JP4657608B2 - 医薬品組成物および薬剤調合へのラメラ体の使用 - Google Patents

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Description

本発明は、治療を目的として、体腔、血管、管および組織内にて代用ラメラ体として機能してフィブリンの血管内への過剰な沈積および除去を変更するリン脂質構築物に関する。
多くの動物は他の構造物から腸が分離する体腔を有している。腹膜は胸膜や心膜と同様に体腔から派生する。
その内に管状の腸を含む円柱状の体壁のみから構成されている最も原始的な動物では、蠕動により栄養の流れを腸の一方の端からもう一方の端に向かって維持されているのであれば、体腔は非癒着性の派生物によって2つの部分に分けられていなければならない。腸が体壁に癒着して蠕動が停止すれば生命活動にとって不都合であることから、進化の初期段階に於いてこれら生体構造の間に非癒着性面が整えられた。人間では手術、慢性の生体炎症、または子宮内膜症を問わず、何らかの原因によって腹膜が癒着した場合には、その人間に深刻な結果をもたらす。
原始動物では、体腔は腸もしくは体壁を通して外部環境から生物または有害分子が移入するという重大な危機に常に曝されている。生命の危機は急激であり、侵入物は体腔全体に瞬く間に広がる。この様な事情から、体腔液が厚みを増して漏洩を防止し、侵入生物を捕獲する迅速な防御反応が進化した。この反応は水溶性タンパク質(プロト−フィブリノーゲン)が容積の大きな網構造に重合することで起こる。一般に医学および生物学は、高等脊椎動物の血管系に見られる精緻で高度に進化した凝固のメカニズムが始まった部位とその目的についての知識をほとんど欠いたままである。それ故にこの凝固システムが、もう一つ同様に生命維持に働くシステムである体腔内層面の非癒着特性の進化と前後して進化したものであることに気づかなかったのだが、この凝固システムは、最近になってラメラ体分泌システムであることが発見された。凝固メカニズムについて行われた莫大な研究のほとんどは血管を中心にしたものであったため、漿液腔での凝固メカニズムについての研究はほとんどなく、その結果全身あらゆるところで起こるフィブリンのゲル化に関しラメラ体システムが果たしている決定的な役割について認識できなかった。
手術後癒着
外科分野では、腹膜癒着は腹部および骨盤内手術に極めて頻繁に見られる合併症であり、世界中で重大な病気、死亡あるいは手術時間の不要な損失の原因となっており、そして医療制度に出費を強いていることは広く認識されている。しかし最近まで良質の疫学データがないことと、癒着形成を効率的に阻止できなかったこととが相まってこの病気について厳密に研究しようとする機運は乏しかった。
先進諸国では腹膜癒着の最も一般的な原因は腹部手術であり、小腸閉塞の主要原因は前に行われた手術に続いて起こる癒着形成である。さらに今世紀を通して癒着を原因とする腸閉塞例は1930年の7%から1969年の64%へと一貫して増えているが、これは人口当たりの腹部手術頻度が大きく増加したことを反映している。現在、世界中で癒着が重大な病気、失業そして医療制度の出費の原因であると認識されている。侵襲性の低い手術法が最近開発され、癒着が過去のものになると期待された。しかし実際はそうならなかった。
最近行われた疫学研究が正確で詳細な癒着頻度に関する統計を示し、この問題が深刻であることを証明している。この研究はスコットランド国民健康保険(Scottish National Health Service)医療記録リンケージデータベースの検証済みデータを利用したサージカル・アンド・クリニカル・アドヒージョンズ・リサーチ・グループ(SCAR)により実施された。研究では1986年に腹部また骨盤内手術を受け、且つそれ以前5年間に手術記録がない患者を特定した。その後10年間患者を追跡調査し、癒着度別にその後の再入院について調べ、その結果を分類した。再入院全患者の5.7%が明らかに癒着を原因とする再入院に分類された。その他28.9%が、おそらく癒着が原因と考えられる亜急性の閉塞の症状および徴候により再入院していた。スコットランドでは、1994年に癒着に直接関係する入院が人口500万人当たり合計4,199回あった。同じ期間で、同じ人口について、他の一般的で重要な手術、例えば臀部置換手術(4,394例)や冠動脈バイパス移植(4,020例)、あるいは痔疾手術(4,226例)という同等の数字からみると、この数字は入院につながる癒着の件数が多いことを明らかにしている。
癒着の持つその他の影響について手術を進める前に詳細に吟味することは困難、且つ時間を要する。再開腹手術を行った120例の患者にかかった負担に関する研究では、前回行った手術を原因とする腹腔内癒着によって全手術時間が平均で24分間延長すると算出した。再開腹手術を行った274名のうち21%に腸穿孔のリスクが認められたことから分かるように、手術中の癒着溶解の危険もある。
死亡率という観点から見た場合、腸閉塞は最も重傷な癒着の帰結である。再開腹手術を必要とした患者の30〜41%に腸閉塞につながる癒着が認められている。
癒着の臨床的結果は単に腸に限定されない、ということに注意しなければならない。癒着は女性の二次的不妊の第一原因であり、腹部および骨盤内のかなりの痛みや不快感の原因となっている。
手術後の癒着発生率は、世界中の医療社会で徐々に受け入れ難くなってきている。しかし漿液腔の分子生物学に関する近年の進歩によって癒着の原因病理論について正確な情報が得られるようになり、その結果、いずれの体腔派生臓器の手術に於いても、科学的根拠に基づく予防が可能になる。これら新しい予防法には、漿液腔内でのフィブリンの形成および除去について理解することが含まれている。
現在の知識は、フィブリンのゲル化およびフィブリン溶解に関係する分子的、細胞的要素だけが要因であると考えている。本発明では、ラメラ体の分泌がフィブリンの沈積の物理的構造、ならびにその除去の速度および範囲の両方に重要な役割を果たしていることが理解できるだろう。本発明はこの知識を利用して、ラメラ体溶液の治療的使用を提供するものである。
急性炎症反応でのフィブリンの役割
フィブリノーゲンは急性期の可溶性タンパク質であり、血液および組織液中での一過性のレベル上昇は炎症反応の結果である。
凝血促進性因子との接触がフィブリノーゲンの重合を誘導し、フィブリン性のゲルを形成する。
20世紀の初頭、病理学者は急性炎症反応で起こる一連の事象について記載し、定義した。反応性の変化には3つの連続するプロセスが関係する:
1.血管内径および血流の変化
2.血管透過性の上昇とタンパク質に富む炎症性滲出液の形成
3.血管から血管外組織空間への白血球の漏出
組織空間内で最初に起こる現象は、各種組織化学的技術により確認されるフィブリンの出現である。初期の組織学的研究は、フィブリンが感染または損傷領域を隔離する試みであり、さらに隆起した浮腫組織内にあるフィブリンが「足場」を提供して、内側に移動する白血球のアメーバ運動を支援すると考えていた。急性炎症反応から判断すると、フィブリンが早期に整然と消失することは炎症反応に対して良好な結果の前触れであるが、それは過剰の組織液がリンパ管内に排出され、フィブリンの足場が除かれるからである。
従って、急性炎症反応の最善の結果は炎症を起こした組織が正常な構造と機能を完全に回復することである。このプロセスは分解または一次治癒と見なされる。
