JP4768936B2 - 硫酸基を有するオリゴ糖 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はいわゆるヘパリン骨格を有し、硫酸基を有するオリゴ糖に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘパリンは各種成長因子への結合親和性を有し、その生理活性を制御することが知られている(Cell, vol.64 (1991), pp.841-848、Science, vol.252 (1991), pp.1705-1708、Mol. Cell. Biol., vol.12 (1992), pp.240-247等)。しかし、ヘパリンは抗血液凝固活性を有するため成長因子の生理活性を制御するための医薬として利用するには、その副作用の問題を解決する必要があった。そこで、ヘパリンの有する成長因子親和性に関する利点を生かしつつ、硫酸基の結合量を制御してその抗血液凝固活性を抑制したヘパリン誘導体の合成、探索が盛んになされている(Biochem. Biophys. Res. Commun.vol.203, no.1 (1994) pp450-458等)。
【0003】
一方、ヘパリン骨格を有するオリゴ糖についても同様に様々な探索がなされており、成長因子への結合活性に必要な糖構成数や硫酸基の位置、数について検討されている(Glycobiology vol.4, no.4 (1994)pp.451-458、Glycobiology vol.4, no.6 (1994)pp.817-824、J. Biol. Chem., vol.268, no.32 (1993) pp.23898-23905等)。
【0004】
しかし、ヘパリン及びそのオリゴ糖は未だ抗凝固剤としてしか医薬として使用されておらず、成長因子親和性を積極的に利用した医薬への活用が期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ヘパリン骨格を有するオリゴ糖を有用な医薬にしようとする試みがこれまでになされている。すなわち、ヘパリン骨格を有するオリゴ糖についての様々な成長因子との関係に関して研究がなされており、特にヘパリン骨格を構成するウロン酸の2位ヒドロキシル基にエステル結合した硫酸基及びヘパリン骨格を構成するグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基にエステル結合した硫酸基と成長因子との関係が研究されているにもかかわらず、そのような硫酸基のいずれかを有する糖残基を1残基のみ有するオリゴ糖は従来は得られておらず、そのようなオリゴ糖が有する成長因子への親和性や生理活性は知られていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基及び6位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたグルコサミン残基のいずれかの残基を1残基有し、ヘパリン骨格を有する8乃至14糖からなるオリゴ糖を得、このオリゴ糖が成長因子(成長因子としては繊維芽細胞増殖因子(aFGF、bFGFなど)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)等が例示される)への優れた親和性を特異的に示すことを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ウロン酸残基とグルコサミン残基からなる二糖の繰り返し構造のヘパリン骨格を有する6乃至20糖のオリゴ糖であって、2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基及び6位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたグルコサミン残基のいずれかの残基を繰り返し構造中に一残基有するオリゴ糖。
(2) グルコサミン残基のアミノ基が全てスルファミド化されていることを特徴とする(1)記載のオリゴ糖。
(3) 還元末端及び非還元末端から2糖目のウロン酸残基のヒドロキシル基、並びにグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基がいずれも硫酸エステル化されていないことを特徴とする(1)又は(2)記載のオリゴ糖。
