JP4552460B2 - 熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、着色、分子量低下の少ない熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、水分率を制御した特定のセルロースエステルをベント孔を有する成形機を用いて成形することによって溶融成形時の着色、加水分解による分子量低下が抑制可能である熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法に関する。
セルロースおよびセルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース誘導体は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また、環境中にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。現在商業的に利用されているセルロースエステルの代表例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等が挙げられ、プラスチック、フィルター、塗料など幅広い分野に利用されている。
セルロースエステルはリンター、パルプ等の天然物を原料としているため、加熱時の着色原因となる多くの不純物を含んでいる。その着色原因物質を除去するため、リンター、パルプの精製時、またはセルロースエステル製造時に漂白、高温加熱、濾過といった各種の処理が行われる。また、セルロースエステル樹脂は、汎用合成樹脂のように熱可塑成形によって溶融加工し成型品を得るには、融点を下げて溶融加工に適した温度とするために多量の可塑剤を混合しなければならない。したがって、原料として精製度が高く、耐熱性の良い可塑剤を用いることで色調の改善されたものを得ることができるが、構成原料の純度・品質および可塑剤の耐熱性のみで着色を解決するのは技術的・経済的に限界がある。
これらの欠点を解決する目的で、セルロースエステルに熱安定剤として、亜リン酸エステルを添加することが知られている(特許文献1参照)。しかし、セルロースエステルと既存の可塑剤と亜リン酸エステルの組み合わせでは溶融可能な流動性を与える成形条件においては、着色防止効果が十分得られなかったり、亜リン酸エステルによる分子量低下の問題がある。
また、セルロース樹脂の成形法として、生分解性が良好なセルロース・アセテート系樹脂に発泡剤として水分を含有する組成物が知られている(特許文献2参照)。この場合、発泡体シートを得るために水分を積極的に添加し気泡を多数存在するものであるため、成形した場合、気泡が欠点の原因となるばかりか加水分解により成型品の強度が低下する問題を有している。
さらに、セルロースアセテートと可塑剤の混合粉末または混合チップの水分率についての提案がある(特許文献3参照)。この場合、乾燥工程が必要となるばかりか水分率を低下しすぎた場合にも着色の問題を有する。
特開平10−306175号公報(第2頁) 特開2001−161187号公報(第2頁) 特開昭51−70316号公報(第6頁)
本発明の課題は上記のような問題点を克服し、バイオマス系材料であるセルロースエステルおよび生分解性を有する可塑剤を主成分とする環境負荷の小さい成分からなるセルロースエステル組成物を効率よく溶融成形により製造する方法、すなわち成形品の着色、加水分解による分子量低下の少ない熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法を提供することにある。
上述した本発明の課題は、以下の構成を採用することによって達成することができる。すなわち、
(1)セルロースエステルと、ポリエーテル化合物、分子量250以上のグリセリンエステル、および分子量250以上のジグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種である可塑剤とを主成分とする熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法であって、上記セルロースエステルとしてアシル部の炭素数が3以上であるエステルをグルコース単位あたり平均0.5個以上有し、カールフィッシャー電量滴定法水分計を用いて180℃にて測定した水分率が0.2〜5.0重量%であるセルロースエステルを用い、かつ少なくとも1個のベント孔を有する成形機を用いて溶融成形を行うことを特徴とする熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
(2)前記熱可塑性セルロースエステル組成物が、80〜95重量%のセルロースエステルと、5〜20重量%の可塑剤とを少なくとも含んでなるものであることを特徴とする前記(1)に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
(3)前記セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートより選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
)前記可塑剤が下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物であることを特徴とする前記(1)から()のいずれか1項に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(ただし、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
)前記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物の分子量が200〜1000であることを特徴とする前記()に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
