JP4801679B2 - モータ制御装置およびモータ制御方法 - Google Patents

モータ制御装置およびモータ制御方法 Download PDF

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Description

この発明は、各種の産業機械の駆動装置として用いられるモータの制御技術に関するもので、特に鋼板や紙、フィルム等の搬送材の搬送に用いるモータのモータ制御装置およびモータ制御方法に関するものである。
例えば、鋼板、紙およびフィルムなどの帯状の搬送材を搬送するために、複数の搬送ロールを連続的に配置して、この搬送ロールを各々モータで駆動しながら搬送する。このようなモータの制御に用いられるモータ制御装置おいては、従来、速度指令とモータ速度との偏差を入力として比例制御(P制御)あるいは比例積分制御(PI制御)の演算を行うことにより、速度指令と実速度が一致するように速度補償トルクを算出して、この速度補償トルクをモータトルク指令に加算する等の制御をする速度制御器を備えている。
このようなモータ制御装置にあっては、複数の搬送ロールによって搬送材が拘束されながら搬送される際に、搬送材に連動して動作するモータの速度と速度指令との間に定常的な微小な差分があっても、上述の速度制御器の動作によって定常的に過大なトルクが発生しないようにされている。これを実現する目的から、従来、例えば上述の速度補償トルクを比例倍した速度ドループ量を速度指令から減算して制御するドルーピング制御が用いられていた。また、搬送材の加減速時に、速度指令に正確に追従させる目的から、モータの加減速に必要なトルクである加減速補償トルクを速度指令に基づいて求め、この加減速補償トルクをモータトルク指令に加算するといった制御も行われていた(例えば、特許文献1参照)。
さらには、搬送材に張力を与えるために必要なトルクや、摩擦などの機械損失を補償するトルクを、フィードフォワード補償としてトルク指令に加算するといった制御も行われていた(例えば、非特許文献1参照)。
特開平4−121086号広報(第1図) 「連続焼鈍設備におけるストリップの張力制御技術」平成3年電気学会産業応用部門全国大会予稿集p.800-p.801
しかしながら、このような従来のモータ制御装置にあっては、搬送ロールのロール径の実際の値が設計値に対して微小な誤差を有していたり、搬送材が搬送ロールの前後で伸縮したりするなどの理由によって、搬送材の張力を一定に保つためには、搬送材に連動して動作するモータの速度と速度指令との間に微少な差分を持たせる必要が生じる。このような場合、上述のような従来のモータ制御装置では、上述のドルーピング制御を行っていても、定常的なモータ速度と速度指令との差分を小さくするように速度制御器が動作して、速度制御器が定常的に大きなトルクを発生してしまう。その結果、搬送材に与える張力や圧力が、外部トルク指令により与えた値から大きな差分を生じるという問題があった。
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、モータ速度と速度指令との間に定常的に差分があっても設定値通りのトルクをモータに発生させ、これにより、搬送材に加わる張力や圧力を外部から設定した通りのものとして与えながら、速度指令に応じて正確にかつ安定して搬送速度を制御することができるモータ制御装置およびモータ制御方法を得ることを目的としている。
この発明の第1の発明に係るモータ制御装置は、モータ速度に基づいてモータトルク指令を算出し、このモータトルク指令に応じたトルクをモータに発生させて、このモータに結合した負荷機械を駆動するモータ制御装置において、少なくともモータ速度に基づいて速度補償トルクを算出する際に、モータ速度に対する速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインがゲイン最大値よりも小さくなるような低域遮断特性とする速度補償部と、外部から入力される少なくともトルクフィードフォワード信号と速度補償トルクを加算してモータトルク指令とするトルク加算器とを備えることを特徴とする。
この発明の第2の発明に係るモータ制御装置は、速度補償部は、モータ速度に対する速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインが0を含む微少な値となるような低域遮断特性とすることを特徴とする。
この発明の第3の発明に係るモータ制御装置は、速度補償部は、外部から入力されるモータ動作指令に基づいて演算された規範速度信号とモータ速度とを入力し、規範速度信号とモータ速度との差分である速度偏差に基づいて、速度補償トルクの算出を行うことを特徴とする。
