JP4783530B2 - 易重合性物質の蒸留方法およびこれに使用する蒸留装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子中に二重結合を有するビニル化合物で代表される易重合性物質の蒸留方法およびこれに使用する蒸留装置に関する。
【従来の技術】
【0002】
易重合性物質は光や熱等によって重合しやすい性質を有するため、蒸留工程のような高温下での処理ではきわめて重合しやすくなる。蒸留塔内で重合が生じると、ロスにつながるのみならず、連続運転に支障を来し、生産性が低下する。従って易重合性物質の蒸留精製においては、重合防止は非常に重要な技術であり、従来より重合禁止剤の種類や量や組み合わせ等に関する数多くの重合防止方法が提案されている。
【0003】
図5は、易重合性物質の蒸留に通常使用される蒸留装置を示している。この蒸留装置は、内部に充填物を充填した充填層30、31を備える蒸留塔、排出された蒸気を凝縮するためのコンデンサー40等からなる。前記蒸留塔において、原料は原料供給口33から塔内に供給される。一方、下部の蒸気入口34からは蒸気が導入され、原料と向流接触しながら上昇し、上部の塔頂部35から排出される。
【0004】
排出された蒸気は導管39を通じてコンデンサー40に送られ、冷却されて凝縮液となる。易重合性物質を含む凝縮液は、温度を下げて安定化を図ることを目的として、通常凝縮温度よりも低い温度に過冷却される。この凝縮液の一部はポンプ41により配管42を通じて還流液入口36から還流液として塔内へ還流され、残りは配管43を通じて留出液として回収される。還流液と留出液との比率は調整弁44、45により調整される。なお、37は缶出液を排出する缶出液出口であり、缶出し液はリボイラーで炊き上げられ、炊き上げられた蒸気は蒸気入口34より塔内に導入される。
【0005】
図6は、前記塔頂部35周辺の蒸留塔内部を拡大した概略図である。前記したように、コンデンサー40により冷却された還流液は、還流液入口36から塔内へ導入され、還流管46を通じて液分配器47に供給される。この液分配器47は、前記還流液を充填層30の上部から均一に分散供給するために設けられたものである。前記液分配器47の替わりに枝分かれしたラダー状の配管や、スプレーノズルにて還流液を均一に分散させることも可能である。
液分配器47に供給された還流液は、矢印48で示すように、充填物押さえ50を経て充填層30に流下する。一方、蒸気入口34(図5)から導入され、充填層31内を上昇してきた蒸気は、矢印49で示すように、充填層30において前記還流液と向流接触する。その後、蒸気は、塔頂部35内をさらに上昇し、導管39を通じてコンデンサー40に送られる。
【0006】
前記の蒸留装置を用いて易重合性物質の蒸留を行う際に、還流管46および液分配器47の周辺において、重合物が生成することがあった。重合物が還流管46や液分配器47の周辺において生成すると、それが核となって次第に成長蓄積して、塔内の圧力を上昇させ、遂には塔内が閉塞されてしまうことになる。これが製品のロスを増加させるのみならず、蒸留装置の連続運転を妨げ生産性を低下させる大きな要因になっている。また、生成した重合物を除去するのは非常に困難であり、除去費用は多大となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主たる目的は、ビニル化合物に代表される易重合性物質の蒸留を行うに際して、重合物の生成を低減し、蒸留塔の連続運転を可能にする蒸留方法を提供することである。
本発明の他の目的は、重合物の生成を低減し、蒸留塔の連続運転を可能にする蒸留装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、蒸留塔内で易重合性物質が重合しやすい箇所は、易重合性物質を含む蒸気が凝縮して、重合禁止剤が存在しない状態で液溜まりをつくりやすい部位であることを見出した。そして、還流液を加熱することで、前記易重合性物質を含む蒸気が還流管や液分配器の周辺の重合禁止剤を含む液と接触しにくい部位で凝縮しないようにすることにより、蒸留塔内で易重合性物質が重合しやすい箇所の形成を防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の易重合性物質の蒸留方法は、易重合性物質を還流しながら蒸留するに際して、還流液を加熱することを特徴とする。
【0010】
重合禁止剤は、通常還流液に混合して蒸留塔の塔頂より供給される。重合禁止剤は、実質的に不揮発性であるため、蒸留塔内で蒸気が凝縮しただけでは凝縮液中には重合禁止剤が含まれていない。したがって、凝縮液は非常に不安定で重合しやすい。この凝縮液は、蒸留塔上部より流下する重合禁止剤を含む液と接触、混合されることによって安定化され、重合防止が図られる。よって、前記の通り、蒸留塔内で蒸気が凝縮して、重合禁止剤が存在しない状態で液溜まりをつくりやすい部位が易重合性物質が重合しやすい部位となる。
【0011】
