JP4830874B2 - 高温相安定性に優れた高Cr含有Ni基合金 - Google Patents

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この発明は、例えば、高温領域で長期間使用される状況にある超臨界水を扱う装置に適用される耐食性に優れかつ脆化挙動の改善された高温相安定性に優れた高Cr含有Ni基合金に関するものである。
臨界点を越える温度/圧力下にある水(具体的には374℃/22.1MPaを越える温度/圧力下にある水)を超臨界水と呼んでおり、超臨界水は多様な物質を溶解する特性があり、この超臨界状態の水は非凝縮性の高密度ガス状態となり、常温では極めて溶解度が小さい無極性あるいは弱極性の物質(例えば、炭化水素化合物や気体)でも完全に溶解し、さらに酸素を加えることで、溶解した物質を酸化・分解させることができると言われている。
ダイオキシン、PCB、廃棄化学兵器などの難分解性の有機系有害物質も例外ではなく、これら有機系有害物質を超臨界水に完全に溶解させ、さらに酸素を加えて有機系有害物質を超臨界水中で反応させることにより二酸化炭素、水のほかに塩酸などの無機酸に酸化分解される。
したがって、前記ダイオキシン、PCB、廃棄化学兵器などの難分解性の有機系有害物質を安全に廃棄するために、これら有機系有害物質を超臨界水に完全に溶解し、さらに加えられた溶存酸素と前記ダイオキシン、PCB、廃棄化学兵器などの難分解性の有機系有害物質を超臨界水中で反応させることにより、二酸化炭素、水、塩酸、硫酸、燐酸、フッ酸などの無害物質に分解・酸化し無害化し廃棄する試みがなされている。
前記ダイオキシン、PCB、廃棄化学兵器等の有機系有害物質を超臨界水中で反応させると、高温・高圧(400〜650℃、22.1〜80MPa)の超臨界水中において塩酸、硫酸、燐酸、硝酸、フッ酸などの無機酸と高濃度の酸素が共存する環境が生成されるところから、有機系有害物質を無害化する装置における反応容器材料にはこうした環境に対する耐食性が必要となる。
この無機酸含有超臨界水に対する耐食性に優れたNi基合金として、質量%で、Cr:29〜42%未満%、Ta:1超〜3%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらに必要に応じて、Fe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境に対する耐食性に優れたNi基合金が知られている(特許文献1参照)。
特開2003−201532号公報
前記特開2003−201532号公報に記載されているNi基合金は、無機酸含有超臨界水環境に対して優れた耐食性を有するものの、反応容器で要求される高温・高圧での脆化抑制効果が十分ではなく、したがって、さらに一層耐食性に優れかつ脆化挙動が改善された高温相安定性に優れたNi基合金が求められていた。
そこで、本発明者らは、一層高温相安定性に優れたNi基合金を開発すべく鋭意研究を行った。その結果、
(イ)先に示した従来のNi基合金に含まれるCr量を43超〜47%に増加させると同時に高価なTaの含有量を従来から知られている範囲のうちでも比較的低い範囲に限定し、さらにVを0.001〜0.05%を含有させたNi基合金は、先の従来のNi基合金に比べて高温相安定性が一層優れるようになり、したがって、高温・高圧での脆化抑制効果や耐食性が一層優れたものとなる、
(ロ)NbはTaと同じ作用を有する、
という研究結果が得られたのである。
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)質量%で、Cr:43超〜47%、TaおよびNbの内の1種または2種の合計:0.3〜1.5%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにV:0.001〜0.05%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%未満に調整した組成を有する高温相安定性に優れた高Cr含有Ni基合金、
(2)質量%で、Cr:43超〜47%、TaおよびNbの内の1種または2種の合計:0.3〜1.5%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにV:0.001〜0.05%を含有し、さらにFe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%未満に調整した組成を有する高温相安定性に優れた高Cr含有Ni基合金、に特徴を有するものである。
次に、この発明の高Cr含有Ni基合金の合金組成における各元素の限定理由について詳述する.