分解のプロセスでは、その主要な役割は細胞破片とフィブリンの除去である。しかし急性炎症の初期段階でフィブリンが大量に沈積した場合には、炎症性滲出液のフィブリン溶解酵素によって、これら沈積物が数日内に完全に除去されないこともある。その場合の結果は深刻である。というのは、迅速に取り除かれなかったフィブリンが組織化と呼ばれるプロセスを受けるからである。マクロファージがフィブリン内に入り込み、その直後に新しい毛細血管と繊維芽細胞が内側に伸びて肉芽組織として知られる組織を形成する。肉芽組織が成熟すると、それは一般には瘢痕組織と呼ばれる堅くて緻密な繊維性の組織に変化する。このプロセスを通じて対面する2つの組織表面または器官の間で肉芽組織が変化した場合、それまで分離していた部分を結びつけている緻密な繊維性の組織は癒着と呼ばれる。このプロセスはまた2次治癒としても知られており、そしてこの癒着が最初の急性炎症反応が起こった部位の正常機能に大きな障害をもたらすこともある。
抗生物質が登場する前の時代には、対細菌感染反応としてのフィブリン性滲出液の臨床徴候および症状に係わる日常医療業務は莫大な作業量であった。
胸部聴診での摩擦音は、肺炎球菌性肺炎といった肺感染症を原因として起こった胸膜の急性炎症反応により濃厚なフィブリン性滲出液が生じたことを示している。
心膜摩擦音も多く聞こえるが、これは各種感染に対する反応だけでなく尿毒症やリューマチ熱によっても発生する。医学の進歩に伴い様々な病気が完全に消失したことで、現代の研究者は多くの病気で重要とされてきたフィブリン沈着の役割について顧みなくなった。リューマチ疾患分野で研究を進めている分子生物学者はその例外であり、身体に多大な影響がある、血管外に沈着したフィブリンの緻密なフィブリン性組織への変換については今も研究の焦点である。
この20年間に中皮、外傷や炎症に対するその反応、その修復および再生に関する分子生物学は大きく進歩した。基底膜の上にある薄い中皮単層は腹部臓器(内臓)と腹腔壁(体壁)を全て覆っている。成体では、その表面積は2m2に達し、水や低分子量溶質を交換するための半透膜として機能している。正常な状態では、ヒトの腹腔は対抗面とわずか5μしか分離していない潜在的空間として存在している。従ってその中に存在する低比重の、タンパク質含量の小さい透明な無菌液は50mlにすぎない。フィブリノーゲンは存在しておらず、従って漿液は凝固しない。
腹膜の局所性炎症反応は他の組織と同様であるが、腹膜の裏層は固有なものであり、広い滲出性・吸収性の表面を持っている。この裏層は数リットルの体液に対応するために分離することができる。刺激を受けた部位では、高いタンパク質含有量を示す液体の腹腔内への流入が見られる。この滲出液はフィブリノーゲンを含んでおり、これが中皮または白血球が放出する局所性の組織因子と接触すると固体フィブリンに重合する。炎症表面に形成したフィブリン性滲出液のプラークは近接する腸、腸管膜および網どうしを癒着させる。癒着のプロセスは、非常に接着性に富むフィブリンが損傷域を徐々に封入している時に蠕動が阻害され、それにより腸のループと網とが不動化することによって更に促進される。このプロセスの進化によって、感染部位が局所にとどめられて感染が腹腔内全体に広がることは阻止されるようになったが、同時に手術により腹膜を無菌的に開いた場合でもこの反応が必然的に起こるようになった。
すなわち中皮は、炎症反応の一部として、組織因子の局所的な産生を介する強力な凝血促進能を有している。そのため中皮は腹膜滲出液内に放出されると、フィブリノーゲンを固体フィブリンに重合するカスケードを始動する。このプロセスは同等の効力を持つフィブリン分解能によってバランスがとられており、正常な腹膜組織は相当量のプラスミノゲンを含んでいて、これが組織プラスミノゲン活性化因子の分泌によりプラスミンに変換する。これらプロセスが、活性化因子と阻害因子とによって精密にバランスがとられたカスケードシステムを構成している。
本発明に於いては、出願人の研究は、フィブリンのゲル化がラメラ体を含む環境で発生した場合には、そのゲル化は大きな影響を受けることを示している。ラメラ体は現代生物学の最近の発見であり、1975年にはその超微細構造が特定され、界面活性剤の肺分泌が持つ重要機能との関連が見いだされている。即ち、肺組織をグルタルアルデヒドおよびタンニン酸の特別な混合液で固定することで、小胞が空の組織ではなく、実際には強い好オスミウム性物質が高密度につまった顕著な幾何学的なラメラ構造体を含んでいることを発見するまでは、II型肺胞上皮にラメラ体が存在することは知られていなかった。現在はリン脂質ラメラが細胞内で形成されること、それらが大型ラメラとして小胞貯蔵されること、そしてエキソサイトーシスによってII型肺胞上皮の管腔表面から肺表面活性剤として放出されること、が明らかにされている。
今日では、腹腔内に散在的に存在する液体の潤滑性は低濃度のグルコース−アミノグリカンに起因するものであり、そして裏打ちする毛細血管から腹腔内に受動的に拡散したものであると広く信じられている。光学顕微鏡の解像度は低いため、中皮細胞は長い間単純な能動的活動をしている細胞と信じられてきた。ヒトの腹膜について最初に行われた電子顕微鏡研究からは、中皮細胞が明瞭な分泌機構を備えた洗練された細胞下レベル構造を持つことが明らかになった。中皮細胞とII型肺胞上皮との間の超微細構造の一致性を調べたところ、中皮細胞が肺界面活性剤の主要成分であるホスファチジルコリンを、肺が生成するのと同じ量合成していることが分かった。続いて、ラメラ体を保存するために開発された特別な固定技術を腹膜に応用したところ、全ての中皮細胞に同じ構造が見いだされた。従来肺胞に限定されると信じられていたが、界面活性剤タンパク質Aと関連したラメラ体のエキソサイトーシス分泌はあらゆる漿液腔を裏打ちする中皮細胞に広く存在する生物学システムであること、そして密度は低いものの全身のその他様々な組織にも存在していることが明らかになった。
出願者の今回の研究は、ラメラ体が界面活性剤、潤滑剤、撥水剤および輸送機能として役立つことを示している。漿液腔においては、その主要な機能は対抗面との間に常に生成と再生している自己潤滑ボールおよびローラーベアリングとなって、極めて効率的に摩擦を減らすものと思われる。
手術中での表面間の癒着形成を防止する方法を提供することは有益であると考えられる。
また凝塊を溶解して凝固を防止する方法を提供することも有益であろう。
本発明の第一の目的は、手術中の癒着を防止する、または治療する方法を提供することである。
形成中、形成された、および成熟した(即ち数日を経た)凝塊を溶解する方法を提供することも本発明の別の目的である。
本発明の別の目的は、手術中に容易に実施できる方法を提供することである。
本発明の第1の局面によれば、ホスファチジルコリン44〜60%、スフィンゴミエリン15〜23%、ホスファチジルセリン2〜6%、ホスファチジルエタノールアミン6〜10%、ホスファチジルイノシトール2〜6%およびコレステロール4〜12%を含むラメラ体を含む、フィブリン凝塊形成に伴う疾患の防止及び治療に適した医薬品組成物が与えられる。
前記ラメラ体がホスファチジルコリン54%、スフィンゴミエリン19%、ホスファチジルセリン4%、ホスファチジルエタノールアミン8%、ホスファチジルイノシトール3%およびコレステロール10%を含むことが好ましい。
好ましくは、医薬品組成物はフィブリン凝塊形成防止を目的とするものである。
好ましくは、医薬品組成物はフィブリン凝塊の防止を目的とするものである。
好ましくは、医薬品組成物は癒着防止を目的とするものである。
好ましくは、医薬品組成物は癒着治療を目的とするものである。
好ましくは、医薬品組成物はフィブリン凝塊の改良を目的とするものである。
好ましくは、医薬品組成物は血管内凝塊の改良を目的とするものである。