この発明の第4の発明に係るモータ制御装置は、モータおよび負荷機械の速度を規範速度信号に一致するように加減速を行うための加減速補償トルクをモータ動作指令に基づいて算出する加減速補償演算部をさらに備え、トルク加算器は、加減速補償トルク、トルクフィードフォワード信号および速度補償トルクを加算してモータトルク指令とすることを特徴とする。
この発明の第5の発明に係るモータ制御方法は、モータ速度に基づいてモータトルク指令を算出し、このモータトルク指令に応じたトルクをモータに発生させることにより、モータに結合した負荷機械を駆動するモータ制御方法において、少なくともモータ速度に基づいて速度補償トルクを算出する際に、モータ速度に対する速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインがゲイン最大値よりも小さくなるような低域遮断特性として、外部から入力される少なくともトルクフィードフォワード信号と速度補償トルクを加算してモータトルク指令とすることを特徴とする。
この発明の第6の発明に係るモータ制御方法は、モータ速度に対する速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインが0を含む微少な値となるような低域遮断特性とすることを特徴とする。
この発明の第7の発明に係るモータ制御方法は、外部から入力されるモータ動作指令に基づいて演算された規範速度信号とモータ速度とを入力し、規範速度信号とモータ速度との差分である速度偏差に基づいて、速度補償トルクの算出を行うことを特徴とする。
この発明の第8の発明に係るモータ制御方法は、モータおよび負荷機械の速度を規範速度信号に一致するように加減速を行うための加減速補償トルクをモータ動作指令に基づいて算出して、加減速補償トルク、トルクフィードフォワード信号および速度補償トルクを加算してモータトルク指令とすることを特徴とする。
なお、定常ゲインとは、周波数応答において、周波数が0のときのゲインのことを言う。また、“0を含む微少な値”の“微少な値”とは、例えば周波数応答ゲインの最大値の1/5以下程度の値を言う。
上記第1および第5の発明によれば、モータの速度を安定に動作させるとともに、定常的にモータが発生するトルクと外部から設定されるトルクフィードフォワード信号との差分を低減することが可能になる。これにより、このモータを用いて搬送する搬送材において、安定した搬送を行うとともに、搬送材に加わる張力および圧力の設定値との差分を小さくすることが可能になる。
上記第2および第6の発明によれば、モータの速度を安定に動作させるとともに、定常的にモータが発生するトルクと外部から設定されるトルクフィードフォワード信号との差分を、0を含む微少な値とすることが可能となる。またこれにより、搬送材に加わる張力および圧力の設定値との差分を、0を含む微少な値まで更に低減することが可能になる。
上記第3および第7の発明によれば、モータ動作指令の変更に対して良好な特性で追従しながらモータの速度を安定に動作させるとともに、定常的にモータが発生するトルクと外部から設定されるトルクフィードフォワード信号との差分を低減することが可能になる。またこれにより、搬送材を動作指令に追従させて安定した搬送を行うとともに、搬送材に加わる張力および圧力の設定値との差分を小さくすることが可能になる。
上記第4および第8の発明によれば、モータの速度を安定に動作させ加減速時にも正確に加減速を行いながら、定常的にモータが発生するトルクと外部から入力されるトルクフィードフォワード信号との差分を低減することが可能になる。これにより、加減速時にも、搬送材に加わる張力および圧力の設定値との差分を小さくすることが可能になる。
図1は、実施の形態1によるモータ制御装置を示すブロック図である。 図2は、モータ制御装置の適用例である搬送システムの構成図である。 図3は、比較して示す従来の速度補償部のブロック図である。 図4は、比較して示す従来の速度補償部の特性を示す周波数応答ゲイン図である。 図5は、実施の形態1のハイパスフィルタの特性を示す周波数応答ゲイン図である。 図6は、実施の形態1の速度補償部の特性を示す周波数応答ゲイン図である。 図7は、実施の形態2によるモータ制御装置を示すブロック図である。 図8は、実施の形態3によるモータ制御装置を示すブロック図である。
符号の説明
1 モータ
3 負荷機械
103,203,303 速度補償部
106,206,306 トルク加算器
108 加減速補償演算部
110,210,310 モータ制御装置
