JP4865183B2 - 病変異常組織治療用医薬組成物キット - Google Patents

病変異常組織治療用医薬組成物キット Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、痔核などの直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤の医薬組成物キットに関し、更に詳しくは水溶性アルミニウム化合物とタンニン酸とを含む直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤と同治療用局所麻酔剤からなる医薬組成物キットに関するものである。
技術背景
内痔核の注射による治療は100年以上に亘る歴史があり、組成物としては、初期には硫酸鉄溶液やフェノールのオリーブ油溶液が用いられていた。その後、アルコール、キニンヒドロクロライド、塩化水銀、ウレタン、麦角などが使用されてきた。過去30年間においては、フェノールの植物油溶液やミョウバン溶液などが主に使用されてきた。
しかしながら、これらの組成物は、内痔核を治癒させるには下記のような問題が十分に解消しているとはいえない。つまり、注射用製剤による痔核硬化療法では、出血を止め、細菌の増殖を阻止し、硬い小結節を残さないか又は壊死を起こさないで痔核組織の線維形成を完成させることが要求されるが、これまでの注射用製剤ではこれらの要求の全て、もしくは大部分を満足させるものではない。また、臨床において使用する注射用製剤は適当な濃度と量の決定とともに、組織の壊死を惹起しないで内痔核を硬化させる方法を決めるのも困難である。前記の組成物を注射した場合には、その薬剤が集中する部位が粘膜下組織だけに限られているので、注射部位を拡大し、同時に投与方法も改良しなければならない。
これまでに、痔核治療用組成物として、タンニン、薬用ミョウバン、クエン酸ナトリウム、デキストラン、グリセリン、トリクロロブチルアルコールからなる注射用製剤が提案されている(Journal of Traditional Chinese Medicine、1(2)115−120(1981))。ミョウバンは、化学名を硫酸アルミニウムカリウムといい、無色透明の正八面体の結晶で、局所収斂、止血、防腐作用があることが知られている。しかしながら、このミョウバンは内服しても胃腸粘膜から吸収されることはなく、粘膜に対して局所的な作用を及ぼすにすぎない。一方、タンニン酸は、通常、五倍子又は没食子から得られ、黄白色ないし淡褐色の無晶形の粉末又は小葉片もしくは海綿状の塊である。タンニン酸は、酸性又は中性溶液でタンパクを凝固し、収斂作用を呈することの他、防腐、抗菌作用があることが知られている。
前記注射用製剤には、トリクロロブチルアルコールが使用されていることから、以下のような問題が生じる可能性がある。つまり、トリクロロブチルアルコールは、炭素と塩素との結合物であり、光を吸収してラジカルを生成してタンニン酸を酸化し、タンニン酸は褐色ないし黒色に変化して沈殿物を生成する。またトリクロロブチルアルコールは、強いエネルギー(熱や光)を与えると、その結合が切れて不安定な物質に変化するという性質も有している。このような性質を有するトリクロロブチルアルコールを医薬品に使用することは不適当であり、かかる組成物からなる注射用製剤は保存中に沈殿を生成する恐れが多分にあり、細心の注意をもって保存しなければならないという不便がある。
特開平4−225920号公報には、食道静脈瘤、痔核、直腸全層脱部位、直腸粘膜脱部位及び大腸もしくは直腸の隆起性病変組織などの消化器病変異常組織を硬化させる薬剤として、硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸とを配合した組成物に、フェノール類、フラボンもしくはフラボノイド、カテキン類又はポリカルボン酸などを含有する植物生薬の抽出物を安定化剤として含有させた消化器病変組織の硬化剤が開示されている。しかしながら、この組成物には植物生薬の抽出物を安定化剤として含有させていることから、一定の組成を有する安定化剤を得るのが極めて困難であり、面倒な抽出工程、精製工程を経てもなお微量の未確認成分が混入している危惧があり、製剤上問題がある。更に、硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸とを配合した組成物は、植物生薬の抽出物を安定化剤として含有していても、水溶液の状態で長い期間保存していると、着色が生じたり、場合によっては沈殿が生じる場合があり、注射用製剤として問題である。