(4) 8糖からなる(1)乃至(3)いずれか一項記載のオリゴ糖。
(5) 下記一般式1又は2により表されるオリゴ糖。
【化3】
Figure 0004768936
【化4】
Figure 0004768936
但し、R1及びR2はいずれか一方が硫酸エステル化されたヒドロキシル基であり、他方はヒドロキシル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立にいずれか一方がカルボキシル基であって他方がHを表し、NSはスルファミド基を表す。
(6) (1)乃至(5)記載のオリゴ糖を90%以上含むオリゴ糖画分。
(7) ウロン酸残基の2位ヒドロキシル基及び/又はグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基が硫酸化されていない6乃至20糖からなるヘパリン骨格を有するオリゴ糖にヘパラン硫酸2-O-硫酸基転移酵素又はヘパラン硫酸6-O-硫酸基転移酵素を作用させることにより得られるオリゴ糖画分。
(8) 下記の工程から得られるオリゴ糖画分。
(a)ヘパリン又はヘパラン硫酸が有する硫酸基を完全に脱硫酸化した後、グルコサミン残基の2位アミノ基を特異的にスルファミド化する;
(b)(a)で得られる多糖をヘパリン分解酵素により消化し、6乃至20糖のいずれかの画分を回収する;
(c)(b)で得られる画分に含まれるオリゴ糖にヘパラン硫酸2-O-硫酸基転移酵素又はヘパラン硫酸6-O-硫酸基転移酵素を用いてウロン酸残基の2位ヒドロキシル基或いはグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を発明の実施の形態により詳細に説明する。
【0009】
本発明のオリゴ糖は、ウロン酸残基とグルコサミン残基からなる二糖の繰り返し構造のヘパリン骨格を有する6乃至20糖のオリゴ糖であって、2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基及び6位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたグルコサミン残基のいずれかの残基を繰り返し構造中に1残基有するオリゴ糖である(以下本発明物質ともいう)。
【0010】
本発明において「ヘパリン骨格」とはウロン酸とグルコサミンが1,4グリコシド結合した二糖の基本単位がα1,4グリコシド結合で結合した繰り返し構造であり、ヘパリン及びヘパラン硫酸の基本骨格である。
【0011】
本発明物質においてウロン酸残基としてはヘキスロン酸残基が好ましく、具体的にはイズロン酸残基及びグルクロン酸残基が挙げられる。グルコサミン残基のアミノ基はアセチル化されていてもよく、また硫酸化されていても良いが、全てのアミノ基が硫酸化(スルファミド化)されてN硫酸化グルコサミン残基となっていることが好ましい。本発明物質は上記二糖からなる基本単位が3乃至10個(6乃至20糖)、より好ましくは3乃至7個(6乃至14糖)結合したヘパリン骨格を有することが好ましく、特に4個(8糖)結合したヘパリン骨格を有することが好ましい。
【0012】
本発明物質は2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基及び6位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたグルコサミン残基のいずれかを一残基のみ有するオリゴ糖であり、特に2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基を一残基有していることが好ましい。
【0013】
特に、本発明物質が2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基を一残基有するオリゴ糖の場合は、還元末端及び非還元末端から2番目のウロン酸以外のウロン酸の2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されていることが好ましく、例えば最も好ましい8糖の場合は、下記一般式(1)又は(2)で表される構造が例示される。
【0014】
【化5】
Figure 0004768936
【化6】