)前記ベント孔を有する成形機の少なくとも1つのベント孔が減圧に保持され、該ベント孔の減圧度が−80kPa以下であることを特徴とする前記(1)から()のいずれか1項に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
本発明により、バイオマス系材料であるセルロースエステルを主成分とする環境負荷の小さい成分からなる熱可塑性セルロースエステル組成物を色調の悪化や加水分解を生じることなく製造することが可能となる。
得られた組成物をさらに糸、フィルム、成形品などに成形する場合、得られる成形物は機械的強度、色調の優れたものとなる。得られる成形品は、色調、強度、品位を要求される分野、すなわち、農業用資材、林業用資材、水産資材、土木資材、衛生資材、日用品、衣料用繊維、産業用繊維、不織布、フィルムなどとして好適に用いることができる。
以下、本発明の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法について詳細に説明する。
本発明における熱可塑性セルロースエステル組成物は、セルロースエステルと可塑剤を主成分とするものである。
本発明におけるセルロースエステルは、アシル部の炭素数が3個以上であるエステルを、グルコース単位あたり平均0.5個以上含んでなるものであることが重要である。ここでいうグルコース単位あたり平均0.5個以上とは、アシル部の炭素数が3個以上であるエステルの置換度が平均0.5以上であることを意味する。アシル部の炭素数が3個以上であるエステルの置換度が平均0.5以上とすることによって「アシル部の炭素数が3個以上であるエステルの置換度が平均0.5以上であるエステル」を全く有さないセルロースジアセテート、セルローストリアセテートと異なり成形時の熱流動性が良好となり、熱履歴による着色を著しく少なくすることができる。
アシル部の炭素数が3個以上であるエステルを0.5個以上有するセルロースエステルとしては、具体的にはセルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースバリレートなどの1種の長鎖アシル基を有するセルロースエステル類や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートバリレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートオレート、セルロースプロピオネートブチレートなど2種のアシル基を有するセルロース混合エステルが例示でき、アシル部の炭素数が18以下であるものが好ましい。なかでもセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートは、適度な熱可塑性を有しており、成形時の着色が生じにくく製造が容易であるため好ましく用いられる。
本発明においてセルロースエステルとして用いうるセルロースアセテートプロピオネートとしては、アセチル基の置換度が0.1〜2.7で、かつプロピオニル基の置換度が0.1〜2.9であるものを具体例としてあげることができる。
本発明の製造方法において用いるセルロースエステルは、カールフィッシャー電量滴定法水分計を用いて180℃にて測定した水分率が0.2〜5.0重量%のものとすることが重要である。水分率を5重量%以下とすることにより、溶融時の熱履歴によるポリマーの着色、水分による加水分解さらには成形加工時の発泡を抑制することができ、強度低下や表面凹凸の少ない均一なものを得ることができる。着色、発泡抑制の観点からセルロースエステルの水分率は0.25〜3.0重量%であることがより好ましく、0.3〜2.0重量%であることが最も好ましい。水分率が0.2重量%未満と少なすぎる場合にも成形時に着色が発生する原因となる。
本発明におけるセルロースエステルのエステル置換度は2.5〜3.0であることが好ましい。セルロースエステルのエステル置換度が2.5未満の物を用いる場合には、未置換水酸基が多すぎるため、十分な熱可塑化効果を得ることがでず、溶融成形時の着色を防止することが困難な場合がある。なおセルロースのグルコース単位中に含まれる水酸基の数は3個であるため、エステル置換度の上限は3.0である。エステル置換度は2.6〜2.9であることが好ましい。
熱可塑性セルロースエステル組成物中のセルロースエステルの含有量は80〜95重量%であることが好ましい。含有量を95重量%以下にすることにより、可塑剤を加えたことによる熱可塑化効果が増し、溶融成形性が良好になる。含有量を80重量%以上にすることで、セルロースエステルと可塑剤との製法時の混練トルクが低くなりすぎずセルロースエステルと可塑剤との良好な混練性を有する。
セルロースエステルに対して可塑化作用を有する可塑剤の含有量は、熱可塑性セルロースエステル組成物に対して5〜20重量%であることが好ましい。可塑剤の含有量を熱可塑性セルロースエステル組成物に対して5〜20重量%とすることで、セルロースエステルに十分な熱可塑性を付与でき成形時の分解、着色を抑制することができる。また、汎用性、生産効率の高い溶融成形法で生産できるだけでなく、熱履歴による着色を著しく少なくするばかりか可塑化効果をも高度に満足することができる。また、特定範囲の可塑剤とすることで成型品とした場合には成型物の表面にヌメリ感のない風合いの良好な品位を有した成型品を得ることができる。セルロースエステルに対して可塑化作用を有する可塑剤の含有量は、さらに好ましくは熱可塑性セルロースエステル組成物に対して7〜18重量%である。
本発明で具体的に用いることができる可塑剤としては、セルロースエステルとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に表れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物などである。さらに、可塑剤の分子量を250以上とすることにより、可塑剤の揮発による溶融成形時の発煙を抑えることができるので好ましい。可塑剤の分子量は310以上がより好ましい。可塑剤分子量の上限としてはセルロースエステルとの相溶性、可塑剤のブリードを抑制できる範囲が好ましく実質的には10000以下であることが好ましい。