また、WO94/06443号公報(国際公開日:1994年3月31日)には、0.01モルないし0.5モル濃度の水溶性アルミニウム化合物と、前記水溶性アルミニウム化合物に対して0.5%ないし25.0%の割合のタンニン酸と、亜硫酸水素ナトリウムと、多価アルコール又は糖類とからなる組成物であって、前記組成物のpHが1.5ないし3.5である病変異常組織の治療用注射用製剤が記載されている。ただし、同公報に記載されている同組成物の製造方法は、全ての組成物構成成分を単に同時にもしくはランダムに溶解するだけである。つまり、同公報に記載の注射用製剤の製造方法は、全成分を試験管に入れ、これに注射用水を所定量になるまで撹拌しながら添加して溶解し、得られた水溶液をガラス瓶などの容器に入れ、溶液中の溶存酸素を脱気し、窒素ガスで窒素置換をした上、高圧蒸気滅菌をした後、冷所で保存することから構成されている。しかしながら、このような同公報に記載された注射用溶液の一般的な製造方法では、どうしても組成が一定した製剤上安定な組成物を得ることが極めて困難であることが判明したので、かかる組成物を実用的に製造する場合には問題がある。
ところで、本発明に係る組成物の一成分として使用される硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)は止血剤として使用されてきたが、日本薬局方解説書では、タンニン酸と混合して医薬品として使用することが禁止、つまり配合禁忌とされている。しかしながら、前述したごとく、両者を混合して医薬品として使用する試みもなされているが、この両者をそのまま混合すると、着色を生じかつ沈殿を生じてしまい極めて不安定である。このような不安定な組成物を注射用製剤として使用することは不適格であり、かつ安全性の点からも問題である。
硫酸アルミニウムカリウムは、原料であるボーキサイトに由来する鉄を通常含有する。したがって、日本薬局方では、硫酸アルミニウムカリウムを薬剤の原料として使用する場合に許容される鉄含有量は20ppm以下に規定されている。また、硫酸アルミニウムカリウムは、溶液中では解離してアルミニウムイオン、例えばAl3+、Al(OH)2+、Al(OH) を生じ、ヒドロキシイオンOHと反応して水酸化アルミニウムAl(OH)を生成して、溶液中に沈澱を生ずることになる。このように沈澱が溶液中に生成すれば、治療用注射用製剤としては不適格となり治療用としては当然使用できなくなる。
一方、タンニン酸は、空気中の酸素又は溶液中の溶存酸素と接触して酸化されキノン系化合物などの酸化物となり、得られる注射用製剤中に沈澱を生ずる。かかる不溶性生成物が注射用製剤中に沈澱すれば当然のことながらかかる溶液は注射用製剤として不適格となる。また、タンニン酸は、特に、溶液中に鉄イオンが存在すれば、タンニン酸の空気酸化が促進されて酸化物となって沈澱となる。したがって、タンニン酸を硫酸アルミニウムカリウムと溶液中に共存させると、前述したように溶液中には硫酸アルミニウムカリウムに由来する鉄イオンが存在しているので、この鉄イオンがタンニン酸と直接反応して沈澱を生ずるとともに、空気酸化を促進することになる。更に、タンニン酸は、溶液中にアルミニウムイオンが存在すれば、そのアルミニウムイオンと直接反応して沈澱を生成し、空気酸化を受け易くなる。したがって、タンニン酸と硫酸アルミニウムカリウムとを含有する溶液を、沈澱を生じさせず、組成が一定しかつ安定して製造することは、成分を単に配合するだけでは到底達成し得ない。
この解決のために、その成分の溶解順序、溶解条件などを十分に検討することにより、組成が一定した安定な痔核などの病変異常組織治療用組成物である注射用製剤を製造することは既に開示されている(特開平8−92106号公報)。発明の開示
痔核などの直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤は、一般には痛覚はないとされている直腸粘膜下に投与されるものであるが、迷走神経が関与すると考えられる痛みや肛門部違和感がしばしば発現する。そのため、患者の局所での痛みや肛門部違和感を和らげる手段として、局所麻酔剤との併用が通常行われる。しかし、その使用は、水溶性アルミニウム化合物・タンニン酸の治療効果及び安全性に影響を及ぼす可能性があり、配合変化の可能性もある。そのため水溶性アルミニウム化合物・タンニン酸の使用量と局所麻酔剤の選別・使用量は、水溶性アルミニウム化合物・タンニン酸の薬物動態・薬理効果との関係を考慮しておこなう必要がある。本発明の課題は、直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤と局所麻酔剤の相互作用の研究をおこない、最適の利用手段を決定することである。
