13の右方への移動を規制する。この右環状突部13b及び前記左環状突部15bにより、シリンダヘッド2に対するカムシャフト13全体の軸方向での移動が規制されると共に位置決めがなされ、かつカムシャフト13全体のスラスト荷重が支持される。
ここで、カムシャフト13及びカムスプロケット14は、チタン又はチタン合金からなるチタン製とされ、カラー部材45及びデコンプシャフト33は、各種鉄鋼又は合金鉄からなる鉄製とされる。
また、カムシャフト13の左右支持面13a,15a及び吸排気カム21,22外周のカム面並びにカムスプロケット14外周の歯先には、その摺動特性を向上させて耐摩耗性を確保するべく、線爆溶射による溶射膜が形成される。
図3,6に示すように、排気カム22の左側面には、カムシャフト13と同軸の環状をなす溝部47が形成される。溝部47は、左方に開放するコ字状(方形状)の一定断面を有して円周状に延びるもので、この溝部47が前記凹部41の直ぐ内周側に位置することで、該凹部41の内周側底面41aの左側(又は全体)が切り欠かれる。
溝部47内には、これに整合する環状の支持部材48がカムシャフト13の左端側から取り付けられる。支持部材48は、溝部47と略同一の方形断面を有して円周状に延びるもので、この支持部材48が溝部47内に嵌まり込んだ状態において、その左側面が排気カム22の左側面と面一をなし、かつ外周面の一部が凹部41の内周側底面41aにおける溝部47が切り欠いた部位を形成する。以下、凹部41における支持部材48が形成する部位(内周側底面41a)をデコンプカム支持部49という。
デコンプカムシャフト13は、前記内周側回動限界位置にあるとき(デコンプ機能が作動する状態にあるとき、以下、デコンプ作動時ということがある)には、前記カム面切り欠き部42内に第一カム山部36cを配置してこれを排気カム22のゼロリフト面22cから所定量突出させると共に、前記第二カム山部36dの外周面を凹部41の内周側底面41aにおける支持部材48が形成する部位すなわちデコンプカム支持部49に当接させる(図7(a)参照)。これにより、デコンプカム部36に排気ロッカーアーム24のカムローラが乗り上げた際の荷重に対する支持剛性が高まる。
一方、デコンプシャフト33が前記外周側回動限界位置にあるとき(デコンプ機能が作動しない状態にあるとき、以下、非デコンプ作動時ということがある)には、カム面切り欠き部42内に第一平坦部36aを配置して排気カム22のゼロリフト面22cからの突出を無くすと共に、凹部41内に退避した第一カム山部36cの一端側を前記デコンプカム支持部49に当接させる(図7(b)参照)。これにより、非デコンプ作動時においてもデコンプカム部36を凹部41におけるデコンプカム支持部49に支持可能である。
そして、支持部材48も前記カラー部材45及びデコンプシャフト33と同様の鉄製とされて耐摩耗性を確保している。なお、デコンプシャフト33がデコンプ作動時と非デコンプ作動時との間で回動する際、デコンプカム支持部49には前記第二平坦部36bが対向する。このとき、デコンプカム支持部49とデコンプカム部36とは当接せず、デコンプシャフト33の回動がスムーズになる。また、各平坦部36a,36bは、第一カム山部36cに対して第二カム山部36dが幅狭となるように軸方向視で互いに傾斜して配置される。
以上説明したように、上記実施例におけるカム機構は、エンジン始動時の燃焼室内の圧縮圧力を逃がすデコンプ装置30を備えるものであって、吸排気バルブ5,6を駆動するカムシャフト13と、回動軸34にデコンプカム部36及び遠心ウェイト部35を有するデコンプシャフト33とを備え、前記カムシャフト13の外周に一体回転可能に設けたデコンプ支持部31に、カム軸方向に沿う支持孔32が形成され、該支持孔32には前記デコンプシャフト33の回動軸34が回動可能に軸支され、前記カムシャフト13の回転に伴い前記遠心ウェイト部35に作用する遠心力に応じて、前記デコンプシャフト33が回動して前記デコンプカム部36を前記カムシャフト13の排気カム22のカム面上に出没させるものにおいて、前記カムシャフト13の外周にその軸方向一端側から一体回転可能に取り付けられるカラー部材45を備え、該カラー部材45に前記デコンプ支持部31が形成されるものである。
この構成によれば、カムシャフト13と別体のカラー部材45でデコンプ支持部31を形成することで、カムシャフト13をチタン製として軽量化を図った上で、カラー部材45を鉄製としてデコンプ支持部31の摺動特性を簡易に向上でき、デコンプ支持部31の耐摩耗性を確保すると共に、デコンプ支持部31に摩耗等が生じたとしても適宜交換することが可能となる。