具体的なグリセリンのエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されない。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
ジグリセリンのエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるが限定されない。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジプロピオネート、ポリオキシエチレンジブチレート、ポリオキシエチレンジカプロエート、ポリオキシエチレンジヘプタノエート、ポリオキシエチレンジオクタノエート、ポリオキシエチレンジカプレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンモノアセテート、ポリオキシエチレンモノプロピオネート、ポリオキシエチレンモノブチレート、ポリオキシエチレンモノカプロエート、ポリオキシエチレンモノヘプタノエート、ポリオキシエチレンモノオクタノエート、ポリオキシエチレンモノノナネート、ポリオキシエチレンモノカプレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシプロピレンジアセテート、ポリオキシプロピレンジプロピオネート、ポリオキシプロピレンジブチレート、ポリオキシプロピレンジカプロエート、ポリオキシプロピレンジヘプタノエート、ポリオキシプロピレンジオクタノエート、ポリオキシプロピレンジカプレート、ポリオキシプロピレンジラウレート、ポリオキシプロピレンジミリスチレート、ポリオキシプロピレンジパルミテート、ポリオキシプロピレンジステアレート、ポリオキシプロピレンジオレート、ポリオキシプロピレンモノアセテート、ポリオキシプロピレンモノプロピオネート、ポリオキシプロピレンモノブチレート、ポリオキシプロピレンモノカプロエート、ポリオキシプロピレンモノヘプタノエート、ポリオキシプロピレンモノオクタノエート、ポリオキシプロピレンモノノナネート、ポリオキシプロピレンモノカプレート、ポリオキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノミリスチレート、ポリオキシプロピレンモノパルミテート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシプロピレンモノオレートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
可塑剤として用いるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物としては、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を用いるとセルロースエステルとの相溶性が良好になり好ましい。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(ただし、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
これは、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物がセルロースエステルとの相溶性に優れるため熱可塑化効果が顕著に表れる。さらに、ポリエーテル化合物自身の耐熱性が良好なこと、可塑剤量を少量とできるため、添加したポリマーの色調も良好になる効果を有するからである。さらには、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は溶融成型時の揮発性も非常に低く抑えることができる特徴も有している。
具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレートなどが挙げられるがこれに限定されない。
この中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジラウレートが好ましい。
ポリエーテル化合物の分子量としては、200〜1000であることでポリエーテル化合物の揮発が抑えられ、セルロースエステルとの相溶性も良好となるため好ましい。ポリエーテル化合物の分子量は300〜800がより好ましい。
溶融成形時の組成物の着色性や加水分解を抑制するためには、少なくとも1個のベント孔を有する成形機を用いて溶融成形を行うことが重要である。ベント孔とは成形機内の混練部を大気に放圧および/または減圧にするためのものである。少なくとも1個のベント孔を有する成形機を用いて溶融成形を行う場合、加熱減圧下で水および有機化合物を連続的に除去することができ、溶融混練における着色、加水分解を大幅に抑制することができる。少なくとも1個のベント孔を有する成形機は、例えばニーダーやエクストルーダーのような押し出し成形機であっても射出成形機であっても良い。セルロースエステルへの熱履歴を抑制し、可塑剤との混合を高度に満足させることのできるエクストルーダー(例えば二軸エクストルーダー)、ニーダーが好ましい。水および有機化合物を除去するためのベント孔の少なくとも1つは減圧に保持することが好ましい。該ベント孔の減圧度は−80kPa以下に保持することが好ましく、さらに好ましくは−90kPa以下、より好ましくは−100kPa以下である。
セルロースエステルは可塑剤との溶融混合性を容易にするために粉砕機により予めセルロースエステルの粒子を50メッシュ以上に細かく粉砕しておいても良い。また、セルロースエステル合成時に可塑剤を添加し、セルロースエステルの製造と同時に可塑剤を含むセルロースエステルを得ても良い。