本発明者は、上記課題を解決するために、水溶性アルミニウム化合物とタンニン酸を含む直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤を局所麻酔剤との併用で使用する場合において、局所麻酔剤が水溶性アルミニウム化合物・タンニン酸の有効性・安全性に影響するかどうかの検討をおこなった。そのために、肉芽形成作用(組織硬化作用の指標)及びアルミニウムの薬物動態に対する局所麻酔剤の選別・使用配合比等の検討をおこない、極めて特定の手段を利用することでのみ水溶性アルミニウム化合物・タンニン酸の有効性に影響無く局所麻酔剤を併用できることを見出した。そして、これらを予め医薬組成物キット化することによって、その配合比の正確性を維持でき、且つ具体的に医師の治療時における煩雑性を回避でき極めて利便性にすぐれたものになることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)それぞれの容器を用時開封し、各内容物を混合して注射用製剤とする治療用組成物キットにおいて、治療用製剤と局所麻酔剤のそれぞれの1回投与量を容器に分別充填し、該治療用製剤は1〜10%の水溶性アルミニウム化合物および0.01〜2%のタンニン酸を含み、該局所麻酔剤は0.1〜1%の塩酸リドカインを含んでなることを特徴とする直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(2)それぞれの容器を用時開封し、各内容物を混合して注射用製剤とする治療用組成物キットにおいて、治療用製剤と局所麻酔剤のそれぞれの1回投与量を容器に分別充填し、該治療用製剤は1〜10%の水溶性アルミニウム化合物および0.01〜2%のタンニン酸を含み、該局所麻酔剤は0.5〜5%の塩酸プロカインを含んでなることを特徴とする直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(3)各内容物を混合して注射用製剤としたときの最終製剤の水溶性アルミニウム化合物の終濃度が1.5〜2.5%、タンニン酸の終濃度が0.01〜0.1%、塩酸リドカインの場合の終濃度が0.05〜0.5%又は塩酸プロカインの場合の終濃度が0.1〜1%になるように予め分別充填されてなることを特徴とする前記(1)または(2)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(4)治療用製剤のpHが2〜3であることを特徴とする前記(3)のの直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(5)水溶性アルミニウム化合物が、硫酸アルミニウムカリウムであることを特徴とする前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(6)治療用製剤にキレート剤および安定用添加剤を含む前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(7)各内容物を混合して注射用製剤としたときの最終製剤が、水溶性アルミニウム化合物及びタンニン酸に加えて、クエン酸ナトリウムを0.5〜1%、デキストラン40を0.1〜1%、グリセリンを3〜8%、亜硫酸水素ナトリウムを0.01〜0.1%含むように調製された前記(6)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(8)局所注射用製剤と局所麻酔剤が、各々不活性ガス雰囲気下において保存容器に充填されてなる前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(9)キットの容器が2室一体型であることを特徴とする前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(10)キットの容器が酸素不透過性である前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(11)キットの容器が、外装と内装からなる2層構造を有し、内外層間に脱酸素剤を封入してなる前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