また、上記カム機構においては、前記カムシャフト13外周に前記軸方向一端側から前記カラー部材45に続き一体回転可能に取り付けられるカムスプロケット14を備え、前記カラー部材45の前記カムシャフト13に対する取り付け方向への移動が、前記カムシャフト13に設けた段差部13cにより規制され、前記カムスプロケット14の前記カムシャフト13に対する取り付け方向への移動が、前記カラー部材45を介して前記段差部13cにより規制され、前記カムスプロケット14の前記カムシャフト13に対する取り外し方向への移動が、前記カムスプロケット14に設けた左環状突部15bがシリンダヘッド2の左ボールベアリング16に当接することにより規制されるものである。
この構成によれば、カムシャフト13にカラー部材45及びカムスプロケット14を順次組み付けることのみで、これらの軸方向での相対的な位置決めがなされると共に、シリンダヘッド2への組み付け後には、カラー部材45及びカムスプロケット14を介してカムシャフト13のスラスト受けが可能となり、動弁機構7の組み付け作業を容易にできる。
さらに、上記カム機構においては、前記排気カム22の軸方向一端側に、その外周のカム面の一部を切り欠く凹部41が形成されると共に、該凹部41の内周側底面41aの一部を切り欠く溝部47が形成され、該溝部47内には、これに整合する環状の支持部材48が前記軸方向一端側から取り付けられ、前記凹部41内には、前記デコンプカム部36が回動可能に配置され、前記デコンプカム部36が、前記内周側底面41aにおける前記支持部材48が形成する部位(デコンプカム支持部49)に支持されるものである。
この構成によれば、カムシャフト13と別体の支持部材48でデコンプカム支持部49である内周側底面41aを形成することで、カムシャフト13をチタン製として軽量化を図った上で、デコンプカム支持部49を鉄製として摺動特性を簡易に向上でき、デコンプカム支持部49の耐摩耗性を確保すると共に、デコンプカム支持部49に摩耗等が生じたとしても適宜交換することが可能となる。また、環状の支持部材48が前記カラー部材45及びカムスプロケット14と共に軸方向一端側からカムシャフト13に取り付けられることで、動弁機構7の組み付け作業が容易になる。
そして、上記カム機構においては、前記カムシャフト13及びカムスプロケット14がチタン製とされ、前記カラー部材45及び前記支持部材48が鉄製とされることで、カムシャフト13及びカムスプロケット14のチタン化による動弁機構7の軽量化を十分に図ると共に、比較的細かくかつ耐摩耗性を要するカラー部材45(デコンプ支持部31)及び支持部材48を鉄製として動弁機構7の耐久性向上を図ることができる。
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えばカムスプロケットが互いに別体の中央カラー部及びスプロケット本体からなるものであってもよい。この場合、中央カラー部を鉄製、スプロケット本体をチタン製とすれば、カムスプロケット全体の軽量化とデコンプ支持部の耐摩耗性の確保とを容易に両立できる。
ここで、チタン製とは少なくともTiを含む合金であり、その他にも例えばAl、V等を含むものであってもよい。また、鉄製とは少なくともFeを含む合金であり、その他にも例えばC、Si、Mn、P、S、Cr、Mo、O等の元素を適量含むものであってもよい。
また、前記溝部及び支持部材がカムシャフトの全周に渡る環状ではなく所定長さを有する円弧状等であってもよい。この場合、鉄製の支持部材が小型化されてカムシャフトがより軽量化される。また、カラー部材45の一端部が溝部内に嵌合する構成であってもよい。この場合、部品点数が削減されて組み付けが容易になる。
さらに、支持部材が凹部の各側面をも形成する構成であってもよい。また、凹部が軸方向視方形状ではなく台形状や三角形状であってもよい。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
この発明の実施例におけるエンジンのシリンダヘッド周りをカム軸方向から見た側面図である。 図1のA−A断面図である。 図2のカムシャフト周りの拡大図である。 図3のA矢視図である。 図4のデコンプシャフトの作動説明図であり、(a)はデコンプシャフトが内周側回動限界位置にある状態を、(b)はデコンプシャフトが外周側回動限界位置にある状態をそれぞれ示す。 図3のB−B断面図である。 図6のデコンプカム部の作動説明図であり、(a)はデコンプシャフトが内周側回動限界位置にある状態を、(b)はデコンプシャフトが外周側回動限界位置にある状態をそれぞれ示す。 図3のD−D断面図である。