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるモータ制御装置を示すブロック図である。図1において、本実施の形態のモータ制御装置110は、外部から入力したフィードフォワードトルク信号τffおよび速度指令ωcmdと、速度検出器2で検出したモータ速度ωmを入力し、以下で述べる動作によりモータトルク指令τmrを出力する。モータ1は、通常のトルク制御回路および電力変換回路(図示せず)の作用によりモータトルク指令τmrに一致するようなトルクを発生し、モータ1およびそれに結合した搬送ロールなどの機械負荷3を駆動する。
モータ制御装置110の内部において、規範速度生成部107は、速度指令ωcmdを入力し、例えば一次遅れ演算などによって速度指令ωcmdに追従するよう規範速度信号ωrefを演算して出力する。また、速度補償部103は、規範速度信号ωrefとモータ速度信号ωmとを入力し、速度補償トルクτscを出力する。さらに、加減速補償演算部108は、速度指令ωcmdの変化に応じてモータ1およびそれに結合された機械負荷3を加減速するのに必要なトルクを演算し、加減速補償トルクτaccとして出力する。この加減速補償トルクτaccの演算は、例えば規範速度信号ωrefの微分信号、すなわち規範加速度信号を計算し、それにモータ1および機械負荷3の慣性モーメントを乗じるなどの方法により演算する。
そして、トルク加算器106は、外部から入力したフィードフォワードトルク信号τffおよび加減速補償トルクτaccおよび速度補償トルクτscを加算した信号をモータトルク指令τmrとして出力する。最終的に、モータ制御装置110は、このモータトルク指令τmrを出力する。
速度補償部103の内部において、ハイパスフィルタ104は、規範速度信号ωrefとモータ速度ωmの偏差である速度偏差ωeを入力して、定常ゲインが0または微小であるハイパスフィルタ演算を行った結果を出力する。速度増幅補償部105は、このハイパスフィルタ104の出力を入力し、比例演算、あるいは定常ゲインが有限な擬似積分を用いた擬似比例積分演算などの増幅演算によって速度補償トルクτscを出力する。
次に本実施の形態による動作およびそれにより得られる効果を説明する。図2は本実施の形態のモータ制御装置110を利用した搬送システムの構成例を示す。図2に示した搬送システムでは、搬送材25の搬送方向に対して上流側に設けられた第1の搬送ロール23および下流側に設けられた第2の搬送ロール24をそれぞれ、第1のモータ21および第2のモータ22で駆動することにより、鋼板、紙およびフィルムなどの帯状の搬送材25を搬送する。なお、図2では第1および第2の2つの搬送ロール23,24のみを示しているが、搬送材25の搬送方向に沿ってさらに多くの搬送ロールを有するシステムであってもよい。
このような搬送システムにおいては、搬送材25に所望の張力が加わった状態を保ちながら所望の搬送速度で加減速を行って搬送材25の搬送が行われることが望まれる。本実施の形態1のモータ制御装置は、例えば図2に示した上流側の第1のモータ21を駆動するために用いるもので、そのとき、下流側の第2のモータ22は、通常の速度制御や位置制御を行うモータ制御装置を用いて駆動してもよいものである。
次に、上記のように構成した本実施の形態のモータ制御装置110の動作および得られる効果について説明する。上記のように外部から入力するフィードフォワードトルク信号τffは、搬送材25に張力を与えるために必要なトルクとして、外部にて計算された値が与えられる。なお、より詳細には、フィードフォワードトルク信号τffは、上述の搬送材25に張力を与えるトルクに、モータ1および機械負荷3における摩擦などの機械損失を計算した値を更に加算したものとしてもよい。
また、上述のようにモータ制御装置110は、外部から入力した速度指令ωcmdに基づいて規範速度信号ωrefを生成するとともに、モータ1および機械負荷3を規範速度信号ωrefに一致するよう加減速するのに必要な加減速補償トルクτaccを計算して、フィードフォワードトルク信号τffと加減速補償トルクτaccとを、フィードフォワード的にモータトルク指令τmrに加算する。このとき、後述する速度補償トルクτscを、仮に0として考える、すなわち速度補償部103を省略してモータ制御装置110がトルク制御だけで動作すると考えると、フィードフォワードトルク信号τffと加減速補償トルクτaccの演算が正確で、他に摩擦変動などの外乱要因が無ければ、搬送材に所望の張力を与えながら、モータ1および機械負荷3を加減速することが可能になり、張力と速度の制御を所望どおりに行うことが可能になる。
