JP4576366B2 - ラップ皿 - Google Patents

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Description

本発明は、レンズやプリズム等の光学素子等を加工する際の砂掛けや砂摺りと呼ばれる工程にて用いるラップ皿に関する。
ラッピング(以下、ラップという)加工に用いられるラップ皿は、その表面形状を被加工物表面に転写させる目的で使用される。すなわち、ラップ皿と被加工物との間に、アルミナ系やSiC系の砥粒を水に分散させたスラリーを介在させて相対運動させ、ラップ皿の表面形状を被加工物表面に転写させる。このようなラップ皿は、非特許文献1に記載されるように、一般的に鋳鉄をその材料としている。
鋳鉄は、ラップ作業に使用される砥粒よりも軟らかいために、ラップ皿表面に砥粒を保持しやすく、また、ラップ皿の表面形状の修正をラップ皿同士をスラリーを介在させて摺り合せることで可能である等のため好んで使用される。
特許文献2には、この特徴を生かして改良を行った例が開示されている。この特許文献2では、球状黒鉛鋳鉄に錫を一定量含有させて焼入れ・焼戻しの熱処理を行い、これによって、高硬度かつ均一な硬度分布を持たせることを狙ったものである。
このようなラップ皿につき、形状修正を行うには、凹面と凸面が逆の略同一曲率半径を有する鋳鉄製の皿を対向して密接配置し、ラップによる共摺り作業によって行われる(特許文献3参照)。
光学素子加工技術’84 I−1光学材料と加工 P27 特許第3779473号公報(株式会社東芝) 特開平10−249695号公報(株式会社ニコン)
前述したように、ラップ皿の材料として用いられる鋳鉄は、その軟らかさによって砥粒を保持できるという特徴によって好んで使用されている。しかしながら、一方でその軟らかさに起因した磨耗によるラップ皿の形状の変化が起こりやすい。
ラップ作業の目的は、ラップ皿の表面形状を被加工物表面に転写させることであるが、ラップ皿の形状が変化すると、その形状が転写される被加工物表面の形状も変化してしまう。この対策案として、鋳鉄をベースとして硬度を増加させることも考えられる。
しかし、一般的に、鋳鉄はラップに使用されるアルミナ系やSiC系の砥粒の硬さと比較すると軟らかいため、顕著な改善効果を得ることは困難であった。
また、この鋳鉄製のラップ皿の形状修正は、凹凸逆の略同一曲率半径を有するラップ皿の共摺りで行うが、共摺り作業は手作業で作業者の感覚で行うため高い技能が必要となる。しかして、ラップ皿の形状精度は、目的にもよるが、理想の曲率半径に対して数μmの誤差しか許容されない場合が多い。これを手作業で行うため、高度な技能が必要となる。また、この作業をマシニングで行う場合もあるが、鋳鉄という材料の特性上、粉塵が設備や作業者に与える影響は避けられない。
本発明は斯かる課題を解決するためになされたもので、ラップ作業において耐摩耗性が高く形状変化が少なく、かつ形状修正の際に作業者の技能に依存することなく容易に加工ができるラップ皿を提供することを目的とする。
発明は、被加工物との間に砥粒を介して摺り合わせ可能に対面配置された転写面を有し、該転写面の面形状を前記被加工物に転写させるラップ皿において、
前記転写面は、バインダーを0.3量%以上含有する超硬合金で構成されていることを特徴とする。
また、上記のラップ皿において
前記超硬合金は、バインダーを0.3量%〜15量%含有することが可能である。
また、上記のラップ皿において、
前記超硬合金は、鋳鉄よりもビッカース硬度(Hv)が大で、かつ磨耗係数が前記鋳鉄よりも小さく、さらに速度係数が前記鋳鉄の1/10以上であることを特徴とする。
(但し、磨耗係数とは、所定条件でラップ作業を行った場合に、鋳鉄製のラップ皿を用いた場合の磨耗量に対する、超硬合金製のラップ皿を用いた場合の磨耗量の相対比較値、速度係数とは、前記磨耗係数を得るのと同じ条件でラップ作業を行った場合に、鋳鉄製のラップ皿で所定磨耗量を得るために要した時間に対する、超硬合金製のラップ皿で所定磨耗量を得るために要した時間の相対比較値)。
本発明によれば、ラップ作業によるラップ皿の磨耗を低減することができる。これにより、被加工物の面精度を維持することができる。また、作業者の技能に依存せずに、高精度に形状修正加工を行うことができる。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態のラップ皿を用いたラップ盤の概要を示す図である。このラップ盤10は、回転軸11を中心として矢印A方向に回転自在なラップ盤本体12と、このラップ盤本体12に固定されるラップ皿14と、このラップ皿14の曲率を有する面に対向して配置される被加工物16を支持する支持部材18と、を有している。支持部材18は、ラップ盤本体12の回転軸11と略同軸の回転軸19を中心として、矢印B方向に回転自在かつ矢印C方向に揺動自在に配置されている。