好ましくは、ラメラ体は溶液の形で提供される。
好ましくは、ラメラ体は通常の医薬担体または賦形剤と組み合わせて供給される。
好ましくは、ラメラ体はヒアウロナンおよび/またはコンドロイチン硫酸Bと組み合わせて供給される。
場合によっては、ラメラ体は合成ラメラ体である。
別の選択肢はラメラ体が天然起源であることである。
天然および合成ラメラ体の混合物を用いることもさらに別の選択肢である。
好ましくは、医薬品組成物は噴霧の形状をしている。
好ましくは、組成物は30分間隔で使用する。
好ましくは、組成物中のラメラ体投与濃度は10×109/mlである。
好ましくは、ラメラ体は他の活性剤を組み入れる。
好ましくは、ラメラ体は抗エストロゲン化合物を組み入れる。
好ましくは、ラメラ体は更に化学療法抗腫瘍剤を組み入れても良い。
本発明の第2の局面によれば、フィブリン凝塊形成の防止に適した薬剤調合へのラメラ体の使用が与えられる。
あるいは、ラメラ体の使用はフィブリン凝塊の改良に適した薬剤調合を目的とするものである。
好ましくは、使用は癒着防止を目的とするものである。
あるいは、使用は癒着の防止を目的とするものである。
好ましくは、使用は血管内凝塊の防止を目的とするものである。
あるいは、使用は血管内凝塊の防止を目的とするものである。
好ましくは、ラメラ体は溶液の形で供給される。
好ましくは、ラメラ体は通常の医薬担体または賦形剤と組み合わせて供給される。
好ましくは、ラメラ体はヒアウロナンおよび/またはコンドロイチン硫酸Bと組み合わせて供給される。
好ましくは、ラメラ体の投与濃度は10×109/mlである。
好ましくは、ラメラ体は他の活性剤を組み入れる。
好ましくは、ラメラ体は抗エストロゲン化合物を組み入れる。
好ましくは、ラメラ体は更に化学療法抗腫瘍剤を組み入れても良い。
本発明をよりよく理解するために、以下に例示のみを目的として、以下の図面を参照しながら発明の実施態様および使用を説明する。
本明細書を通して用語「ラメラ体」は天然および合成ラメラ体の両方を表す。
正常の腹膜では、中皮表面はラメラ体を含む流体薄膜(4〜5μ)によって分離されている。この層の役割は、図4および5に見られる様に、摩擦を減らして対抗面との間の動きを容易にすることである。急性炎症反応では、この潤滑システムはフィブリンの形成によって直接妨害されるが、フィブリン形成の第1の目的はその場所の癒着促進と運動低下である。従って、必然的にこれら2つのシステムは生物学的平衡状態にあり、急性炎症反応が解消した後にはフィブリンは完全に除去されて潤滑システムが回復し、それに伴い運動および機能も回復する。
数十万人の患者に対しカテーテルの挿入または引抜きを通じて頻繁に腹腔へのアクセスが行われ、そして8〜10リットルの透析液が1日4回注入と排液されている状況では、腹腔はその中で起こる多様な刺激に対する反応を患者と医療アドバイザーの両方が知ることができる、生きた試験管として機能した。フィブリン滲出液が治療と密接に関係した特徴であることが臨床的および病理学的に明らかになった。
フィブリンのゲル化の研究については、比較的単純なin vitroモデルが提唱されている。可溶性フィブリノーゲンが高分子フィブリンに重合することが血管内凝塊形成の中心的事象であることから、赤血球、白血球および血小板といった他の血液要素が関係しないモデルを確立することが、変数の数が限られている環境でのプロセスの研究にとって重要である。このようなモデルを用いれば、個々の反応物の追加または引き抜きの影響を確実、かつ自信を持って研究することができる。
フィブリンゲル網構造のin vitroモデルおよびその形成に影響を与える因子
フィブリノーゲン分子は非対称型の棒状のダイマーである(おおよそ10×45nm)。活性化すると、フィブリノーゲン分子は端部同士で縦方向と横方向に結合して重合し、プロトフィブリルを形成する。プロトフィブリル同士が結合してフィブリン繊維を形成し、さらにこれが結合して幅広の束となる。プロトフィブリルはフィブリノーゲン分子自体の螺旋型を反映して、螺旋型にねじれると考えられている。フィブリン繊維もまたねじれた形状で、ある限度の大きさまで成長する。成長が制限されるのは、プロトフィブリルが繊維表面近くに伸長した結果と説明できる。プロトフィブリルを伸長するのに必要なエネルギー量が、結合に利用できるエネルギーを超えると、側方への伸長は停止する。
様々な物理化学的方法、光学顕微鏡や電子顕微鏡、液体浸透度や濁度を用いて水和フィブリンゲルについて研究が行われている。正常なヒトフィブリノーゲンに由来するゲルは、まっすぐな棒状の繊維要素から構成されており、その1部はより緻密な結節に源を発している。トロンビンまたはフィブリノーゲンの濃度が上昇すると形成されるゲルネットワークは次第に緊密になり、繊維は短くなり、そして多孔率が低下する。ネットワークのゲルの多孔率はまた、高いイオン強度で形成したゲルでも低下する。アルブミンおよびデキストランは、ゲル形成系に存在する場合、より多孔率の高い構造を生成することが知られている。従って、アルブミンは血漿中でのこのタイプのゲル構造の形成に関する決定因子の1つであると考えられている。
in vitroモデルでのフィブリンゲル化に対する代理ラメラ体の効果
合成ラメラ体をリン脂質−ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールおよびコレステロールを含む0.9%塩化ナトリウム混合液を用いて作製した。合成ラメラ体のサイズ範囲およびラメラ二重層の超微細構造構成を透過型電子顕微鏡で調べ、それらが天然のラメラ体のものと一致することを示した。さらに合成ラメラ体の無菌性についても検査した。
フィブリン凝塊は、ヒトフィブリノーゲンおよびヒトトロンビンを用いて作製した。フィブリノーゲン2mg/mlと最終濃度0.05pg/mlのトロンビンを0.5Mトリス−HCl緩衝液+0,1M塩化ナトリウム+0.018M塩化カルシウムに等分した。フィブリノーゲン溶液200plにトロンビン25plを加え、混合し、60分間放置して凝固させた。次に形成された凝塊を緩衝液200plで覆い37℃で1時間、インキュベーションした。
フィブリンのゲル化は溶液のイオン強度の影響を受ける。それ故に、0.9%塩化ナトリウムの中で作製した合成ラメラ体を加えて希釈した効果は、フィブリノーゲンおよびトロンビン濃度を適切に調節して補正した。塩平衡、ならびに凝塊の形成および構造に対する変化の影響についても別々に分析し、特徴付けを行った。合成ラメラ体を含んだ状態および含まない状態で形成される凝塊を、まず凝塊を取り除きやすいように特別に用意した冷凍バイアルの中で作製した。続いて各種研究用に2mlの注射器、48マイクロタイタープレート、およびプラスチック製微量キュベットの中で凝塊を作製した。
標準フィブリン凝塊および合成ラメラ体存在下で形成された凝塊の全体的特徴
in vitroモデルで作製したフィブリン凝塊は白色で、透明度は様々であった。凝塊を含む合成ラメラ体はまた標準の凝塊に比べ透明度が高かった。それら凝塊がプラスチックおよびガラス表面に接着しないのに対し、標準的な凝塊はプラスチックおよびガラス表面に強く接着した。
標準条件で作られた凝塊と、濃度を上げた合成ラメラ体を加えて作られた凝塊の差は凝塊の気孔率と直線関係する。換言すれば、凝塊密度はフィブリン繊維の分解度の働きであり、それはゲル化開始時に存在する合成ラメラ体の濃度に依存している。
その密度を反映するゲルの3次元構造は正確に測定して次の3つのモードで表すことができる:
1.透過型および走査型電子顕微鏡で見たフィブリン網目の超微細構造;
2.620オングストロームの透過光吸光度;および