前記の通り、易重合性物質を含む凝縮液は、温度を下げて安定化を図ることを目的として、通常凝縮温度よりも低い温度に過冷却される。本発明者らは、蒸留塔内で重合が生じる原因についてさらに鋭意検討した結果、図6において、蒸気が塔頂部35内を上昇する際に、蒸気の温度より低温の還流液によって冷却されることで、還流管46および液分配器47の表面において易重合性物質を含む蒸気が凝縮し、還流管46および液分配器47の周辺で重合禁止剤を含まない凝縮液の液溜まりができ、前記の易重合性物質が重合しやすい部位を形成することを見出した。本発明においては、還流液を加熱することで、前記易重合性物質を含む蒸気が重合禁止剤を含む液と接触しにくい部位である還流管や液分配器の周辺で凝縮しないようにすることにより、蒸留塔内で易重合性物質が重合しやすい箇所の形成を防止し、蒸留塔内での重合を防止する。
【0012】
本発明の蒸留方法では、前記還流液の温度が、蒸留塔塔頂部の温度に対して±10℃の範囲になるように加熱するのが好ましい。これにより、実質的に前記塔頂部内において易重合性物質が重合するのを抑制できる。
【0013】
本発明の蒸留装置は、還流液を加熱するための加熱手段を還流経路の少なくとも一部に備えたことを特徴とし、前記蒸留方法において好適に使用することができる。また、前記加熱手段としては熱交換器が好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1に示す。図1はこの実施形態にかかる蒸留装置を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の蒸留装置は、内部に充填物を充填した充填層30、31を備える蒸留塔、排出された蒸気を凝縮するためのコンデンサー40、還流液を加熱するための加熱手段1等からなる。
【0016】
蒸留塔の塔頂部35から排出された蒸気は、コンデンサー40により冷却され凝縮液となる。この凝縮液の一部は、還流経路の少なくとも一部に備えられた加熱手段1において加熱された後、還流液として還流液入口36から塔頂部35へ導入される。残りの凝縮液は配管43を通じて留出液として回収される。ここで、前記塔頂部35とは、蒸留塔内の蒸留分離を目的とした充填部の最上段の充填層30よりも上部に位置する部分のことをいう。また、前記還流経路とは、バルブ44と還流液入口36との間に位置する経路のことをいう。
【0017】
図2は、本発明における前記加熱手段として、熱交換器2を用いた場合の概略図である。この熱交換器2としては、還流液と熱媒体とが管、平板等の隔壁を介して熱交換するものであれば特に限定されず、例えば隔壁式熱交換器である多管円筒型熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル熱交換器等が使用できる。これらの他に、熱交換器2としては、例えば還流液が流れる配管の外側に、熱媒体を通すトレース配管を螺旋状に巻き付けたものや熱媒体を通す加熱ジャケットを付設したもの等も使用できる。
【0018】
前記熱媒体としては、温水、スチーム、オイル等が使用できる。
【0019】
上記のような熱交換器2および熱媒体を使用し、還流液は、その温度が塔頂部35の温度に対して−10℃〜10℃の温度範囲、好ましくは塔頂部35の温度に対して−5℃〜5℃の温度範囲になるように加熱制御されるのが良い。これにより、塔頂部35に存在する蒸気の温度と、還流液との温度差が小さくなるので、還流管周辺や液分配器の表面(特に下側)において、矢印49で示される蒸気に含まれる易重合性物質が凝縮しにくくすることができ、これにより重合物の生成を抑制することができる。
【0020】
還流液の温度が塔頂部35の温度に対して上記範囲を超えて高くなると、還流液の気化により蒸留分離能力が低下し、更には充填層30に流下させることができなくなったり、塔頂部35の蒸気の温度を過剰に上昇させてしまいコンデンサー40による凝縮に余分なエネルギーが必要となったりするなどの問題が生じる。
【0021】
一方、還流液の温度が塔頂部35の温度に対して上記範囲を超えて低くなると、前記したように、還流管周辺や液分配器の表面(特に下側)等の重合禁止剤を含む還流液と接触しにくい部位で、易重合性物質を含む蒸気が凝縮して重合物が生成しやすい環境となるため好ましくない。
【0022】
図3は、熱交換器2として、前記したトレース配管3を用いた場合の概略図である。図3に示すように、還流液が流れる配管42の外側には、熱媒体(前記した温水、スチーム、オイル等)を通すトレース配管3が螺旋状に巻き付けられている。熱媒体は供給口3aから供給され、排出口3bから排出される。必要に応じて供給口と排出口を逆にして使用しても良い。このトレース配管3内の熱媒体から配管42内部に伝わる熱により、還流液の温度は、塔頂部35の温度に対して±10℃の温度範囲、好ましくは塔頂部35の温度に対して±5℃の温度範囲に制御される。
【0023】
図4は、熱交換器2として、前記した加熱ジャケット4を用いた場合の概略図である。図4に示すように、還流液が流れる配管42の外側には、熱媒体(前記した温水、スチーム、オイル等)を通す加熱ジャケット4が付設されている。加熱ジャケット4には、熱媒体の供給口4aおよび排出口4bが設けられている。必要に応じて供給口と排出口を逆にして使用しても良い。この加熱ジャケット4内の熱媒体から配管42内部に伝わる熱により、還流液は前記と同様の温度範囲に制御される。
【0024】