(12)キットの容器が、保存用注射容器である前記(3)の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット、
からなる。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、水溶性アルミニウム化合物とは、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムセシウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどを挙げることができる。これらの水溶性アルミニウム化合物は単独でも、2種類以上を組み合わせても使用することができる。このうち特に最適のものは、硫酸アルミニウムカリウムである。この作用は、痔核組織の血流を遮断することにより、速やかに止血効果を発揮し、痔核を縮小させる。又、無菌性の炎症惹起作用を介して痔核間質組織を線維化させ、痔核の粘膜及び粘膜下層(過伸展した血管や支持組織を含む)を筋層に癒着・固定させることにより、痔核を硬化・退縮させることである。
上記水溶性アルミニウム化合物は、分別充填時においては、0.01モルないし0.5モル濃度、好ましくは0.03ないし0.3モル濃度であるのがよい。また、分別充填した製剤中の有効濃度として、約1%ないし10%の範囲、好ましくは約2%ないし5%、より好ましくは約4%である。この分別充填製剤は、本発明の医薬組成物キットの2構成のうちの一であり、混合した最終製剤の水溶性アルミニウム化合物の終濃度が約2%になるように調製される。
本発明において、タンニン酸は、種々の植物などに由来するものが使用できるが、五倍子に由来するものが特に好ましい。このタンニン酸は、水溶性アルミニウム化合物の組織硬化作用を抑制せずに、組織障害につながる可能性のある過度の急性炎症反応を軽減する役割を荷う。分別充填時には水溶性アルミニウム化合物とともに配合され、その含有割合は、分別充填製剤中の有効濃度としては、0.01%ないし2%の範囲、好ましくは0.05%ないし1.5%、より好ましくは約0.15%である。そしてこの濃度は、混合した最終製剤のタンニン酸の終濃度が約0.075%になるように調製される。なお、タンニン酸は、その他の成分、特に亜硫酸水素ナトリウムの量を調節すれば、上記範囲を超えて添加することができるが、この場合には、調製した組成物を長期間保存すると着色や沈殿が生じ易くなり、製剤化や保存に際して細心の注意を払わねばならず、不便である。
この水溶性アルミニウム化合物を含む分別充填製剤では、クエン酸ナトリウムのようなキレート剤を添加して溶液中に存在する微量の金属イオンを捕捉するとともに、水溶性アルミニウム化合物の安定化が図られる。その添加量は、分別充填製剤中で、水溶性アルミニウム化合物の量に対して約10%ないし80%、好ましくは約20%ないし50%の範囲であるのがよいが、水溶性アルミニウム化合物の種類、添加量等により適宜変えることができる。好ましい添加濃度は、約1.5%であり、混合後の終濃度が約0.75%になるように調製される。なお、このキレート剤の添加は、タンニン酸を水溶性アルミニウム化合物と配合する前に、水溶性アルミニウム化合物を含む溶液に添加しておこなう。
更に、タンニン酸は、固体の状態でも光又は空気に対して不安定であるので、溶液の中では反応物質間の拡散速度から考えてもより一層不安定であると考えられる。そこで、タンニン酸の酸化を防止する目的で酸化防止剤として、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどが添加される。本発明において酸化防止剤として使用される亜硫酸水素ナトリウムの含有割合は、通常、タンニン酸に対して約50%ないし200%、好ましくは約70%ないし150%である。好ましい添加濃度は、分別充填製剤中で、約0.15%であり、混合後の終濃度が約0.075%になるように調製される。