3.ゲルを通過する流路のインピーダンス。
ゲル化の動的プロセスに関する経時変化研究を、3種類の測定法全てを用いて実施した。
それらはたとえ少量でも合成ラメラ体を加えると、フィブリノーゲンからフィブリンへ重合する際の経時変化が大きく変わることを示した。
標準フィブリン凝塊および合成ラメラ体を用いて作製した凝塊の超微細構造形態
各種濃度の合成ラメラ体を用いて作製した凝塊の形態を、標準的凝塊の形態と比較したところ、合成ラメラ体がゲル化に及ぼす影響について詳しく知ることができた。透過型および走査型電子顕微鏡で検証した凝塊は、2.5%グルタルアルデヒド、2%タンニン酸混合液で固定した後、合成ラメラ体を保存するため1%4酸化オスミウムで後固定した。
走査型電子顕微鏡で見ると、標準的な凝塊が分枝して絡み合うフィブリンの固体繊維からできた緻密なネットワークが確認できた。さらに多数の小さな節が繊維全体に規則的に分布していることがわかった。3次元的な超微細構造の外観、相対的な厚みや繊維の分離度、そして節との関係は、新しいフィブリン沈着を示すヒト腹膜からとった多くの腹膜生検標本に認められるものに極めて類似していた。in vitro凝塊および腹膜の生検標本は同一の方法で固定し、処理した。このように、in vitroでのフィブリン凝塊形成とin vivoの腹膜血管外フィブリン形成とが超微細構造上高い類似性を示しており、in vitroモデルより得たデータ結果には高い信憑性と信頼性がある。
透過型電子顕微鏡で標準フィブリン凝塊を見ると、適度なオシミウム親和性を持つ微細繊維が束の中に規則正しい透明な空間で相互に隔てられて配置されているのがわかる。ここでも超微細構造の外観は、透析患者のin vovoの腹膜生検で見られるものと非常に類似していた。
各種濃度の合成ラメラ体と共に形成したフィブリン凝塊を走査型電子顕微鏡で見ると、標準的なフィブリン凝塊に見られるものと大きく異なる3次元構造をしていることがわかる。
フィブリン繊維は、標準的な凝塊のフィブリン繊維に比べてきめが粗く、より不規則、不揃いであった。繊維の間隔が広いために網目内の間隙はより大きかった。
合成ラメラ体と共に形成したフィブリン凝塊は透過型電子顕微鏡でみると、標準的な凝塊に見られるものと根本的に異なる超微細な外観を示した。標準的な凝塊では、直線状網目の中のフィブリン繊維の中で幾何学配置のものはたったひとつのみであったが、合成ラメラ体と共に形成した凝塊では、繊維は合成ラメラ体の小胞特性を反映して曲線または環状といったその他の幾何学配置も示した。走査型電子顕微鏡が示す通り、繊維間の空間が広がったことにより網目は弛緩した。
620オングストロームの透過光の吸収
2種類の反応物質、フィブリノーゲンおよびトロンビンは、電解質溶液に溶解して吸光度が最低限の澄んだ液体を生成する。重合の動的プロセスが不透明性または濁度をもたらし、これらは時間とともに限界値まで増加する。このプロセスは620オングストロームの光の吸収を測定することにより分光光度計で正確に記録できる。標準フィブリン凝塊の場合は、濁度は素早く上昇し、比較的短時間で最大値に達する。合成ラメラ体の場合も天然ラメラ体同様に濁度は低い。トロンビンとフィブリノーゲンを混合すると同時に合成ラメラ体を加えると凝塊を生成するが、標準凝塊の形成プロセスに見られるものとは大きく異なる吸光パターンを示す。濁度の上昇はゆっくりであり、標準フィブリン凝塊に観察されるより低いがその最大値に達した後、24時間以上かけて基準レベルまで下がる。濁度に関するこの観察は、合成ラメラ体が凝塊形成のプロセスを時間的および構造的に大きく変化させることを示すもので、これはフィブリノーゲンからフィブリンへの重合速度および様式が変化したことを反映している。このことは、形成中の凝塊に合成ラメラ体が取り込まれると、合成ラメラ体の容積および濃度、および凝塊の大きさに応じて、凝塊の溶解に24時間から5日かかることを示している。
標準フィブリン凝塊および合成ラメラ体と共に形成した凝塊を通過する流路のインピーダンス
ゲルネットワークを通過する流体流の速度の比較は、試験材料内の相対的孔径を測定して行う。標準的なフィブリン凝塊および合成ラメラ体を含むフィブリン凝塊を用いて実施する簡単な実験を、2mlの注射器の中で行うことができる。
ワットマン社製の濾紙を注射器の底に敷いて開口部を覆い、圧力を固定して、注射器を通る緩衝液の通過速度を測定できる。その結果、合成ラメラ体を含む凝塊を通過する流体の速度は、標準フィブリン凝塊内を通過する速度に比べて少なくとも30%速いことが示され、合成ラメラ体存在下に形成された凝塊の孔径が有意に大きいことが示唆された。
事前形成した標準フィブリン凝塊への合成ラメラ体を含む生理食塩水添加の影響
フィブリン凝塊の能動的形成時に使用したのと同濃度の合成ラメラ体を用いて、様々な時間間隔で事前形成した標準フィブリン凝塊を合成ラメラ体溶液で覆い実験を行った。室温および37℃で合成ラメラ体を用いた時には、使用した合成ラメラ体の容積および濃度、および凝塊の容積に応じて、凝塊が24時間から5日までに溶解することがわかった。トロンビンのみを用いたin vitroシステムで形成したフィブリン凝塊では、繊維間に比較的弱い非共有の側方結合がある。安定フィブリン網構造因子13(フィブリン安定化因子)について、ペプチド結合を介して側方結合させるにはトランスアミダーゼが必要である。
事前形成したヒト全凝塊への合成ラメラ体を含む生理食塩水添加の影響
新たにヒト静脈血を試験管内に採取して凝固させた。1時間後、凝塊の収縮が起こった時点で血清を移し、合成ラメラ体を含む生理食塩水を加えた。合成ラメラ体の容積および濃度、ならびに凝塊の容積に応じて24時間から5日後までに凝塊はほとんど完全に溶解した。緩衝液中に、37℃で24時間から5日間放置した凝塊の場合も、合成ラメラ体を含む溶液に24時間から5日間曝すと同程度の溶解が起こった。
フィブリン形成および断片形成に於ける合成ラメラ体の作用様式
ラメラ体は活性化の過程にあるフィブリノーゲンからフィブリンへの重合に影響すると同時に、事前形成したフィブリンの断片化にも影響を与える特有の作用物質である。ラメラ体はタンパク質分解酵素ではないことから、この局面に関するそれらの作用は特異的なものである。代理ラメラ体となる合成ラメラ体は、凝固や繊維素溶解カスケードで主要な働きを果たす球状タンパク質分子とは異なり、直径0.4〜3μのミクロボディである。
発明者が実施した研究は、合成ラメラ体の作用様式の一部は、リン脂質二重層への結合を介して凝固関係因子を隔離することであることを示している。合成ラメラ体は多数のラメラと高い変形能を有しているため、互いに接触すると結合および変形することがある。
常に変化する表面層を外部に曝しているというこの特性が、合成ラメラ体に凝固カスケードにとって極めて重要である因子を吸着して組み入れる強い能力を付与している。
前述の如く、フィブリノーゲン分子は非対称製の棒状のダイマーであり、活性化により端部同士および側方同士結合して重合し、プロトフィブリルを形成する。
プロトフィブリルは結合してフィブリン繊維を形成し、後者は連結して幅の広い束となる。プロトフィブリルは螺旋系にねじれる。フィブリン繊維もまたねじれる。螺旋系のねじれはフィブリン繊維の絶対直径を決定するが、それは外側のプロトフィブリルが伸長するのに必要な量およびエネルギーが、結合に利用可能なエネルギーを超える程度まで外側の繊維の回転力が増加した時、繊維の癒着が停止する。