しかしながら実際には、フィードフォワードトルク信号τffと加減速補償トルクτaccだけでモータ1を駆動すると、モータ1が発生するトルクの脈動、搬送ロールや負荷機械3の機械的偏芯等に起因する速度の脈動、摩擦等の機械的損失の変動や、加減速補償トルクτaccの演算におけるモータ1や機械負荷3の過渡的動特性も考慮した補償誤差など、様々な外乱の影響により、モータ速度が変動する、すなわち搬送材の搬送が安定しないという問題がある。
次に、本実施の形態の速度補償部103の性質と効果について説明する。速度制御部103は、上述した説明した外乱等の影響によるモータ速度の変動を抑制する効果を持つものである。本実施の形態の効果を説明するために、まず、従来の技術とその問題点について図2を用いて説明する。一般に図2に示した搬送システムにおいては、2つの搬送ロール23,24のロール径は、設計値に対して微小な誤差を有している。また搬送ロール23,24の前後で搬送材25の張力が異なると、搬送材25の伸び縮みによって、搬送材25の搬送速度が搬送ロール前後で変化する。これらを原因として、複数の搬送ロールによって拘束されながら搬送されている搬送材25の張力を一定に保つためには、搬送材25に連動して動作するモータの速度と速度指令との間に微少な差分を持たせる必要が生じる。また逆にモータ速度を設定値に完全に一致するように制御すると搬送材25に過大な張力がかかり、またモータにはこの張力につりあうような過大なモータトルクが発生する。
このような不具合を防ぐ目的から、特許文献1および非特許文献1に記載の従来のモータ制御装置のように、比例積分(PI)制御などを行う速度制御器の出力であるトルク信号に所定のゲインを乗じたドルーピング量を速度指令から減じるというドルーピング制御が多く用いられている。このようなドルーピング制御を行うことにより、定常的に微小な速度差があっても、モータトルクが過大になり、その結果、搬送材に加わる張力が過大(あるいは過小)となることを防止することが可能となる。
図3は本実施の形態の速度補償部103と比較して示す従来の速度補償部のブロック図である。上述したような従来のドルーピング制御の特性および問題点を理解しやすくするため、従来のドルーピング制御を本実施の形態と対比させた形として等価的に(変換して)表現すると、本実施の形態の図1のモータ制御装置110の速度補償部103を、図3に示した速度補償部11に置き換えた制御系として表すことができる。
図3に示す速度補償部11は、規範速度信号ωrefとモータ速度ωmを入力して速度補償トルクτscとして出力する。速度補償部11の内部においては、規範速度信号ωrefとモータ速度ωeの偏差である速度偏差ωeから後述のドルーピング量ωdrpを引いた信号が、比例積分演算部12に入力される。比例積分演算部12は、その入力に比例積分演算PI(s)を行い、その結果を速度補償トルクτscとして出力する。また、ドルーピング補償部13は、速度補償トルクτscに所定の乗数Kdrpを乗じて、上述のドルーピング量ωdrpを計算する。このようにして、速度補償演算部11は速度補償トルクτscを出力する。
ここで、図3の速度補償部11においては、速度指令ωrefとモータ速度ωmの偏差からドルーピング量ωdrpを減じた信号を、比例積分演算部12に入力する構成としているが、別の見方をすると、速度指令ωrefからドルーピング量ωdrpを減じた信号とモータ速度ωmとの偏差を比例積分演算部12に入力するのと等価な構成であることが解る。すなわち、このようなドルーピング制御を行うことにより、速度補償トルクτscが大きくなれば速度指令ωrefを小さく修正することにより、速度補償トルクτscが過大になるのを防ぐ効果がある。
上述のような従来のドルーピング制御における比例積分演算部12の伝達関数PI(s)は以下の式(1)で表される演算を行う。ただし、sはラプラス演算子を表す。

PI(s) = (Kp・s + Ki) / s ・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

また速度偏差ωeから速度補償トルクτscまでの伝達関数は次の式(2)で表される。

τsc / ωe = ( Kp・s + Ki ) / [ ( 1 + Kdrp・Kp) s + Kdrp・Ki ]・・・(2)
ここで、式(2)はモータ速度ωmから速度補償トルクτscまでの伝達関数と、正負の符号以外は全く同じものであり、以下では速度偏差ωeあるいはモータ速度ωmから速度補償トルクτscまでの周波数応答ゲインを、単に速度補償部の周波数応答ゲインと呼ぶ。
式(2)で表す速度補償部の周波数応答ゲインは、ドルーピング制御を用いない場合は式(1)と同じになり、s=0とおいた定常ゲインは無限大になり、定常的に微小な速度偏差分ωeを持てば、無限大の速度補償トルクτscを発生するような計算を行う。