Cr:
Crは、無機酸を含有する超臨界水環境では耐食性を向上させる成分であるが、微量のVと共に添加する場合、43%を超えて含有することが好ましい。しかし47%を超えて含有すると加工が困難となって、産業上使用することが難しくなることから、Cr含有量を43超〜47%に定めた。一層好ましくは、43.1〜46%である。
TaおよびNbの内の1種または2種の合計:
TaおよびNbは後述するN、MnおよびMgの高温相安定化効果を促進し、さらに粒界反応型析出を抑制して脆性を低下させる作用を有するが、TaおよびNbの内の1種または2種の合計が0.3%未満では十分な高温相安定化効果を発揮させることができず、一方、TaおよびNbの内の1種または2種の合計が1.5%を超えて含有するとCrとの組合せにおいて高温相安定性が劣化し、耐食性が低下するので好ましくない。したがって、TaおよびNbの内の1種または2種の合計の含有量を0.3〜1.5%(一層好ましくは0.4〜1%)に定めた。
N、MnおよびMg:
N、MnおよびMgを共存させることにより、高温相安定性を向上させることができる。すなわち、N、MnおよびMgは母相であるNi-fcc相を安定化させ、第2層を析出しにくくする効果がある。しかし、Nの含有量が0.001%未満では高温相安定化の効果はなく、一方、0.04%を超えて含有すると窒化物を形成し超臨界水環境における耐食性が劣化するためNの含有量を0.001〜0.04%(一層好ましくは、0.005〜0.03%とした。
同様に、Mnの含有量が0.05%未満では高温相安定化の効果はなく、一方、0.5%を超えて含有すると超臨界水環境における耐食性が劣化するため、Mnの含有量を0.05〜0.5%(一層好ましくは、0.1%〜0.4%)とした。
同様に、Mgの含有量が0.001%未満では高温相安定化の効果はなく、一方、0.05%を超えて含有すると超臨界水環境における耐食性が劣化するため、Mgの含有量を0.001〜0.05%(一層好ましくは、0.005%〜0.04%)とした。
V:
Vは少量添加することにより結晶粒の粗大化を抑制し、それによって高温で長時間保持することに起因する脆化を抑制する効果がある。その効果は0.001%以上で発揮されるが、0.05%を超えて含有すると耐食性を劣化させる傾向が現れるので好ましくない。したがって、Vの含有量は0.001〜0.05%(一層好ましくは、0.005〜0.04%)とした。
FeおよびSi:
FeおよびSiは強度を向上させる効果があるので必要に応じて添加するが、Feは0.05%以上含有することで効果を示すものの、1%を超えて含有すると無機酸含有超臨界水環境における耐食性が劣化するので好ましくない。したがって、Feの含有量を0.05%〜1%(一層好ましくは、0.1〜0.5%)とした。
同様にSiは0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.1%を超えて含有すると無機酸含有超臨界水環境における耐食性が劣化するので好ましくない。したがって、Siの含有量を0.01%〜0.1%(一層好ましくは、0.02〜0.05%)とした。
C:
Cは不可避不純物として含まれるが、Cが大量に含まれると結晶粒界近傍でCrと炭化物を形成し、耐食性を劣化させる。そのため、Cの含有量は少ないほど好ましく、不可避不純物に含まれるCの含有量を0.05%未満と定めた。
上述のように、この発明の高Cr含有Ni基合金は、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸、フッ酸等の無機酸を含む超臨界水環境下において耐食性を向上させかつ脆化を抑制して高温相安定化させるところから、この発明の高Cr含有Ni基合金で作製した超臨界水装置は、前記無機酸を含む超臨界水環境下において一層長期間の使用が可能となり、ダイオキシン、PCB、廃棄化学兵器などの無害化処分などに優れた効果をもたらすものである。
なお、この発明の高Cr含有Ni基合金は、上述の如く、硫酸、燐酸、フッ酸、硝酸等の無機酸を含む超臨界水環境下で使用することが最も有効であるが、これに限定されるものではなく、ゴミ焼却炉などの高温腐食が懸念される一般産業廃棄物の処分用の装置にも適用できる。
いずれもC含有量の少ない原料を用意し、これらを通常の高周波溶解炉を用いて溶解し鋳造して厚さ:12mmのインゴットを作製した。このインゴットを1230℃で10時間均質加熱処理を施し、1000〜1230℃の範囲内に保持しながら、1回の熱間圧延で1mmの厚さを減少させつつ、最終的に3mm厚とし、さらに1200℃で30分間保持し水焼入れすることにより固溶化処理を施したのち、表面をバフ研磨することにより、表1〜5に示される成分組成を有する本発明Ni基合金板1〜51、比較Ni基合金板1〜15および従来Ni基合金板1〜2を作製した。