フィブリン繊維の持つねじれは側面の凝集を制限するため、半径方向の成長は制限を受ける。フィブリン繊維はフィブリン網目内では3次元的な直線状の構成であることが知られている。プロトフィブリルおよび繊維は共にねじれによって最大の強度を得るが、繊維そのものは曲がることはなく直線状である。純粋なフィブリン凝塊に注目した時、合成ラメラ体はその大きさおよび可塑性から、発生中の網目内のフィブリン糸間を通り抜けることができる。発生中の直線状のフィブリン網目内に球体が存在することは、重合での自己集合が螺旋状のねじれに依存している繊維に異常な構造応力を加えることになる。従って曲線状のマイクロボディの周囲に形成された繊維はさらなる機械応力を受けやすく、この場合繊維の曲りがプロトフィブリル内、凸部外面にプロトフィブリル間の結合エネルギーを超えるより高いレベルのエネルギーを作り出す。その結果、繊維の放射直径の下限値が新たまり、繊維の大きさは有意に減少する。従って発生中の凝塊中に合成ラメラ体が存在すれば、自立して自己増殖するフィブリン網目の形成を制限する機械応力が加わることになるだろう。
天然および合成ラメらゾーム溶液の治療への使用
合成ラメラ体は天然ラメラ体の作用を模擬することから、両者を様々な使用目的をもった治療薬として使用することができる。合成ラメラ体溶液は、ヒアルロナンおよび/またはコンドロイチン硫酸Bを加えたまたは加えない状態で、ほとんどの組織、体腔、血管および管組織に於いて、生命にかかわる全身性副作用がある抗凝固剤またはタンパク質分解性の繊維素溶解酵素を必要としない、フィブリンを原位置に沈着および/または除去を変更する方法を提供する。即ち合成または天然ラメラ体の治療に於ける重要な役割は、フィブリン凝塊または全凝塊を標的として局所的な変更または溶解をもたらすことである。このことは、合成ラメラ体を抗接着または抗凝固特性が求められる治療に利用できることを意味する。
具体的には、ラメラ体は次の2つの原則的な疾患治療群に使用できる:
1.血管外フィブリンの除去を通じて一次治癒を可能にすることで、急性炎症反応に曝される部位の構造および機能を正常に修復すること。ラメラ体を用いて肉芽組織の形成を阻止または変更することにより、瘢痕形成および機能損失を防ぐことができる。
2.ラメラ体はさらに血管内および血管外の全凝塊形成の治療にも用いることができる。合成ラメラ体は血管系の閉塞領域での血管内凝固を防止または変更することにも用いられるだろう。これは冠状動脈形成術の様な血管手術および血管内処置を含む状況に予防措置として用い、末梢細動脈および毛細血管床に凝固促進活性および/または微小塞栓を誘導できる。
合成ラメラ体は、それを動脈系に属するあらゆる内径の血管の中に形成された凝塊内に注入することにより血管内血栓の治療に用いることができる。溶液状の合成ラメラ体は、直接注入することにより血腫を液化する場合に使用できる。この治療は、局所の腫脹により急性の機能不全が起こっている場合、または合成ラメラ体が肉芽組織による治癒の遅れを阻止することでより短時間で血腫が消失し、結果として乱切りおよび損傷を防止する場合にも応用できる。
合成ラメラ体はあらゆる形の手術に於いて抗接着剤として使用できる。具体的には、溶液の形のラメラ体は、腹膜、胸膜、心膜、関節腔および腱鞘の手術に使用することができる。ラメラ体はまた脳外科手術にも応用できる。
腹腔手術に用いられるラメラ体の実施例
開腹手術では、手術処置を開始する前に、可能な限り広範囲に、内臓側および壁側腹膜表面に合成ラメラ体2mlを軽く噴霧する。合成ラメラ体は、空気乾燥による悪影響が出る前に、それを含む溶液と共に露出した一面の中皮細胞の微絨毛が密集した表面にからみつく。合成ラメラ体の薄層は乾燥から中皮を保護する。このようにして合成ラメラ体は手術開始時にはin situ密度が高くなっており、そして開腹による異常な刺激がフィブリノーゲンの滲出および露出した腹膜の裏層表面全体へのフィブリン沈着を誘発する。こうして一般的には手術処置開始時に形成される微細なフィブリン網目が、高い合成ラメラ体密度を持つ環境を作り上げる。従って形成された血管外フィブリン凝塊は当初から合成ラメラ体を含んでおり、その結果通常よりも密度が低く、合成ラメラ体および線溶系による繊維素溶解性の分解を受けやすいフィブリン網目が形成される。
1回の噴霧に用いる平均的な投与量は1mlである。合成ラメラ体の理想濃度は10×109/mlである。合成ラメラゾーム溶液100マイクロリットルを均一に噴霧した場合、1m2の腹膜表面が覆われる厚みは3μになる。手術方法の性質によっては、手術中、合成ラメラ体溶液1mlをさらに30分間隔で手術域全体に噴霧する必要がある。最後の合成ラメラ体溶液2mlは腹部を閉じる直前に腹膜全体に均一に噴霧しなければならない。4時間かかる腹部手術では、使用する合成ラメラ体溶液の総量は10mlである。
合成ラメラ体溶液は、癒着剥離を目的とした開腹術についても、開腹手術について記載したのと同様の方法で使用しなければならない。
気腹術を用いた腹腔鏡腹部手術の場合も、手術開始時および手術全体を通して平均30分ごとに平均1mlを腹膜に噴霧しなければならない。
腹腔内に噴霧される合成ラメラ体は、手術後に横隔膜両ドーム内のリンパ管弁蓋を通り抜けるドレナージにより排出され、胸管内を通過して全身循環に入る。合成ラメラ体は細網内皮系によって(天然ラメラ体同様に)素早く捕食される。4時間の手術で平均合計10mlを投与する結果の負荷は、細網内皮系にとって過剰な負荷にはならない。この合成ラメラ体の排除経路に加えて、代謝内への取り込みに関してはさらに2つの基本的な様式がある。天然ラメラ体の場合同様、合成ラメラ体も腹膜マクロファージにより捕食され、肺胞で起こるようにリン脂質に再生され、新たなラメラ体を生成するための基質として中皮細胞により吸収される。このように手術後の余剰合成ラメラ体は、リン脂質基質の大きなプールを提供し、高レベルのラメラ体産生を支える。術後の早い時期に於いてラメラ体の分泌を維持することは、血管外フィブリンの形成をダウンレギュレーションするだけでなく、腹膜層間の摩擦軽減のために非粘着性を高める役割も果たす。
典型的には、中皮細胞間の結合領域は傾斜している。即ち中皮細胞は部分的に重なりあっている。中皮細胞の核は極端に引き伸ばされた細胞に見られる特別な特徴を持つ核である。このように、それらの通常の周囲長に対し10倍も引き伸ばされることがある領域にある中皮細胞は、無傷の細胞のカバーを維持するためにその表面積を大きく拡張しなければならない。中皮細胞により管腔表面上に分泌されたラメラ体は細胞間を通過して結合域内に入り、そこでラメラ体は正常腹膜内に配置される。傾斜のある伸長した結合領域にラメラ体が規則的に存在すれば、細胞間に露出部ができないように細胞境界間を摩擦なく滑動できるようにする上で重要な機能を果たす。炎症を起こした中皮細胞下組織が様々な程度の腫脹を示し、そしてそれを覆う中皮細胞が伸長する術後期間中に於いて合成ラメラ体を過剰に投与することは、さらに中皮細胞層の分裂および分離を防止する上で重要であり、また術後の毛細血管からのフィブリノーゲンの滲出およびフィブリン形成の継続にも役立つ。
その他漿膜腔の手術
溶液状のラメラ体を用いた方法は、心膜および胸膜腔内で行われる手術中の癒着防止にも応用できる。これまで心臓運動の妨害は心機能にとって有害ではないと考えられていたために、胸壁への心膜の癒着は軽視されてきた。また1回の開心手術が、患者にとっては余命をかけて行う手術であると信じられてきた。しかし、最近では連続的な心臓手術がより一般的になってきた。このことは、行う手術に先立って執刀医が、心臓と前部胸壁との癒着を切り離すのに手間取る時間に加え、その領域の洗浄に著しい時間と困難が加わることを意味する。腹部手術同様、心膜腔を開いた際にラメラ体溶液を投与することができるが、この場合にはまず壁側および内臓側の心膜に1mlを噴霧する。