一方、ドルーピング制御を用いた場合の速度補償部の周波数応答ゲインは、その折れ線近似を図4に示すが、定常ゲインは式(2)においてs=0とおいた1/Kdrp となり、定常的に速度偏差分ωeがあっても速度補償トルクτscは有限になり、ドルーピング制御を行わない場合に比べると、モータトルク指令τmrが過大になるのを防いでいる。
しかしながら、ドルーピング制御を行った場合の定常ゲイン1/Kdrpは、高域ゲインの Kp / (1+Kdrp・Kp) よりも大きく、周波数応答ゲインにおいて、定常ゲインが最も大きい特性となる。その結果、搬送材の張力を一定に保つ必要性からモータ速度と速度指令が微少な差分を持てば、複数の搬送ロールで拘束されて搬送される搬送材の搬送速度と、外部から与えたモータ1に対する速度指令が微小な差分を持てば、速度補償トルクτscが大きな値となることとなり、その結果、搬送材25に与える張力がフィードフォワードトルクτffで与えた張力から大きく異なったものとなるといった問題が生じる。
図5は本実施の形態のハイパスフィルタ104の特性を示す周波数応答ゲイン図である。図6は本実施の形態の速度補償部103の特性を示す周波数応答ゲイン図である。上記した従来の速度補償部11に対し、本実施の形態における速度補償部103は、定常ゲインを0または微小としたハイパスフィルタ104と、比例演算あるいは定常ゲインを有限とした擬似比例積分演算を行う速度増幅補償部105から構成されている。図5に示されるように、ハイパスフィルタ104は、遮断周波数をさかいに底周波数領域側で、周波数が低くなるに従い減衰量を大きくするような低域遮断特性を有している。つまり、縦軸、横軸を対数としたグラフにおいて、緩やかに左下がりとなるような低域遮断特性を有している。そして、ハイパスフィルタ104と速度増幅補償部105とを組み合わせたものの特性、つまり速度補償部103の特性は、図6に示すようになり、定常ゲインを、0を含む微小な値(ここで言う微小な値とは、例えば周波数応答ゲインの最大値の1/5以下程度の値を言う)とした低域遮断特性を持つものとなっている。
そのため、搬送材の張力を一定に保つ必要性からモータ速度と速度指令が微少な差分を有するものであっても、この差分に基づいて出力される速度補償トルクτacの定常値は、0を含む微小な値となるため、定常的な速度差の影響が無視でき、定常的に、外部からフィードフォワードトルク信号τffで与えた値に相当するだけのトルクをモータが発生することとなり、またそれだけの張力を搬送材に与えることが可能になる。
また、ハイパスフィルタ104の遮断周波数を、ハイパスフィルタ104が無い状態での速度制御帯域より十分に小さな値(ここで言う十分に小さな値とは、例えば速度制御帯域中心より下側半分以下の領域)にしておき、かつ図5のグラフに示されたように左下がりのものとしておけば、ハイパスフィルタ104にて速度指令ωcmdおよび規範速度信号ωrefと、モータ速度ωmとの定常的な差分だけを緩やかに除去しながら、通常の速度制御系と同様に、上述した外乱によるモータ速度ωmの変動を抑制してモータ速度ωmを安定に動作させることが可能になる。
ここで、上述の速度増幅補償部105は、定常ゲインが有限であれば良く、上述のように比例演算や、例えば次の式(3)のAsc(s)で表されるような演算でもよい。

Asc(s) = (Kp・s + Ki) / ( s + K0 )・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

また、速度増幅補償部105は、式(2)および図3に示したものと同様に、ドルーピング制御を行った比例積分演算により構成しても良い。
また、速度増幅補償部105は、高域のノイズ成分や振動成分を除去するようなローパスフィルタを含んだ演算でも良い。
なお、速度増幅補償部105の定常ゲインは、上記のように0を含む微小な値とするのが理想的であるが、速度補償部103の周波数応答ゲインの最大値よりも定常ゲインが小さけければ多少は同様な効果が得られ、また定常ゲインが周波数応答ゲインの最大値の1/5以下であれば、従来のモータ制御装置に比べて十分に大きな効果が得られるものである。