Figure 0004768936
但し、R1及びR2はいずれか一方が硫酸エステル化されたヒドロキシル基であり、他方はヒドロキシル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立にいずれか一方がカルボキシル基であって他方がHを表し、NSはスルファミド基を表す。
【0015】
通常は、糖鎖は単一鎖長の分子のみを精製単離することは事実上困難であるが、後述の本発明物質の調製法を用いると、本発明物質を高収率で得ることができる。
【0016】
本発明物質を含む画分は例えばウロン酸残基の2位ヒドロキシル基及びグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されていない6乃至14糖からなるヘパリン骨格を有するオリゴ糖に各々のヒドロキシル基に特異的な硫酸基転移酵素を作用させることにより上記ヒドロキシル基のいずれかを硫酸エステル化することで調製することができる。このようにして得られた本発明物質を含む画分はヘパリン骨格を有する本発明物質以外の糖鎖を含んでいても良いが、ヘパリン骨格を有する本発明物質以外の糖鎖はウロン酸残基の2位ヒドロキシル基及びグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基のいずれもが硫酸エステル化されていない糖鎖である。
【0017】
ウロン酸の2位ヒドロキシル基及びグルコサミンの6位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されていない6乃至20糖からなるヘパリン骨格を有するオリゴ糖は、(1)市販のヘパリン又はヘパラン硫酸のウロン酸残基に結合した硫酸基及びグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に結合した硫酸基を既知の方法を組み合わせて脱硫酸化(Biochem. Biophys. Res. Commun.,vol.203, no.1(1994),pp.450-458)、又は、(2)-1ヘパリン又はヘパラン硫酸に結合した硫酸基を全て脱硫酸化及び常法に従ってグルコサミン残基のアミノ基を再硫酸化(例えばCarbohydrate Res.,58(1977),pp.47-55)する工程、及び(2)-2ヘパリチナーゼI、ヘパリチナーゼII、及びヘパリナーゼ等のヘパリン骨格を低分子化するヘパリン分解酵素を用いて消化し、低分子化する工程を組み合わせた方法で調製することができる。通常は、消化前の糖鎖100mgに対して0.02〜2.0Uの酵素を用いて20〜45℃で3時間以上反応させることで調製することができるが、上記条件に限定はされず条件は適宜選択することが可能である。
【0018】
酵素などにより消化して得られる消化産物からの目的の数の糖残基を有するオリゴ糖を精製する方法は、分子量による分離方法が挙げられ、例えばゲル濾過法及び限外濾過法(分子濾過法)等が挙げられる。これらの方法を用いる場合の条件は当業者であれば適宜選択することが可能である。例えばゲル濾過にファルマシア社製のSuperdex30カラム(カラム容積120ml 流速1ml/分)を用いた場合には、14糖画分は65〜67分、12糖画分は68〜71分、10糖画分は71〜75分、8糖画分は75〜80分、6糖画分は80〜85分で溶出される。各画分は特定の糖残基数のオリゴ糖を90%以上含む。
【0019】
上述のように得られたオリゴ糖に硫酸基を付加して本発明物質を得ることも可能であるが、同一の構造を有するオリゴ糖のみの画分を得て、硫酸基を付与する方が、得られる本発明物質が均一な構造を有することとなるため好ましい。例えば上記の分画によって得られたオリゴ糖をイオン交換クロマトグラフィー等によりさらに分離することで均一構造の物質からなる画分を得ることが可能である。イオン交換クロマトグラフィーを用いる場合は、溶液中の塩濃度が高くなることが多いため、得られた画分を常法により脱塩することが好ましい。
【0020】
グルコサミン残基のアミノ基が全てスルファミド化された最も好ましい8糖からなる本発明物質を得るためには、上記工程で上記イオン交換クロマトグラフィーを例えばpH7.2条件下でファルマシア社製のmonoQカラムを用いる際は0.4M付近の食塩水で溶出する8糖の画分、同様に14糖からなる本発明物質を得るためには0.5〜0.6Mの食塩水で溶出する画分を回収することが好ましい。これらの画分に含まれるオリゴ糖は、そのオリゴ糖に含まれるグルコサミン残基のアミノ基が既に全てスルファミド化されている。