これらの水溶性アルミニウム化合物を含む分別充填製剤をより安定化させるために、一般に痔核治療用組成物に添加されている多価アルコール及び/又は糖類を上記組成物に必要に応じて添加して使用することもできる。かかる多価アルコール及び糖類としては、グリセリン、グルコース、フラクトース、キシリトール、マンノース、マンニトール、ガラクトース、デキストランなどが挙げられる。特に、デキストランは製剤の粘性を調整するのに有用である。これらの多価アルコール及び糖類は、単独でも又は2種類以上を混合して使用することもできる。これらの多価アルコール及び/又は糖類の含有割合については、生理食塩液と比較して、約3倍ないし15倍、好ましくは約4倍ないし8倍の浸透圧を有していれば、その割合は制限されることはないが、例えば、製剤中の有効濃度として、約3%ないし20%、好ましくは約5%ないし15%の範囲で含まれているのがよい。好ましい添加濃度は、分別充填製剤中で、デキストラン例えばデキストラン40を約0.7%、グリセリンを約10%であり、混合後の終濃度が各々約0.35%、約5%になるように調製される。
本発明に係る水溶性アルミニウム化合物を含む分別充填製剤は、実質的には、水溶性アルミニウム化合物、タンニン酸、キレート化合物、亜硫酸水素ナトリウムからなる組成物から構成され、かつ、そのpHは1.0〜3.5、好ましくは2〜3に調整される。必要に応じて、本発明の水溶性アルミニウム化合物を含む分別充填製剤の液性を上記の範囲に調整するため、製剤調合の際に通常使用する薬理上当然無害な酸又はアルカリを使用することができる。かかるpH調整には、例えば、塩酸、硫酸などの鉱酸、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを使用することができる。得られた製剤の液性を上記範囲内にコントロールすることにより、その製剤は長期間保存中、着色又は沈殿を生じず、極めて安定して好ましい。上記のpHは、治療用製剤と局所麻酔剤の混合後も維持されるような製剤化が好ましい。
本発明に係る水溶性アルミニウム化合物を含む分別充填用製剤の製造方法としては、亜硫酸水素ナトリウムにタンニン酸を除くその他の成分を任意の順序で配合した後、最後にタンニン酸を配合するか、又は、水溶性アルミニウム化合物とキレート化合物とを配合して得られる配合物と、タンニン酸と亜硫酸水素ナトリウムとを配合して得られる配合物とを別々に調製し、それぞれの配合物を混合し、多価アルコール及び/又は糖類を必要に応じて前記配合物のそれぞれにもしくは何れか一方に又は前記配合物の混合物に添加することにより調剤する。このように各成分を配合することによって、タンニン酸の酸化が防止できるとともに、タンニン酸が硫酸アルミニウムカリウムに由来するアルミニウムイオンなどの金属イオンと直接反応することを防止することができ、組成が一定した安定な水溶性アルミニウム化合物及びタンニン酸を含有する分別充填用製剤とすることができる。
本発明の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キットは、そのキット構成として、以上の水溶性アルミニウム化合物とタンニン酸とを含む直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤(水溶性アルミニウム化合物を含む分別保存製剤)と、局所麻酔剤としての塩酸リドカイン注射液又は塩酸プロカイン注射液により構成される。塩酸リドカイン注射液又は塩酸プロカイン注射液は、広く我が国で公知の局所麻酔剤であり、本発明では、他の公知の局所麻酔剤との比較の上、そのアナフィラキシーの有害事象の少ないことから本製剤が選択された。より好ましくは塩酸リドカイン注射液が使用される。水溶性アルミニウム化合物含有製剤の肉芽形成作用及びアルミニウムの薬物動態に及ぼす局所麻酔剤の影響を検討したところ、塩酸リドカイン注射液、塩酸プロカイン注射液共に格別の影響は認められなかった。その分別充填用製剤の濃度は塩酸リドカイン注射液の場合、0.1〜1%、好ましくは約0.5%である。混合後には、0.05〜0.5%、好ましくは約0.25%の濃度になるように調製される。塩酸リドカインとしてはその他、塩酸リドカイン・エピネフリン、塩酸リドカイン・酒石酸水素エピネフリン、塩酸リドカイン・1−ノルエピネフリンも好適に利用できる。塩酸プロカイン注射液の場合は、0.5〜5%、好ましくは約1%である。混合後には、0.1〜1%、好ましくは約0.5%の濃度になるように調製される。