ラメラ体溶液はまた自由に動く胸膜を固定する肺手術にも使用できる。疾病あるいは手術条件によっては、胸膜の癒着が有益なために、ラメラ体溶液が用いられない場合がある。しかし胸膜腫瘍の実生があるために、胸膜内化学療法を行う上で胸腔内全体へのアクセスを維持する必要がある場合は、癒着のない自由胸膜であることが重要となるだろう。具体的には腫瘍実生を含む緻密なフィブリンは、緻密なコラーゲン性の癒着を生成し、転移してきた沈着細胞が抗ガン剤にアクセスできないように隔離する。
ラメラ体溶液中へのその他治療薬の組み込み
本発明はまた、ラメラ体の上または内部にその他の活性薬を組み入れて、手術中に意図した治療上有益な作用を効果的に与えるという選択肢も包含している。例えば腹膜内膜症の場合には、内膜上皮を抑える働きをすると同時に癒着溶解後に局部的に高密度のフィブリンが形成されるのを抑制する抗エストロゲン化合物を含むようにラメラ体を調製できる。
また腹膜腫瘍は、従来から見られるように腹膜の露出面に広がり、フィブリン凝塊内に絡み入れて転移性腫瘍沈着物を格納できる領域を含む緻密な癒着を形成するので、腹部癌腫症患者の手術中には化学療法的抗ガン剤を含むラメラ体を用いることができる。この治療方法は胸膜および心膜腔にも応用できる。
滑膜関節および腱鞘手術に用いるラメラ体溶液
ラメラ体溶液は開放および関節鏡手術にも応用でき、フィブリン沈着を改善し、瘢痕形成を抑制し、そして関節癒着を防止して一次治癒を促進することもできる。
関節腔大きさに応じて、ラメラ体溶液量を適宜減らしてもよい。
ラメラ体溶液は腱の手術にも用いられ、露出時には内臓表面に噴霧し、さらに腱鞘外面に噴霧することで緻密なフィブリン凝塊の形成を阻止できる。
神経外科分野でのラメラ体溶液の使用
末梢神経手術では、神経周膜を手術する場合にはラメラ体溶液および噴霧を使用できる。
頭内および脊椎内を手術する場合、他の体腔同様に髄膜でも外科的干渉に対し急性の炎症反応を起こすことがある。フィブリン滲出物が機能不全作用を伴う瘢痕形成を起こした場合、ラメラ体溶液の使用は選択肢の一つとなる。同様に、脳脊髄液もまた脳質上衣が分泌するラメラ体を含んでいる。
従って、脳槽封鎖解除を目的とする手術では、ラメラ体溶液を用いて手術で刺激を受けた凝固促進活性を中和することは有益であり、これを行わない場合には手術の意図とは逆の結果をもたらすこともある。
リューマチ性関節炎では、急性炎症は関節破壊に至る周期的な病理プロセスになる。
急性炎症では、炎症を起こした血管の多い滑膜の透過性が亢進した血管より大量のフィブリノーゲン滲出が起こる。その結果、フィブリンが関節周囲組織および関節腔沈着する。リューマチ性関節炎では、フィブリンは滑膜液量の最大34%を占め、その場合にはフィブリンは米粒体またはフレークと呼ばれる形で存在し、関節表面全体が厚い層構造で覆われるようになる。フィブリン網構造は関節周囲組織全体にも広く浸透する。肉芽組織内および関節腔内の広い範囲に、フィブリンが繰り返し沈着することにより二次治癒が起こり、関節腔がフィブリンにより癒着し、瘢痕が形成され、そして閉塞に至る。
関節内へのフィブリンの沈着は痛風、偽痛風およびライター病といった別タイプの急性関節炎の特徴でもあることに注意する必要がある。
ラメラ体溶液の関節内注射は急性の関節炎でも用いることができ、緻密なフィブリン凝塊の形成を阻止し、フィブリンの分解および溶解を促進する。この処置は抗炎症薬投与と組み合わせて実施できる。
中耳およびエウスタキオ管の疾患へのラメラ体(合成または天然)の治療使用
エウスタキオ管は中耳腔と咽頭とをつないでいる。その唯一の役割は鼓膜の両側の空気圧を等しくすることである。仮にエウスタキオ管が遮蔽されると、中耳の空気圧が上昇して聴力が低下する。1982年に、エウスタキオ管内の表層細胞が肺界面活性物質を分泌することが発見された。今日でもこの深遠な発見が、体のこの部位の疾患原因にとって極めて重要であることは耳鼻咽喉科医に広く認識されていない。この管内に分泌されるラメラ体が界面活性物質としての性質を有していることが、ラメラ体分泌の基本的な役割が界面活性物質ではなく、フィブリン滲出物およびプラグを遮断除去できる非接着表面を提供することだということを理解する妨げになっている。
エウスタキオ管は捕食者および被食者の両方に対し聴力を保護することにより、動物生存に関わる重要な機能を保護している。ヒト科は、最近になって垂直姿勢に適応したことから、水平な頭蓋骨を持ち不断の前進運動を行う全ての四肢動物にとって標準的なシステムを変更するのに十分な進化時間がなく、そのために中耳のドレナージは最適化されていない。この解剖学上の欠点は、種が一つにまとまり大きな群を形成するようになったのが最近のことであることと相まって、子供全体の3分の1が幼児期に滲出性中耳炎または「膠耳」にかかる現代の流行病を生んでいる(Bull PD.In:Diseases of the ear、nose and throat.Blackwell Science Ltd.Oxford.1996年.pp57〜60)。この病気は、エウスタキオン管が詰まり咽頭への排出が不良になることにより、粘り気の強い液体が中耳裂溝内にたまることが原因である。その結果、深刻な伝音難聴を引き起こし発育上および教育上の障害の原因となる。
この病気の病理は、ウイルスおよび/または細菌感染した咽頭から広がったエウスタキオ管の急性炎症に由来するものである。あらゆる部位に於いて、急性炎症の滲出液は、感染を局所にとどめてそれが拡大するのを防ぐことを役割とする血管外フィブリンを高い割合で含んでいる。さらに大量かつ持続的なフィブリン性滲出物は二次治癒をもたらすと同時に、粘膜下繊維症、管腔癒着(微細癒着)、管狭窄および閉塞を起こす。他の部位と同様、病理的続発症はラメラ体の血管外フィブリンを初期段階で確実に除去する能力が過度であるために生じる。従って、初期の適切な段階でラメラ体溶液の直接注入または中耳やエウスタキオ管に達するグロミット(gromits)を用いて連続的または間歇的に投与すれば、前に形成された古いフィブリン性滲出物を溶解しながらフィブリンの形成を変更できる。
肺疾患治療へのラメラ体の新たな使用
肺疾患に於けるフィブリンの再評価結果
フィブリン形成および除去に対するラメラ体の極めて強力な生物学的作用に関する本発明について行われた我々のin vitro研究の発見は、炎症反応を伴う全ての肺疾患の疫学病理学について確立された概念の妥当性を批判的に再評価するきっかけとなった。これらの発見は、急性炎症およびその結果として不可避の肺胞内へのフィブリン沈着を含めた肺疾患の有効な対処法における、従来知られていないラメラ体の重要な役割の存在を明らかにした。
言い換えると、肺におけるラメラ体分泌が低下する疾患については、初期のフィブリン除去が促進されず、その結果二次治癒、肉芽組織および繊維症が生じるので、炎症反応の消散に重大な病理的影響を及ぼすことが予想できる。従って代理ラメラ体としてのラメラ体の役割は、全てではないにしろ大部分のフィブリンの肺胞内滲出が起こる肺疾患のより良い快癒に関する新規の治療効果と考えることができる。
炎症反応の性質に於ける肺胞構造の決定的役割
肺胞は厚さ20〜40ミクロンの、毛細血管網に富む顕微鏡レベルの薄壁を有している。炎症惹起物質が基部呼吸路を通過すると、気嚢を画定する極めて微細な顕微鏡レベルの構造を持つ領域に急性炎症反応が起こる。それに伴い、薄壁で囲まれハチ巣構造を持つ肺の極めて高い血管分布によって、このような領域内へのフィブリン滲出が肺機能に急激、且つ破壊的な影響を及ぼすことは明らかである。