本実施の形態のモータ制御装置110は、上述のように構成され、規範速度信号ωrefとモータ速度ωmとを入力して、モータ速度ωmから速度補償トルクτscまでの定常ゲインが0を含む微小な値である低域遮断特性を持つ演算により速度補償トルクτscを演算する速度補償部103を有し、少なくとも外部から入力したトルクフィードフォワード信号τffと速度補償トルクτscを加算してモータトルク指令τmrとするトルク加算器106を有することにより、モータ1の速度を安定に動作させるとともに、定常的にモータ1が発生するトルクを外部から設定したトルクフィードフォワード信号に一致させることが可能となる。またこれにより、モータ1の速度を安定に動作させるとともに、モータ1および機械負荷3を用いて搬送する搬送材等に与える張力や圧力を外部から設定した値に一致させることが可能になる。
また、さらに加減速補償演算部108を有して、モータ1および機械負荷3の速度が規範速度信号ωrefに一致するように加減速を行うために必要な加減速補償トルクτaccを演算するとともに、加減速補償トルクτaccとトルクフィードフォワード信号τffと速度補償トルクτscとを加算してモータトルク指令τmrとするトルク加算器106を有することにより、モータ1の加減速を正確に行いながら、モータ1の速度を安定に動作させるとともに、定常状態ではモータ1が発生するトルクを外部から設定したトルクフィードフォワード信号に一致させることが可能となる。またこれにより、加減速時にも、モータの速度を安定に動作させながら、モータ1および機械負荷3を用いて搬送する搬送材等に与える張力や圧力を外部から設定した値に一致させることが可能になる。
なお、本実施の形態のモータ制御装置110は、速度指令ωcmdを入力しているが、例えば隣接するモータが位置指令に一致するように位置制御で動作している場合など、モータ制御装置110への入力を位置指令とし、モータ制御装置110の内部において、位置指令に基づいて、規範速度信号ωrefや加減速補償トルクτaccを演算しても良いことは言うまでもない。また、規範速度生成部107は、入力である速度指令ωcmdに一次遅れの演算を行った信号を規範速度信号ωrefとして出力しているが、速度指令ωcmdをそのまま出力してもよい。
また本実施の形態のモータ制御装置110では、速度補償部103を図1に示したような構成としているが、等価な演算を行うものならば他の構成でも良く、例えばハイパスフィルタ104と同じ演算を行うハイパスフィルタを2個設けて、それぞれ規範速度信号ωrefとモータ速度ωmを入力し、各ハイパスフィルタの出力の差分信号を速度増幅補償部105に入力しても全く等価な演算を行うことは言うまでもない。
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2によるモータ制御装置を示すブロック図である。本実施の形態は実施の形態1における規範速度生成部107を省略し、また加減速補償演算部108およびそれによる加減速補償トルクτaccのモータトルク指令τmrへの印加を省略したものである。図7において、モータ制御装置210は、外部から入力したフィードフォワードトルク信号τffおよび速度指令ωcmdと、速度検出器2で検出したモータ速度ωmを入力し、以下で述べる動作によりモータトルク指令τmrを出力する。モータ1は、通常のトルク制御回路および電力変換回路(図示せず)の動作によりモータトルク指令τmrに一致するようなトルクを発生し、モータ1およびそれに結合した搬送ロールなどの機械負荷3を駆動する。
モータ制御装置210の内部においては、速度指令ωcmdをそのまま規範速度信号ωrefとして入力して、速度補償部203は、規範速度信号ωrefとモータ速度信号ωmとを入力して、さらに速度補償203の内部においては、ハイパスフィルタ204は、規範速度信号ωrefとモータ速度信号ωmとの偏差である速度偏差ωeを入力して定常ゲインが0または微小であるハイパスフィルタ演算を行い、この結果を出力する。次に速度増幅補償部205は、ハイパスフィルタ204の出力を入力し、比例演算、あるいは定常ゲインが有限な擬似積分を用いた擬似比例積分演算などの増幅演算によって速度補償トルクτscを出力し、速度補償部203は速度補償トルクτscを出力する。
トルク加算器206は、外部から入力したフィードフォワードトルク信号τffおよび速度補償トルクτscを加算した信号をモータトルク指令τmrとし、これをモータ制御装置210の出力として出力する。
本実施の形態のモータ制御装置210は、上述のように構成され、外部から入力するフィードフォワードトルク信号τffは、搬送材に張力を与えるために必要なトルクとして外部にて計算した値を与える。またより詳細には、モータ1および機械負荷3における摩擦などの機械損失を計算した値を更に加算した値を、フィードフォワードトルク信号τffとしてもよい。