本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、エポキシ化合物、弱有機酸、ホスファイト、チオフォスファイト等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。また、その他有機酸系の生分解促進剤、抗酸化剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、艶消剤等の添加剤を配合することは何らさしつかえない。
本発明の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法で得られる成形物は、優れた機械的特性および表面の均一性を有し、生分解性に優れており、前記成形物を製造する際に熱流動性、着色、加水分解を低減することが可能となり、安定した生産ができる。また得られた成形品、例えば繊維とした場合には、衣料用フィラメント、衣料用ステープル、産業用フィラメント、産業用ステープル、医療用フィラメントとすることが可能であり、またメルトブロー法、スパンボンド法による不織布用繊維とすることも好ましく採用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、セルロースエステルの置換度、水分率、重量平均分子量、色調は以下の方法で評価した。
(1)セルロースエステルの置換度
乾燥したセルロースエステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSac=(162.14×TA)/
[[1−(Mwac−(16.00+1.01))×TA]+[1−(Mwpr−(16.00+1.01))×TA]×(Pr/Ac)]]
DSpr=DSac×(Pr/Ac)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSac:アセチル基の置換度
DSpr:プロピオニル基の置換度
Mwac:酢酸の分子量
Mwpr:プロピオン酸の分子量
Pr/Ac:酢酸(Ac)とプロピオン酸(Pr)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
(2)水分率
平沼産業株式会社製微量水分測定装置AQ−2000、同社製水分気化装置EV−200を用いて水分気化温度180℃にて乾燥窒素ガスを流して測定した。
(3)重量平均分子量
Waters(株)製Waters2690を用い、ポリスチレンを内部標準とし、カラム温度40℃、移動層クロロホルム、流速1ml/分で測定した。サンプルは絶乾状態としたポリマーを溶媒濃度は0.5%(w/v)に調製した。
(4)色調
長径3mm±0.5mm、短径2mm±0.5mm、長さ3mm±0.5mmの楕円柱状にカッティングした組成物のペレット20gを石英製の容器に入れ、スガ試験機株式会社製SMカラーコンピューターでL、a、b値を測定し、黄色みを表すb値を色調として用いた。
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)30gに酢酸20gとプロピオン酸90gを加え、50℃で30分混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸10g、無水プロピオン酸140g、硫酸1.2gを加えてアシル化を行った。アシル化において、40℃を超える時は水浴で冷却した。撹拌を150分間行った後、反応停止剤として酢酸30gと水10gの混合溶液を40分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸100gと水30gを加え60℃で80分間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム2gを含む水溶液を加えて析出したセルロースエステルを濾別、続いて水で洗浄した後、70℃で5時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.6(アセチル基0.2、プロピオニル基2.4)、重量平均分子量は126000であった。
実施例1
合成例1で得られたセルロースエステルを水分率が1.25重量%となるように調整し、ベント孔を1つ有する2軸エクストルーダーの原料フィダーより9.0kg/hrとなるように投入し、可塑剤としてポリエチレングリコール{分子量600(三洋化成工業(株)製 PEG600)}を1.0kg/hrとなるようにプランジャー式ポンプで添加した。エクストルーダーのジャケットの温度は210℃とし、連続的に口金を取り付けた先端より押し出し、水冷後、カッターに導入してペレットとした。ベント孔には真空ポンプを取り付け−90kPaで水および有機化合物を連続的に除去した。このペレットの色調はb値が4.3であり着色が生じず良好な色調を示していた。また、重量平均分子量は119000であり分子量低下は軽微であった。
実施例2
合成例1で得られたセルロースエステルを調製し水分率を2.53重量%にしたものを9.3kg/hrと可塑剤としてグリセリンジアセテートカプレート0.7kg/hrを用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、色調、重量平均分子量を測定した。色調はb値が4.8と良好であり、重量平均分子量は118000と分子量低下は軽微であった。
実施例3
合成例1で得られたセルロースエステルを乾燥して水分率を0.25重量%としたものを8.5kg/hrと可塑剤としてジグリセリンテトララウレート1.5kg/hrを用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、色調、重量平均分子量を測定した。色調はb値が5.1と良好であり、重量平均分子量は110000と分子量低下は軽微であった。
合成例2
無水酢酸5g、無水プロピオン酸120g用いた以外は合成例1と同様に反応してセルロースエステルを得た。得られたセルロースエステルの置換度2.5(アセチル基0.1、プロピオニル基2.4)、重量平均分子量は110000であった。
実施例4