この支持部材18は、被加工物16の底面に固定され、該被加工物16に所定の圧力を与えつつ揺動と回転を付与する。
ラップ皿14は、タングステンカーバイド(WC)等の超硬合金に、0.3〜15量%のバインダーを含有させたものが用いられている。このラップ皿14は、図2に示すように、皿部20と取付部22とからなる。皿部20は転写面としての加工面21を有し、この加工面21は所望の形状に形成されるが、本実施形態では凹球面に形成されている。
そして、ラップ作業においては、アルミナ系またはSiC系の砥粒を水に分散させたスラリーを被加工物16との間に介在させ、摺り合わせを行う。
この摺り合わせにより、被加工物16の表面に加工面21の凹球面が転写された球面が創成される。被加工物16としては、例えば光学レンズ等の光学素子が用いられる。取付部22は、ラップ皿14を回転させることが可能なラップ盤本体12に取り付けるために設けられている。本実施形態では、ネジが形成されている。
また、本実施形態では、皿部20と取付部22とは同じ材料で形成されている。
図3は、ラップ皿14の材料成分(量%)とラップ特性の比較を示す図である。
同図における材料1〜8は、本実施形態の材料成分例であり、比較例は鋳鉄である。ラップ特性としては、材料のビッカース硬さHv、磨耗係数、速度係数の3種類とした。
ここで、磨耗係数とは、#600のアルミナ系スラリーを用いて光学ガラスBSL7をラップした際に、鋳鉄製のラップ皿14の磨耗量を1とした場合の、超硬合金製のラップ皿14を用いて加工した場合の超硬合金製ラップ皿の磨耗量をいう。
また、速度係数とは、磨耗係数と同一のラップ条件にて、鋳鉄製のラップ皿14で光学ガラスBSL7を一定量除去加工した際に、その所定減耗量を得るために要した加工時間を1とした場合の、超硬合金製のラップ皿14で光学ガラスBSL7を加工した場合に同一除去量を得るための時間をいう。
例えば、鋳鉄製のラップ皿14で所定減耗量を得るのに5分要し、超硬合金製のラップ皿14で10分要したとすると、超硬合金製のラップ皿14の速度係数は2となる。
ところで、超硬合金の製造過程にて添加されるバインダーには、Co系(コバルト)、Ni系(ニッケル)、Ti系(チタン)などが知られているが、Co系とNi系が一般的である。本実施形態において、バインダーを添加した理由は、ラップ皿14の加工面にスラリー内に含まれる砥粒よりも軟らかい部分を設けることで、ラップ中の砥粒保持の能力を高めることにある。
ラップ皿14の材料成分の大半を占める超硬合金の硬さは非常に大きく、砥粒による耐磨耗性の向上は期待できるが、ラップ皿14の表面に砥粒を保持することが困難である。このため、砥粒の引っかきの作用が期待できないため、ラップ加工の速度が低下されることが懸念された。
本実施形態では、バインダーの含有量を0.0〜15量%の幅を持たせた材料を製作して、比較検討を行った。硬度については、バインダーの含有率に関わらず、鋳鉄と比較して超硬合金の方が非常に大きい。これに対し、例えば鋳鉄よりも硬度が大きく、超硬合金よりも硬度の小さいアルミナ系砥粒を用いた場合には、超硬合金製のラップ皿の磨耗が小さいことが予測される。これを確認するために、磨耗係数の比較を行った。
図3で明らかなように、バインダーの含有率に関わらず、超硬合金製のラップ皿14は鋳鉄よりも磨耗が小さいことが確認できた。これにより、少なくともラップ皿14の材料を鋳鉄から超硬合金に変更することでラップ皿14の磨耗状況は改善される。よって、結果として、ラップ作業によって得られる被加工物16の表面形状の安定性が改善される。
次に、速度係数の比較を行った。速度係数については、バインダーの含有率の影響を大きく受けることが確認できた。傾向としては、バインダーの含有量が大きくなるに従って速度係数が大きくなる。これは当初の発明者の予測通り、バインダー部分が砥粒保持の役割をしているためと考えられる。