以上のように、本発明では、前記多管円筒型熱交換器、トレース配管3、加熱ジャケット4等の熱交換器により還流液を加熱し、この還流液の温度を前記範囲に制御する。これにより、還流管周辺や液分配器の表面(特に下側)等の重合禁止剤を含む還流液と接触しにくい部位で、易重合性物質を含む蒸気が凝縮して液溜まりをつくりにくくなるため、これにより重合を抑制することができる。
【0025】
前記重合禁止剤としては、例えばジブチルジチオカルバミン酸金属塩(銅、マンガン等)、フェノチアジン、メトキノン、ハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0026】
前記易重合性物質としては、アクリル酸の他、メタクリル酸等の共役酸またはそのエステル、アミド、ニトリル等の誘導体(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、アクリロニトリル等)、共役アルデヒドおよびケトン(アクロレイン、メタクロレイン、メチルビニルケトン等)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等)、ビニル基置換芳香族化合物(スチレン等)、カルボン酸ビニル(酢酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル等)、1,3―ジオレフィン(ブタジエン、イソプレン等)、エチレンおよびアルキル置換エチレン(プロピレン等)が挙げられる。
【0027】
なお、還流液の加熱手段としては、前記した熱交換器に代えて、電気ヒータ等の他の加熱手段を採用してもよい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
実施例1
アクリル酸を蒸留するための図1に示すような蒸留装置において、還流液を加熱するための加熱手段1として二重管式熱交換器を設けて長期連続運転を行った。図1の蒸留装置は理論段6段相当の充填塔であり、塔頂圧力55torr、留出率80%、還流比0.8の条件で運転を行った。
この時、重合防止剤として少量のフェノチアジンおよびメトキノンを還流液に添加し、缶部液層部に空気を一定量供給して運転した。
熱交換器2に熱媒体を循環させ、還流液が塔頂部35に対して−10〜0℃の範囲となるように制御した。
連続運転の間、定期的に蒸留塔内の圧力上昇傾向と、運転終了時の充填部30、還流管46への重合物付着状況とを調べた。
【0030】
実施例2
還流液の温度を塔頂部35に対して0〜5℃の範囲となるように制御をした他は実施例1と同様にして長期連続運転を行った。
連続運転の間、定期的に蒸留塔内の圧力上昇傾向と、運転終了時の充填部30、還流管46への重合物付着状況とを調べた。
【0031】
比較例
加熱手段を設けていない図5に示すような蒸留装置を用いた他は、実施例1と同様にして長期連続運転を行った。
長期連続運転中の還流液の温度は約30〜35℃の範囲にあった。これは、塔頂部35の温度よりも約37〜42℃低い温度であった。
連続運転の間、定期的に蒸留塔内の圧力上昇傾向と、運転終了時の充填部30、還流管46への重合物付着状況とを調べた。
【0032】
実施例および比較例の長期連続運転結果を表1に示す。
【表1】
【0033】
表1の結果から明らかなように、比較例と比較して、実施例1および2では重合物の生成が低減されていることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、還流液を加熱するための加熱手段を設けることで、還流管周辺や液分配器の表面(特に下側)等の重合禁止剤を含む還流液と接触しにくい部位で、易重合性物質を含む蒸気が凝縮することを防止することができるため、これらの内部での重合物の生成が低減され、蒸留塔の連続運転が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蒸留装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態である加熱手段と蒸留塔塔頂部周辺を示す概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態である加熱手段と蒸留塔塔頂部周辺を示す概略図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態である加熱手段と蒸留塔塔頂部周辺を示す概略図である。
【図5】通常の蒸留装置を示す概略図である。
【図6】通常の蒸留塔塔頂部周辺を示す概略図である。
【符号の説明】
1 加熱手段
2 熱交換器
3 トレース配管
3a 供給口
3b 排出口
4 加熱ジャケット
4a 供給口
4b 排出口
Claims (4)
- 易重合性物質を還流しながら蒸留するに際して、還流液を、蒸留塔塔頂部の温度に対して±10℃の温度範囲に加熱することを特徴とする易重合性物質の蒸留方法。
- 前記易重合性物質がビニル化合物である請求項1に記載の易重合性物質の蒸留方法。
- 還流液を加熱するための加熱手段を還流経路の少なくとも一部に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸留方法に使用する蒸留装置。
- 前記加熱手段が、熱交換器である請求項3記載の蒸留装置。
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