かくして調製された各分別充填用製剤は、一回投与量ごとに、分別充填形態(分別保存製剤)でキット化し、両製剤をそのまま用時混合して使用される。混合時に最終製剤の水溶性アルミニウム化合物の終濃度が約2%、タンニン酸の終濃度が約0.075%、塩酸リドカインの終濃度が約0.25%又は塩酸プロカインの終濃度が約0.5%になるように予め分別充填する。各分別充填用製剤は、それぞれ2.5〜30mL、好ましくは約5〜20mLずつに分別充填し、両製剤は用時混合し使用する。
本発明に係る直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キットの各分別充填用製剤を充填する容器はバッグ、プラスチック容器、アンプル、バイアル、ガラス容器が使用される。容器は保存のみを目的とするものであっても、保存用注射容器(プレフィルドシリンジタイプ)であってもよい。保存用注射容器充填製剤の製造方法においては、前記各分別充填用製剤を構成する成分のそれぞれもしくは何れかを、不活性ガス雰囲気下(雰囲気中の又は使用する水の中の酸素が実質的には存在しないか又は得られる組成物に対して悪影響を及ぼさない程度の制限された量でしか存在しない条件下)において製造する。使用される不活性ガスとしては、たとえば窒素ガスなどを挙げることができる。
このようにして得られた本発明に係る分別充填用製剤を、常法の除菌ろ過後に容器に充填し、その後必要に応じて高圧蒸気滅菌し、室温下で保存する。この分注工程も、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で実施するのが好ましい。通常、注射用製剤中の溶存酸素を常法にしたがって脱気した後、窒素ガスを注入して窒素置換を行う。
また、本発明に係る分別充填製剤である注射用製剤を、常法により凍結乾燥することにより、用時溶解して使用するように溶解剤とともにキット化して調製することもできる。用時使用するための製剤の溶解液としては、多価アルコール及び/又は糖類を溶解した溶液を使用することができる。
本発明の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キットは、水溶性アルミニウム化合物を含む局所注射用製剤と局所麻酔剤の充填容器が一体型の2室容器で構成され、用時2室間の隔壁を開放することにより混合可能な容器であってもよいし、別々の容器であって用時混合するものであってもよいが、前者がより便利である。一体型2室容器は、分別保存が必要な物質を混合して用いる場合に汎用されており、それらを利用できる。
さらに、本発明のキットに使用される容器は、酸素不透過性であることが好ましい。また、容器が外装と内装からなる2層構造を有し、内外層間に脱酸素剤を封入したものを使用するのが、充填製剤の保存上好適である。
かくして、提供された本発明に係る直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キットの水溶性アルミニウム化合物を含む局所注射用製剤と局所麻酔剤は、用時混合し、特に、大腸、直腸などの消化器の投与部位を線維化させる作用があり、例えば内痔核、直腸脱などを患っている病変組織、隆起性病変組織などの病変組織に接触してその病変組織を硬化・退縮させることができ、使用に際しての極めて優れた便宜性・確実性を達成した製剤である。
実施例
以下、本発明を、実施例及び実験例により詳細に説明する。
(実施例1)
キットに含まれる治療用製剤と局所麻酔剤の成分およびその製法は次の通りである。
a.治療用製剤
硫酸アルミニウムカリウムを400mg、クエン酸ナトリウムを150mg、亜硫酸水素ナトリウムを15mg、タンニン酸を15mg、デキストラン40を70mg、グリセリンを1000mg、注射用蒸留水を適量用いて全量を10mLとした。本剤をOC−108と称する。
治療用製剤を、上記の配合となるように各成分を秤量し、以下の製法により調製した。
最初に、日本薬局方の規格に合致した注射用水を100℃で5分間加熱して溶存酸素を除去した。加熱終了後、窒素ガスを導入しながら、室温にて放冷した。別に、デキストラン40は水に溶解しにくいので、前もって注射用水に完全に溶解し、得られた溶液を使用した。次に、亜硫酸水素ナトリウムを適量の注射用水に溶解し、この得られた溶液に、デキストラン40溶液と、クエン酸ナトリウムと、硫酸アルミニウムカリウムと、グリセリンとを添加した後、タンニン酸を添加して各成分を溶解した。なお、この溶解工程の間中溶液に窒素ガスを導入した。更に、得られた溶液を約30分間撹拌した後、フィルターでろ過した。ろ過した溶液にも窒素ガスを導入し続けて目的とする組成物を得た。この組成物のpHは2.7であった。このようにして得られた組成物を、10mLずつバイアル又はアンプルに分注した。分注に際しては、窒素ガスで前置換と後置換を行ってその容器を密封して室温に保存した。得られた液は、無色〜微黄色澄明で、わずかに粘性があった。40℃の加速保存試験条件下で6ヶ月間安定であった。この結果、室温下では3年間安定であることがわかった。また光に対しても安定であった。