【0021】
このようにして得られた画分に含まれるオリゴ糖の特定の糖残基の特定位置を硫酸化することで本発明物質を調製することが可能である。上記硫酸化は酵素的な方法の他に化学的な方法によっても行うことができ、酵素的な方法で行うことが、特定のヒドロキシル基に特異的に反応することと、操作がより簡易となるため好ましい。酵素的な方法による硫酸化は、既知の硫酸基転移酵素を用いて行うことができる。例えばウロン酸残基の2位ヒドロキシル基(但し還元末端及び非還元末端から2糖目のウロン酸残基を除く)が1つのみ硫酸化されている本発明物質を調製するためには、J. Biol. Chem., vol.271, no.13 (1996), pp.7845-7653に記載されているヘパラン硫酸2-O-硫酸基転移酵素(HS2ST)又はそれと同様の活性を有する酵素を用いることができる。また、同様にグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基が1つのみ硫酸化されている本発明物質を調製するためにはJ. Biol. Chem., vol.270 (1995), pp.4172-4179に記載されたヘパラン硫酸6-O-硫酸基転移酵素(HS6ST-1)又はその同位酵素(HS6ST-2又はHS6ST-3:J. Biol. Chem., vol/275, no.4 (2000), pp.2859-2868)或いはそれらと同様の活性を有する酵素を使用することが可能である。上記硫酸基転移酵素による硫酸化は、転移されるオリゴ糖をウロン酸又はグルコサミン含量で換算して25nmolあたり0.1〜0.7Uの酵素と、硫酸基供与体となる活性硫酸(例えば3'-ホスホアデノシン5'-ホスホ硫酸(PAPS)等)を適当に添加し、10〜50℃で、好ましくは15〜20℃で10分〜5日程度、より好ましくは30分〜2時間程度反応させることで行うことができる。
【0022】
このようにして得られた本発明物質は、上記の反応溶液からゲル濾過などの分子量による分離法、エタノール沈殿法等の方法により単離することが可能である。その際にコンドロイチン硫酸を添加することでより容易に本発明物質を沈殿として回収することが容易となる。コンドロイチン硫酸と本発明物質は分子量が著しく異なるため、例えばゲル濾過法などによって分子量の相違で分画する方法や、電気泳動法、市販のコンドロイチナーゼなどの酵素によるコンドロイチン硫酸の完全消化とゲル濾過などの方法を組み合わせて行うことでコンドロイチン硫酸と本発明物質とを容易に分離することができる。このようにして得られる本発明物質を含む画分をさらに常法に従ってイオン交換クロマトグラフィーとゲル濾過法を繰り返すことで、純度90%以上の高純度の本発明物質を得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。
1.本発明物質の製造
100mgのCDSNSヘパリン(生化学工業株式会社製)を0.1UのヘパリチナーゼI(生化学工業株式会社製)により37℃で一晩消化した。この消化産物を5分間煮沸して酵素を失活させた後、1.6cm×60cmのSuperdex 30(カラム容積120ml 流速1ml/分:ファルマシア社製)を用いて0.2M NH4OAcにより分画し、6乃至14糖画分を回収した。各オリゴ糖画分の溶出時間は6糖は80〜85分、8糖で75〜80分、10糖で71〜75分、14糖で65〜67分である。
【0024】
上記8糖及び14糖を画分常法に従ってmonoQカラム(ファルマシア社製)を用いて50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.2)とNaCl濃度勾配(0.2〜1.0M)で溶出して更に分画した。8糖画分の場合は0.41M、14糖画分の場合は0.56MのNaClで溶出するオリゴ糖画分がウロン酸残基とN硫酸化グルコサミン残基の繰り返し構造のみからなるオリゴ糖を主に含む画分であるので、これらを分画し、脱塩カラムPD-10(ファルマシア社製)を使用して脱塩した。これらの標品は後述の酵素的二糖分析法及びゲル濾過分析法により、ほぼ全ての二糖成分がウロン酸残基とN硫酸化グルコサミン残基のみからなる繰り返し構造を有する8糖(CDSNSH8)或いは14糖(CDSNSH14)であることを確認した。