符号の説明
2 シリンダヘッド(エンジン構造体)
6 排気バルブ
13 カムシャフト
13c 段差部(第一位置決め部)
14 カムスプロケット
15 中央カラー部
15b 左環状突部(第二位置決め部)
16 左ボールベアリング(カム支持部)
22 排気カム
30 デコンプ装置
31 デコンプ支持部
32 支持孔
33 デコンプシャフト
34 回動軸
35 遠心ウェイト部
36 デコンプカム部
41 凹部
41a 内周側底面
45 カラー部材
47 溝部
48 支持部材
49 デコンプカム支持部

Claims (4)

  1. エンジン始動時の燃焼室内の圧縮圧力を逃がすデコンプ装置付きカム機構であって、
    少なくとも排気バルブ(6)を駆動するカムシャフト(13)と、回動軸(34)にデコンプカム部(36)及び遠心ウェイト部(35)を有するデコンプシャフト(33)とを備え、前記カムシャフト(13)の外周に一体回転可能に設けたデコンプ支持部(31)に、カム軸方向に沿う支持孔(32)が形成され、該支持孔(32)には前記デコンプシャフト(33)の回動軸(34)が回動可能に軸支され、前記カムシャフト(13)の回転に伴い前記遠心ウェイト部(35)に作用する遠心力に応じて、前記デコンプシャフト(33)が回動して前記デコンプカム部(36)を前記カムシャフト(13)の排気カム(22)のカム面上に出没させるデコンプ装置付きカム機構において、
    前記カムシャフト(13)の外周にその軸方向一端側から一体回転可能に取り付けられるカラー部材(45)を備え、該カラー部材(45)に前記デコンプ支持部(31)が形成されると共に、
    前記カムシャフト(13)外周に前記軸方向一端側から前記カラー部材(45)に続き一体回転可能に取り付けられるカムスプロケット(14)を備え、前記カラー部材(45)の前記カムシャフト(13)に対する取り付け方向への移動が、前記カムシャフト(13)に設けた第一位置決め部(13c)により規制され、前記カムスプロケット(14)の前記カムシャフト(13)に対する取り付け方向への移動が、前記カラー部材(45)を介して前記第一位置決め部(13c)により規制され、前記カムスプロケット(14)の前記カムシャフト(13)に対する取り外し方向への移動が、前記カムスプロケット(14)に設けた第二位置決め部(15b)がエンジン構造体(2)のカム支持部(16)に当接することにより規制され、
    さらに前記カムシャフト(13)がチタン製とされ、前記カラー部材(45)及び前記カムスプロケット(14)における前記カムシャフト(13)を挿通させる中央カラー部(15)が鉄製とされることを特徴とするデコンプ装置付きカム機構。
  2. 前記排気カム(22)に、その外周のカム面の一部を切り欠く凹部(41)が形成され、該凹部(41)内には、前記デコンプカム部(36)が回動可能に配置されると共に、少なくとも非デコンプ作動時に前記デコンプカム部(36)を支持するデコンプカム支持部(49)が設けられ、該デコンプカム支持部(49)が、前記排気カム(22)に取り付けられる支持部材(48)で形成されることを特徴とする請求項1に記載のデコンプ装置付きカム機構。
  3. 前記排気カム(22)における前記軸方向一端側に、その外周のカム面の一部を切り欠く凹部(41)が形成されると共に、該凹部(41)の内周側底面(41a)の少なくとも一部を切り欠く溝部(47)が形成され、該溝部(47)内には、これに整合する環状の支持部材(48)が前記軸方向一端側から取り付けられ、前記凹部(41)内には、前記デコンプカム部(36)が回動可能に配置され、少なくとも非デコンプ作動時には、前記デコンプカム部(36)が前記内周側底面(41a)における前記支持部材(48)が形成する部位に支持されることを特徴とする請求項1に記載のデコンプ装置付きカム機構。
  4. 前記カムシャフト(13)がチタン製とされ、前記カラー部材(45)及び前記支持部(48)材が鉄製とされることを特徴とする請求項2又は3に記載のデコンプ装置付きカム機構。
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