b.局所麻酔剤
日局リドカインに対応量の塩酸を加えて公知の注射用製剤の製法により0.5%の塩酸リドカイン注射液とし、これにパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の保存剤を加え、窒素ガス雰囲気下で、バイアル又はアンプルに、10mLずつ充填、密封した。
c.直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット
0.5%塩酸リドカイン注射液10mL含有分別充填製剤と硫酸アルミニウムカリウム含有局所注射液10mL含有分別充填製剤からなる直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キットを調製した。
(実施例2)
実施例1で使用した0.5%塩酸リドカイン注射液の代わりに、1%塩酸プロカイン注射液を使用した以外は全て同様の処理をして、1%塩酸プロカイン注射液10mL含有分別保存製剤と硫酸アルミニウムカリウム含有局所注射液10mL含有分別保存製剤とからなる直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キットを調製した。
(実験例1)
実施例1で調製したキットおよび実施例2で調製したキットを用いて各混合製剤を得た。各混合製剤中の水溶性アルミニウム化合物含有率は2%であった。コントロールとして各キット中の局所麻酔剤の代りに生理食塩液(10mL)を用い、水溶性アルミニウム化合物含有率2%とした製剤を調製した。雄性ラットの背部皮下にエアーポーチを作成し、その2日後にポーチ内のエアーを抜き、同部位に上記の被験液の2mLを投与し、投与14日後に、ポーチ部位に増殖した肉芽組織を摘出し、その重量を測定した。結果は、図1に示すように、何れの調製液を用いても、同程度の肉芽形成作用を示し、局所麻酔剤による影響は認められなかった。
別の実験系として、上記と同様の製剤を混合調製し、雄性ラットに硫酸アルミニウムカリウムとして20mg/kg量を皮下投与し、経時的に血清中アルミニウム濃度を測定した。なお、測定値は非投与ラットの血清中の値を減算したアルミニウム濃度で表示した。結果は、図2に示すように、何れも同様の血清中アルミニウム濃度推移を示し、局所麻酔剤による顕著な影響はなかった。
(実験例2)
実施例2で調製したキットを使用して、Goligherの内痔核分類の第III、IV度内痔核の重度の内痔核患者を対象に、痔核内に混合製剤を直接投与し、薬物動態、有効性及び安全性を検討した。解析症例は15例である。
a.有効性
投与28日後の主要評価項目である脱出、出血、痔核の大きさの症状改善度について検討した結果、中等度以上の改善は各々100%、92%、100%であった。脱出は全例で認められず、痔核も全例で殆ど硬化退縮した。
b.安全性
概括安全度は「安全である」が80%であった。副作用は、自覚症状・他覚所見として、15例中1例に血尿、頻尿、多尿が発現した。注射液の投与中・投与後の痛み、肛門部違和感、肛門不快感の訴えは全症例で無かった。
c.アルミニウムの薬物動態
解析対象への総投与量は、27〜42mLであり、投与時間は4〜17分間であった。なお、投与後の血清中濃度及び尿中排泄率は、各症例の投与前値を減算して表示した。投与前の血清中アルミニウム濃度は何れも定量限界(0.01μg/mL)未満であった。混合製剤中の硫酸アルミニウムカリウムとして8.4〜13.7mg/kgを痔核内に投与したとき、投与終了時から0.71±0.37時間後にCmax(1.80±0.51μg/mL)に達した後、最終相では149.3±170.7時間の半減期で消失した。AUC0−24h及びAUC0−∞は、それぞれ13.8±3.7及び38.7±14.7μg・h/mLであった。投与量(mg/kg)とCmax及びAUC0−24hには、用量相関性が認められた。投与96時間後までのアルミニウムの尿中排泄率は、56.6±11.1%であった。