【0025】
脱塩したこれらの画分からそれぞれ25nmolのウロン酸を含むように秤量し、50pmolの放射能標識活性硫酸([35S]PAPS)とHS2ST(J. Biol. Chem., vol.271, no.13(1996) pp.7645-7653)又はHS6ST(HS6ST-1:J. biol. Chem., vol.270(1995), pp.4172-4179)を0.35U(CDSNSヘパリンを0.35pmol/minで硫酸化する量)を添加して、20℃で1時間反応を行った。煮沸して酵素を失活させた後、コンドロイチン硫酸A(CSA:生化学工業株式会社製)を添加し、未反応の[35S]PAPSをエタノール沈殿法によって除いた。
【0026】
HS2STを作用させて硫酸基を結合した8糖を本発明物質1、それを含む画分を本発明物質1画分、HS6STを作用させて硫酸基を結合した8糖を本発明物質2、それを含む画分を本発明物質2画分とした。
【0027】
2.本発明物質の二糖分析による解析
本発明物質1画分及び本発明物質2画分をヘパリン分解酵素による消化と高速液体クロマトグラフィーを組み合わせた酵素的二糖分析法(新生化学実験講座3、糖質II 54-59頁)により解析した。すなわち、被検物質1.0μgを2mM酢酸カルシウムを含む20mM酢酸ナトリウム(pH7.0)25μlに溶解して、各1.5mUのヘパリチナーゼ、ヘパリチナーゼI及び0.15mUのヘパリチナーゼII(全て生化学工業株式会社製)を加えて、37℃で1時間反応させた。
【0028】
この反応液を、HPLC(Waters社製)を用いて以下の条件で分析した。シリカ系アミノカラム(YMC社製、YMC-Pack Polyamine-IIカラムφ4.0×250mm)を使用し、羽渕らの方法(Habuchi,et al.(1992) Biochem. J., 285, pp.805-813)に従い、流速1.2ml/分で、リン酸二水素ナトリウムを用いた濃度勾配法(40mM→800mM)で溶出し、232nmでの吸光度を測定し、検出された不飽和二糖とそのピーク面積からの既知の不飽和二糖のピーク面積の合計に対する割合を算出した。
【0029】
すなわち下記一般式で表される不飽和二糖のピークの総面積[2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-エノピラノシルウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-0Sと記載する)、2-デオキシ-2-スルファミノ4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-NSと記載する)、2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース(以下ΔDiHS-6Sと記載する)、2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-USと記載する)、2-デオキシ-2-スルファミノ4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース(以下ΔDiHS-di(6,N)Sと記載する)、2-デオキシ-2-スルファミノ4-O-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-di(U,N)Sと記載する)、2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース(以下ΔDiHS-di(U,6)Sと記載する)、2-デオキシ-2-スルファミノ4-O-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース(以下ΔDiHS-tri(U,6,N)Sと記載する)のピーク面積の合計]を100%とし、各不飽和二糖のピーク面積が占める割合を算出した。
【0030】
【化7】
Figure 0004768936
【0031】
【表1】
表1
Figure 0004768936