また、本実施の形態のモータ制御装置210は、上述のように構成され、規範速度信号ωrefとモータ速度ωmとを入力して、モータ速度ωmから速度補償トルクτscまでの定常ゲインが0を含む微小な値である低域遮断特性を持つ演算により速度補償トルクτscを演算する速度補償部203を有し、外部から入力したトルクフィードフォワード信号τffと速度補償トルクτscを加算してモータトルク指令τmとするトルク加算器206を有することにより、モータ1の速度を安定に動作させるとともに、定常的にモータ1が発生するトルクを外部から設定したトルクフィードフォワード信号に一致させることが可能となる。またこれにより、モータ1を安定に動作させるとともに、モータ1および機械負荷3を用いて搬送する搬送材等に与える張力や圧力を外部から設定した値に一致させることが可能となる。
なお、本実施の形態のモータ制御装置210においては、実施の形態1のもののように加減速補償トルクτaccをモータトルク指令τmrに印加しないため、加減速時にはモータトルク指令τmrとフィードフォワードトルク信号τffが一致せず、また、速度指令ωcmdへの追従性も実施の形態1のもの比べて劣るが、速度指令ωcmdすなわち規範速度信号ωrefを速度補償部203に入力することによって、速度指令ωcmdの増減に応じて速度補償トルクτscも過渡的には増減するため、速度指令ωcmdに対するモータ速度ωmの追従性が極端に劣ってしまうものではない。
また、モータ制御装置210の外部で計算されるフィードフォワードトルク信号τffの計算において、モータ1および機械負荷3を速度指令ωcmdに一致するよう加減速するために必要な加減速補償トルクを計算してフィードフォワードトルク信号τffに更に加算しておけば、実施の形態1のものとほぼ同様な効果を得ることも可能である。
実施の形態3.
図8は本発明の実施の形態3によるモータ制御装置を示すブロック図である。本実施の形態は、実施の形態2における速度指令ωcmdの入力を省略したものである。図8において、モータ制御装置310は、外部から入力したフィードフォワードトルク信号τffと速度検出器2で検出したモータ速度ωmとを入力し、以下で述べる動作によりモータトルク指令τmrを出力する。モータ1は、通常のトルク制御回路および電力変換回路(図示せず)の動作によりモータトルク指令τmrに一致するようなトルクを発生し、モータ1およびそれに結合した搬送ロールなどの機械負荷3を駆動する。
モータ制御装置310の内部において、速度補償部303は、モータ速度信号ωmを入力する。さらに速度補償部303の内部において、ハイパスフィルタ304は、モータ速度ωmを−1倍した信号を入力して定常ゲインが0または微小であるハイパスフィルタ演算を行い、この結果を出力する。次段の速度増幅補償部305は、ハイパスフィルタ304の出力を入力し、比例演算、あるいは定常ゲインが有限な擬似積分を用いた擬似比例積分演算などの増幅演算を行い、算出した速度補償トルクτscを、速度補償部303の出力として出力する。
トルク加算器306は、外部から入力したフィードフォワードトルク信号τffおよび速度補償トルクτscを加算した信号をモータトルク指令τmrとし、モータ制御装置310は、このモータトルク指令τmrを出力する。
本実施の形態のモータ制御装置310においては、上述のように構成され、外部から入力するフィードフォワードトルク信号τffは、搬送材に張力を与えるために必要なトルクとして外部にて計算した値を与える。またより詳細には、モータ1および機械負荷3における摩擦などの機械損失を計算した値を更に加算した値を、フィードフォワードトルク信号τffとしてもよい。
本実施の形態はモータ制御装置310においては、上述のように構成され、モータ速度ωmを入力して、モータ速度ωmから速度補償トルクτscまでの定常ゲインが0を含む微小な値である低域遮断特性を持つ演算により速度補償トルクτscを演算する速度補償部303を備え、さらに外部から入力したトルクフィードフォワード信号τffと速度補償トルクτscとを加算してモータトルク指令τmrとするトルク加算器306を備えることにより、実施の形態1や実施の形態2のものと同様に、速度一定の定常状態においてモータ1の速度を安定に動作させるとともに、モータ1が発生するトルクを外部から設定したトルクフィードフォワード信号に一致させることが可能となる。またこれにより、モータ1を安定に動作させながらモータ1および機械負荷3を用いて搬送する搬送材等に与える張力や圧力を外部から設定した値に一致させることが可能になる。
なお、本実施の形態において搬送材の搬送速度の加減速時には、速度補償部303はモータ速度ωmだけに基づいて速度補償トルクτscを演算し、過渡的には加減速に抗するような速度補償トルクτscを出力するため、搬送速度の加減速を頻繁に行うような用途には適していない。しかしながら、一定速度でのみ搬送するような場合にのみ用いる場合は、実施の形態1や実施の形態2のものと同様な効果を有するものである。