d.まとめ
以上より、本発明からなる医薬組成物キットは、重度内痔核に対して極めて有効な製剤であり、安全性・無痛性が確保されている。
産業上の利用可能性
本発明は、以上説明したように、水溶性アルミニウム化合物とタンニン酸を含む直腸粘膜下病変異常組織治療用局所注射用製剤において、局所麻酔剤の選別・使用配合比等の検討をおこない、塩酸リドカイン注射液及び塩酸プロカイン注射液、特に塩酸リドカイン注射液が極めて有用な局所麻酔剤として併用できることを見出した。これらを予め医薬組成物キットとすることによって、その配合比の正確性を維持でき、且つ安全性・無痛性が確保された製剤を提供することができる。また本発明は、医師の治療時における煩雑性を回避でき極めて利便性にすぐれたものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の医薬組成物キットの肉芽形成作用を肉芽重量で表した図である。値は各群8例の平均値±標準誤差を示し、図中、N.S.(Not significant)とは「有意差無し」を意味する。
第2図は、本発明の医薬組成物キットの投与後の、血清中アルミニウム濃度の推移を示す図である。値は各群5例の平均値±標準偏差を示す。

Claims (10)

  1. それぞれの容器を用時開封し、各内容物を混合して注射用製剤とする治療用組成物キットにおいて、局所治療用製剤と局所麻酔剤のそれぞれの1回投与量を容器に分別充填し、該治療用製剤は1〜10W/V%の水溶性アルミニウム化合物および0.01〜2W/V%のタンニン酸を含み、該局所麻酔剤は0.1〜1W/V%の塩酸リドカイン又は0.5〜5W/V%の塩酸プロカインを含んでおり、各内容物の混合してえられる注射用製剤の各成分の終濃度が、1.5〜2.5W/V%の水溶性アルミニウム化合物、0.01〜1W/V%のタンニン酸及び0.05〜0.5W/V%の塩酸リドカイン又は0.1〜1W/V%の塩酸プロカインになるように予め分別充填されており、水溶性アルミニウム化合物、タンニン酸、及び局所麻酔剤の連係投与を可能にしたことを特徴とする直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  2. 治療用製剤のpHが2〜3であることを特徴とする請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  3. 水溶性アルミニウム化合物が、硫酸アルミニウムカリウムであることを特徴とする請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  4. 治療用製剤にキレート剤および安定用添加剤を含む請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  5. 各内容物を混合して注射用製剤としたときの最終製剤が、水溶性アルミニウム化合物及びタンニン酸に加えて、クエン酸ナトリウムを0.5〜1W/V%、デキストラン40を0.1〜1W/V%、グリセリンを3〜8W/V%、亜硫酸水素ナトリウムを0.01〜0.1W/V%含むように調製された請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  6. 局所治療用製剤と局所麻酔剤が、各々不活性ガス雰囲気下において保存容器に充填されてなる請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  7. キットの容器が2室一体型であることを特徴とする請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  8. キットの容器が酸素不透過性である請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  9. キットの容器が、外装と内装からなる2層構造を有し、内外層間に脱酸素剤を封入してなる請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
  10. キットの容器が、保存用注射容器である請求項1に記載の直腸粘膜下病変異常組織治療用医薬組成物キット。
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