【0032】
また、上記略号の示す構造は以下の通り表記されることもある。
ΔDiHS-0S:ΔHexA1→4GlcNAc、ΔDiHS-NS:ΔHexA1→4GlcNS、ΔDiHS-6S:ΔHexA1→4GlcNAc(6S)、ΔDiHS-US:ΔHexA(2S)1→4GlcNAc、ΔDiHS-di(6,N)S:ΔHexA1→4GlcNS(6S)、ΔDiHS-di(U,N)S:ΔHexA(2S)1→4GlcNS、ΔDiHS-di(U,6)S:ΔHexA(2S)1→4GlcNAc(6S)、ΔDiHS-tri(U,6,N)S:ΔHexA(2S)1→4GlcNS(6S)。
【0033】
上記式中、ΔHexAは不飽和ヘキスロン酸、GlcNAcはN-アセチルグルコサミン、GlcNSはN-硫酸化グルコサミン、カッコ内は硫酸基の結合位置を示す。
【0034】
二糖分析の結果、本発明物質1画分及び本発明物質2画分共にΔDiHS-NSが観察された。
【0035】
シンチレーションカウンターにより各画分の放射能を測定した結果、本発明物質1画分はΔDiHS-di(U,N)Sのピークの存在、本発明物質2画分はΔDiHS-di(6,N)Sにピークの存在が明かとなった(本発明物質1画分:図1、本発明物質2画分:図2)。
【0036】
以上結果から、本発明物質1はウロン酸残基の2位ヒドロキシル基に硫酸基が導入された二糖が含まれており、その他のヒドロキシル基には硫酸基が導入されていないことが明らかとなった。また本発明物質2はグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に硫酸基が導入された二糖が含まれており、その他のヒドロキシル基には硫酸基が導入されていないことが明らかとなった。
【0037】
3.本発明物質の導入硫酸基数の特定
以下の▲1▼〜▲7▼の8糖を使用したmonoQカラムクロマトグラフィーの溶出時間から溶出時間と各硫酸基数の関係式を導いた。
▲1▼:前記1に記載されたCDSNSH8。
▲2▼及び▲3▼:2位脱硫酸化ヘパリン(2ODSヘパリン:Glycobiology vol.4, no.6 (1994), pp.817-824に記載された方法によりシグマ社製のヘパリンを使用して調製)を原料として使用して上記1記載のCDSNSH8の調製法に準じて酵素分解し、この消化産物を5分間煮沸して酵素を失活させた後、1.6cm×60cmのSuperdex 30(カラム容積120ml 流速1ml/分:ファルマシア社製)を用いて0.2M NH4OAcにより分画し、69〜73分で溶出する8糖画分を回収した。この8糖画分をmonoQカラム(50mM Gly-HCl, pH7.2食塩濃度勾配(0.2-1.0M)により溶出)を用いて分離を行い0.70MのNaClで溶出した画分を▲2▼2ODSH8-1とし、0.77MのNaClで溶出した画分を▲3▼2ODSH8-2とした。
▲4▼、▲5▼及び▲6▼:6位脱硫酸化ヘパリン(6ODSヘパリン:WO00/6608に記載された方法によりSPL社製のブタ皮由来のヘパリンを使用して調製)を原料として使用して上記1記載のCDSNSH8の調製法に準じて酵素分解し、この消化産物を5分間煮沸して酵素を失活させた後、1.6cm×60cmのSuperdex 30(カラム容積120ml 流速1ml/分:ファルマシア社製)を用いて0.2M NH4OAcにより分画し、70〜73分で溶出する8糖画分を回収した。この8糖画分をmonoQカラム(50mM Gly-HCl, pH7.2食塩濃度勾配(0.2-1.0M)により溶出)を用いて分離を行い0.49MのNaClで溶出した画分を▲4▼6ODSH8-1とし、0.57MのNaClで溶出した画分を▲5▼6ODSH8-2とし、0.63MのNaClで溶出した画分を▲6▼6ODSH8-3とした。
▲7▼:ウシのヘパラン硫酸(生化学工業株式会社製)を原料として使用して上記1記載のCDSNSH8の調製法に準じて調製した8糖画分(liver HS8)。
【0038】
上述の▲1▼乃至▲7▼試料の酵素的二糖分析を行って、それらの試料が有する硫酸基数を見積もる(表2)と共に、monoQカラム(50mM Gly-HCl, pH3.0食塩濃度勾配(0.2-1.0M)により溶出)による分離を行って、各々の溶出してくる塩濃度を算出した(表3)。
【0039】
【表2】