腐食試験:
これら本発明Ni基合金板1〜51、比較Ni基合金板1〜15および従来Ni基合金板1〜2をそれぞれ切断して縦:10mm、横:50mm、厚さ:3mmの寸法に切断して試験片を作製した。
前記本発明Ni基合金板1〜51、比較Ni基合金板1〜15および従来Ni基合金板1〜2からなる試験片を、超臨界水環境での長期間の使用を模して、温度:550℃に3000時間保持の時効処理を施し、試験片表面を耐水エメリー紙で#1500まで仕上げ、腐食試験を行なった。
ハステロイC-276管をオートクレーブとした流通型の腐食試験装置を用意した。この流通型の腐食試験装置はハステロイC-276管の一端から高圧ポンプにより試験溶液を圧入し、もう一端から試験溶液が出るようになっており、ハステロイC-276管の内部の試験溶液は所定の流量を確保できるようになっている。さらにハステロイC-276管部に設けられたヒーターにより試験溶液が加熱されるようになっており、試験溶液を所定の温度に保持することができるようになっている。さらに、流通型の腐食試験装置におけるハステロイC-276管のもう一端から出た試験溶液は、減圧弁を経てリザーバータンクに回収されるようになっている。
かかる流通型の腐食試験装置を用い、下記のようにして無機酸含有超臨界水模擬試験溶液に対する腐食試験を行った。
試験溶液として、流体温度:550℃、圧力:40MPa、流量:6g/min、溶存酸素量:8ppmの超臨界水に硫酸:0.005mol/kg、塩酸:0.005mol/kg、フッ酸:0.002mol/kgを混合した超臨界水溶液(以下、腐食試験液という)を用意し、前記腐食試験液を流通型の腐食試験装置におけるハステロイC-276管に圧入し、ハステロイC-276管内部の腐食試験液が流量:6g/minで流れるように制御して無機酸含有超臨界水環境を形成し、この環境下において前記本発明Ni基合金板1〜51、比較Ni基合金板1〜15および従来Ni基合金板1〜2からなる時効材試験片を100時間保持することにより試験片の試験前後で減少した質量を表面積で割り、単位面積当たりの質量減少量を算出し、その結果を表1〜5に示した。
脆性試験:
さらに、超臨界水環境に対する腐食性に及ぼす相安定性の影響を評価するために、温度:550℃に3000時間保持の時効処理を施した本発明Ni基合金板1〜51、比較Ni基合金板1〜15および従来Ni基合金板1〜2からなる時効材試験片を使用し、室温でシャルピー衝撃試験を行い、その結果を表1〜5に示した。
Figure 0004830874
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表1〜5に示された結果から、本発明Ni基合金板1〜51は、時効状態で、従来Ni基合金板1〜2に比べて単位面積当たりの質量減少量が少ないことから耐食性が優れ、さらにシャルピー衝撃値が大きいことから脆性が小さく、したがって高温相安定性に優れていることが分かる。しかし、この発明から外れた比較Ni基合金板1〜15は時効状態で耐食性および脆性のうち少なくとも1つの特性が劣っているので好ましくないことが分かる。

Claims (3)

  1. 質量%で、Cr:43超〜47%、TaおよびNbの内の1種または2種の合計:0.3〜1.5%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにV:0.001〜0.05%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%未満に調整した組成を有することを特徴とする高温相安定性に優れたNi基合金。
  2. 質量%で、Cr:43超〜47%、TaおよびNbの内の1種または2種の合計:0.3〜1.5%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにV:0.001〜0.05%を含有し、さらにFe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%未満に調整した組成を有することを特徴とする高温相安定性に優れたNi基合金。
  3. 請求項1または2記載の組成を有する高温相安定性に優れたNi基合金からなることを特徴とする超臨界水プロセス反応容器用部材。
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