他の部位同様、急性炎症は肺胞壁の毛細血管網に血管鬱血を起こし、顆粒球の辺縁趨向、血管壁透過性の亢進、およびフィブリノーゲンに富む滲出物の肺上皮細胞を迂回または通過しての肺胞腔内への滲出を招く。かくしてII型肺胞上皮が肺界面活性物質としてラメラ体を分泌すると、肺胞壁の周囲にフィブリンが沈着する。
ラメラ体の作用の生物学的または医学的分野に関する知識が欠けているので、合成ラメラ体を用いて行った我々のフィブリン形成および除去に関する研究が示すように、これからは、肺での炎症反応の病理学的進展または消散の経過に関し現在なされているいかなる説明についても疑問を呈する必要がある。
急性炎症反応でのフィブリンの役割を肺胞の構造的および機能的脆弱性に注目して考えたとき、肺を最初にラメラ体分泌部位であると認識することは偶然ではなく、たとえラメラ体が界面活性物質としての性質がどうであっても、それに加えてラメラ体が血管外フィブリンの形成および除去に大きな影響を持つことを次に明らかにする。
ヒアリン膜症
妊娠後期の間に肺に蓄積した界面活性リン脂質は、胎児の肺液の表面張力を弱め、そしてより細い気道の毛細管現象により通気抵抗を下げる。かくして出生時の呼吸の開始および維持のためにラメラ体として分泌される肺界面活性物質が適当量存在しなければならない。
新生児の界面活性物質不足は呼吸困難症候群またはヒアリン膜症として知られる様々な病状を起こす。その最大原因は早産であり、この場合未成熟な肺のII型肺胞上皮は十分量の界面活性物質を分泌できず、呼吸維持に必要な正常な生理学的状態を確立できない。この症候群の病理生理学に関する理解を完全に支配し、唯一の治療方針の根拠となる基本的生物学的概念は、肺胞と肺毛細血管間の適切な気体交換の確立に界面活性物質が役割を果たすというものである。肺胞に存在するリン脂質二重層の役割は、他には認められなかった。従って全ての薬学的努力は気体交換のあらゆる生理学的基準および肺メカニズムに適合する最も完全な天然型の界面活性物質を提供することに集中している。
しかし、ヒアリン膜症という旧式の名称は、この病気で死亡した新生児の肺胞に見られる顕著な組織学所見について、従来からこの用語を作った病理学者の関心を惹きつけている。「膜」という語の使用は、肺胞気と表層血管間にある生理学的バリアを示している。「ヒアリン膜」は好酸性の無細胞物質を表す不明瞭な病理用語である。
近代組織化学および電子顕微鏡は、ヒアリン膜が実際には大部分フィブリンであることを示している。
出願人の研究は、ラメラ体が気体交換に適切な生理学的条件を確立する上で必要なだけでなく、ラメラ体がフィブリンの沈着および除去を変更する上で、重要な平衡化要素でもあることを示している。従って合成または天然ラメラ体は、適切な気体交換確立のための拡張因子を含む界面活性物質と共に、二重治療の重要な要素としてヒアリン膜(フィブリン)の溶解を目的に、新生児の気道および肺胞に使用および適用できる。
界面活性物質を使用しているにもかかわらず現在も死亡例が絶えないのは、これら製剤がフィブリン膜の溶解および分解に十分な密度のリン脂質をラメラ体として供給せず、フィブリン膜が除去されない場合には、拡張因子と界面活性リン脂質の併用投与を完全に無効にすることが原因である。
腹膜透析へのラメラ体の使用
腹膜透析では、炎症反応を誘発する様々な刺激に反応して、腹膜からのフィブリン滲出がしばしば起こる。これらには細菌および真菌感染、エンドキシン、透析液経路に入り込んだ交換に使用した消毒剤、透析液に加えられた医薬品、例えば抗生物質などが挙げられる。この生命維持治療を放棄することにもなる病理学的続発症の認識を防止する新規の治療形態として高濃度の合成ラメラ体を含む溶液の腹膜内注入を用いることができ、形成されたフィブリンを溶解し、形成中のフィブリンを変更して腹膜繊維症の発生および腹膜内癒着の形成、腹膜カテーテルへの大網の癒着、ならびにカテーテルの閉塞を防止することができる。
患者から腹膜透析装置を外す場合は、透析中止後にカテーテルを通して腹膜内に合成ラメラ体溶液を注入する必要がある。これは、覆っていた中皮細胞が剥がされた腹膜表面間で癒着が形成されるのを防ぐためのものである。
硬化性腹膜炎は希ではあるが深刻な腹膜透析合併症であり、中皮全体が消失したことにより腹膜内でのラメラ体産生が失われ、広範囲にフィブリンが滲出して、手術では解消できない広範囲の癒着が起こる。今日においては、この一般的には致命的である合併症は、カテーテルを使って腹膜内に合成ラメラ体溶液を注入することで治療される。この合併症が起こった場合には、患者には滴定量の合成ラメラ体を含む透析液を用いた連続透析を行う必要がある。広範囲の癒着剥離手術を行う場合は、合成ラメラ体溶液の噴霧は手術中に始め、12〜20日間は定期的に腹部超音波で監視しながら継続すると、露出した臓器側および体腔壁側の腹膜の切開面は、幹細胞から再生した中皮層で覆われる。
合成ラメラ体の製造
本明細書では、我々は合成ラメラ体を使用して論じ、以下にそれを実行する1つの方法に関連する情報を提供する。
本発明では、リン脂質マルチラメラマイクロボディは、正常組織のラメラ体に見られるものに近い割合で特別なリン脂質を用いて作成される。本明細書記載のリン脂質マルチラメラマイクロボディとリポソームとを区別する大きな特徴は、コレステロール含有量が低いか、または全く含まない点である。生物医学応用分野では、リポソームは医薬品および様々な薬剤をコンパートメントに封じ込めて保存することを主な目的とする合成構造物としてデザインされている。それ故に、リポソームは高レベルのコレステロールを用いて構築されており、これが哺乳動物細胞膜に似た膜安定性および低い気孔率をもたらす。従って、コレステロール二重層濃度は薬物キャリアとしてデザインされたリポソームの循環半減期の重要な決定因子である。肝臓および脾臓で示された如く、リンパ細網系によるリポソームの取り込みに対しコレステロールが阻害作用を示すことは良く知られている(Patell HMら、1983年)。これとは反対に、ラメラ体の特性をモデルに作製したリン脂質マルチラメラマイクロボディは、食細胞により容易に取り込まれ、そして低コレステロール含有リポソームと同様にリンパ細網系組織によって迅速に循環系から排除される。
ラメラ体の主要なリン脂質成分はホスファチジルコリン(PC)、スフィンゴミエリン(SPH)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびリソレシチン(LPC)である。ラメラ体のリン脂質組成は、起源となる細胞によって若干変動する。
PCはいずれの起源部位に関してもラメラ体の主要リン脂質である。PC濃度の割合は肺洗浄の約70%から滑液の45%まで多様である(参考文献)。次に濃度の高いリン脂質はSPH(5〜15%)である。以下PE、PS、PI、PGならびにLPCは、起源部位により変動するが、ラメラ体内に1桁のパーセンテージの濃度で存在している。
リン脂質マルチラメラマイクロボディにとってリン脂質およびコレステロールの望ましい組成としては:PC54%:SPH19%:PE8%:PS4%:PI3%:コレステロール10%である。これらの値は平均値であり、天然のラメラ体では次の組成範囲が見いだされている(個人研究):PC44〜60%、SPH15〜23%、PE6〜10%、PS2〜6%、PI2〜4%、コレステロール4〜12%。これら数字は重量パーセンテージである。
またLPCをマルチラメラマイクロボディ内に2重量%組み込んでもよいが、この値は天然ラメラ体に見いだされる範囲0〜3%に準ずる。