水分率を0.93重量%に調整したセルロースエステル(合成例2)9.5kg/hrと可塑剤としてポリオキシエチレンジメチルエーテル0.5kg/hrを用いた以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、色調、重量平均分子量を測定した。色調はb値が4.5と良好であり、重量平均分子量は108000と分子量低下は軽微であった。
合成例3
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)50gを500mlの脱イオン水に浸して10分間おく。これをガラスフィルターで濾別して水を切り、700mlの酢酸に分散させ、時々振り混ぜて10分間おく。続いて、新しい酢酸を用いて同じ操作を再び繰り返す。
フラスコに900gの酢酸と0.9gの濃硫酸をとり、撹拌した。これに180gの無水酢酸を加え、温度が40℃をこえないように水浴で冷却しながら60分撹拌した。反応終了後、酢酸水溶液をゆっくり添加後、室温で一晩撹拌をした。その後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースエステルを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートは80.1gであり、セルロースアセテートの置換度は2.5、重量平均分子量は112000であった。
比較例1
合成例3で合成したセルロースアセテートを水分率0.75重量%に調整したもの7kg/hr、可塑剤としてカプロラクトンオリゴマー(分子量600)を3kg/hr用いた以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、色調を測定した。色調b値は8.2と着色が著しかった。重量平均分子量は87000と分子量は大幅に低下した。
比較例2
セルロースエステル(合成例1)を水分率1.25重量%となるように調整したもの80重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量700)を10重量%、水を10重量%を仕込みベント孔を有しないニーダー中220℃で混合し、混合ポリマーを得た以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、色調を測定した。色調b値は7.8と着色が著しかった。重量平均分子量は95000と分子量は大幅に低下した。
比較例3
合成例1で合成したセルロースエステルを乾燥して水分率を0.12重%にしたもの65重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール分子量400を35重量%を用いた以外は比較例2と同様にして、ペレットを作成し、色調を測定した。色調b値は8.0と着色が著しかった。重量平均分子量は98000と低下した。
Figure 0004552460
Figure 0004552460
得られた組成物をさらに糸、フィルム、成形品などに成形する場合、得られる成形物は機械的強度、色調の優れたものとなる。得られる成形品は、色調、強度、品位を要求される分野、すなわち、農業用資材、林業用資材、水産資材、土木資材、衛生資材、日用品、衣料用繊維、産業用繊維、不織布、フィルムなどとして好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. セルロースエステルと、ポリエーテル化合物、分子量250以上のグリセリンエステル、および分子量250以上のジグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種である可塑剤とを主成分とする熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法であって、上記セルロースエステルとしてアシル部の炭素数が3以上であるエステルをグルコース単位あたり平均0.5個以上有し、カールフィッシャー電量滴定法水分計を用いて180℃にて測定した水分率が0.2〜5.0重量%であるセルロースエステルを用い、かつ少なくとも1個のベント孔を有する成形機を用いて溶融成形を行うことを特徴とする熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
  2. 前記熱可塑性セルロースエステル組成物が、80〜95重量%のセルロースエステルと、5〜20重量%の可塑剤とを少なくとも含んでなるものであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
  3. 前記セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートより選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
  4. 前記可塑剤が下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
    R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
    (ただし、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
  5. 前記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物の分子量が200〜1000であることを特徴とする請求項に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
  6. 前記ベント孔を有する成形機の少なくとも1つのベント孔が減圧に保持され、該ベント孔の減圧度が−80kPa以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法。
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