以上のように、本発明は、各種の産業機械の駆動装置として用いられるモータの制御装置および制御方法に適用されて好適なものであり、特に鋼板、紙、フィルム等の帯状の搬送材を搬送するモータのモータ制御装置および制御方法に適用されて最適なものである。

Claims (8)

  1. 複数の搬送ロールで搬送材に張力あるいは圧力を与えながら前記搬送材を搬送する搬送システムの1つの搬送ロールを駆動するモータ制御装置であって、モータ速度に基づいてモータトルク指令を算出し該モータトルク指令に応じたトルクをモータに発生させて該モータに結合した負荷機械を駆動するモータ制御装置において、
    少なくとも前記モータ速度に基づいて速度補償トルクを算出する際に、前記モータ速度に対する前記速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインがゲイン最大値よりも小さくなるような低域遮断特性とする速度補償部と、
    少なくとも前記張力あるいは圧力に対応して外部から入力されるトルクフィードフォワード信号と前記速度補償トルクを加算して前記モータトルク指令とするトルク加算器と、
    を備えることを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記速度補償部は、前記モータ速度に対する前記速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインが0を含む微少な値となるような低域遮断特性とする
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記速度補償部は、外部から入力されるモータ動作指令に基づいて演算された規範速度信号と前記モータ速度とを入力し、前記規範速度信号と前記モータ速度との差分である速度偏差に基づいて、前記速度補償トルクの算出を行う
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  4. 前記モータおよび前記負荷機械の速度を前記規範速度信号に一致するように加減速を行うための加減速補償トルクを前記モータ動作指令に基づいて算出する加減速補償演算部をさらに備え、
    前記トルク加算器は、前記加減速補償トルク、前記トルクフィードフォワード信号および前記速度補償トルクを加算して前記モータトルク指令とする
    ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
  5. 複数の搬送ロールで搬送材に張力あるいは圧力を与えながら前記搬送材を搬送する搬送システムの1つの搬送ロールを駆動するモータ制御方法であって、モータ速度に基づいてモータトルク指令を算出し該モータトルク指令に応じたトルクをモータに発生させることにより、前記モータに結合した負荷機械を駆動するモータ制御方法において、
    少なくとも前記モータ速度に基づいて速度補償トルクを算出する際に、前記モータ速度に対する前記速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインがゲイン最大値よりも小さくなるような低域遮断特性として、
    少なくとも前記張力あるいは圧力に対応して外部から入力されるトルクフィードフォワード信号と前記速度補償トルクを加算して前記モータトルク指令とする
    ことを特徴とするモータ制御方法。
  6. 前記モータ速度に対する前記速度補償トルクの周波数特性を、周波数応答の定常ゲインが0を含む微少な値となるような低域遮断特性とする
    ことを特徴とする請求項5に記載のモータ制御方法。
  7. 外部から入力されるモータ動作指令に基づいて演算された規範速度信号と前記モータ速度とを入力し、前記規範速度信号と前記モータ速度との差分である速度偏差に基づいて、前記速度補償トルクの算出を行う
    ことを特徴とする請求項5に記載のモータ制御方法。
  8. 前記モータおよび前記負荷機械の速度を前記規範速度信号に一致するように加減速を行うための加減速補償トルクを前記モータ動作指令に基づいて算出して、
    前記加減速補償トルク、前記トルクフィードフォワード信号および前記速度補償トルクを加算して前記モータトルク指令とする
    ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御方法。
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