表2
Figure 0004768936
ND:検出されず
【0040】
【表3】
表3
Figure 0004768936
ND:検出されず
【0041】
これらの硫酸基数と溶出塩濃度を方程式として溶出塩濃度とグルコサミン残基のN硫酸基数、6O硫酸基数、及びウロン酸残基の2O硫酸基数との関係式を算出した(式1)。
【0042】
【数1】
式1
溶出塩濃度(M)=0.09×{(N-硫酸基数)+(2-O-硫酸基数)}+0.14×(6-O-硫酸基数)
【0043】
この数式より算出した上記各物質の溶出塩濃度は表4の通りである。
【0044】
【表4】
表4
Figure 0004768936
【0045】
本発明物質1画分及び本発明物質2画分について上述のmonoQカラムでの分画を行った結果、本発明物質1は0.45M、本発明物質2は0.49Mで溶出された(図3)。本発明物質1及び本発明物質2は、原料のCDSNSH8がグルコサミン残基の2位アミノ基に全て硫酸基を有しているため、N硫酸基数=4、本発明物質1は上記2の結果より6-O-硫酸基数=0、本発明物質2は上記2の結果より2-O-硫酸基数=0となる。従って、本発明物質1は2-O-硫酸基数=1となり、本発明物質2は6-O-硫酸基数=1となる。
【0046】
4.本発明物質1の導入硫酸基の位置の解析
本発明物質1をヘパリチナーゼ(生化学工業株式会社製)によって特異的に分解して導入硫酸基の位置を解析した。ヘパリチナーゼ(EC4.2.2.7)は、ヘパリンの2-O-スルホ-L-ウロン酸に結合した2-N-スルホ(6-O-スルホ)グルコサミンのα-グルコサミニド結合を脱離反応的に特異的に切断して、不飽和ウロン酸を非還元末端に有するオリゴ糖を生成する。本発明物質1はHS2STによって1残基の2-O-硫酸基が導入されていることが上記3において明かとなったが、このことはヘパリチナーゼによる切断部位を本発明物質1は1ヶ所有することを示している。従って、放射能によってラベルした硫酸基([35S]PAPS)をHS6STによって導入した本発明物質1をヘパリチナーゼで消化すると、導入部位が還元末端の場合には2糖、還元末端から2番目のウロン酸の場合には4糖、還元末端から3番目のウロン酸の場合には6糖、非還元末端のウロン酸の場合は8糖に放射能が観察されることになる。
【0047】
そこで、[35S]硫酸で標識した本発明物質1の2nmolを0.5Uのヘパリチナーゼにより37℃で一晩消化した。消化産物を3分間煮沸してヘパリチナーゼを失活させた後、1.6cm×60cmのゲル濾過カラム(Superdex 30:カラム溶液120ml、流速2ml/分:アマシャムファルマシア社製)を用いて、0.2M NH4OAcにより分画し、各画分の放射能を測定した(図4)。
【0048】
その結果、ヘパリチナーゼにより消化しなかった対照は8糖に放射能が観察されたのに対し、ヘパリチナーゼにより消化した場合には放射能は4糖及び6糖に強く検出され、2糖及び8糖にはほとんど検出されなかった。このことは、本発明物質1は還元末端から2番目又は3番目のウロン酸の2位に硫酸基が導入されていることを示している。
【0049】
5.本発明物質の成長因子結合活性
CNBr-活性化セファロース4B(ファルマシア製)に表5に示す各種成長因子を結合してアフィニティー担体を作成し、これに対する本発明物質1及び本発明物質2の結合活性を測定した。
【0050】
CNBr-活性化セファロース4B(ファルマシア製)0.3mlをカップリングバッファー(0.5M NaClを含む0.1M NaHCO3 pH8.3)に懸濁し、アセチル化したヘパリン(ヘパリン100mgに飽和炭酸水素ナトリウム10mgと5%無水酢酸を添加して室温で10分間反応し、この反応混液に2倍量のエタノールを添加して沈殿として得られたもの)と接触させた100μgのbFGF(Progen社製)、200μgのHGF(三菱化学株式会社製)、100μgのFGF-10(アムジェン社製)、又は100μgのFGF-18(アムジェン社製)を加え、4℃で一晩穏やかに振盪した。得られたアフィニティー担体をカップリングバッファーを用いて充分洗浄した後、更に後述の各成長因子に対応する結合バッファー(表4)を使用してカラムを洗浄した。
【0051】