リポソームの形をしたリン脂質小胞ももちろん良く知られている。しかしリポソームはその剛性を改善するために、当業者により高濃度コレステロールを用いて作製さる。コレステロール含有量が20%以下であるリポソームは、貧コレステロールと考えられている(Love WGら、1990年)。リン脂質と等モルである高い割合(50%)でコレステロールを組み込んでいるリポソームは、高い安定構造(Kirbyら、1980年、Seniorら、1982年)を有しており、故に本発明までは、我々の知る限りに於いて、低コレステロールマルチラメラマイクロボディを試用することは自明なことではなかった。肺胞由来のラメラ体のコレステロール含有量は約10%であることが知られている(Schmitz G、Muller J 1991年)(J Lipid Research.32;1539)。
本発明で主張される天然ラメラ体およびリン脂質マルチラメラマイクロボディ内にスフィンゴミエリンが存在することは重要である。我々が知る限りでは、スフィンゴミエリンはリポソームには一般的には用いられておらず、そしてラメラ体への柔軟性および軟性をもたらす。従来のリポソーム技術は、化学物質の運搬にとって堅いほうがよいことを教示している;しかし我々は抗原提示細胞への抗原運搬にとっては、柔軟で、コレステロール含有量が低い、スフィンゴミエリン含有リン脂質マルチラメラマイクロボディが理想的であることを発見した。
リン脂質マルチラメラマイクロボディ(合成ラメラ体)は、手で振動して作るマルチラメラ小胞の場合と同様の技術を用い調製する(New RRC、1990)。リン脂質混合物を、与えられた重量パーセンテージのコレステロールと共にクロロホルム/メタノール溶媒混合液(2:1容積/容積)に溶解する。脂質溶液を丸底フラスコに入れ、ローターリーエバポレーターにつなぐ。フラスコから空気を抜き、温度を30℃に設定した水槽内で60回転/分で回転して、乾燥脂質膜を沈積させる。フラスコ内に窒素を入れ、残存溶媒を取り除いてから、凍結乾燥機に接続し、室温で1時間高真空にかける。真空を解除し、続いて窒素をフラッシュした後、封入対象となる生理食塩水含有溶質(選択した抗原)を加える。脂質をフラスコ内で水和し、窒素をフラッシュしてからエバポレーターに接続し、室温にて30分間、60回転/分で回転する。懸濁液を2時間、室温で静置して十分に膨潤させる。
このように外科的手術では、様々なラメラ体溶液の応用がある。上記に開示した実施態様は発明の例示にすぎず、発明は様々な異なる形態を包含していることに留意しなければならない。従ってここに開示した説明は、請求の範囲を限定するためのものではなく、単に請求の範囲の基礎であり、当業者に本発明の適切な形態での各種使用を教示するためのものと解釈しなければならない。
体腔により体壁と腸が分離されている原始的な蠕虫の概略図。 中皮細胞とII型肺胞上皮との高い超微細構造類似性を示す中皮細胞とII型肺胞上皮の外観を表す概略図。 ヒト体壁中皮細胞の連続切片に基づく、ラメラ構造の形態および配置を例示する概略図。 新たに調製したタンニン酸、グルタルアルデヒド混合液で固定することでリン脂質二重層を保存した正常ヒト体壁中皮の連続電子顕微鏡写真を3次元的に構築した概略図。 ラメラ体潤滑システムの仕組みを示す、図4の3次元構築図に基づく略図。 腹膜内の急性炎症反応発生時に見られる、連続する組織化学変化を示す概略図。

Claims (23)

  1. ホスファチジルコリン44〜60%、スフィンゴミエリン15〜23%、ホスファチジルセリン2〜6%、ホスファチジルエタノールアミン6〜10%、ホスファチジルイノシトール2〜6%およびコレステロール4〜12%を含むラメラ体を含む、フィブリン凝塊形成に伴う疾患の防止及び治療に適した医薬品組成物。
  2. 前記ラメラ体がホスファチジルコリン54%、スフィンゴミエリン19%、ホスファチジルセリン4%、ホスファチジルエタノールアミン8%、ホスファチジルイノシトール3%およびコレステロール10%を含む請求項1に記載の医薬品組成物。
  3. 前記疾患が癒着である請求項1又は2に記載の医薬品組成物。
  4. 前記疾患が血管内凝塊である請求項1又は2に記載の医薬品組成物。
  5. 前記ラメラ体が0.9%塩化ナトリウム溶液の形で供給される、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬品組成物。
  6. 前記ラメラ体が通常の医薬担体または賦形剤と組み合わせて供給される、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬品組成物。
  7. 前記ラメラ体がヒアルロナンおよび/またはコンドロイチン硫酸Bと組み合わせて供給される、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬品組成物。
  8. 噴霧の形状をした請求項1〜7のいずれかに記載の医薬品組成物。
  9. 組成物中のラメラ体投与濃度が10×109/mlである、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬品組成物。
  10. 前記ラメラ体が他の活性剤を組み入れている、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬品組成物。
  11. 前記ラメラ体が抗エストロゲン化合物を組み入れている、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬品組成物。
  12. 前記ラメラ体が化学療法抗腫瘍剤を更に組み入れている、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬品組成物。
  13. ホスファチジルコリン44〜60%、スフィンゴミエリン15〜23%、ホスファチジルセリン2〜6%、ホスファチジルエタノールアミン6〜10%、ホスファチジルイノシトール2〜6%およびコレステロール4〜12%を含むラメラ体の使用であって、フィブリン凝塊形成に伴う疾患の防止及び治療に適した薬剤の調合のために、当該薬剤中に前記ラメラ体を含有せしめるラメラ体の使用。
  14. 前記ラメラ体がホスファチジルコリン54%、スフィンゴミエリン19%、ホスファチジルセリン4%、ホスファチジルエタノールアミン8%、ホスファチジルイノシトール3%およびコレステロール10%を含む請求項13に記載のラメラ体の使用。
  15. 前記疾患が癒着である請求項13又は14に記載のラメラ体の使用。
  16. 前記疾患が血管内凝塊である請求項13又は14に記載のラメラ体の使用。
  17. 前記ラメラ体が溶液の形で供給される請求項13〜16のいずれかに記載のラメラ体の使用。
  18. 前記ラメラ体が通常の医薬担体または賦形剤と組み合わせて供給される請求項13〜17のいずれかに記載のラメラ体の使用。
  19. 前記ラメラ体がヒアルロナンおよび/またはコンドロイチン硫酸Bと組み合わせて供給される請求項13〜18のいずれかに記載のラメラ体の使用。
  20. 前記ラメラ体の投与濃度が10×109/mlである請求項13〜19のいずれかに記載のラメラ体の使用。
  21. 前記ラメラ体が他の活性剤を組み入れている請求項13〜20のいずれかに記載のラメラ体の使用。
  22. 前記ラメラ体が抗エストロゲン化合物を組み入れている請求項13〜21のいずれかに記載のラメラ体の使用。
  23. 前記ラメラ体が化学療法抗腫瘍剤を更に組み入れている請求項13〜22のいずれかに記載のラメラ体の使用。
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