速度係数は、バインダーの含有量が少なくなるに従って小さくなり、0.3量%よりも少なくなると鋳鉄と比較して1/10以下の速度となってしまう。ラップ加工は、ラップ皿14と被加工物16とを摺り合わせる際に、界面にて砥粒の転動と引っかきの2つの作用が起こることで進行する。しかし、バインダーの含有率が小さくなり、特に0.3量%よりも少ない場合には、砥粒の転動の作用しかなくなるために、被加工物16の加工面状態が大きく異なってしまう。具体的には、面粗さが小さくなりすぎてしまう。
よって、ラップ皿14を構成する超硬合金は、バインダーの最低含有量が0.3量%と定めた。そして、好ましくは、このバインダーを0.3量%〜15量%含有していることが望ましい。バインダー含有量の上限については、超硬合金の硬度との兼ね合いとなるが、製造工程における焼結方法によって硬度維持の状態が大きく異なるため、制限を設けないこととした。
また、鋳鉄製のラップ皿14の形状修正は、スラリーを用いた共摺りで行うが、本実施形態の超硬合金製のラップ皿14の形状修正は、マシニングにて行う。超硬合金は、ガラスレンズ用成形金型として用いられることが多く、高精度に球面や平面の加工を行う技術は確立している。また、レジンボンドダイヤモンド砥石やビトリフアイドダイヤモンド砥石を用いることで、形状誤差0.1μm程度まで高精度な研削加工ができることが知られている。
この技術を用い、ラップ加工後の被加工物16の形状と目標形状の差分を補正加工量として設定し、ラップ皿14の皿部20の加工面21を補正研削加工することが容易にできる。これにより、粉塵を発生させることなく、また共摺りのような高い技能を必要とすることもなく、高精度にラップ皿14の表面の形状修正を行うことができる。
(第2の実施の形態)
図4は、本実施の形態のラップ皿の断面正面図である。なお、第1の実施形態と同一又は相当する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施形態では、皿部20と取付部22を超硬合金で一体的に形成した例を述べた。本実施の形態では、図4に示すように、皿部20と取付部22とを別体とし、両者を接着によって一体化し、ラップ皿14としている。
すなわち、この実施形態では、取付部22は受け部24とネジ部26を有し、この受け部24とネジ部26は適宜の材料により一体的に形成されている。皿部20は超硬合金で構成され、この超硬合金は、バインダーの最低含有量が0.3量%であり、好ましくは、このバインダーを0.3量%〜15量%含有している。
そして、皿部20は受け部24に載置され、適宜の固定手段、例えば接着剤28によって強固に接着されている。
本実施形態によれば、ラップ作業によるラップ皿14の磨耗が低減できる。これにより、被加工物16の面精度を維持することができるようになる。また、ラップ皿14の形状修正が、人や設備に悪影響を与えるような粉塵を発生させることなく、マシニング加工できる。このため、従来のように作業者の技能に依存せずに、高精度に形状修正加工を行うことができる。
第1の実施の形態のラップ皿を用いたラップ盤の概要を示す図である。 同上のラップ皿の断面正面図である。 ラップ皿の材料成分とラップ特性の比較を示す図である。 第2の実施の形態のラップ皿の断面正面図である。
符号の説明
10 ラップ盤
11 回転軸
12 ラップ盤本体
14 ラップ皿
16 被加工物
18 支持部材
19 回転軸
20 皿部
21 加工面
22 取付部

Claims (3)

  1. 被加工物との間に砥粒を介して摺り合わせ可能に対面配置された転写面を有し、該転写面の面形状を前記被加工物に転写させるラップ皿において、
    前記転写面は、バインダーを0.3量%以上含有する超硬合金で構成されている
    ことを特徴とするラップ皿。
  2. 前記超硬合金は、バインダーを0.3量%〜15量%含有している
    ことを特徴とする請求項1に記載のラップ皿。
  3. 前記超硬合金は、鋳鉄よりもビッカース硬度(Hv)が大で、かつ磨耗係数が前記鋳鉄よりも小さく、さらに速度係数が前記鋳鉄の1/10以上である
    (但し、磨耗係数とは、所定条件でラップ作業を行った場合に、鋳鉄製のラップ皿を用いた場合の磨耗量に対する、超硬合金製のラップ皿を用いた場合の磨耗量の相対比較値、速度係数とは、前記磨耗係数を得るのと同じ条件でラップ作業を行った場合に、鋳鉄製のラップ皿で所定磨耗量を得るために要した時間に対する、超硬合金製のラップ皿で所定磨耗量を得るために要した時間の相対比較値)
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のラップ皿。
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