成長因子を結合させたアフィニティー担体カラムに、ウロン酸換算量で4nmolの本発明物質1(1.1×105cpm/4nmol)又は本発明物質2(6.8×104cpm/4nmol)を含む各種結合バッファー(表5)1mlを添加し、4℃で1時間反応させた。その後、結合バッファーで2回洗浄し、アフィニティー担体カラムに結合した本発明物質を溶出バッファー(表5)2mlで溶出した。この溶出された各本発明物質の放射能を測定することで、オリゴ糖と各種成長因子との結合率を算出した。100mgのヘパリン(シグマ社製)を0.1UのヘパリチナーゼI(生化学工業株式会社製)により37℃で一晩消化した。この消化産物を5分間煮沸して酵素を失活させた後、1.6cm×60cmのSuperdex 30(カラム容積120ml 流速1ml/分:ファルマシア社製)を用いて0.2M NH4OAcにより分画して得られた8糖画分をShivelyとConradの方法(Biochem. (1976)15, 3932-3942)に従ってトリチウム標識し、陽性対照として使用して同様に放射能を測定した。アフィニティー担体カラムに重層した全放射能量を100%ととし、アフィニティー担体カラムに結合した放射能量を百分率で表した。
【0052】
【表5】
Figure 0004768936
【0053】
その結果、本発明物質1の有するbFGFへの結合性が陽性対照と同等であることが明かとなった(表6)。
【0054】
【表6】
表6
Figure 0004768936
【0055】
また、上記1記載の方法に準じて調製した14糖画分(HS2STにより硫酸基を転移して調製した物質を本発明物質3、HS6ST-1により硫酸基を転移して調製した物質を本発明物質4、 HS6ST-3(J. Biol. Chem.,vol.275, no.4(2000), pp.2859-2868)により硫酸基を転移して調製した物質を本発明物質5とする)について、上記同様に各種成長因子との結合活性を解析した。上記成長因子に加えて50μgのVEGF165(Diaclone製)を使用したアフィニティー担体カラムも調製した(結合バッファー、溶出バッファーは共にbFGF-10、bFGF-18と同じ溶液を使用した)(表7)。
【0056】
【表7】
表7
Figure 0004768936
【0057】
これらの結果は、本発明物質は特定の成長因子に対して親和性を有する医薬、又はアフィニティー担体の材料などに使用できることを示唆していた。
【発明の効果】
本発明によりヘパリン骨格を有する新規なオリゴ糖が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明物質1画分を二糖分析した際に得られるチャート及び各分画の放射能の関係を示す図。
【図2】 本発明物質2画分を二糖分析した際に得られるチャート及び各分画の放射能の関係を示す図。
【図3】 本発明物質1及び本発明物質2のmonoQカラムによるイオン交換クロマトグラフィーのチャートを示す。●は本発明物質1を示し、■は本発明物質2を示す。
【図4】 放射能ラベルした硫酸基を導入して調製した本発明物質1のヘパリチナーゼ消化産物の各画分中の放射能分布を示す図。○はヘパリチナーゼを添加しない対照の放射能分布を示し、●はヘパリチナーゼを添加した際の放射能分布を示す。

Claims (4)

  1. ウロン酸残基とグルコサミン残基からなる二糖の繰り返し構造のヘパリン骨格を有する8糖のオリゴ糖であって、2位ヒドロキシル基が硫酸エステル化されたウロン酸残基繰り返し構造中に一残基有するオリゴ糖。
  2. グルコサミン残基のアミノ基が全てスルファミド化されていることを特徴とする請求項1記載のオリゴ糖。
  3. 還元末端及び非還元末端から2糖目のウロン酸残基のヒドロキシル基硫酸エステル化されていないことを特徴とする請求項1又は2記載のオリゴ糖。
  4. 下記一般式1又は2により表されるオリゴ糖。
    Figure 0004768936
    Figure 0004768936
    但し、R 1 及びR 2 はいずれか一方が硫酸エステル化されたヒドロキシル基であり、他方はヒドロキシル基を表し、R 3 及びR 4 はそれぞれ独立にいずれか一方がカルボキシル基であって他方がHを表し、NSはスルファミド基を表す。
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